説明

まな板

【課題】魚や刺身下ごしらえ用の柵からドリップが出ている状態で調理をする場合でも、ドリップをまな板から出来るだけ除去可能な構造として、ドリップが出来るだけ魚や柵に浸からないようにして魚や柵のうま味を保持する。
【解決手段】まな板20の全面にわたってドリップ18を滴下させる穴30を多数穿孔する。この穴30を介して魚や、捌いた刺身下ごしらえ用の柵から出たドリップを該まな板20の上面(表面)側から裏面側へ滴下させる。これにより、柵から出ているドリップは、穴30を介してまな板20の裏面に滴下されることで、調理中に柵の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、魚や柵のうま味を保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まな板に関するものであり、特に、魚肉から出るドリップ対策用のまな板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚を3枚おろしした背身や腹身などの柵や、この柵を切って刺身とした魚肉からは、ある程度の時間や日が経つと赤色状のドリップ(魚肉汁)が出てくる。特に、小売店やスーパーでは、柵や刺身がパックに入れられており、パック内に敷いてある大根のけんにドリップが移ってけん自体が赤くなっているのを見るのはよくあることである。
また、大根のけんが敷かれておらず、樹脂製のパック内に直接、魚丸ごとや柵が入れてある場合には、パックの底面にドリップが溜まり、この溜まっているドリップに魚や柵が浸かっている場合も多々見かけるものである。
【0003】
ドリップに浸かっている魚やおろした柵を買って自宅でまな板の上に載せて調理をする場合でも、魚やおろした柵からドリップが出ている状態となっている。また、ドリップが柵から出ていない状態で買って帰っても、買ってから何時間か経過したり、明くる日に調理を行なう場合には柵からドリップが出てきている。かかる場合、まな板の上に柵を載せた状態において、柵からドリップが出ているので、柵がドリップに浸かっているような状況で調理を行なうことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドリップに浸かっていた柵や、ドリップが出ている状況で柵を調理する場合には、該ドリップにより柵のうま味が無くなり、魚自体、あるいは刺身がまずくなってしまう。既にドリップに浸かっている柵はうま味を回復することは困難であるが、調理をする段階でドリップが出てきているような魚やおろした柵は、出来得る限りドリップを除去しなければうま味が無くなってしまう。
【0005】
しかしながら、現状のまな板では、ドリップ除去対策がされておらず、柵を薄く切って刺身を造っている場合、常時柵がドリップに接触ないし浸かっている状態となっている。かかる場合、やはり、刺身がドリップによりうま味が無くなり、お皿に刺身を綺麗に盛っても刺身はまずいので、期待外れとなる。
【0006】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、魚や刺身下ごしらえ用の柵からドリップが出ている状態で調理をする場合でも、ドリップをまな板から出来るだけ除去可能な構造として、ドリップが出来るだけ魚や柵に浸からないようにして魚や柵のうま味を保持することを目的としたまな板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の請求項1に記載のまな板では、まな板20に魚や、刺身下ごしらえ用の柵17を載せた場合に、該魚や柵17から出る魚肉汁であるドリップ18を裏面側に滴下させる上下に貫通したドリップ滴下用穴を該まな板20に多数形成していることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載のまな板では、請求項1に記載のまな板において、
前記ドリップ滴下用穴は、まな板20に多数穿孔している穴30としていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載のまな板では、請求項1に記載のまな板において、
前記ドリップ滴下用穴は、まな板20にミシン目40として形成されているスリット41であり、前記ミシン目40をまな板20の上下方向、あるいは横方向に複数本形成していることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載のまな板では、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のまな板において、
魚や柵17から滴下したドリップ18を吸収する吸水シート31を前記まな板20の裏面に接着あるいは剥離自在に設けていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載のまな板によれば、まな板20に魚や、刺身下ごしらえ用の柵17を載せた場合に、該魚や柵17から出る魚肉汁であるドリップ18を裏面側に滴下させる上下に貫通したドリップ滴下用穴を該まな板20に多数形成しているので、ドリップ滴下用穴を介してまな板20の裏面に滴下されて、調理中に柵の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、魚や柵のうま味を保持することができる。
【0012】
請求項2に記載のまな板によれば、前記ドリップ滴下用穴は、まな板20に多数穿孔している穴30としていることで、穴30を介してまな板20の裏面に滴下されて、調理中に柵の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、魚や柵のうま味を保持することができる。
【0013】
