説明

いくつかのディスプレイセル層を有する電気泳動または電磁気泳動ディスプレイデバイスおよび製造方法

本願は、好ましくはスタガ型に配置された、電気泳動および/または磁気泳動流体を有する、いくつかの、好ましくは2つのセル層(21,22)の積層体を含む電気泳動または電磁気泳動ディスプレイ、およびいくつかの封止されたディスプレイセル層をラミネートすることによるその製造方法に関する。本願による電気泳動ディスプレイは改善されたコントラスト比、スイッチング性能、最小光学密度における反射率、および構造的一体性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
a)発明の分野
本願は改善されたコントラスト比、スイッチング性能、Dmin状態における反射率(または反射性)、および構造的一体性を有する電気泳動ディスプレイ、ならびにその製造方法に関する。
【0002】
b)関連技術の説明
電気泳動ディスプレイは、溶媒中に懸濁している帯電色素粒子の電気泳動現象に基づく非発光デバイスである。これは1969年に初めて提案された。このディスプレイは通常、互いに対向し、スペーサで離間して配置された電極を有する2つのプレートを含んで成る。一方の電極は通常、透明である。着色された(またはカラーの)溶媒および帯電色素粒子で構成される懸濁物が2つの電極間に封入される。2つの電極間に電圧差が付与されると色素粒子は一方側に移動し、そして、電圧差の極性によって色素粒子の色または溶媒の色のいずれかを見ることができる。
【0003】
粒子の望ましくない運動、例えば沈降を防止するために、空間をより小さなセルに分割するように2つの電極間に仕切(またはパーティション)を設けることが提案された(M. A. HopperおよびV. Novotny、アイ・イー・イー・イー・トランス・エレクトロン・デバイシィーズ(IEEE Trans. Electr. Dev.)、26巻、第8号、第1148〜1152頁(1979年)を参照のこと)。しかしながら、仕切型電気泳動ディスプレイの場合、仕切りの形成および懸濁物の封入プロセスは困難を伴うものであった。更に、仕切型電気泳動ディスプレイにおいて、異なる色の懸濁物を互いに分離した状態に保つことも困難であった。
【0004】
別のタイプのEPD(米国特許第3,612,758号を参照のこと)は、平行なライン状のリザーバから形成される電気泳動セルを有するものである(チャンネルまたはグルーブ型)。電気泳動流体のチャンネルへの充填および封止はバッチ式プロセスで実施される。加えて、特に長さ(または経線:longitude)方向における粒子の望ましくない運動または沈降の問題は課題として残っている。
【0005】
その後、懸濁物をマイクロカプセルに封入するという試みがなされた。米国特許第5,961,804号、同第5,930,026号および同第6,017,584号にはマイクロカプセル化電気泳動ディスプレイが記載されている。この参照文献のディスプレイは、誘電性溶媒およびこれと視覚的に対照を為す帯電色素粒子の懸濁物の電気泳動組成物をそれぞれが有するマイクロカプセルの実質的に2次元的なアレンジメント(または配置)を有する。マイクロカプセルは界面重合、イン・シトゥー重合または他の既知の方法(例えば物理的プロセス、液中(in-liquid)硬化またはシンプル/コンプレックス・コアセルベーションなど)で形成することができる。マイクロカプセルは形成後、2つの離間した電極を収容するセル内に注入され、あるいは透明導体フィルム上に「印刷」またはコートされてよい。また、マイクロカプセルは2つの電極間に挟持される透明マトリックスまたはバインダ内に固定化されてもよい。
【0006】
これらの方法、特に米国特許第5,961,804号、同第5,930,026号および同第6,017,584号に開示されるようなマイクロカプセル化法によって作製される電気泳動ディスプレイには多くの難点がある。例えば、マイクロカプセル化法によって作製した電気泳動ディスプレイは、マイクロカプセルの壁の化学的性質のために環境の変化に対して敏感(特に湿気および温度に対して敏感)である。第2に、マイクロカプセルに基づく電気泳動ディスプレイは、マイクロカプセルの壁が薄く、粒子寸法が大きいために引掻抵抗に乏しい。ディスプレイの取扱いをよくするため、大量のポリマーマトリックスにマイクロカプセルを埋め込むと、2つの電極間の距離が大きくなるために応答時間が遅くなり、また色素粒子の充填量(またはペイロード)が小さくなるためにコントラスト比が小さくなる。また、帯電制御剤がマイクロカプセル化プロセスの間に水/油界面に拡散する傾向にあるので、色素粒子の表面電荷密度を増加させることも困難である。マイクロカプセル中の色素粒子の電荷密度またはゼータ電位が小さいことも、応答速度が遅くなる要因である。更に、マイクロカプセルの粒子寸法が大きく、寸法分布が広いために、このタイプの電気泳動ディスプレイは色を適用する場合のアドレス性(addressability:アドレッサビリティ)および解像度に乏しい。
【0007】
近年、改善されたEPD技術が、同時係属出願である2000年3月3日に出願された米国出願第09/518,488号(国際公開第01/67170号に対応)、2000年6月28日に出願された米国出願第09/606,654号(国際公開第02/01280号に対応)および2001年2月15日に出願された米国出願第09/784,972号(国際公開第02/65215号に対応)に開示された。これら全ては参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。改善されたEPDは隔離されたセルを含み、このセルは適切に規定された形状、寸法およびアスペクト比を有するマイクロカップから形成され、誘電性溶媒または溶媒混合物(好ましくはフッ素化溶媒または溶媒混合物)中で分散した帯電色素粒子または色素含有マイクロ粒子が充填されている。充填されたセルはポリマー封止層(これは好ましくは熱可塑性物、熱可塑性エラストマー、熱硬化物およびその前駆体からなる群より選択される材料を含む組成物から形成される)により個々に封止されている。
【0008】
マイクロカップ構造により、フォーマットに対して融通がきき、EPDを製造するために効率的なロール・トゥ・ロール連続製法が可能となる。このディスプレイはITO/PETなどの導体フィルムの連続ウェブ上に作製することができ、これは例えば、(1)ITO/PETフィルム上に放射線硬化性組成物をコートし、(2)マイクロエンボス加工またはフォトリソグラフィー法によってマイクロカップ構造を形成し、(3)電気泳動流体をマイクロカップに充填し、そして充填されたマイクロカップを封止し、(4)封止したマイクロカップに別の導体フィルムをラミネートし、および(5)ディスプレイを組立てのために所望の寸法またはフォーマットへとスライスまたは切断することによる。
【0009】
このタイプのEPDの1つの利点は、マイクロカップ壁が事実上、上部および底部基材を所定の距離だけ離して維持するビルトイン(または組込み)スペーサーとなっていることである。マイクロカップディスプレイの機械的特性および構造的一体性は、スペーサー粒子を用いて製造したものを含む従来既知のいかなるディスプレイよりも極めて優れている。加えて、マイクロカップを含むディスプレイは、ディスプレイが曲げられ、丸められ、あるいは例えばタッチスクリーンに適用した場合などの圧縮圧力下にある場合における信頼性の高いディスプレイ性能を含む望ましい機械的特性を有する。また、ディスプレイパネルの寸法を制限および予め決定し、ディスプレイ流体を所定の領域内に制限していたエッジシール接着剤は、マイクロカップ技術を使用することにより不要となる。エッジシール接着法により製造される従来のディスプレイ内のディスプレイ流体は、ディスプレイが何らかにより切断され、またはディスプレイに穴が開いたときには完全に漏れ出てしまう。損傷したディスプレイは最早機能しない。これに対してマイクロカップ技術により製造されるディスプレイ内のディスプレイ流体は各セル内に封入され、隔離されている。このマイクロカップディスプレイは、アクティブ領域にあるディスプレイ流体を失うことによりディスプレイ性能が損なわれるという危険性なしに、ほぼあらゆる大きさに切断できる。換言すれば、このマイクロカップ構造によりフォーマットに対して融通のきくディスプレイの製造方法が実現され、この方法では、任意の所望のフォーマットへと切断できる大面積シートフォーマットでディスプレイを連続生産できる。隔離されたマイクロカップまたはセル構造は、例えば色およびスイッチング速度などの所定の特性が異なる流体をセルに充填する場合に特に重要である。マイクロカップ構造なしには、隣接する領域内の流体が相互に混合することまたは動作中にクロストークが生じることを防止するのは極めて困難であろう。
【0010】
より高いコントラスト比を得るために、次の2つの手法のうち一方が採用される:(1)非アクティブな仕切壁を通って漏れる光を低減するために暗い背景を用いること、または(2)充填量(またはペイロード)を増加させるために開口部がより広く、仕切がより狭いマイクロカップを用いること。しかしながら、暗い背景は通常、Dmin状態における反射率の低下をもたらす。他方、より広いマイクロカップおよびより狭い仕切壁から形成したディスプレイセルは、例えばタッチスクリーンパネル用の先の尖ったペンにより加えられる圧縮力および/または剪断力に耐える能力に乏しい。
【発明の要旨】
【0011】
