説明

くもり止め機能付き鏡

【課題】従来のLEDによる鏡面温度上昇を図る方法では、鏡面の温度上昇とともに、鏡面を照明することも目的としているため、LED発光面が鏡面側に向き放熱面が鏡の背面側に向くように取り付けられており、鏡面の温度上昇という点では効果は半減していた。本願発明の課題は、LEDの放熱作用を利用して鏡面温度を上昇させて鏡面のくもりを防止し、しかもLEDによって放出された熱を効率よく鏡面に伝搬することができるくもり止め機能付き鏡を提供することにある。
【解決手段】本願発明のくもり止め機能付き鏡は、高熱伝導材を含有する取り付け具を備え、この取り付け具は鏡背面が装着される鏡設置面とLEDが装着されるLED装着面とを有し、LED装着面にLEDの放熱面を装着した取り付け具は、鏡設置面で鏡背面に取り付けられ、LEDの放熱面が鏡背面に対して垂直又は略垂直となったものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、LEDの放熱によって鏡面のくもり防止ができ、鏡の周囲を照明することもできるくもり止め機能付き鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台、水飲み場、手洗い場、風呂場の脱衣所、浴室内などの、湯や水を扱う場所には鏡が設置されている場合が多い。湯や水を扱う場所では空気中に水分を多く含み、これが結露となって鏡をくもらせ、鏡が見えにくくなるということが起こる。
【0003】
従来、結露防止のため、鏡背面に熱線などのヒーターを設置して鏡面温度を上げる方法が採られていた。しかしながら、このような方法では鏡面の温度上昇に時間がかかり、設備としても複雑化し、ヒーターが高価であるためコスト高となり、消費電力が多くてランニングコストも嵩むという問題があった。
【0004】
前記問題を解決するために、特許文献1では、LEDの放熱を利用して鏡面の温度上昇を図る方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−220493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、鏡面の温度上昇とともに鏡面を照明することも目的としているためLEDの発光面を鏡面側に向け、LEDの放熱面(発光面と反対側面)を鏡の背面側に向け、LEDの放熱面に熱伝導体を配置し、熱伝導体からの伝熱により鏡の背面を温度上昇させている。このため熱伝導率が悪く、鏡の温度上昇効率がはかばかしくなく、くもり止め効果が十分に発揮されなかった。また、鏡背面からLEDで直接照明するため、この照明部分が鏡として使用できないという問題もあった。
【0007】
本願発明の課題は、LEDの放熱を効率よく活用して鏡面温度を上昇させて鏡面のくもりを防止し、必要に応じて、鏡の周囲の照明もできるようにしたくもり止め機能付き鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明のくもり止め機能付き鏡は、鏡の背面にLEDを取り付け、そのLEDの放熱によって鏡面のくもりを防止するくもり止め機能付き鏡において、前記LEDの放熱面を鏡背面に向けて直に又は高熱伝導材を介して鏡の背面に取り付けたものである。
【0009】
本願発明のくもり止め機能付き鏡は、鏡背面にLEDを設置し、そのLEDの放熱によって鏡面のくもりを防止するくもり止め機能付き鏡において、鏡の背面に高熱伝導材を取り付け、LEDの放熱面を前記高熱伝導材に向け発光面を鏡背面に対して垂直又は略垂直に向けて、LEDを前記高熱伝導材に取り付けたものである。
【0010】
前記いずれの場合も、鏡の背面から鏡の外周側に導光板を配置して、LEDからの光を前記導光板により鏡の外周側に導光して、鏡の外側周辺を照明できるようにすることもできる。
【0011】
本願発明のくもり止め機能付き鏡は、鏡又はその周囲に人感センサーを設け、その人感センサーが人の存在を検知するとLEDが発光し、人の存在が検知されないとLEDが発光しないようにすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明のくもり止め機能付き鏡には次のような効果がある。
