説明

せん断総抜型

【課題】被加工材から打ち抜かれエジェクタ側に保持されているワークの保持を解除するとき、油圧機構を用いることなくワークの保持解除をするせん断総抜型を提供することである。
【解決手段】せん断総抜型は、主パンチ113と、主パンチ113に向けて常時附勢されるように附勢手段124を介して台座に設置されたエジェクタ123と、附勢手段124の附勢力に抗した型締め位置にあるエジェクタ123の位置を一定の期間保持可能な位置保持手段とを備えている。位置保持手段は、エジェクタ123の外周面に設けられた凹部123aに先端が嵌め込み可能な嵌め込み突起142aと、嵌め込み突起142aをエジェクタ123外周面に向けて附勢する嵌め込み突起用附勢手段141と、型開き動作により、上型120と下型110が一定量型開きしたときに、前記嵌め込み突起142aと前記凹部123aの嵌め込み状態を解除する解除手段130とから成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断総抜型に関し、詳しくは、下型と上型との間に被加工材を挟み込み加圧しながらせん断を行うせん断総抜型に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプレス機として、例えば、主パンチと該主パンチの回りに配設されたストリッパとを備えた下型と、該主パンチに対して対向配置されたエジェクタと該エジェクタの回りに配設されたダイとを備えた上型との間に被加工材を挟み込み該上下型の型締め動作によって、該主パンチが該被加工材からワークを打ち抜くせん断総抜型が既に知られている。このプレス機で打ち抜かれたワークは、型開き後、上型側に保持された状態となっている。そのため、この保持を解除させるために、油圧機構(例えば、油圧シリンダー)を作動させて、保持されたワークを下方へ落下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平6−31695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したプレス機では、ワークの生産効率を向上させるため、油圧機構を廃止しメカ機構(モータおよびリンク機構)を用いて実施されることがあった。その場合、メカ機構の高速化によって、ワークの打ち抜き速度を向上させることは可能であった。このとき、エジェクタは常に附勢力を有する附勢部材により主パンチに向けて作用力を受けるため、打ち抜かれたワークは型開きと同時に被加工材側に押し戻され、結果としてワークと被加工材が干渉することとなっていた。すなわち、ワークを打ち抜いたことで被加工材に形成されるワーク孔に、打ち抜かれたワークが、再度、嵌まり込んでしまうこととなっていた。このことを防ぐために、打ち抜かれたワークの保持解除には油圧機構を用いており、この油圧機構が時間的な障害となっていた。そのため、ワークの打ち抜き速度を向上させても、打ち抜かれたワークの保持解除に要する速度を向上させることができないため、結局、ワークの生産効率を向上させることができなかった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、被加工材から打ち抜かれエジェクタ側に保持されているワークの保持を解除するとき、油圧機構を用いることなくワークの保持解除をするせん断総抜型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、上型と、上型と対向配置された下型とによって被加工材を挟み込んだ状態でせん断加工を行い、該被加工材からワークを打ち抜くせん断総抜型であって、前記上型あるいは下型に備えられ、被加工材から所望の形状をなすワークを打ち抜くための主パンチと、対向するもう一方の型に備えられ、前記主パンチに対向配置され、主パンチに向けて常時附勢されるように附勢手段を介して台座に設置されたエジェクタと、前記附勢手段の附勢力に抗した型締め位置にあるエジェクタの位置を一定の期間保持可能な位置保持手段と、を備え、前記位置保持手段は、エジェクタの外周面に設けられた凹部に先端が嵌め込み可能な嵌め込み突起と、前記嵌め込み突起をエジェクタ外周面に向けて附勢する嵌め込み突起用附勢手段と、型開き動作により、上型と下型が一定量型開きしたときに、前記嵌め込み突起と前記凹部の嵌め込み状態を解除する解除手段とから成っており、前記解除手段は、前記上型に向けて前記被加工材の長手方向と同方向に前記下型に設けられた一対のアームからなっており、前記両アームの先端は、ガイド溝を有するように略U字形状に形成されており、前記略U字形状の両自由端のうち被加工材側の内面上端には、該ガイド溝の溝幅が狭まるように盛り上がり部が形成されており、前記位置保持手段には、前記両アームのガイド溝内を移動可能な一対のロッドが形成されている構成である。
