説明

めっき方法

【課題】複雑な設備構成を必要とせずに、かつコストの増大を抑制しつつ、被めっき物と導電メディアの凝集を効率よく抑制、防止して、被めっき物に安定してめっきを施すことが可能なめっき方法を提供する。
【解決手段】めっき処理室1に、(a)めっき液3と、(b)被めっき物2と、(c)導電メディア4と、(d)めっき中に陰極電極12の近傍に発生する被めっき物2と導電メディア4を含む凝集物を解砕するとともに、被めっき物2を撹拌する撹拌メディア5とが存在する条件下でめっき処理室1を、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながらめっきを行う。
また、めっきを行う工程において、個々の撹拌メディア5が、0.015J以上の運動エネルギーを有するように、めっき処理室1の回転条件と、個々の撹拌メディア5の重量の関係を定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき方法に関し、詳しくは、チップ型の積層セラミックコンデンサのような小型の電子部品(被めっき物)にめっきを施すためのめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ型の積層セラミックコンデンサのような小型の電子部品(被めっき物)にめっきを施すのに用いられるめっき装置としては、例えば、図6に模式的に示すように、回転可能で、内部空間が略円板状のめっき処理室51に被めっき物52およびめっき液53を投入し、めっき処理室51を回転させながら被めっき物52にめっきを施すようにした回転式のめっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このめっき装置においては、めっき処理室51の周壁が環状の陰極電極54と、めっき液53を通過させる環状の部材からなる液抜き部55から形成されている。そして、液抜き部55から抜き出されためっき液53は容器56により受けられ、循環路58を経て、めっき処理室51の上部中央に配設された開口部57からめっき処理室51内に戻るように構成されている。また、陽極電極59は、めっき処理室51の上部中央の開口部57からめっき処理室51内に挿入され、めっき液53に浸漬されている。
【0004】
このめっき装置を用いて被めっき物52にめっきを行う場合、被めっき物52をめっき液53とともにめっき処理室51内に投入し、めっき処理室51を回転させながら、陽極電極59と陰極電極54の間に通電することにより、被めっき物52にめっきを施す。
【0005】
このとき、めっき処理室51の回転により発生する遠心力で被めっき物52が陰極電極54に効率よく接触するとともに、めっき処理室51の正転、減速(停止)、反転が繰り返して行われることにより、被めっき物52の撹拌と、陰極電極54との接触、すなわち被めっき物52への通電が繰り返して行われ、被めっき物にめっきが施される。
【0006】
ところで、回転めっきで小型の被めっき物(小型電子部品など)をめっきする際には、被めっき物とともに、めっき処理室51に導電メディアを投入し、めっき液53中に被めっき物52および導電メディア(特に図示せず)の存在する条件下でめっき処理室51を回転させながらめっきを行うのが一般的である。
【0007】
しかしながら、めっき処理に要する時間を短縮する目的で、めっき電流値を上げたり、断続的に通電しながらめっきを行う場合における、各通電工程の通電時間を長くしたりすると、遠心力により陰極電極54に当接した被めっき物52と導電メディアの表面にめっき膜が形成されて被めっき物52と導電メディアの凝集が発生し、めっき処理室51の回転速度の減速(停止)や反転だけでは、壊砕されないような強固な凝集物となり、被めっき物52に均一なめっきを施すことが困難になるという問題点がある。
【0008】
そこで、このような問題点を解決するために、めっき中に発生する凝集物を粉砕(単粒子化)するための粉砕装置を設ける方法も提案されている(特許文献2参照)が、別途粉砕装置を設ける必要があるため、設備の大型化や設備設置スペースの増大を招くばかりでなく、コストを増大させるという問題点がある。
【特許文献1】特開平7−118896号公報
【特許文献2】国際公開第98/46811号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、複雑な設備構成を必要とせずに、かつコストの増大を抑制しつつ、被めっき物と導電メディアの凝集を効率よく抑制、防止して、被めっき物に安定してめっきを施すことが可能なめっき方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明(請求項1)のめっき方法は、
連続的または断続的に回転させることが可能で、被めっき物およびめっき液が収容される内部空間が略円板状のめっき処理室と、
前記めっき処理室内のめっき液に浸るように配設された陽極電極と、
前記めっき処理室の周壁を形成するように配設された環状の陰極電極と、
