説明

ねじ保持体及び連結ねじ

【課題】ねじの頭を把持するベルトタイプのねじ保持体において、ねじを直立姿勢に保持する機能はアップさせて、ねじの突き出しに対する抵抗は抑制する。
【手段】ねじ保持体11は頂面側保持帯12と座面側保持帯13とからなっており、両者は接着又は溶着で一体に保持されている。頂面側保持帯12にはドライバビットよりも大径のビット挿入穴15が空いており、座面側保持帯13には、ねじ1の頭3の座面に重なる支持片17が形成されている。ねじ1の頭3が上下から挟まれているため、ねじ1はねじ保持体11から直立した姿勢に保持される。ドライバビット14が両面保持帯12,13に干渉しないことと、支持片17が容易に曲がり変形することとにより、ねじ込み作業を軽快に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多数本のねじ(ビス)を並列状に並べた状態に保持するためのねじ保持体、及び、このねじ保持体に多数本のねじが保持されている連結ねじに関するものである。ここにいうねじには、木ねじのように先端部を尖らせた食い込み方式の自己穿孔ねじ、ドリルねじのような切刃を有する自己穿孔ねじ、タッピンねじ等の各種のものを含んでいる。
【背景技術】
【0002】
もみ切り式ねじやドリルねじのようなねじを連続的に打ち込みできるようにするため、多数本のねじを長尺のねじ保持体に取り付けて連結ねじと成すことが行われている。ねじ保持体には幾つかのタイプがあるが、一つのタイプとしてベルトタイプのものがある。
【0003】
すなわちこのベルトタイプのものは、ベルト状の樹脂製保持体にねじの軸が嵌まる穴を一定間隔で空けて、ねじの頭の座面を保持体に密着させることにより、ねじを保持体の広幅面に対して直立した姿勢に保持したものである。ねじ保持体の長手両側縁には、ドライバ工具に装填して間欠的な送りを可能ならしめるため、ねじの配置間隔で切欠きが形成されている。このタイプのねじ連結体では、ねじ込み工程初期の段階でねじの頭がドライバビットによってねじ保持体から突き出される。
【0004】
このベルトタイプのねじ保持体では、品質の要素としてねじの直立保持性とねじの頭の突き出しの容易性とが挙げられるが、両者は相反する関係にある。そこで、ねじの直立保持性の向上とねじの突き出しの容易性とを両立すべく、様々の提案が成されている。例えば特許文献1,2には、保持体に、ねじの付け根部を把持する筒部を一体に形成すると共に、筒状部をねじの頭が突き抜け得る強度となすことが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、保持体を本体シートとこれに重なる被覆層との2層構造と成し、被覆層でねじの頂面を押さえる構造が開示されている。更に本願出願人の出願に係る特許文献4には、保持体の全部又は大部分を紙製として、ねじの軸を把持する挟持部を一体に設けることが開示されている。なお、特許文献1,2も本願出願人の出願に係るものである。
【0006】
他方、この種のねじ保持体が使用されるドライバ工具は、ドライバビットを有する筒状のケースと、ケースに摺動自在に嵌め入れたスライダーとを備えていて、スライダーに保持体の装填部が形成されており、更に、スライダーをばねで前進方向に付勢しており、スライダーがケースに対して前後動することに連動して保持体が間欠的に送られるようになっている(例えば特許文献5)。この場合、ばねによってスライダーが前進するときに保持体が送られるものと、スライダーの前端をワークの表面に当ててケースを前進させる(スライダーを相対的に後退させる)行程の初期に保持体が送られるものとがある。
【0007】
いずれにしても、ねじ込みに際してドライバビットでねじの頭が保持体から突き出されるが、ドライバビットのねじ保持穴の内径は基本的にはねじの外径と同じであり、ねじ保持穴の内径がドライバビットの外径よりも大きいため、ねじ込みが終了してドライバビットが後退するに際して、保持体がドライバビットの抗体に対する抵抗として作用することがあった。
