かしめ工具
【課題】ラッチの係合穴とヨークダイスの係止部とが半係止状態あるいは非係止状態でかしめ動作が行なわれた場合であっても、ピストンの変形やシリンダの変形、この変形による動作不良やプレスダイスホルダのピストン装着ピンの変形や折れを極力防止することができるかしめ工具を提供する。
【解決手段】プレスダイスホルダ4aのピストン装着ピン42とピストン12の嵌合穴12aとの間に形成される筒状隙間内にピストン装着ピン42およびピストン12より軟質材料からなる筒状緩衝材6が介装されていることを特徴としている。
【解決手段】プレスダイスホルダ4aのピストン装着ピン42とピストン12の嵌合穴12aとの間に形成される筒状隙間内にピストン装着ピン42およびピストン12より軟質材料からなる筒状緩衝材6が介装されていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、給水・給湯用として用いられる可撓性を有する合成樹脂製あるいは複合管を他の配管材と接続するために用いる圧縮継手のスリーブをかしめるために用いるかしめ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの床下に給水・給湯用として配管される架橋ポリエチレン管や、アルミニウムの芯層を挟んで内外層にポリエチレンなどの合成樹脂層が形成された複合管などの柔軟管を他の配管材と接続するために、図11に示すような圧縮継手(たとえば、積水化学工業株式会社の商品名メタキュット、メタキュットREDなど)100が用いられている。
【0003】
この圧縮継手100は、図11に示すように、柔軟管Pの端部をニップル部110に差し込んだのち、スリーブ120をヨークダイス230と、プレスダイス250との間でかしめて柔軟管Pの端部をニップル部110とかしめられたスリーブ120との間で挟み込むようになっている。なお、図11中、130はかしめ作業を行った場合、ダイス間ではさまれて破損し、天井や床下などのかしめ状態が視認しにくい場合でも、かしめが行われていることを容易に確認できて、かしめ忘れ作業を防止することができるようにした樹脂リングである。
【0004】
また、上記のような圧縮継手100のスリーブ120をかしめるために、図12および図13に示すようなかしめ工具200が用いられている(特許文献1,2参照)。
このかしめ工具200は、工具本体210と、ヨークダイス固定用ラッチ(以下、「ラッチ」とのみ記す)220と、ヨークダイス230と、プレスダイスホルダ240と、プレスダイス250とを備えている。
工具本体210は、シリンダ211と、ピストン212とを備えている。
【0005】
ピストン212は、油圧によって進退し、その先端部がシリンダヘッド211aから出没するようになっている。
シリンダ211は、シリンダヘッド211aの一側にラッチ220を枢支するラッチ枢支部211bを有し、他側にヨークダイス230を枢支するヨークダイス枢支部211cを備えている。
【0006】
ラッチ220は、一端にラッチ部221、他端にハンドル222を有し、ハンドル222の基端部がラッチ枢支部211bの先端に枢支されている。
ラッチ部221は、後述するヨークダイス230の係止部231が係合する係合穴221aを備えている。
そして、ラッチ220は、コイルばね224によってラッチ部221がヨークダイス方向に付勢されている。
【0007】
ヨークダイス230は、ダイス本体部231と、係止部232と、アーム部233とを備えている。
そして、ヨークダイス230は、アーム部233の先端がヨークダイス枢支部211cに枢支されて、回動自在になっているとともに、係止部232が上記係合穴221aにはまり込んで、ラッチ220によって上記回動を抑止されるようになっている。
【0008】
そして、このかしめ工具200は、以下のようにして圧縮継手100のスリーブ120をかしめる(圧縮する)ようになっている。
(1)図13に示すように、ハンドル222を押さえて、ラッチ220のラッチ部221をヨークダイス230の係止部232から遠ざかるように回動させて、係合穴221aへの係止部232の係止を解除したのち、ヨークダイス230をラッチから離れる方向に回動させて、ヨークダイス230と、プレスダイスホルダ240に装着されたプレスダイス250との間隔を広げた状態で、ヨークダイス230と、プレスダイス250との間に、圧縮継手100のスリーブ120部分を臨ませる。
(2)ヨークダイス230を(1)工程と反対側に回動させて、ラッチ部221の係合穴221aに係止部232を係止させる。
(3)工具本体210の操作レバー215を操作して、ピストン212を油圧によってヨークダイス230側に進出させてスリーブ120をプレスダイス250によってヨークダイス230側にプレスすることによってかしめる。
図12中、216はリリースレバーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-64218号公報
【特許文献2】特開2011-122648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のかしめ工具200には、まれにであるが、ピストン212の先端部が変形してリリースレバー216を操作しても、ピストン212がシリンダ211の所定位置まで戻りきらなくなってしまい、圧縮継手100をヨークダイス230と、プレスダイス250との間にうまくセットできなかったり、プレスダイスホルダ240のピストン装着ピン241が折れてしまったりする問題などが発生した。
そこで、本発明の発明者がその原因について検討したところ、作業者によっては、図14に示すように、ヨークダイス230の係止部232がラッチ部221の係合穴221aに半係止状態や、図15に示すように、まったく係止されていない状態(以下、「非係止状態」と記す)であることを確認せず、あるいは、誤って操作レバー215を操作してしまうために、上記問題を発生させることがわかった。
【0011】
すなわち、図15に示す非係止状態での、かしめ時の工具出力荷重は、ヨークダイスのみに掛かっている。したがって、ピストン軸に対して図15でみて斜め下方向の偏荷重によって、ピストン軸に交差する方向の力F1が発生する。そして、この力F1によって、シリンダヘッド211a外に突出したピストン212の先端部が力F1方向にたわみ変形する。したがって、この変形したピストン212の先端部がシリンダ孔の先端で支えて元に戻らずシリンダヘッド211aから突出した状態になってしまう。
また、上記のような力F1が加わると、プレスダイスホルダ240のピストン装着ピン241が変形する、あるいは、折れたりする。
一方、図14に示す半係止状態での、かしめ時の工具出力荷重は、ヨークダイス、ラッチの双方に掛かっていため、出力荷重の方向は、やはり、図14でみて、斜め下向きの偏荷重がかかるが、非係止状態に比べ、ピストン軸に対する角度はそれほど大きくはない。したがって、少ない回数であればそれほど問題がないが、繰り返し半係止状態でのかしめ作業を行うと、非係止状態と同様の問題が起こる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて、ラッチの係合穴とヨークダイスの係止部とが半係止状態あるいは非係止状態でかしめ動作が行なわれた場合であっても、ピストンの変形、この変形による動作不良やプレスダイスホルダのピストン装着ピンの変形や折れを極力防止することができるかしめ工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のかしめ工具(以下、「本発明1のかしめ工具」と記す)は、ピストンと、このピストンを進退自在に支持するシリンダと、
前記ピストン先端に設けられた嵌合穴に嵌脱自在なピストン装着ピンを有するプレスダイスホルダと、一側がシリンダヘッドのヨークダイス枢支部に回動自在に枢支され、他側に係止部を有するヨークダイスと、シリンダヘッドのピストン軸をはさんでヨークダイス枢支部の反対側に設けられたラッチ枢支部に枢支され、前記ヨークダイスがかしめ位置まで回動した状態で、ヨークダイスの係止部がラッチ部に係脱可能となるように設けられたヨークダイス固定用ラッチとを備え、前記プレスダイスホルダに支持されたプレスダイスと、前記かしめ位置にあるヨークダイスとの間でかしめ対象をかしめるようにしたかしめ工具であって、前記プレスダイスホルダのピストン装着ピンと前記ピストンの嵌合穴との間に形成される筒状隙間内に前記ピストン装着ピンおよびピストンより軟質材料からなる筒状緩衝材が介装されていることを特徴としている。
