説明

きのこ栽培用キャップ

【課題】栽培瓶が収容されたコンテナが震動および振動などの揺れにより倒れることを防止する。
【解決手段】キャップ1はコンテナ21に配列して収納される複数の栽培瓶10の瓶口に取り付けて用いられ、複数の栽培瓶10の瓶口のそれぞれに脱着可能に嵌着される複数の嵌着部2と、隣接する嵌着部2間を接続する連結部3とを有する。キャップ1を用いて栽培瓶10を収納したままコンテナ21を積み重ねた際、上段のコンテナ21の底面部22に設けられた突起部24を受ける凹み部3aが連結部3に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこ(キノコ、茸)の栽培技術において、きのこ栽培用コンテナ(以下、単にコンテナともいう)に配列して収容され、きのこが生育されるきのこ栽培瓶(以下、単に栽培瓶ともいう)の瓶口に取り付けられるきのこ栽培用キャップ(以下、単にキャップともいう)に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこの栽培工程において用いられる菌床は、栽培瓶中におが屑や米糠などの培養基を詰めて、殺菌することにより作られる。この培養基に種菌を植え付けてから、所定の条件に設定された培養室中で菌を生育させ、菌糸を掻き落とした後、更にきのこを生育させて収穫する。これら工程において、栽培瓶は一定の数が配列して(例えば、4×4=16個)、蓋のない浅い箱形の容器から成るコンテナに収容される。なお、培養、生育など日数がかかる工程においては、栽培瓶を収容したコンテナが棚に載置されるのが一般的である。
【0003】
特許第2620212号(特許文献1)には、栽培瓶の収容本数や形状に左右されることなく、栽培瓶を安定した状態で収容できるコンテナに関する技術が開示されている。
【特許文献1】特許第2620212号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、底の浅いコンテナに対して縦長の栽培瓶が収容されるため、栽培瓶がコンテナの規定の収容本数で収容された状態であっても、地震の震動や搬送の振動などの揺れによって栽培瓶が倒れる場合がある。そこで、特許文献1に記載されたコンテナでは、底面部上に、栽培瓶の外周面下部を位置決めして保持する複数の起立した保持片部を一体に設けている。この保持片部は底面部上に設けられているため、栽培瓶の下部で保持することができると考えられる。
【0005】
しかしながら、規定の収容本数で栽培瓶が収容されたコンテナを複数段積み重ねた状態(例えば、培養時)で、地震などの揺れが発生した場合、これらコンテナが倒れてしまうことが考えられる。具体的には、栽培瓶の下部のみを例えば前記保持片部で保持した状態で揺れが発生した場合、栽培瓶の上部が揺れてしまい、その上に積み重ねられているコンテナも揺れて倒れてしまうことが考えられる。
【0006】
本発明の目的は、栽培瓶が収容されたコンテナが震動および振動などの揺れにより倒れることを防止することのできるきのこ栽培用キャップを提供することにある。
【0007】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
本発明におけるきのこ栽培用キャップは、きのこ栽培用コンテナに配列して収納される複数のきのこ栽培瓶の瓶口に取り付けて用いられ、複数のきのこ栽培瓶の瓶口のそれぞれに脱着可能に嵌着される複数の嵌着部と、隣接する前記嵌着部間を接続する連結部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
本発明によれば、栽培瓶が収容されたコンテナが震動および振動などの揺れにより倒れることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0013】
本実施の形態におけるキャップ(きのこ栽培用キャップ)1を模式的に図面に示す。図1はキャップ1の上面図、図2はキャップ1の下面図、図3はキャップ1の側面図、図4は図1のA−A線におけるキャップ1の断面図である。また、図5は複数の栽培瓶10が配列して収納されるコンテナ21の上面図である。また、図6は複数の栽培瓶10がコンテナ21に収納されて積み重ねられた状態におけるキャップ1の側面図であり、図7は複数の栽培瓶10がコンテナ21に収納されて積み重ねられた状態におけるキャップ1の断面図である。なお、図5にはコンテナ21に栽培瓶10が配置される位置を波線で示している。また、図7は図5のB−B線に対応させた断面図である。