前記めっき処理室の外周部からめっき液を所定の割合で抜き出すとともに、抜き出されためっき液を前記めっき処理室に戻す循環手段と
を備えためっき装置を用いてめっきを行うためのめっき方法であって、
前記めっき処理室に、
(a)めっき液と、
(b)被めっき物と、
(c)導電メディアと、
(d)めっき中に前記陰極電極の近傍に発生する被めっき物と導電メディアを含む凝集物を解砕するとともに、被めっき物を撹拌する撹拌メディアと
が存在する条件下でめっき処理室を、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながらめっきを行うこと
を特徴としている。
【0011】
また、請求項2のめっき方法は、請求項1のめっき方法の構成において、前記めっき処理室を、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながらめっきを行う工程において、個々の撹拌メディアが、0.015J以上の運動エネルギーを有するように、前記めっき処理室の回転条件と、個々の撹拌メディアの重量の関係を定めることを特徴としている。
【0012】
また、請求項3のめっき方法は、請求項1または2のめっき方法の構成において、前記撹拌メディアが略球状で直径が、前記環状の陰極電極の、前記めっき処理室の厚み方向に沿う方向の寸法の2倍以下であることを特徴としている。
【0013】
また、請求項4のめっき方法は、請求項1〜3のいずれかに記載のめっき方法の構成において、前記撹拌メディアが弾性体で覆われていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明(請求項1)のめっき方法は、めっき処理室に、めっき液と、被めっき物と、導電メディアを入れるとともに、さらに、めっき中に前記陰極電極の近傍に発生する被めっき物と導電メディアを含む凝集物を解砕するとともに、被めっき物を撹拌する撹拌メディアを添加して、めっき処理室を、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながら、めっきを行うようにしているので、前述の従来技術(特許文献2)のように別途粉砕装置を設けることを必要とせずに、簡単な構成で凝集物を解砕するとともに、被めっき物の撹拌を行うことが可能になり、被めっき物が小型である場合にも、効率よく均一なめっき処理を施すことが可能になる。
【0015】
すなわち、本発明のめっき方法においては、めっき処理室に撹拌メディアを添加し、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながらめっきを行うようにしているので、めっき処理室の回転とともに回転していた所定の運動エネルギーを有する(慣性力がついた)撹拌メディアが、めっき処理室の回転停止時、もしくは回転方向変更時の回転速度の低下(変化)の際に、めっき処理室の周壁を構成する陰極電極に沿って凝集物を解砕しながらめっき処理室内を回転(移動)するとともに、めっき処理室の回転停止後の回転再開時、もしくは、めっき処理室の反転後の回転速度の上昇(変化)の際にも、撹拌メディアが、めっき処理室の周壁を構成する陰極電極に沿って凝集物を解砕しながらめっき処理室内を回転(移動)し、被めっき物を確実に分散させる。その結果、被めっき物と導電メディアの凝集を防止して、均一で安定しためっき処理を行うことが可能になる。
【0016】
なお、本発明において、「めっき処理室を、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させる」とは、めっき処理室を、回転方向を変えながら(すなわち反転させながら)連続的に回転させる場合、回転状態と回転停止状態が繰り返されるように断続的、あるいは間欠的に回転させる場合、一方向に回転させる一方向回転と、他の方向に回転させる他方向回転を、間に回転停止状態を挟んで繰り返して行う場合など、少なくとも回転速度に変化が生じるような態様でめっき処理室を回転させる種々の態様を含む広い概念である。
【0017】
また、請求項2のめっき方法のように、めっき処理室を、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながらめっきを行う工程において、個々の撹拌メディアが、0.015J以上の運動エネルギーを有するように、めっき処理室の回転条件と、個々の撹拌メディアの重量の関係を定めることにより、さらに確実に被めっき物と導電メディアを含む凝集物を解砕することが可能になるとともに、被めっき物を撹拌することが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることが可能になる。
なお、めっき処理室の回転条件とは、回転速度や回転方向などに限らず、めっき処理室の径などの寸法やめっき処理室の形状、構造などを含む広い概念である。
【0018】
