説明

とんぷんとケイフンとを混合した植物栽培用の有機肥料

【課題】単品で施肥するより混合することで相乗効果が現れ、土壌改良や地力増強効果も見られ、追肥の軽減につながる化学肥料を使わない有機栽培用肥料を提供する。
【解決手段】土壌改良に効果があるものの、窒素、加里肥料成分含量が発酵鶏糞より低い発酵豚糞と窒素、燐酸、加里肥料成分含量が高く地力増強効果はあるものの土壌改良効果は期待できない発酵鶏糞を混合した有機肥料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水稲や畑作等の植物の苗や生育のための資材として、とんぷんとケイフンとを混合した植物栽培用の有機肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機栽培の要求が高まっているにも関わらず、入手しやすく安価で使いやすい有機肥料がほとんどなかった。
【0003】
畜産農家では大量のふんが排出されるが、自らの農地に堆肥として施すのはほんの一部である。
他の農家や非農家に堆肥として提供するにも競争の激化や流通の未熟化、高コストによりリサイクルや有効利用が進んでいないのが現状。
【特許文献1】特許公開2006−335601
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流通に適した畜産廃棄物であるとんぷんやケイフンは従来からも単品で水稲や畑に有機肥料として使われていた。
しかし、とんぷんは堆肥として土壌改良に効果があるもののチッソ、加里といった肥料成分がケイフンより低く化学肥料との混合で使われていた。
一方ケイフンは、チッソ、燐酸、加里といった肥料成分が高いため化学肥料に準じ、地力増強効果はあるものの土壌改良効果は期待されていなかった。
【0005】
流通に適した他の畜産廃棄物である牛ふんは堆肥として土壌改良に効果があるもののチッソ、燐酸、加里といった肥料成分がとんぷんより低く本発明の有機肥料の成分として混合するには高コストにつながり不向きである。
本発明は、以上の問題点を解決し、とんぷんとケイフンとを混合した植物栽培用の有機肥料を示した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水稲や畑作等の植物の苗や生育のために土壌に施用する発酵とんぷんと発酵ケイフンとを混合した有機肥料。
【発明の効果】
【0007】
発酵とんぷんと発酵ケイフンとをそれぞれ単品で施肥するより混合することで相乗効果が現れ、化学肥料を使わない有機栽培用肥料として誕生した。
さらに、とんぷんは燐酸と石灰、苦土成分が高く、ケイフンは燐酸と石灰成分が高いのが特徴で、この混合により土壌改良剤としての燐酸や苦土、石灰施肥の軽減にもつながった。
【0008】
発酵とんぷんと発酵ケイフンとを混合することで、堆肥としての効果である土壌改良や地力増強効果が見られ、初期から後半まで作物への肥料効果が長続きした。よって、追肥の軽減につながった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明がこれによって限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
発酵とんぷん重量比60%、発酵ケイフン重量比40%を混合したものを作物の植付け前に有機肥料として、水田には10a当り200kg、畑には10a当り400kg、プランターには用土10リットルに400g、さらに播種や移植の育苗にも用土1リットルに40g施肥する。
尚、水田や畑及びプランターや育苗でもこの他には化学肥料やその他の資材及び追肥も行いません。
【0011】
畜産廃棄物を原料とした有機肥料ではとんぷんとケイフンを混合したものが流通していないことを知り市販の袋入り黒土を入れた5リットルポリポット4個に肥料成分を化学肥料に換算して市販の発酵とんぷんと発酵ケイフンをそれぞれ重量90%と10%、80%と20%、70%と30%、60%と40%まで割合を変えて施肥しブロッコリーを植えたところブロッコリーの食用部分の花蕾が発酵とんぷんと発酵ケイフン90%と10%がとても小さかったが発酵とんぷんと発酵ケイフン70%と30%、60%と40%に混合したものが大きいことから発酵とんぷんと発酵ケイフンの混合の効果を発見できたことが発端。
【0012】
そのブロッコリーでの発見を契機に研究を進め、次に発酵とんぷんと発酵ケイフンの混合比率を比較した。