【特許文献1】実公平4−49367号公報
【特許文献2】実用新案登録第2593069号公報
【特許文献3】実公昭48−16051号公報
【特許文献4】特開2002−168218号公報
【特許文献5】特開平7−256564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3のように構成すると、ねじの頭が本体シートと被覆層とで挟まれているため、ねじの直立性を向上できると言える。しかし、特許文献3では被覆層をドライバビットで突き破ることでドライバビットをねじの頭に係合させるものであるため、ドライバビットがねじの頭の係合穴に嵌まらない事態が生じる虞があり、このためねじ込みの確実性に欠けるという問題がある。また、ねじの頭をドライバビットで突き出すに際しての抵抗が大きいと、保持体がドライバ工具の装填部(ガイド溝)から外れてしまう虞もあった。
【0009】
本願発明はこのような現状を改善すべく成されたものであり、特に、頭の外周部を平坦な(扁平な)フランジ部と成しているねじの連結に好適な保持体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明はねじ保持体と、このねじ保持体にねじを取り付けて構成された連結ねじとを含んでいる。本願発明に使用されるねじは、ねじ山が形成された軸の基端に頭を一体に設けており、前記頭は頂面に近づくに従って外径が大きくなるテーパ状部を備えており、前記頭部の頂面にはドライバビットが嵌まる係合穴を形成している。
【0011】
そして、ねじ保持体は、請求項1に記載したように、前記並べられた多数本のねじの頭の外周縁部を表裏両側から挟む頂面側保持帯と座面側保持帯とを備えており、両保持帯は離反不能に保持されており、前記頂面側保持帯はねじの頭を完全に覆う幅寸法であって前記ドライバビットの外径よりも大径か略同径のビット挿入穴がねじの配置間隔で空けられている一方、前記座面側保持帯のうち前記各ビット挿入穴の箇所に、前記各ねじにおける頭の外周縁部の座面に重なると支持片が形成されており、前記各支持片は、ねじの頭が通過し得るよう変形可能(折損可能も含む)な強度になっており、更に、前記頂面側保持帯と座面側保持帯とのうち何れか一方又は両方に、ドライバ工具に装填してねじの配置間隔で間欠的に送るための係合部を形成している。
【0012】
連結ねじは、請求項1に記載したねじ保持体に多数本のねじを取り付けたものである。請求項3の発明では、請求項1又は2において、前記各ねじにおける頭の外周縁部は平坦なフランジ部になっており、前記座面側保持帯の支持片が、前記ドライバビットと干渉しない状態でねじにおける頭のフランジ部に重なるようになっている。すなわち、支持片はドライバビットの通過経路の外側に配置されている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によると、ねじの頭が頂面側保持帯と座面側保持帯とで挟まれているため、ねじを直立した姿勢に保持する機能が格段に向上する。また、頂面側保持帯のビット挿入穴はドライバビットの外径よりも大きいか略同径であるため、頂面側保持帯を設けたことに基因してドライバビットの前後動に対する抵抗が増えることはない。
【0014】
更に、ねじの頭を突き出すに際しては座面側保持帯の支持片を変形(弾性変形又は塑性変形)させれば良く、例えば筒状部を突き破るような必要はないため打ち込みの抵抗が小さくて済み、その結果、保持体がドライバ工具のガイド溝から外れてしまう事態を防止できると共に、ねじ込み作業を軽快に行える。
【0015】
このように、本願発明によると、ねじの直立性を向上させつつ、保持体からのねじの頭の抜け(突き出し)を容易ならしめることができる。
【0016】