【0014】
本発明1のかしめ工具において、上記軟質材料は、ピストン装着ピンおよびピストンより軟質であれば、特に限定されないが、ウレタンゴム(他の好ましい材料がありましたら記載してください)が好適である。
また、上記筒状緩衝材として、ウレタンゴム製のものを用いる場合、ゴム硬度は、Hs 80°以上が好ましく、HS90°のものが最も好ましい。
【0015】
本発明の請求項3に記載のかしめ工具(以下、「本発明2のかしめ工具」と記す)は、ピストンと、このピストンを進退自在に支持するシリンダと、前記ピストン先端に設けられた嵌合穴に嵌脱自在なピストン装着ピンを有するプレスダイスホルダと、一側がシリンダヘッドのヨークダイス枢支部に回動自在に枢支され、他側に係止部を有するヨークダイスと、シリンダヘッドのピストン軸をはさんでヨークダイス枢支部の反対側に設けられたラッチ枢支部に枢支され、前記ヨークダイスがかしめ位置まで回動した状態で、ヨークダイスの係止部がラッチ部に係脱可能となるように設けられたヨークダイス固定用ラッチとを備え、前記プレスダイスホルダに支持されたプレスダイスと、前記かしめ位置にあるヨークダイスとの間でかしめ対象をかしめるようにしたかしめ工具であって、前記ヨークダイスの係止部が前記ヨークダイス固定用ラッチのラッチ部に係止されていない状態で、かしめ対象のかしめ動作を行ったときのピストン先端部の最大たわみ変形時において、変形方向のピストン壁面とシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁面とを非接触状態とするピストンの変形許容隙間を形成する切欠が、ピストン先端部およびシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁の少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴としている。
本発明2のかしめ工具において、最大たわみ変形時とは、ヨークダイスの係止部をまったくラッチ部に係止させていない状態で、かしめ動作を行ったときに、かかる力F1によってピストンの先端部がたわみ変形する時を意味する。そして、一旦変形したピストンはその後、ほとんどその変形状態が保たれる。
【0016】
本発明2のかしめ工具において、変形許容隙間は、少なくともヨークダイス固定用ラッチの枢支側のピストン先端部またはシリンダの先端部内壁に設けられていればよく、全周に設けられていてもよい。
本発明2のかしめ工具は、特に限定されないが、上記変形許容隙間内にピストンおよびシリンダより軟質の材料で形成された緩衝材が介装されている構成としてもよい。
また、上記緩衝材としては、特に限定されないが、本発明1のかしめ工具の軟質材料と同様のウレタンゴムでもよいし、上記ウレタンゴムより軟質のゴムであってもよい。
【0017】
本発明1および本発明2のかしめ工具は、特に限定されないが、たとえば、特許文献1に記載の分割ダイスのように、プレスダイスが、正常にプレスダイスホルダに装着されていないと、ヨークダイスとの間で正常にかしめ対象をかしめることができない非対称形状となっている場合、正常装着姿勢の一姿勢のみ、すなわち、プレスダイスのかしめ突条が、他方の分割ダイスであるヨークダイスのかしめ突条に軸方向に少しずれてかみ合う姿勢のみに正常に装着され、その他の姿勢の時には、プレスダイスをプレスダイス支持部に装着できないようにするプレスダイスの装着姿勢の位置決め構造がプレスダイスおよびプレスダイス支持部に設けられている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明1のかしめ工具は、上記のように、プレスダイスホルダのピストン装着ピンとピストンの嵌合穴との間の筒状隙間内に前記ピストン装着ピンおよびピストンより軟質材料からなる筒状緩衝材が介装されているので、偏荷重によってピストン軸に交差する方向に大きな力がかかっても、まず、筒状緩衝材が変形する、あるいは,ひびわれる。
したがって、ピストンやピストン装着ピンに大きな力が加わらず、ピストンの外壁面やシリンダ内壁面の変形、この変形による動作不良やピストン装着ピンの変形や折れを防止することができる。
すなわち、ヨークダイス固定用ラッチの先端係止部がヨークダイスの係止部に半係止状態あるいは非係止状態でかしめ動作を行ったことが原因となるかしめ工具の動作不良や破損を防止することができる。
【0019】
本発明2のかしめ工具は、上記のように、ヨークダイスの係止部がヨークダイス固定用ラッチのラッチ部に係止されていない状態で、かしめ対象のかしめ動作を行ったときのピストン先端部の最大たわみ変形時において、変形方向のピストン壁面とシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁面とを非接触状態とするピストンの変形許容隙間を形成する切欠が、ピストン先端部およびシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁の少なくともいずれか一方に設けられているので、偏荷重によってピストン軸に交差する方向に大きな力がかかって、ピストンの先端部が力のベクトル方向にたわみ変形しても、ピストンがシリンダの元の位置まで戻るとき、変形部が変形許容隙間内に入り込むため、ピストンが元の位置までもどる。
すなわち、ピストン先端部の変形によるかしめ工具の動作不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明1のかしめ工具の第1の実施の形態をあらわす正面図である。
【図2】図1のかしめ工具のシリンダヘッド部分の斜視図である。
【図3】図1のかしめ工具の要部の一部切欠断面図である。
【図4】図1のかしめ工具のプレスダイスホルダからプレスダイスを取り外した状態を説明する図である。
【図5】図1のかしめ工具のピストンからプレスダイスホルダを取り外した状態を説明する図である。
【図6】本発明2のかしめ工具の第1の実施の形態をあらわし、その要部の一部切欠断面図である。
【図7】本発明2のかしめ工具の第2の実施の形態をあらわし、その要部の一部切欠断面図である。
【図8】本発明2のかしめ工具の第3の実施の形態をあらわし、その要部の一部切欠断面図である。
【図9】図8のかしめ工具の動作を説明する図である。
【図10】参考例のかしめ工具の要部のプレスダイスを取り外した状態の一部切欠断面図である。
【図11】圧縮継手の1例をあらわす正面半断面図である。
【図12】従来のかしめ工具をあらわす正面図である。
【図13】図12のかしめ工具の要部一部切欠断面図である。
【図14】図13の半係止状態におけるかしめ時の力のかかり方を説明する図である。
【図15】非係止状態におけるかしめ時の力のかかり方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図5は、本発明にかかるかしめ工具の第1の実施の形態をあらわしている。
【0022】
図1に示すように、このかしめ工具Aは、工具本体1と、ヨークダイス固定用ラッチ(以下、「ラッチ」とのみ記す)2と、ヨークダイス3と、プレスダイスホルダ4aと、プレスダイス5とを備えている。
工具本体1は、シリンダ11とこのシリンダ11に進退自在に支持されたピストン12とを備えている。
【0023】
シリンダ11は、シリンダヘッド11aの中央部でに設けられたピストン孔11bを介してピストン12が出没するようになっている。
また、シリンダヘッド11aは、ピストン孔11bを挟んで一側にラッチ枢支部11cを備え、他側にヨークダイス枢支部11dを備えている。
ピストン12は、操作レバー13を押圧操作することによって、電動油圧装置によってシリンダヘッド11aから突出する方向に移動する。一方、リリースレバー14を押圧すれば、シリンダ11内に設けられたコイルばね11eの付勢力によってシリンダ11内に戻るようになっている。
【0024】
また、ピストン12は、その先端に、プレスダイスホルダ4aのピストン装着ピン42が嵌合する嵌合穴12aが穿設されている。
そして、ピストン12の壁面には、ラッチ枢支部11cの枢支軸およびヨークダイス枢支部11dの枢支軸に平行に嵌合穴12aまで貫通するねじ孔12bが穿設されている。
【0025】
プレスダイスホルダ4aは、ホルダ本体41と、ピストン装着ピン42を備えている。