本願は改善されたコントラスト比、スイッチング性能、Dmin状態における反射率、および構造的一体性を示す新規な多層EPD構造を指向したものである。このタイプの多層EPD構造においては、Dmin状態における反射率を改善しつつ許容可能なコントラスト比を得るために、より浅いマイクロカップを用いることができる。この結果、製造コストが著しく削減され、また、マイクロエンボス加工の際のリリース(または離型)特性も大幅に改善される。
【0012】
本発明の第1の要旨は、積層された2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイを指向したものである。このディスプレイセルは電気泳動ディスプレイ流体が充填され、および個々に封止(またはシール)されている。
【0013】
本発明の第2の要旨は、積層された2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイを指向したものであり、このセルは異なる色、光学密度またはスイッチング速度を有する電気泳動流体が充填される。
【0014】
本発明の第3の要旨は、積層された2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイを指向したものであり、このセルは異なる形状、寸法(または大きさ)または全面積に対する開口部の比を有する。
【0015】
本発明の第4の要旨は、積層された2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイを指向したものであり、この積層体(またはスタック)において、ある1つの層の非アクティブな(または像形成に寄与しない)仕切領域は、その上方または下方の層のアクティブな(または像形成に寄与する)セル領域と少なくとも部分的に重なり合い、好ましくは完全に重なり合う。用語「スタガ(型)(staggered)」は本願を通じてこの配置を説明するために用いるものとする。下方の層にあるセルからの(光の反射または吸収によって生じる)色を上方の層の仕切領域を通じて見ることができるためにはスタガ型配置が必要である。
【0016】
本発明の第5の要旨は、積層された2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイを指向したものであり、この積層体において、底部層は黒色の溶媒または溶媒混合物中で分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動流体が充填されたセルを含む。
【0017】
本発明の第6の要旨は、積層された2つのディスプレイセル層を有するフルカラーまたはマルチカラー電気泳動ディスプレイを指向したものであり、上部層は赤色、緑色または青色の溶媒または溶媒混合物中でそれぞれ分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動ディスプレイ流体が充填された赤色、緑色または青色のセルを含む。
【0018】
本発明の第7の要旨は、積層された2つのディスプレイセル層を有するフルカラーまたはマルチカラー電気泳動ディスプレイを指向したものであり、底部層は黒色の溶媒または溶媒混合物中で分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動流体が充填された黒色のセルを含み、黒色のセルは上方の層の非アクティブな仕切領域に対してスタガ型で配置されている。
【0019】
本発明の第8の要旨は、積層された2つのディスプレイセル層を有するフルカラーまたはマルチカラー電気泳動ディスプレイを指向したものである。底部層は赤色、緑色、青色および黒色の溶媒または溶媒混合物中でそれぞれ分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動ディスプレイ流体が充填された赤色、緑色、青色および黒色のセルを含む。上部層は赤色、緑色および青色の溶媒または溶媒混合物中でそれぞれ分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動ディスプレイ流体が充填された赤色、緑色および青色のセルを含む。2つの層の着色された(またはカラーの)セルおよび非アクティブな仕切領域は、底部層の黒色のセルが上部層の非アクティブな仕切領域に対して位置決めされたスタガ型で配置される。
【0020】
色素粒子または色素含有マイクロ粒子は磁性体(magnetic:または磁気を帯びたもの)であってもよい。
【0021】
本発明の第9の要旨は、積層された2つ以上のディスプレイセル層を有する電磁気泳動(electromagnetophoretic)ディスプレイを指向したものである。底部層は無色透明の溶媒または溶媒混合物中で分散した黒色の磁性粒子および白色の非磁性粒子の混合物を含む電磁気泳動流体が充填されたディスプレイセルを含む。上部層は赤色、緑色および青色の溶媒または溶媒混合物中でそれぞれ分散した白色の粒子を含む電気泳動流体が充填された赤色、緑色および青色のセルを含んでよい。あるいは、上部層は無色透明の溶媒または溶媒混合物中で分散した白色の粒子および着色された粒子の混合物を含む電気泳動流体が充填されたディスプレイセルを含んでいてよい。
【0022】
本発明の第10の要旨は、本発明の第1〜第9の要旨にて説明したような、積層された2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイを製造するための方法を指向したものである。
【0023】
用語「ディスプレイセル」を本願にて使用するが、この用語は仕切型ディスプレイセル、マイクログルーブまたはマイクロチャンネル型ディスプレイセル(米国特許第3,612,758号)、マイクロカプセル型ディスプレイセル(米国特許第5,961,804号、同第5,930,026号および同第6,017,584号)および国際公開第01/67170号に記載されるようなマイクロカップ技術によって製造されるディスプレイセルを広範に含むものとして理解される。
【0024】
用語「マイクロカップ」を本願にて使用する場合、本発明の多層ディスプレイは仕切型ディスプレイセル、マイクログルーブまたはマイクロチャンネル型ディスプレイセルおよびマイクロカプセル型ディスプレイセルなどの他のディスプレイセルにも当て嵌まることが理解される。
【0025】
多層EPDにおいて、通常、前記の上部(または上方の)層は表示(viewing)側であり、他方、底部(または下方の)層は非表示側である。
【発明の詳細な説明】
【0026】
定義
本明細書において特に断りのない限り、全ての技術的な用語は本明細書において、それらが当業者に一般的に使用および理解されているように、従来から用いられている定義に基づいて使用する。
用語「マイクロカップ(microcup)」は、マイクロエンボス加工または画像露光(imagewise exposure:イメージ通りに露光)により形成されるカップ状の窪み(または凹部、indentation)を言うものである。
用語「適切に規定された(well-defined)」は、マイクロカップまたはセルについて記載する場合、マイクロカップまたはセルが、製造プロセスの特定のパラメーターに基づいて予め決められる明確な形状、寸法およびアスペクト比を有することを意味することを意図する。
用語「アスペクト比」は、電気泳動ディスプレイの分野において一般的に知られた用語である。本願においては、セルの深さ対幅比または深さ対長さ比(あるいは長さに対する深さまたは幅に対する深さの比)である。
用語「Dmax」はディスプレイの達成可能な最大光学密度を言うものである。
用語「Dmin」はディスプレイの背景(またはバックグラウンド)の最小光学密度を言うものである。
用語「コントラスト比」はDmax状態における電気泳動ディスプレイの%反射率に対するDmin状態における該ディスプレイの%反射率の比として定義されるものである。
【0027】
I.好ましい態様
マイクロカップ技術により作製した電気泳動ディスプレイセルは、図1に示すように、少なくとも一方(10)は透明である2つの導体フィルム(10、11)と、この2つの導体フィルム間に収められたセル(12)の層とを含む。セルは、着色された誘電性溶媒中で分散した帯電色素粒子または色素含有マイクロ粒子が充填され、そして封止層(13)で封止されている。図1には示していないが、封止層は仕切壁(16)を覆って延在し、接触する(または連続する、contiguous)層をその上に形成することが好ましい。封止されたセルは第2の導体フィルム(10)に、オプションとして接着剤層(14)によりラミネートされる(または重ね合わされる)。2つの導体フィルム間に電圧差が印加されると、帯電粒子は片側に移動し、これにより、色素の色または溶媒の色のいずれかが透明導体フィルム(10)を通して見られる。加えて、2つの導体フィルムの少なくとも一方はパターン形成されている。EPDのコントラスト比を改善するため、次の2つの手法のうちの一方が一般的に採用される:(a)充填量(またはペイロード)の大きい(アスペクト比がより大きく、および/または全面積に対する開口面積の比がより大きい)マイクロカップを用いること、または(b)非表示側に暗い導体フィルム(11)を用いること。非アクティブな仕切領域(16)には光を散乱させる粒子が存在しないことから、観察者は「オン」および「オフ」状態の両方にて、仕切領域を通じて背景の色を見ることとなる。このような単層EPDの暗い背景により、より高いDmaxおよびコントラスト比が得られるが、Dmin状態における反射率はより低くなる。またこの他方、充填量が大きいセルを使用することはより困難であるだけでなく製造コストも増す。