ところで、ねじの一種にもみ切り式の木ねじがあり、この木ねじの用途の一つに、建物の内装材としての石膏ボードを枠材(下地材)に締結することがあり、ベルトタイプの保持体とこれを装填したドライバ工具とのシステムは、石膏ボードの締結に多用されている。そして、石膏ボード締結用ねじは、頭の座面がラッパ状に形成されているものが多用されている。これは、ラッパ状の頭はその全体を石膏ボードの内部にめり込ませ易く、かつ、皿頭に比べて石膏ボードの押さえ機能が高いからである(ねじの頭の全体を石膏ボードにめり込ませるのは、石膏ボードの表面に壁紙を貼ったときの仕上がりを良くするためである。)。
【0017】
しかして、近年、石膏ボードが脆くなっている傾向がある。これは、リサイクルが進んで石膏ボードの原料に占める再生品の割合が高くなっており、その結果、粒子間の結合力が低下しているためと推測される。石膏ボードが脆くなると、必要な締結強度を確保するためには使用するねじの本数を増やせば良いと解されるが、これでは締結作業の能率が悪化する。これに対して本願発明者は、ねじの頭に薄い平坦をフランジ部を形成して、ねじの頭の外径を従来よりも大径(例えば呼び径の2.5〜3倍程度)とすれば、ねじの本数を増やすことなく必要な締結強度を確保できる事実を発見した。
【0018】
そして、請求項3の発明に係る保持体は、前記したように頭の外周部を薄い円板状のフランジ部と成しているねじの保持に好適なものであり、請求項3の構成とすることにより、石膏ボードの締結用に好適なねじを安定性良くしかも容易に抜け出る状態に保持することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、本願発明の実施に好適なねじ(ビス)の形態を図8に基づいて説明する。
【0020】
(1).ねじの好適例
図8のうち(A)はねじの正面図、(B)は平面図である。ねじ1は軸2とその基端に設けた頭3とからなっており、軸2の先端部は最先端を尖らせた先窄まり部2aになっている。また、軸2のうち先窄まり部2aを除いた部分(ストレート状の部分)は、先窄まり部に連続した小径部2bと頭3に連続した大径部2cとで段違い状に形成されている。
【0021】
そして、先窄まり部2a及び小径部2bには第1ねじ山4と第2ねじ山5との二条のねじ山が形成されており、大径部2cには第1ねじ山4のみが延びている。従って、先窄まり部2a及び小径部2bの部分は2条ねじ部となり、大径部2cの部分は1条ねじ部になっている。小径部2bにおいて第1ねじ山4の高さが第2ねじ山5の高さよりも高くなっている。また、第1ねじ山4の始端は先窄まり部2aの最先端に位置していて、ワークへの食い込み導入作用を司っている。
【0022】
ねじ1の頭3は、軸2に連続すると共に頂面に近づくに従って外径で大きくなるテーパ状部3aと、テーパ状部3aの外周端から張り出したフランジ部3bとから成っており、頭3の頂面のうちテーパ状部3aに対応した部分に、ドライバビットが嵌まる係合穴の一例としての十字穴6を形成している。テーパ状部3aは外向き凹のプロフィールを有するラッパ状になっているが、外径が一定の比率で変化する台錐状(皿状)と成すことも可能である。フランジ部3bはその全体にわたって厚さが等しい円板状に形成されている。
【0023】
ねじ部の最大外径D1(軸2の大径部2cにおける第1ねじ山4の大径で、一般にはねじの呼び径と同義)と、頭3におけるテーパ状部3aの最大外径D2、及び頭3のフランジ部3bの外径(換言すると頭3の外径)D3との関係は、D2がD1の約2倍、D3がD1の2.5〜3倍程度になっている(図面ではD3はD1の約3倍に描いている。)。また、フランジ部3bの厚さは0.5〜0.8mm程度に設定している(この厚さ寸法は、ねじ1の呼び径に関係なく概ね一定している。)。
【0024】
なお、頭3の頂面の全体を緩い曲率で凹ませることも可能であり、また、頭3の頂面のうちテーパ状部3aに相当する部分のみを緩い曲率で凹ませることも可能である。また、係合穴は、四角や六角のような角形と成したり星形と成したりというように、十字穴6でない形態を選択することも可能である。
【0025】
図8(C)ではねじ1の使用状態の一例を示している。この使用例では、石膏ボード7をコ字状の薄鋼板製フレーム材(下地材)8に締結することに使用している。フレーム材8は0.5〜0.8mm程度の厚さであり、近年の住宅(建物)では、耐火性や腐食防止の点から従来の木製フレーム材に代えて薄鋼板製のフレーム材8が多用されるに至っている。
