説明

かつら用ネット

【課題】頭部の自毛の少なくなった部位に被着されるかつら用ネットであって、義毛と自毛との間の違和感がなく、ネットの露見もなく外観美の向上が図れるかつら用ネットを提供する。
【解決手段】頭部の所望箇所に被着される周縁部の内部には隠蔽部3と調整部4と活毛部5とが設けられ、隠蔽部3は人工皮膚または細メッシュのネット状のものからなり、自毛8を引き出す活毛部5は粗いネット状のものからなり、該活毛部はランド部6で細長の開口部9aと四角枠体で囲まれた小開口部9bを設け、また、調整部4は前記活毛部5よりメッシュが細かいネットからなり義毛10が植設され、この調整部4の存在により、このかつらネット1を頭部に被着すると義毛10と自毛8とが混在しぼかされ、違和感がなく、かつ外部からのネットの露見もない構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部の自毛の少なくなった部位に被着され、義毛を植設してあるかつら用または部分かつら用ネットに係り、特に、かつら被着時に自毛が引き出しやすく、かつ、自毛と義毛との混在形態に外観上に違和感がなく、ネット素材の露見が緩和される自毛活用型のかつら用ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
頭部の自毛の少なくなった部位には部分かつらが被着され、この部位を義毛でカバーし、外観美を向上させている。この部分かつらとしては各種のものが従来から研究開発されているが、例えば、特許文献1、特許文献2などが知られている。また、かつらベースから自毛を引き出し、かつらに植毛した義毛と混合させる自毛活用型のかつらにおいて自毛引き出し、易い構造として特許文献3および特許文献4などが知られている。

【特許文献1】実開平5−22522号公報図1
【特許文献2】特開平8−158130号公報(図2)
【特許文献3】特開昭62−141107号公報(第1図)
【特許文献4】特開平11−107024号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、止着基部の内周縁部に沿ってチェーン状細糸部材を取り付けると共に、このチェーン状細糸部材を該止着基部の内側に所定の間隔で縦横に配置し、これに毛髪を絡ませて植毛するだけでなく、チェーン状細糸部材自体にも毛髪を植毛するネットである。この構成では頭部の残毛状態によっては止着基部とチェーン状細糸部材に植毛可能密度に差があるために、たとえ止着基部の内周縁に沿ってチェーン状細糸部材を配設してそこに植毛したとしても自毛と義毛との境が明瞭になり充分なぼかし効果が得られず、かつら被着時の美観も損なわれる。
特許文献2の特開平8−158130号公報は、頭部の自毛の少なくなった部位に被着されるネット状の部分かつらであって、頭部に密着されると共に毛材2を植設してなる楕円状の密着部3と、この密着部3に囲まれる内部に張架され毛材2を植毛してなる人工皮膚の表面11とからなる。植毛される密度は密着部3の部分と人工皮膚の表面11の部分とで異なり、密着部3の方が密に植毛され、これら毛材2を絡ませてセットし全体としての違和感のないようにしている。
この特許文献2のかつらベースにおける人工皮膚では義毛の植毛可能な本数いわゆる植毛密度は図7から図9に示す通りに広範囲にわたり植毛することが可能であるが、ネットの場合にはネットを構成している糸および該糸の交点だけにしか植毛できず人工皮膚と比らべ義毛の植毛可能な本数いわゆる植毛密度が図7bから図9b示されるように限定される。このことより、人工皮膚への植毛密度が低い場合(図7)には密着部(3)の植毛密度は充分人工皮膚および自毛に対応可能であり、密着部(3)と頭部自毛との繋がりにも自然観が得られる。一方人工皮膚への植毛密度が高い場合(図9)には、密着部(3)の植毛密度を人工皮膚の植毛密度と同一あるいはそれ以上にすることが困難であり、人工皮膚と密着部および密着部と頭部自毛の繋がりが悪くなり、かつら被着時の自然観が損なわれると共にスタイルセットがし難くなる。
【0004】
また、特許文献3は、六角形状が多数連続する状態で編み込まれた六角形状の網地によるものではかつらを頭部に取り付けるときに、六角形状の空間から整髪用ブラシを用いて自毛を引き出し、引き出した自毛を植毛した義毛にミキシングさせるものが開示されている。
このような形状の場合は整髪用ブラシを用いて自毛を引き出す時一本、一本の自毛が網に挟まったままとなって、引き出し作業が容易に行えない。また、ブラシの櫛歯先端が網目内に入ると引っ掛かりやすく、ブラシを引き抜くことが困難であり、無理に力を加えるとネットが破断れたり、ブラシが破損することがあった。その上、かつらの外側へ引き出した自毛がブラッシングや被着後の時間経過に伴って再び頭皮とかつらベースとの間に潜りこんでしまう問題があった。
【0005】
