ろ過装置
【課題】掻き取り効果を向上させると共に、この効果を長期間安定的に維持可能なろ過装置を提供すること
【解決手段】ろ過装置は、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材1と、外側ろ材2と、前記内側ろ材1と前記外側ろ材2との間のろ過空間4に設けられたスパイラル状の仕切り3と、前記内側ろ材及び前記外側ろ材1,2に付着したケーキを掻き取るスクレーパーを備える。このスクレーパーは、ろ過空間4を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材1,2のそれぞれのろ過面に対して接触するように構成されている。前記スパイラル状の仕切り3は回転させないで、前記内側ろ材1及び/又は前記外側ろ材2のみを軸心周りに回転させる。この操作過程で、前記ろ過空間4内に、その一端側から被処理液を送入し、前記内側ろ材1を通してろ過し、前記外側ろ材2を通してろ過し、各ろ液は外部に排出し、前記ろ過空間4内の他端側からケーキを排出する。
【解決手段】ろ過装置は、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材1と、外側ろ材2と、前記内側ろ材1と前記外側ろ材2との間のろ過空間4に設けられたスパイラル状の仕切り3と、前記内側ろ材及び前記外側ろ材1,2に付着したケーキを掻き取るスクレーパーを備える。このスクレーパーは、ろ過空間4を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材1,2のそれぞれのろ過面に対して接触するように構成されている。前記スパイラル状の仕切り3は回転させないで、前記内側ろ材1及び/又は前記外側ろ材2のみを軸心周りに回転させる。この操作過程で、前記ろ過空間4内に、その一端側から被処理液を送入し、前記内側ろ材1を通してろ過し、前記外側ろ材2を通してろ過し、各ろ液は外部に排出し、前記ろ過空間4内の他端側からケーキを排出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の網、多孔板等のろ材は、布(繊維)製のものに比べて、運転性、保守性、耐久性等の面で優れており、これを利用したものとしてスクリュープレスや回転加圧式脱水機等の加圧式ろ過装置がある。この装置は、歴史が古く、非常にシンプルな構造のものであるため、低動力・低騒音・低コストなどを特徴とし、固形分濃度の低い難脱水性の固液混合物に適用した場合にも優れた脱水性能が得られることから、下水汚泥脱水分野でも多く用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかしながら、円筒状の外側ろ材とその内部に挿入されたスクリューからなるスクリュープレスでは、被処理液が入口側から出口側に向かって低速で移送されて行くと同時に、スクリューの締付力によって発生する圧搾圧力で、連続的に脱水されるが、ろ液は外側ろ材のみより搾り出されるものであるため、外側ろ材の長さの短縮化を図るのが困難であり、設備を小型化し難かった。
一方、回転加圧式脱水機においては、脱水ろ過の処理量を向上させるにはディスクの径を大きくする、又は脱水機を複数配置する必要性があり、設備の大型化やコスト増の問題を抱えていた。
そこで、本発明者らは、このような問題点を鑑み、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材及び外側ろ材と、これら内側ろ材と外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、を備え、ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、内側ろ材及び外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、内側ろ材及び/又は外側ろ材は軸心周りに回転し、スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされたろ過装置を提案した(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−212697号公報
【特許文献2】特開2001−113109号公報
【特許文献3】特願2005−176901号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の発明では、装置自体を小型化させ、脱水性能を向上させることができた。しかしながら、より一層、ろ材の表面に固着したケーキを効率よく掻き取り、かつ長期間の安定運転を可能とすることが望まれている。
そこで、本発明の主たる課題は、掻き取り効果を向上させると共に、この効果を長期間安定的に維持可能なろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材及び外側ろ材と、前記内側ろ材と前記外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、前記内側ろ材及び前記外側ろ材に付着したケーキをそれぞれ掻き取るスクレーパーと、を備え、前記ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、前記内側ろ材及び/又は前記外側ろ材は軸心周りに回転し、前記スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされ、前記スクレーパーは、ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触するように構成された、ことを特徴とするろ過装置である。
【0005】
(作用効果)
内側ろ材及び外側ろ材の二面によってろ過濃縮がなされることによって、従来の外側ろ材のみでろ過を行なっていたスクリュープレスに比べて設備の小型化を図ることができる。また、内側ろ材及び/又は外側ろ材は軸心周りに回転し、スパイラル状の仕切りは回転しない構成とすることにより、ろ過空間に送入された被処理液は、仕切りに沿って螺旋状に装置内を移動しながら、まず内外側ろ材の二面によるろ過濃縮がなされ、次に圧搾脱水がなされるが、内外側ろ材のみならずリボンスクリューも全てを回転自在とした構成のスクリュープレスに比べて、本発明に係るろ過装置は、構造を簡素化でき、製造コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
また、スクレーパーを、ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触するように構成することにより、ろ過面に対して安定してスクレーパーが接触することができ、安定的な掻き取り処理を行うことができる。
ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触するスクレーパーとしては、例えば、スクレーパーが圧力を受けて回動するものや、可撓性のある材料による撓みを利用するもの等が考えられる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記スクレーパーは、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に接触するように構成された、請求項1記載のろ過装置である。
【0007】
(作用効果)
スクレーパーを、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に接触するように構成することにより、時間が経過しても安定した掻き取りが可能になり、長期の安定運転を行なうことができる。さらに、長期の安定的な運転が可能となるため、スクレーパーのメンテナンスのサイクルを延すことができる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記スクレーパーは、先端部分から後端部分にかけて、前記仕切りの幅方向の中央部分に向かうように、前記内側ろ材及び外側ろ材の接線方向に対して振り角をつけてそれぞれ配置された、請求項1又は2記載のろ過装置である。
【0009】
(作用効果)
スクレーパーを、先端部分から後端部分にかけて、前記仕切りの幅方向の中央部分に向かうように、内側ろ材及び外側ろ材の接線方向に対して振り角をつけてそれぞれ配置することにより、ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に対してスクレーパーがより接触しやすくなる。
また、ケーキを攪拌させつつ効率よく搬送することができると共に、被処理液の濃度・圧力分布の均一化を一層促進させることができる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
請求項4記載の発明は、前記スクレーパーは、スクレ−パー本体と、このスクレーパー本体の先端部分に対し、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触及び離間する態様をそれぞれ取り得る状態で、スクレーパー本体を保持する保持部材と、を備えた、請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過装置である。
【0011】
<請求項5記載の発明>
請求項5記載の発明は、前記スクレーパーは、スクレーパー本体と、このスクレーパー本体を内側ろ材及び外側ろ材の軸方向に対して回動自在に保持する保持部材と、を備えた、請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過装置である。
【0012】
(作用効果)
スクレーパーを、スクレ−パー本体と、このスクレーパー本体の先端部分に対し、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触及び離間する態様をそれぞれ取り得る状態で、スクレーパー本体を保持する保持部材と、を備えた構成とすることにより、ろ過面に対して安定してスクレーパーが接触することができ、安定的な掻き取り処理を行うことができる。
また、スクレーパーを、スクレーパー本体と、このスクレーパー本体を内側ろ材及び外側ろ材の軸方向に対して回動自在に保持する保持部材と、を備えた構成とすることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掻き取り効果を向上させると共に、この効果を長期間安定的に維持できる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図16に基づき説明する。なお、ろ過装置の概要については図1乃至図8で説明し、本発明に係るスクレーパーについては図9乃至図16で説明する。
<本発明に係るろ過装置の構成>
本発明に係るろ過装置におけるケーシング7の内部には、図1及び図2に示されるように、モータ等の第1の回転駆動手段(図示せず)によって駆動力が伝達される内筒回転軸5に上板1Aが連結された回転自在な円筒状の内側ろ材1と、この内側ろ材1と同心円状に配設された回転自在な円筒状の外側ろ材2と、ケーシング7の上板7A及び底板7Bに両端部を固定され、内側ろ材1と外側ろ材2との間に形成されるろ過空間4に配置されたスパイラル状(リボンスクリュー状)の仕切り3と、が備えられている。なお、ケーシング7は、本実施の形態では円筒型であるが、これに限られることなく、多面体等の形状でもよい。また、内側ろ材1のケーシング7への配設は、上記に限られず、公知の様々な方法で回転可能に取付けることができる。
【0015】
図1及び図2に示すように、ケーシング7の底板7Bにおける、ろ過空間4を投影した部分には被処理液送入口10,11が形成されており、これら被処理液送入口10,11から被処理液が送入される。なお、被処理液は、ポンプ(図示せず)により圧送され、この圧力と共に、内側ろ材1と外側ろ材2の回転による摩擦で、ケーシング7の底部から上部まで上昇するものである。なお、装置自体の軸心を横向きにし装置全体を横向きに配置する場合には、被処理液をポンプ圧送することなく、内側ろ材1と外側ろ材2の回転による摩擦力のみで、装置内を移動させてもよい。また被処理液送入口は、本実施の形態では2箇所であるが、これに限定されるものではない。
【0016】
内側ろ材1の側面(外周面)には、ろ材として多孔板が張設されている。
内側ろ材1と外側ろ材2との間に形成されたろ過空間4に送入された被処理液のうち、固液分離がなされたろ液の一部が内側ろ材1内におけるケーシング7の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口12から排出されるようになっている。
【0017】
外側ろ材2は、周状の上端部分においてケーシング7に配設された旋回輪(ベアリング)(図示せず)等によりケーシング7に対して回動可能に取付けられており、また、上端部分は、図示はしないが、モータ等の第2の回転駆動手段(図示せず)によって駆動力が伝達される外側回転軸(図示せず)にピニオンギア(図示せず)等を介して連結され、外側ろ材2自体が回転するようになっている。なお、内側ろ材1についても、図示はしないが、外枠2と同様に、ケーシング7に配設された旋回輪(ベアリング)(図示せず)等によりケーシング7に対して回動可能に取付け、第1の回転駆動手段によって駆動力を伝達する構成とすることもできる。
【0018】
また、外側ろ材2の内周面には、内側ろ材1と同様に、ろ材として多孔板が張設されている。ろ過空間4に送入された被処理液のうち、固液分離がなされたろ液の一部がケーシング7と外側ろ材2との間の部分の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口13から排出されるようになっている。
【0019】