ホルダ本体41は、ラッチ枢支部11cとヨークダイス枢支部11dとの間に収まるようになっていて、一側にプレスダイス受部41aが設けられている。
ホルダ本体41の側壁面には、プレスダイス固定用ピン挿通孔41bが穿設されている。
【0026】
プレスダイス受部41aには、プレスダイス5の位置決め突起41cが突設されている。
位置決め突起41cは、プレスダイス受部41aの長手方向中央より一側にずれて設けられている。
ピストン装着ピン42は、プレスダイス受部41aの背面から突出するように設けられ、直径が嵌合穴12aの直径より小径で、硬度HS90°のウレタンゴムからなる筒状緩衝材6が外嵌されている。
ピストン装着ピン42には、ねじ受け孔42aが穿設されている。
なお、ねじ受け孔42aに代えてねじ受け凹部や凹溝をピストン装着ピン42の壁面に設けるようにしても構わない。
【0027】
筒状緩衝材6は、嵌合穴12aの直径とほぼ同じか少し大きな外径をしていて、嵌合穴12aの直径とピストン装着ピン42の外径との差のほぼ1/2の肉厚をした円筒形状をしている。
また、筒状緩衝材6は、ピストン装着ピン42のねじ受け孔42aに対応する位置に同様にねじ受け孔61が穿設されている。
【0028】
そして、プレスダイスホルダ4aは、以下のようにして、ピストン12に装着固定される。
すなわち、図2に示すように、ピストン12の先端部がシリンダヘッド11aから突出し、ねじ孔12bが外部に露出した状態に保持したのち、ホルダ本体41のプレスダイス受部41aの背面が、ピストン12の先端面に受けられるまでピストン装着ピン42および筒状緩衝材6を嵌合穴12a内に嵌合させる。そして、位置決め突起41cがプレスダイス受部41aの中央よりラッチ枢支部11c側にくるように、ねじ受け孔42a、61とねじ孔12bとを一致させたのち、固定ねじ(図示せず)をねじ孔12bにねじ込み、その先端部をねじ受け孔42a、61内に臨ませる。
【0029】
プレスダイス5は、図示していないが、プレスダイス受部41aの位置決め突起41cに対応する位置に位置決め穴が穿設されていて、この位置決め穴に位置決め突起41cが嵌合するようにプレスダイスホルダ4aに装着することによって常にヨークダイス3との間で正常かしめが行える姿勢に装着されるようになっている。
そして、プレスダイス5は、上記のように装着した状態でプレスダイス固定用ピン挿通孔41bを介して図示していないピン受け穴にダイス固定ピン51を差し込むことによってプレスダイスホルダ4aに固定されるようになっている。
【0030】
ヨークダイス3は、ダイス本体部31と、係止部32と、アーム部33とを備えている。
【0031】
アーム部33は、ダイス本体部31の他側から延出してその先端がヨークダイス枢支部11dに着脱可能に枢支されている。
【0032】
ラッチ2は、その一側がヨークダイス3の係止部32に係止するラッチ部21になっているとともに、他側にハンドル22を備え、他側がヨークダイス3の係止部32に係止するラッチ部21になっているとともに、ハンドル22の根元の部分でラッチ枢支部11cに枢支されている。
また、ラッチ2は、コイルばね24によってハンドル22がシリンダから遠ざかる方向に付勢されている。
ラッチ部21は、係止部32が係合する係合凹部21aが設けられている。
【0033】
このかしめ工具Aは、上記のように、ピストン装着ピン42と、嵌合穴12aとの間に筒状隙間が形成され、この隙間に筒状緩衝材6が介装されているので、係止部32がラッチ部21に半係止状態や非係止状態でかしめ動作を行い、偏荷重発生時にピストン軸に交差する方向に大きな力がかかっても、まず、筒状緩衝材6が変形するため、ピストン装着ピン42の破損や変形するような力が加わらない。また、ピストン12の先端部が大きくたわんで変形することがない。
すなわち、ラッチ2のラッチ部21がヨークダイス3の係止部32に半係止状態あるいは非係止状態でかしめ動作を行ったとしても、かしめ工具Aの動作不良や破損を防止することができる。
【0034】
なお、上記かしめ工具Aでは、筒状緩衝材6が、ピストン装着ピン42に外嵌された状態で、ピストン装着ピン42とともに、嵌合穴12aに嵌合されるようになっていたが、筒状緩衝材6を嵌合穴12aに嵌合したのち、ピストン装着ピン42を筒状緩衝材6に嵌合するようにしても構わない。
【0035】
図6は、本発明2のかしめ工具Bの第1の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、このかしめ工具Bは、以下の構成が、上記かしめ工具Aと異なっている以外は、上記かしめ工具Aと同じ構成となっている。したがって、かしめ工具Aと同じ構成部分は同じ符号を付している。
【0036】
すなわち、このかしめ工具Bは、シリンダ11の先端部内周面に全周にわたってリング切欠14が設けられ、この切欠14によってシリンダ11とピストン12との間に変形許容隙間S1がリング状に形成されている。
また、このかしめ工具Bは、プレスダイスホルダ4bのシリンダ装着ピン41bの外径が嵌合穴12aの内径とほぼ同じになっていて、筒状緩衝材6が設けられていない。
【0037】
このかしめ工具Bは、上記のように変形許容隙間S1を備えているので、係止部32がラッチ部21に非係止状態でかしめ動作を行ったとき、偏荷重によってピストン軸に交差する方向に大きな力がかかり、ピストン12の先端部がラッチ2の枢支軸方向にたわんで変形しても、ピストン12の変形した先端部が、変形許容隙間S1内に入り込む。すなわち、ピストン12に先端部に変形が生じても、ピストン12の変形部がピストン孔の先端部壁面にひっかかり、所定位置まで戻らなくなるという問題がなくなる。
【0038】
なお、上記かしめ工具Bでは、変形許容隙間S1がリング状に形成されていたが、偏荷重がかかる方向にのみ変形許容隙間を設けるようにしても構わない。
【0039】
図7は、本発明2のかしめ工具の第2の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、このかしめ工具Cは、以下の構成が、上記かしめ工具Aと異なっている以外は、上記かしめ工具Aと同じ構成となっている。したがって、かしめ工具Aと同じ構成部分は同じ符号を付している。
【0040】
すなわち、このかしめ工具Cは、ピストン12の先端部に全周にわたってリング状に切切欠12dが欠かれた状態に縮径していて、この縮径部によって、変形許容隙間S2がシリンダ11とピストン12との間にリング状に形成されている。
また、このかしめ工具Cは、プレスダイスホルダ4bのシリンダ装着ピン42の外径が嵌合穴12aの内径とほぼ同じになっていて、筒状緩衝材6が設けられていない。
【0041】
このかしめ工具Cは、上記のように変形許容隙間S2を備えているので、係止部32がラッチ部21に非係止状態でかしめ動作を行って、偏荷重によってピストン軸に交差する方向に大きな力がかかり、ピストン12の先端部がラッチ2の枢支軸方向にたわんで変形しても、ピストン12の変形した先端部が、変形許容隙間S2内に入り込む。
すなわち、ピストン12に先端部に変形が生じても、ピストン12の変形部がピストン孔の先端部壁面にひっかかり、所定位置まで戻らなくなるという問題がなくなる。
なお、上記かしめ工具Cでは、変形許容隙間S2がピストン孔11bの先端部とピストン12との間にリング状に形成されていたが、偏荷重がかかる方向にのみ変形許容隙間を設けるようにしても構わない。
【0042】
図8および図9は、本発明2のかしめ工具の第3の実施の形態をあらわしている。
図8および図9に示すように、このかしめ工具Dは、ラッチ2のラッチ部21とヨークダイス3の係止部32との係止状態を維持するラッチロック機構7を備えている以外は、上記かしめ工具Bと同じ構成となっている。したがって、同じ構成部分はかしめ工具Bと同じ符号を付している。
【0043】
すなわち、ラッチロック機構7は、弾性係止部材7aと、ロック部材7bとを備えている。
弾性係止部材7aは、板ばね材を加工して形成されていて、固定部71と、弾性部72とを備えている。
固定部71は、ラッチ2のラッチ部21側の先端面に固定されている。
【0044】
弾性部72は、ラッチ部21の外壁面にほぼ平行に配置される平行部72aと、この平行部72aと固定部71とを接続する傾斜部72bとを備えている。
平行部72aは、ラッチ2との間に弾性変形を許容する隙間S3を形成するように設けられているとともに、傾斜部72bの近傍にラッチ2側に向かって凹設された係合凹溝72cを備えている。
係合凹溝72cは、ラッチ2の枢支軸に平行に設けられている。