この構成によれば、被加工材から打ち抜かれエジェクタ側に保持されているワークの保持を解除するとき、油圧機構を用いることなくワークWの保持解除を実施できる。また、この構成によれば、アームの盛り上がり部によって、位置保持手段の嵌め込み突起がエジェクタの凹部に嵌め込まれた状態が解除されるため、簡便な構成でワークの保持解除を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明のせん断総抜型の一実施形態(基本例)を示す縦断面図であり、上型の型開き状態(上死点)を示している。
【図2】図2は、図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は、上下型に被加工材を挟み込んだ状態を示している。
【図4】図4は、上型の型閉め状態(下死点)を示している。
【図5】図5は、上型の型開きの途中状態を示しており、バックアップブロックの鍔がガイドに引っ掛かった状態を示している。
【図6】図6は、図5に示す状態から、さらに上型を型開きさせ、型開きの僅かに手前状態を示している。
【図7】図7は、上型の型開き状態を示している。
【図8】図8は、本発明のせん断総抜型の他の実施形態(実施例)を示す縦断面図であり、型開き状態(上死点)を表している。
【図9】図9は、図8のB−B断面図であり、ダイ25の記載を省いたものである。
【図10】図10は、図8の型締め状態(下死点)を表している。
【図11】図11は、図10の型締め状態から型開きした状態を表している。
【図12】図12は、図11を、さらに型開きさせた状態を表している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
(基本例)
まず、本発明の基本例(本発明の前提となる実施の形態)を、図1〜7を用いて説明する。図1は、本発明のせん断総抜型の一実施形態(基本例)を示す縦断面図であり、上型の型開き状態(上死点)を示している。なお、この縦断面図では、長板形状の金属板である被加工材Mが紙面の手前から奥方向に向けて連続して供給されている状態を表している。そして、このプレス機は、複数の公知の工程を経て順送りされる被加工材Mから所望するワークWを打ち抜くものである。
【0009】
図2は、図1のA−A線断面図である。図3は、上下型に被加工材を挟み込んだ状態を示している。図4は、上型の型閉め状態(下死点)を示している。図5は、上型の型開きの途中状態を示しており、バックアップブロックの鍔がガイドに引っ掛かった状態を示している。図6は、図5に示す状態から、さらに上型を型開きさせ、型開きの僅かに手前状態を示している。図7は、上型の型開き状態を示している。なお、このプレス機は、例えば自動車用シートのリクライニング機構を構成する部材を成形するプレス機である。
【0010】
はじめに、図1〜2を参照して基本例のせん断総抜型を説明する。このプレス機は、固定型である下型10と、この下型10と対向配置された可動型である上型20との間に被加工材Mを挟み込んで、これら上下型10、20の型閉めを行うことによって、この被加工材MからワークWの打ち抜きを行っている。以下に、これら下型10と上型20の構成を個別に説明する。
【0011】
まず、下型10を説明する。下型10は、下台11と、主パンチ13と、ストリッパ15と、ガイド16とから主として構成されている。下台11は、図示しない地面に固定されたベースとなる部材である。主パンチ13は、下台11の上面において、下台11に対して一体となるように組み付けられており、被加工材MからワークWを打ち抜くための部材である。
【0012】
ストリッパ15は、その上面に形成の凹部15aに被加工材Mを載置するための部材である。このストリッパ15は、下台11の上面において、第1の弾性部材14(例えば、ガススプリング、圧縮ばね等)によって上方に向けて附勢された状態で主パンチ13に対して相対移動可能に組み付けられている。ガイド16は、後述するバックアップブロック50のロッド53の上下動の移動範囲を規制するための部材である。このガイド16は、ガイド溝16aを有する略逆U字状に形成されており、下台11の上面において、ストリッパ15に並設される格好で下台11に対して一体となるように組み付けられている。
【0013】
次に、上型20を説明する。上型20は、上台21と、従パンチ22と、エジェクタ23と、ダイ25と、エジェクタブロック42と、バックアップブロック50とから主として構成されている。上台21は、図示しない昇降手段によって地面に対して昇降可能に構成されたベースとなる部材である。従パンチ22は、上台21の下面において、上台21に対して一体となるように組み付けられており、打ち抜かれたワークWから、さらに不要部分であるスクラップSを打ち抜くための部材である。