ここで、内側ろ材1と外側ろ材2とは、同角速度(°/sec)で回転させた場合においても、それぞれの半径差分の周速度差(mm/sec)が生じるため、ケーキにせん断力が生じて脱水効率が向上される。例えば、繊維分の多い生汚泥や混合生汚泥が含まれる被処理液に対しては、このせん断力がより効果的であるため、内側ろ材1と外側ろ材2とに若干角速度差を付けて、回転させることで更に脱水効率を向上させる事が可能である。また、内側ろ材1と外側ろ材2との相対速度が大きい場合、速く回転するろ過面(例えば、内側ろ材1のろ過面)近傍のケーキは、もう一方のろ過面(例えば、外側ろ材2のろ過面)側へ移動する効果が現れ、ケーキ内での混合作用が生じることで、ろ過装置内での含水率分布を均一化することもできる。
【0020】
このように、内外側ろ材1,2のろ過面の角速度差によりケーキにせん断力が加えられて脱水効率が改善されるが、この効果は対象ケーキの性状に依存するため、最適状態で運転する場合はケーキ性状に合わせて内外の角速度差を設定することが望ましい。このため、簡易的に角速度差を調整できるように、本実施の形態では、内外側ろ材1,2にそれぞれ個別のモータ等の回転駆動手段を設けている。
一方、ケーキ性状によっては、せん断力を加えた場合、ケーキが流動化してしまい、逆に脱水性を損なう場合もあるので、このような場合には同角速度で回転させることが好ましい。また、せん断力による脱水効果があり、かつケーキ性状が年間を通してほとんど変化しないケーキについては、同角速度で回転させてもよく、これらのような対象ケーキに対しては、内外側ろ材1,2を一つのモータにより同角速度で回転させるようにしてもよい。
なお、内側ろ材1と外側ろ材2は、必ずしも両者を回転させる必要はなく、一方のみを回転させるようにしてもよい。
【0021】
内外側ろ材1,2に用いられるろ材としては、前述のように、多孔板が使用されるが、この多孔板としては、例えば、スリットグリル、ダイヤスクリーン、ラスターメタル、丸穴、スリット、ヘリンボン、角孔等の固形物の脱水用、分離用、濃縮用及び分級用などに用いられる打ち抜き板も採用することができる。好適には、孔径をより小さくするためにレーザー加工により穴あけした板を採用することが望ましい。なお、多孔板に換えてウェッジワイヤーを張設してしてもよく、この場合、ウェッジワイヤーのスリットは回転軸心に沿って配列すればよい。また、固液分離が主となるろ過空間4の下部にろ過面の開孔率が高い多孔板、圧搾脱水が主となるろ過空間4の上部にケーキとの接触面積の高い(開孔率の低い)多孔板を配置してもよい。なお、多孔板やウェッジワイヤーに換えて、金網(図示せず)、ろ布(図示せず)等を用いることができる。
【0022】
仕切り3は、図1及び図4に示されるように、スパイラル状(リボンスクリュー状)であり、内側ろ材1と外側ろ材2との間に形成された環状のろ過空間4に配設されている。この仕切り3は、ケーシング7の上板7Aと底板7Bとに固定されていることによって、仕切り3は軸芯周りに回転しない構成となっている。このことによって、内外側ろ材のみならずリボンスクリューも全てを回転自在とした構成のスクリュープレスに比べて、本発明に係るろ過装置は、構造を簡素化でき、製造コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0023】
仕切り3の内周縁と外周縁は、それぞれ内側ろ材1及び外側ろ材2のろ過面に近接する構成となっている。これにより被処理液送入口10,11から送入された被処理液を仕切り3に沿って螺旋状に上昇させることができる。なお、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近が、固液分離作用によるろ過濃縮が主となってくるため、仕切り3の内周縁と外周縁は少なくとも被処理液の送入口10,11側付近が内外側ろ材1,2とそれぞれ近接する構成であればよい。
【0024】
仕切り3は、スパイラルピッチをろ過空間4内すべてにおいて均一にしてもよいが、排出されるケーキの含水率のムラ(分布)をなくし均一にするため、図1及び図4で示すように、スパイラル状の仕切り3をケーシング7の底板7B側から上板7A側に行くにしたがって、そのピッチが短くなるように構成することが好ましく、具体的には、ろ過空間4の上部部分で、スパイラルピッチを短くしケーキの排出経路を狭くし、圧搾効果を高めることが好ましい。他方、後述する図5乃至図8に示すように、ろ過空間4の上部において脱水効率を向上させるために内外側ろ材1,2の半径差を狭めた場合には、図示しないが、スパイラル状の仕切り3をケーシング7の底板7B側から上板7A側に行くにしたがって、そのピッチが長くなるように構成してもよい。
【0025】
また、図示はしないが、スパイラル状の仕切り3の一部にケーキが通過可能な孔を穿設し、ケーキの攪拌混合を促進することもできる。さらに、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近において、仕切り3の下部をケーシング7の底板7Bから離間して設け(スパイラル状の仕切り3の下部をカットし)てもよく、この場合には、仕切り3とケーシング7の底板7Bとの固定は、任意の支持部材(例えば、柱状部材等)を介して固定すればよい。
【0026】
ところで、ろ過装置は、仕切り3は回転しないが、内側ろ材1及び外側ろ材2は軸心周りに回転する構成であり、内側ろ材1と外側ろ材2の表面にケーキが経時的に付着していく。これら内側ろ材1と外側ろ材2の表面に付着したケーキを掻き取る方法は、いくつかある。
第1の方法は、仕切り3の内周縁と外周縁とを、それぞれ内側ろ材1及び外側ろ材2のろ過面に非接触ではあるが、極力近接させるものである。この構成によって、内外側ろ材1,2のろ過面に固着したケーキを掻き取り易くすることができる。
しかしながら、内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面とは非接触であるため、掻き取りが不十分であり、ろ過濃縮の効率が経時的に低下して行く虞がある。
【0027】
第2の方法は、図9に示すように、仕切り3の内周縁と外周縁にゴムや樹脂などにより形成されるスクレーパー56を取付け、このスクレーパー56によりケーキを掻き取るものである。なお、図中の符号19は、仕切り3をケーシング7の底板7B及び/又は上板7Aに固定して支持する支持部材である。
スクレーパー56は、図10に示すように、樹脂やゴム等からなるスクレ−パー本体56Aと、このスクレーパー本体56Aをボルト56B等により固定して取付ける取付部材56Cと、を備えている。スクレーパー56は、図9に示すように、仕切り3の幅方向の両端部にそれぞれ所定の間隔をおいて設けられており、スクレーパー本体56Aが内側ろ材1及び外側ろ材2のろ過面に接触するように構成されている。スクレーパー56は、ろ過面に接触する部分(先端部分)から後端部分にかけて、剥離したケーキを搬送経路(仕切り3)の中央部分に導くように接線方向から若干の振り角をつけて配置されている。また、取付部材56Cの先端部分も断面テーパー状に加工されており、ケーキが搬送経路の中央部分により導かれやすくなっている。なお、スクレーパー56の背面の空間(クサビ状の空間)は、被処理液に乱流を与えて混合させる空間として機能している。
