説明

ねじの駆動穴

【課題】ドライバビットとの嵌め合わせを案内する機能を有するねじの駆動穴を提供する。
【解決手段】ドライバビットと係合する係合溝11が放射状に延びるねじ1の駆動穴10において、前記係合溝11の外径内に位置するねじの頭部表面2aを斜面15に成形し、かつ当該斜面15と係合溝11の外径外に位置するねじの頭部表面2aとには段差を設定する。このため、作業者がドライバビットを十字穴に対して合致させられなくても、ねじ1の頭部表面2aに成形された斜面15がドライバビット先端を駆動穴10へ案内するので、ドライバビットと駆動穴との嵌め合わせが容易になる。そればかりか、斜面15と頭部表面2aには段差が設定されているのでこれが防壁となり、ドライバビットが逸れてしまうこともなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバビットとの嵌め合わせを案内する機能を有するねじの駆動穴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からねじを締め付けたり弛めたりする場合に、このドライバビットが与える駆動力が作用する頭部には、十字形状の係合溝を有する駆動穴が形成されており、この駆動穴にドライバビットの係合羽根を係合させて駆動力を伝達してワークにねじを締め付けるようになっている。このような十字形状の駆動穴を備えるねじについては、非特許文献1に示す日本工業規格(JIS)B1012に規定されおり、またこのような駆動穴を備えるねじの頭部形状についても、概ね非特許文献2に示す日本工業規格(JIS)B0101に規定されている。
【非特許文献1】日本工業規格 B1012
【非特許文献2】日本工業規格 B0101
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記日本工業規格に開示されているようなねじの駆動穴および頭部形状においては、ここにドライバビットを係合させる際、当該ドライバビットの先端と駆動穴の中心がずれた場合、当該ドライバビットを駆動穴に係合させることができない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明であるねじの駆動穴は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、ドライバビットと係合する係合溝が放射状に延びるねじの駆動穴において、前記係合溝の外径内に位置するねじの頭部表面を斜面に成形し、かつ当該斜面と係合溝の外径外に位置するねじの頭部表面とには段差が設定されている。
【0005】
また、前記斜面は、ドライバビットによる締め付け方向に沿って下るように傾斜している。
【発明の効果】
【0006】
本発明のねじの駆動穴によれば、作業者がドライバビットを十字穴に対して合致させられなくても、ねじの頭部表面に成形された斜面がドライバビット先端を駆動穴へ案内するので、ドライバビットと駆動穴との嵌め合わせが容易になる。そればかりか、斜面と頭部表面には段差が設定されているのでこれが防壁となり、ドライバビットが逸れてしまうこともなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図1および図2に基づいて説明する。図2において、1は頭部2と、この頭部2と一体でかつねじ山3を有する脚部4とから成るねじである。このねじ1の頭部2には、図1に示すように、十字形状の駆動穴10が形成されており、この駆動穴10は放射方向に延びる係合溝11を備えている。この係合溝11は、その底面12が中心に向かうに従って深くなっている。
【0008】
また、前記係合溝11は、図2に示すように、前記底面12に対してほぼ垂直に直立した側面を対向させて形成されており、これら側面は、締付け時にドライバビット(図示せず)と係合する締付け側面13と、弛め時にドライバビットと係合する弛め側面14とを備えている。この締付け側面13の上端には稜線13aが形成されている。
【0009】
前記稜線13aは、図2に示すように、途中に変曲点Pを備えるとともに、前記頭部2の外周側に位置する外端点13bと当該頭部2の中心側に位置する内端点13cとを備えている。この稜線13aは、前記外端点13bと当該変曲点Pとを結んで形成され水平方向に延びる水平稜線13dと、当該変曲点Pと当該稜線13aの他方の端部である外端点13cとを結んで形成される傾斜稜線13eとから構成されている。この傾斜稜線13eは、前記締付け側面13の高さが前記頭部2の中心方向に近づくにつれて低くなる方向に傾斜している。
【0010】
前記締付け側面13の稜線13aと、これと円周方向で隣接する弛め側面14の稜線14aとを結んで案内斜面15が形成されており、この案内斜面15は、ドライバビットと前記駆動穴10に係合させる際、当該ドライバビットの先端が駆動穴10の中心とずれて当該案内斜面15に当接した場合においても、当該案内斜面15に沿って当該駆動穴10に案内される方向に傾斜している。
【0011】
このような構成からなる頭部2を備える本発明のねじ1においては、前記案内斜面15はドライバビットを前記係合溝11と係合させる方向に傾斜しているので、当該ドライバビットを前記駆動穴10に係合させる際、当該ドライバビットの先端と当該駆動穴10の中心とがずれて当該ドライバビットの先端が案内斜面15上に当接した場合においても、ドライバビットが係合溝11に案内され、容易にドライバビットを駆動穴10に係合させることができる。
【0012】
また、前記締付け側面13の上端に形成された稜線13aの一部が水平方向に延びるように形成されており、例えば、当該締付け側面13の稜線13aに代えて、図2の2点鎖線Lで示す稜線を備える場合と比較して、本発明の締付け側面13の面積は大きく形成することができる。つまり、前記締付け側面13と、弛め側面14と、案内斜面15によって囲まれる部分でありドライバビットの回転力が作用する部分の剛性を高めることができる。そのため、本発明のねじ1の締付け側面13は、ねじ締め付け作業時において、カムアウト現象や、リームアウト現象を防ぐに十分な面積を備え、つまり十分な剛性を備えているので、このような問題を防止することもできる。
【0013】
また、本発明のねじ1の頭部2の案内斜面15には、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂を複合させた無電解ニッケルめっきが施されている。そのため、前記ねじ1の頭部2の案内斜面15は、通常の無電解ニッケルめっきを施した場合よりも摩擦係数が低くなり、ドライバビットの先端との潤滑性に優れた表面処理が施されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るねじの駆動穴を示す図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 ねじ
2 頭部
2a 表面
3 ねじ山
4 脚部
10 駆動穴
11 係合溝
12 底面
13 締付け側面
13a 稜線
13b 外端点
13c 内端点
13d 水平稜線
13e 傾斜稜線
P 変曲点
14 弛め側面
14a 稜線
15 案内斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバビットと係合する係合溝が放射状に延びるねじの駆動穴において、
前記係合溝の外径内に位置するねじの頭部表面を斜面に成形し、かつ当該斜面と係合溝の外径外に位置するねじの頭部表面とには段差が設定されていることを特徴とするねじの駆動穴。
【請求項2】
前記斜面は、ドライバビットによる締め付け方向に沿って下るように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のねじの駆動穴。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−145235(P2012−145235A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110060(P2012−110060)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2008−29740(P2008−29740)の分割
【原出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)