説明

つけ麺用吸水皿

【課題】 つけ麺から適度に吸水して水切り効果を保持しつつ、つけ麺が盛り付け面に付着して箸でつかめない等の問題を防ぎ、使い勝手がよく、しかも実用性を備えつつ個性的なデザインを反映させることのできるつけ麺用吸水皿を提供する。
【解決手段】 多孔質素材を使って吸水皿本体2が構成され、この吸水皿本体2の盛り付け面3は、多孔質素材が細線状に露出した線状吸水面31と、撥水性を有する細線状の線状撥水面32とを交互に隣接させた模様で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蕎麦、素麺、冷や麦、うどん、ラーメン等のつけ麺を盛り付ける皿に関し、特に皿に盛られたつけ麺から適度に水分を吸水して水切りを行えるつけ麺用吸水皿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、茹で上がった蕎麦等のつけ麺を盛り付ける場合、水切りざるを使って大まかに水を切った後、盛り皿や器にスノコ状の水切り板を置き、その上につけ麺を盛り付けて余分な水分を切るようにしている。これは、麺が水を吸いすぎると伸びて不味くなるし、喉ごしや食感が落ちるため、極力余分な水分を吸わせないように盛りつけているのである。
【0003】
このようなスノコ状の水切り板を使用することが慣習的に行われているところであるが、充分に乾燥させなければカビがつきやすい等の問題がある。また古くから慣用されている道具であるため、外観上面白味に欠け、デザインの工夫の余地が少なく、盛り皿にこだわるユーザには物足りない。
【0004】
ところで食品の水分を除去する皿に関する発明としては、例えば、特開平11−216055号公報に、上部表面に凹凸状の溝を複数設けた皿が提案されている(特許文献1)。当該皿に刺身や揚げ物などを載せるとドリップした液体や油が溝に流れ落ち、刺身や揚げ物と分離することができるため、美味しく食べられるとされる。
【0005】
また、実開平6−50574号公報には、片面段ボールの中芯側を上部表面として皿状に押圧裁断成形した段ボール製皿が提案されている(特許文献2)。当該段ボール製皿は、通常の段ボール紙が有する吸水性、吸油性を備えており、各種食品を載せるのにすぐれているとしている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−216055号公報
【特許文献2】実開平6−50574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、つけ麺には利用できない。なぜなら、溝に麺が落ちたり挟まるため、箸で麺をつかむことができないという問題があるからである。また、溝に落ちた麺は再び水に浸されることになり水切り効果が得られない。さらに、溝に落ちたり挟まった麺は除去しにくく、洗浄も難しいという問題もある。なお、溝の幅を麺よりも極端に細くすることも考えられるが、表面張力により溝に水分が流れ落ちにくくなるため、結局、水切り効果が充分に得られないという問題が生じるため採用できない。
【0008】
一方、特許文献2に記載された発明についても、つけ麺に適さない。なぜなら、麺が段ボール紙の表面に付着してしまって箸でつかみにくいという問題と、付着した麺が除去しにくいため洗浄が困難になるという問題があるからである。また、つけ麺に段ボール臭さが移ってしまうという問題もある。しかも段ボール紙は吸水する度に強度が低下するので、水切り目的には不向きである等、多くの課題が存在する。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、つけ麺から適度に吸水して水切り効果を保持しつつ、つけ麺が盛り付け面に付着して箸でつかめない等の問題を防ぎ、使い勝手がよく、しかも実用性を備えつつ個性的なデザインを反映させることのできるつけ麺用吸水皿を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るつけ麺用皿の特徴は、多孔質素材を使って吸水皿本体が構成され、この吸水皿本体の盛り付け面は、多孔質素材が細線状に露出した線状吸水面と、撥水性を有する細線状の線状撥水面とを交互に隣接させた模様で形成されている点にある。
【0011】
また、本発明において、前記吸水皿本体は、珪藻土を主成分とする焼結体で構成されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明において、前記珪藻土焼結体は、珪藻土を55〜65重量%の組成比率で含有してなることが好ましい。
【0013】
また、本発明において、前記線状撥水面は釉薬を焼結させて形成していることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明において、前記吸水皿本体の盛り付け面における線状吸水面と線状撥水面とが4:6の面積比に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、つけ麺から適度に吸水して適度な水切り効果を保持しつつ、つけ麺が盛り付け面に付着して箸でつかめない等の問題を防ぎ、使い勝手のよい実用性を保ちつつも個性的なデザインを反映させることのできるつけ麺用吸水皿を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るつけ麺用吸水皿の実施形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態における斜視図である。