【0045】
ロック部材7bは、鋼線やステンレス鋼線を折り曲げ加工して形成されていて、係合部73と、この係合部73の両側から平行に脚部74を備えた略冂の字形をしている。
両脚部74は、ヨークダイス3を両側から挟むとともに、係止部32の近傍で両端部がヨークダイス3に枢支されている。
すなわち、ロック部材7bが両脚部74の枢支軸を中心に回動自在になっている。
【0046】
そして、このかしめ工具Dは、図8に示すように、係止部32がラッチ部21に正常に係止した状態で、ロック部材7bの係合部73が係合凹溝72cに係合して、ロック部材7bの回動が抑止されて、係止部32のラッチ部21への正常な係止状態が維持できる。
一方、図9に示すように、平行部72aの先端側を指で押さえて、係合部73の係合凹溝72cへの係合が解除されるように弾性部72をたわませたのち、ロック部材7bを矢印方向に回動させてロックを解除すれば、ラッチ2のハンドル22をシリンダ11側に押圧することによって、ラッチ部21の係止部32への係止が解除される。
また、再び、ロック状態に戻す場合、ヨークダイス3の係止部32をラッチ2のラッチ部21に正常に係止させたのち、ロック部材7bを回動させればよい。すなわち、ロック部材7bを回動させていくと、まず、係合部73が傾斜部72bに当接し、傾斜部72bのテーパによって、弾性部72がラッチ2側に弾性変形し、係合部73が係合凹溝72cのところまでくると、弾性部72が弾性復元して係合部73が係合凹溝72cに係合する。
【0047】
このかしめ工具Dは、ラッチロック機構7を備えているので、半係止状態および非係止状態を確実に防げる。もし、万一、半係止状態および非係止状態で操作スイッチが誤って押されて、ピストン12が作動しても、上記かしめ工具Bと同様に、ピストン12の変形した先端部が、変形許容隙間S1内に入り込む。すなわち、ピストン12に先端部に変形が生じても、ピストン12の変形部がピストン孔の先端部壁面にひっかかり、所定位置まで戻らなくなるという問題がなくなる。
【0048】
なお、上記ラッチロック機構7は、図12に示すような従来のかしめ工具200に設けるようにしても構わない。
【0049】
図10は、かしめ工具の参考例をあらわしている。
このかしめ工具Eは、プレスダイスホルダ4cのピストン装着ピン44が以下の構成となっている以外は、上記かしめ工具Bと同様になっている。したがって、同じ構成部分はかしめ工具Bと同じ符号を付している。
【0050】
すなわち、図10に示すように、ピストン装着ピン44は、ピン本体44aと、ワッシャ44bと、eリング44cとを備えている。
ピン本体44aは、ホルダ本体41側から大径部44d、小径部44e、ワッシャ固定部44fとから構成されている。
【0051】
ワッシャ固定部44fは、小径部44eの先端から延出するように設けられていて、小径部44eより小径で、ワッシャ44bの内径より大きな径をしている。
また、ワッシャ固定部44fは、図示していないが、その先端側にeリング44cの係合溝が設けられている。
【0052】
ワッシャ44bは、大径部44dとほぼ同じ外径をしていて、ワッシャ固定部44fに嵌合したのち、eリング44cをワッシャ固定部44fの係合溝に係合させることによって、ピン本体44aに固定されている。
そして、プレスダイスホルダ4cは、上記のようにワッシャ44bが固定されたピン本体44aを嵌合穴12aに挿入し、固定ねじ12cをねじ孔12bにねじ込み、固定ねじ12cの先端部を、大径部44dとワッシャ44bと小径部44eとによって形成される係合溝44j内に臨ませることによって、ピストン12に装着固定されるようになっている。
【0053】
このかしめ工具Eは、上記のようになっているので、半係止状態あるいは非係止状態で偏荷重が発生した場合、ワッシャ44bが容易に外れてプレスダイスホルダ4cがピストン12から離脱しやすい。したがって、ピストン12に大きな力が加わり、ピストン12に先端部外壁面と、シリンダ11の内壁面とが接触して変形することを防止できる。
【0054】
しかし、このかしめ工具Eの場合、半係止状態や非係止状態でかしめを行うことのよって容易にワッシャ44bが離脱するが、ワッシャ44bが離脱する際に、ワッシャ44bやeリング44cの変形を生じるため、繰り返し使用ができない場合がある。
また、ワッシャ44bが離脱した状態でピン本体44aを嵌合穴12aに挿入するだけでも、かしめは可能であるが、しっかりと、プレスダイスホルダ4cを支持していないと、かしめ不良になるおそれがある。
【0055】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記かしめ工具Dのラッチロック機構7は、上記かしめ工具A、C、Eに付加するようにしても構わない。
上記かしめ工具B,Cは、ピストン装着ピン42に代えて上記Eのピストン装着ピン44を採用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
A,B,C,D かしめ工具
1 工具本体
11 シリンダ
11a シリンダヘッド
11b ピストン孔
11c ラッチ枢支部
11d ヨークダイス枢支部
12 ピストン
12a 嵌合穴
12d 切欠
14 切欠
2 ヨークダイス固定用ラッチ
3 ヨークダイス
21 ラッチ部
21a 係合穴
31 ダイス本体
32 係止部
33 アーム
4a,4b,4c プレスダイスホルダ
41 ホルダ本体
41c 位置決め突起
42 ピストン装着ピン
5 プレスダイス
6 筒状緩衝材
S1,S2 変形許容隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、給水・給湯用として用いられる可撓性を有する合成樹脂製あるいは複合管を他の配管材と接続するために用いる圧縮継手のスリーブをかしめるために用いるかしめ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの床下に給水・給湯用として配管される架橋ポリエチレン管や、アルミニウムの芯層を挟んで内外層にポリエチレンなどの合成樹脂層が形成された複合管などの柔軟管を他の配管材と接続するために、図11に示すような圧縮継手(たとえば、積水化学工業株式会社の商品名メタキュット、メタキュットREDなど)100が用いられている。
【0003】
この圧縮継手100は、図11に示すように、柔軟管Pの端部をニップル部110に差し込んだのち、スリーブ120をヨークダイス230と、プレスダイス250との間でかしめて柔軟管Pの端部をニップル部110とかしめられたスリーブ120との間で挟み込むようになっている。なお、図11中、130はかしめ作業を行った場合、ダイス間ではさまれて破損し、天井や床下などのかしめ状態が視認しにくい場合でも、かしめが行われていることを容易に確認できて、かしめ忘れ作業を防止することができるようにした樹脂リングである。
【0004】
また、上記のような圧縮継手100のスリーブ120をかしめるために、図12および図13に示すようなかしめ工具200が用いられている(特許文献1,2参照)。
このかしめ工具200は、工具本体210と、ヨークダイス固定用ラッチ(以下、「ラッチ」とのみ記す)220と、ヨークダイス230と、プレスダイスホルダ240と、プレスダイス250とを備えている。
工具本体210は、シリンダ211と、ピストン212とを備えている。
【0005】
ピストン212は、油圧によって進退し、その先端部がシリンダヘッド211aから出没するようになっている。
シリンダ211は、シリンダヘッド211aの一側にラッチ220を枢支するラッチ枢支部211bを有し、他側にヨークダイス230を枢支するヨークダイス枢支部211cを備えている。
【0006】
ラッチ220は、一端にラッチ部221、他端にハンドル222を有し、ハンドル222の基端部がラッチ枢支部211bの先端に枢支されている。
ラッチ部221は、後述するヨークダイス230の係止部231が係合する係合穴221aを備えている。
そして、ラッチ220は、コイルばね224によってラッチ部221がヨークダイス方向に付勢されている。
【0007】
ヨークダイス230は、ダイス本体部231と、係止部232と、アーム部233とを備えている。
そして、ヨークダイス230は、アーム部233の先端がヨークダイス枢支部211cに枢支されて、回動自在になっているとともに、係止部232が上記係合穴221aにはまり込んで、ラッチ220によって上記回動を抑止されるようになっている。
