説明

ろ過装置及び排水処理システム

【課題】添加剤を再利用可能とし、添加剤の添加量、廃棄物の発生量を低減し、設備をコンパクト化する。
【解決手段】難ろ過性の懸濁物質を含有する被処理水を流入する流入口と、処理水を排出する排出口とを有するろ過室171と、ろ過室内に設けられ、被処理水を通過させる開孔を有し、プレコート剤としてろ過室に添加された難ろ過性の懸濁物質を捕集する磁性体のろ過助剤を、磁力によって引き寄せる板状の電磁石174と、ろ過室内で電磁石の下流に設けられ、開孔を通過した被処理水をろ過して処理水とするフィルタ173と、制御手段によって電磁石が通電状態の所定のタイミングでろ過助剤上に堆積する難ろ過性の懸濁物質と流入された被処理水をろ過室内で攪拌する攪拌手段176とを有し、ろ過室は、電磁石が通電状態の所定のタイミングで被処理水及び難ろ過性の懸濁物質を含む濃縮懸濁液を排出する第2排出口とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難ろ過性の懸濁物質を含む排水から懸濁物質を分離するろ過装置及び排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品製造業、機械加工業、食品加工業等の一般産業では工場等で排水が発生する。工場で発生した排水は、通常、工場内の排水処理施設に送られて化学的あるいは物理的な処理の後、下水として放流されたり、工場内で再利用される。
【0003】
排水処理の一例に、図8に示すように、ろ過フィルタであるろ布173をろ過室171内に有するろ過装置17を用いて、排水に含まれる懸濁物質を捕集し除去するろ過処理がある。図8に示すろ過装置17では、流入管171a及び流入口171bを介して被処理水である排水が流入すると、支持板172に支持されるろ布173でろ過された処理水(ろ過水)が排出口171c及び排出管171dを介して排出される。
【0004】
一方、排水に含まれる懸濁物質には、ろ過しやすい易ろ過性の懸濁物質の他、ろ過が困難な難ろ過性の懸濁物質もある。このような、難ろ過性の懸濁物質をろ過処理する場合、例えば、短時間でろ過フィルタのろ過流量の低下(定圧ろ過)や、ろ過差圧の急増(定量ろ過)が生じるため、短期間でろ過フィルタの交換が必要になるという問題がある。
【0005】
このような問題に対し、難ろ過性の排水を処理する方法として、ろ過フィルタの表面を予めケイソウ土やパーライトなどのろ過助剤でプレコートしてフィルタ表面に保護層を形成して、フィルタ孔の閉塞を抑制してろ過処理する方法(プレコート法)が利用されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。このプレコート法を利用する際には、ろ過フィルタ表面をろ過助剤でプレコートした後で、難ろ過性の排水(被処理水)の通水を行なう。その後、ろ過フィルタにプレコートされたろ過助剤表面で捕集された懸濁物質は、定期的なタイミングや所定量処理後のタイミングで逆洗により剥離され、剥離されたろ過助剤及び捕集された懸濁物質が廃棄物として回収される。
【0006】
例えば、図8に示したろ過装置17の場合、添加剤として添加するろ過助剤でろ過フィルタであるろ布173にプレコート層を形成し、プレコート層を形成するろ過助剤によって難ろ過性の懸濁物質を捕集する。ろ過装置17でのろ過が継続するとプレコート層に懸濁物質が堆積してろ過装置17のろ過能力が低下する。したがって、ろ過装置17のろ過能力を保つため、定期的等のタイミングで排出口171cから逆洗水を送水し、流入口171bから懸濁物質とともにプレコート層を形成するろ過助剤を廃棄物として回収する。
【0007】
また、ろ過フィルタにろ過助剤をプレコートするプレコート法の他には、排水中にろ過助剤を添加し、ろ過助剤が添加された排水(被処理水)をろ過フィルタでろ過処理する方法(ボディーフィード法)も利用されている。このボディーフィード法でも、フィルタ孔の閉塞を抑制することができる。
【0008】