【0017】
本実施形態は、多孔質素材によって構成された吸水皿本体2を備え、この吸水皿本体2の盛り付け面3には、多孔質素材が細線状に露出した線状吸水面31と、この線状吸水面31と交互に隣接し撥水性を有する細線状の線状撥水面32とが形成されている。
【0018】
吸水皿本体2に用いられる多孔質素材は、つけ麺に接する面から吸水して適度な水切り効果を保持するためのものであり、多数の連続気孔を有する珪藻土を主成分とする焼結体が用いられる。原料は、主に、珪藻土、バインダー、ガラス粉、硅石などから組成されており、特に珪藻土は焼結体の全体に対し55〜65重量%の最大組成比率(第1組成物)で含有されている。珪藻土の焼結体は、単に吸水するだけでなく、吸放湿機能を備えているため、つけ麺から水分を奪いすぎず適度に水切りできるメリットがある。特に稚内地域で採取できる稚内珪藻土は一般の珪藻土の3倍程度の吸放湿能力を有しており、素早くかつ適度に吸水したいニーズのあるつけ麺等には好適である。また、珪藻土焼結体に形成される孔は極めて細かく小径であるため雑菌が発生しにくいという特徴も兼ね備えており、つけ麺を載せるための素材としてはより好ましい。このような理由により、様々な多孔質焼結体のうちでも珪藻土、特に稚内珪藻土による焼結体が本実施形態のつけ麺用吸水皿1に最も好ましい。
【0019】
多孔質素材の原料は混ぜ作業、土練り作業が行われて皿状に成形される。本実施形態における吸水皿本体2は、つけ麺を盛りやすくするとともに、つけ麺からでる水分を皿の外に流出させないように、盛り付け面3の中央が凹状に形成されている。
【0020】
成形された吸水皿本体2は、乾燥・素焼きをして、釉薬を塗り、焼き物用の釜などで焼結(本焼き)される。乾燥・素焼き工程は、釉薬を塗るために適度な強度を備えさせるために行う工程である。また、釉薬は、一般的に焼結されると高質化し、表面の保護、撥水性(防水)、曲げ強度の向上などの効果を示すようになる。
【0021】
また、本実施形態における釉薬は、つけ麺が多孔質素材に付着するのを防止するための細線状の線状撥水面32を作成するのにも利用されている。釉薬を塗らずに本焼きされた珪藻土を主成分とする焼結体は、乾燥などによってつけ麺が付着してしまい、箸でつかみにくくなり、洗浄もしづらくなる。なお、盛り付け面3には釉薬に限らず他の撥水素材を塗布するようにしてもよい。
【0022】
以上のように線状撥水面32は、つけ麺と吸水皿本体2との付着を防止し、適度な吸水を促すためのものであり、多孔質素材が交互に隣接するように線状に塗られた釉薬を焼結させることにより形成される。なお、珪素土の焼結体による高吸水性の高さと、つけ麺の付着防止を考慮すると、線状吸水面31と線状撥水面32とは4:6の面積比に構成されることが望ましい。
【0023】
線状吸水面31と線状撥水面32とは、つけ麺に好ましい適度な水切り効果を発揮できれば、様々なデザインに構成することが可能である。つまり、図1に示すような交互に直線状に形成されたデザインに限らず、図2に示すように交互に輪を構成してもよいし、渦巻状や波状、さらには文字、図形等のデザインに構成してもよい。要は線状吸水面31と線状撥水面32との効果的な組み合わせであればよい。
【0024】
また、釉薬は吸水皿本体2の盛り付け面3以外の箇所にも塗ることによって、皿全体の強度を増すことができる。なお、釉薬を盛り付け面3に対して線状に塗布する方法としては線状にスリットが形成された型紙を吸水皿本体2の盛り付け面3に載せて、その上からハケ等を用いて釉薬を塗る方法などがある。
【0025】
釉薬が塗られた吸水皿本体2は、焼結(本焼き)して完成する。ここで、焼結温度は800〜950℃にするのが望ましい。なぜなら、珪藻土を含んだ多孔質素材の原料は焼結することにより多数の連続気孔を形成して吸水性を有するようになるが、上記温度範囲より高温下で焼結した場合、珪藻土が溶けて気孔を埋めて吸水率を低下させてしまうという問題があり、逆に上記温度範囲より低温下で焼結した場合、つけ麺皿としての強度が低下することになるからである。
【0026】
つぎに本実施形態の作用について説明する。
【0027】
鍋でつけ麺を茹で上げてザルで軽く水切りをした後、つけ麺を本実施形態のつけ麺用吸水皿1の盛り付け面3に載せると、凹状の盛り付け面3内でつけ麺が安定的に盛り付けられる。これと同時につけ麺から滴る水分は線状吸水面31に吸収され、またつけ麺に接した線状吸水面31からも水分が吸収される。線状吸水面31に浸透した水分は吸水皿本体2の内部に多数存在する連続気孔に浸透される。このとき、線状吸水面31と線状撥水面32とが交互に隣接した模様に形成されているため、つけ麺と線状吸水面31との接触面積が適度に制限されており、つけ麺が吸着して離れない等の問題を防ぎ、簡単に箸でつまみ上げることができる。また、線状撥水面32には適度な水分が残っているため、つけ麺が乾燥してしまうのを防ぐことができる。さらには珪藻土を使用して焼結したつけ麺用吸水皿1の場合、高い吸放湿機能を備えているため、これによってもつけ麺の乾燥防止を図ることが可能である。
