説明

おこし様食品及びその製造方法

【課題】軽いサクサクとした食感で風味豊かなおこし様食品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】糖質100質量部に対し油脂70〜175質量部、水10〜25質量部及び必要に応じて乳化剤を含むバインダーを使用することを特徴とするおこし様食品である。
また、シリアル類100質量部に対し前記バインダー50〜100質量部を配合し焼成したことを特徴とするおこし様食品である。また、シリアル類として剥皮焙煎小麦粒をシリアル類100質量部中30〜100質量部使用することを特徴とする前記おこし様食品である。さらには、前記おこし様食品の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おこし様食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
おこしは、古くから知られた食品であり、一般には米などの穀類を原料として生地を作り、この生地を乾燥粉砕した後加熱膨化して粒状物とし、熱した砂糖水や水飴などをバインダーとして前記粒状物に加え成形固化して得られる。
このようなおこし様の食品として、熱した砂糖水や水飴などのバインダーに代えて、体温付近の温度で溶融状を呈し常温付近の温度で固体状を呈する油状生地を混合・成形してなるおこし様菓子が知られている(例えば特許文献1参照)。
これは、従来のおこしの食感を維持しつつ硬さを軽減することを目的としている。
また、食物繊維に富んだ食感の軽いおこし様食品として、シリアル類100重量部を、糖アルコールの乾物換算で60〜120重量部で固めたシリアル食品組成物、さらに、シリアル類100重量部に対して、蛋白質を30〜100重量部を含むことを特長とするシリアル食品組成物が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−98943号公報
【特許文献2】特開平11−9211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のおこしは、バインダーとして糖質が主体であり食感が硬いため前記のとおり、硬い食感を軽減することが求められている。
従って、本発明の目的は、軽いサクサクとした食感で風味豊かなおこし様食品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、糖質及び油脂類及び水を特定割合で配合したバインダーを使用することにより、軽いサクサクとした食感で風味豊かなおこし様食品を得ることができること、シリアル類として焙煎剥皮小麦を特定量使用するとさらに効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、糖質100質量部に対し油脂70〜175質量部、水10〜25質量部及び必要に応じて乳化剤を含むバインダーを使用することを特徴とするおこし様食品である。
また、シリアル類100質量部に対し前記バインダー50〜100質量部を配合し焼成したことを特徴とするおこし様食品である。
また、シリアル類として剥皮焙煎小麦粒をシリアル類100質量部中30〜100質量部使用することを特徴とする前記おこし様食品である。
さらには、前記おこし様食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明者の方法により軽いサクサクとした食感で風味豊かなおこし様食品を得ることができる。
従来のおこしの製法にくらべ、バインダーの添加後に焼成工程が追加されているのでさらに風味豊かなおこし様食品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のおこし様食品は、油脂、糖質、水を加熱混合しエマルジョン状態にしたバインダーを調製し、これに粒状、フレーク状のシリアル類を加え、よくあえた後オーブン等で焼成して得られる。
従来のおこしは、バインダーを加えた後焼成することなく、型に入れ冷却するが、本発明のおこし様食品の製造においては、バインダーを加えた後焼成する点が従来のおこしの製造方法とは大きく異なる。
【0008】
本発明において使用できるシリアル類とは、加熱処理済みの穀類をいい、穀粒の焙煎物を挙げることができる。
穀粒はそのまま又は破砕した状態で使用することができる。
さらに、本発明において使用できるシリアル類には穀類を原料として使用したパフ、フレークも含まれる。
穀類として、小麦、大麦、ライ麦、ハト麦、オーツ麦、米、アワ、ヒエ、キビ、ソバなどを挙げることができる。
本発明において使用できるシリアル類として、シリアル類100質量部中、剥皮焙煎小麦粒を30〜100質量部含むシリアル類が好ましい。
剥皮焙煎小麦粒の使用量が30質量部未満では、焙煎小麦特有の香ばしい風味や程よい歯ごたえを得ることができず好ましくない。