請求項3に記載のまな板によれば、前記ドリップ滴下用穴は、まな板20にミシン目40として形成されているスリット41であり、前記ミシン目40をまな板20の上下方向、あるいは横方向に複数本形成していることで、ミシン目40の各スリット41を介してまな板20の裏面に滴下されて、調理中に柵の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、魚や柵のうま味を保持することができる。
【0014】
請求項4に記載のまな板によれば、魚や柵17から滴下したドリップ18を吸収する吸水シート31を前記まな板20の裏面に接着あるいは剥離自在に設けているので、まな板20の下面に滴下したドリップ18は吸水シート31に吸収され、別途ドリップ18吸収用の新聞紙などを用いる必要もなく、また他の箇所をドリップ18で汚すこともない。さらには、吸水シート31を剥離自在としている場合には、吸水シート31を何回も交換できて、衛生的にも良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)(b)は本発明の実施の形態における穴を形成した場合のまな板の平面図及び正面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるまな板の他の例の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるまな板のさらに他の例の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるミシン目を横方向に形成した場合のまな板の平面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるミシン目を縦方向に形成した場合のまな板の平面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるミシン目で図柄を形成した場合のまな板の平面図である。
【図7】(a)(b)は本発明の実施の形態における柵を調理する場合の正面図及び平面図である。
【図8】(a)(b)は本発明の実施の形態におけるまな板の裏面に吸水シートを設けた場合の正面図及び要部拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるミシン目を形成したまな板の裏面に吸水シートを設けた場合の要部拡大断面図である。
【図10】本発明の実施の形態における真空パック処理をする場合の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態における真空パック処理をした場合の説明図である。
【図12】略長方形状の柵から刺身を造る場合の図である。
【図13】略長方形状の柵から刺身を造る場合の説明図である。
【図14】(a)(b)は刺身を造る場合の説明図である。
【図15】刺身を造る場合の説明図である。
【図16】(a)〜(c)は刺身を切った後の説明図である。
【図17】本発明の実施の形態における姿絵、切込み線及び到達線等を形成したまな板の背面図である。
【図18】本発明の実施の形態における姿絵、切込み線及び到達線等を記載したまな板の平面図である。
【図19】本発明の実施の形態における柵をまな板の上の柵を切込み線に合わせて切っていく場合の説明図である。
【図20】本発明の実施の形態における包丁の水平面、垂直面での振り角度を説明するための説明図である。
【図21】本発明の実施の形態における姿絵、切込み線及び到達線等を形成した他の例のまな板の背面図である。
【図22】本発明の実施の形態における姿絵、切込み線及び到達線を記載した他の例のまな板の平面図である。
【図23】本発明の実施の形態における柵をまな板の上の定位置に載せて柵を切込み線に合わせて切っていく場合の説明図である。
【図24】本発明の実施の形態における包丁の水平面、垂直面での振り角度を説明するための説明図である。
【図25】本発明の実施の形態における切込み線の他の例を示すまな板の背面図である。
【図26】本発明の実施の形態における切込み線の他の例を示す説明図である。
【図27】本発明の実施の形態における切込み線のさらに他の例を示すまな板の背面図である。
【図28】本発明の実施の形態における切込み線のさらに他の例を示すまな板の平面図である。
【図29】本発明の実施の形態における平造り用の切込み線を形成した場合のまな板の背面図である。
【図30】本発明の実施の形態における平造り用の切込み線を形成した場合のまな板の平面図である。
【図31】本発明の実施の形態における図30に示す平造りの場合の包丁の水平面での振り角度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1はまな板20を示し、図1(a)はまな板20の平面図を、図1(b)はまな板20の正面図をそれぞれ示している。魚肉汁であるドリップ対策として本発明のまな板20は、図示するように略全面にわたってドリップ滴下用穴として小さな穴30を多数穿設し、この穴30を介して魚や、捌いた刺身下ごしらえ用の柵から出たドリップを該まな板20の上面(表面)側から裏面側へ滴下させるようにしている。
【0017】
上記まな板20の材料としては、樹脂製や木製とし、厚さも樹脂製の場合は、0.5mmから1mmであり、木製とした場合は、一般に市販されている厚さで良く、また、薄くしても良い。また、まな板20を樹脂製とした場合、上記穴30は、成型やパンチングにて容易に形成することができる。まな板20を木製とした場合は、ドリル加工で穴30を穿孔することになる。
【0018】
これにより、柵から出ているドリップは、穴30を介してまな板20の裏面に滴下されることで、調理中に柵の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、魚や柵のうま味を保持することができる。
【0019】
図2は、まな板20に穿孔する穴30の数を減らしたものであり、また、図3はまな板20の横方向に穴30を直線状に穿孔して、3条形成したものである。かかる場合においても、図1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0020】