さらに、難ろ過性の排水の処理方法として、ろ過・脱水処理の前段で、排水に凝集剤(塩化第二鉄、硫酸アルミニウム又はポリ塩化アルミニウム等)を添加し、懸濁物質をろ過・脱水しやすい性状に変化させることで排水処理のランニングコストを低減することができる。図9に、凝集剤を利用する排水処理システム1を示している。この排水処理システム1では、排水は、排水貯槽100に収集され、その後、調整槽101に送水される。調整槽101では、排水貯槽100から送水された排水に酸やアルカリ等を添加して排水を凝集沈殿に適したpHに調整し、pHが調整された排水を凝集槽102に送水する。凝集槽102では、調整槽101から送水された排水に凝集剤を添加して懸濁物質のフロックが形成されると、フロックを含む排水を沈殿槽103に送水する。ここで添加する凝集剤は、無機系の薬剤や有機高分子系の薬剤等であり、排水に含まれる懸濁物質によって定められる。
【0009】
沈殿槽103では、フロックを含む排水を沈降分離させる。その後、沈殿槽103は、沈降したフロックを濃縮槽104に送水し、上澄液を上澄貯槽105に送水する。濃縮槽104は、時間の経過でできる液上層部の上澄液を上澄貯槽105に送水する。上澄貯槽105に送水された上澄液には、微量のフロックを含んでいるため、ろ過装置106は、上澄液をろ過してフロックが除かれた上澄液を中和槽107に送水する。また、中和槽107は、送水された上澄液の水質を調整し、処理水として排出する。濃縮槽104で上澄液が除かれたフロックの濃縮液は、脱水機108に送られ、脱水されて脱水汚泥として処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2106671号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「化学工学便覧 改訂五版 化学工学協会編」、丸善株式会社、昭和63年3月18日、713〜715頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述したプレコート法やボディーフィード法では、排水に多量のろ過助剤を添加する必要があり、添加したろ過助剤は、懸濁物質とともに廃棄物として回収される。したがって、排水処理に多量の添加剤(ろ過助剤)が必要になるとともに、多量の廃棄物が発生する問題がある。
【0013】
また、図9に示したような凝集剤を利用する排水処理システムでは、多量の凝集剤を添加する。排水に添加する凝集剤も、懸濁物質とともに廃棄物として回収される。したがって、排水処理に多量の添加剤(凝集剤)が必要になるとともに、多量の廃棄物が発生する問題がある。また、図9を用いて上述した排水処理システム1では、凝集槽102、沈殿槽103及び脱水機108が比較的大きくなるため、広い設置場所を確保する必要がある。
【0014】
上記課題に鑑み、本発明は、添加剤の使用を極小に抑えて廃棄物の量も低減し、排水中の難ろ過性の懸濁物質を効率よく捕集するろ過装置及び排水処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るろ過装置は、難ろ過性の懸濁物質を含有する被処理水を流入する流入口と、処理水を排出する排出口とを有するろ過室と、ろ過室内に設けられ、被処理水を通過させる開孔を有し、プレコート剤としてろ過室に添加された難ろ過性の懸濁物質を捕集する磁性体のろ過助剤を、磁力によって引き寄せる板状の電磁石と、ろ過室内で電磁石の下流に設けられ、開孔を通過した被処理水をろ過して処理水とするフィルタと、制御手段によって電磁石が通電状態の所定のタイミングでろ過助剤上に堆積する難ろ過性の懸濁物質と流入された被処理水をろ過室内で攪拌する攪拌手段とを有し、ろ過室は、電磁石が通電状態の所定のタイミングで被処理水及び難ろ過性の懸濁物質を含む濃縮懸濁液を排出する第2排出口とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、添加剤の使用量を極小に抑えて廃棄物の量も低減し、排水中の難ろ過性の懸濁物質を効率よく捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るろ過装置について説明する概略図である。
【図2】図1のろ過装置のプレコート層と電磁石について説明する断面図である。
【図3】図1のろ過装置内で堆積する懸濁固形分について説明する図である。
【図4】図1のろ過装置内で堆積した懸濁固形分の排出について説明する図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係るろ過装置について説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る排水処理システムについて説明する図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例に係る排水処理システムについて説明する図である。