【0026】
石膏ボード7には表紙9と裏紙10とを貼っており、石膏ボード7を締結した状態で、ねじ1の頭2はその全体が石膏ボード7の内部(正確には表紙9の表面よりも内側)にめり込んでいる。従って、表紙9のうち頭3に重なった部分も石膏ボード7の肉厚部内に向けて押し込まれている。
【0027】
従来の石膏ボード締結用ねじの頭は、本例のフランジ部3bが存在しない形態とほぼ同じであり、このため石膏ボード7が脆いと石膏ボード7が潰れてしまって必要な締結強度を得難い場合があった。この点に対しては、図8(A)に一点鎖線3cに表示するように、頭3の全体をラッパ状のままで大径にすることが考えられる。しかし、この場合は頭3の体積が過度に大きくなるため石膏ボード7が大きく潰されてしまって、締結強度の向上にはあまり寄与しない。
【0028】
これに対して本例のねじ1は、フランジ部3bは薄い平坦状(薄円板状)であるため頭3の体積は過度に増えていない、フランジ部3bが平坦であって石膏ボード7に対して表面側から押すようにしか作用しないため石膏ボード7を潰す作用が少ない、表紙9のうちフランジ部3bに重なった部分は破れないため表紙9が座金の役割を果たしてこれによっても石膏ボード7の潰れがより一層抑制されている、といった作用が相乗して高い締結強度を確保することができる。
【0029】
(2).第1実施形態(図1〜図2)
次に、本願発明に係るねじ保持体の実施形態を説明する。まず、図1〜図2に基づいて第1実施形態を説明する。図1のうち(A)は一部破断平面図、(B)は一部破断正面図、(C)は(A)のC−C視断面図、図2のうち(A)は分離断面図、(B)は打ち込み状態を示す断面図である。
【0030】
ねじ保持体11は、ねじ1における頭3の頂面に重なる頂面側保持帯12と、ねじ1における頭3の座面に重なる座面側保持帯13とから成っており、これら頂面側保持帯12と座面側保持帯13とでねじ1の頭3を挟むことにより、ねじ1をねじ保持体11の広幅面から直立した状態に保持している。頂面側保持帯12と座面側保持帯13とは共に柔軟性を有する同種の合成樹脂シートを素材としていて等しい幅及び等しい厚さになっており、両者は接着又は溶着によって一体化されている。
【0031】
頂面側保持帯12には、ビット挿入穴15が所定間隔で多数形成されている一方、座面側保持帯13には、ビット挿入穴13と同心の突き出し穴16の群が形成されており、突き出し穴16の内周縁の部分に、ねじ1における頭3のフランジ部3bの座面に重なる支持片17を形成している。ビット挿入穴15は、ドライバビット14の外径よりも大径でねじ1における頭3のフランジ部3bの最小径(換言すると、テーパ状部の最大外径)よりは小径に設定されている(ドライバビット14と干渉しない状態でできるだけ小径が好ましい。)。
【0032】
本実施形態では、支持片17は座面側保持帯13を部分的に凹ませる(或いは押し曲げる)ことによって形成されている。支持片17は放射方向に延びる4本のスリット(溝)18で分断されて4個形成されており、一対ずつの支持片17が両保持帯12,13の長手方向と幅方向とに対向した状態に配置されている。支持片17をこのように配置しているのは、ねじ1の配置間隔をできるだけ小さくした状態でスリット18を形成するためである。
【0033】
支持片17の内接円の直径はビット挿入穴15よりも大径に設定されており、従って、ドライバビット14が支持片17に干渉することはない。本実施形態では支持片17はねじ1における頭3のフランジ部3bのみに重なっているが、テーパ部3aの一部まで重なるせることも可能である(但し、この場合もドライバビット14と干渉しないように設定するのが好ましい。)。また、支持片17が曲がり変形しにくい場合は、図1(C)に一点鎖線で示すように、支持片17の付け根部の下面にノッチ20を形成するなどの弱化手段を設けることも可能である(勿論、ねじ1の直立性保持機能を犠牲にしない必要がある。)。