【0014】
エジェクタ23は、主パンチ13によって被加工材MからワークWを打ち抜くとき、被加工材MのうちワークWに相当する部分を上方から押し当てるための部材である。このエジェクタ23は、上台21の下面において、第2の弾性部材24(例えば、ガススプリング、圧縮ばね等)によって下方に向けて附勢された状態で従パンチ22に対して相対移動可能に組み付けられている。また、エジェクタ23には、その上部の外径が下部の外径より大きくなる段差23bが形成されている。エジェクタ23の外周面のうち、段差23bを境とする上部側の外周面には、凹部23aが形成されている。
【0015】
ダイ25は、主パンチ13によって被加工材MからワークWを打ち抜くとき、被加工材MのうちワークWの周りに相当する部分を上方から押し当てるための部材である。このダイ25は、上台21の下面において、上台21に対して一体となるように組み付けられている。また、ダイ25には、エジェクタ23の凹部23aと連通する格好となる水平中空部25aと、この水平中空部25aと垂直に交わる鉛直中空部25bが形成されている。
【0016】
エジェクタブロック42は、ダイ25の水平中空部25aの内部をエジェクタ23の凹部23aに向けて水平移動可能に設けられた部材である。このエジェクタブロック42は、その水平移動方向の前後に前ローラ43と後ローラ44が設けられている。また、エジェクタブロック42は、その前ローラ43の高さ位置とエジェクタ23の凹部23aの高さ位置が一致したときに、その前ローラ43がエジェクタ23の凹部23aに嵌め込まれる格好となるように第3の弾性部材41(例えば、ガススプリング、圧縮ばね等)によって附勢されている。
【0017】
バックアップブロック50は、ダイ25の鉛直中空部25bの内部を鉛直移動可能に設けられた部材である。バックアップブロック50の上端には、側面視略L字状の切欠51が形成されている。また、バックアップブロック50の上端には、エジェクタブロック42の後部を差し込むためのスリット52が形成されている(図2参照)。これにより、エジェクタブロック42を水平移動させたとき、エジェクタブロック42の後ローラ44をバックアップブロック50の切欠51に嵌め込ませることができる。
【0018】
一方、バックアップブロック50の下端には、圧縮ばね54を嵌挿したロッド53が一体となるように組み付けられている。このロッド53は、下型10のガイド16のガイド溝16aに差し込まれる格好で組み付けられている。そして、ロッド53の先端には、鍔53aが形成されている。これにより、既に説明したようにロッド53の上下動の移動範囲が規制される格好となるため、結果として上型20の上昇に伴ってバックアップブロック50が上昇していった場合でも、バックアップブロック50の上下動の移動範囲が規制される格好となる。
【0019】
圧縮ばね54は、その一端がバックアップブロック50の下端に接触するように、且つ、その他端がダイ25の座面25cに接触するようにロッド53に嵌挿されている。これにより、バックアップブロック50は、上方に向けて附勢された状態となっている。
【0020】
続いて、上述した構成からなるせん断総抜型の動作を説明する。まず、図示しないリフタによって持ち上げられた状態で被加工材Mが送られてくると(図1参照)、下型10に向けて上型20を下降させていく。すると、上型20のうち被加工材Mを望む各部が、被加工材Mに対して接触を開始する。これにより、リフタは下方に押し込まれて被加工材Mはストリッパ15の凹部15aにセットされる(図3参照)。
【0021】
さらに、上型20を下降させていき、ダイ25および従パンチ22によって被加工材Mを加圧していく。すると、主パンチ13からの反力によって被加工材MからワークWが打ち抜かれる。これと同時に、従パンチ22によって打ち抜かれたワークWからスクラップSが打ち抜かれる。このとき、打ち抜かれたワークWがダイ25に嵌り込み、嵌り込んだワークWからの反力によってエジェクタ23は第2の弾性部材24の附勢力に抗して上昇していく。このとき、ワークWは、ダイ25の内周面と自身(ワークW)の外周面との間に生じる摩擦力によって保持される格好となる。
【0022】
そして、上昇したエジェクタ23の高さ位置が、エジェクタブロック42の高さ位置に到達すると、第3の弾性部材41の附勢力によって、エジェクタブロック42の前ローラ43はエジェクタ23の凹部23aに嵌り込む。これにより、ダイ25に対するエジェクタ23の上昇状態が保持される格好となる。
【0023】