【0028】
コントラスト比とDmin状態における反射率との間のトレードオフは、図2aおよび2bに示すスタガ型二層構造では解消される。この2つの図において、ディスプレイは上方のセル層(21)および下方のセル層(22)を有する。二層のセルは封止層(23)で個々に封止される。二層はスタガ型で配置され、二層の封止側は互いに面している。二層構造は上部透明導体フィルム(24)と底部導体フィルム(25)との間に挟持される。
【0029】
「オン」状態(図2a)では、上方および下方の両層中の白色粒子はセルの上部に(表示側に向かって)引き寄せられる。光は下方の層にて粒子で反射して戻されるので、上部層の仕切領域(26)は「白色」に見える。これに対して「オフ」状態(図2b)では、両層中の白色粒子はセルの底部に(非表示側に向かって)引き寄せられる。光は下方の層にて着色誘電性溶媒で吸収されるので、上部層の仕切領域は「着色状態(または有色)」に見える。この結果、ディスプレイのDmaxおよびコントラスト比を、Dmin状態における反射率を犠牲にすることなく改善できる。
【0030】
また、二層または多層EPDは、高コントラスト比をDmin状態での高反射率と共に達成するために、充填量のより小さい(アスペクト比のより小さい、および全面積に対する開口面積の比がより小さい)セルを用いることもできる。またこのことはマイクロエンボス加工プロセスのリリース特性を大幅に改善し、マイクロエンボス加工のための型を製造する際のコストおよび困難さを低減する。
【0031】
マイクロカップの作製
マイクロカップに基づくディスプレイセルはマイクロエンボス加工、フォトリソグラフィーまたは予め穿孔された(または予めパンチ形成された)穴のいずれかにより、同時係属特許出願である2000年3月3日に出願された米国出願第09/518,488号(国際公開第01/67170号に対応)、2002年8月29日に出願された米国出願第09/942,532号(2002年6月20に公開された米国出願公開2002−75556号)、2000年6月28日に出願された米国出願第09/606,654号(国際公開第02/01280号に対応)、および2001年2月15日に出願された米国出願第09/784,972号(国際公開第02/65215号に対応)に記載されるようにして作製できる。これら全ては参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
一般的に、マイクロカップに基づくセルは任意の形状を有してよく、また、その寸法および形状は様々であってよい。セルは、1つのシステムにおいて実質的に均一な寸法および形状であってよい。しかしながら、光学的効果を最大限にするために、異なる形状および寸法が混在するセルを製造してよい。例えば、赤色の分散物が充填されたセルは、緑色のセルまたは青色のセルと異なる形状または寸法を有してよい。更に、ピクセルは異なる色の異なる数のセルから構成されていてよい。例えば、ピクセルは幾つかの小さい緑色セル、幾つかの大きい赤色セルおよび幾つかの小さい青色セルから構成されていてよい。3つの色に対して同じ形状および数とする必要はない。
【0033】
マイクロカップの開口部は円形(または丸い形状)、正方形、矩形、六角形または他の任意の形状であってよい。開口部の間の仕切領域は、望ましい機械的性質を維持しながらも、大きい彩度およびコントラスト比を達成するために小さく維持することが好ましい。従って、ハニカム形状の開口部が、例えば円形開口部より好ましい。
【0034】
反射型電気泳動ディスプレイについては、各個のマイクロカップの寸法は約10〜約10μm、好ましくは約10〜約10μmの範囲内であり得る。マイクロカップの深さは約3〜約100ミクロン、好ましくは約10〜約50ミクロンの範囲内である。全面積に対する開口面積の比は約0.1〜約0.95、好ましくは約0.4〜約0.90の範囲内にある。マイクロカップ間の仕切の幅は約2〜約50ミクロン、好ましくは約5〜約20ミクロンの範囲内である。
【0035】
II.電気泳動流体の調製
電気泳動ディスプレイ流体は当該分野において既知の方法(例えば米国特許第6,017,584号、第5,914,806号、第5,573,711号、第5,403,518号、第5,380,362号、第4,680,103号、第4,285,801号、第4,093,534号、第4,071,430号、第3,668,106号およびアイ・イー・イー・イー・トランス・エレクトロン・デバイシィーズ(IEEE Trans. Electron Devices)、ED−24、827頁(1977年)およびジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J. Appl. Phys.)49(9)、4820頁(1978年)に記載されるような方法)により調製することもできる。帯電色素粒子は、この粒子が中で懸濁する媒体と視覚的にコントラストを為す。この媒体は誘電性溶媒であり、粒子の大きい移動度のためには、小さい粘度および約2〜約30、好ましくは約2〜約15の範囲にある誘電率を有することが好ましい。適当な誘電性溶媒の例には以下のものが含まれる:炭化水素、例えばデカヒドロナフタレン(デカリン(DECALIN))、5−エチリデン−2−ノルボルネン、脂肪油、パラフィン油;芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、フェニルキシリルエタン、ドデシルベンゼンおよびアルキルナフタレン;ハロゲン化溶媒、例えばパーフルオロデカリン、パーフルオロトルエン、パーフルオロキシレン、ジクロロベンゾトリフルオライド、3,4,5−トリクロロベンゾトリフルオライド、クロロペンタフルオロ−ベンゼン、ジクロロノナン、ペンタクロロベンゼン、ならびにパーフルオロ溶媒、例えばFC−43、FC−70およびFC−5060(3M社(3M Company、ミネソタ州セントポール)製);低分子量のハロゲン含有ポリマー、例えばポリ(パーフルオロプロピレンオキサイド)(ティシーアイ・アメリカ(TCI America、オレゴン州ポートランド)製)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、例えばハロカーボン・オイル(Halocarbon Oils)(ハロカーボン・プロダクト社(Halocarbon Product Corp.、ニュージャージー州リバーエッジ)製)、パーフルオロポリアルキルエーテル、例えばガーデン(Galden)(ソルベイ・ソレキシス(Solvay Solexis)製)またはクライトックス・オイル(Krytox Oils)およびグリースK−フルイッド・シリーズ(Greases K-Fluid Series)(デュポン(DuPont、デラウェア州)製)。1つの好ましい態様では、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)を誘電性溶媒として使用する。もう1つの好ましい態様では、ポリ(パーフルオロプロピレンオキサイド)を誘電性溶媒として使用する。
【0036】
懸濁媒体は染料または色素(顔料)により着色できる。ノニオン性アゾおよびアントラキノン染料が特に好都合である。好都合な染料の例には次のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:オイル・レッド(Oil Red)EGN、スーダン・レッド(Sudan Red)、スーダン・ブルー(Sudan Blue)、オイル・ブルー(Oil Blue)、マクロレックス・ブルー(Macrolex Blue)、ソルベント・ブルー(Solvent Blue)35、ピラム・スピリット・ブラック(Pylam Spirit Black)およびファスト・スピリット・ブラック(Fast Spirit Black)(ピラム・プロダクツ社(Pylam Products Co.、アリゾナ州)製)、スーダン・ブラック(Sudan Black)B(アルドリッチ(Aldrich)製)、サーモプラスチック・ブラック(Thermoplastic Black)X−70(バスフ(BASF)製)、アントラキノン・ブルー(anthraquinone blue)、アントラキノン・イェロー(anthraquinone yellow)114、アントラキノン・レッド(anthraquinone red)111、135、アントラキノン・グリーン(anthraquinone green)28(アルドリッチ製)。非溶解性色素の場合、媒体の色をもたらす色素粒子を誘電性媒体中に分散させてもよい。これらの色粒子は帯電していないのが好ましい。媒体中で色を生じさせる色素粒子が帯電している場合、それらは帯電色素粒子の電荷と反対の電荷を帯びているのが好ましい。双方の種類の色素粒子が同じ電荷を帯びている場合、これらは、異なる電荷密度または異なる電気泳動移動度を有する必要がある。いずれにせよ、媒体の色を生じさせる染料または色素は、化学的に安定であり、また、懸濁物中の他の成分と適合性(または相溶性)である必要がある。
【0037】