図4は、まな板20の横方向にミシン目40を入れたものであり、このミシン目40は上下方向に図示例では3条形成している。すなわち、ドリップが滴下し易いまな板20の中央部分に1条、上下にそれぞれ1条形成している。ミシン目40の本数は3条に限らず、4条以上形成しても良い。なお、ミシン目40の各スリット41がドリップ滴下用穴とし、このスリット41はまな板20の上下面に貫通している。
【0021】
図5はミシン目40をまな板20の縦方向に形成したものであり、また、図6はミシン目40で魚の絵を書いたものであり、ミシン目40にて図案化したものである。もちろん、魚の図に限らず、ミシン目40によりどのような図案に形成しても良い。
【0022】
ミシン目40を形成したまな板20においても、図1の場合と同様の効果を得ることができる。
なお、まな板20の材料としては、図1の場合と同様に樹脂製、木製のいずれでも良く、厚さも一般に市販されている厚さのものである。
【0023】
図7は、上記穴30あるいはミシン目40を形成したまな板20の上面に、刺身下ごしらえ用の柵17を載せている状態を示している。なお、図7では、ミシン目40を形成したまな板20の例を示している。柵17から出ているドリップ18はまな板20に形成しているミシン目40の各スリット41を介して下方に滴下して、ドリップ18に柵17が浸からないようにしている。
【0024】
なお、図7では左右に木片などの支持台4を置き、この支持台4の上にまな板20を懸架して、ドリップ18が滴下し易いようにして、包丁1にて柵17を切るようにしている。また、まな板20の下方に新聞紙を置いて滴下したドリップ18を吸収するようにしても良く、また、支持台4を用いずに、新聞紙の上に直接まな板20を置いて調理するようにしても良い。
なお、まな板20の厚みが薄く、まな板20が撓む場合は、支持台4を複数本並べ、その複数本の支持台4の上にまな板20を置いて調理する。
【0025】
図8は、ドリップ滴下用の穴30を穿孔したまな板20の裏面にドリップを吸収するための吸水シート31を接着または剥離自在に設けたものである。図9はミシン目40を形成しているまな板20の要部拡大断面図を示している。
柵17から出たドリップ18は穴30あるいはミシン目40のスリット41を介してまな板20の裏面に滴下し、この滴下したドリップ18は吸水シート31に吸収されることになる。
【0026】
このように、まな板20の裏面に吸水シート31を設けていることで、図7に示すように、支持台4を用いたり、ドリップ18吸収用の新聞紙を用いる必要がなく、利便性を向上させることができる。また、ドリップ18は吸水シート31に吸収されるので、ドリップ18により他の箇所を汚すこともない。さらには、吸水シート31を剥離自在としている場合には、吸水シート31を何回も交換できて、衛生的にも良い。
【0027】
ところで、鮮魚の真空パックという方法は、鮮度保持において大変優れた方法であり、この方法を活用して多種の鮮魚の刺身を造れるようになれば、消費者にとっては大きなメリットになるものである。
柵17を真空パック用の袋に入れる場合、真空パック処理後の見映え上、柵17を袋内の略中央部分に位置させる必要があり、単に柵17だけを袋に入れて中央部分に位置させることは、サンマ、サヨリなどの細くて、薄い柵17の場合は困難を伴う。
【0028】
そこで、上記まな板20を薄くしておき、このまな板20の上に柵17を載せて袋に入れるようにすることで、柵17を袋の略中央部分に容易に位置させることができる。また、柵17を買った消費者も、袋からまな板20ごと取り出して、該まな板20を利用して柵17を切ることができる。
【0029】
図10は、上記まな板20及び吸水シート31を真空パック処理を行なう場合を示しており、真空パック用の袋34内に裏面に吸水シート31を設けたまな板20の上に柵17を載せた状態で入れ、その後真空パック処理を行なう。図11は真空パック処理後の状態を示している。図11では、ミシン目40を形成したまな板20の場合を示しているが、穴30を穿孔したまな板20の場合でも同様である。
これにより、真空パック処理をした後に、柵17からドリップが出ても、該ドリップはまな板20の穴30あるいはミシン目40のスリット41を介して滴下し、この滴下したドリップが吸水シート31に吸収され、柵17のうま味を保持することができる。また、真空パック処理をせずに、単に袋やパック内に柵17を入れておく場合には、柵17から出たドリップは吸水シート31に吸収されて、柵17がドリップに浸かるのを防止し、柵17のうま味を保持することができる。
【0030】
ところで、鮮魚取り扱い業において、通常は鮮魚小売店の場合、その店の主人や職人が包丁の扱いができ、尚且つ各種の鮮魚の捌き方に精通していることが必須である。一方、食品スーパーでは、鮮魚責任者がある程度魚を扱えることでパート従業員を指導しているが、多くの場合、鮮魚の取り扱いに興味を持つ次の世代が不足しており、鮮魚の捌き方という技術の伝承がなされていないのが現状である。
【0031】
ましてや最近では、スーパーに納められる刺身用鮮魚などは柵の状態までしたものを利用しているのが一般的で、担当者に至っては生きた魚の〆方や捌き方も知らないし、刺身の造り方も出来ないのが当たり前になっている。
【0032】
図12は例えば、マグロの柵52をまな板51の上に載せて包丁1にて刺身を造る場合を示しており、この柵52は、略長方形状に予め切ってあるものであり、そのため、図13のライン53に示す位置付近に包丁1を入れて所定の間隔毎に単純に切っていくだけで、ある程度厚みを一定にした刺身を造ることができる。また、この柵52は略長方形状のため、切った刺身の面積もほぼ同じ大きさとすることができ、そのため、鮮魚店、スーパー等のパート従業員や、また、一般家庭の主婦でも、同じ大きさで、同じ厚みの刺身を簡単に造ることができる。
【0033】