【0008】
そして、このかしめ工具200は、以下のようにして圧縮継手100のスリーブ120をかしめる(圧縮する)ようになっている。
(1)図13に示すように、ハンドル222を押さえて、ラッチ220のラッチ部221をヨークダイス230の係止部232から遠ざかるように回動させて、係合穴221aへの係止部232の係止を解除したのち、ヨークダイス230をラッチから離れる方向に回動させて、ヨークダイス230と、プレスダイスホルダ240に装着されたプレスダイス250との間隔を広げた状態で、ヨークダイス230と、プレスダイス250との間に、圧縮継手100のスリーブ120部分を臨ませる。
(2)ヨークダイス230を(1)工程と反対側に回動させて、ラッチ部221の係合穴221aに係止部232を係止させる。
(3)工具本体210の操作レバー215を操作して、ピストン212を油圧によってヨークダイス230側に進出させてスリーブ120をプレスダイス250によってヨークダイス230側にプレスすることによってかしめる。
図12中、216はリリースレバーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-64218号公報
【特許文献2】特開2011-122648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のかしめ工具200には、まれにであるが、ピストン212の先端部が変形してリリースレバー216を操作しても、ピストン212がシリンダ211の所定位置まで戻りきらなくなってしまい、圧縮継手100をヨークダイス230と、プレスダイス250との間にうまくセットできなかったり、プレスダイスホルダ240のピストン装着ピン241が折れてしまったりする問題などが発生した。
そこで、本発明の発明者がその原因について検討したところ、作業者によっては、図14に示すように、ヨークダイス230の係止部232がラッチ部221の係合穴221aに半係止状態や、図15に示すように、まったく係止されていない状態(以下、「非係止状態」と記す)であることを確認せず、あるいは、誤って操作レバー215を操作してしまうために、上記問題を発生させることがわかった。
【0011】
すなわち、図15に示す非係止状態での、かしめ時の工具出力荷重は、ヨークダイスのみに掛かっている。したがって、ピストン軸に対して図15でみて斜め下方向の偏荷重によって、ピストン軸に交差する方向の力F1が発生する。そして、この力F1によって、シリンダヘッド211a外に突出したピストン212の先端部が力F1方向にたわみ変形する。したがって、この変形したピストン212の先端部がシリンダ孔の先端で支えて元に戻らずシリンダヘッド211aから突出した状態になってしまう。
また、上記のような力F1が加わると、プレスダイスホルダ240のピストン装着ピン241が変形する、あるいは、折れたりする。
一方、図14に示す半係止状態での、かしめ時の工具出力荷重は、ヨークダイス、ラッチの双方に掛かっていため、出力荷重の方向は、やはり、図14でみて、斜め下向きの偏荷重がかかるが、非係止状態に比べ、ピストン軸に対する角度はそれほど大きくはない。したがって、少ない回数であればそれほど問題がないが、繰り返し半係止状態でのかしめ作業を行うと、非係止状態と同様の問題が起こる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて、ラッチの係合穴とヨークダイスの係止部とが半係止状態あるいは非係止状態でかしめ動作が行なわれた場合であっても、ピストンの変形、この変形による動作不良やプレスダイスホルダのピストン装着ピンの変形や折れを極力防止することができるかしめ工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のかしめ工具(以下、「本発明1のかしめ工具」と記す)は、ピストンと、このピストンを進退自在に支持するシリンダと、
前記ピストン先端に設けられた嵌合穴に嵌脱自在なピストン装着ピンを有するプレスダイスホルダと、一側がシリンダヘッドのヨークダイス枢支部に回動自在に枢支され、他側に係止部を有するヨークダイスと、シリンダヘッドのピストン軸をはさんでヨークダイス枢支部の反対側に設けられたラッチ枢支部に枢支され、前記ヨークダイスがかしめ位置まで回動した状態で、ヨークダイスの係止部がラッチ部に係脱可能となるように設けられたヨークダイス固定用ラッチとを備え、前記プレスダイスホルダに支持されたプレスダイスと、前記かしめ位置にあるヨークダイスとの間でかしめ対象をかしめるようにしたかしめ工具であって、前記プレスダイスホルダのピストン装着ピンと前記ピストンの嵌合穴との間に形成される筒状隙間内に前記ピストン装着ピンおよびピストンより軟質材料からなる筒状緩衝材が介装されていることを特徴としている。
【0014】
本発明1のかしめ工具において、上記軟質材料は、ピストン装着ピンおよびピストンより軟質であれば、特に限定されないが、ウレタンゴム(他の好ましい材料がありましたら記載してください)が好適である。
また、上記筒状緩衝材として、ウレタンゴム製のものを用いる場合、ゴム硬度は、Hs 80°以上が好ましく、HS90°のものが最も好ましい。
【0015】
本発明の請求項3に記載のかしめ工具(以下、「本発明2のかしめ工具」と記す)は、ピストンと、このピストンを進退自在に支持するシリンダと、前記ピストン先端に設けられた嵌合穴に嵌脱自在なピストン装着ピンを有するプレスダイスホルダと、一側がシリンダヘッドのヨークダイス枢支部に回動自在に枢支され、他側に係止部を有するヨークダイスと、シリンダヘッドのピストン軸をはさんでヨークダイス枢支部の反対側に設けられたラッチ枢支部に枢支され、前記ヨークダイスがかしめ位置まで回動した状態で、ヨークダイスの係止部がラッチ部に係脱可能となるように設けられたヨークダイス固定用ラッチとを備え、前記プレスダイスホルダに支持されたプレスダイスと、前記かしめ位置にあるヨークダイスとの間でかしめ対象をかしめるようにしたかしめ工具であって、前記ヨークダイスの係止部が前記ヨークダイス固定用ラッチのラッチ部に係止されていない状態で、かしめ対象のかしめ動作を行ったときのピストン先端部の最大たわみ変形時において、変形方向のピストン壁面とシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁面とを非接触状態とするピストンの変形許容隙間を形成する切欠が、ピストン先端部およびシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁の少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴としている。
本発明2のかしめ工具において、最大たわみ変形時とは、ヨークダイスの係止部をまったくラッチ部に係止させていない状態で、かしめ動作を行ったときに、かかる力F1によってピストンの先端部がたわみ変形する時を意味する。そして、一旦変形したピストンはその後、ほとんどその変形状態が保たれる。
【0016】
本発明2のかしめ工具において、変形許容隙間は、少なくともヨークダイス固定用ラッチの枢支側のピストン先端部またはシリンダの先端部内壁に設けられていればよく、全周に設けられていてもよい。
本発明2のかしめ工具は、特に限定されないが、上記変形許容隙間内にピストンおよびシリンダより軟質の材料で形成された緩衝材が介装されている構成としてもよい。
また、上記緩衝材としては、特に限定されないが、本発明1のかしめ工具の軟質材料と同様のウレタンゴムでもよいし、上記ウレタンゴムより軟質のゴムであってもよい。
【0017】
本発明1および本発明2のかしめ工具は、特に限定されないが、たとえば、特許文献1に記載の分割ダイスのように、プレスダイスが、正常にプレスダイスホルダに装着されていないと、ヨークダイスとの間で正常にかしめ対象をかしめることができない非対称形状となっている場合、正常装着姿勢の一姿勢のみ、すなわち、プレスダイスのかしめ突条が、他方の分割ダイスであるヨークダイスのかしめ突条に軸方向に少しずれてかみ合う姿勢のみに正常に装着され、その他の姿勢の時には、プレスダイスをプレスダイス支持部に装着できないようにするプレスダイスの装着姿勢の位置決め構造がプレスダイスおよびプレスダイス支持部に設けられている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明1のかしめ工具は、上記のように、プレスダイスホルダのピストン装着ピンとピストンの嵌合穴との間の筒状隙間内に前記ピストン装着ピンおよびピストンより軟質材料からなる筒状緩衝材が介装されているので、偏荷重によってピストン軸に交差する方向に大きな力がかかっても、まず、筒状緩衝材が変形する、あるいは,ひびわれる。
