説明

まな板試験装置

【課題】 人間が調理している状況に近い包丁の動きを再現することが可能な試験装置を提供する。
【解決手段】 包丁を保持するための保持部と、前記保持部を垂直方向へ移動させるために流体圧により駆動されるシリンダー及び前記シリンダーの上限圧力を設定するための圧力設定手段を備えた垂直方向移動機構と、前記垂直方向移動機構を水平方向へ移動させるために流体圧により駆動されるシリンダーを備えた水平方向移動機構と、前記包丁の下方、且つ、前記包丁を水平方向に引く場合の下流側に、水平に配置された前記まな板の一辺に当接することができるように固定部とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まな板の物性や使用感等を測定するための試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なまな板やまな板を組み込んだ調理装置が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
開発されたまな板、或いは、装置に組み込まれたまな板には、色々な機能が付加されている一方で、調理人が現実に調理する場合における、まな板自体の耐久性、調理時の音や包丁の耐久性等を評価するための装置は存在していない。例えば、包丁を使用した業務用の調理装置(例えば、特許文献3)等が開示されているが、この種の装置は効率化等を目的としているために、人間が包丁を握って調理する場合を想定した試験装置とはなり得ない。
【0003】
【特許文献1】特開2004−194804号公報
【特許文献2】特開2006−81412号公報
【特許文献3】特開2006−311805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、人間が調理している状況に近い包丁の動きを再現することが可能な試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、以下の通り解決手段を見出した。
本発明のまな板試験装置は、請求項1に記載の通り、包丁を保持するための保持部と、前記保持部を垂直方向へ移動させるために流体圧により駆動されるシリンダー及び前記シリンダーの最高圧力を設定するための圧力設定手段を備えた垂直方向移動機構と、前記垂直方向移動機構を水平方向へ移動させるために流体圧により駆動されるシリンダーを備えた水平方向移動機構と、前記包丁の下方、且つ、前記包丁を水平方向に引く場合の下流側に、水平に配置された前記まな板の一辺に当接することができるように固定部とを備えたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のまな板試験装置において、前記包丁の両側及び前記包丁の刃先方向に透光板を配置し、前記包丁の刃先の延出方向に位置する前記透光板に、前記刃先が通過可能な開口部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のまな板試験装置によれば、包丁の垂直方向の移動は、流体圧により駆動されるシリンダーにより行われ、そのシリンダーストロークは、圧力制御手段により制御されるが、まな板に達した後は、設定圧力値までは押し進むことになる。このため、包丁がまな板に接触する状態を、人間が調理している状態に近づけることが可能となる。その結果、人間が調理する場合のまな板の特性を極めて有効に測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明のまな板試験装置を図1を参照して説明する。
図示した装置は、金属製の部材により直方体形状に構成された枠体1と、枠体1の側方に、カウンタ2、試験モードを切り換えるためのスイッチ3及びシリンダーの上限圧力を設定するための圧力設定手段の圧力スイッチ8を備えた箱体4を配置することにより、概略の外形が構成されている。箱体4内部には、図略の流体を制御する為の切替弁、これを駆動するための電源回路、制御回路及びカウンタ2への接続回路が内蔵されている。
枠体1上部を構成する水平部材1a間には、垂直方向移動機構5が水平方向に移動自在となるようにレールが設けてあり、このレール上に垂直方向移動機構5が固定されている。垂直方向移動機構5は、流体圧により駆動可能なシリンダーを備えており、シリンダーの先端に、包丁6を保持するために、両側から包丁を挟持できるように構成された保持部7が固定されている。
垂直方向移動機構5の側面には、該機構を水平方向に移動させるために、箱体4側に流体圧により駆動されるシリンダーを備えた水平方向移動機構9が設けられている。
また、枠体4下部を構成する水平部材4b間には、まな板10を固定するために、断面が略台形状の部材が、包丁6を水平方向に引く場合の下流側に、水平に配置されたまな板10の一辺に当接することができるように固定部11が設けられ、これによりまな板10がその位置を移動できるように固定され、包丁6の引く動作、即ち、水平方向に引く場合の下流側でのまな板10の移動が規制される。
【0008】
上記構成における垂直方向移動機構5、水平方向移動機構9に使用するシリンダーは、空気圧等の流体圧により駆動することができるものであるが、具体的な空気圧回路を図2を参照して説明する。