しかしながら、図12に示すような、大きな魚から取った柵52は略長方形状であるから、上述のように簡単に刺身を造ることができるものの、刺身用の柵は長方形状とは限らない。小さな魚や、魚の種類によってはほとんど長方形状ではないものの方が多く、図14に示すような魚の柵54は、胴部から尻尾にかけて幅が狭くなっており、また、厚みも尻尾に至るほど薄くなっている。
【0034】
この図14に示すような柵54を、図15に示すように、長方形状の柵52の場合と同様な切り口で切っていくと、厚みをほぼ同じにできても、図16に示すように、大きさが胴部の頭部に近い刺身片55aや、胴部の真ん中の刺身片55bや、尻尾に近い刺身片55cでは、大きさ(面積)が異なってしまう。
一般の家庭では、図16に示すような大きさが異なる刺身片でも良いものの、鮮魚店やスーパーでは販売をすることができない。また、飲食店でも同様である。もちろん、家庭においても、お皿に大きさが異なる刺身片を盛った場合、見た目も悪くなって食欲もそそらず、家族から不満が出ることにもなる。
【0035】
図14に示すような柵54の箇所によって幅寸法、厚み寸法が異なる場合、1つの柵54を切る場合、大きさや重さをほぼ同じように切っていくが、これには、この技を持った職人が捌く必要がある。この捌き方(柵54の切り方)は、そう簡単にできるものではなく、何年も修行した結果できるものであると言われている。
このような職人芸を持った人を何人も雇うのは、大手のスーパーや飲食店では可能ではあるものの、比較的小さな食品スーパーや飲食店、鮮魚店では不可能であり、せいぜい一人の職人を雇うのが精一杯である。
【0036】
また、鮮魚流通においては、丸物(姿のまま)や、下処理をしたもの、切り身にしたもの、及び刺身用柵にして真空パックをしたものが販売現場に納品されている。
そして、販売現場での再加工が行なわれるのは刺身用の柵にされた魚であり、これは一般的にはパート従業員によって加工(刺身加工)が行なわれるもので、なかなか職人的な出来映えとはならない。そのため、パート従業員でも取り扱いが簡単な魚(例えば、鯛、ハマチ、マグロ、イカ、サーモン等)しか売り場に並んでいない。
【0037】
また、魚の全体の形は、頭から尻尾にかけて大きさと厚みは変化しているので、単純な包丁遣いでは刺身や切り身が同じ大きさや重さに出来ない上に、その柵を見て何人前の刺身(刺身の切り数)が取れるかを瞬時に判断するのは相当の経験が必要である。
これは、消費者や飲食店側からの要望があり、魚を見ただけでは、何人前になるのかは一般には不明だからである。
【0038】
図17以降は柵17を切って刺身を造るのに小売店、スーパー、飲食店のパート従業員などの人手も職人さんのように綺麗に切ることができるようにした場合のまな板20を示している。
そして、かかるまな板20の上面には後述する切込み線21、到達線22、アルファベットなどの文字、包丁の絵柄等は形成(印刷、コーティング)しておらず、すべてまな板20の裏面に形成しているものである。
【0039】
図17はかかるまな板20の背面図(裏面図)を示し、図18まな板20の平面図(表面図)を示している。そして、まな板20の裏面に設けた切込み線21、到達線22、アルファベットの文字等が上面から見えるようにまな板20を透光性の材料を用いており、例えば、ポリプロピレンにてまな板20を形成している。すなわち、図18はまな板20の表面から見て、まな板20の裏面に形成した切込み線21等が見えている状態を示している。そして、まな板20の裏面にはアルファベットの文字が逆向きに印刷され、上面から見て図18に示すように、アルファベットの文字が正常に見えるようになっている。
【0040】
そして、まな板20の上面(表面)に載せる柵17は、尻尾に至るほど幅が狭くなり、また、厚みが薄くなる形状である。この形状の柵17を所定の厚みに包丁で切っていった場合に、魚の頭に近い刺身片の大きさや重さと、尻尾に近い刺身片の大きさや重さをほぼ同じようにするものである。
【0041】
図17及び図18において、まな板20の裏面には、柵17の平面形状に略対応させ、外周だけをラインで形取った姿絵23が形成されている。また、まな板20の裏面には上記姿絵23を横断するように複数本の実線と破線とが設けられており、実線が包丁1の刃2(図19参照)で柵17の上面を実際に切っていく際の目安となる切込み線21であり、破線が柵17を切っていって切り終わる到達線22である。
そして、各切込み線21及び到達線22の両端には、同じ線であることが分かり易いようにアルファベットを印字(印刷)しており、切込み線21には大文字のアルファベットを、到達線22には小文字のアルファベットをそれぞれ印字している。
【0042】
図示例では、A−Aラインの切込み線21からL−Lラインの切込み線21までの実線を描いており、また、到達線22では、a−aラインからe−eラインまでの破線を描いている。なお、到達線22を破線で形成しているが、実線でも良く、切込み線21や到達線22の線種は特に限定されるものではない。
【0043】
この図18に示す姿絵23の右側が魚の頭部側に対応させており、左側が尻尾に対応させている。そして、柵17をこの姿絵23に合わせるようにして載せるが、柵17の尻尾側を姿絵23の尻尾側に合わせて載せるようにするものであり、この載せ方が柵17のまな板20への定位置である。
一般的に柵17の頭部側部分では、幅や厚みがほぼ同じなので、この図18に示す柵17(姿絵23)の例では、包丁1はそのまま真下に降ろして切っていくようにしている。ここでは、切込み線21のL−LラインからF−Fラインまではほぼ等間隔で描いている。到達線22が形成されていない場合は、包丁1の刃2を入れる目標線とした切込み線21から柵17を切っていき、同じ切込み線21に到達するまで切る。
【0044】
なお、柵17の右側の端部は使用しないために、切込み線21は柵17に対して斜めに形成しており、柵17の両側の端部は、中央部分の刺身片の大きさと同じ大きさの刺身片を取ることが出来ないので、柵17の両側が刺身片には利用せずに、他の料理、例えば、ちらし寿司などに使用されるようになっている。
