説明

こし器

【目的】 下端開口に桟を架け渡してあるこし器において、網についた細かいかすを容易に洗い流すことができるようにすること。
【構成】 茶こし1は、筒状体3と、その下端開口に架け渡された桟5と、桟5の下側に接触しつつ筒状体3の下端開口を覆うナイロン製の網7とを備えている。桟5は、平行に架け渡された2本の縦桟5aと、縦桟5aの間に架け渡された1本の横桟5bとを有し、全体として略H字状にされている。網7は、縦糸7a及び横糸7bからなり、縦糸7a及び横糸7bが互いに直交して方形の網目を形成している。そして、縦糸7a及び横糸7bの双方は、縦桟5a及び横桟5bの双方に対して斜めに交差するように配設されている。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、急須等の容器の内部に着脱自在に取り付けられ、該容器から注がれるお茶等の飲物の中に茶葉等のかすが混入するのを防ぐこし器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、急須から注がれるお茶の中に茶葉のかすが混入するのを防ぐため、急須内に懸吊状態で取り付けられる茶こしが使用されている。この茶こしは、その材質や形状については種々のものが知られているが、その一つとして、急須に取り付け可能な合成樹脂製の円筒体の下端を、きわめて細かい目の合成樹脂製の網で覆ったものがあった。
【0003】
ところで、上述の茶こしに使われている網は、そのままでは柔軟で特定の形状を維持できず、また、開口を覆った状態で何かが当たると破れたりしやすいものであった。そのため、円筒体の下端開口に桟が架け渡され、その桟に網を接触させた状態で下端開口が覆われ、網の形状維持及び破れ防止が図られているものもあった。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、茶こしを使用した後は、茶こしに水などをかけて洗い流すと同時に、網目に引っかかった細かいかすを指で擦り落としたりしている。
しかしながら、上記従来技術の如く、下端開口に桟を架け渡してある茶こしの場合、網の内側については、桟が邪魔になって洗いにくく、網についたかすをきれいに洗い流すには手間がかかっていた。
【0005】
そこで本考案は、下端開口に桟を架け渡してあるこし器において、網についた細かいかすを容易に洗い流すことができるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本考案は、請求項1記載の通り、急須等の容器の内部に着脱自在に取り付けられ、該容器から注がれるお茶等の飲物の中に茶葉等のかすが混入するのを防ぐこし器において、 前記容器内に懸吊状態で取り付けられる筒状体と、 該筒状体の下端開口に架け渡された桟と、 該桟の下側に接触しつつ前記筒状体の下端開口を覆う網とを備え、 前記網が、方形の網目をなす縦糸及び横糸からなり、該縦糸及び横糸の双方が前記桟に対して斜めに交差するように配設されていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載のこし器は、請求項1記載のこし器において、 前記桟が、平行に配置された2本以上の縦桟を有することを特徴とする。
更に、請求項3記載のこし器は、請求項2記載のこし器において、 前記桟が、前記縦桟の間に架け渡された横桟をも有することを特徴とする。
【0008】
次に、請求項4記載のこし器は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のこし器において、 前記筒状体の下端が、所定幅で水平部分を残してその両側部分を斜めに削り取った下に凸な開口面を有し、 前記桟が、前記水平部分において前記所定幅の間隔を開けて平行に架け渡され、 前記網が、前記桟の下側に接触しつつ前記開口面を覆い、水平面とその両側の傾斜面とからなる屈曲面をなしている ことを特徴とする。
【0009】