【0014】
キャップ1は、コンテナ21に配列して収納される複数の栽培瓶10の瓶口に取り付けて用いられる。本実施の形態では、コンテナ21には、4×4で隣接するもの同士壁面を接するように密に配列した栽培瓶10が16個収納される。このコンテナ21は、表面およびその反対の裏面を有する底面部22と、底面部22の表面を囲む側面部23とを有する蓋のない箱形の容器である。また、栽培瓶10は、円柱形の胴部の上部がくびれた首部を有し、その首部に瓶口が形成されている容器である。
【0015】
キャップ1は、複数の栽培瓶10の瓶口のそれぞれに脱着可能に嵌着される複数の嵌着部2を有する。図6、図7には栽培瓶10の瓶口に嵌着部2を嵌着させてキャップ1が取り付けられている様子が示されている。この嵌着部2は筒形となっており、栽培瓶10の瓶口を嵌め込むことができる。また、キャップ1は、隣接する嵌着部2間を接続する連結部3を有している。キャップ1は例えばプラスチック製であり、嵌着部2と連結部3とは一体で形成されている。このためキャップ1によって、コンテナ21に収容された16個(4×4)の栽培瓶10は一括りにされているということができる。
【0016】
本実施の形態では、コンテナ21に栽培瓶10が16個(4×4)で配列される場合について説明しているが、これに限らず、20個(4×5)や36個(6×6)の栽培瓶10が配列されるものであっても良く、キャップ1はこれら栽培瓶10を一括りとするものである。
【0017】
このように、コンテナ21に配列して収納された複数の栽培瓶10の瓶口にキャップ1を取り付けて用いることによって、地震などで揺れが発生した場合であっても栽培瓶10が倒れることを防止することができる。具体的には、複数の栽培瓶10の下部のそれぞれをコンテナ21の側面部23で支持し、複数の栽培瓶10の上部のそれぞれをキャップ1で支持することによって、複数の栽培瓶10が互いに揺れることによって、それぞれが倒れることを防止することができる。
【0018】
また、キャップ1は、筒形の嵌着部2の開口から上方に拡径するリング状に形成され、栽培瓶10の瓶口から伸長したきのこの株の下側部分を支持する支え部4を有する。キャップ1は収穫用のキャップとして用いることができ、菌床の表面を露出する開口部5を有している。すなわち、支え部4は、嵌着部2が栽培瓶10の瓶口に嵌着された際、菌床面が露出する開口が設けられ、この開口を囲んで、上方にリング状に拡径して伸び、生育時のきのこの株の株を支えるものである。また、キャップ1の連結部3には開口部6が形成されている。この開口部6により、きのこの栽培環境(特に通気性)を調整することができる。
【0019】
ところで、コンテナ21は底面部22が平面矩形状の網目体で形成されており、その底面部22には菱形状の開口部22aが複数設けられている。また、側面部23は平面矩形状の底面部22の縁から上方に立ち上がるように形成されており、矩形状の開口部23aが複数設けられている。また、側面部23の上部には、例えば人間がコンテナ21を容易に取り扱うための把手25が設けられている。さらに、底面部22の裏面22には突起部24が設けられており、平面格子状に設けられている(図5参照)。これら底面部22、側面部23、突起部24および把手25を有するコンテナ21は例えば一体で形成されるものであり、例えばプラスチック材料を含んで製造されるものである。
【0020】
このようなコンテナ21を用いる場合において、キャップ1の連結部3には、キャップ1を用いて栽培瓶10を収納したままコンテナ21を積み重ねた際、上段のコンテナ21の底面部22に設けられた突起部24を受ける凹み部3aが設けられている。言い換えると、連結部3の凹み部3aに突起部24が進入するようになっている。したがって、地震などにより揺れが発生した場合であっても、栽培瓶10の瓶口に取り付けられたキャップ1が上段のコンテナ21の突起部24で支持されるため、栽培瓶10およびコンテナ21が倒れることを防止することができる。
【0021】
次に、コンテナ1を用いたブナシメジを栽培する方法について説明する。まず、空の状態の栽培瓶10を準備する。また、おが屑に栄養剤、水などを加えてミキサーで攪拌して培養基を準備する。栽培瓶10は、円柱形の胴部の上部がくびれた首部を有し、その首部に瓶口が形成されているものである(図6、図7参照)。栽培瓶10は、例えば、内容積が850cc、高さが165mm、首部の長さが30mm、胴部の外径が95mm、瓶口の内径が58mmである。