【図8】従来のろ過装置について説明する図である。
【図9】従来の排水処理システムについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るろ過装置及び排水処理システムは、微小粒径で粘着性のある懸濁物質や粘土物質等の難ろ過性の懸濁物質を含む排水を処理するためのものである。以下に、図面を用いて本発明の実施形態に係るろ過装置及び排水処理システムについて説明する。
【0019】
〈ろ過装置〉
図1に示すように、本発明の実施形態に係るろ過装置17aは、流入管171a及び流入口171bを介して難ろ過性の懸濁物質を含む排水(被処理水)が流入するろ過室171内に、ろ過室171の底面に配置される支持板172と、支持板172に支持されるろ布173と、ろ布173の上流に配置される平板形状の電磁石174と、電磁石174の上流面に形成されるプレコート層175と、ろ過室171内の液体を攪拌する攪拌機176とを備えている。また、ろ過室171は、ろ過室171でろ過して得られた処理水を排出管171dから排出する排出口171cと、プレコート層175上に堆積している難ろ過性の懸濁物質を第2排出管171fから排出する第2排出口171eを有している。
【0020】
このろ過装置17aは、図2(a)に示すようにろ過室内171に支持板172によってろ布173が支持されている点では図8を用いて上述した従来のろ過装置17と同様の形態である。また、ろ過装置17aでは、従来のろ過装置17と異なり、ろ布173の上流側に平板形状の電磁石174が配置されている。電磁石174は、平板形状であって、例えば図2(b)に示すようなろ過室171に流入する液体が通過することのできる多数の孔174aを有している。なお、図2(b)に示す形態の他、液体を通過させることができればよく、例えば、金網形状の電磁石であってもよい。
【0021】
流入口171bを介してろ過室171内にろ過助剤が供給されると、供給されるろ過助剤によって、図1に示したように電磁石の上流側にプレコート層175が形成される。このプレコート層175を形成するろ過助剤によって被処理水から難ろ過性の懸濁物質が捕集される。このろ過装置17aで利用するろ過助剤は、従来からろ過助剤として多用されているケイソウ土やパーライト等ではなく、磁石に引き寄せられる性質を有する鉄粉やマグネタイト等の粒子の磁性体の粒子であって、回収可能な物質を使用する。
【0022】
ろ過装置17aでは、被処理水のろ過処理を続けると、図3に示すように、プレコート層175の上流側に難ろ過性の懸濁物質が懸濁固形分(SS)として堆積する。ろ過装置17aは、所定のタイミングで、プレコート層175に堆積した懸濁固形分(SS)をろ過室171から除去する。この懸濁固形分(SS)をろ過室171内から除去する所定のタイミングとしては、定期的なタイミング(所定時間毎)や所定量の被処理水を処理した毎のタイミング等が考えられる。
【0023】
具体的には、懸濁固形分(SS)をろ過室から除去する際には、まず、図4(a)に示すように、ろ過装置17aは、ろ過室171に被処理水が存在し、電磁石174を通電した状態で、攪拌機176によってろ過室171内の被処理水を攪拌する。このとき、プレコート層175を形成するろ過助剤は磁力によって電磁石174に引寄せられた状態であるため被処理水に混合されないが、プレコート層175上に堆積していた懸濁固形分(SS)は磁力の影響は受けていないために攪拌される被処理水中に混合されて、被処理水は濃縮懸濁液となる。
【0024】
その後、ろ過装置17aは、プレコート層175上に堆積していた懸濁固形分(SS)が被処理水に混合された濃縮懸濁液を、電磁石174を通電した状態で、図4(b)に示すように、第2排出口171eから排出する。このように、ろ過装置17aでは磁力によって電磁石174に引寄せられているろ過助剤を内部に保持したまま懸濁固形分(SS)を含む濃縮懸濁液のみろ過室171から排出することができるため、ろ過助剤を再利用することができる。
【0025】
なお、電磁石174は、懸濁固形分(SS)をろ過室から除去する際の被処理水の攪拌と濃縮懸濁液の排出する所定のタイミングにのみ通電して磁力を発生すればよい。
【0026】