このとき、エジェクタブロック42の後ローラ44がバックアップブロック50の切欠51から脱落する格好となる。これにより、圧縮ばね54の附勢力によってバックアップブロック50が上昇する格好となるため、エジェクタブロック42の後ローラ44はバックアップブロック50によって押し当てられた状態となる。そのため、エジェクタ23の凹部23aに嵌り込んだエジェクタブロック42の前ローラ43が抜け出ることを防止することができる。したがって、エジェクタ23の上昇状態が確実に保持される格好となる(図4参照)。
【0024】
その後、上型20を上昇させていくと、その上昇途中にバックアップブロック50のロッド53の鍔53aがガイド16に引っ掛かり、既に説明したようにバックアップブロック50の上昇が規制される格好となる(図5参照)。このことが、特許請求の範囲に記載の「上下型が型閉め状態から所定量だけ型開きした状態になると」に相当する。これにより、これ以降、さらに、上型20を上昇させていくと、エジェクタブロック42の後ローラ44に対するバックアップブロック50の押し当て状態は解除される格好となる(図6参照)。また、これ以降、さらに、上型20を上昇させていくと、圧縮ばね54は縮んだ状態となっていく。
【0025】
このように押し当て状態が解除されると、エジェクタ23は第2の弾性部材24の附勢力によって下降していく。すなわち、エジェクタ23は、既に説明したように、第2の弾性部材24の附勢力に抗して上昇していたため、この附勢力によって下降する格好となる。そして、この下降によってダイ25に保持されたワークWは自由落下する。もちろん、自由落下したワークWは、その落下タイミングを見計らって、公知手段である図示しないワーク取り出しシャベルによって回収される。
【0026】
また、この下降によってエジェクタブロック42は、その前ローラ43がエジェクタ23の凹部23aに嵌り込んだ状態から嵌り込む前の状態へと戻される(図7参照)。このとき、エジェクタブロック42の後ローラ44は、バックアップブロック50の切欠51に嵌り込む格好となる。なお、これらの動作を成し得るために、第2の弾性部材24と第3の弾性部材41の各ばね定数は所定の数値にそれぞれ設定されていることは言うまでもない。
【0027】
本発明の基本例に係るせん断総抜型は、上述したように構成されている。この構成によれば、被加工材Mから打ち抜かれエジェクタ23側に保持されているワークWの保持を解除するとき、油圧機構を用いることなくワークWの保持解除を実施できる。また、この保持解除を、下型10と上型20との型開きごとに確実に実施できる。そのため、ワークWの打ち抜きに係る速度を向上させると、必然的にワークWの取り出しに係る速度を向上させることになる。したがって、ワークWの生産効率を向上させることができる。また、油圧機構を用いることがないため、ワークWの製品精度のバラツキ度合いを低減させることができる。
【0028】
次に、本発明の実施例を、図8〜12を用いて説明する。この実施例は、既に説明した基本例と比較すると、上昇したエジェクタ23の凹部23aに嵌り込んだエジェクタブロック42の保持を第3の弾性部材41によってのみ行う構成である。すなわち、上昇したエジェクタ23の凹部23aに嵌り込んだエジェクタブロック42を押し当てるバックアップブロック50を必要としない構成である。図8は、本発明のせん断総抜型の他の実施形態(実施例)を示す縦断面図であり、型開き状態(上死点)を表している。
【0029】
図9は、図8のB−B線断面図であり、ダイ25の記載を省いたものである。図10は、図8の型締め状態(下死点)を表している。図11は、図10の型締め状態から型開きした状態を表している。図12は、図11を、さらに型開きさせた状態を表している。なお、このプレス機は、基本例と同様に、例えば自動車用シートのリクライニング機構を構成する部材を成形するプレス機である。
【0030】
はじめに、図8〜9を参照して本発明のせん断総抜型を説明する。
このプレス機は、固定型である下型110と、該下型110に対して昇降可能な上型120との型締めによって被加工材MからワークWを打ち抜く工程(プレス工程)と、その打ち抜き工程によって打ち抜かれ上型120側に保持されたワークWを取り出す工程(払い出し工程)とを備えている。以下に、これら下型110と上型120とを個別に詳述する。
【0031】
まず、下型110を説明する。下型110は、下台111と、該下台111の上面に配設され、打ち抜くワークの形状をなす下パンチ113と、該下パンチ113の回りに配設されたストリッパ(板押さえ)115とによって構成されている。この下パンチ113は、被加工材MからワークWを打ち抜くパンチであり、特許請求の範囲に記載の主パンチに相当する。なお、ストリッパ115は、弾性部材であるガススプリング114を介して下台111に取り付けられている。これによりストリッパ115は、下パンチ113に対して昇降可能となっている。