【0028】
一方、つけ麺用吸水皿1を洗浄する場合、つけ麺自体が吸着していないためきれいに洗いやすい。また珪藻土を使用した吸水皿本体2は殺菌効果も兼ね備えているが、電子レンジで加熱することによって殺菌効果を高めるのが好ましい。
【0029】
以上のように構成された本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
1.つけ麺に適度な水分を保持しつつ食べやすい程度の適度な水切りが可能である。
2.つけ麺が盛り付け面3に付着して箸で取れなかったり、洗浄しにくいという問題を生じさせない。
3.つけ麺皿の機能を保持させながら個性的、斬新なデザインを加味することができる。
4.珪藻土を焼結させてつけ麺用吸水皿1を構成すれば、線状撥水面32による乾燥防止に加えて吸放湿機能によりつけ麺を乾燥させずに適度に吸水することができ、また細かい多孔質によって雑菌等の発生を抑制できる。
5.珪藻土焼結体は軽量なので運搬しやすく扱いやすい。
【0030】
つぎに、本実施形態の具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0031】
『吸水率の計測』
実施例1では、つけ麺用吸水皿1の有する吸水率の計測を行った。計測は北海道立工業試験場に依頼して行い、JIS−A−5209(陶磁器質タイル)に準拠した試験を行った。
【0032】
計測に使用したつけ麺用吸水皿1組成比率は珪藻土が55%、黄土(バインダー)が15%、ガラス粉が15%、硅石が10%、カリオンが5%とした。また、盛り付け面3の線状吸水面31と線状撥水面32との面積比が4:6に構成されるように釉薬が塗られ、約900℃で焼成した。
【0033】
試験の結果、図3に示すように、つけ麺用集水皿の吸水率は22.2%であった。未処理の絹の吸水率が30%前後であることを考慮すると高い吸水率を有することがわかる。
【0034】
以上のような本実施例1によれば、22%程度の吸水率によりつけ麺の水分を適度に吸収して効果的な水切り効果を奏することができる。
【0035】
なお、本発明に係るつけ麺用吸水皿1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0036】
例えばつけ麺以外に冷凍刺身などを載せる皿として利用することも可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るつけ麺用吸水皿の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るつけ麺用吸水皿の他の実施形態を示す平面図である。
【図3】実施例1において、つけ麺用吸水皿の吸水率を測定した成績書の写しを示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 つけ麺用吸水皿
2 吸水皿本体
3 盛り付け面
31 線状吸水面
32 線状撥水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蕎麦等のつけ麺を盛り付けるためのつけ麺用吸水皿であって、多孔質素材を使って吸水皿本体が構成され、この吸水皿本体の盛り付け面は、多孔質素材が細線状に露出した線状吸水面と、撥水性を有する細線状の線状撥水面とを交互に隣接させた模様で形成されていることを特徴とするつけ麺用吸水皿。
【請求項2】
請求項1において、前記吸水皿本体は、珪藻土を主成分とする焼結体で構成されていることを特徴とするつけ麺用吸水皿。
【請求項3】
請求項2において、前記珪藻土焼結体は、珪藻土を55〜65重量%の組成比率で含有してなることを特徴とするつけ麺用吸水皿。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、前記線状撥水面は釉薬を焼結させて形成していることを特徴とするつけ麺用吸水皿。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかにおいて、前記吸水皿本体の盛り付け面における線状吸水面と線状撥水面とが4:6の面積比に構成されていることを特徴とするつけ麺用吸水皿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−237690(P2008−237690A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84578(P2007−84578)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(507100317)スズキ産業資材株式会社 (1)
【Fターム(参考)】