この第2の方法では、運転初期は接触が得られるものの、運転時間の経過にしたがい、樹脂やゴム等からなるスクレ−パー本体56Aが磨耗し、ケーキの掻き取り力が低減してしまう。そのため、長期間にわたって安定した運転を行なうことができない虞がある。
【0028】
そこで、本発明者らは、上記第1及び第2の方法の問題点を解消するために、ろ材の表面に固着したケーキを効率よく掻き取り、かつ磨耗に対して対応可能で長期間の安定運転を可能とする第3の方法を見出した。
本発明に係る第3の方法に用いられる第1の形態のスクレーパー16は、図11乃至図14に示すように、樹脂等からなるスクレ−パー本体16Aと、このスクレーパー本体16Aの先端部分に対し、内側ろ材及び外側ろ材1,2のそれぞれのろ過面に接触及び離間する態様をそれぞれ取り得る状態で、スクレーパー本体16Aを保持する保持部材16Bと、を備えており、この保持部材16Bは支持部材19に溶接等により固定されているものである。
【0029】
スクレーパー16は、図11に示すように、仕切り3の幅方向の両端部に所定の間隔をおいて設けられている。スクレーパー本体16Aは、図13(1)及び図14(1)に示すように、ろ過装置が運転していない状況では、内側ろ材及び外側ろ材1,2のろ過面には若干隙間をもって近接しているが、非接触であるように保持部材16Bに取付けられている。これは、内側ろ材1や外側ろ材2の組み立て等の際に、支障が出ないようにするためである。
【0030】
スクレーパー本体16Aは、接線方向から若干の振り角をつけて配置されていると共に、スクレーパー本体16Aの先端部分が断面テーパー状に加工されており、被処理物の圧力を受けやすくなっている。そのため、スクレーパー本体16Aの先端部分は、搬送経路(仕切り3)を流れる被処理液やケーキ等の被処理物の圧力を受けて、図13(2)及び図14(2)に示すように、内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面にそれぞれ押し付けられるようになっており、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に接触するように構成されている。これにより長期の使用により磨耗が進んだ場合も、可動域限界までは接触し、掻き取り効果が維持できるようになっている。
【0031】
保持部材16Bは、図13及び図14に示すように、略J字状になっており、円弧状に形成された凹部16aにスクレーパー本体16Aの後端部分が保持されるようになっている。この凹部形状に対応するようにスクレーパー本体16Aの後端部分も円弧状に形成されているため、スクレーパー本体16Aが左右に回動可能になっている。また、保持部材16Bの平面部16bにはピン16Cが設けられており、スクレーパー本体16Aに穿設された孔をこのピン16Cに引掛けることによって、スクレーパー本体16Aを係止している。
【0032】
上記のとおり、スクレーパー本体16Aの後端部分が円弧状に形成されており、また、スクレーパー本体16Aは、穿設された孔に対してピンにより遊びを持って留められている構成であるため、クレーパー本体16Aに使用される樹脂等の材料の剛性が高い場合でも、スクレーパー本体16Aの先端部分が被処理液やケーキ等の被処理物の圧力を受け、内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面に接触しやすくなっている。なお、スクレーパー本体16Aに使用される樹脂等の材料の剛性が低い場合には、図示はしないが、スクレーパー本体16Aの後端部分を遊びなく拘束して固定してもよい。
【0033】
この第3の方法では、運転中の被処理液やケーキ等の被処理物の圧力によって常に内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面に接触しながら掻き取りを行うことができる。また、磨耗によって、スクレーパー本体16Aの先端部分が磨耗して減った場合でも、この先端部分の後続部分が追随して接触効果が得られるため、時間が経過しても安定した掻き取りが可能になり、長期の安定運転をおこなうことができる。さらに、長期の安定的な運転が可能となるため、スクレーパー本体16Aのメンテナンスのサイクルを延すことができる。
【0034】
なお、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近が、固液分離作用によるろ過濃縮が主となってくるため、少なくとも被処理液の送入口10,11側付近にスクレーパー16が取付けられていればよい。
【0035】
また、第3の方法に用いられる第2の実施形態のスクレーパー26は、図15及び図16に示すように、スクレーパー本体26Aと、このスクレーパー本体26Aを内側ろ材及び外側ろ材1,2の軸方向に対して回動自在に保持する保持部材26Bと、を備えたものである。
【0036】
保持部材26Bは、図16に示すように、仕切り3の上面と下面にそれぞれ取付けられる座板部材26a,26aと、これら座板部材26a,26a間に取付けられる軸部材26bと、この軸部材26bの軸周りに回動自在に取付けられ、スクレーパー本体26Aを保持する保持部材本体26c,26c,…と、を備えている。この構成により、図15に示すように、第1の実施形態と同様に、スクレーパー本体26Aは、搬送経路を流れる被処理液やケーキ等の被処理物の圧力を受けて、内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面にそれぞれ押し付けられるようになっている。また、第1の実施形態と同様に、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に対して接触するように構成されている。これにより長期の使用により磨耗が進んだ場合も、可動域限界までは接触し、掻き取り効果が維持できるようになっている。なお、符号26dは軸部材26bに取付けられたリベットである。スクレーパー本体26Aが被処理物の圧力を受けたとき、このリベット26dにより、スクレーパー本体26Aの先端部分が流路中心方向に回動しないように保持部材本体26cの回動範囲が制限されるようになっている。
【0037】
以下に、内側ろ材1、外側ろ材2及び仕切り3との関係を説明する。後述するケーシング7の底板7Bに形成された被処理液送入口10,11から送入された被処理液は、固形分濃度も低く流動性を持った状態であり、ろ過空間4の下部では、内側ろ材1と外側ろ材2における円筒状のろ材の目開きを介してろ過濃縮が生じる。ろ過空間4の下部では、固液分離作用によるろ過濃縮が重要な機能となるが、ろ過濃縮がある程度進行すると濃縮されたケーキがろ過面に固着し、ろ過効率が低下するが、前述したスクレーパー16又は26により、表面に固着したケーキを掻き取っている。
【0038】