上述したように、本発明の実施形態に係るろ過装置17aは、ろ過室171に堆積した懸濁固形分(SS)を排出する所定のタイミングで、電磁石174にプレコート層175を形成するろ過助剤を引寄せて固定させることができる。したがって、ろ過装置17aでは、懸濁固形分(SS)の排出の際にろ過助剤を懸濁固形分(SS)とともにろ過室171から排出することなく、繰り返し使用することができるため、排水処理で使用する添加剤(ろ過助剤)の量を低減することができる。また、ろ過装置171では、ろ過助剤を繰り返し利用することで、排水処理によって発生する廃棄物の量を低減することができる。
【0027】
《変形例》
図5に示すように、本発明の実施形態の変形例に係るろ過装置17bは、図1を用いて上述したろ過装置17bと比較すると、ろ過室171内に、支持板172と、支持板172に支持されるろ布173と、ろ布173の上流に配置される平板形状の電磁石174と、電磁石174の上流面に形成されるプレコート層175を有している点では同一であるが、攪拌機176に代えて、ろ過室171内の液体を循環させる循環ライン177と、循環ライン177の流を発生させるポンプ178とを有している点で異なる。なお、ろ過装置17bのろ過室171にも流入管171aと接続される流入口171b、排出管171dと接続される排出口171c及び第2排出管171fと接続される第2排出口171eが形成されているが、図5では図示を省略している。
【0028】
このろ過装置17bでも、流入口171bを介して流入する過助剤によってプレコート層175が形成され、このろ過助剤によって被処理水中の難ろ過性の懸濁物質が懸濁固形分(SS)としてプレコート層175の上流面に堆積する。
【0029】
図1〜図4を用いて上述したろ過装置17aでは、プレコート層175に堆積した懸濁固形分(SS)を被処理水に混合させるため、攪拌機176を用いてろ過室171内の液体に水流を発生して液体を攪拌していた。これに対し、図5に示すろ過装置17bでは、ろ過室171内の液体の攪拌する際、循環ライン177を介して液体を循環させることで、ろ過室171内に水流を発生して液体を攪拌する。
【0030】
〈排水処理システム〉
図6に示すように、本発明の実施形態に係る排水処理システム1aは、流入ライン10を介して送水される難ろ過性の懸濁物質を含む排水を貯水する排水処理槽11と、難ろ過性の懸濁物質のろ過に利用するろ過助剤を貯留するろ過助剤槽14と、排水をろ過して処理水を得るろ過装置17aとを備えている。また、排水処理システム1aは、ろ過装置17aで排水から分離された難ろ過性の懸濁物質を含む濃縮懸濁液を回収する濃縮懸濁液受槽23とを備えている。この図6では、排水処理システム1aが図1〜図4を用いて上述したろ過装置17aを備えるものとして示しているが、ろ過装置17aに代えて図5を用いて上述したろ過装置17bを備えていてもよい。
【0031】
排水処理槽11には、流入ライン10を介して、排水処理システム1aの被処理水である難ろ過性の懸濁物質を含む排水が送水される。この排水処理槽11には、内部の排水を攪拌して排水中の懸濁物質を均一にする攪拌機12が設けられている。また、ろ過助剤槽14には、難ろ過性の懸濁物質のろ過に利用するろ過助剤を含有する液体が貯留されている。このろ過助剤槽14には、内部の液体を攪拌して液体中のろ過助剤を均一にする攪拌機15が設けられている。
【0032】
排水処理システム1aでは、排水をろ過する前に、ポンプ16によってろ過助剤槽14からろ過装置17aにろ過助剤を供給し、ろ過室171内にプレコート層175を形成する。(例えば、供給するろ過助剤の濃度を1〜20g/lとするとき、ろ過面積当たりのプレコート量は300〜3600g/m2となる。)この排水処理システム1aで利用するろ過助剤は、上述したように、磁石に引き寄せられる性質を有する鉄粉やマグネタイト等の粒子の磁性体の粒子であって、回収可能な物質である。
【0033】
排水処理システム1aでは、ろ過装置17aにプレコート層175が形成されると、ポンプ13によって、排水処理槽11に貯留される被処理水をろ過装置17aに送水する。ろ過装置17aは、ろ過助剤で形成されるプレコート層175で難ろ過性の懸濁物質が除かれた被処理水が電磁石174の孔174aを通過し、ろ過フィルタであるろ布173によって懸濁物質と処理水とに分離される。懸濁物質が除かれた処理水は、排出口171cから排出管171dに排出される。
【0034】