特許文献4のかつらは、かつらベースの周枠部内で細糸部材5を波形を呈するように左右に蛇行させて所定間隔で前頭部と後頭部の間に掛け渡し、隣り合う上記細糸部材5の波形の位相を反転させて相隣り合う細糸部材5の最も近接している部分同士を括り糸で連結することにより曲線状の略菱形状の網目4のパターンを複数連続して形成する構成である。自毛を引き出すときにブラシの櫛歯が網目や括り糸に入り込んだり、引き出す自毛の摩擦によってネット全体が移動しやすい。及びネットの目の形状が変形し易いことにより、ネット目の下にある自毛に確実にかつ均一に引き出すことが難しく、個々のネット目によって引き出された自毛の本数、毛の向きに差がでて被着時の外観美が損なわれ、しぜんなスタイルにまとめあげることが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するもので、義毛と自毛との間の違和感がなく、かつネットの露見がなく、外観美の向上が図れる部分かつらネットを提供することを課題とする。
また、本発明の課題は、部分かつらを装着した時に、自毛と義毛との境界部分のぼかし効果を発揮するかつら用ネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上の課題を達成するために、請求項1の発明は、頭部の自毛の少ない部位に着脱可能に被着されるかつらネットであって、該かつらネットは、頭部に装着固定される周縁部と、この周縁部の内側に形成される人工皮膚または細メッシュのネット状の隠蔽部、粗メッシュのネット状の活毛部、及び該活毛部と前記隠蔽部との間に形成され、該活毛部より細かいメッシュのネット状の調整部とを配置してなり、これら隠蔽部、調整部、活毛部とが夫々隣接して配置される構成である。
【0008】
また、本発明の課題は、頭部の自毛の少ない部位に着脱可能で隠蔽部、調整部、活毛部とがそれぞれ隣接して配置されるかつらネットにおいて、前記活毛部の開口はランド部によって粗く仕切られると共に、隣接するランド部の境界に四角枠体部を形成し、隣接するランド部や四角枠体部内には小開口部が形成されている構成によって達成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のかつら用ネットによれば、調整部を設けることにより活毛部と隠蔽部との間の外観上に違和感もなく、隠蔽部や調整部のネットの露見もなく、さらに頭部の自毛の少なくなった部位のみを被覆するものではなく、自毛が充分にある部位も含めて被覆する活毛部を一体的に設けたこと、及び活毛部のネットが自毛を引き出し易く、さらにこの活毛部のネットの開口が大きな開口部および小さな開口部を設けることで各開口部が独立した状態となり、活毛部ネット全体が動きにくくなり、開口から自毛が均一に引き出せなくても小開口部に植毛された義毛が自毛を引き出した部分の毛髪密度調整の役目をすることで、全体として外観美の向上が図れ、自然なヘアスタイルにまとめられる効果が上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明かつら用ネットの実施の形態について図面を参照して詳述する。
図1は本発明のかつら用ネット1の全体構造を表側から示すものである。図2は本発明の図1A矢視先端部分の隠蔽部,調整部,活毛部の形状を説明するための模式断面図である。図3は本発明かつら用ネットを頭部に被着した場合における図2の状態における自毛との係合状態を示す模式断面図である。図4は本発明のかつら用ネットの他の実施形態表側の平面図である。図5は従来のかつら用ネット図1A矢視の先端部分における隠蔽部と活毛部とを示す模式断面図である。図6は従来のかつら用ネット図1A矢視の先端部分における隠蔽部と活毛部とを示す模式断面図である。図7〜図9は従来のネットにおける義毛を低密度、中密度、高密度で植毛した状態を説明する模式図である。
【0011】
かつら用ネット1は頭部の必要部位に装着するように所定の大きさのネットで形成されている。例えば、頭部の自毛が薄くなっている部位、すなわち必要部位の外周に沿って形成する周縁部2から形成され、この周縁部2の内側に配設されるネット部とからなり、このネット部としてはメッシュ目の細かいネット状または人工皮膚の隠蔽部3と、自毛を引き出すのに適した大きさのメッシュ目の粗い活毛部5と、この隠蔽部3とこの活毛部5のメッシュ目より細かいメッシュの調整部4とからなる。
【0012】
前記隠蔽部3は頭部の自毛のほとんどない部位に等しい面積を有しており、図1のように頭部の分け目位置だけでなく、図2のように前頭部に配設してあってもよく、自毛のほとんどない位置の何れにも配設できる。この隠蔽部3は図示のように細メッシュのネット状または通気性のある人工皮膚のものからなる。
一方、自毛を引き出す活毛部5は、ランド部6で仕切られている開口9である開口部9aを有すると共に、隣接するランド部6,6を結合する四角枠体部7を適宜配置したものからなり、隣接するランド部6,6間や四角枠体部7内には多数本の自毛8が貫通し得る広い開口部9aと小開口部9bとが形成されている。また、該活毛部5のネットを配設する方向は、図1だけでなく図3の方向に配設してもよく、被着者の自毛の状態に応じて適宜選択すればよい。
【0013】
本発明のかつら用ネット1の調整部4は、隠蔽部3と活毛部5との間に配置されるネット部材からなり、活毛部5よりも細メッシュのネットからなる。