帯電色素粒子は有機または無機色素であってよく、例えばTiO、フタロシアニン・ブルー(phthalocyanine blue)、フタロシアニン・グリーン(phthalocyanine green)、ジアリリド・イェロー(diarylide yellow)、ジアリリド(diarylide)AAOTイェロー(yellow)、およびキナクリドン(quinacridone)、アゾ(azo)、ローダミン(rhodamine)、ペリレン(perylene)色素シリーズ(サン・ケミカル(Sun Chemical)製)、ハンサ・イェロー(Hansa yellow)Gパーティクルズ(particles)(関東化学製)、およびカーボン・ランプブラック(Carbon Lampblack)(フィッシャー(Fisher)製)であってよい。サブミクロンの粒子寸法が好ましい。粒子は、許容できる光学的性質を有する必要があり、誘電性溶媒によって膨潤したり、軟化してはならず、また、化学的に安定である必要がある。また、得られる懸濁物は通常の使用条件において沈降、クリーミングまたは凝集に抗して安定である必要がある。
【0038】
色素粒子は元々電荷を示しても、あるいは帯電制御剤を用いて顕在化するように帯電させてもよく、あるいは誘電性溶媒に懸濁させたときに電荷を得てもよい。適当な帯電制御剤は当該技術分野において周知であり、本来的にポリマー性のものであっても、非ポリマー性のものであってもよく、また、イオン性または非イオン性であってもよく、以下のイオン性界面活性剤を含む:エアロゾル(Aerosol)OT、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、金属石鹸、ポリブテンスクシンイミド、無水マレイン酸コポリマー、ビニルピリジンコポリマー、ビニルピロリドンコポリマー(例えばガネックス(Ganex、インターナショナル・スペシャルティ・プロダクツ(International Specialty Products)製))、(メタ)アクリル酸コポリマー、またはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートコポリマー。フルオロ界面活性剤はパーフルオロカーボン溶媒における帯電制御剤として特に好都合である。それにはFCフルオロ界面活性剤、例えばFC−170C、FC−171、FC−176、FC430、FC431およびFC−740(3M社製)およびゾニル(Zonyl)フルオロ界面活性剤、例えばゾニルFSA、FSE、FSN、FSN−100、FSO、FSO−100、FSDおよびUR(デュポン製)が含まれる。
【0039】
適当な帯電色素分散物は周知のいずれの方法で製造してもよく、そのような方法には粉砕(grinding)、摩砕(milling)、摩擦(attriting)、マイクロ流動化(microfluidizing)および超音波を利用する技術が含まれる。例えば、微粉末の形態の色素粒子を懸濁溶媒に加え、得られる混合物を数時間、ボールミルで粉砕または摩滅させて、非常に凝集した乾燥色素粉末を一次粒子に解砕する。好ましさは劣るが、懸濁媒体に色を付与する染料または色素をボールミル処理の間、懸濁物に加えてよい。
【0040】
色素粒子の沈降またはクリーミングは、誘電性溶媒に比重を適合化するのに適当なポリマーで粒子をマイクロカプセル化することによって解消できる。色素粒子のマイクロカプセル化は化学的または物理的に行うことができる。典型的なマイクロカプセル化方法には界面重合、イン・シトゥー重合、相分離、コアセルベーション、静電コーティング、噴霧乾燥、流動床コーティングおよび溶媒蒸発が含まれる。
【0041】
密度を適合化させた色素含有マイクロ粒子は同時係属米国特許第特許出願である2002年12月31日に出願された米国出願第10/335,210号(国際公開第03/58335号に対応)、同じく2002年12月31日に出願された米国出願第10/335,051号(国際公開03/57360号に対応)、2003年7月30日に出願された米国出願第10/632,171号、および2003年2月10日に出願された米国出願第10/364,270号(国際公開03/69403号に対応)に記載される方法によって製造できる。これら全ての内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
黒/白電気泳動ディスプレイの場合、懸濁物は、黒色染料または染料混合物あるいは帯電黒色粒子を含む黒色にした誘電性溶媒中に分散した酸化チタン(TiO)の帯電白色粒子を含む。黒色染料または染料混合物、例えばピラム・スピリット・ブラックおよびファスト・スピリット・ブラック(ピラム・プロダクツ社(アリゾナ州)製)、スーダン・ブラックB(アルドリッチ製)、サーモプラスチック・ブラックX−70(バスフ製)または非溶解性黒色色素、例えばカーボンブラックを使用して溶媒の黒色を発現させることができる。他の着色した懸濁物の場合、多くの可能性がある。減法混色の表色系の場合、帯電TiO粒子またはTiO含有粒子をシアン、イェローまたはマゼンタ色の誘電性溶媒に懸濁させてよい。シアン、イェローまたはマゼンタ色は、染料または色素を使用することによって発現させることができる。加法混色の表色系の場合、帯電TiO粒子またはTiO含有粒子を、同様に染料または色素を使用することによって発現させた赤、緑または青色の誘電性溶媒に懸濁させてよい。赤、緑、青色系が大部分の用途に好ましい。
【0043】
III.マイクロカップの封止
マイクロカップに基づくセルは、国際公開第01/67170号および同時係属米国出願である2001年6月4日に出願された米国出願第09/874,391号(国際公開第02/98977号に対応)、2003年7月10日に出願された米国出願第10/618,257号、2003年9月18日に出願された米国出願第10/665,898号、2003年8月29日に出願された米国出願第10/651,540号に記載されるようにして、電気泳動流体を充填し、そして封止することができる。これら全ての内容は参照することにより本明細書にその全体が組み込まれる。マイクロカップのシーリング(または封止)は多くの方法により実施できる。例えば、充填したマイクロカップに、溶媒および封止材料を含む封止組成物をオーバーコートことによって実施でき、この封止材料は熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、多価アクリレートまたはメタクリレート、シアノアクリレート、多価ビニル(ビニルベンゼン、ビニルシラン、ビニルエーテルを含む)、多価エポキシド、多価イソシアネート、多価アリル、および架橋可能な官能基を含むオリゴマーまたはポリマーなどからなる群より選択される。ディスプレイの物理機械的および光学的特性を改善するために添加剤、例えばポリマー性バインダーまたはシックナー(または増粘剤)、光開始剤、触媒、フィラー、着色剤または界面活性剤などを封止組成物に添加してよい。封止組成物は電気泳動流体と本質的に非適合性(または非相溶性)であり、電気泳動流体より小さい比重を有する。溶媒蒸発の際、封止組成物は充填したマイクロカップの上部にこれに合致する(conform)シームレスな封止を形成する。封止層は熱、放射線、電子(e)ビーム、湿気、界面架橋または他の硬化法によって更に硬化させてよい。界面重合およびその後のUV硬化がシーリング方法に非常に有利である。電気泳動層とオーバーコートとの間の混合は、界面重合によって界面に薄いバリヤー層が形成されることによって著しく抑制される。その後、後硬化工程(好ましくはUV照射による)によってシーリングが完了する。混合の程度を更に小さくするため、オーバーコートの比重が電気泳動流体の比重より相当小さいことが非常に望ましい。揮発性有機溶媒を使用してコーティングの粘度および厚さを調節することができる。揮発性溶媒をオーバーコートに使用する場合、揮発性溶媒は誘電性溶媒と非混和性であるのが好ましい。使用する染料が封止組成物中で少なくとも部分的に溶解する場合、このトゥーパスオーバーコートプロセスが特に好都合である。
【0044】
熱可塑性エラストマーまたはポリウレタンコポリマーを含む組成物によるシーリングが特に好ましい。熱可塑性エラストマーの例にはスチレンおよびイソプレン、ブタジエンまたはエチレン/ブチレンのトリブロックまたはジブロックコポリマー、例えばクラトン(Kraton、商標)DおよびGシリーズ(クラトン・ポリマー社(Kraton Polymer Company)製)などが含まれる。結晶性ゴム、例えばポリ(エチレン−コ−プロピレン−コ−5−メチレン−2−ノルボルネン)および他のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴムターポリマー)(エクソンモービル(Exxon Mobil)製)も極めて好都合であることが判った。
【0045】
別法では、シーリング組成物は電気泳動流体に、例えばインラインミキサーにより分散させ、精密なコーティング機構、例えばマイラド・バー(Myrad bar)、グラビア印刷、ドクター・ブレード、スロット・コーティングまたはスリット・コーティングによってマイクロカップ上に直ちにコート(被覆)する。揮発性有機溶媒を使用して電気泳動流体の粘度および被覆率(coverage)を制御することができる。過剰の流体はワイパーブレードまたは同様のデバイスにより掻き取り除去してよい。少量の弱い溶媒または溶媒混合物、例えばイソプロパノール、メタノールまたはそれらの水溶液を使用してマイクロカップの仕切壁の上面に残留する電気泳動流体を除去してよい。封止組成物は電気泳動流体と本質的に非相溶性であり、および電気泳動流体より軽い。相分離および溶媒蒸発の際、封止組成物は充填したマイクロカップの上部に浮かんで、シームレスな封止層をその上に形成する。封止層は熱、放射線または他の硬化法によって更に硬化させてよい。これがワンパス封止プロセスである。