また、濃縮作用により流動性を失ったケーキは、ろ材との摩擦力が生じるため、回転するろ材により、内外側ろ材1,2の円周方向へ搬送が行われる。しかし、ろ過空間4にはスパイラル状(リボンスクリュー状)の仕切り3が配置されており、内外側ろ材1,2に沿って回転するするケーキが、この仕切り3と干渉することで、軸を中心に回転すると共に、軸方向への移動するようになる。この運動によりケーキはろ過濃縮をされながら、最終的に、ろ過空間4の上部に形成されたケーキ排出口14より排出されるものである。なお、後述するが、ケーキ排出口14には、ケーキの排出を抑制する背圧板15が取付けられており、排出量が強制的に抑制されることでケーキはろ過空間4内で圧密され、更に含水率を低下させることができる。
【0039】
実施の形態に係るろ過空間4は、上から下まで同一の横断面積を有する環状のものを示しているが、ろ過空間4の下部は、処理量を確保するために大容量のろ室容積を持たせ、他方、ろ過空間4の上部において脱水効率を向上させるために内外側ろ材1,2の半径差を狭めることが好適である。具体的には、図5に示すように、外側ろ材2の形状は同一のままで、被処理液送入口10,11側からケーキ排出口14側に向って、内側ろ材1の半径方向を連続的に拡大して行く形状(略円錐形状)、又は図6に示すように階段状に拡大して行く形状(多段円筒形状)を提案できる。また、図7に示すように、内側ろ材1の形状は同一のままで、被処理液送入口10,11側からケーキ排出口14側に向って、外側ろ材2の半径方向を連続的に縮小して行く形状、又は図8に示すように階段状に縮小して行く形状も提案することができる。
【0040】
内側洗浄管8は、図1及び図2に示されるように、内側ろ材1の内周面に沿って設けられており、また、複数の洗浄ノズル8A,8A,…が、内側ろ材1の内周面に対向するように内側洗浄管8に取付けられている。同様に、外側洗浄管9は、外側ろ材2の外周面に沿って設けられており、また、複数の洗浄ノズル9A,9A,…が、外側ろ材2の外周面に対向するように外側洗浄管9に取付けられている。そして、内側ろ材1 と外側ろ材2 を軸回りに回転させながら、これら複数の洗浄ノズル8A,8A,…;9A,9A,… から洗浄液を噴射して、目詰まりした内側ろ材1 と外側ろ材2のろ過面が洗浄されるものである。洗浄の際に噴射された洗浄液は洗浄排液として、ろ液と共に内側ろ材1内におけるケーシング7の底板7B、ケーシング7と外側ろ材2との間の部分の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口12,13から排出されるようになっている。
【0041】
ここで、内外側ろ材1,2には、高圧の洗浄液が吹付けられ、洗浄されるが、洗浄液としてアルカリ性の薬品を吹付けて洗浄することが好ましい。また、内外側ろ材1,2のろ過面に超音波発信機を設置し、ろ材自体を振動させ洗浄すると洗浄力が向上するのでより好適である。
【0042】
なお、内外側洗浄管8,9及び洗浄ノズル8A,9Aの設置位置としては上記に限られず、ろ過空間4内に設置し、仕切り3等に洗浄ノズル(図示せず)を取付けて、ろ過空間4内から洗浄液を噴射してもよい。また、内外側洗浄管8,9を複数箇所設置してもよい。
【0043】
図3に示すように、ケーシング7の上板7Aにおける、ろ過空間4を投影した部分には、ケーキ排出口14が形成されており、ここから、脱水されたケーキが排出される。このケーキ排出口14には、背圧板15が取付けられており、この背圧板15によって排出抵抗を生じさせ、排出される汚泥の量を調整することで、さらにケーキを圧搾し、含水率の低下と、体積縮減が図られるものである。
【0044】
<本発明に係るろ過方法>
本発明に係るろ過装置を用いてのろ過方法について、以下に説明する。
まず、被処理液送入口10,11へ被処理液をポンプ圧送し、ろ過空間4内に被処理液を送入する。ろ過空間4内に送入された被処理液は、仕切り3に沿って螺旋状に上昇しながら、内側ろ材1と外側ろ材2とにより二面ろ過が行なわれる。内側ろ材1と外側ろ材2 をそれぞれ、モータ等の第1及び第2の回転駆動手段(図示せず)によって回転させられる。この際、必要に応じて内側ろ材1と外側ろ材2とをそれぞれ速度差をもって同一方向に回転させる。なお、内側ろ材1と外側ろ材2は、必ずしも両者を回転させる必要はなく、一方のみを回転させるようにしてもよい。
被処理液は、ポンプ圧送の圧力と、回転の摩擦力で仕切り3に沿って上昇していくが、内側ろ材1と外側ろ材2との間のろ過空間4の下部で固液分離がなされ、その上部で圧搾脱水がなされ、最終的に、ケーキ排出口14が形成されており、ここから、脱水されたケーキが排出される。
内側ろ材1と外側ろ材2 とを回転させ、仕切り3を回転させないようにすることで、前述したスクレーパー16又は26がそれぞれのろ過面に蓄積されたケーキを掻き取る。
ろ過空間4内の上部には、固液分離がなされた後の含水率の高いケーキが上昇してくるが、このケーキは内側ろ材1と外側ろ材2 との回転摩擦、及び背圧板15による排出抵抗によって圧搾が促進されて、含水率が低減されると共に体積縮減がなされてケーキ排出口14から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るろ過装置の縦断面図である。
【図2】そのI−I断面図(横断面図)である。
【図3】その平面図である。
【図4】仕切りを説明するための概略図である。
【図5】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図6】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図7】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図8】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図9】第2の方法のスクレーパーと内外側ろ材との関係を説明するための横断面図である。
【図10】そのスクレーパーを説明するための横断面図である。
【図11】本発明に係る第3の方法の第1の実施形態のスクレーパーと内外側ろ材との関係を説明するための横断面図である。
【図12】そのII−II断面図(部分断面図)である。
【図13】そのスクレーパーの外側ろ材側の運転前及び運転中の横断面図である。
【図14】そのスクレーパーの内側ろ材側の運転前及び運転中の横断面図である。
【図15】本発明に係る第3の方法の第2の実施形態のスクレーパーと内外側ろ材との関係を説明するための横断面図である。