そして、請求項5記載のこし器は、請求項4記載のこし器において、 前記筒状体が、上端周縁にフランジを有する円筒状で、 前記桟が、前記所定幅の間隔を開けて平行に架け渡された2本の縦桟と、該縦桟の間に架け渡された1本の横桟とを有する略H字状にされている ことを特徴とする。
【0010】
【作用】
本考案の請求項1記載のこし器によれば、筒状体の下端開口を覆う網は、方形の網目をなす縦糸及び横糸からなり、この縦糸及び横糸の双方が、筒状体の下端開口に架け渡された桟に対して斜めに交差するように配設されている。こうすると、縦糸や横糸が桟に対して平行あるいは直交しているものに比べて、網についた茶葉等の微細なかすが落ちやすくなる。
【0011】
ここで、縦糸及び横糸と桟との交差方向によってかすの落ちやすさが異なる理由は明らかではない。仮説としては、方形の網目の場合、対角方向に擦った際に同方向にかすが往復移動すると、かすが網目の角に寄せ集められて幅方向について潰れ、網目の中央に引きずり出された時に落ちるといった状態が考えられ、一方、方形の網目の糸に沿う方向に擦った際には、かすが平行な糸の間に挟まったまま往復移動しているだけで、幅方向に潰れることがなく、むしろ、直交する糸に当たって潰れると幅方向へ広がり、網目から落ちない状態が続くといったことが考えられる。開口部に桟を有するこし器の場合、桟の近傍では、桟に沿った方向へは擦りやすく、桟にぶつかる方向へは擦りにくいため、特に意識することなく網を洗った場合、桟に沿った方向へ擦りがちになる。そのため、擦りがちな方向を網の網目の対角方向と一致させて配置することで、茶葉のかすの除去が容易になっていると考えられる。
【0012】
また、請求項2記載のこし器によれば、平行に配置された2本以上の縦桟によって筒状体の下端開口の強度が上がり、また、網の保護も図られるが、網を洗い流す際に擦りやすい方向は縦桟によって規制される。しかし、この縦桟に対して網の縦糸及び横糸の双方が斜めに交差しているので、桟に沿って擦るだけでかすが取れやすく、特に洗浄に手間がかからない。
【0013】
更に、請求項3記載のこし器によれば、縦桟の間には横桟をも架け渡してあるため、更に桟自体の強度も上がるが、網を洗い流す際に擦りやすい方向がより一層規制される。しかし、縦桟及び横桟の双方に対して網の縦糸及び横糸の双方が斜めに交差しているので、桟に沿って擦るだけでかすが取れやすく、特に洗浄に手間がかからない。
【0014】
次に、請求項4記載のこし器によれば、網が水平面とその両側の傾斜面とからなる屈曲面をなし、その形状を桟との接触により維持して開口面を覆っているので、単に水平な開口面よりも開口面積は大きく取られ、濾過能力は向上するが、網の屈曲部分において桟が接触しているため、網の内側からは桟の近傍を擦りにくくなる。しかし、縦桟及び横桟の双方に対して網の縦糸及び横糸の双方が斜めに交差しているので、桟に沿って擦るだけでかすが取れやすく、特に洗浄に手間がかからない。
【0015】
そして、請求項5記載のこし器は、上端周縁にフランジを有する円筒状なので、容器への取り付けは簡単で、その製造も容易である。また、2本の縦桟と1本の横桟とを有する略H字状の桟は、飲物の濾過を妨げることなく、下端開口の強度を十分に高め、網の形状を維持し、また、網の保護も十分に図っている。この様な略H字状の桟によっても、網を洗い流す際に擦りやすい方向は規制されるが、縦桟及び横桟の双方に対して網の縦糸及び横糸の双方が斜めに交差しているので、桟に沿って擦るだけでかすが取れやすく、特に洗浄に手間がかからない。
【0016】
【実施例】
次に、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
実施例としての茶こし1は、図1(a),同図(b),及び同図(c)に示すように、合成樹脂製の筒状体3と、一体成形にて筒状体3の下端開口に架け渡された桟5と、桟5の下側に接触しつつ筒状体3の下端開口を覆う合成樹脂製の網7とを備えている。
【0017】