【0046】
この2つの封止プロセスのいずれにおいても、ポリマー封止層は電解質流体の上面と接触する。封止層は電解質流体を各セル内に封入し、仕切壁の表面に封止的(または密封的)に付着する。最後に、封止されたマイクロカップは第2の導体フィルム(10)(これは場合により接着剤層(14)で予めコートされる)がラミネートされる。
【0047】
最も一般的に使用されるポリマーおよびその前駆体に対して望ましい密度および溶解度差を示す誘電性溶媒の好ましいグループは、ハロゲン化(特にフッ素化)炭化水素およびその誘導体である。界面活性剤を使用して電気泳動流体とシーリング組成物との間の界面における濡れおよび付着を改善することができる。有用な界面活性剤にはFC界面活性剤(3M社製)、ゾニルフルオロ界面活性剤(デュポン製)、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレート、フッ素置換長鎖アルコール、パーフルオロ置換長鎖カルボン酸およびそれらの誘導体が含まれる。
【0048】
IV.単層電気泳動ディスプレイパネルの作製
このプロセスは国際公開第01/67170号に記載されるような連続的なロール・トゥ・ロールプロセスとすることができる。これは以下の工程を含み得る:
1.導体フィルム上に適宜溶媒を含む熱可塑性物または熱硬化物の前駆体の層をコートする。溶媒は存在する場合には容易に蒸発する。
2.予めパターン形成した雄型によって、熱可塑性物または熱硬化物の前駆体層のガラス転移温度より高い温度にて熱可塑性物または熱硬化物の前駆体層をエンボス加工する。
3.好ましくは熱可塑性物または熱硬化物の前駆体層を適当な手段によって硬化する間またはその後、その層から型をリリースする(または離す)。
4.以上のようにして形成したマイクロカップに電気泳動流体を充填し、充填したマイクロカップを上述のワンパスまたはトゥーパスプロセスのいずれかにより封止する。
5.封止したマイクロカップのアレイに第2の導体フィルムを、オプションとして感圧接着剤、ホットメルト接着剤、熱、湿気または放射線硬化性接着剤であってよい接着剤層によってラミネートする(または重ね合わせる)。
【0049】
ラミネート接着剤は、上部導体フィルムが放射線に対して透明な場合には、UVなどの放射線によって上部導体フィルムを通して後硬化させてよい。出来上がった製品は、ラミネーション工程の後で様々な寸法および形状に切断してよい。
【0050】
上記のマイクロカップの製造は国際公開第01/67170号に記載されるようなフォトリソグラフィーによる別の手法で簡単に置換することができる。フルカラーEPDは、赤色、緑色および青色の電気泳動流体をマイクロカップに順次充填し、その後、充填したマイクロカップを上述のように封止することによって製造できる。
【0051】
V.多層ディスプレイパネルを有する電気泳動ディスプレイおよびその製造
図3aおよび3bは2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイの製造方法を示す。
【0052】
図3aは、例えば第IV節にて工程1〜4で記載した手順により作製したディスプレイセルである上部層(31)および底部層(32)をラミネートすることによって、二層電気泳動ディスプレイを製造する方法を示す。充填したディスプレイセルは封止層(33)でそれぞれ封止される。表示側の導体フィルム(34)は透明であり、非表示側の導体フィルム(35)は黒色にしてよい。接着剤層を使用してラミネーション(または重ね合わせ)プロセスを容易にできる。この二層(31および32)は、一方の層の非アクティブな仕切領域(36)と他方の層のアクティブなセル領域とがスタガ型となるように配置される。
【0053】
図3bは二層電気泳動ディスプレイを製造するもう1つの方法であって、(i)ディスプレイセル層(32)を導体フィルム(35)上に、例えば第4節にて工程1〜4で記載した手順により作製し、(ii)別のディスプレイセル層をリリース基板(または基材)(37)上に(i)と同様の手順により作製し、(iii)リリース基板(37)上のディスプレイセル層(31)を層(32)の上へ、場合により接着剤(図示せず)を用いてラミネートし、(iv)リリース基板を除去し、および(v)得られた複合体フィルムを導体フィルム(34)の上へ、場合により接着剤(図示せず)を用いてラミネートすることによる方法を示す。工程(ii)、(iii)および(iv)を繰り返して、ディスプレイセル層を3つ以上有する電気泳動ディスプレイを製造することができる。
【0054】
上記で製造したような二層または多層電気泳動ディスプレイでは、マイクロカップ層の非アクティブな仕切領域がもう1つの層のアクティブなマイクロカップ領域に対してスタガ型で配置されることが重要である。2つの導体フィルム(34および35)の少なくとも一方は予めパターン形成される。また、少なくとも表示側の導体フィルム(34)は透明である。
【0055】
図4aおよび4bは二層カラー電気泳動ディスプレイを示し、これは上部層(41)が赤色、緑色および青色の電気泳動流体を充填したディスプレイセルを含み、および底部層(42)が黒色の電気泳動流体を充填したディスプレイセルを含む。両図において、上方の層(41)の非アクティブな仕切領域(46)は下方の層(42)のアクティブなセル領域に対してスタガ型になっている。この二層構造体は2つの導体フィルム(44)および(45)の間に挟持される。2つの導体フィルムの少なくとも一方は透明である。
【0056】
図5aおよび5bは二層フルカラー電気泳動ディスプレイを示し、これは上部層(51)が赤色、緑色および青色の電気泳動流体を充填したディスプレイセルを含み、および底部層(52)が赤色、緑色、青色および黒色の電気泳動流体を充填したディスプレイセルを含む。二層の着色されたセルと非アクティブな仕切領域(56)とは、上部層(51)の赤色、緑色、青色および非アクティブな仕切領域がそれぞれ底部層(52)の赤色、緑色、青色および黒色のマイクロカップの位置に対して重ね合わさるようにしてスタガ型で配置される。この二層構造体は2つの導体フィルム(54)および(55)の間に挟持される。2つの導体フィルムの少なくとも一方は透明である。
【0057】
この二層構造体では、望ましくないモアレパターンの形成を回避するように、上部マイクロカップ層は底部層の上に適切な角度でラミネートすることができる。別法では、同様の目的で、対称性の劣るマイクロカップアレイを使用してよい。
【0058】
色素粒子または着色剤粒子は磁性体であってもよい。1つの態様においては、二層電磁気泳動ディスプレイは、無色透明の溶媒または溶媒混合物中で分散した黒色の磁性粒子および白色の非磁性粒子の混合物を含む電磁気泳動流体が充填されたディスプレイセルを含む底部層を有していてよい。上部層は、赤色、緑色および青色の溶媒中でそれぞれ分散した白色の粒子をを含む電気泳動流体が充填された赤色、緑色および青色のセルを含んでいてよい。あるいは、上部層は、無色透明の溶媒または溶媒混合物中で分散した白色および黒色の粒子の混合物を含む電気泳動流体が充填されたディスプレイセルを含んでいてよい。
【0059】
電磁気泳動ディスプレイ層についての詳細は係属中の出願である2003年3月20に出願された米国出願第10/394,488号および2003年4月22日に出願された米国出願第10/421,217号に開示され、これら双方の内容は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
一般的に、多層ディスプレイにおける2つの導体フィルム間の最小距離またはセルギャップは、好ましくは15〜200μmの範囲にあり、より好ましくは20〜50μmの範囲にある。各ディスプレイセル層の厚さは、好ましくは10〜100μmの範囲、より好ましくは12〜30μmの範囲において様々であってよい。また、粒子および染料または着色剤の各ディスプレイセル層における濃度も、異なる用途に対して様々であってよい。
【0061】
実施例
以下の実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することが可能となるように記載するものである。これらは本発明の範囲を制限するものとしてではなく、単に本発明を例示および代表するものとして考慮されるべきである。
【0062】
準備1
多官能性反応性保護コロイドR−アミンの合成
【化1】

【0063】
17.8gのクライトックス(Krytox、登録商標)メチルエステル(デュポン、17.8g、MW=約1780、g=約10、デュポン)を、12gの1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(アルドリッチ製)および1.5gのα,α,α−トリフルオロトルエン(アルドリッチ製)を含む溶媒混合物に溶解させた。得られた溶液を、7.3gのトリス(2−アミノエチル)アミン(アルドリッチ製)を25gのα,α,α−トリフルオロトルエンおよび30gの1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン中に含む溶液に室温にて撹拌しつつ2時間に亘って滴下させて添加した。その後、混合物を更に8時間撹拌して反応を完結させた。粗生成物のIR(赤外)スペストルは、メチルエステルに対する1780cm−1におけるC=O振動が現われていないこと、およびアミド生成物に対する1695cm−1におけるC=O振動が現われていることを明瞭に示した。100℃にて4〜6時間のロータリーエバポレーションおよびその後の真空ストリッピングにより溶媒を除去した。その後、粗生成物を50mlのPFS2溶媒(低分子量のパーフルオロポリエーテル(ソルベイ・ソレキシス製))に溶解させ、20mlのエチルアセテートで3回抽出し、その後、乾燥させて17gの精製物(R−アミン1900)を得、これはHT200中で優れた溶解性を示した。この物質(R−アミン1780)はHT200中で良好な溶解性を示した。