前記剥皮焙煎小麦粒とは、小麦粒の表皮(ふすま)を剥皮した小麦粒を焙煎したものをいう。
剥皮の割合は、皮部の除去率が4質量%以上、18質量%以下が好ましい。
除去率が4質量%未満の場合は、食した時に皮の硬さを感じるため食感が劣ってしまい好ましくない。
また、除去率が18質量%を超える場合は食した時の食味食感は問題ないが、加工時の作業性が極端に劣り、歩留りも劣るため好ましくない。
本発明に使用する焙煎剥皮小麦は、例えば、剥皮した小麦の水分を12%に調整し、回転式ドラム乾燥器で260℃、40秒熱風乾燥し得ることができる。
剥皮の方法は特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。
前記シリアル類は、単独で又は2種以上を配合して使用することができる。
さらに、必要に応じてドライフルーツ、焙煎ナッツなども同時に使用することができる。
【0009】
本発明のバインダーにおいて使用できる糖質とは、糖類、オリゴ糖、糖アルコールをいい、例えば、ショ糖、乳糖、果糖、オリゴ糖、転化糖、ブドウ糖、麦芽糖、ソルビトール、マルチトールなどを挙げることができる。
前記糖質は、単独で又は2種以上を配合して使用することができる。
なお、はちみつ、黒糖、メープルシロップ、和三盆など前記糖質を主成分として含む食品も使用することができる。
【0010】
本発明のバインダーにおいて使用できる油脂は、食用の油脂であれば特に限定されず、バター、マーガリン、乳化剤入りショートニングなどを挙げることができる。
油脂の使用量は、糖質100質量部に対し油脂70〜175質量部である。
油脂の使用量が70質量部未満では、バインダーが高粘度になるためシリアル類に上手くコーティングできず、作業性の面から好ましくない。
また、175質量部を超えると焼成後に余分な油がしみだして製品がベトつき、食した時に油っぽくなり好ましくない。
なお、本発明において、○○〜△△質量部とは、○○質量部以上、△△質量部以下の範囲を意味し、例えば、70〜175質量部とは70質量部以上175質量部以下の範囲を意味する。
風味の点で好ましく使用できるのはバターである。
なお、前記油脂の使用量は油脂自体の質量であり、バターには通常15%程度の水分が含まれているので使用する場合は乾物換算して使用する。
【0011】
本発明のバインダーで使用する水の使用量は、糖質100質量部に対し水10〜25質量部である。
水の使用量が10質量部未満では、焼成後シリアル類同士の結着性が悪く好ましくない。
また、水の使用量が25質量部を超えると水分が蒸発し難くなり食感がサクサクせず好ましくない。
【0012】
本発明のバインダーは、糖質、油脂、水を特定割合で配合しエマルジョン状態にして前記シリアル類を焼成固化するのに使用する。
油脂によっては、エマルジョン状態にならないものもあるので、この場合は乳化剤をエマルジョン状態になるように添加する。
バターなどは、乳化剤を添加することなく使用できる。
本発明のバインダーの使用量は、シリアル類100質量部に対し50〜100質量部が好ましい。
バインダーの使用量が50質量部未満では、焼成後のシリアル類の結着性が悪くなる傾向があり好ましくない。
また、100質量部を超えるとバインダーが飴様に固まりガリガリとした硬い食感になる傾向があり好ましくない。
【0013】
本発明のおこし様食品は、例えば、以下のような製造方法により製造することができる。
(1)シリアル類はむらがなくなるようによく混合しておく。
おこし様食品に焙煎ゴマ、焙煎アーモンドなどを加える場合は、シリアル類に加えておく。
(2)油脂、糖質、水を配合し、攪拌しながら105℃になるまで加熱しエマルジョン状態にバインダーを調製する。
使用する油脂によってはエマルジョン状態にならない場合があるのでこの場合は乳化剤を配合する。乳化剤の使用量はできるだけ少ないほうが好ましい。
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの食用乳化剤を使用することができる。
前記乳化剤は、単独で又は2種以上を配合して使用することができる。
(3)前記シリアル類と前記バインダーをよくあえて、オーブン用シートを敷いたトレーにいれ平らにする。
(4)コンベヤオーブンで焼成する。焼成温度及び時間は、190〜280℃で4〜10分である。
焼き上がりの水分量の目安は、2.7〜5.3質量%である。
(5)熱いうちに切れ込みを入れ、冷めたら型から取り出し、切り込みにそって割る。
【0014】
このようにして得られたおこし様食品は、軽いサクサクとした食感で風味豊かである。
なお、本発明のおこし様食品の形状は特に限定されず、板状、棒状、ドーナッツ状、円盤状などに成形することができる。
また、本発明のおこし様食品は必要に応じ、香料、着色料、調味料などを使用することができる。
また、表面をチョコレートなどで被覆することもできる。
【実施例】