【0032】
また、下台111には、下型110に載置する被加工材Mの長手方向と同方向に、すなわち、図8において、紙面の手前と奥方向に、一対のアーム130、130が上型120に向けて設けられている。この両アーム130の先端は、ガイド溝(図8において、縦方向の溝)131を有するように略U字形状に形成されている。また、この略U字形状の両自由端のうち被加工材M側(図8において、右側)の内面上端には、ガイド溝131の溝幅が狭まるように盛り上がり部132が形成されている。
【0033】
次に、上型120を説明する。上型120は、上台121と、該上台121の下面に配設され、下パンチ113と略同一形状をなす上パンチ122と、該上パンチ122の回りに配設されたエジェクタ(逆押さえ)123と、該エジェクタ123の回りに配設されたダイ125によって構成されている。この上パンチ122は、下パンチ113によって打ち抜かれるワークWからスクラップSを打ち抜くパンチであり、特許請求の範囲に記載の従パンチに相当する。なお、エジェクタ123は、弾性部材であるガススプリング124を介して上台121に取り付けられている。これによりエジェクタ123は、上パンチ122およびダイ125に対して昇降可能となっている。
【0034】
エジェクタ123の外周面には、凹部123aが形成されている。この凹部123aと連通するよう、ダイ125の内部には水平方向に中空部143が形成されている。この中空部143内には、凹部123aに向けて移動可能なエジェクタロック(特許請求の範囲に記載の位置保持手段および押圧体に相当)142が設けられている。このエジェクタロック142には、凹部123aに嵌め込み可能な嵌め込み突起142aと下台111に設けられた両アーム130のガイド溝131内を上下に移動可能な一対のロッド142bとが形成されている。また、エジェクタロック142の背面(図8において、左面)は、ダイ125に支持された架台140に取り付けられた圧縮バネ141(特許請求の範囲に記載の嵌め込み突起用附勢手段に相当)によって附勢されている。
【0035】
この圧縮バネ141によって、中空部143内において、常に、エジェクタロック142は凹部123aに向けて附勢されている。また、これにより、エジェクタロック142の両ロッド142bが両アーム130のガイド溝131内を上下に移動するとき、両ロッド142bは両アーム130における盛り上がり部132が形成されている側(図8において、右側)のガイド溝131内を押し当てられながら移動することになる。
【0036】
続いて、上述した構成から成るせん断総抜型のプレス工程と払い出し工程とを説明する。まず、プレス工程を説明する。図8に示すように、図示しないリフタによって持ち上げられた状態で被加工材Mが送られてくると、図10に示すように、上型120は下型110に向けて下降していく(型締め動作)。この下降によって、下型110と上型120の被加工材Mを臨む各部が、この被加工材Mに対し接触を開始する。さらに上型120が下降していき、ダイ125および上パンチ122が被加工材Mを加圧していく。
【0037】
すると、ガススプリング124が押し縮められエジェクタ123が上方へ押し込まれることで、下パンチ113によって被加工材MからワークWが打ち抜かれることになる。このとき、エジェクタ123の凹部123aの高さ位置がエジェクタロック142の嵌め込み突起142aの高さ位置に到達すると、エジェクタロック142の嵌め込み突起142aがエジェクタ123の凹部123aに嵌め込まれる。これにより、エジェクタ123はガススプリング124の弾性力に抗して上方に押し込まれた状態で保持されている。また、このとき、上パンチ122によってワークWから貫通孔Hが打ち抜かれることになる。なお、ワークWにおける貫通孔Hに相当する部材S(スクラップS)は、下パンチ113のパンチ孔112内へと抜き落とされることになる。
【0038】
このように、上型120と下型110との1回の型締めによって、被加工材MからワークWを打ち抜くことができると共に、打ち抜かれたワークWから不要となるスクラップSを打ち抜くことができる。その後、図11に示すように、上型120が上昇していく(型開き動作)。なお、この上昇動作以降が払い出し工程である。上型120が上昇中、ワークWは上型120側に保持された状態となっている。また、この上昇動作に伴って、エジェクタロック142の両ロッド142bは、既に説明したように、両アーム130のガイド溝131の内面を押し当てられながら上方へ移動していく。
【0039】