このかつら用ネットの裏側に形成される周縁部2と交わる接着台部11が配設されており(図4参照)、この接着台部11は、小面積に形成され、頭皮に接着するために表面が平滑で人工皮膚状、ネット状物質で形成されている。この部分のネット目の粗さは調整部4と同じでもよい。このように裏側にはストッパーなどの止着具を取付けるネットあるいは人工皮膚を所望の箇所に配設しても構わない。
【0014】
一例として隠蔽部3のネットは1インチ角の中に50本の縦横の糸が織られているものからなり、調整部4のネットは1インチ角の中に18本の縦横の糸が織られている形状のものからなる。なお、活毛部5の開口部9aは図示のように調整部4のネットの面積よりはるかに大きな空間を形成するもので、前頭部から後頭部にかけて細長く形成してある。なお、図1の下方に示される模式図は図1のA矢視の先端部位の模式的拡大図である。
【0015】
図5は図1のA矢視の先端部位における隠蔽部3と調整部4及び活毛部5の義毛10の植設形態を示すもので、図5,図6と同じ内容の拡大断面図である。図示のように、隠蔽部3には多くの義毛10が植設されており、調整部4にもそのネット部に義毛10が植設されている。なお、活毛部5のランド部6にも数多くの義毛10が植設される。
【実施例1】
【0016】
図6は図1,図5等に示したかつら用ネット1を頭部に被着し、義毛10と自毛8とをからませた状態を示す。かつら用ネットを頭部に被着すると隠蔽部3のネットの隙間からは自毛8は出ない(この部分には自毛8がなく、かつ隠蔽部3のネット間の隙間も狭いため自毛8は出てこない)。一方、調整部4のネット間の隙間は比較的大きいため、自毛8はこの隙間から露出する。また、調整部4と活毛部5との間の開口部9aからは自毛8が張り出して露出する。このため、活毛部5から隠蔽部3にわたって義毛10と自毛8とがほぼ均等に露出し、これらを櫛等により梳かすことにより全体が均一となり、自毛8と義毛10とが混在一体となり区別がつかない状態となり、外観美の向上が図れる。即ち、従来技術のように違和感が緩和され、全体にぼかし効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、男女を問わず、かつら、部分かつらにすべて適用されるものであり、その大きさは任意の設定される。また、隠蔽部3,調整部4や活毛部5の面積やメッシュを適宜設定することに活毛の欠陥箇所の形状に差のある頭部に対しても適用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のかつら用ネット1の全体構造を表側から示すものである。
【図2】本発明の図1A矢視先端部分の隠蔽部,調整部,活毛部の形状を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明かつら用ネットを頭部に被着した場合における図2の状態における自毛との係合状態を示す模式断面図である。
【図4】本発明のかつら用ネットの他の実施形態表側の平面図である。
【図5】従来のかつら用ネット図1A矢視の先端部分における隠蔽部と活毛部とを示す模式断面図である。
【図6】従来のかつら用ネット図1A矢視の先端部分における隠蔽部と活毛部とを示す模式断面図である。
【図7】従来のネットにおける義毛を低密度で植毛した状態を説明する模式図である。
【図8】従来のネットにおける義毛を中密度で植毛した状態を説明する模式図である。
【図9】従来のネットにおける義毛を高密度で植毛した状態を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0019】
1 かつら用ネット
3 隠蔽部
2 周縁部
4 調整部
5 活毛部
6 ランド部
7 四角枠体部
8 自毛
9 開口部
10 義毛
11 接着台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部の自毛の少ない部位に着脱可能に被着されるかつらネットであって、該かつらネットは、頭部に装着固定される周縁部と、この周縁部の内側に形成される人工皮膚または細メッシュのネット状の隠蔽部、粗メッシュのネット状の活毛部、及び該活毛部と前記隠蔽部との間に形成され、該活毛部より細かいメッシュのネット状の調整部とを配置してなり、これら隠蔽部、調整部、活毛部とが夫々隣接して配置されることを特徴とするかつら用ネット。
【請求項2】
頭部の自毛の少ない部位に着脱可能で隠蔽部、調整部、活毛部とがそれぞれ隣接して配置されるかつらネットにおいて、前記活毛部の開口はランド部によって粗く仕切られると共に、隣接するランド部の境界に四角枠体部を形成し、隣接するランド部や四角枠体部内には小開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のかつら用ネット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−70392(P2006−70392A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255942(P2004−255942)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000126676)株式会社アデランス (49)