【0045】
また、尻尾側にいくほど柵17の幅が狭くなり、同時に厚みも薄くなっていくので、切って刺身片とした場合に、尻尾側の刺身片も大きさや重さを、L−LラインとK−Kラインにて切った刺身片の大きさや重さとほぼ同じにするために、ここでは、切込み線21のE−Eラインからは、切込み線21のF−Fラインに対して傾斜角度を緩くするように描いている。同時に、切込み線21のE−Eラインに対応した到達線22のe−eラインを該E−Eラインと略平行にすると共に、E−Eラインよりは尻尾側に位置するように該e−eラインを形成している。
【0046】
すなわち、尻尾側にいくほど切込み線21は、所定の厚みに切った後の各刺身片の大きさ(面積)や重さがそれぞれ同じようになるように、尻尾側の切込み線21は、尻尾側に至るほど頭部側に傾くように形成している。また、まな板20の上面から見て包丁1の刃2の到達の目標線とした到達線22は切込み線21に対して尻尾側に略平行にずらせた位置であって、尻尾側にいくほど包丁1の刃2が垂直面で傾くようになる位置に形成している。
【0047】
図19は複数本の切込み線21と到達線22とが描かれているまな板20の上に柵17を載せたとした場合(ここでは、姿絵23を柵17に対応させている)で、柵17を包丁1により切って刺身片を造る場合の説明図である。なお、柵17は、上述したように柵17の尻尾をまな板20の姿絵23の尻尾に合わせて定位置としてまな板20の上に載せる。
【0048】
包丁1で柵17を切っていく場合、柵17の右側から左方へ切っていってもよく、また、逆に左側から右方へ切っていくようにしても良い。説明の便宜上、柵17を右側から切っていく場合で説明する。
切込み線21のL−LラインからF−Fラインまでは、各ラインに対応した到達線22は記載されていないので、包丁1の刃2を切込み線21に合わせて真下に降ろして柵17を切っていく。切込み線21のE−Eラインからはe−eラインのように到達線22がそれぞれ形成されているので、切込み線21のE−EラインからA−Aラインまで、包丁1の刃2が到達線22のe−eライン・・・a−aラインに到達するように包丁1の刃2の傾斜角度を水平面上及び垂直面上で順次傾けていきながら柵17を切っていく。
【0049】
図20は、包丁1の刃2の水平面での傾斜角度と、垂直面での傾きをまな板20の上面から見た場合を図示したものであり、図中のL−Lは、図19の切込み線21のL−Lラインに沿って包丁1で切っていく場合を示し、D−dは、切込み線21のD−Dラインから到達線22のd−dラインに向かって切っていく場合を示している。また、B−bは、切込み線21のB−Bラインから到達線22のb−bラインに向かって切っていく場合を示し、A−aは、切込み線21のA−Aラインから到達線22のa−aラインに向かって切っていく場合を示している。
【0050】
図20の(a)は、包丁1の刃2の水平面上における傾斜角度を示し、(b)は刃2の垂直面における傾斜角度(傾き)を示している。まず、切込み線21のL−Lラインでは、L−Lラインに対応した到達線22は無いので、包丁1の刃2を真下に降ろして柵17を切る。
ここで、図20(a)において、水平面で真上から見た場合を示し、(b)は(a)の矢印方向を見た刃2の垂直方向の図である。(a)において、切込み線21のL−Lラインを水平基線24とし、(b)において真下の垂直方向に刃2を降ろす方向の基線を垂直基線26とする。
【0051】
また、L−Lの(a)に示すように、切込み線21のL−Lラインを水平基線24としているので、水平における傾斜角度α4はゼロとしている。また、(b)に示すように、刃2の垂直方向の垂直基線26の傾斜角度β4もゼロとしている。
そして、D−dにおいては、水平面における刃2の傾斜角度は、水平基線24に対してα3だけ傾斜し、同時に(b)に示すように、垂直面における刃2の傾斜角度を垂直基線26に対してβ3だけ傾斜させ、この(a)と(b)の刃2の傾斜状態で刃2を切込み線21の大文字が記載されているD−Dラインから到達線22の小文字が記載されているd−dラインに向かって柵17を切る。
【0052】
次に、柵17の尻尾側のB−bにおいては、水平面における刃2の傾斜角度は、水平基線24に対してα3より大きいα2に傾斜させ、同時に(b)に示すように、垂直面における刃2の傾斜角度を垂直基線26に対してβ3より大きいβ2に傾斜させ、この(a)と(b)の刃2の傾斜状態で刃2を切込み線21のB−Bラインから到達線22のb−bラインに向かって柵17を切る。
そして、最後に、柵17の尻尾側のA−aにおいては、水平面における刃2の傾斜角度は、水平基線24に対してα2より大きいα1に傾斜させ、同時に(b)に示すように、垂直面における刃2の傾斜角度を垂直基線26に対してβ2より大きいβ1に傾斜させ、この(a)と(b)の刃2の傾斜状態で刃2を切込み線21のA−Aラインから到達線22のa−aラインに向かって柵17を切る。なお、L−Lラインから包丁1の刃2に傾斜角をつけたまま最後(A−Aライン)まで切り進むようにしても良い。
【0053】
このように、尻尾側に形成した切込み線21を、該尻尾側に至るほど水平基線24に対する傾斜角度αを尻尾側に至るほど該切込み線21が頭部側に傾くように順次大きくしている。また、尻尾側に形成した到達線22を、該尻尾側に至るほど垂直基線26に対する傾斜角度βを尻尾側に至るほど該到達線22が頭部側に傾くように順次大きくしている。
これにより、柵17の尻尾側にいくほど、柵17の幅が狭くなり、また柵17の厚みが薄くなっていく場合には、尻尾側に至るほど包丁1の刃2を水平面及び垂直面において順次傾きを大きくしていくことで、切った後の各刺身片の大きさや重さをほぼ同じものとすることができる。
【0054】
図21〜図23は、魚の頭側の柵17の部分の大きさより切った刺身片の大きさを少し大きくする場合であり、全ての切込み線21に対応して到達線22をそれぞれ形成した場合である。もちろん、切込み線21及び到達線22はまな板20の裏面に形成しているものである。