【図16】そのスクレーパーの正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…内側ろ材、1A…上板、2…外側ろ材、3…仕切り、4…ろ過空間、5…内筒回転軸、7…ケーシング、7A…上板、7B…底板、8…内側洗浄管、9…外側洗浄管、10…被処理液送入口、11…被処理液送入口、12…ろ液排出口、13…ろ液排出口、14…ケーキ排出口、15…背圧板、16…スクレーパー、16A…スクレ−パー本体、16B…保持部材、16C…ピン、16a…凹部、16b…平面部、19…支持部材、26…スクレーパー、26A…スクレーパー本体、26B…保持部材、26a…座板部材、26b…軸部材、26c…保持部材本体、26d…リベット、56…スクレーパー、56A…スクレーパー本体、56B…ボルト、56C…取付部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の網、多孔板等のろ材は、布(繊維)製のものに比べて、運転性、保守性、耐久性等の面で優れており、これを利用したものとしてスクリュープレスや回転加圧式脱水機等の加圧式ろ過装置がある。この装置は、歴史が古く、非常にシンプルな構造のものであるため、低動力・低騒音・低コストなどを特徴とし、固形分濃度の低い難脱水性の固液混合物に適用した場合にも優れた脱水性能が得られることから、下水汚泥脱水分野でも多く用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかしながら、円筒状の外側ろ材とその内部に挿入されたスクリューからなるスクリュープレスでは、被処理液が入口側から出口側に向かって低速で移送されて行くと同時に、スクリューの締付力によって発生する圧搾圧力で、連続的に脱水されるが、ろ液は外側ろ材のみより搾り出されるものであるため、外側ろ材の長さの短縮化を図るのが困難であり、設備を小型化し難かった。
一方、回転加圧式脱水機においては、脱水ろ過の処理量を向上させるにはディスクの径を大きくする、又は脱水機を複数配置する必要性があり、設備の大型化やコスト増の問題を抱えていた。
そこで、本発明者らは、このような問題点を鑑み、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材及び外側ろ材と、これら内側ろ材と外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、を備え、ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、内側ろ材及び外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、内側ろ材及び/又は外側ろ材は軸心周りに回転し、スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされたろ過装置を提案した(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−212697号公報
【特許文献2】特開2001−113109号公報
【特許文献3】特願2005−176901号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の発明では、装置自体を小型化させ、脱水性能を向上させることができた。しかしながら、より一層、ろ材の表面に固着したケーキを効率よく掻き取り、かつ長期間の安定運転を可能とすることが望まれている。
そこで、本発明の主たる課題は、掻き取り効果を向上させると共に、この効果を長期間安定的に維持可能なろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材及び外側ろ材と、前記内側ろ材と前記外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、前記内側ろ材及び前記外側ろ材に付着したケーキをそれぞれ掻き取るスクレーパーと、を備え、前記ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、前記内側ろ材及び/又は前記外側ろ材は軸心周りに回転し、前記スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされ、前記スクレーパーは、ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触するように構成された、ことを特徴とするろ過装置である。
【0005】
(作用効果)
内側ろ材及び外側ろ材の二面によってろ過濃縮がなされることによって、従来の外側ろ材のみでろ過を行なっていたスクリュープレスに比べて設備の小型化を図ることができる。また、内側ろ材及び/又は外側ろ材は軸心周りに回転し、スパイラル状の仕切りは回転しない構成とすることにより、ろ過空間に送入された被処理液は、仕切りに沿って螺旋状に装置内を移動しながら、まず内外側ろ材の二面によるろ過濃縮がなされ、次に圧搾脱水がなされるが、内外側ろ材のみならずリボンスクリューも全てを回転自在とした構成のスクリュープレスに比べて、本発明に係るろ過装置は、構造を簡素化でき、製造コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
また、スクレーパーを、ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触するように構成することにより、ろ過面に対して安定してスクレーパーが接触することができ、安定的な掻き取り処理を行うことができる。
ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触するスクレーパーとしては、例えば、スクレーパーが圧力を受けて回動するものや、可撓性のある材料による撓みを利用するもの等が考えられる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記スクレーパーは、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に接触するように構成された、請求項1記載のろ過装置である。
【0007】
(作用効果)
スクレーパーを、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に接触するように構成することにより、時間が経過しても安定した掻き取りが可能になり、長期の安定運転を行なうことができる。さらに、長期の安定的な運転が可能となるため、スクレーパーのメンテナンスのサイクルを延すことができる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記スクレーパーは、先端部分から後端部分にかけて、前記仕切りの幅方向の中央部分に向かうように、前記内側ろ材及び外側ろ材の接線方向に対して振り角をつけてそれぞれ配置された、請求項1又は2記載のろ過装置である。
【0009】
(作用効果)
スクレーパーを、先端部分から後端部分にかけて、前記仕切りの幅方向の中央部分に向かうように、内側ろ材及び外側ろ材の接線方向に対して振り角をつけてそれぞれ配置することにより、ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に対してスクレーパーがより接触しやすくなる。
