説明

しわ除去剤組成物

【課題】アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても繊維製品のしわを除去することができるしわ除去剤組成物を提供する。
【解決手段】多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、一般式(a1)で表される特定の基で置換されている多糖誘導体(a)を0.001〜1質量%、水を70質量%以上含有し、25℃におけるpHが5〜9であり、25℃における粘度が15mPa・s以下である、しわ除去剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ除去剤組成物、及びスプレー式しわ除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スーツ等のドライクリーニング衣類は家庭での水洗いが困難であり、それらのしわ取り方法については、一般にアイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行う方法があるが、手間がかかる作業である上、風合いを損ねる場合がある。これまでに、熱処理を行わずに衣類のしわを伸ばす技術が開示されているが、しわ除去効果は不十分である。
【0003】
特許文献1にはヘキシレングリコールやイソプレングリコール等の特定の水溶性溶剤と水を組み合わせた組成物を衣類のしわ部にスプレーした後、放置するだけでしわ部を取り除く技術が記載されているが、この方法では衣類についた軽いしわは取り除けるが、深いしわを完全に除去するのは困難である。特許文献2にはシリコーンと皮膜形成ポリマーからなるしわを減少させる組成物、及び特許文献3には特定のアルコール、グリセリン、非イオン性界面活性剤と水から成るしわ取り用水性組成物に関する技術が開示されており、どちらも布帛にスプレー噴霧した後で吊り下げて自然乾燥するか、アイロンがけを行うことでしわを除去する技術が記載されているが、自然乾燥だけでは十分にしわを除去することができず、またアイロンがけはしわ取りには非常に効果的であるが、手間が掛かる作業である上、風合いを損ねる可能性がある。特許文献4には接着性ポリマーと未複合シクロデキストリンからなるシワおよび悪臭減少組成物に関する技術が記載されているが、しわ除去性能は十分ではない。
【0004】
かかる状況から、繊維製品に対して、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、風合いを損なうことなく繊維製品のしわを除去することができるしわ除去剤組成物の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−25660号公報
【特許文献2】特開平10−508911号公報
【特許文献3】特開平1−6174号公報
【特許文献4】特開2003−525356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても繊維製品のしわを除去することができるしわ除去剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、一般式(a1)で表される基〔以下、基(a)という〕で置換されている多糖誘導体(a)〔以下、(a)成分という〕を0.001〜1質量%、水を70質量%以上含有し、25℃におけるpHが5〜9であり、25℃における粘度が15mPa・s以下である、しわ除去剤組成物に関する。
−R1−(OA)a−B−R2 (a1)
〔式中、R1はヒドロキシ基又はオキソ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、Aは炭素数1〜6のアルキレン基、Bは−O−、−COO−及び−OCO−から選ばれる基を示し、R2はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を示す。aは平均付加モル数を示し0〜100の数であり、a個のAは同一でも異なってもよい。〕
【0007】
また、本発明は、上記本発明のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のしわ除去剤組成物は、繊維製品の繊維潤滑性を向上できることから、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、繊維製品のしわを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、基(a1)で置換されている多糖誘導体である。尚、基(a1)中のヒドロキシ基の水素原子は更に基(a1)で置換されていてもよい。
【0010】
多糖類としては、セルロース、グァーガム、デンプン、プルラン、デキストラン、フルクタン、マンナン、寒天、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン等の多糖、これらの多糖にメチル基、エチル基等のアルキル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基等が置換した多糖誘導体が挙げられる。これらの置換基は、構成単糖残基中に単独で又は複数の組み合わせで置換することができ、これら多糖誘導体の例としては、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)セルロース、アルキル(炭素数1〜3)セルロース、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)デンプン、アルキル(炭素数1〜3)デンプン、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)グァーガム、アルキル(炭素数1〜3)グァーガム等が挙げられる。多糖誘導体において、アルキル基、ヒドロキシアルキル基の置換度は、構成単糖残基当たり0.01〜3.5が好ましく、0.1〜3がより好ましく、1〜3が更に好ましく、1.5〜2.8が特に好ましい。また、上記多糖誘導体の置換基は、ヒドロキシエチル基やヒドロキシプロピル基のヒドロキシ基に更に置換して、例えばポリオキシエチレン鎖等を形成することで、構成単糖残基当たり3.0を超える置換度も可能であり、その構成単糖残基当たりの置換度は0.1〜10.0、特に0.5〜5.0が好ましい。