【0034】
ねじ保持体11の長手両側縁には、ドライバ工具(連続ねじ込み装置)に装填して間欠的に送る(繰り出す)ための係合部の一例として、切欠き19をねじ1の配置間隔と同じ間隔で形成している。切欠き19は隣り合ったビット挿入穴15の中間の位置に形成されている。
【0035】
既述のとおり頂面側保持帯12と座面側保持帯13とは接着又は溶着で分離不能に一体化されているが、この場合、頂面側保持帯12と座面側保持帯13との重合部の全体を接着又は溶着する必要はないのであり、例えば飛び飛びの状態で接着又は溶着したり、或いは、長手両側縁のみをライン状に接着又は溶着するといったことも可能である。
【0036】
ねじ保持体11は渦巻き状に巻けるように適度の柔軟性を備えているのが好ましい。ねじ保持体11に適度の柔軟性を保持せしめることは、頂面側保持帯12及び座面側保持帯13の材質や厚さを調節することでも実現できるし、或いは、図1(A)の右端部に二点鎖線で示すように、対向する切欠き19で挟まれた箇所に切り込み21やスリットのような弱化手段を形成することでも実現できる(弱化手段は頂面側保持帯12と座面側保持帯13との両方に形成しても良いし、いずれか一方のみに形成しても良い。)。
【0037】
以上の構成において、ねじ1の頭3が頂面側保持帯12と支持片17とで挟まれているため、ねじ1はねじ保持体11に対して直立した姿勢に保持される。特に、頭3のフラットな頂面が全周にわたって頂面側保持帯12に重なっているためねじ1の姿勢安定性が格段に高くなっており、その結果、支持片17でフランジ部3bのみを押さえた状態であってもねじ1は直立した姿勢に保持される(フランジ部3bは外径が大きいため、支持片17で軽く押さえた状態であっても直立姿勢に保持される。)。
【0038】
ねじ保持体11にねじ1を植立した連結ねじの使用方法は従来と同様であり、図2(B)に示すように、ねじ1が取り付けられたねじ保持体11の長手両側縁をドライバ工具のガイド溝22に嵌め入れて、ドライバ工具の先端をワーク(石膏ボード7)の表面に当てた状態で、ドライバビット14を回転させつつねじ1の頭3の十字穴6に係合させて押し込むことになる。
【0039】
この使用状態において、ドライバビット14が頂面側保持帯12及び座面側保持帯13に干渉することはなく、また、ねじ1の頭は支持片17を押し曲げることのみでねじ保持体11から突き出されるものであるため、ねじ1の突き出しに際しての抵抗は小さくてすみ、このため、ねじ保持体11の全体が撓み変形してドライバ工具のガイド溝22から外れるようなことはないと共に、ねじ込み作業も軽い力で軽快に行える。
【0040】
本例のねじ1のように頭3の外径が従来に比べて大きいと、ねじ1の打ち込み姿勢が石膏ボード7の表面と直交した線に対して僅かでも傾くと、フランジ部3bの縁が石膏ボード7の表面から部分的にはみ出て易くなるが、本願発明のねじ保持体11はねじ1をねじ保持体11に対して直立した姿勢に保持できるため、ねじ1はフランジ部3bの全体を石膏ボード7にめり込ませた状態にねじ込むことができるのである。
【0041】
両保持帯12,13を分離不能に保持する方法としては、図1(D)に示すように、一方の保持帯をパンチで押圧して突部12bを他方の保持帯の肉厚部内に押し込むこと(金属板の接合に使用される「半押し」と同様の技術)も使用できる。この場合、他方の保持帯に膨出部13bが形成される場合もある。他の固定方法としては、一方の保持帯に鳩目部を形成してこれを他方の保持帯に形成した穴に嵌め入れてかしめる方法や、リベット状ファスナーで締結することなどが挙げられる。
【0042】
(3).他の実施形態(図3〜図7)
次に、図3〜図7に基づいて他の実施形態を説明する。図3に示すのは第2実施形態であり、(A)は平面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。この実施形態は基本的には第1実施形態と同じであり、第1実施形態との相違点は、頂面側保持帯12の幅寸法が座面側保持帯13の幅寸法よりも小さくて、切欠き19を座面側保持帯13のみに形成している点である。この第2実施形態とは逆に、座面側保持帯13を頂面側保持帯12よりも幅狭に形成して、頂面側保持帯12のみに切欠き19を形成することも可能である。