また、ケーキを攪拌させつつ効率よく搬送することができると共に、被処理液の濃度・圧力分布の均一化を一層促進させることができる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
請求項4記載の発明は、前記スクレーパーは、スクレ−パー本体と、このスクレーパー本体の先端部分に対し、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触及び離間する態様をそれぞれ取り得る状態で、スクレーパー本体を保持する保持部材と、を備えた、請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過装置である。
【0011】
<請求項5記載の発明>
請求項5記載の発明は、前記スクレーパーは、スクレーパー本体と、このスクレーパー本体を内側ろ材及び外側ろ材の軸方向に対して回動自在に保持する保持部材と、を備えた、請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過装置である。
【0012】
(作用効果)
スクレーパーを、スクレ−パー本体と、このスクレーパー本体の先端部分に対し、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触及び離間する態様をそれぞれ取り得る状態で、スクレーパー本体を保持する保持部材と、を備えた構成とすることにより、ろ過面に対して安定してスクレーパーが接触することができ、安定的な掻き取り処理を行うことができる。
また、スクレーパーを、スクレーパー本体と、このスクレーパー本体を内側ろ材及び外側ろ材の軸方向に対して回動自在に保持する保持部材と、を備えた構成とすることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掻き取り効果を向上させると共に、この効果を長期間安定的に維持できる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図16に基づき説明する。なお、ろ過装置の概要については図1乃至図8で説明し、本発明に係るスクレーパーについては図9乃至図16で説明する。
<本発明に係るろ過装置の構成>
本発明に係るろ過装置におけるケーシング7の内部には、図1及び図2に示されるように、モータ等の第1の回転駆動手段(図示せず)によって駆動力が伝達される内筒回転軸5に上板1Aが連結された回転自在な円筒状の内側ろ材1と、この内側ろ材1と同心円状に配設された回転自在な円筒状の外側ろ材2と、ケーシング7の上板7A及び底板7Bに両端部を固定され、内側ろ材1と外側ろ材2との間に形成されるろ過空間4に配置されたスパイラル状(リボンスクリュー状)の仕切り3と、が備えられている。なお、ケーシング7は、本実施の形態では円筒型であるが、これに限られることなく、多面体等の形状でもよい。また、内側ろ材1のケーシング7への配設は、上記に限られず、公知の様々な方法で回転可能に取付けることができる。
【0015】
図1及び図2に示すように、ケーシング7の底板7Bにおける、ろ過空間4を投影した部分には被処理液送入口10,11が形成されており、これら被処理液送入口10,11から被処理液が送入される。なお、被処理液は、ポンプ(図示せず)により圧送され、この圧力と共に、内側ろ材1と外側ろ材2の回転による摩擦で、ケーシング7の底部から上部まで上昇するものである。なお、装置自体の軸心を横向きにし装置全体を横向きに配置する場合には、被処理液をポンプ圧送することなく、内側ろ材1と外側ろ材2の回転による摩擦力のみで、装置内を移動させてもよい。また被処理液送入口は、本実施の形態では2箇所であるが、これに限定されるものではない。
【0016】
内側ろ材1の側面(外周面)には、ろ材として多孔板が張設されている。
内側ろ材1と外側ろ材2との間に形成されたろ過空間4に送入された被処理液のうち、固液分離がなされたろ液の一部が内側ろ材1内におけるケーシング7の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口12から排出されるようになっている。
【0017】
外側ろ材2は、周状の上端部分においてケーシング7に配設された旋回輪(ベアリング)(図示せず)等によりケーシング7に対して回動可能に取付けられており、また、上端部分は、図示はしないが、モータ等の第2の回転駆動手段(図示せず)によって駆動力が伝達される外側回転軸(図示せず)にピニオンギア(図示せず)等を介して連結され、外側ろ材2自体が回転するようになっている。なお、内側ろ材1についても、図示はしないが、外枠2と同様に、ケーシング7に配設された旋回輪(ベアリング)(図示せず)等によりケーシング7に対して回動可能に取付け、第1の回転駆動手段によって駆動力を伝達する構成とすることもできる。
【0018】
また、外側ろ材2の内周面には、内側ろ材1と同様に、ろ材として多孔板が張設されている。ろ過空間4に送入された被処理液のうち、固液分離がなされたろ液の一部がケーシング7と外側ろ材2との間の部分の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口13から排出されるようになっている。
【0019】
ここで、内側ろ材1と外側ろ材2とは、同角速度(°/sec)で回転させた場合においても、それぞれの半径差分の周速度差(mm/sec)が生じるため、ケーキにせん断力が生じて脱水効率が向上される。例えば、繊維分の多い生汚泥や混合生汚泥が含まれる被処理液に対しては、このせん断力がより効果的であるため、内側ろ材1と外側ろ材2とに若干角速度差を付けて、回転させることで更に脱水効率を向上させる事が可能である。また、内側ろ材1と外側ろ材2との相対速度が大きい場合、速く回転するろ過面(例えば、内側ろ材1のろ過面)近傍のケーキは、もう一方のろ過面(例えば、外側ろ材2のろ過面)側へ移動する効果が現れ、ケーキ内での混合作用が生じることで、ろ過装置内での含水率分布を均一化することもできる。
【0020】
このように、内外側ろ材1,2のろ過面の角速度差によりケーキにせん断力が加えられて脱水効率が改善されるが、この効果は対象ケーキの性状に依存するため、最適状態で運転する場合はケーキ性状に合わせて内外の角速度差を設定することが望ましい。このため、簡易的に角速度差を調整できるように、本実施の形態では、内外側ろ材1,2にそれぞれ個別のモータ等の回転駆動手段を設けている。
一方、ケーキ性状によっては、せん断力を加えた場合、ケーキが流動化してしまい、逆に脱水性を損なう場合もあるので、このような場合には同角速度で回転させることが好ましい。また、せん断力による脱水効果があり、かつケーキ性状が年間を通してほとんど変化しないケーキについては、同角速度で回転させてもよく、これらのような対象ケーキに対しては、内外側ろ材1,2を一つのモータにより同角速度で回転させるようにしてもよい。
なお、内側ろ材1と外側ろ材2は、必ずしも両者を回転させる必要はなく、一方のみを回転させるようにしてもよい。
【0021】