したがって、ピストンやピストン装着ピンに大きな力が加わらず、ピストンの外壁面やシリンダ内壁面の変形、この変形による動作不良やピストン装着ピンの変形や折れを防止することができる。
すなわち、ヨークダイス固定用ラッチの先端係止部がヨークダイスの係止部に半係止状態あるいは非係止状態でかしめ動作を行ったことが原因となるかしめ工具の動作不良や破損を防止することができる。
【0019】
本発明2のかしめ工具は、上記のように、ヨークダイスの係止部がヨークダイス固定用ラッチのラッチ部に係止されていない状態で、かしめ対象のかしめ動作を行ったときのピストン先端部の最大たわみ変形時において、変形方向のピストン壁面とシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁面とを非接触状態とするピストンの変形許容隙間を形成する切欠が、ピストン先端部およびシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁の少なくともいずれか一方に設けられているので、偏荷重によってピストン軸に交差する方向に大きな力がかかって、ピストンの先端部が力のベクトル方向にたわみ変形しても、ピストンがシリンダの元の位置まで戻るとき、変形部が変形許容隙間内に入り込むため、ピストンが元の位置までもどる。
すなわち、ピストン先端部の変形によるかしめ工具の動作不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明1のかしめ工具の第1の実施の形態をあらわす正面図である。
【図2】図1のかしめ工具のシリンダヘッド部分の斜視図である。
【図3】図1のかしめ工具の要部の一部切欠断面図である。
【図4】図1のかしめ工具のプレスダイスホルダからプレスダイスを取り外した状態を説明する図である。
【図5】図1のかしめ工具のピストンからプレスダイスホルダを取り外した状態を説明する図である。
【図6】本発明2のかしめ工具の第1の実施の形態をあらわし、その要部の一部切欠断面図である。
【図7】本発明2のかしめ工具の第2の実施の形態をあらわし、その要部の一部切欠断面図である。
【図8】本発明2のかしめ工具の第3の実施の形態をあらわし、その要部の一部切欠断面図である。
【図9】図8のかしめ工具の動作を説明する図である。
【図10】参考例のかしめ工具の要部のプレスダイスを取り外した状態の一部切欠断面図である。
【図11】圧縮継手の1例をあらわす正面半断面図である。
【図12】従来のかしめ工具をあらわす正面図である。
【図13】図12のかしめ工具の要部一部切欠断面図である。
【図14】図13の半係止状態におけるかしめ時の力のかかり方を説明する図である。
【図15】非係止状態におけるかしめ時の力のかかり方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図5は、本発明にかかるかしめ工具の第1の実施の形態をあらわしている。
【0022】
図1に示すように、このかしめ工具Aは、工具本体1と、ヨークダイス固定用ラッチ(以下、「ラッチ」とのみ記す)2と、ヨークダイス3と、プレスダイスホルダ4aと、プレスダイス5とを備えている。
工具本体1は、シリンダ11とこのシリンダ11に進退自在に支持されたピストン12とを備えている。
【0023】
シリンダ11は、シリンダヘッド11aの中央部でに設けられたピストン孔11bを介してピストン12が出没するようになっている。
また、シリンダヘッド11aは、ピストン孔11bを挟んで一側にラッチ枢支部11cを備え、他側にヨークダイス枢支部11dを備えている。
ピストン12は、操作レバー13を押圧操作することによって、電動油圧装置によってシリンダヘッド11aから突出する方向に移動する。一方、リリースレバー14を押圧すれば、シリンダ11内に設けられたコイルばね11eの付勢力によってシリンダ11内に戻るようになっている。
【0024】
また、ピストン12は、その先端に、プレスダイスホルダ4aのピストン装着ピン42が嵌合する嵌合穴12aが穿設されている。
そして、ピストン12の壁面には、ラッチ枢支部11cの枢支軸およびヨークダイス枢支部11dの枢支軸に平行に嵌合穴12aまで貫通するねじ孔12bが穿設されている。
【0025】
プレスダイスホルダ4aは、ホルダ本体41と、ピストン装着ピン42を備えている。
ホルダ本体41は、ラッチ枢支部11cとヨークダイス枢支部11dとの間に収まるようになっていて、一側にプレスダイス受部41aが設けられている。
ホルダ本体41の側壁面には、プレスダイス固定用ピン挿通孔41bが穿設されている。
【0026】
プレスダイス受部41aには、プレスダイス5の位置決め突起41cが突設されている。
位置決め突起41cは、プレスダイス受部41aの長手方向中央より一側にずれて設けられている。
ピストン装着ピン42は、プレスダイス受部41aの背面から突出するように設けられ、直径が嵌合穴12aの直径より小径で、硬度HS90°のウレタンゴムからなる筒状緩衝材6が外嵌されている。
ピストン装着ピン42には、ねじ受け孔42aが穿設されている。
なお、ねじ受け孔42aに代えてねじ受け凹部や凹溝をピストン装着ピン42の壁面に設けるようにしても構わない。
【0027】
筒状緩衝材6は、嵌合穴12aの直径とほぼ同じか少し大きな外径をしていて、嵌合穴12aの直径とピストン装着ピン42の外径との差のほぼ1/2の肉厚をした円筒形状をしている。
また、筒状緩衝材6は、ピストン装着ピン42のねじ受け孔42aに対応する位置に同様にねじ受け孔61が穿設されている。
【0028】
そして、プレスダイスホルダ4aは、以下のようにして、ピストン12に装着固定される。
すなわち、図2に示すように、ピストン12の先端部がシリンダヘッド11aから突出し、ねじ孔12bが外部に露出した状態に保持したのち、ホルダ本体41のプレスダイス受部41aの背面が、ピストン12の先端面に受けられるまでピストン装着ピン42および筒状緩衝材6を嵌合穴12a内に嵌合させる。そして、位置決め突起41cがプレスダイス受部41aの中央よりラッチ枢支部11c側にくるように、ねじ受け孔42a、61とねじ孔12bとを一致させたのち、固定ねじ(図示せず)をねじ孔12bにねじ込み、その先端部をねじ受け孔42a、61内に臨ませる。
【0029】
プレスダイス5は、図示していないが、プレスダイス受部41aの位置決め突起41cに対応する位置に位置決め穴が穿設されていて、この位置決め穴に位置決め突起41cが嵌合するようにプレスダイスホルダ4aに装着することによって常にヨークダイス3との間で正常かしめが行える姿勢に装着されるようになっている。
そして、プレスダイス5は、上記のように装着した状態でプレスダイス固定用ピン挿通孔41bを介して図示していないピン受け穴にダイス固定ピン51を差し込むことによってプレスダイスホルダ4aに固定されるようになっている。
【0030】
ヨークダイス3は、ダイス本体部31と、係止部32と、アーム部33とを備えている。
【0031】
アーム部33は、ダイス本体部31の他側から延出してその先端がヨークダイス枢支部11dに着脱可能に枢支されている。
【0032】
ラッチ2は、その一側がヨークダイス3の係止部32に係止するラッチ部21になっているとともに、他側にハンドル22を備え、他側がヨークダイス3の係止部32に係止するラッチ部21になっているとともに、ハンドル22の根元の部分でラッチ枢支部11cに枢支されている。
また、ラッチ2は、コイルばね24によってハンドル22がシリンダから遠ざかる方向に付勢されている。
ラッチ部21は、係止部32が係合する係合凹部21aが設けられている。
【0033】
このかしめ工具Aは、上記のように、ピストン装着ピン42と、嵌合穴12aとの間に筒状隙間が形成され、この隙間に筒状緩衝材6が介装されているので、係止部32がラッチ部21に半係止状態や非係止状態でかしめ動作を行い、偏荷重発生時にピストン軸に交差する方向に大きな力がかかっても、まず、筒状緩衝材6が変形するため、ピストン装着ピン42の破損や変形するような力が加わらない。また、ピストン12の先端部が大きくたわんで変形することがない。