これらの構成の内、筒状体3の上端周縁には、一体成形にてフランジ9が設けられている。筒状体3の下端は、図1(b)に表れるように、幅Bで水平部分を残してその両側部分を約45度の傾斜面にて削り取った下に凸な開口面としてある。
【0018】
桟5は、断面形状が小判形の棒状体にて構成され、前記幅Bの間隔を開けて平行に架け渡された2本の縦桟5aと、縦桟5aの間に架け渡された1本の横桟5bとを有し、全体として略H字状にされている。この桟5は、筒状体3の開口部の強度を高め、開口形状を維持すると共に、上記下に凸な開口面を覆う網7の形状を維持し、更に、網7に何かが当たった際に網7からの荷重を受け止めて、網7が破れるのを防止している。また、茶こし1内に大きな茶葉が入った場合には、その茶葉が桟5に載ることで網7との間に空隙が形成され、大きな茶葉が網7に密着して茶こし1の濾過能力が低下することも防止される。
【0019】
網7は、直交する縦糸7a及び横糸7bからなり、40デニールのナイロン繊維にて120メッシュの網目を形成したものである。なお、図1(a),同図(c)では、縦糸7a及び横糸7bの方向(桟5との関係)を示すため、便宜上、実際よりも粗く表してある。また、縦糸7a及び横糸7bの区別は、一方を縦としたときに他方を横とする相対的なものに過ぎず、いずれか特定の方向について縦あるいは横と規定するものではない。
【0020】
この網7は、桟5の下側に接触しつつ下に凸な開口面を覆い、水平面とその両側の傾斜面とからなる屈曲面をなしている。この様な屈曲面とすることで、単に水平面を覆う場合よりも開口面積が広くなり、茶こし1の濾過能力は向上する。
また、この状態において、縦糸7a及び横糸7bの双方は、縦桟5a及び横桟5bの双方に対して斜めに交差するように配設されている。
【0021】
以上のように構成された茶こし1は、例えば図2に示すような急須11内に挿入され、フランジ9によって懸吊状態で着脱自在に取り付けられ、急須11から注がれるお茶の中に茶葉のかすが混入するのを防ぐことができる。
さて、この茶こし1は、使用後には水などで洗浄される。このとき、網7に引っかかって落ちにくい茶葉のかすは、指先などで擦り落とされるが、本実施例の茶こし1は、縦糸7a及び横糸7bの双方が、縦桟5a及び横桟5bの双方に対して斜めに交差するように配設されているため、網7から茶葉等のかすが取れやすい。
【0022】
ここで、縦糸7a及び横糸7bと縦桟5a及び横桟5bとの交差方向によってかすの落ちやすさが異なる理由は明らかではないが、仮説として次のようなことが考えられる。本実施例の茶こし1のような方形の網目の場合、対角方向に擦った際に同方向にかすが往復移動すると、かすが網目の角に寄せ集められて幅方向について潰れ、網目の中央に引きずり出された時に網目から落ちるといった状態が考えられる。一方、方形の網目の糸に沿う方向に擦った際には、かすが平行な糸の間に挟まったまま往復移動しているだけで、幅方向に潰れることがなく、むしろ、直交する糸(例えば、縦糸方向に擦った場合の横糸)に当たって潰れると幅方向(例えば、縦糸方向に擦った場合の横糸方向)へ広がり、網目から落ちない状態が続くといったことが考えられる。本実施例の茶こし1には桟5が設けてあるため、網7を擦りやすい方向は桟5によって規制される。即ち、桟5に沿って擦りやすく、桟5にぶつかる方向には擦りにくいため、全体的には桟5に沿う方向に擦られがちになる。したがって、擦られがちな方向を、網7の網目の対角方向と一致させて配置することで、茶葉のかすの除去が容易になっていると考えられる。
【0023】
以上本考案の実施例を説明したが、本考案はこれに限定されず、本考案の要旨を逸脱しない範囲内の種々なる態様を採用することができる。
例えば、実施例では、略H字状の桟5を設けたが、これに限らず、種々の形状のものを考えることができる。但し、桟に対して網の糸を斜めに交差させるには、桟自体は、直線状のものの組合せが望ましく、また、桟があまり多方向に張り巡らされていない方が望ましい。より望ましくは、実施例の如く直交する縦桟及び横桟か、平行な縦桟だけのものに対し、網の縦糸及び横糸の双方が45度の角度で交差するものが良い。