図21はまな板20の背面図を示し、図22はまな板20の平面図を示し、また、図23はまな板20の上面に柵17を載せて、かつ柵17を姿絵23の位置に合わせた状態を示している。なお、柵17の全体にわたって幅や厚みが均一ではない場合にも適用できる。
【0055】
図21〜図23に示すように、各切込み線21のA−AラインからL−Lラインに対応させて、それぞれ到達線22のa−aラインからl−lラインまでそれぞれ形成している。ここでは、図18の場合と同様に切込み線21のL−LラインからF−Fラインまでは同じ間隔で水平面上での包丁1の刃2の傾きや、垂直面上での刃2の傾きは同じとし、F−Fラインの次のE−Eラインからは刃2の水平面、垂直面における傾きを大きくして切っていく場合とする。
【0056】
図24(a)は図20の場合と同様に、包丁1の刃2の水平面上における傾斜角度を示し、(b)は刃2の垂直面における傾斜角度(傾き)を示している。まず、J−jにおいて、切込み線21のJ−Jラインでは到達線22のj−jラインを形成しているが、水平面上での傾きは、L−Lラインと同じなので、このJ−Jラインを水平基線24とし、この傾斜角度α3をゼロとしている。
一方、垂直面上において初めから刃2を傾けて柵17を切っているので、(b)に示すように、垂直基線26を基線として、この垂直基線26に対して刃2の傾斜角度をβ3(≠0)としている。ここで、図24(a)は、水平面で真上から見た場合を示し、(b)は(a)の矢印方向を見た刃2の垂直方向の図である。
【0057】
次に、D−dにおいては、水平面における刃2の傾斜角度は、水平基線24に対してα2だけ傾斜し、同時に(b)に示すように、垂直面における刃2の傾斜角度を垂直基線26に対して傾斜角度β3より大きいβ2に傾斜させ、この(a)と(b)の刃2の傾斜状態で刃2を切込み線21のD−Dラインから到達線22のd−dラインに向かって柵17を切る。
そして、最後に、柵17の尻尾側のA−aにおいては、水平面における刃2の傾斜角度αは、水平基線24に対してα2より大きいα1に傾斜させ、同時に(b)に示すように、垂直面における刃2の傾斜角度を垂直基線26に対してβ2より大きいβ1に傾斜させ、この(a)と(b)の刃2の傾斜状態で刃2を切込み線21のA−Aラインから到達線22のa−aラインに向かって柵17を切る。
【0058】
このように、柵17の尻尾側にいくほど、柵17の幅が狭くなり、また柵17の厚みが薄くなっていく場合には、尻尾側に至るほど包丁1の刃2を水平面及び垂直面において順次傾きを大きくしていくことで、所定の厚みに切った後の各刺身片の大きさや重さをほぼ同じものとすることができる。
これにより、鮮魚を捌く職人でなくても、鮮魚店、食品スーパー、飲食店のパート従業員の人でも、単に切込み線21、到達線22に合わせて柵17に包丁1を入れていくだけで、簡単に刺身を造ることができ、しかも、短時間で刺身を造ることができる。
まな板20の裏面に形成されている切込み線21に対応させて包丁1の刃2を柵17に上面に合わせ、刃2を到達線22に向けて切っていけば、水平面及び垂直面での刃2の振り角度を容易に変えながら切っていくことができ、刺身片をほぼ同じ大きさや重さに簡単に綺麗な刺身を造ることができる。
【0059】
ところで、切り身や刺身の造り方には幾つかのやり方があって、そぎ造り(そぎ切り)、平造り、うす造り、などがあり、上記の図示例の場合は、そぎ造りである。また、当然、魚の種類や刺身の造り方において多様な切り方があり、切込み線21の引き方も変わるものの、包丁1の切込み線21と斜め下に到達線22があるうす造りやそぎ造りなどの場合と、切込み線21が真下まで行き包丁1を垂直面で傾斜させずに切る平造りで、包丁1の振り角度である水平面上でのみに対応した切込み線21を形成するようにしても良い。
【0060】
つまり、図18や図22に示すように、切込み線21と到達線22とをまな板20の裏面に形成する場合はもちろん、刺身の造り方によって切込み線21のみをまな板20の裏面に形成するようにしても良いものである(この実施形態は後述する。)。この場合でも、魚の形状に合わせて同じ大きさや重さの刺身片を容易に造ることができる。
この場合、図18及び図22に示す切込み線21のみが形成されているものであり、到達線22は形成されていない。切込み線21は当然、まな板20に載せる柵17の形状に合わせて尻尾側に至るほど水平面上で頭部側に傾斜させている。この場合でも、単に切込み線21に合わせて柵17に包丁1を入れていくだけで、鮮魚を捌く職人でなくても、鮮魚店、食品スーパー、飲食店のパート従業員の人でも、簡単に刺身を造ることができ、しかも、短時間で刺身を造ることができる。
【0061】
なお、図18及び図22において、切込み線21から到達線22に向けて切る場合は、そぎ造り、うす造りとなり、到達線22が形成されておらず、切込み線21のみが形成されている場合は、平造りとなる。また、切込み線21及び到達線22が形成されている場合でも、到達線22を無視して切込み線21から真下に切ることで、平造りの刺身を造ることもできる。
【0062】
また、魚の種類や大きさは多様ではあるものの、一般に流通している魚の大きさは、ある程度限られており、これらの魚の大きさや形状に合わせて切込み線21のみや、切込み線21及び到達線22をまな板20の裏面に形成するようにしている。この場合でも、切込み線21や到達線22の傾斜角度もそれほど多くはなく、それぞれの魚の大きさ、形状に合わせて容易に形成できるものである。
【0063】
また、まな板20の裏面に切込み線21、到達線22を形成しており、柵17をまな板20の上に載せて定位置に置いた場合には、柵17の大きさと切込み線21の本数から、何人前の刺身ができるかが、職人ではない一般のパート従業員の人でも容易に判断することができる。例えば、切込み線21が5本の場合で、一人前とすることで、何人前の刺身が出来るかは容易に判断することができる。
