説明

いけす網

【目的】 陸上に引き上げて藻や貝を除去することを長期にわたって不要にできるようにする。
【構成】 銅や亜鉛からなる被覆膜2が残っている迄は藻や貝が付着し難くなり、その結果として藻や貝の除去が長期にわたって不要となる。その後、網本体1が露出しても、網本体1が高分子化合物からなるので錆の心配がなく、網本体1の露出後に従来と同様の期間をおいて藻や貝の除去を行えばよい。また、被覆膜2の材質に応じて、銅塊や亜鉛塊を網に設けると、その銅塊や亜鉛塊と、被覆膜2との間における水中での電位差を無くすことができ、被覆膜2を長期にわたり存在させることが可能となる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本考案は、魚を養殖するための「いけす」に使用されるいけす網に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上述したいけす網としては、従来、金属製の網とナイロン等の高分子化合物からなる網との2種類に大別される。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、前者である金属製のいけす網の場合には、材質の点で錆び易く、耐久性に欠点がある。また、金属製のいけす網にあっては、耐久性の向上を図るべく、表面にめっきが施されたものを有るが、この場合にはめっき部分の一部が侵食等により露出すると、その露出した素地と残っているめっき部分との電位差により、部分的に侵食がより速く進むという欠点がある。一方、後者の高分子化合物からなるいけす網の場合には、藻や貝類の付着があり、所定期間が経過する都度、陸上に引き上げて藻を除去することや貝を割って取り去ることを必要として煩わしかった。
【0004】
本考案は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、陸上に引き上げて藻や貝を除去することを長期にわたって不要にできる、高分子化合物を素地に使用したいけす網を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】 本考案のいけす網は、高分子化合物からなる網本体の外表面に銅からなる被覆膜が設けられているので、そのことにより上記目的が達成される。
【0006】
本考案のいけす網は、高分子化合物からなる網本体の外表面に亜鉛からなる被覆膜が設けられているので、そのことにより上記目的が達成される。
【0007】
上記いけす網において、前記被覆膜が蒸着めっき、塗装または溶射により形成された構成とすることができる。
【0008】
上記いけす網において、被覆膜が銅からなる場合には、前記網本体の一定面積毎に銅塊が設けられた構成とするのが好ましい。被覆膜が亜鉛からなる場合には、前記網本体の一定面積毎に亜鉛塊が設けられた構成とするのが好ましい。
【0009】
【作用】
本考案の構成によれば、銅や亜鉛からなる被覆膜が残っている迄は藻や貝が付着し難くなり、その結果として藻や貝の除去が長期にわたって不要となる。その後、網本体が露出しても、網本体が高分子化合物からなるので錆の心配がなく、網本体の露出後に従来と同様の期間をおいて藻や貝の除去を行えばよい。
【0010】
また、被覆膜の材質に応じて、網に銅塊や亜鉛塊を設けると、その銅塊や亜鉛塊と、被覆膜との間における海中での電位差を無くすことができ、被覆膜を長期にわたり存在させることが可能となる。
【0011】
【実施例】
以下に本考案の実施例を具体的に説明する。
【0012】
図2は、本考案に係るいけす網の使用状態を示す斜視図である。このいけす網は、図示例では、例えば上辺が一辺を10mとした正方形に形成されており、上辺には浮き3が、下辺には重り4が取り付けられ、浮き3の浮力により海や池、湖などの水中に設けられている。このように構成されたいけす網の中には、図示しない魚が養殖のために入れられている。網目の大きさは、養殖魚が逃げ出さない寸法であればよく、養殖魚の大きさに応じて任意に決定すればよい。
【0013】
図1は、上記いけす網の断面を示す。このいけす網は、網本体1の外側に被覆膜2が設けられている。網本体1は、ナイロンやポリエチレン、あるいはポリプロピレン、あるいはテトロン(エステル)などの高分子化合物からなる。その外側の被覆膜2は銅や亜鉛からなり、網本体1が上述した高分子化合物からなるために、蒸着めっき、塗装または溶射により形成されている。その形成の際、網本体1が大きいので、適当な要領で行うとよい。例えば、蒸着めっきや溶射により形成する場合は、網が大きいので、処理可能な長さになるように1または2以上に折り曲げ、その折り曲げたものを円筒状に巻取り、その状態となったものに対して蒸着めっきを施すことにより行うとよい。折り曲げる回数は、いけす網の大きさに応じて決めればよい。また、塗装により形成する場合は、塗装が可能な一定面積部分を塗装の都度位置を変えることにより行うとよい。以上の被覆膜2の形成は、他の要領で行ってよいことはもちろんである。