【0015】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜14、比較例1〜5]バインダーの配合試験
表1及び表2に示す配合のバインダーを攪拌しながら105℃になるまで加熱しエマルジョン状態にした。
前記バインダーに玄米フレーク30g、コーンフレーク50g、焙煎剥皮小麦50gを加え、よくあえてオーブン用シートを敷いた型(縦15cm、横21cm、深さ1.8cm)にいれ平らにならし、コンベヤオーブンを使用して210℃で7分間焼成した後、取り出して熱いうちに縦方向に3本、横方向に3本ほぼ等間隔に切り込みを入れ、自然冷却した後切り込みにそって割り本発明のおこし様食品を得た。
実施例および比較例の焙煎剥皮小麦は、皮部除去率7%のオーストラリア産プライムハード小麦を260℃で40秒間焙煎したものを使用した。
得られたおこし様食品をパネラー10名により以下の評価基準で評価を行った。
評価基準
◎ 結着性がよく食感がサクサクで極めて良好
○ 結着性がよく食感がサクサクで良好
△ 普通
× 結着性が悪く食感がガリガリで硬く悪い、もしくはシナシナで軟らかく悪い
結果を表1及び表2に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
実施例1〜4はバインダーに使用する糖質の種類を変更した試験である。
上白糖、水飴、糖アルコール、黒糖とも極めて良好な食感であった。
実施例5〜8、比較例1〜2はバインダーに使用する油脂の配合量を変えた試験である。
油脂の配合量が糖質100質量部に対し、70質量部未満では、バインダーが高粘度になるためシリアル類に上手くコーティングできず、作業性の面からも好ましくなかった。
また、175質量部を超えると焼成後に余分な油がしみだして製品がベトつき、食した時に油っぽくなるという悪い点もあった。
【0018】
【表2】

【0019】
実施例9〜11、比較例3はバインダーに使用する油脂の種類を変更した試験である。
比較例3は、乳化剤を含まないショートニングを使用した場合だが、加熱攪拌しただけではバインダーがエマルジョン状態にならなかった。
そのため成型がうまくいかず評価できなかった。
実施例12〜14、比較例4〜5はバインダーに使用する水の配合量を変えた試験である。
水の配合量が糖質100質量部に対し10質量部未満では、焼成後シリアル類が結着し難く作業性の面でも悪く、25質量部を超えると水分が蒸発しないので食感がシナシナとして軟らかく悪かった。
【0020】
[比較例6〜7]バインダーの使用量
実施例1において、バインダーの使用量を58g、137gに変更し、それぞれ比較例6、比較例7としておこし様食品の評価を行った。
バインダー中の上白糖、バター、水の配合比率は実施例1と同じである。
比較例6は、結着が不十分で固まらなかった。
比較例7は、食感が硬く好ましくなかった。
バインダーの使用量はシリアル類100質量部に対し50〜100質量部を配合した場合が好ましかった。
【0021】
[実施例15〜19]焙煎剥皮小麦の配合試験
実施例1においてシリアル類を表3に示す配合に変更した以外は実施例1と同様にしておこし様食品の評価を行った。
【表3】

【0022】
実施例19は普通の評価であった。
実施例15は風味が良くサクサクとして良好な評価であった。
実施例16〜18風味が良くサクサクとして程よい歯ごたえがあり極めて良好であった。
【0023】
[実施例20]ドライフルーツの配合試験
実施例1において玄米フレーク30g、コーンフレーク50g、焙煎剥皮小麦50gを玄米フレーク30g、コーンフレーク50g、焙煎剥皮小麦50g、ドライアップル3g、レーズン3gに変更した以外は実施例1と同様にしておこし様食品を得た。
サクサクとして軽い食感でフルーツの色や風味も残っていて極めて良好であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質100質量部に対し油脂70〜175質量部、水10〜25質量部及び必要に応じて乳化剤を含むバインダーを使用することを特徴とするおこし様食品。
【請求項2】
シリアル類100質量部に対し請求項1に記載のバインダー50〜100質量部を配合し焼成したことを特徴とするおこし様食品。
【請求項3】
シリアル類として剥皮焙煎小麦粒をシリアル類100質量部中30〜100質量部使用することを特徴とする請求項2に記載のおこし様食品。
【請求項4】
糖質100質量部に対し油脂70〜175質量部、水10〜25質量部及び必要に応じて乳化剤を含むバインダーを使用することを特徴とするおこし様食品の製造方法。
【請求項5】
シリアル類100質量部に対し請求項4に記載のバインダー50〜100質量部を配合し焼成したことを特徴とするおこし様食品の製造方法。
【請求項6】
シリアル類として剥皮焙煎小麦粒をシリアル類100質量部中30〜100質量部使用することを特徴とする請求項5に記載のおこし様食品の製造方法。