(1)LEDの放熱面が鏡の背面に直に又は高熱伝導材を介して取り付けられているので、LEDからの放熱を効率良く鏡面に伝熱することができ、くもり止め効率が良い。
(2)長寿命を特徴とするLEDを熱源としているので、鏡のくもり止め効果が長期間持続され、LED交換の手間がほとんどなく、維持、管理が容易になる。
(3)LEDを使用するので、鏡の背面に電熱線を配置する場合に比して、構造が簡潔で小型化でき、安価な製品を容易に製造でき、消費電力も少なく、省エネ効果もある。
(4)LEDの光を導光板で鏡の背面から鏡の外まで導光できるので、鏡面のくもり防止に加えて、鏡周辺を照明することもできる。
(5)人感センサーを備えることで、スイッチ操作の手間を省力できるとともに、エネルギーの無駄を防止でき、省エネにも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】LEDをその放熱面を鏡の背面に向けて鏡の背面に直接取り付けたくもり止め機能付 き鏡の斜視図。
【図2】LEDの放熱面を鏡の背面の高熱伝導材に向けて取り付けたくもり止め機能付き鏡の 斜視図。
【図3】LEDの放熱面を鏡の背面の高熱伝導材に取り付けて、発光面を横向きにし、発光面 の側方に導光板を配置したくもり止め機能付き鏡の斜視図。
【図4】図3のA−A矢視側面図。
【図5】図3のB−B矢視側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
本願発明のくもり止め機能付き鏡の一実施形態を図1に基づいて説明する。
図1は、本願発明のくもり止め機能付き鏡1を背面側から見た斜視図である。本実施形態では鏡1の形状を矩形としているが、鏡1の形状は多角形、円形、楕円形、曲線を交えた形状など任意の形状とすることができる。
【0015】
鏡1の背面には、LED2の放熱面が直に取り付けられている。図では鏡1の背面の六箇所にLED2を取り付けてあるが、LED2の取り付け数及び取り付け位置は鏡1の背面の一又は二箇所以上の任意の箇所に設置することができる。望ましくは、個々のLED2が鏡全体に対して均一に放熱することができるよう配置するのがよい。
【0016】
LED2には任意の発光量(発熱量)のものを使用可能であるが、放熱効果を考えればパワーLEDが好適である。
【0017】
図1のLED2は鏡1の背面(以下、「鏡背面」という。)に直接取り付けられており、放熱面を鏡背面に向け、発光面を鏡背面と反対側(図1の紙面手前側)に向けて取り付けてある。
【0018】
LED2を鏡背面に取り付ける方法としては、接着剤や両面テープを用いた接着方法、L型金具などの取り付け治具を用いた固定方法、鏡1の製造過程において背面に組み込む方法、など種々の方法を採用することができる。接着方法を用いる場合、LED2からの放熱を効率よく鏡背面に伝搬させるため、接着剤や両面テープにアルミニウムや銅あるいはラヒーマ(登録商標)といった高熱伝導材を含有させたものを使用するのが望ましい。
【0019】
図1では鏡1の上方に照明具3が設置されている。この照明具3には複数個のLED2が横一列(鏡の幅方向)に配置されており、これらLED2の発光によって鏡表面を上方から照明できるようにしてある。照明具3は可能であれば、LED2に限らず細い蛍光灯や他の電灯などを使用することも可能である。照明具3は発光面を鏡表面(図1の紙面奥側)に向けて配置することも、下向きに配置することもできる。いずれの場合も鏡表面側を照明することができる。
【0020】
鏡背面に設置されたLED2は電源4に接続されており、照明具3のLED2も同じ電源4に接続させると一つの電源4を共用できる。
【0021】
電源4には、人感センサー5が接続されており、この人感センサー5により電源4のON/OFFを切り替える。もちろん人感センサー5を設置せず、手動でスイッチの入/切を行ってもよい。
【0022】
(実施形態1の使用例)