キャベツでは平成19年7月30日に5リットルポリポットに市販の袋入り黒土を入れ市販の発酵とんぷんと市販の発酵ケイフンをそれぞれ重量100%から0%まで割合を変えて200gずつ施肥したものを8個作成し市販の品種タキイ種苗の若峰の苗を1本ずつ植えた。キャベツの食用部分である結球重量を次のカッコ内で示した。発酵とんぷんと発酵ケイフンのそれぞれ重量100%と0%(6g)、80%と20%(6g)、70%と30%(15g)、60%と40%(44g)、50%と50%(27g)、40%と60%(49g)、30%と70%(19g)、0%と100%(13g)であった。よって、発酵とんぷんと発酵ケイフンをそれぞれ重量70%と30%、60%と40%、50%と50%、40%と60%、30%と70%に混合して施肥したものが良かった。
【0013】
同様の方法でミニトマト、ピーマン、ナス、キュウリでも発酵とんぷん及び発酵ケイフンそれぞれ100%の単品施肥より発酵とんぷんと発酵ケイフンをそれぞれ重量70%と30%、60%と40%、50%と50%、40%と60%に混合して施肥したものの草丈が長かった。
【0014】
発酵とんぷんと発酵ケイフンの施肥量を比較した。
トマト、ミニトマト、ナス、キュウリ、レタスでは、5リットルポリポットに市販の袋入り黒土を入れ市販の発酵とんぷんと市販の発酵ケイフンを重量70%と30%の割合のものを100gと200g及び無肥料で比較したところ、トマト、ミニトマト、ナス、キュウリとも無肥料は草丈、葉色も黄色で栄養失調。100gは草丈が低く途中で葉色も黄色になるが、200gは草丈も長く葉色も緑色を続けていて肥料効果が長いことがわかった。レタスでは100gが結球せず200gで結球した。ナスとキュウリでは400gでも200gと同様の生育であり、しかも肥料の高濃度による障害は見られなかった。
【0015】
水稲では「堆肥・有機質肥料の基礎知識」(著者西尾道徳、発行所社団法人農山漁村文化協会)90ページ及び91ページによれば水田に最も効果的とされている有機肥料の発酵牛ふんでは10a当り14,000kgの単品施肥で化学肥料と同じ収量を得たと記述されている。
上記の発酵牛ふんでは、10a当り14,000kgに対し、本発明の有機肥料では10a当り200kgであるので格段に施肥量を削減できる。
つまり発酵牛ふんのみでは大量の発酵牛ふんの確保や施肥に膨大な労力を必要とし同時に高コストとなり流通には不利である。
本発明の有機肥料では少量で効果が期待できるため労力やコストが少なく流通にも適している。
【0016】
平成19年5月8日に18リットルブリキバケツに水田の土と水道水を入れ本発明の有機肥料を10a換算で100kgと200kgずつ施肥したものと市販の化学肥料(元肥一発肥料 商品名ひとふりくん)を10a換算で50kg施肥したもの及び無肥料の4個作成しコシヒカリの苗を3本ずつ植えた。本発明の有機肥料を10a換算で100kg施肥した水稲が収量10a換算で6俵(360kg)、本発明の有機肥料を10a換算で200kg施肥した水稲が収量10a換算で7俵(420kg)、市販の化学肥料(元肥一発肥料 商品名ひとふりくん)を10a換算で50kg施肥した水稲が収量10a換算で8俵(480kg)、無肥料の水稲が10a換算で5俵(300kg)であった。本発明の有機肥料を10a換算で200kgの水稲が化学肥料に近い収量を得た。本発明の有機肥料を施肥した水稲が化学肥料に近い収量を得たことで水稲栽培の有機肥料の実用化を示した。
【0017】
作物のみでなく土壌も測定した。肥料成分の強さを一般に電気伝導度ECと表し、水素イオン濃度を一般に酸度PHで表すが、アタゴ社のデジタルECメーターとPHメーターで測定し次にカッコ内に示した。市販の育苗用土は野菜の生育に適した電気伝導度EC(1.1)及び酸度PH(6.6)を示している。しかし発酵ケイフンは電気伝導度EC(6.3)及び酸度PH(8.6)とも高い数値のため電気伝導度EC(2.5)及び酸度PH(7.1)の低い発酵とんぷんと発酵ケイフンをそれぞれ重量70%と30%混合することで電気伝導度EC(3.5)及び酸度PH(8.3)に下がり、発酵とんぷんと発酵ケイフンをそれぞれ重量70%と30%混合した本発明の有機肥料200gを市販の黒土5リットルに施肥すると電気伝導度EC(0.5)及び酸度PH(7.6)と市販の育苗用土に近づいている。このことが本発明の有機肥料が作物の生育に良い理由のひとつと考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水稲や畑作等の植物の苗や生育のために土壌に施用する発酵とんぷんと発酵ケイフンとを混合した有機肥料。

【公開番号】特開2009−120434(P2009−120434A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295253(P2007−295253)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(506419205)
【Fターム(参考)】