【0043】
図4では第3実施形態を示している。(A)は平面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。この実施形態も第1実施形態の変形例であり、第1実施形態との相違点は、座面側保持帯13に頂面側保持帯12の長手縁部の表面に重なる抱持部13aが形成されていて、抱持部13aにも切欠き19が形成されている点である。この第3実施形態では、ねじ保持体11の剛性が高くなるため、ねじ込み行程での抵抗によって変形してドライバ工具のガイド溝22から外れることをより確実に防止できる。
【0044】
図5では支持片17の形態の別例を示している。このうち図5(A)に示す第4実施形態では、隣り合った支持片17を四角形(或いは菱形)の穴23によって分断している。従って、各支持片17はその側面が平行に延びており、このため変形し易くなっている。
【0045】
図5(B)に示す第5実施形態では、座面側保持帯13に放射状に延びる多数の切り線24を形成することにより、互いに分断された多数の支持片17を形成している。切り線24の基端には小穴25を形成している。支持片17はその幅寸法が小さくなるほど変形しやすくなる。また、小穴25を設けると支持片17は更に変形しやすくなる。
【0046】
図6でも支持片17の形態の別例を示している。このうち図6(A)に示す第6実施形態では、座面側保持帯13の内周縁を薄肉に潰すことで支持片17を形成している。他方、図6(B)に示す第7実施形態では、座面側保持帯13はフラットな状態のままとしてこれに支持片17を形成している一方、頂面側保持帯12にはねじ1の頭3を覆う押さえ部12aが膨出形成されている。いずれの実施形態でも、支持片17は円周方向に沿って複数個形成するのが好ましい。
【0047】
図7に示すのは、ねじ保持体11を1枚のシートで形成した第8実施形態であり、(A)は縦断側面図、(B)は底面図である。この実施形態では、1枚の帯状シート材に平行に延びる折り目26を形成して、両折り目26で挟まれた部分を頂面側保持帯12と成して両折り目26の外側の部分を座面側保持帯13と成し、座面側保持帯13を折り返すことで頂面側保持帯12に重ねて接合している。
【0048】
従って、2枚の座面側保持帯13がねじ保持体11の長手中心線を挟んだ両側に分断して配置されている。図示の例では両座面側保持帯13の間に若干の隙間が空いているが、両者の端面を密着させても良い。図示の例とは表裏を逆にして、頂面側保持帯12を2枚に分離することも可能である。
【0049】
折り目26は薄肉化することで形成されるが、ドライバ工具のガイド溝22にしっかり嵌まるには、ねじ保持体11の長手縁は断面視でできるだけ角張っているのが好ましいと言える。この点については、(C)(D)に示すように、断面山形の2条の折り目溝27を形成するか、或いは、台形の折り目溝(図7(C)の2つの折り目溝の底が繋がった状態の溝)を形成すれば良い。
【0050】
(4).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えばねじ保持体を、頂面側保持帯と座面側保持帯とその間に介在した中間シートとの三層構造とすることも可能である。また、ねじ保持体を構成する素材は樹脂シートを使用することには限らず、例えば防水加工を施した紙を使用することも可能である。頂面側保持帯12は紙製として座面側保持帯13は樹脂製とするというように、構成部材の素材を変えることも可能である。
【0051】
また、本願発明に係るねじ保持体は、頭にフランジ部を設けていないねじの保持にも使用できる。なお、ドライバ工具には、ねじ保持体を繰り出す部分が一体に設けられているタイプ(専用機)と、ねじ保持体を繰り出す部分が後付けで取り付けられるタイプとがあるが、本願でいう「ドライバ工具」には両方が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態の構造を示す図である。