個々の撹拌メディアが、0.015J以上の運動エネルギーを有することを要件としたのは、凝集物を解砕する試験を行った結果、個々の撹拌メディアが0.015J以上の運動エネルギーを有する場合に、凝集物の解砕が可能であったことによる。
なお、めっき処理室の回転中に陰極電極に接する個々の撹拌メディアはそれぞれ(1/2)mV2という運動エネルギー(ただし、m:撹拌メディアの重量、V:速度)を有しており、めっき処理室の回転速度が変化したときに、運動エネルギーを有する(慣性力がついた)撹拌メディアが、凝集物と接触(衝突)し、この運動エネルギーを消費して凝集物を解砕する。
さらに、めっき処理室の回転停止後の回転再開時、もしくは、めっき処理室の反転後の回転速度の上昇(変化)の際にも、撹拌メディアが、陰極電極に沿って凝集物を解砕しながらめっき処理室内を回転(移動)し、被めっき物を確実に分散させる機能を果たす。
なお、この運動エネルギーは、処理室の径や回転数によって変動する速度V、重量mに依存するが、通常のめっき処理室の回転停止、回転再開の際に上述のような、0.015J以上の運動エネルギーを有するような条件を設定しておくことにより、信頼性の高いめっきを行うことができる。
【0019】
また、請求項3のめっき方法のように、撹拌メディアとして、略球状で、かつ、その直径が環状の陰極電極の、めっき処理室の厚み方向に沿う方向の寸法の2倍以下であるものを用いることにより、撹拌メディアがめっき処理室の内部空間の周辺部などに引っかかり、陰極電極の近傍に形成された被めっき物と導電メディアを含む凝集物にまで達しないというような状態となることを防止して、被めっき物と導電メディアを含む凝集物を確実に解砕することが可能になるとともに、被めっき物を十分に撹拌することが可能になり、被めっき物が小型である場合にも、効率よく均一なめっき処理を施すことが可能になる。
【0020】
なお、撹拌メディアとしては、通常、直径が陰極電極の厚みの0.5倍より大きいものを用いることが望ましい。これは、撹拌メディアの直径が陰極電極の厚みの0.5倍未満になると、凝集物の解砕範囲が小さくなり、凝集物解砕の効率が悪くなることによる。
【0021】
また、請求項4のめっき方法のように、撹拌メディアとして、弾性体で覆われたものを用いることにより、めっき工程で被めっき物に与える衝撃が小さくなり、被めっき物にチッピングなどを引き起こすことを抑制、防止して、製品の歩留まりを向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0023】
図1は本発明の一実施例にかかるめっき方法を実施するのに用いためっき装置の構成を示す図、図2は図1のめっき装置の要部を拡大して示す図、図3はこの実施例にかかるめっき方法によりめっきが施される積層セラミックコンデンサ(被めっき物)を示す斜視図である。
【0024】
なお、この実施例では、図3に示すように、セラミック層と内部電極層が積層された構造を有する積層セラミック素子(電子部品素子)41の両端部に外部電極42a,42bが配設された、厚み(T)0.3mm、幅(W)0.3mm、長さ(L)0.6mmの積層セラミックコンデンサを被めっき物2とし、その外部電極42a,42bの表面にNiめっきなどのめっきを施す場合に用いられるめっき装置を例にとって説明する。
【0025】
このめっき装置は、図1および図2に示すように、断続的に回転させることが可能で、被めっき物2およびめっき液3が収容される略円板状の内部空間1aを有するめっき処理室1を備えている。そして、めっき処理室1は、底部を構成するベース部材11と、めっき処理室1の周壁1bを形成する環状の陰極電極12と、上記環状の陰極電極12上に積み重ねるように配設され、陰極電極12とともにめっき処理室1の周壁1bを構成する、多孔質材料からなる環状のめっき抜き出し部13と、めっき処理室1の上部を覆うように配設された中央に開口部15を有する蓋部材16と、該蓋部材16の開口部15から、めっき処理室1の略中央部に挿入され、めっき液3に浸漬された陽極電極17を備えている。
【0026】
なお、多孔質材料からなる環状のめっき液抜き出し部13は、めっき処理室1の周囲から、被めっき物2を通過させることなくめっき液3のみを外部に抜き出すことができるように構成されており、このめっき液抜き出し部13から抜き出されためっき液3は、容器19により受けられ、循環路18を経て、めっき処理室1内に循環されるように構成されている。なお、このこの実施例のめっき装置では、めっき処理室1が回転と停止を所定のピッチで繰り返しながらめっき処理を行うことができるように構成されている。
【0027】
なお、環状の陰極電極12としては、厚み(めっき処理室の厚み方向に沿う方向の寸法)が5mmのものが用いられている。
また、このめっき装置においては、蓋部材16は中央側が高くなるように傾斜した形状を有しており、めっき処理室1の厚みが、その中央部に向かって厚くなるように構成されている。
【0028】