【0064】
異なる分子量を有する式(I)の他の反応性多官能性R−アミン、例えばR−アミン4900(g=約30)、R−アミン2000(g=約11)、R−アミン800(g=約4)およびR−アミン650(g=約3)も同様の手順に従って合成した。
【0065】
準備2
TiO含有マイクロカプセルの調製
9.05gのデスモデュア(Desmodur、登録商標)N3400脂肪族ポリイソシアネート(バイエル社(Bayer AG)製)および0.49gのトリエタノールアミン(99%、ダウ製)を3.79gのMEKに溶解させた。得られた溶液に、13gのTiOR706(デュポン製)を添加し、ローターステーターホモジナイザー(アイケーエー・ウルトラツーラックス(IKA ULTRA-TURRAX)T25、アイケーエー・ワークス(IKA WORKS)製)により周囲温度にて2分間均質化した。1.67gの1,5−ペンタンジオール(バスフ製)、1.35gのポリプロピレンオキサイド(分子量=725、アルドリッチ製)、2.47gのMEKおよび0.32gのMEK中2%ジブチルスズジラウレート(アルドリッチ製)溶液を含む溶液を添加し、更に2分間均質化した。最終工程にて、40gのHT−200(ソルベイ・ソレキシス)中の0.9gのR−アミン4900(準備1にて準備したもの)を添加して2分間均質化し、その後、33.0gのHT−200中の追加の0.9gのR−アミン4900を添加して2分間均質化した。低粘度のマイクロカプセル分散物が得られた。
【0066】
得られたマイクロカプセル分散物を80℃にて一晩加熱し、低剪断力下にて撹拌して粒子を後硬化させた。得られたマイクロカプセル分散物を400メッシュ(38ミクロン)スクリーンに通して濾過した。濾過した分散物の粒子および固形分含量をIR−200水分計(Moisture Analyzer、デンバー・インスツルメント社(Denver Instrument Company)製)により測定したところ29重量%であった。濾過した分散物の平均粒子寸法をベックマン・コールター(Beckman Coulter)LS230粒子分析器(Particle Analyzer)で測定したところ約2μmであった。
【0067】
1.0重量%のCuPc−C17(構造を以下に示し、米国特許第3,281,426号に従って調製される)および様々な量の上記で得られたTiO含有マイクロカプセル分散物をHT−200中に含むEPD流体をマイクロカップに充填し、その後、これを準備3にて説明する手順に従って封止し、そして2つのITO/PETフィルムの間に挟持した。
【0068】
【化2】

【0069】
準備3A
プライマーでコートした透明導体フィルム
33.2gのEB600(商標)(アクリル化エポキシオリゴマー、ユーシービー(UCB、ジョージア州スマーナ)製)、16.12gのSR399(商標)(五官能性モノマー、サートマー(Sartomer、ペンシルバニア州エクストン)製)、16.12gのTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート、ユーシービー(ジョージア州スマーナ)製)、20.61gのHDODA(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ユーシービー(ジョージア州スマーナ)製)、2gのイルガキュア(Irgacure、商標)369[(2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、チバ(Ciba、ニューヨーク州タリータウン)製]、0.1gのイルガノックス(Irganox、商標)1035[チオジエチレンビス(3,5−ジ(tert)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、チバ製]、44.35gのポリ(エチルメタクリレート)(MW 515,000、アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー)製)および399.15gのMEK(メチルエチルケトン)を含むプライマーコーティング溶液を十分に混合し、5ミル(mil)の透明導体フィルム(ITO/PETフィルム、5ミル OC50、シーピーフィルムズ(CPFilms、バージニア州マーチンズビル)製)の上に♯4のドローダウン・バーを用いてコートした。コートしたITOフィルムをオーブンで65℃にて10分間乾燥させ、UVコンベヤ(ディーディーユー(DDU、カリフォルニア州ロサンゼルス)製)を用いて窒素雰囲気下、1.8J/cmのUV光に曝露した。
【0070】
準備3B
マイクロカップの作製
【表1】

【0071】
33.15gのEB600(商標)(アクリル化エポキシオリゴマー、ユーシービー(ジョージア州スマーナ)製)、32.24gのSR399(商標)(五官能性モノマー、サートマー(ペンシルバニア州エクストン)製)、6gのEB1360(商標)(シリコーンアクリレート、ユーシービー(ジョージア州スマーナ)製)、8gのハイカー(Hycar)1300X43(反応性液体ポリマー、ノベオン社(Noveon Inc.、オハイオ州クリーブランド)製)、0.2gのイルガキュア(商標)369[(2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、チバ(ニューヨーク州タリータウン)製]、0.04gのITX(イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン)、アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー)製)、0.1gのイルガノックス(商標)1035[チオジエチレンビス(3,5−ジ(tert)−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、チバ(ニューヨーク州タリータウン)製]、および20.61gのHDODA(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ユーシービー(ジョージア州スマーナ)製)をスティア−パック(Stir-Pak)ミキサー(コール・パーマー(Cole Parmer、イリノイ州ヴァーノン)製)により室温にて約1時間、十分に混合し、遠心力装置により2000rpmにて約15分間脱泡した。
【0072】
このマイクロカップ組成物を、100μm(長さ)×100μm(幅)×25μm(深さ)×15μm(カップ間の仕切壁の上面の幅)のマイクロカップのアレイのための4インチ×4インチの電鋳形成したNi雄型の上にゆっくりとコートした。プラスチック製(または可塑性の)ブレードを用いて過剰な流体を除去し、これをNi型の「谷部」へと静かに押し込んだ。コートしたNi型をオーブンで65℃にて5分間加熱し、準備3Aにて作製したプライマーでコートしたITO/PETフィルムをプライマー層がNi型に面するようにしてラミネートした。ラミネートには、100℃のローラ温度、1フィート/分のラミネーション速度およびロールギャップを「ヘビーゲージ」に予め設定したジービーシー・イーグル(GBC Eagle)35ラミネータ(ジービーシー(GBC、イリノイ州ノースブルック)製)を用いた。2.5mJ/cmのUV強度のUV硬化ステーションを用いてこのパネルを5秒間硬化させた。その後、ITO/PETフィルムをNi型から約30度の剥離角度で剥がして、ITO/PET上に4インチ×4インチのマイクロカップアレイを得た。型からのマイクロカップアレイのリリース(または離型)は許容可能なものであることが認められた。このようにして得られたマイクロカップアレイをUVコンベヤ硬化システム(ディーディーユー(カリフォルニア州ロサンゼルス)製)により1.7J/cmのUV被曝量で更に後硬化させた。
【0073】
準備3C
充填および封止組成物による封止
9.7重量%(乾燥重量)のTiO含有マイクロカプセル(準備2に従って調製したもの)、1.0重量%のCuPc−C17および0.5重量%のR−アミン2000(TiO含有マイクロカプセルの総乾燥重量に基づく)(準備1に従って調製したもの)をHT−200中に含む電気泳動流体を4インチ×4インチのマイクロカップアレイ(準備3Bから作製したもの)に♯0のドローダウン・バーを用いて充填した。ゴム製ブレードにより過剰な流体を掻き取り除去した。
【0074】
14重量%のポリウレタンIROSTIC P9815−20(ハンツマンポリウレタン(Huntsman Polyurethane)製)をMEK/IPAc/CHO(47.5/47.5/5)中に含む封止組成物を、充填したマイクロカップ上に万能ブレードアプリケータを用いてオーバーコートし、室温にて乾燥させて、約2〜3μmの乾燥厚さを有するシームレスな封止層を均一性良く形成した。
【0075】
封止したマイクロカップ上に導体フィルムをラミネーションすることは、封止層上のITO/PETフィルム(5ミル)のITO側をラミネータにより120℃にて20cm/分の速度で加圧することにより実施した。