ろ過装置17aがろ過処理を継続すると、プレコート層175に懸濁固形分(SS)が堆積する。ろ過装置17aに懸濁固形分(SS)が堆積した排水処理システム1aでは、図4を用いて上述したように、所定のタイミングで電磁石174を通電して、ろ過室171内の液体を攪拌する。ろ過助剤に捕集されていた懸濁固形分(SS)は液体中に均一となり、ろ過室171内の液体は濃縮懸濁液となる。その後、排水処理システム1aは、電磁石174を通電した状態でろ過室171内の濃縮懸濁液を第2排出口171eを介して第2排出管171fに排出する。このように、ろ過室171内の液体の攪拌するタイミングとろ過室171から濃縮懸濁液を排出するタイミングで電磁石174が磁力によってろ過助剤を引寄せることで、ろ過室171から懸濁固形分(SS)のみを排出し、ろ過助剤を再利用することができる。
【0035】
上述したように、本発明の実施形態に係る排水処理システム1aは、ろ過室171に堆積した懸濁固形分(SS)を排出する所定のタイミングで、電磁石174にプレコート層175を形成するろ過助剤を引寄せて固定させることができる。したがって、ろ過装置17aでは、懸濁固形分(SS)の排出の際にろ過助剤を懸濁固形分(SS)とともにろ過室171から排出することなく、繰り返し使用することができるため、排水処理で使用する添加剤(ろ過助剤)の使用量を低減することができる。また、ろ過装置171では、ろ過助剤を繰り返し利用することで、排水処理によって発生する廃棄物の量を低減することができる。
【0036】
《変形例》
図7に示すように、本発明の実施形態の変形例に係る排水処理システム1bは、図6を用いて上述した排水処理システム1aと比較して、ろ過装置17aから回収するろ過助剤を含有する液体を貯留するろ過助剤受槽20と、ろ過助剤を含有する液体からろ過助剤を分離するろ過助剤分離機23を備えている点で異なる。
【0037】
ろ過室171からは、プレコート層175上に堆積する懸濁固形分(SS)を定期的等のタイミングで排出するが、ろ過助剤から懸濁固形分(SS)を充分に除去できない場合がある。プレコート層175から除去することの出来ない懸濁固形分(SS)が増加すると、ろ過助剤の効果が低下する。そのため、ろ過助剤の効果が低下した所定のタイミングで、プレコート層175を形成するろ過助剤をろ過室171から排出し、ろ過助剤分離機23によってろ過助剤と懸濁固形分(SS)等を含む排水からろ過助剤を分離する。
【0038】
具体的には、排水処理システム1bでは、ろ過装置17bからろ過助剤を排出するタイミングでは、送水されたろ過室171内の排水を電磁石174を通電せずに攪拌する。このように電磁石174を通電せずに排水を攪拌すると、排水にろ過助剤が混合される。排水処理システム1bは、ろ過助剤が混合された排水をろ過助剤受槽20に送水する。ろ過助剤受槽20には、内部の排水を攪拌して排水中のろ過助剤を均一にする攪拌機21が設けられている。
【0039】
排水処理システム1bでは、ろ過助剤受槽20からポンプ22を介してろ過助剤分離機23にろ過助剤を含む排水が送水され、排水からろ過助剤が分離される。ここで、ろ過助剤分離機23としては、例えば、電磁フィルタを利用することができる。また、ろ過助剤と懸濁固形分(SS)の密度差が大きい場合、液体サイクロンを利用することもできる。
【0040】
ろ過助剤分離機23で分離されたろ過助剤は、ろ過助剤回収槽24に回収された後、ろ過助剤循環ライン26を介してろ過助剤槽14に循環されて、再びろ過室171に供給されるとプレコート層175を形成するろ過助剤として利用される。また、ろ過助剤分離機23でろ過助剤が分離された液体には、懸濁物質を含んでいるため、濃縮懸濁液含有水循環ライン27を介して排水処理槽11に循環されて処理されて再びろ過装置17aで処理される。
【0041】
なお、この図7に示す排水処理システム1bでも、排水処理システム1a同様に図1〜図4を用いて上述したろ過装置17aを備えるものとして示しているが、ろ過装置17aに代えて図5を用いて上述したろ過装置17bを備えていてもよい。
【0042】
上述したように、変形例に係る排水処理システム1bでは、ろ過助剤分離機23によってろ過装置17aからろ過助剤が排出されたろ過助剤含有水を分離し、ろ過助剤を再利用することができる。したがって、排水処理システム1bでは、難ろ過性の懸濁物質のろ過に利用されるろ過助剤に懸濁物質が付着するなどしてろ過助剤の効果が低下した場合でも、ろ過助剤と懸濁物質を分離して再利用することができるため、添加剤(ろ過助剤)の使用量を減少するとともに、廃棄物の量も低減することができる。
【符号の説明】
