説明

きのこ栽培施設用換気装置

【課題】きのこ栽培施設の冷房コストの削減を図る。
【解決手段】きのこ栽培施設10の内気を外部へ排出し、外気を導入するとともに、内気と外気の全熱交換を行う全熱交換手段28と、前記全熱交換手段28を経由せずに外気を施設内へ導入する外気直導入路24と、前記全熱交換手段を経由する熱交換外気導入路26と、前記外気直導入路24とを切り替える導入路切替手段30と、外気温度が施設内気目標温度よりも低くかつ施設内気温度が施設内気目標温度よりも高い場合に前記導入路切替手段30に対し外気直導入路24への切り替えを指示し、外気温度が施設内気目標温度よりも高い場合に前記導入路切替手段30に対し熱交換外気導入路26への切り替えを指示し、施設内気温度が施設内気目標温度よりも低い場合に前記導入路切替手段30に対し熱交換外気導入路28への切り替えを指示する制御手段32と、を備えたことを特徴とするきのこ栽培施設用換気装置20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はきのこ栽培施設用換気装置、特にその外気導入機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国のきのこ生産は3,000億円規模の産業であり、菌床を用いて環境制御を施した施設栽培が占める割合は90%を超える。
たとえば生シイタケ生産では、特に菌床栽培への移行が進み、現在、5万トン以上が環境制御を施した栽培施設を利用する栽培と推測され、空調設備に大電力を消費し、省エネルギーを図ることが急務とされる生物産業である。
すなわち、きのこ栽培においては、通常、菌床による呼吸熱の発生が著しく、冬場でも冷房が必要となるほどである。このため、きのこ栽培施設では冷房装置が採用されるが、一方で菌床の呼吸による二酸化炭素の発生があり、換気が適切に行われる必要がある。このため、きのこ栽培施設においては、冷房装置と換気装置は事実上必須の設備と言える。
前記換気装置としては、特に夏場、内部の冷気を逃がさないため、全熱交換フィルタ型の全熱交換器が採用されることがある。
たとえば、生シイタケ1トンを生産に要する電力所要量は、全熱交換器を用いない場合には6,000KWh、既存の省エネ全熱交換換気装置が全施設に装備されている場合は25%低減の4,500KWhと推定される。しかしながら、5万トン生産の所要電力はそれぞれ300Gあるいは225GWhの大電力と推定され、一層の省エネルギー化が課題である。
一方、コスト的に見ても、生シイタケの施設栽培の空調設備等に消費する電力は、生産コストの12〜20%であり、環境制御に大電力を消費し、エネルギーコストが生産コストに占める割合はおよそ15%前後と概算される。
このように、きのこ栽培には多大なエネルギーが必要とされており、その低減が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−195478号公報
【特許文献2】特開2006−204158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題はきのこ栽培施設の冷房コストの削減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明にかかるきのこ栽培施設用換気装置は、
きのこ栽培施設の内気を外部へ排出し、外気を導入するとともに、内気と外気の全熱交換を行う全熱交換手段と、
前記全熱交換手段を経由せずに外気を施設内へ導入する外気直導入路と、
前記全熱交換手段を経由する熱交換外気導入路と、前記外気直導入路とを切り替える導入路切替手段と、
外気温度が施設内気目標温度よりも低くかつ施設内気温度が施設内気目標温度よりも高い場合に前記導入路切替手段に対し外気直導入路への切り替えを指示し、外気温度が施設内気目標温度よりも高い場合に前記導入路切替手段に対し熱交換外気導入路への切り替えを指示し、施設内気温度が施設内気目標温度よりも低い場合に前記導入路切替手段に対し熱交換外気導入路への切り替えを指示する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明にかかるきのこ栽培施設用換気装置によれば、外気導入による冷却を最大限に用いることにより、大幅な冷房コスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明にかかる換気装置の概略構成の説明図である。
【図2】図1に示した装置における制御状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかるきのこ栽培施設用換気装置の概略構成が示されている。
同図に示すように、きのこ栽培施設10内には菌床12が置かれて菌糸体の培養がなされる。たとえばシイタケ菌床栽培では、「培養工程」の施設内温度設定は22〜23℃であるが、菌床12から発生する呼吸熱のため、冬場でも昼間は冷房する場合があり、また呼吸による二酸化炭素を適切に外部へ排出し、酸素の導入を図るため、冷房装置14及び換気装置20が設けられている。
【0009】