【0024】
また、実施例では、急須に入れる茶こしを例に説明したが、コーヒーポットやティーポットに入れてコーヒーや紅茶をこすためのコーヒー用あるいは紅茶用のストレーナーとしても良い。
【0025】
【考案の効果】
以上の如く本考案のこし器によれば、網についた茶葉等の微細なかすが落ちやすく、洗浄に手間がかからない。
また、請求項2記載のこし器によれば、網の擦りやすい方向は縦桟によって規制されるが、桟に沿って擦るだけでかすが取れやすく、洗浄に手間がかからない。
【0026】
更に、請求項3記載のこし器によれば、網を洗い流す際に擦りやすい方向がより一層規制されるが、桟に沿って擦るだけでかすが取れやすく、特に洗浄に手間がかからない。
更にまた、請求項4記載のこし器によれば、網の内側からは桟の近傍を擦りにくくなるが、かすが取れやすいので洗浄に手間がかからない。
【0027】
加えて、請求項5記載のこし器によれば、略H字状の桟によって網を洗い流す際に擦りやすい方向は規制されるが、桟に沿って擦るだけでかすが取れやすく洗浄に手間がかからない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例としての茶こしを示し、(a)はその平面図,(b)はその正面図,(c)はその右側面図である。
【図2】 急須の一部を破断して実施例の茶こしの取付状態を示した正面図である。
【符号の説明】
1・・・茶こし、3・・・筒状体、5・・・桟、5a・・・縦桟、5b・・・横桟、7・・・網、7a・・・縦糸、7b・・・横糸、9・・・フランジ、11・・・急須。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 急須等の容器の内部に着脱自在に取り付けられ、該容器から注がれるお茶等の飲物の中に茶葉等のかすが混入するのを防ぐこし器において、前記容器内に懸吊状態で取り付けられる筒状体と、該筒状体の下端開口に架け渡された桟と、該桟の下側に接触しつつ前記筒状体の下端開口を覆う網とを備え、前記網が、方形の網目をなす縦糸及び横糸からなり、該縦糸及び横糸の双方が前記桟に対して斜めに交差するように配設されていることを特徴とするこし器。
【請求項2】 請求項1記載のこし器において、前記桟が、平行に配置された2本以上の縦桟を有することを特徴とするこし器。
【請求項3】 請求項2記載のこし器において、前記桟が、前記縦桟の間に架け渡された横桟をも有することを特徴とするこし器。
【請求項4】 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のこし器において、前記筒状体の下端が、所定幅で水平部分を残してその両側部分を斜めに削り取った下に凸な開口面を有し、前記桟が、前記水平部分において前記所定幅の間隔を開けて平行に架け渡され、前記網が、前記桟の下側に接触しつつ前記開口面を覆い、水平面とその両側の傾斜面とからなる屈曲面をなしていることを特徴とするこし器。
【請求項5】 請求項4記載のこし器において、前記筒状体が、上端周縁にフランジを有する円筒状で、前記桟が、前記所定幅の間隔を開けて平行に架け渡された2本の縦桟と、該縦桟の間に架け渡された1本の横桟とを有する略H字状にされていることを特徴とするこし器。

【図2】
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【図1】
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【登録番号】第3008684号
【登録日】平成6年(1994)12月28日
【発行日】平成7年(1995)3月20日
【考案の名称】こし器
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−11144
【出願日】平成6年(1994)9月7日
【出願人】(594150752)ホーヤガラス株式会社 (1)