【図2】第1実施形態の構造及び使用状態を示す図である。
【図3】第2実施形態を示す図である。
【図4】第3実施形態を示す図である。
【図5】第4実施形態及び第5実施形態を示す図である。
【図6】第6実施形態及び第7実施形態を示す図である。
【図7】第8実施形態及び第9実施形態を示す図である。
【図8】本願発明の使用に好適なねじを示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ねじ
2 軸
3 頭
3a テーパ状部
3b フランジ部
4,5 ねじ山
11 ねじ保持体
12 頂面側保持帯
13 座面側保持帯
14 ドライバビット
15 ビット挿入穴
16 突き出し穴
17 支持片
22 ドライバ工具のガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ山が形成された軸の基端に頭を一体に設けており、前記頭は頂面に近づくに従って外径が大きくなるテーパ状部を備えており、前記頭部の頂面にはドライバビットが嵌まる係合穴を形成している、という構成になっているねじの多数本を並列状に並べた状態に保持するベルト状のねじ保持体であって、
前記並べられた多数本のねじの頭の外周縁部を表裏両側から挟む頂面側保持帯と座面側保持帯とを備えており、両保持帯は離反不能に保持されており、前記頂面側保持帯はねじの頭を完全に覆う幅寸法であって前記ドライバビットの外径よりも大径か略同径のビット挿入穴がねじの配置間隔で空けられている一方、前記座面側保持帯のうち前記各ビット挿入穴の箇所に、前記各ねじにおける頭の外周縁部の座面に重なると支持片が形成されており、前記各支持片は、ねじの頭が通過し得るよう変形可能な強度になっており、
更に、前記頂面側保持帯と座面側保持帯とのうち何れか一方又は両方に、ドライバ工具に装填してねじの配置間隔で間欠的に送るための係合部を形成している、
ねじ保持体。
【請求項2】
並列状に並べた多数本のねじと、前記ねじを並べた状態に保持するためのベルト状のねじ保持体とから成っており、前記ねじは、ねじ山が形成された軸の基端に頭を一体に設けており、前記頭は頂面に近づくに従って外径が大きくなるテーパ状部を備えており、前記頭部の頂面にはドライバビットが嵌まる係合穴を形成している一方、
前記ねじ保持体は、前記並べられた多数本のねじの頭の外周縁部を表裏両側から挟む頂面側保持帯と座面側保持帯とを備えており、両保持帯は離反不能に保持されており、前記頂面側保持帯はねじの頭を完全に覆う幅寸法であって前記ドライバビットの外径よりも大径か略同径のビット挿入穴がねじの配置間隔で空けられている一方、前記座面側保持帯のうち前記各ビット挿入穴の箇所に、前記各ねじにおける頭の外周縁部の座面に重なると支持片が形成されており、前記各支持片は、ねじの頭が通過し得るよう変形可能な強度になっており、
更に、前記頂面側保持帯と座面側保持帯とのうち何れか一方又は両方に、ドライバ工具に装填してねじの配置間隔で間欠的に送るための係合部を形成している、
連結ねじ。
【請求項3】
前記各ねじにおける頭の外周縁部は平坦なフランジ部になっており、前記座面側保持帯の支持片が、前記ドライバビットと干渉しない状態でねじにおける頭のフランジ部に重なるようになっている、
請求項1に記載したねじ保持体又は請求項2に記載した連結ねじ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−25769(P2008−25769A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200877(P2006−200877)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000110789)日本パワーファスニング株式会社 (30)