【0014】
したがって、本願考案のいけす網にあっては、銅や亜鉛からなる被覆膜2が残っている迄は藻や貝が付着し難くなり、その結果として藻や貝の除去が長期にわたって不要となる。その後、網本体1が露出しても、網本体1が高分子化合物からなるので錆の心配がなく、網本体1の露出後に従来と同様の期間をおいて藻や貝の除去を行えばよい。
【0015】
また、図3に示すように、いけす網の一定面積毎に銅塊や亜鉛塊からなるブロック5を設けた構成としてもよい。この場合、被覆膜2が銅からなるときは銅塊を使用し、亜鉛からなるときは亜鉛塊を使用する。このようにすると、ブロック5と被覆膜2とが同一材料からなるので、両者の水中での電位に差が無くなって、被覆膜2を長持ちさせることが可能となる。その結果として、藻や貝が付着し難くい期間を長くでき、より長期にわたって藻や貝の除去を行わずに済む。いけす網へブロック5を設ける方式としては、例えば図3および図4に示すように、腐食されず、かつ、水中での電位に影響のない高分子材料を用いた編目状の容器6を、同様に高分子材料からなる紐7にていけす網にくくり付けて固定し、その容器6に設けた蓋を介して容器6の内部にブロック5を入れるとよい。あるいは、上記容器の一部に、同一材料からなるリング状の係止具を設けておき、その係止具をいけす網に固定するようにしてもよい。要は、ブロック5と被覆膜2とが電気的に非導通状態となるようにブロック5を網に取り付けることができ、かつ、いけす網の取扱い中に外れないように、いけす網にブロック5を確実に固定できるようにする。
【0016】
上記ブロック5の設け方は、各ブロック5が被覆膜2に対し、両者の水中での電位差を無くすことができる範囲(図3に破線にて示す)が離れない状態で、各範囲内に少なくとも1つ存在するように設けるとよい。また、その大きさは、陸上に引き上げて藻や貝を除去することを、大きい程、より長期にわたって不要にできるため、大きい方が好ましいが、いけす網を使用する者が使用状態に応じて任意に決定してもよい。
【0017】
更に、本願考案では被覆膜2に銅か亜鉛を使用しているが、そのような材料に限定したのは、水道管などに用いられており、人体に悪影響が及ばないようにできるからである。
【0018】
【考案の効果】
以上のように、本考案のいけす網では、被覆膜の存在により、藻や貝が付着し難くなり、陸上に引き上げて藻や貝を除去することを長期にわたって不要にできる。また、被覆膜の材質に応じて、網に銅塊や亜鉛塊を設けると、より長期にわたって不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係るいけす網の断面を示す断面図である。
【図2】本考案に係るいけす網の使用状態を示す斜視図である。
【図3】本考案の他の形態を示し、銅や亜鉛からなるブロックを内部に有する容器が設けた網を示す。
【図4】図3の容器を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
1 網本体
2 被覆膜
3 浮き
4 重り
5 ブロック
6 容器
7 紐

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 高分子化合物からなる網本体の外表面に銅からなる被覆膜が設けられたいけす網。
【請求項2】 高分子化合物からなる網本体の外表面に亜鉛からなる被覆膜が設けられたいけす網。
【請求項3】 前記被覆膜が蒸着めっきにより形成された請求項1または2に記載のいけす網。
【請求項4】 前記被覆膜が塗装により形成された請求項1または2に記載のいけす網。
【請求項5】 前記被覆膜が溶射により形成された請求項1または2に記載のいけす網。
【請求項6】 前記網本体の一定面積毎に銅塊が設けられた請求項1に記載のいけす網。
【請求項7】 前記網本体の一定面積毎に亜鉛塊が設けられた請求項2に記載のいけす網。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】第3002010号
【登録日】平成6年(1994)7月6日
【発行日】平成6年(1994)9月13日
【考案の名称】いけす網
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−229
【出願日】平成6年(1994)1月27日
【出願人】(592241250)橋本産業株式会社 (2)
【出願人】(593072428)
【代理人】
【氏名又は名称】山本 秀策