本実施形態において、換気装置20は,二本の内気排出路、すなわち内気直排出路21及び熱交換内気排出路22と、二本の外気導入路、すなわち外気直導入路24及び熱交換外気導入路26と、前記熱交換内気排出路22と熱交換外気導入路26にそれぞれ流れる内気および外気の間で全熱交換を行うフィルタタイプの全熱交換手段28と、を備える。
そして、前記外気直導入路24と熱交換外気導入路26は、ダンパーからなる導入路切替手段30aにより、また内気直排出路21と熱交換内気排出路22は、同じくダンパーからなる導入路切替手段30bにより、選択的に切り替えられる。
また、制御手段32は外気温センサー34、内気温センサー36及び設定手段38から得られる温度データに基づき、前記導入路切替手段30の制御を行う。ここで、内気温センサー36は施設10内に設置されており、施設10内の温度を検出しており、また設定手段38は、管理者が入力する施設内目標温度を制御手段32に送るものである。
【0010】
本実施形態にかかるきのこ栽培施設用換気装置は概略以上のように構成され、図2に基づきその作用について説明する。
図2には本実施形態にかかる換気装置20の制御手段32の機能が示されている。
すなわち、制御手段32は、まず外気温センサー34から得られる外気温と、設定手段38により設定された目標温度をコンパレーターにより比較し、外気温の方が高い場合には有極リレーあるいは半導体リレーを動作させ、ダンパー30の操作により熱交換内気排出路22及び熱交換外気導入路26を開かせ、内気直排出路21及び外気直導入路24を閉じる。この結果、冷房装置14により冷房された内気は、熱交換内気排出路22を経由して外部へ排出される際、全熱交換手段28によりその冷熱が導入路26を経由して導入される外気に移転される。
一方、目標温度よりも外気温が低い場合には、外気を施設内に導入することにより冷却可能であるから、リレー動作をOFFし、ダンパー30操作により内気直排出路21及び外気直導入路24を開かせ、熱交換内気排出路22及び熱交換外気導入路26を閉じる。この結果、温度の低い外気が施設内に直接取り込まれることとなり、冷房装置14の負荷を軽減することができる。
【0011】
以上は、菌床栽培による発熱で、施設内が目標温度よりも高温であることを前提としており、通常はこれで足りる。
しかしながら、冬期などには過剰な外気導入により、施設内温度自体が目標温度よりも低くなることもある。このため制御手段32は目標温度と内気温度を比較し、内気温度が低い場合には、目標温度よりも外気温が低くても、ダンパー30を熱交換内気排出路22及び熱交換外気導入路26側に切り替える。この結果、施設内の暖気の外部への放出は最小限に抑えられ、温度は菌床の呼吸熱等により徐々に温まり、目標温度に達する。
なお、生シイタケのきのこ発生工程の温度管理は、定温(17〜18℃)あるいは昼間(15℃)と夜間の温度(21℃)を切り替える変温が適用されるが、これらは設定手段38により適切にプログラムすることができる。
【0012】
以上のように本実施形態にかかるきのこ栽培施設用換気装置によれば、外気を十分に利用しつつ冷房装置14の使用を最小限にとどめることができる。本発明者らの試算によれば、15%以上の使用エネルギーが図られるものと考えられる。
また、本発明を他のきのこ、たとえばエノキタケ、ブナシメジ、エリンギ、ナメコなどのその他の食用きのこ施設栽培の培養工程(菌まわし)に適用する場合には、生シイタケより通常数℃低く設定され、キクラゲなどのきのこでは数℃高く設定される。もちろん、その他のきのこ栽培、あるいは野菜などの栽培にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0013】
10 きのこ栽培施設
12 菌床
14 冷房装置
20 換気装置
28 全熱交換手段
30 導入路切替手段
32 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培施設の内気を外部へ排出し、外気を導入するとともに、内気と外気の全熱交換を行う全熱交換手段と、
前記全熱交換手段を経由せずに外気を施設内へ導入する外気直導入路と、
前記全熱交換手段を経由する熱交換外気導入路と、前記外気直導入路とを切り替える導入路切替手段と、
外気温度が施設内気目標温度よりも低くかつ施設内気温度が施設内気目標温度よりも高い場合に前記導入路切替手段に対し外気直導入路への切り替えを指示し、外気温度が施設内気目標温度よりも高い場合に前記導入路切替手段に対し熱交換外気導入路への切り替えを指示し、施設内気温度が施設内気目標温度よりも低い場合に前記導入路切替手段に対し熱交換外気導入路への切り替えを指示する制御手段と、
を備えたことを特徴とするきのこ栽培施設用換気装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−160754(P2011−160754A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29123(P2010−29123)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(594023629)浅野産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】