そして、この実施例では、上述のように構成されためっき装置を用いて、めっき処理室1内に、 (a)めっき液3と、(b)被めっき物2と、(c)導電メディア4と、(d)めっき中に陰極電極12の近傍に発生する被めっき物2と導電メディア4を含む凝集物を解砕するとともに、被めっき物2を撹拌する撹拌メディア5とを投入し、所定のピッチでめっき処理室1の回転、停止を繰り返しながらめっき処理を行った。なお、この実施例では、めっき処理室1の回転と停止は、回転:3秒、停止:1秒のピッチで繰り返した。
【0029】
また、導電メディア4としては直径が0.3mmのスチールボールを用い、撹拌メディア5としては、直径が7.5mmで、表面が弾性体(この実施例ではゴム)で被覆されたスチールボールを用いた。
【0030】
なお、この実施例の条件は、めっき処理室1を回転、停止させながらめっきを行う工程において、撹拌メディア5が、0.015J以上の運動エネルギーを有するような条件である。
【0031】
また、めっき処理室1への被めっき物2、導電メディア4、撹拌メディア5の投入量は、それぞれ、
被めっき物 : 3cc
導電メディア:10cc
撹拌メディア:25cc
とした。
【0032】
上述のような条件で、めっき処理を行ったところ、撹拌メディア5が、めっき処理室1の周壁1bを構成する陰極電極12上を、陰極電極12との相対的な位置関係において確実に移動(回転)し、被めっき物2と導電メディア4を含む凝集物が生じた場合にもこれを効率よく解砕することができた。そして、その結果として、めっき処理室1内の被めっき物2を十分に撹拌して、被めっき物2に均一なめっきを施すことができた。
【0033】
なお、図4は撹拌メディア5が遠心力により陰極電極12に当接してめっき処理室1とともに回転している状態(陰極電極12との位置関係においては撹拌メディア5が移動(回転)していない状態)を模式的に示す図であり、図5はめっき処理室1の回転速度が低下した場合に、運動エネルギーを有する(慣性力がついた)撹拌メディア5が陰極電極12に沿ってめっき処理室内1を移動(回転)している(陰極電極12との位置関係において撹拌メディア5が移動(回転)している)状態を模式的に示す図である。
【0034】
図4に示すように、めっき処理室1の回転とともに回転していた所定の運動エネルギーを有する(慣性力がついた)撹拌メディア5が、めっき処理室1の回転速度が低下した場合に、図5に示すように、めっき処理室1の周壁を構成する陰極電極12に沿ってめっき処理室1内を移動(回転)することにより、凝集物が効率よく解砕されることになる。
【0035】
なお、従来の撹拌メディアを添加しないめっき方法と、本発明の撹拌メディアを添加しためっき方法を実施して、被めっき物と導電メディアを含む凝集物の発生の有無と、被めっき物どうしあるいは被めっき物と導電メディアが着合してしまうくっつき不良の発生の有無を調べた。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、撹拌メディアを添加しない従来のめっき方法によりめっきを行った場合、凝集物の発生およびくっつき不良の発生が認められたが、撹拌メディアを添加した本発明のめっき方法によりめっきを行った場合、凝集の発生を防止して、くっつき不良の発生を抑制、防止できることが確認された。
【0038】
なお、上記実施例では、めっき処理室1を、所定のピッチで回転、停止させながらこれを繰り返して、めっき処理を行う場合を例にとって説明したが、本発明は、めっき処理室1の回転を停止させることなく、めっき処理室1の回転方向を切り替える方法など、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的にめっき処理室1を回転させながらめっきを行う場合にも適用することが可能である。
【0039】
また、上記実施例では、撹拌メディアとして、直径が7.5mmで、表面が弾性体(この実施例ではゴム)で被覆されたスチールボールを用いたが、撹拌メディアの構成材料はこれに限られるものではなく、例えば、はんだボールを弾性体で被覆したものなどを用いることも可能である。また、はんだボールの寸法(直径)も、本発明の範囲内において適宜変更することが可能である。
【0040】
また、上記実施例では、積層セラミック素子を被めっき物2とし、その外部電極42a,42b(図3)の表面にめっきを施す場合を例にとって説明したが、本発明において、被めっき物の種類に特別の制約はなく、種々の被めっき物にめっきを施す場合に広く適用することが可能である。
ただし、本発明は、寸法の小さい小型の被めっき物に、めっきを施す場合に特に有意義である。
【0041】
また、上記実施例では、めっき液抜き出し部13が、多孔質材料から形成されている場合を例にとって説明したが、本発明において、めっき液抜き出し部13の具体的な構成やその構成材料などに特別の制約はなく、被めっき物2を通過させることなくめっき液3を外部に抜き出すことが可能な種々の構成やそれに適した種々の材料を用いることが可能である。
【0042】