【0022】
続いて、栽培瓶10に栄養剤を含む培養基を詰め込む。ここでは、コンテナ21に空の栽培瓶10が収納された状態で、培養基がその栽培瓶10の瓶口から詰め込まれる。次いで、栽培瓶10の瓶口に培養用のキャップを取り付ける。培養のキャップは、本実施の形態で示すキャップ1とは異なり、円形状に形成され、瓶口を塞ぐ蓋部と、この蓋部と一体の筒形に形成され、瓶口に脱着可能に嵌着される嵌着部とを有するものである。
【0023】
続いて、栽培瓶10に詰め込まれた培養基を殺菌するために、その栽培瓶10をコンテナ21に収納した状態で殺菌釜に入れる。殺菌釜内では栽培瓶10が収納された状態でコンテナ21が積み上げられる。さらに、殺菌後、培養基を冷却するために、殺菌釜を停止した状態でコンテナ21に栽培瓶10を収納したまま放置する。
【0024】
続いて、殺菌された培養基に種菌を接種した後、培養を行うことで菌を栽培瓶10全体に回す。この培養工程では培養室内において、栽培瓶10が収納された状態でコンテナ21が積み上げられる。
【0025】
培養後、栽培瓶10の瓶口に嵌められている培養用のキャップをはずし、菌掻きを行う。その後、菌床の表面に給水を行い、発芽を促し、芽出しを行う。芽出し工程においては、芽出し室の天井から霧を噴射し、また、芽出し室内の温度や湿度を一定に保つために天井扇や換気扇で空気を循環させる必要がある。例えば、芽出し工程では、菌掻きされた栽培瓶10を芽出し室に12〜13日程度入れておく。これにより、芽出し工程では、菌床面から徐々に子実体が上方へ生長する。
【0026】
そこで、芽出し工程では、まず、収穫用のキャップ1を栽培瓶10の瓶口に取り付ける。このキャップ1は、筒形の嵌着部2の開口から拡径するリング状に形成された支え部4を有しているので、菌床の表面を露出する開口部5を有している。
【0027】
続いて、本実施の形態では、芽出し工程において栽培瓶10を収納してコンテナ21を積み重ねる。具体的には、図6および図7に示すように、上段の栽培瓶10aおよび下段の栽培瓶10bはそれぞれ上段のコンテナ21aおよび下段のコンテナ21bに同様に配列(4列×4行)される。また、栽培瓶10aの瓶口および栽培瓶10bの瓶口にはそれぞれキャップ1aおよびキャップ1bが取り付けられている。このため、栽培瓶10が収納されてコンテナ21が積み上げられる状態では、栽培瓶10bの瓶口に嵌められたキャップ1b上に、コンテナ21aが置かれることとなる。このときキャップ1の嵌着部2を連結部3によって接続しているので、揺れが発生した場合であっても、栽培瓶10の瓶口がキャップ1で支持されるため、栽培瓶10およびコンテナ21が倒れることを防止することができる。
【0028】
また、一般的には芽出し工程においては多段の棚に1段ずつ栽培瓶10が収納されたコンテナ21が載置される。しかしながら、キャップ1を用いることによって、栽培瓶10が倒れることを防止できるので、栽培瓶10を収納してコンテナ21を積み上げることができる。このため、芽出し工程では棚を設けておく必要がないため、設備費を低減することができるので、ブナシメジの製造コストを低減することができる。
【0029】
また、キャップ1の連結部3には開口部6が形成されている。このキャップ1を取り付けて栽培瓶10を収納したままコンテナ21を積み重ねることができるので、一般に芽出し工程で必要な有孔ポリ(小さな孔の開いたポリエチレンビニール)が不要となる。有孔ポリは菌床面において子実体が生長する適切な環境を形成するためのものである。本実施の形態のように、キャップ1に開口部6を設けておくことで、キャップ1が有孔ポリと同様の効果を持たせている。
【0030】
芽出し後、さらに子実体を生長させる(生育工程)。このとき、栽培瓶10を収納したコンテナ21は積み重ねた状態ではなく、生育室の栽培棚に1段ずつ置かれる。子実体は栽培瓶10の瓶口から大きく株状に広がるため、栽培瓶10を収納したコンテナ21が積み重ねられた状態では、上段のコンテナ21の底面部2に、下段のコンテナ21に収容された栽培瓶10から生長する子実体が接触してしまうからである。なお、生育室は芽出し室と同様に、天井から霧を噴射し、生育室内の温度や湿度を一定に保つために天井扇や換気扇で空気が循環されている。
【0031】
続いて、栽培瓶10からブナシメジを収穫する。栽培瓶10で生育したブナシメジは収穫キャップとともに栽培瓶10から引き抜かれ、収穫キャップがブナシメジの株の底部に付いた状態で得られる。なお、自動の収穫装置を用いてブナシメジを収穫することもできる。