【0011】
多糖類としては、セルロース、デンプン、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)セルロース、アルキル(炭素数1〜3)セルロースが好ましく、特にヒドロキシエチルセルロースが好ましい。また、多糖類の重量平均分子量は、好ましくは1万〜200万、より好ましくは5万〜150万、更に好ましくは5万〜100万、特に好ましくは10万〜100万である。なお、重量平均分子量は、パルスアンペロメトリック検出器付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)やキャピラリー電気泳動法により求めることができる。
【0012】
本発明の(a)成分の製法は特に限定されないが、多糖類又はその誘導体を水溶性アルコール溶媒に溶解又は分散させ、アルカリの存在下、下記一般式(A1)で表される基を有するポリオキシアルキレン化剤を反応させることにより得られる。
−E3−(OA)a−B−R2 (A1)
〔式中、E3は炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、又はカルボキシ基若しくは炭素数2〜6のカルボキシアルキル基若しくはそれらの誘導体を示し、Aは炭素数1〜6のアルキレン基、Bは−O−、−COO−及び−OCO−から選ばれる基を示し、R2はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を示す。aは平均付加モル数を示し0〜100の数であり、a個のAは同一でも異なってもよい。〕
【0013】
反応に用いるアルカリとしては、特に限定されないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等が挙げられ、なかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が好ましい。アルカリの使用量は、用いるポリオキシアルキレン化剤に対して0.01〜10モル倍量、特に0.1〜5モル倍量が良好な結果を与え、好ましい。
【0014】
溶媒としては、低級アルコール、例えばイソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等が挙げられる。多糖類又はその誘導体を膨潤させてポリオキシアルキレン化剤との反応性を高める目的で、これら低級アルコールに対し、1〜50重量%、更に好ましくは2〜30重量%の水を加えた混合溶媒を用いて反応を行うことが好ましい。
【0015】
反応温度は0〜200℃、特に30〜100℃の範囲が好ましい。反応終了後は、酸を用いてアルカリを中和する。酸としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、乳酸等の有機酸を用いることができる。
【0016】
このようにして得られた本発明の(a)成分は、ろ過などにより分別して、そのまま使用することもできるが、必要に応じて、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶媒等で洗浄して未反応のポリオキシアルキレン化剤や中和等により副生した塩類を除去して使用することもできる。
【0017】
基(a1)において、R1は、好ましくはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基、1−ヒドロキシトリメチレン基、1−オキソエチレン基、1−オキソトリメチレン基、1−メチル−2−オキソエチレン基であり、特に2−ヒドロキシトリメチレン基、1−ヒドロキシトリメチレン基が好ましい。Aとしては、ヒドロキシ基又はオキソ基で置換されていてもよい炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、具体的にはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基、1−ヒドロキシトリメチレン基、1−オキソエチレン基、1−オキソトリメチレン基、1−メチル−2−オキソエチレン基等が挙げられ、エチレン基、プロピレン基が好ましい。Bは、好ましくは−O−である。R2は、好ましくはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数5〜25のアルキル基、より好ましくは6〜20のアルキル基、更に好ましくは8〜20である。aは、好ましくは0〜80、より好ましくは0〜60、更に好ましくは0〜40である。
【0018】
本発明の(a)成分における、基(a1)の置換度は、多糖類又はその誘導体の構成単糖残基当たり0.0001〜1.0が好ましく、0.0005〜0.5がより好ましく、0.001〜0.1が更に好ましく、0.001〜0.05が更に好ましく、0.001〜0.03が特に好ましい。
【0019】
本発明の(a)成分は、繊維潤滑性の観点から、多糖類又はその誘導体の重量平均分子量と基(a1)の置換度との積[(多糖類又はその誘導体の重量平均分子量)×(基(a1)の置換度)]が、好ましくは10〜50,000、より好ましくは100〜20,000、更に好ましくは100〜10,000である。多糖類又はその誘導体の重量平均分子量と基(a1)の置換度との積は、(a)成分である多糖類又はその誘導体一分子あたりの置換数に相関しており、上記数値範囲の場合に繊維表面に吸着した(a)成分の広がりが潤滑性を向上させるに有利な状態となったものと推定している。
【0020】
<しわ除去剤組成物>
本発明のしわ除去剤組成物中の(a)成分の含有量は、使用形態、繊維製品の種類、しわの程度によって適宜調整することができる。
【0021】
(a)成分の組成物中の含有量は、0.001〜1質量%、好ましくは0.002〜1質量%、より好ましくは0.005〜1質量%、更に好ましくは0.005〜0.5質量%、特に好ましくは0.005〜0.3質量%である。
【0022】
本発明のしわ除去剤組成物において、(a)成分以外の残部は水である。使用する水は、蒸留水やイオン交換水等からイオン成分を除去したものが好ましい。水の組成物中の含有量は、70質量%以上、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.9%である。