また、上記実施例では、めっき液抜き出し部13を陰極電極12上に積み重ねるように配設した場合、すなわち、陰極電極12よりも上側にめっき液抜き出し部13が配設されている場合を例にとって説明したが、めっき液抜き出し部13を陰極電極12の下側に配設するように構成することも可能であり、場合によっては、めっき液抜き出し部13を陰極電極12の上下両面側に配設することも可能であり、陰極電極12とめっき液抜き出し部13の組み合わせ態様に特別の制約はない。
【0043】
本発明は、さらにその他の構成に関しても上記実施例に限定されるものではなく、めっき処理室を回転させる際の回転の態様、撹拌メディアの添加量、めっきすべき金属の種類、めっき装置の具体的な構成などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上述のように、本発明のめっき装置は、めっき処理室に撹拌メディアを添加し、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながらめっきを行うようにしているので、前述の従来技術(特許文献2)のように別途粉砕装置を設けることを必要とせずに、簡単な構成で凝集物を解砕するとともに、被めっき物の撹拌を行うことが可能になり、被めっき物に効率よく均一なめっき処理を施すことが可能になる。
したがって、本発明は、めっき膜を備えた外部電極を有する小型の電子部品の製造工程などに広く用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例にかかるめっき装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施例にかかるめっき装置の要部を拡大して示す図である。
【図3】本発明の実施例にかかるめっき装置によりめっきが施される積層セラミック素子(被めっき物)を示す斜視図である。
【図4】撹拌メディアが遠心力により陰極電極に当接してめっき処理室とともに回転している状態(陰極電極との位置関係においては撹拌メディアが移動(回転)していない状態)を模式的に示す図である。
【図5】めっき処理室の回転速度が低下した場合に、運動エネルギーを有する(慣性力がついた)撹拌メディアが陰極電極に沿ってめっき処理室内を回転(移動)している状態(陰極電極との位置関係において撹拌メディアが移動(回転)している状態)を模式的に示す図である。
【図6】従来のめっき装置を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 めっき処理室
1a 内部空間
1b めっき処理室の周壁
2 被めっき物
3 めっき液
4 導電メディア
5 撹拌メディア
11 ベース部材
12 陰極電極
13 めっき抜き出し部
15 開口部
16 蓋部材
17 陽極電極
18 循環路
19 容器
41 積層セラミック素子(電子部品素子)
42a,42b 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的または断続的に回転させることが可能で、被めっき物およびめっき液が収容される内部空間が略円板状のめっき処理室と、
前記めっき処理室内のめっき液に浸るように配設された陽極電極と、
前記めっき処理室の周壁を形成するように配設された環状の陰極電極と、
前記めっき処理室の外周部からめっき液を所定の割合で抜き出すとともに、抜き出されためっき液を前記めっき処理室に戻す循環手段と
を備えためっき装置を用いてめっきを行うためのめっき方法であって、
前記めっき処理室に、
(a)めっき液と、
(b)被めっき物と、
(c)導電メディアと、
(d)めっき中に前記陰極電極の近傍に発生する被めっき物と導電メディアを含む凝集物を解砕するとともに、被めっき物を撹拌する撹拌メディアと
が存在する条件下でめっき処理室を、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながらめっきを行うこと
を特徴とするめっき方法。
【請求項2】
前記めっき処理室を、回転速度に変化が生じるような態様で連続的または断続的に回転させながらめっきを行う工程において、個々の撹拌メディアが、0.015J以上の運動エネルギーを有するように、前記めっき処理室の回転条件と、個々の撹拌メディアの重量の関係を定めることを特徴とする請求項1記載のめっき方法。
【請求項3】
前記撹拌メディアが略球状で直径が、前記環状の陰極電極の、前記めっき処理室の厚み方向に沿う方向の寸法の2倍以下であることを特徴とする請求項1または2記載のめっき方法。
【請求項4】
前記撹拌メディアが弾性体で覆われていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−45619(P2006−45619A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228531(P2004−228531)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)