図1の鏡1は、その前に人が立つと、人感センサー5が人を検知して電源4をONにし、鏡背面に設置された六箇所のLED2が発光し放熱もする。その放熱により鏡背面が加温され、鏡背面から徐々に鏡1の温度が上昇して鏡表面の温度も上昇し、気中の水分の結露化を防止して鏡表面のくもりを防止することができる。同時に、照明具3のLED2も発光し、鏡表面を照明する。
【0023】
(実施形態2)
本願発明のくもり止め機能付き鏡の第2の実施形態を図2に基づいて説明する。
本実施形態は、実施形態1のLED2が高熱伝導材を介して鏡背面に取り付けた場合であり、その基本的構造や使用方法は実施形態1と共通する。
【0024】
図2は、本願発明のくもり止め機能付き鏡1を背面側から見た斜視図である。鏡1の背面にはブロック状の高熱伝導材6が取り付けられており、その高熱伝導材6にLED2が取り付けられている。LED2はその放熱面を鏡背面(図2の紙面奥側)に向け、発光面を反対面(図2の紙面手前側)に向けて高熱伝導材6に取り付けてある。
【0025】
LED2からの放熱を効率良く鏡1に伝搬するため、高熱伝導材6にはアルミニウムや銅あるいはラヒーマといったもの使用する。この高熱伝導材6は、ブロック状、表面積の広い薄板状、シート状、テープ状といった各種形状とすることができる。なお高熱伝導材6は熱伝導性の高いものであれば、アルミニウムや銅あるいはラヒーマ以外のものであっても使用可能であり、その他の金属類でも構わない。ラヒーマは通常は粉末状であるため、樹脂製のブロックに含有させたり、樹脂製やアルミニウム製や銅製などのブロックの表面に塗布して使用したり、ラヒーマを含んだシート状、テープ状のものを樹脂製等のブロックの表面に貼り付けて使用たり、種々の態様で使用することができる。
【0026】
図2では高熱伝導材6の形状を六面体のブロック状の六面体としているが、この形状に限らず他の任意形状、例えば、円形、星形等々とすることができるが、熱伝導効率のよい形状、厚さ、表面積のものが望ましい。
【0027】
鏡背面への高熱伝導材6の取り付け方法、高熱伝導材6へのLED2の固定方法にも、接着剤や両面テープを用いた接着方法、L型金具などの治具を用いたボルト固定方法、製造過程から組み込む方法、など種々の方法を採用することができる。接着方法を用いる場合、LED2からの放熱を効率よく鏡背面に伝えるため、接着剤や両面テープにも高熱伝導性のものを使用するのが望ましい。
【0028】
(実施形態3)
本願発明のくもり止め機能付き鏡の第3の実施形態を図3に基づいて説明する。
図3の実施形態は、LED2の発光面が鏡背面に対して略垂直(垂直含む)となるように、LED2を鏡背面に取り付けた場合を説明するための実施形態であって、基本的構造や使用方法は実施形態1、実施形態2と共通する。
【0029】
図3は、本願発明のくもり止め機能付き鏡1を背面側から見た斜視図である。鏡1の背面にはブロック状の高熱伝導材6が取り付けられ、その高熱伝導材6の側面にLED2が取り付けられている。LED2の発光面は鏡背面に対して略垂直(垂直含む)方向であって鏡1の外周方向を向いており、LED2の放熱面は鏡背面に対して略垂直方向であって鏡1の中心方向を向いている。具体的には図3の右側の3個の高熱伝導材6に取り付けられたLED2は発光面が右側に向き、放熱面が左側に向いており、左側の3個の高熱伝導材6に取り付けられたLED2は発光面が左側に向き、放熱面が右側に向いている。図3のうち最上段に配置された二つのLED2は高熱伝導材6の上側面に装着して、発光面が上方向となるように取り付けてもよく、図3のうち最下段に配置された二つのLED2は高熱伝導材6の下側面に装着して、発光面が下方向となるように取り付けてもよい。要は、LED2の放熱面が高熱伝導材6に接触し、LED2の発光面が鏡1の外側に出射するように装着されれば、LED2の光の向きは上下、左右、斜め方向いずれであっても構わない。LED2から鏡1の外周方向へ向けて発光されることにより、鏡1の周辺が明るく照明されて、暗い場所であっても鏡が利用しやすくなる。
【0030】