【0076】
比較実施例1
単層マイクロカップEPD
準備3Cに従って作製することにより得られた単層マイクロカップEPDに、その後、ディスプレイの封止側(非表示側)にある導体フィルムの外側表面上にて黒色コーティングの薄層をコートした。封止層と反対側にある導体フィルムは表示側であり、これを通じて全ての電気光学性能が測定される。コントラスト比および様々な標準化電界強度(normalized field strength)におけるDminを含む試験結果を表2に示した。
【0077】
実施例2
スタガ型二層マイクロカップEPD
6.0重量%(乾燥重量)のTiO含有マイクロカプセル(準備2に従って調製したもの)、1.0重量%のCuPc−C17および0.5重量%(TiO含有マイクロ粒子の総乾燥重量に基づく)のR−アミン2000(準備1による)をHT200中に含む電気泳動流体を、準備3Cにて作製したマイクロカップアレイ(下方の層)に充填し、そして封止した。封止したマイクロカップ層を、比較実施例1にて作製した第2の封止したマイクロカップ層(上方の層)にラミネートして、上方のマイクロカップ層の非アクティブな仕切領域が下方の層のアクティブなマイクロカップ領域の位置に対してスタガ型で配置されているスタガ型二層EPDフィルムを形成した。得られた二層EPDフィルムを比較実施例1と同様にして評価した。上方の層側から測定したコントラスト比および様々な標準化電界強度におけるDminも表2にまとめて示す。
【0078】
実施例3
スタガ型二層マイクロカップEPD
上方のマイクロカップ層に9.7重量%(乾燥重量)のTiO含有マイクロ粒子(準備2による)、1.0重量%のCuPc−C17および0.5重量%(TiO含有マイクロ粒子の総乾燥重量に基づく)のR−アミン2000をHT200中に含む電気泳動流体を充填し;また、下方のマイクロカップ層にHT200中の9.7重量%のTiO含有マイクロ粒子、1.5重量%のCuPc−C17および0.5重量%(TiO含有マイクロ粒子の総乾燥重量に基づく)のR−アミン2000を充填したこと以外は、実施例2と同様の手順に従った。コントラスト比および様々な標準化電界強度におけるDminを表2にまとめて示す。コントラスト比およびDminは下方の層における染料および粒子濃度を増加させることによって更に改善されることが示される。
【0079】
実施例4
スタガ型二層マイクロカップEPD
上方のマイクロカップ層の電気泳動流体は9.7重量%のTiO含有マイクロ粒子(準備2による)、0.7重量%のCuPc−C17および0.5重量%(TiO含有マイクロ粒子の総乾燥重量に基づく)のR−アミン2000をHT200中に含むものとし;また、下方のマイクロカップ層は9.7重量%のTiO含有マイクロ粒子、1.5重量%のCuPc−C17および0.5重量%(TiO含有マイクロ粒子の総乾燥重量に基づく)のR−アミン2000をHT200中に含むものとしたこと以外は、実施例2と同様の手順に従った。コントラスト比および様々な標準化電界強度におけるDminを表2にまとめて示す。
【0080】
【表2】

【0081】
表2から明らかなように、同一の標準化電界強度では二層EPDの全て(実施例2〜4)が単層EPD(比較実施例1)より著しく高いコントラスト比および低いDmin(Dmin状態における高い反射率)を示した。
【0082】
本発明をその特定の態様を参照しつつ説明して来たが、本発明の真の概念および範囲を逸脱することなく種々の変更が成され得、また均等物で置換され得ることが当業者に理解されるべきである。加えて、特定の状況、材料、組成物、プロセス、処理工程(1つまたはそれ以上)に適用するため、本発明の目的、概念および範囲に対して多くの改変がなされ得る。そのような全ての改変は添付の特許請求の範囲に属することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1はコントラスト比を改善するために暗い背景を用いてマイクロカップ技術により製造される典型的な電気泳動ディスプレイセルを示す。「オン」および「オフ」の状態の両方にて、非アクティブな仕切領域を通じて背景の色を見ることができる。Dmin状態において低い反射率を有するディスプレイが得られる。
【図2】図2aおよび2bは二層電気泳動ディスプレイの「オン」(Dmin)および「オフ」(Dmax)状態をそれぞれ示す。Dmin状態では、両方の層の白色粒子はマイクロカップの上部に引き寄せられる。光は底部マイクロカップ層の白色粒子により反射して戻されるので、上方の層の非アクティブな仕切領域は白色に見える。これに対して、Dmax状態では、両方の層の白色粒子はマイクロカップの底部に引き寄せられ、光は底部マイクロカップ層の着色された溶媒により吸収されるので、上方の層の非アクティブな仕切領域は着色されて見える。
【図3a】図3aは2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイの製造方法を示す。図3aは2つのマイクロカップ層を、マイクロカップの封止側を互いに向かい合わせてラミネートすることによって二層電気泳動ディスプレイを製造する方法を示す。
【図3b】図3bは2つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイの製造方法を示す。図3bは二層電気泳動ディスプレイを製造するもう1つの方法であって、(i)マイクロカップ層をリリース基板から導体フィルム上の第2のマイクロカップ層上へ転写し(または移動させ)、および(ii)得られた複合体フィルムを導体フィルム上に(場合により接着剤によって)ラミネートすることによる方法を示す。工程(i)を繰り返して、3つ以上のディスプレイセル層を有する電気泳動ディスプレイを製造することができる。
【図4】図4aおよび4bは上部層が赤色、緑色および青色の電気泳動流体を充填したマイクロカップを含み、および底部層が黒色の電気泳動流体を充填したマイクロカップを含む二層カラー電気泳動ディスプレイを示す。
【図5】図5aおよび5bは上部層が赤色、緑色および青色の電気泳動流体を充填したマイクロカップを含み、および底部層が赤色、緑色、青色および黒色の電気泳動流体を充填したマイクロカップを含む二層フルカラー電気泳動ディスプレイを示す。上方の層の赤色、緑色、青色および非アクティブな仕切領域はそれぞれ下方の層の赤色、緑色、青色および黒色のマイクロカップの位置に対して重ね合わさっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動流体が充填されたディスプレイセルの2つ以上の層を含む、電気泳動ディスプレイ。
【請求項2】
前記充填されたディスプレイセルはポリマー封止層で封止されている、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記ディスプレイセルは仕切壁で隔てられている、請求項2に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記ポリマー封止層は電気泳動流体を各セル内に封入し、および該セルの仕切壁の表面に封止的に付着する、請求項3に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記セルは部分的に充填されている、請求項4に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記ポリマー封止層は電気泳動流体の上面と接触している、請求項2に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記ディスプレイセルは仕切型ディスプレイセルである、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記ディスプレイセルはマイクログルーブまたはマイクロチャンネル型ディスプレイセルである、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記ディスプレイセルは約10〜約200μmの範囲にあるセル寸法を有するマイクロカプセルである、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記ディスプレイセルは約30〜約120μmの範囲にあるセル寸法を有するマイクロカプセルである、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項11】
ディスプレイセルの2つ以上の層は2つの導体フィルム間に挟持され、および2つの導体フィルム間の最小距離は約15〜約200ミクロンの範囲にある、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項12】
ディスプレイセルの2つ以上の層は2つの導体フィルム間に挟持され、および2つの導体フィルム間の最小距離は約20〜約50ミクロンの範囲にある、請求項11に記載のディスプレイ。
【請求項13】
ディスプレイセルの各層は約10〜約100μmの範囲にある厚さを有する、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項14】
ディスプレイセルの各層は約12〜約30μmの範囲にある厚さを有する、請求項13に記載のディスプレイ。
【請求項15】