【0043】
17a,17b…ろ過装置
171…ろ過室
171a…流入管
171b…流入口
171c…排出口
171d…排出管
171e…第2排出口
171f…第2排出管
172…支持板
173…ろ布(フィルタ)
174…電磁石
174a…孔
175…プレコート層
176…攪拌機(攪拌手段)
177…循環ライン(攪拌手段)
178…ポンプ(攪拌手段)
1a,1b…排水処理システム
10…流入ライン
11…排水処理槽
12…攪拌機
13…ポンプ
14…過助剤槽
15…攪拌機
16…ポンプ
20…ろ過助剤受槽
23…濃縮懸濁液受槽
23…過助剤分離機
24…過助剤回収槽
26…過助剤循環ライン
27…濃縮懸濁液含有水循環ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難ろ過性の懸濁物質を含有する被処理水を流入する流入口と、処理水を排出する排出口とを有するろ過室と、
前記ろ過室内に設けられ、被処理水を通過させる開孔を有し、プレコート剤として前記ろ過室に添加された難ろ過性の懸濁物質を捕集する磁性体のろ過助剤を、磁力によって引き寄せる板状の電磁石と、
前記ろ過室内で前記電磁石の下流に設けられ、前記開孔を通過した被処理水をろ過して処理水とするフィルタと、
制御手段によって前記電磁石が通電状態の所定のタイミングでろ過助剤上に堆積する難ろ過性の懸濁物質と流入された被処理水を前記ろ過室内で攪拌する攪拌手段とを有し、
前記ろ過室は、前記電磁石が通電状態の所定のタイミングで被処理水及び難ろ過性の懸濁物質を含む濃縮懸濁液を排出する第2排出口とを備えることを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記攪拌手段は、前記ろ過室中の液体を攪拌する攪拌機又は、前記ろ過室中のろ過助剤を含む液体を循環させて液体を攪拌する循環ライン及びポンプであることを特徴とする請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記攪拌装置は、前記電磁石が通電状態でない所定のタイミングで流入された被処理水と前記電磁石上のろ過助剤を攪拌し、
前記第2排出口は、ろ過助剤が攪拌された被処理水を前記ろ過室から排出することを特徴とする請求項1又は2に記載のろ過装置。
【請求項4】
難ろ過性の懸濁物質を含有する排水を被処理水として貯留する排水処理槽と、
前記排水処理槽で貯留される被処理水を流入する流入口と、処理水を排出する排出口とを有するろ過室内に設けられ、被処理水を通過させる開孔を有し、プレコート剤として前記ろ過室に添加された難ろ過性の懸濁物質を捕集する磁性体のろ過助剤を、磁力によって引き寄せる板状の電磁石と、前記ろ過室内で前記電磁石の下流に設けられ、前記開孔を通過した被処理水をろ過して処理水とするフィルタと、制御手段によって前記電磁石が通電状態の所定のタイミングでろ過助剤上に堆積する難ろ過性の懸濁物質と流入された被処理水を前記ろ過室内で攪拌する攪拌手段とを有し、前記ろ過室は、前記電磁石が通電状態の所定のタイミングで被処理水及び難ろ過性の懸濁物質を含む濃縮懸濁液を排出する第2排出口とを備えるろ過装置と、
前記ろ過室内に添加する磁性体のろ過助剤を貯留するろ過助剤槽と、
前記第2排出口から排出される濃縮懸濁液を貯留する濃縮懸濁液受槽と、
を備えることを特徴とする排水処理システム。
【請求項5】
前記攪拌装置は、前記電磁石が通電状態でない所定のタイミングで流入された被処理水と前記電磁石上のろ過助剤を攪拌し、
前記第2排出口は、ろ過助剤が攪拌された被処理水を前記ろ過室から排出することを特徴とする請求項4に記載の排水処理システム。
【請求項6】
前記第2排出口から排出されたろ過助剤を含む被処理水からろ過助剤を分離するろ過助剤分離機と、
前記ろ過所剤分離機で分離されたろ過助剤を前記ろ過助剤槽に循環させる循環ラインをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の排水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−136295(P2011−136295A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298407(P2009−298407)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】