すなわち、ラッチ2のラッチ部21がヨークダイス3の係止部32に半係止状態あるいは非係止状態でかしめ動作を行ったとしても、かしめ工具Aの動作不良や破損を防止することができる。
【0034】
なお、上記かしめ工具Aでは、筒状緩衝材6が、ピストン装着ピン42に外嵌された状態で、ピストン装着ピン42とともに、嵌合穴12aに嵌合されるようになっていたが、筒状緩衝材6を嵌合穴12aに嵌合したのち、ピストン装着ピン42を筒状緩衝材6に嵌合するようにしても構わない。
【0035】
図6は、本発明2のかしめ工具Bの第1の実施の形態をあらわしている。
図6に示すように、このかしめ工具Bは、以下の構成が、上記かしめ工具Aと異なっている以外は、上記かしめ工具Aと同じ構成となっている。したがって、かしめ工具Aと同じ構成部分は同じ符号を付している。
【0036】
すなわち、このかしめ工具Bは、シリンダ11の先端部内周面に全周にわたってリング切欠14が設けられ、この切欠14によってシリンダ11とピストン12との間に変形許容隙間S1がリング状に形成されている。
また、このかしめ工具Bは、プレスダイスホルダ4bのシリンダ装着ピン41bの外径が嵌合穴12aの内径とほぼ同じになっていて、筒状緩衝材6が設けられていない。
【0037】
このかしめ工具Bは、上記のように変形許容隙間S1を備えているので、係止部32がラッチ部21に非係止状態でかしめ動作を行ったとき、偏荷重によってピストン軸に交差する方向に大きな力がかかり、ピストン12の先端部がラッチ2の枢支軸方向にたわんで変形しても、ピストン12の変形した先端部が、変形許容隙間S1内に入り込む。すなわち、ピストン12に先端部に変形が生じても、ピストン12の変形部がピストン孔の先端部壁面にひっかかり、所定位置まで戻らなくなるという問題がなくなる。
【0038】
なお、上記かしめ工具Bでは、変形許容隙間S1がリング状に形成されていたが、偏荷重がかかる方向にのみ変形許容隙間を設けるようにしても構わない。
【0039】
図7は、本発明2のかしめ工具の第2の実施の形態をあらわしている。
図7に示すように、このかしめ工具Cは、以下の構成が、上記かしめ工具Aと異なっている以外は、上記かしめ工具Aと同じ構成となっている。したがって、かしめ工具Aと同じ構成部分は同じ符号を付している。
【0040】
すなわち、このかしめ工具Cは、ピストン12の先端部に全周にわたってリング状に切切欠12dが欠かれた状態に縮径していて、この縮径部によって、変形許容隙間S2がシリンダ11とピストン12との間にリング状に形成されている。
また、このかしめ工具Cは、プレスダイスホルダ4bのシリンダ装着ピン42の外径が嵌合穴12aの内径とほぼ同じになっていて、筒状緩衝材6が設けられていない。
【0041】
このかしめ工具Cは、上記のように変形許容隙間S2を備えているので、係止部32がラッチ部21に非係止状態でかしめ動作を行って、偏荷重によってピストン軸に交差する方向に大きな力がかかり、ピストン12の先端部がラッチ2の枢支軸方向にたわんで変形しても、ピストン12の変形した先端部が、変形許容隙間S2内に入り込む。
すなわち、ピストン12に先端部に変形が生じても、ピストン12の変形部がピストン孔の先端部壁面にひっかかり、所定位置まで戻らなくなるという問題がなくなる。
なお、上記かしめ工具Cでは、変形許容隙間S2がピストン孔11bの先端部とピストン12との間にリング状に形成されていたが、偏荷重がかかる方向にのみ変形許容隙間を設けるようにしても構わない。
【0042】
図8および図9は、本発明2のかしめ工具の第3の実施の形態をあらわしている。
図8および図9に示すように、このかしめ工具Dは、ラッチ2のラッチ部21とヨークダイス3の係止部32との係止状態を維持するラッチロック機構7を備えている以外は、上記かしめ工具Bと同じ構成となっている。したがって、同じ構成部分はかしめ工具Bと同じ符号を付している。
【0043】
すなわち、ラッチロック機構7は、弾性係止部材7aと、ロック部材7bとを備えている。
弾性係止部材7aは、板ばね材を加工して形成されていて、固定部71と、弾性部72とを備えている。
固定部71は、ラッチ2のラッチ部21側の先端面に固定されている。
【0044】
弾性部72は、ラッチ部21の外壁面にほぼ平行に配置される平行部72aと、この平行部72aと固定部71とを接続する傾斜部72bとを備えている。
平行部72aは、ラッチ2との間に弾性変形を許容する隙間S3を形成するように設けられているとともに、傾斜部72bの近傍にラッチ2側に向かって凹設された係合凹溝72cを備えている。
係合凹溝72cは、ラッチ2の枢支軸に平行に設けられている。
【0045】
ロック部材7bは、鋼線やステンレス鋼線を折り曲げ加工して形成されていて、係合部73と、この係合部73の両側から平行に脚部74を備えた略冂の字形をしている。
両脚部74は、ヨークダイス3を両側から挟むとともに、係止部32の近傍で両端部がヨークダイス3に枢支されている。
すなわち、ロック部材7bが両脚部74の枢支軸を中心に回動自在になっている。
【0046】
そして、このかしめ工具Dは、図8に示すように、係止部32がラッチ部21に正常に係止した状態で、ロック部材7bの係合部73が係合凹溝72cに係合して、ロック部材7bの回動が抑止されて、係止部32のラッチ部21への正常な係止状態が維持できる。
一方、図9に示すように、平行部72aの先端側を指で押さえて、係合部73の係合凹溝72cへの係合が解除されるように弾性部72をたわませたのち、ロック部材7bを矢印方向に回動させてロックを解除すれば、ラッチ2のハンドル22をシリンダ11側に押圧することによって、ラッチ部21の係止部32への係止が解除される。
また、再び、ロック状態に戻す場合、ヨークダイス3の係止部32をラッチ2のラッチ部21に正常に係止させたのち、ロック部材7bを回動させればよい。すなわち、ロック部材7bを回動させていくと、まず、係合部73が傾斜部72bに当接し、傾斜部72bのテーパによって、弾性部72がラッチ2側に弾性変形し、係合部73が係合凹溝72cのところまでくると、弾性部72が弾性復元して係合部73が係合凹溝72cに係合する。
【0047】
このかしめ工具Dは、ラッチロック機構7を備えているので、半係止状態および非係止状態を確実に防げる。もし、万一、半係止状態および非係止状態で操作スイッチが誤って押されて、ピストン12が作動しても、上記かしめ工具Bと同様に、ピストン12の変形した先端部が、変形許容隙間S1内に入り込む。すなわち、ピストン12に先端部に変形が生じても、ピストン12の変形部がピストン孔の先端部壁面にひっかかり、所定位置まで戻らなくなるという問題がなくなる。
【0048】
なお、上記ラッチロック機構7は、図12に示すような従来のかしめ工具200に設けるようにしても構わない。
【0049】
図10は、かしめ工具の参考例をあらわしている。
このかしめ工具Eは、プレスダイスホルダ4cのピストン装着ピン44が以下の構成となっている以外は、上記かしめ工具Bと同様になっている。したがって、同じ構成部分はかしめ工具Bと同じ符号を付している。
【0050】
すなわち、図10に示すように、ピストン装着ピン44は、ピン本体44aと、ワッシャ44bと、eリング44cとを備えている。
ピン本体44aは、ホルダ本体41側から大径部44d、小径部44e、ワッシャ固定部44fとから構成されている。
【0051】
ワッシャ固定部44fは、小径部44eの先端から延出するように設けられていて、小径部44eより小径で、ワッシャ44bの内径より大きな径をしている。
また、ワッシャ固定部44fは、図示していないが、その先端側にeリング44cの係合溝が設けられている。
【0052】
ワッシャ44bは、大径部44dとほぼ同じ外径をしていて、ワッシャ固定部44fに嵌合したのち、eリング44cをワッシャ固定部44fの係合溝に係合させることによって、ピン本体44aに固定されている。
そして、プレスダイスホルダ4cは、上記のようにワッシャ44bが固定されたピン本体44aを嵌合穴12aに挿入し、固定ねじ12cをねじ孔12bにねじ込み、固定ねじ12cの先端部を、大径部44dとワッシャ44bと小径部44eとによって形成される係合溝44j内に臨ませることによって、ピストン12に装着固定されるようになっている。
【0053】
このかしめ工具Eは、上記のようになっているので、半係止状態あるいは非係止状態で偏荷重が発生した場合、ワッシャ44bが容易に外れてプレスダイスホルダ4cがピストン12から離脱しやすい。したがって、ピストン12に大きな力が加わり、ピストン12に先端部外壁面と、シリンダ11の内壁面とが接触して変形することを防止できる。