前記ディスプレイセルは、異なる色、光学密度、スイッチング速度または磁気的性質を有する電気泳動流体が充填されている、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項16】
前記層の1つは、別の層のディスプレイセルと異なる形状、寸法または全面積に対する開口部の比を有するディスプレイセルを含む、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項17】
前記セルは非アクティブな仕切領域により隔てられ、およびポリマー封止層により封止的に封入される、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項18】
ある層の前記非アクティブな仕切領域は、別の層のアクティブなセル領域の位置に対してスタガ型で配置されている、請求項17に記載のディスプレイ。
【請求項19】
ディスプレイセルの1つの上部層と、ディスプレイセルの1つの底部層とを含む、請求項18に記載のディスプレイ。
【請求項20】
黒色の溶媒または溶媒混合物中で分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動流体が充填されたディスプレイセルを含む、請求項19に記載のディスプレイ。
【請求項21】
表示側にある上部層は、赤色、緑色または青色の溶媒または溶媒混合物中でそれぞれ分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動ディスプレイ流体が充填された赤色、緑色または青色のセルを含む、請求項19に記載のディスプレイ。
【請求項22】
フルカラーまたはマルチカラー電気泳動ディスプレイであって、非表示側にある底部層は、黒色の溶媒または溶媒混合物中で分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動流体が充填された黒色のセルを含む、請求項19に記載のディスプレイ。
【請求項23】
フルカラーまたはマルチカラー電気泳動ディスプレイであって、非表示側にある底部層は、赤色、緑色、青色および黒色の溶媒または溶媒混合物中でそれぞれ分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動流体が充填された赤色、緑色、青色および黒色のセルを含み、ならびに上部層は、赤色、緑色および青色の溶媒または溶媒混合物中で分散した白色の色素粒子または色素含有マイクロ粒子を含む電気泳動流体が充填された赤色、緑色および青色のセルを含む、請求項19に記載のディスプレイ。
【請求項24】
2つの層の着色されたセルおよび非アクティブな仕切領域は、上部層の赤色、緑色、青色および仕切領域が底部層の赤色、緑色、青色および黒色のセルに対してそれぞれ位置決めされたスタガ型で配置されている、請求項23に記載のディスプレイ。
【請求項25】
ディスプレイセルの1つの上部層と、無色透明の溶媒または溶媒混合物中で分散した黒色の磁性粒子および白色の非磁性粒子の混合物を含む電磁気泳動流体が充填されたディスプレイセルを含む1つの底部層とを含む、電磁気泳動ディスプレイ。
【請求項26】
上部層は、赤色、緑色および青色の溶媒中でそれぞれ分散した白色の粒子を含む電気泳動流体が充填された赤色、緑色および青色のセルを含む、請求項25に記載のディスプレイ。
【請求項27】
上部層は、無色透明の溶媒または溶媒混合物中で分散した白色および黒色の粒子の混合物を含む電気泳動流体が充填されたディスプレイセルを含む、請求項25に記載のディスプレイ。
【請求項28】
ディスプレイセルの2つ以上の層を有する電気泳動ディスプレイの製造方法であって、
a)導体フィルム側および封止側を各々が有する、ディスプレイセルの2つの層を個々に作製すること、
b)これら層の一方を他方の上に、場合により接着剤層によって、ラミネートすること
を含む、方法。
【請求項29】
工程(a)は、ディスプレイセルを導体フィルム上に形成し、該セルに電気泳動流体を充填し、および充填したセルをポリマー封止層で封止することによって実施する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記セルはマイクロエンボス加工により作製される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記セルはフォトリソグラフィーまたは予め穿孔された穴により作製される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
2つの層の前記セルは異なる方法によって作製される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は互いに無関係にマイクロエンボス加工、フォトリソグラフィーまたは予め穿孔された穴である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(b)は、ディスプレイセルの一方の層を他方の層の上に、2つの層の封止側が互いに面するようにラミネートすることによって実施する、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
ディスプレイセルの2つ以上の層を有する電気泳動ディスプレイの製造方法であって、
a)ディスプレイセルの第1の層を形成し、該第1の層は導体フィルム側および封止側を有すること、
b)ディスプレイセルの第2の層を転写リリース層上に形成し、該第2の層は転写リリース層側および封止側を有すること、
c)該第2の層を該第1の層の上にラミネートし、および該転写リリース層を除去すること、
d)場合により、ディスプレイセルの追加の層を転写リリース層上に別個に形成し、各層は転写リリース層側および封止側を有すること、
e)該追加の層の各々を既に形成された層の積層体の上にラミネートし、および該転写リリース層を除去すること、および
f)第2の導体フィルムを該積層体の上にラミネートすること
を含む、方法。
【請求項36】
工程(a)は、ディスプレイセルを導体フィルム上に形成し、該セルに電気泳動流体を充填し、および充填したセルをポリマー封止層で封止することによって実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記セルはマイクロエンボス加工により作製される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記セルはフォトリソグラフィーまたは予め穿孔された穴により作製される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
工程(b)および(d)は、ディスプレイセルを前記転写リリース層上に形成し、該セルに電気泳動流体を充填し、および充填したセルをポリマー封止層で封止することによって実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記セルはマイクロエンボス加工により作製される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記セルはフォトリソグラフィーまたは予め穿孔された穴により作製される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
ディスプレイセルの層は異なる方法によって作製される、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記方法は互いに無関係にマイクロエンボス加工、フォトリソグラフィーまたは予め穿孔された穴である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
工程(c)は、前記第2の層を前記第1の層の上に、2つの層の封止側が互いに面するようにラミネートし、その後、前記転写リリース層を除去することによって実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
工程(e)は、前記追加の層を既に形成された層の積層体の上に、追加の層の封止側が積層体に面するようにラミネートし、その後、前記転写リリース層を除去することによって実施する、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
工程(f)は接着剤層によって、または接着剤層なしでラミネートすることによって実施する、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−505013(P2006−505013A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550282(P2004−550282)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/034562
【国際公開番号】WO2004/042464
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(500327016)シピックス・イメージング・インコーポレーテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】SiPix Imaging,Inc
【住所又は居所原語表記】1075 Montague Expressway,Milpitas,California95035,United States of America