やがて、エジェクタロック142の両ロッド142bがガイド溝131の盛り上がり部132に到達すると、両ロッド142bは圧縮バネ141を押し縮めながらさらに上方へ移動していく(図12参照)。このとき、両ロッド142bは盛り上がり部132によって、エジェクタ123の凹部123aと反対方向へと移動されるため、エジェクタロック142の嵌め込み突起142aがエジェクタ123の凹部123aに嵌め込まれた状態が解除される。そのため、エジェクタ123がガススプリング124の弾性力に抗して上方に押し込まれた保持状態が解除される。したがって、ガススプリング124の復元力によってエジェクタ123は下方へ戻されることになり、この戻りによって上型120側に保持された状態となっていたワークWが下方へ押し出されて落下することになる。そして、ワークWが落下するタイミングを見計らって、公知手段であるワーク取り出しシャベル(図示しない)を動作させて落下中のワークWを取り寄せる。以降、被加工材Mは、リフタによって持ち上げられた状態で順送りされ、図8の状態へと戻される。
【0040】
本発明の実施例に係るせん断総抜型は、上述したように構成されている。この構成によれば、基本例のせん断総抜型と同様の作用効果を得ることができる。また、この構成によれば、基本例で説明したバックアップブロック50を必要としないため、基本例と比較すると簡便な構成で実施できる。
【0041】
また、アーム130の盛り上がり部132によって、エジェクタロック142の嵌め込み突起142aがエジェクタ123の凹部123aに嵌め込まれた状態が解除されるため、簡便な構成でワークWの保持解除を実施できる。また、実施例で説明したように、打ち抜いたワークWを上型120側に保持させると、保持させたワークWを取り出すとき、ワークWの自重を利用して取り出すことができる。これにより、簡便な構成で打ち抜いたワークWを取り出すことができる。
【0042】
また、実施例では、主パンチである下パンチ113を下型110に備え、その下パンチ113に対して対向配置されたエジェクタ123を上型120に備えた構成を例に説明した。しかし、これに限定されるものではなく、主パンチを上型120に備え、その主パンチに対して対向配置されたエジェクタを下型110に備える構成(実施例と上下が逆の構成)であっても構わない。
【符号の説明】
【0043】
10 下型
13 主パンチ
15 ストリッパ
20 上型
23 エジェクタ
23a 凹部
25 ダイ
50 バックアップブロック
110 下型
113 主パンチ(下パンチ)
115 ストリッパ
120 上型
122 従パンチ(上パンチ)
123 エジェクタ
123a 凹部
125 ダイ
130 アーム
131 ガイド溝
132 盛り上がり部
142 押圧体(エジェクタロック)
142a 嵌め込み突起
142b ロッド
M 被加工材
W ワーク
S スクラップ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と、上型と対向配置された下型とによって被加工材を挟み込んだ状態でせん断加工を行い、該被加工材からワークを打ち抜くせん断総抜型であって、
前記上型あるいは下型に備えられ、被加工材から所望の形状をなすワークを打ち抜くための主パンチと、
対向するもう一方の型に備えられ、前記主パンチに対向配置され、主パンチに向けて常時附勢されるように附勢手段を介して台座に設置されたエジェクタと、
前記附勢手段の附勢力に抗した型締め位置にあるエジェクタの位置を一定の期間保持可能 な位置保持手段と、を備え、
前記位置保持手段は、
エジェクタの外周面に設けられた凹部に先端が嵌め込み可能な嵌め込み突起と、
前記嵌め込み突起をエジェクタ外周面に向けて附勢する嵌め込み突起用附勢手段と、
型開き動作により、上型と下型が一定量型開きしたときに、前記嵌め込み突起と前記凹部の嵌め込み状態を解除する解除手段とから成っており、
前記解除手段は、
前記上型に向けて前記被加工材の長手方向と同方向に前記下型に設けられた一対のアームからなっており、
前記両アームの先端は、
ガイド溝を有するように略U字形状に形成されており、
前記略U字形状の両自由端のうち被加工材側の内面上端には、
該ガイド溝の溝幅が狭まるように盛り上がり部が形成されており、
前記位置保持手段には、
前記両アームのガイド溝内を移動可能な一対のロッドが形成されているせん断総抜型。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−91112(P2013−91112A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−29013(P2013−29013)
【出願日】平成25年2月18日(2013.2.18)
【分割の表示】特願2007−288436(P2007−288436)の分割
【原出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】