【0023】
また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、及び一般に添加される各種の溶剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、消臭剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、染料、顔料、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0024】
界面活性剤としては、特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(2)で表される化合物が、しわ除去性能の点から、特に好ましい。
3−Z−[(EO)s/(PO)t]−R4 (2)
〔式(2)中、R3は、炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R4は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは−O−又は−COO−のいずれかであり、EOは、オキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、(EO)と(PO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(EO)と(PO)の付加順序は問わない。s及びtは平均付加モル数であり、s+tの合計は5〜15の数であり、tは2以下の数である。〕
【0025】
しわ除去性能向上の観点から、一般式(2)で表される化合物のR3は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、R4は、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
【0026】
また、一般式(2)のsは、好ましくは5〜14の数、より好ましくは5〜13、更に好ましくは5〜12であり、tは好ましくは0である。一般式(2)で表される化合物としては、ポリオキシエチレン(n=6〜12)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシチレン(n=6〜13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、更にポリオキシエチレン(n=6〜12)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテルから選ばれる1種以上が特に好ましい。ここで、nはオキシエチレン基の平均付加モル数である。
【0027】
界面活性剤の組成物中の含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%、更に好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%である。
【0028】
溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数3〜4)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。これらの中では、エタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。
【0029】
溶剤の組成物中の含有量は、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.005〜30質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%である。
【0030】
本発明のしわ除去剤組成物の25℃におけるpHは、5〜9に調整することが好ましく、皮膚刺激低減の観点から、pHは6〜9が好ましく、6.5〜8.5が更に好ましい。本発明のしわ除去剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。
【0031】
本発明のしわ除去剤組成物の25℃における粘度は、スプレー容器での噴霧適性の観点から、15mPa・s以下であり、好ましくは1〜10mPa・s、より好ましくは1〜5mPa・sである。本発明のしわ除去剤組成物において、25℃における粘度が15mPa・s以下であると噴霧パターンが適正となる。粘度は、東京計器株式会社製、B型粘度計(モデル形式BM)に、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備し、試料をトールビーカーに充填し、25℃の恒温槽内にて25℃に調製し、恒温に調製された試料を粘度計にセットし、ローターの回転数を60r/minに設定し、回転を始めてから60秒後に測定した粘度である。
【0032】
本発明のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してスプレー式しわ除去剤を得ることができる。本発明のしわ除去剤組成物は水を含有するミストタイプであり、これをスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器、耐圧容器を具備したエアゾールスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。性能を効果的に発現するために、トリガー式スプレーヤーあるいはエアゾールスプレーヤーを具備するスプレー容器が好ましく、特に、本発明においては、耐久性や布付着性の点から、トリガー式スプレーヤーを具備するスプレー容器が好ましい。
【0033】
スプレー容器としては、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における噴霧液滴の平均粒径が10〜200μmとなり、噴射口から噴射方向に15cm離れた地点における粒径200μmを超える液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となり、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における粒径10μm未満の液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となる噴霧手段を備えたものが好ましい。噴霧液滴の粒子径分布は、例えば、レーザー回折式粒度分布計(日本電子株式会社製)により測定することができる。