【0032】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0033】
例えば、前記実施の形態では、コンテナを用いたきのこの栽培方法としてブラシメジを適用した場合について説明したが、本発明はブナシメジのコンテナのみに適用されるものではなく、ナメコ、エリンギ、エノキ茸などのきのこにも適用することができる。
【0034】
また、例えば、前記実施の形態では、収穫に用いるためのキャップに適用した場合について説明したが、培養に用いるためのキャップにも適用することができる。具体的には、培養用のキャップの嵌着部を接続する連結部を設ければ良い。これにより、栽培瓶を収納したままコンテナを積み重ねた培養時において、地震などにより揺れが発生した場合であっても、栽培瓶の瓶口に取り付けられた培養用のキャップが上段のコンテナの突起部で支持されるため、栽培瓶およびコンテナが倒れることを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、きのこ栽培用キャップの製造業に幅広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態におけるキャップを模式的に示す上面図である。
【図2】図1のキャップを模式的に示す下面図である。
【図3】図1のキャップを模式的に示す側面図である。
【図4】図1のA−A線におけるキャップの断面図である。
【図5】複数の栽培瓶が配列して収納されるコンテナを模式的に示す上面図である。
【図6】複数の栽培瓶がコンテナに収納されて積み重ねられた状態におけるキャップの側面図である。
【図7】複数の栽培瓶がコンテナに収納されて積み重ねられた状態におけるキャップの断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1、1a、1b キャップ(きのこ栽培用キャップ)
2 嵌着部
3 連結部
3a 凹み部
4 支え部
5、6 開口部
10、10a、10b 栽培瓶(きのこ栽培瓶)
21、21a、21b コンテナ(きのこ栽培用コンテナ)
22 底面部
22a 開口部
23 側面部
23a 開口部
24 突起部
25 把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培用コンテナに配列して収納される複数のきのこ栽培瓶の瓶口に取り付けて用いられるきのこ栽培用キャップであって、
複数のきのこ栽培瓶の瓶口のそれぞれに脱着可能に嵌着される複数の嵌着部と、
隣接する前記嵌着部間を接続する連結部とを有することを特徴とするきのこ栽培用キャップ。
【請求項2】
請求項1記載のきのこ栽培用キャップにおいて、
前記きのこ栽培用キャップが嵌着されたきのこ栽培瓶を収納したままきのこ栽培用コンテナを積み重ねた際、上段のきのこ栽培用コンテナの底面部に設けられた突起部を受ける凹み部が前記連結部に設けられていることを特徴とするきのこ栽培用キャップ。
【請求項3】
請求項1または2記載のきのこ栽培用キャップにおいて、
前記嵌着部と前記連結部とは一体で形成されていることを特徴とするきのこ栽培用キャップ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のきのこ栽培用キャップにおいて、
前記嵌着部がきのこ栽培瓶の瓶口に嵌着された際、菌床面が露出する開口が設けられ、該開口を囲んで、上方にリング状に拡径して伸び、生育時のきのこの株の株を支える支え部を有することを特徴とするきのこ栽培用キャップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のきのこ栽培用キャップにおいて、
前記連結部には開口部が形成されていることを特徴とするきのこ栽培用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−115134(P2010−115134A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289768(P2008−289768)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(395011023)株式会社ハーツ (2)
【出願人】(501224028)信越農材株式会社 (2)
【出願人】(500149522)中野市農業協同組合 (13)
【Fターム(参考)】