なお、図18及び図22に示すまな板20において、5切れの刺身片を1人前とした時に、5切れ目の刺身片を切るときの切込み線21の上方に何らかのマークを付けておき、このマークにより容易に何人前の刺身が出来るかを判断するようにしても良い。
【0064】
さらに、まな板20の裏面に形成している切込み線21、到達線22の上下部分には、上記実施形態では、切込み線21は大文字のアルファベット、到達線22は小文字のアルファベットを用いているが、アルファベットの代わりに数字を用いても良い。この場合、切込み線21の数字はアラビア数字(算用数字)を用い、到達線22の数字は漢数字を用いるようにしても良い。かかる場合、1つの柵17から何人前の刺身ができるか容易に判断(計算)することができる。
また、まな板20に切込み線21のみが形成されている場合は、その各切込み線21の両端側には、アルファベット、あるいはアラビア数字または漢数字を印字する。さらには、切込み線21や到達線22の両端側にアルファベット、あるいはアラビア数字を記していたが、片方のみにアルファベット、あるいはアラビア数字等を記すようにしても良い。
【0065】
なお、切込み線21、到達線22の両端側に印字しているアルファベット、アラビア数字、漢数字について、アルファベット順、あるいは数字順に記載するようにしている。また、隣接している切込み線21の幅は、切り取った際の刺身片の厚みにほぼ対応させている。
【0066】
このように、切込み線21の少なくとも一方の端部側には大文字のアルファベット、あるいはアラビア数字が印字されており、前記切込み線21に対応した到達線22の両端側には前記大文字に対応した小文字のアルファベット、あるいは前記アラビア数字に対応した漢数字が印字されており、各切込み線21や到達線22に対してアルファベット順、あるいは数字の順番に印字されているものであり、各切込み線21の両端側にある同じアルファベットの文字、あるいは同じ数字の位置に包丁1の刃2を合わせるようにして柵17を切っていき、同じ小文字のアルファベット、あるいは漢数字に合わせるようにして到達線22まで切っていくので、切る位置を間違えることなく、綺麗に刺身を造ることができる。
【0067】
また、切込み線21の少なくとも一方の端部側には大文字のアルファベット、あるいはアラビア数字が印字されており、各切込み線21に対してアルファベット順、あるいは数字の順番に印字されているものであり、各切込み線21の両端側にある同じアルファベットの文字、あるいは同じ数字の位置に包丁1の刃2を合わせるようにして柵17を切っていくので、切る位置を間違えることなく、綺麗に刺身を造ることができる。
【0068】
図25及び図26はまな板20の姿絵23に合わせて載せた柵17から何人前の刺身が造れるかが瞬時に判断できるようにした実施形態を示している。図25はまな板20の背面図を示し、図26はまな板20の平面図を示している。まな板20の裏面には図22の場合と同様に切込み線21及び到達線22が横方向に列設されており、任意の枚数の刺身片の数ごとに水平ライン36より突出した切込み線21aを形成したものである。
【0069】
切込み線21a間の刺身片を1人前とし、図示例では姿絵23の大きさとほぼ同じ柵17の場合では5人前分の刺身を造ることができるとしている。切込み線21aの間の切込み線21は図では2本としているが、他の切込み線21は省略しているものであり、5本などの任意の切込み線21を形成している。
要は刺身片が何枚で1人前とするかであり、刺身片が4枚あるいは5枚が1人前とすると、その枚数に合わせて切込み線21が形成されており、1人前ごとに他の切込み線21より長く、水平ライン36より突出した切込み線21aを形成している。なお、水平ライン36は、説明の便宜上記載しているものであり、実際にはまな板20の面には形成されていない。
【0070】
そして、柵17をまな板20の姿絵23の尻尾側に合わせて載せると、柵17の頭部側の端部がどの切込み線21aに位置しているを見るだけで、瞬時にこの柵17から何人前の刺身が造れるかが判断できるものである。
【0071】
図27及び図28はさらに他の実施形態のまな板20を示し、図27はまな板20の背面図を、図28はまな板20の平面図をそれぞれ示している。この実施形態では、図26の場合と同様に刺身が何人前かを判断する切込み線21aを所定の本数毎に上方へ長く形成し、この長く形成した切込み線21aにだけ対応させて到達線22を形成している。他の切込み線21には、該切込み線21に対応した到達線22は形成していない。
また、各切込み線21aの上端からは到達線22の上端に向かって、包丁1の刃2の入れる方向を示す方向線37が形成されている。なお、各切込み線21aの下方には包丁の絵柄がデザインされている。この包丁の絵柄の数により何人前の刺身が出来るかも判断することができる。姿絵23、切込み線21、到達線22、アルファベットの文字、包丁の図柄等はまな板20の裏面に形成されている。
【0072】
この図28に示すまな板20の裏面に形成した切込み線21や到達線22は、まな板20の上面から見てそれぞれ右方に傾斜させた構成としており、これは、そぎ切りと言われる魚の捌き方を示し、左から右方にかけて柵17に包丁1を入れて切っていく方法である。
また、このまな板20の材料としては、樹脂製である。このまな板20に載せた柵17を切っていく場合の包丁1の水平面、垂直面での傾斜は、図22及び図23の場合と同様なので、説明は省略する。
【0073】
この実施形態では、上記と同様に切込み線21から包丁1の刃2を到達線22を目標として傾斜させて、姿絵23の定位置に載せた柵17を切っていくことで、所定の厚みに切った各刺身片は大きさや重さをほぼ同じにすることができ、見映えの良い刺身を造ることができる。
これにより、鮮魚を捌く職人でなくても、鮮魚店、食品スーパー、飲食店のパート従業員の人でも、単に切込み線21、到達線22に合わせて柵17に包丁1を入れていくだけで、簡単に刺身を造ることができ、しかも、短時間で刺身を造ることができる。
【0074】