【0034】
このように、本発明では、本発明のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去剤物品を得ることができる。本発明のしわ除去剤組成物及びスプレー式しわ除去剤は、繊維製品用として好適であり、かかるしわ除去剤組成物は、噴霧により繊維製品に付着させて、対象物のしわを低減させることが好ましく、前記スプレー式しわ除去剤はこの方法に好適に用いられる。繊維製品としては、スーツ、セーター等の衣類、カーテン、ソファー等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
実施例1〜6及び比較例1〜2
<しわ除去剤組成物の調製>
表1に示す配合処方のしわ除去剤組成物を調製した。得られた組成物は、pH調整剤である1規定の塩酸又は1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH8(25℃)に調整した後、75μmのステンレス製メッシュ(200メッシュ)にてろ過した。表1中の記号の成分は下記のとおりである。
【0036】
(a)成分
・a−1:下記合成例1で製造した化合物
・a−2:下記合成例2で製造した化合物
・a−3:下記合成例3で製造した化合物
・a−4:下記合成例4で製造した化合物
・a−5:下記合成例5で製造した化合物
・a−6:下記合成例6で製造した化合物
【0037】
合成例1:(a−1)の合成
重量平均分子量20万、ヒドロキシエチル基の置換度2.5のヒドロキシエチルセルロース(NATROSOL 250G、ハーキューレス社製)160g、含水80%イソプロピルアルコール1280g、48%水酸化ナトリウム水溶液9.8gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下、室温で30分撹拌した。この溶液にC1225O−(CH2CH2O)13−CH2−C23Oを31.8g加え、80℃で8時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ過した。反応生成物をイソプロピルアルコール700gで2回洗浄後、減圧下60℃で一昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体(a−1)152gを得た。得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体のポリオキシアルキレン基を含む置換基(a1)の置換度は0.014であった。
【0038】
合成例2:(a−2)の合成
重量平均分子量50万、ヒドロキシエチル基の置換度1.8のヒドロキシエチルセルロース(HEC−QP−4400H、ユニオンカーバイド社製)80g、含水80%イソプロピルアルコール640g、48%水酸化ナトリウム水溶液5.34gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下、室温で30分撹拌した。この溶液にC1225O−(CH2CH2O)13−CH2−C23Oを12.78g加え、80℃で8時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ過した。反応生成物をイソプロピルアルコール700gで2回洗浄後、減圧下60℃で一昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体(a−2)73gを得た。得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体のポリオキシアルキレン基を含む置換基(a1)の置換度は0.004であった。
【0039】
合成例3:(a−3)の合成
重量平均分子量20万、ヒドロキシエチル基の置換度2.5のヒドロキシエチルセルロース(SE400、ダイセル化学工業製)40g、含水85%イソプロピルアルコール212g、48%水酸化ナトリウム水溶液2.5gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下、室温で30分撹拌した。この溶液にC1225O−(CH2CH2O)13−CH2−C23Oを2.00g加え、80℃で9時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ過した。反応生成物をイソプロピルアルコール240gで2回洗浄後、減圧下60℃で一昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体(a−3)38gを得た。得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体のポリオキシアルキレン基を含む置換基(a1)の置換度は0.004であった。
【0040】
合成例4:(a−4)の合成
重量平均分子量10万、ヒドロキシエチル基の置換度2.5のヒドロキシエチルセルロース(NATROSOL 250LR、ハーキューレス社製)40g、含水85%イソプロピルアルコール212g、48%水酸化ナトリウム水溶液2.5gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下、室温で30分撹拌した。この溶液にC1225O−(CH2CH2O)13−CH2−C23Oを6.21g加え、80℃で9時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ過した。反応生成物をイソプロピルアルコール240gで2回洗浄後、減圧下60℃で一昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体(a−4)40gを得た。得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体のポリオキシアルキレン基を含む置換基(a1)の置換度は0.012であった。