高熱伝導材6は実施形態2の高熱伝導材6と同様の材料、形状、構造、サイズとすることができる。図3の高熱伝導材6の配置、個数、取り付け方法、高熱伝導材6へのLED2を取り付け方法、取り付けに使用するテープ、接着剤の材質、性能等も任意に選択可能であり、実施形態2と同様にすることもできる。
【0031】
図3では導光板7a、7bが鏡背面側でLED2の発光面の側方に設置されている。この導光板7a、7bはLED2から発光された光を効率よく伝搬して鏡1の周辺を照明するためのものである。導光板7a、7bには汎用の導光板を使用することも新たに発明される新規な導光板を使用することもできる。
【0032】
図3の導光板7a、7bは図4の側面図に示すようにLED2からの光が導光板7aの中を伝搬するように、導光板7a、7bの側面をLED2の発光面に対向させて配置することができる。この場合、光が効率良く伝搬するように導光板7aの前面8a(図4)及び背面8b(図4)に反射シートを設けることもできる。
【0033】
図3の導光板7a、7bは図5の側面図に示すようにLED2からの光が導光板7bの背面側を拡散伝搬されるように、LED2の発光面が導光板7a、7bの側方で導光板7a、7bの裏面外側に位置するように配置することができる。導光板7a、7bの裏面9は光の散乱効率を高めて伝搬面積を広くすることができる波型としてある。裏面9の形状は光の散乱効率を高めて伝搬面積を広くすることができれば他の形状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本願発明のくもり止め機能付き鏡は、家庭の浴室内や洗面台に限らず、銭湯や温泉の脱衣所、公衆トイレの手洗い場、美容室や利用室での洗髪台、学校・病院での洗面所など、様々な場所に設置される鏡に利用することができる。また、鏡に代えて通常のガラス窓やガラス戸に応用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 くもり止め機能付き鏡
2 LED
3 照明具
4 電源
5 人感センサー
6 高熱伝導材
7a 導光板(右側)
7b 導光板(左側)
8a 導光板の前面
8b 導光板の後面
9 導光板の裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡背面にLEDを設置し、そのLEDの放熱によって鏡面のくもりを防止するくもり止め機能付き鏡において、前記LEDの放熱面を鏡背面に向けて直に又は高熱伝導材を介して鏡の背面に取り付けたことを特徴とするくもり止め機能付き鏡。
【請求項2】
鏡背面にLEDを設置し、そのLEDの放熱によって鏡面のくもりを防止するくもり止め機能付き鏡において、鏡の背面に高熱伝導材を取り付け、LEDの放熱面を前記高熱伝導材に向け発光面を鏡背面に対して垂直又は略垂直に向けて、LEDを前記高熱伝導材に取り付けたことを特徴とするくもり止め機能付き鏡。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のくもり止め機能付き鏡において、鏡の背面から鏡の外周側に導光板を配置して、LEDからの光を前記導光板により鏡の外周側に導光して、鏡の外側周辺を照明できるようにしたことを特徴とするくもり止め機能付き鏡。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のくもり止め機能付き鏡において、鏡又はその周囲に人感センサーを設け、その人感センサーが人の存在を検知するとLEDが発光し、人の存在が検知されないとLEDが発光しないようにしたことを特徴とするくもり止め機能付き鏡。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−15909(P2011−15909A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164138(P2009−164138)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(394018409)株式会社稲葉電機 (9)
【Fターム(参考)】