図示した回路において、ポンプから送出されたエアーは、フィルター20を介して、第1及び第2の方向切換弁21,22に接続されている。第1の切換弁21からのエアーは、水平方向移動機構9を構成するシリンダーに接続されて、シリンダーの左右方向への移動とその切り替えを行う。そして、第2の切換弁22からのエアーは、減圧弁23を介して、垂直方向移動機構5を構成するシリンダーに接続され、上下方向への移動とその切り替えを行う。また、圧力スイッチ8により設定された圧力に基づいて、減圧弁23により、垂直方向移動機構5のシリンダー上限圧力が設定される。そして、第1及び第2の方向切換弁21,22には、制御回路が接続されており、試験モードを切り換えるためのスイッチ3の位置に応じて、第1及び第2の方向切換弁21,22へのエアーの送出を制御し、これにより、各シリンダーは、左右上下の移動を行うことになる。尚、シリンダーのエアー等の流体の圧力の上限値は適宜設定することができるが、通常は、0.1Pa〜0.2Pa程度とすることが好ましい。
【0009】
上記装置の使用方法について次に説明する。
まず、試験対象となるまな板10の大きさに合わせて固定部11を水平部材1b上でスライドさせて、固定部11と垂直方向の枠部材1c間で固定する。この状態では、固定部11の高さがまな板10の高さよりも高いのでずれることがない。そして、包丁6の刃の上側の部位を、保持部7により固定する。これにより、稼働時に包丁6は、まな板10と当接し、設定圧力まで達すると上方向への移動を行うことになる。
次に、試験モードの切り換えスイッチ3を「上下」に切り換えると、水平方向移動機構9は作動しないで、垂直方向移動機構5のシリンダーのみが作動して、包丁6は、単純な上下方向の切り動作を行う。即ち、包丁6は、まな板10に対して、上下方向の移動を1サイクルとして、このサイクルを繰り返すことになる。上述した通り、包丁6がまな板10と当接すると、エアー圧力スイッチ8により、包丁6は上方向への移動に切り替わることになるが、庖丁を押す力は圧力スイッチ8の圧力設定により強弱が可能で、これにより、人間の調理作業に近い状態でまな板10と包丁6とが接することになる。
また、試験モードの切り換えスイッチ3を「上下左右」に切り換えると、今度は、引き切りの試験を行うことができる。まず、包丁6は、水平方向移動機構9により前方に移動して、所定の位置になった後、垂直方向移動機構5が作動し、包丁6がまな板10と当接する。その後、包丁6は、まな板10と当接した状態で後方へと移動し、所定の位置となった時に、垂直方向移動機構5により、包丁が上方へと移動し、これを1サイクルとして、繰り返すことになる。
上記いずれのモードにおいても、カウンタ2に上記サイクルが表示される。
【0010】
また、枠体上部を構成する水平部材1a間には、垂直方向移動機構5が水平方向に移動自在となるようにレールが設けられているが、この枠体状部を構成する部材1aと、枠体の側方を構成する部材1c,1dに対して上下方向に移動自在とすることが好ましい。垂直方向移動機構5のシリンダーの調整に加えて、更に、包丁6の取付のための幅を広げることができるからである。
また、枠体の側面や上面にアクリル樹脂等で構成された透光板13を設けることが好ましい。刃こぼれにより生じた破片が飛散させないようにすることができるからである。尚、枠体の前面、即ち、包丁の刃先の延出方向に位置する透光板14には、包丁6の水平方向の移動軌跡に対応する位置にを開口部15を設けることが好ましい。刃先が長い包丁6に対応させることができるからである。
尚、上記した装置において、水平方向移動機構に関しては、シリンダーストロークを調整するための調整機構を設けずに、シリンダーの上死点と下死点により水平方向の移動を規制するようにしているが、垂直方向移動機構と同様にシリンダーストロークを調整するための機構を設けるようにしてもよい。
また、上記固定部11の断面形状は、略台形状のものを使用したが、これに制限するものではなく、例えば、矩形状や方形状とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態のまな板試験装置の側面図
【図2】同装置構成を説明するための回路図
【符号の説明】
【0012】
1 枠体
2 カウンタ
3 試験モードの切り換えスイッチ
4 箱体
5 垂直方向移動機構
6 包丁
7 保持部
8 圧力スイッチ
9 水平方向移動機構
10 まな板
11 固定部
13 透光板
14 透光板
15 開口部
20 フィルター
21 切換弁
22 切換弁
23 減圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包丁を保持するための保持部と、前記保持部を垂直方向へ移動させるために流体圧により駆動されるシリンダー及び前記シリンダーの上限圧力を設定するための圧力設定手段を備えた垂直方向移動機構と、前記垂直方向移動機構を水平方向へ移動させるために流体圧により駆動されるシリンダーを備えた水平方向移動機構と、前記包丁の下方、且つ、前記包丁を水平方向に引く場合の下流側に、水平に配置された前記まな板の一辺に当接することができるように固定部とを備えたことを特徴とするまな板試験装置。
【請求項2】
前記包丁の両側及び前記包丁の刃先方向に透光板を配置し、前記包丁の刃先の延出方向に位置する前記透光板に、前記刃先が通過可能な開口部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のまな板試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−131241(P2010−131241A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310873(P2008−310873)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(598109187)アサヒゴム株式会社 (27)
【Fターム(参考)】