【0041】
合成例5:(a−5)の合成
重量平均分子量20万、ヒドロキシエチル基の置換度2.5のヒドロキシエチルセルロース(NATROSOL 250G、ハーキューレス社製)40g、含水85%イソプロピルアルコール212g、48%水酸化ナトリウム水溶液2.5gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下、室温で30分撹拌した。この溶液にC1225O−(CH2CH2O)19−CH2−C23Oを14g加え、80℃で9時間反応させてポリオキシアルキレン化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ過した。反応生成物をイソプロピルアルコール240gで2回洗浄後、減圧下60℃で一昼夜乾燥し、ポリオキシアルキレン化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体(a−5)42gを得た。得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体のポリオキシアルキレン基を含む置換基(a1)の置換度は0.009であった。
【0042】
合成例6:(a−6)の合成
重量平均分子量20万、ヒドロキシエチル基の置換度2.5のヒドロキシエチルセルロース(SE400、ダイセル化学工業製)40g、含水85%イソプロピルアルコール212g、48%水酸化ナトリウム水溶液2.5gを混合してスラリー液を調製し、窒素雰囲気下、室温で30分撹拌した。この溶液にC1429O−CH2−C23Oを1.3g加え、80℃で9時間反応させてアルキル化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ過した。反応生成物をイソプロピルアルコール240gで2回洗浄後、減圧下60℃で一昼夜乾燥し、アルキル化されたヒドロキシエチルセルロース誘導体(a−6)40gを得た。得られたヒドロキシエチルセルロース誘導体のアルキル基を含む置換基(a1)の置換度は0.009であった。
【0043】
<繊維潤滑性評価>
(1)試験片
木綿ブロード布((株)谷頭商店)1.8kgを市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で5回繰り返し洗濯した〔洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)36L使用、洗濯10分−脱水3分−すすぎ8分(流水すすぎ、水量15L/min.)〕。洗濯した木綿ブロード布を乾燥させた後、JIS L1096に記載の糸引抜き法(A法の図44)に準じて試験片に中央の糸を1本残して裁断する以外は同様のものを作製し、本試験における試験片として用いた。試験片の概略を図1に示す。
【0044】
(2)繊維潤滑性の評価
上記方法にて作成した試験片に対し、表1に示すしわ除去剤組成物をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて試験布乾燥時質量に対して50質量%噴霧した後、テンシロン万能試験機(RTC−1210A、(株)オリエンテック社製)を用いて、試験速度5mm/min、荷重レンジ5N、チャック間距離50mmにて引っ張った際の最大静止摩擦力を測定した。測定は、各サンプルについて10回行い、平均点を求めた。繊維潤滑性は、下記式に従い、イオン交換水を噴霧したサンプル(対照)と各サンプルの最大静止摩擦力の差として表した。この評価での繊維潤滑性としては、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましい。
繊維潤滑性=[対照の最大静止摩擦力(N)]−[サンプルの最大静止摩擦力(N)]
【0045】
【表1】

【0046】
表中、分子量×置換度は、多糖類又はその誘導体の重量平均分子量と基(a1)の置換度との積[(多糖類又はその誘導体の重量平均分子量)×(基(a1)の置換度)]である。また、a’−1、a’−2は以下のものである。
・a’−1:カルボキシメチルセルロース(CMC1120、ダイセル化学工業株式会社製)
・a’−2:アルギン酸ナトリウム(ULV−L5、君津化学工業株式会社製)
【0047】
表1から、比較例1及び2の組成物は、繊維潤滑性が乏しいのに対し、実施例1〜6のしわ除去剤組成物は、繊維潤滑性が優れ、実衣料におけるしわ除去性能も優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例、比較例の繊維潤滑性評価に用いた試験片の概略を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、一般式(a1)で表される基で置換されている多糖誘導体(a)を0.001〜1質量%、水を70質量%以上含有し、25℃におけるpHが5〜9であり、25℃における粘度が15mPa・s以下である、しわ除去剤組成物。
−R1−(OA)a−B−R2 (a1)
〔式中、R1はヒドロキシ基又はオキソ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、Aは炭素数1〜6のアルキレン基、Bは−O−、−COO−及び−OCO−から選ばれる基を示し、R2はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数4〜30のアルキル基を示す。aは平均付加モル数を示し0〜100の数であり、a個のAは同一でも異なってもよい。〕
【請求項2】
請求項1記載のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去剤。
【請求項3】
スプレー容器がトリガー式スプレーヤーを具備する請求項2記載のしわ除去剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−95811(P2010−95811A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265892(P2008−265892)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】