【0054】
しかし、このかしめ工具Eの場合、半係止状態や非係止状態でかしめを行うことのよって容易にワッシャ44bが離脱するが、ワッシャ44bが離脱する際に、ワッシャ44bやeリング44cの変形を生じるため、繰り返し使用ができない場合がある。
また、ワッシャ44bが離脱した状態でピン本体44aを嵌合穴12aに挿入するだけでも、かしめは可能であるが、しっかりと、プレスダイスホルダ4cを支持していないと、かしめ不良になるおそれがある。
【0055】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記かしめ工具Dのラッチロック機構7は、上記かしめ工具A、C、Eに付加するようにしても構わない。
上記かしめ工具B,Cは、ピストン装着ピン42に代えて上記Eのピストン装着ピン44を採用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
A,B,C,D かしめ工具
1 工具本体
11 シリンダ
11a シリンダヘッド
11b ピストン孔
11c ラッチ枢支部
11d ヨークダイス枢支部
12 ピストン
12a 嵌合穴
12d 切欠
14 切欠
2 ヨークダイス固定用ラッチ
3 ヨークダイス
21 ラッチ部
21a 係合穴
31 ダイス本体
32 係止部
33 アーム
4a,4b,4c プレスダイスホルダ
41 ホルダ本体
41c 位置決め突起
42 ピストン装着ピン
5 プレスダイス
6 筒状緩衝材
S1,S2 変形許容隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、
このピストンを進退自在に支持するシリンダと、
前記ピストン先端に設けられた嵌合穴に嵌脱自在なピストン装着ピンを有するプレスダイスホルダと、
一側がシリンダヘッドのヨークダイス枢支部に回動自在に枢支され、他側に係止部を有するヨークダイスと、
シリンダヘッドのピストン軸を挟んでヨークダイス枢支部の反対側に設けられたラッチ枢支部に枢支され、前記ヨークダイスがかしめ位置まで回動した状態で、ヨークダイスの係止部がラッチ部に係脱可能となるように設けられたヨークダイス固定用ラッチと
を備え、
前記プレスダイスホルダに支持されたプレスダイスと、前記かしめ位置にあるヨークダイスとの間でかしめ対象をかしめるようにしたかしめ工具であって、
前記プレスダイスホルダのピストン装着ピンと前記ピストンの嵌合穴との間に形成される筒状隙間内に前記ピストン装着ピンおよびピストンより軟質材料からなる筒状緩衝材が介装されていることを特徴とするかしめ工具。
【請求項2】
上記軟質材料がウレタンゴムである請求項1に記載のかしめ工具。
【請求項3】
ピストンと、
このピストンを進退自在に支持するシリンダと、
前記ピストン先端に設けられた嵌合穴に嵌脱自在なピストン装着ピンを有するプレスダイスホルダと、
一側がシリンダヘッドのヨークダイス枢支部に回動自在に枢支され、他側に係止部を有するヨークダイスと、
シリンダヘッドのピストン軸を挟んでヨークダイス枢支部の反対側に設けられたラッチ枢支部に枢支され、前記ヨークダイスがかしめ位置まで回動した状態で、ヨークダイスの係止部がラッチ部に係脱可能となるように設けられたヨークダイス固定用ラッチと
を備え、
前記プレスダイスホルダに支持されたプレスダイスと、前記かしめ位置にあるヨークダイスとの間でかしめ対象をかしめるようにしたかしめ工具であって、
前記ヨークダイスの係止部が前記ヨークダイス固定用ラッチのラッチ部に係止されていない状態で、かしめ対象のかしめ動作を行ったときのピストン先端部の最大たわみ変形時において、変形方向のピストン壁面とシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁面とを非接触状態とするピストンの変形許容隙間を形成する切欠が、ピストン先端部およびシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁の少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴とするかしめ工具。
【請求項4】
上記変形許容隙間にピストンおよびシリンダより軟質の材料で形成された緩衝材が介装されている請求項3に記載のかしめ工具。
【請求項5】
上記緩衝材がウレタンゴムである請求項4に記載のかしめ工具。
【請求項6】
プレスダイスが、かしめ対象の中心軸方向に非対称形状となっていて、正常装着姿勢の一姿勢のみプレスダイスホルダに装着可能にする位置決め構造がプレスダイスおよびプレスダイスホルダに設けられている請求項1〜請求項5のいずれかに記載のかしめ工具。
【請求項1】
ピストンと、
このピストンを進退自在に支持するシリンダと、
前記ピストン先端に設けられた嵌合穴に嵌脱自在なピストン装着ピンを有するプレスダイスホルダと、
一側がシリンダヘッドのヨークダイス枢支部に回動自在に枢支され、他側に係止部を有するヨークダイスと、
シリンダヘッドのピストン軸を挟んでヨークダイス枢支部の反対側に設けられたラッチ枢支部に枢支され、前記ヨークダイスがかしめ位置まで回動した状態で、ヨークダイスの係止部がラッチ部に係脱可能となるように設けられたヨークダイス固定用ラッチと
を備え、
前記プレスダイスホルダに支持されたプレスダイスと、前記かしめ位置にあるヨークダイスとの間でかしめ対象をかしめるようにしたかしめ工具であって、
前記プレスダイスホルダのピストン装着ピンと前記ピストンの嵌合穴との間に形成される筒状隙間内に前記ピストン装着ピンおよびピストンより軟質材料からなる筒状緩衝材が介装されていることを特徴とするかしめ工具。
【請求項2】
上記軟質材料がウレタンゴムである請求項1に記載のかしめ工具。
【請求項3】
ピストンと、
このピストンを進退自在に支持するシリンダと、
前記ピストン先端に設けられた嵌合穴に嵌脱自在なピストン装着ピンを有するプレスダイスホルダと、
一側がシリンダヘッドのヨークダイス枢支部に回動自在に枢支され、他側に係止部を有するヨークダイスと、
シリンダヘッドのピストン軸を挟んでヨークダイス枢支部の反対側に設けられたラッチ枢支部に枢支され、前記ヨークダイスがかしめ位置まで回動した状態で、ヨークダイスの係止部がラッチ部に係脱可能となるように設けられたヨークダイス固定用ラッチと
を備え、
前記プレスダイスホルダに支持されたプレスダイスと、前記かしめ位置にあるヨークダイスとの間でかしめ対象をかしめるようにしたかしめ工具であって、
前記ヨークダイスの係止部が前記ヨークダイス固定用ラッチのラッチ部に係止されていない状態で、かしめ対象のかしめ動作を行ったときのピストン先端部の最大たわみ変形時において、変形方向のピストン壁面とシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁面とを非接触状態とするピストンの変形許容隙間を形成する切欠が、ピストン先端部およびシリンダヘッドのピストン孔先端部内壁の少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴とするかしめ工具。
【請求項4】
上記変形許容隙間にピストンおよびシリンダより軟質の材料で形成された緩衝材が介装されている請求項3に記載のかしめ工具。
【請求項5】
上記緩衝材がウレタンゴムである請求項4に記載のかしめ工具。
【請求項6】
プレスダイスが、かしめ対象の中心軸方向に非対称形状となっていて、正常装着姿勢の一姿勢のみプレスダイスホルダに装着可能にする位置決め構造がプレスダイスおよびプレスダイスホルダに設けられている請求項1〜請求項5のいずれかに記載のかしめ工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−66897(P2013−66897A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205468(P2011−205468)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(310018412)株式会社泉精器製作所 (16)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(310018412)株式会社泉精器製作所 (16)
[ Back to top ]