また、到達線22は刺身が何人前かの判断をする切込み線21aにのみ対応させて形成し、他の切込み線21に対応する到達線22は形成していないので、線がスッキリして迷うことなく切込み線21に包丁1を入れ易くすることができ、また、デザイン的にも向上させたまな板20を提供することができる。
さらには、柵17をまな板20の姿絵23の尻尾側に合わせて載せると、柵17の頭部側の端部がどの切込み線21aに位置しているを見るだけで、瞬時にこの柵17から何人前の刺身が造れるかが判断できるものである。
【0075】
図29及び図30は、平造りと言われる魚の捌き方に対応して切込み線21を形成したまな板20を示し、切込み線21のみがまな板20の裏面に形成されていて、到達線22は形成していない。姿絵23、アルファベットの文字、包丁1の図柄はまな板20の裏面に形成されている。このまな板20での魚の捌き方は、図30において、右から左方にかけて柵17に包丁1を入れて切っていく方法である。
この実施形態では、柵17に対応した姿絵23の中央部分から左方にいくほど切込み線21が水平面上で尻尾側に徐々に傾斜する方向に形成されている。この徐々に傾斜している切込み線21により所定の厚みに切った刺身片は、それぞれ大きさや重さをほぼ同じにすることができる。なお、図30においては、各切込み線21の上端は同じ位置となっているが、図28に示すように、刺身の1人前ごとに対応した切込み線21を長く形成するようにしても良い。これにより、柵17から何人前の刺身が取れるか瞬時に判断することができる。
【0076】
図31は、包丁1の刃2の水平面での傾斜角度を図20の場合と同様に示したものであり、図中のAからNまでの切込み線21は水平面で傾斜角度α4をゼロとし、これを図20の場合と同様に水平基線24とする。
途中のOにおいては、水平面における刃2の傾斜角度は、水平基線24に対して尻尾側に傾くようにしてα3だけ傾斜させて切込み線21を目標線として柵17を切っていく。
【0077】
次に、柵17の尻尾側のTにおいては、水平面における刃2の傾斜角度は、水平基線24に対してα3より大きいα2に傾斜させ、この刃2の傾斜角度α2でもって刃2を切込み線21のTで切っていく。
そして、最後に、柵17の尻尾側のZにおいては、水平面における刃2の傾斜角度は、水平基線24に対してα2より大きいα1に傾斜させて柵17を切るものである。
【0078】
このように、尻尾側に形成した切込み線21を、該尻尾側に至るほど水平基線24に対する傾斜角度αを尻尾側に至るほど該切込み線21を尻尾側に傾くように順次大きくしている。
【0079】
この実施形態では、切込み線21を目標に定位置に載せた柵17を切っていき、同じ切込み線21を目標として柵17を切っていくことで、所定の厚みに切った各刺身片は大きさや重さをほぼ同じとなり、見映えの良い刺身を造ることができる。
これにより、鮮魚を捌く職人でなくても、鮮魚店、食品スーパー、飲食店のパート従業員の人でも、単に切込み線21、到達線22に合わせて柵17に包丁1を入れていくだけで、簡単に刺身を造ることができ、しかも、短時間で刺身を造ることができる。
【0080】
上記図17以降に示す各実施形態のまな板20では、該まな板20の裏面に切込み線21、到達線22、アルファベット等の文字を印刷、コーティング等にて形成しており、そのため、まな板20の上面で柵17を包丁1で切っていっても切込み線21、到達線22等が包丁1の刃2で傷がつくこともなく、また刃2で切込み線21等が剥がされることもなく、長期にわたって使用することができる。
また、切込み線21、到達線22等をまな板20の上面に形成した場合、包丁1で剥がされた切込み線21等のインキが食品である柵17に付着することもなく、非常に衛生的である。
【0081】
なお、切込み線21等をまな板20の裏面に形成した実施形態では、柵17からのドリップ18の滴下用としてスリット41を有するミシン目40を描いていたが、穴30を多数穿設したまな板20の場合にも同様に適用できるものである。
また、切込み線21等を形成したまな板20の裏面に吸水シート31を接着ないし剥離自在に設けるようにしても良い。なお、柵17を真空パック処理を行なう場合のまな板20や、単独販売するまな板20は、抗菌処理が行なわれている。
【符号の説明】
【0082】
17 柵
18 ドリップ
20 まな板
30 穴
31 吸水シート
40 ミシン目
41 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
まな板(20)に魚や、刺身下ごしらえ用の柵(17)を載せた場合に、該魚や柵(17)から出る魚肉汁であるドリップ(18)を裏面側に滴下させる上下に貫通したドリップ滴下用穴を該まな板(20)に多数形成していることを特徴とするまな板。
【請求項2】
前記ドリップ滴下用穴は、まな板(20)に多数穿孔している穴(30)としていることを特徴とする請求項1に記載のまな板。
【請求項3】
前記ドリップ滴下用穴は、まな板(20)にミシン目(40)として形成されているスリット(41)であり、前記ミシン目(40)をまな板(20)の上下方向、あるいは横方向に複数本形成していることを特徴とする請求項1に記載のまな板。
【請求項4】
前記魚や柵(17)から滴下したドリップ(18)を吸収する吸水シート(31)を前記まな板(20)の裏面に接着あるいは剥離自在に設けていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のまな板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−229657(P2011−229657A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102274(P2010−102274)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(510110518)
【Fターム(参考)】