内外側ろ材1,2に用いられるろ材としては、前述のように、多孔板が使用されるが、この多孔板としては、例えば、スリットグリル、ダイヤスクリーン、ラスターメタル、丸穴、スリット、ヘリンボン、角孔等の固形物の脱水用、分離用、濃縮用及び分級用などに用いられる打ち抜き板も採用することができる。好適には、孔径をより小さくするためにレーザー加工により穴あけした板を採用することが望ましい。なお、多孔板に換えてウェッジワイヤーを張設してしてもよく、この場合、ウェッジワイヤーのスリットは回転軸心に沿って配列すればよい。また、固液分離が主となるろ過空間4の下部にろ過面の開孔率が高い多孔板、圧搾脱水が主となるろ過空間4の上部にケーキとの接触面積の高い(開孔率の低い)多孔板を配置してもよい。なお、多孔板やウェッジワイヤーに換えて、金網(図示せず)、ろ布(図示せず)等を用いることができる。
【0022】
仕切り3は、図1及び図4に示されるように、スパイラル状(リボンスクリュー状)であり、内側ろ材1と外側ろ材2との間に形成された環状のろ過空間4に配設されている。この仕切り3は、ケーシング7の上板7Aと底板7Bとに固定されていることによって、仕切り3は軸芯周りに回転しない構成となっている。このことによって、内外側ろ材のみならずリボンスクリューも全てを回転自在とした構成のスクリュープレスに比べて、本発明に係るろ過装置は、構造を簡素化でき、製造コストの低減及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0023】
仕切り3の内周縁と外周縁は、それぞれ内側ろ材1及び外側ろ材2のろ過面に近接する構成となっている。これにより被処理液送入口10,11から送入された被処理液を仕切り3に沿って螺旋状に上昇させることができる。なお、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近が、固液分離作用によるろ過濃縮が主となってくるため、仕切り3の内周縁と外周縁は少なくとも被処理液の送入口10,11側付近が内外側ろ材1,2とそれぞれ近接する構成であればよい。
【0024】
仕切り3は、スパイラルピッチをろ過空間4内すべてにおいて均一にしてもよいが、排出されるケーキの含水率のムラ(分布)をなくし均一にするため、図1及び図4で示すように、スパイラル状の仕切り3をケーシング7の底板7B側から上板7A側に行くにしたがって、そのピッチが短くなるように構成することが好ましく、具体的には、ろ過空間4の上部部分で、スパイラルピッチを短くしケーキの排出経路を狭くし、圧搾効果を高めることが好ましい。他方、後述する図5乃至図8に示すように、ろ過空間4の上部において脱水効率を向上させるために内外側ろ材1,2の半径差を狭めた場合には、図示しないが、スパイラル状の仕切り3をケーシング7の底板7B側から上板7A側に行くにしたがって、そのピッチが長くなるように構成してもよい。
【0025】
また、図示はしないが、スパイラル状の仕切り3の一部にケーキが通過可能な孔を穿設し、ケーキの攪拌混合を促進することもできる。さらに、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近において、仕切り3の下部をケーシング7の底板7Bから離間して設け(スパイラル状の仕切り3の下部をカットし)てもよく、この場合には、仕切り3とケーシング7の底板7Bとの固定は、任意の支持部材(例えば、柱状部材等)を介して固定すればよい。
【0026】
ところで、ろ過装置は、仕切り3は回転しないが、内側ろ材1及び外側ろ材2は軸心周りに回転する構成であり、内側ろ材1と外側ろ材2の表面にケーキが経時的に付着していく。これら内側ろ材1と外側ろ材2の表面に付着したケーキを掻き取る方法は、いくつかある。
第1の方法は、仕切り3の内周縁と外周縁とを、それぞれ内側ろ材1及び外側ろ材2のろ過面に非接触ではあるが、極力近接させるものである。この構成によって、内外側ろ材1,2のろ過面に固着したケーキを掻き取り易くすることができる。
しかしながら、内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面とは非接触であるため、掻き取りが不十分であり、ろ過濃縮の効率が経時的に低下して行く虞がある。
【0027】
第2の方法は、図9に示すように、仕切り3の内周縁と外周縁にゴムや樹脂などにより形成されるスクレーパー56を取付け、このスクレーパー56によりケーキを掻き取るものである。なお、図中の符号19は、仕切り3をケーシング7の底板7B及び/又は上板7Aに固定して支持する支持部材である。
スクレーパー56は、図10に示すように、樹脂やゴム等からなるスクレ−パー本体56Aと、このスクレーパー本体56Aをボルト56B等により固定して取付ける取付部材56Cと、を備えている。スクレーパー56は、図9に示すように、仕切り3の幅方向の両端部にそれぞれ所定の間隔をおいて設けられており、スクレーパー本体56Aが内側ろ材1及び外側ろ材2のろ過面に接触するように構成されている。スクレーパー56は、ろ過面に接触する部分(先端部分)から後端部分にかけて、剥離したケーキを搬送経路(仕切り3)の中央部分に導くように接線方向から若干の振り角をつけて配置されている。また、取付部材56Cの先端部分も断面テーパー状に加工されており、ケーキが搬送経路の中央部分により導かれやすくなっている。なお、スクレーパー56の背面の空間(クサビ状の空間)は、被処理液に乱流を与えて混合させる空間として機能している。
この第2の方法では、運転初期は接触が得られるものの、運転時間の経過にしたがい、樹脂やゴム等からなるスクレ−パー本体56Aが磨耗し、ケーキの掻き取り力が低減してしまう。そのため、長期間にわたって安定した運転を行なうことができない虞がある。
【0028】
そこで、本発明者らは、上記第1及び第2の方法の問題点を解消するために、ろ材の表面に固着したケーキを効率よく掻き取り、かつ磨耗に対して対応可能で長期間の安定運転を可能とする第3の方法を見出した。
本発明に係る第3の方法に用いられる第1の形態のスクレーパー16は、図11乃至図14に示すように、樹脂等からなるスクレ−パー本体16Aと、このスクレーパー本体16Aの先端部分に対し、内側ろ材及び外側ろ材1,2のそれぞれのろ過面に接触及び離間する態様をそれぞれ取り得る状態で、スクレーパー本体16Aを保持する保持部材16Bと、を備えており、この保持部材16Bは支持部材19に溶接等により固定されているものである。
【0029】
スクレーパー16は、図11に示すように、仕切り3の幅方向の両端部に所定の間隔をおいて設けられている。スクレーパー本体16Aは、図13(1)及び図14(1)に示すように、ろ過装置が運転していない状況では、内側ろ材及び外側ろ材1,2のろ過面には若干隙間をもって近接しているが、非接触であるように保持部材16Bに取付けられている。これは、内側ろ材1や外側ろ材2の組み立て等の際に、支障が出ないようにするためである。
【0030】
スクレーパー本体16Aは、接線方向から若干の振り角をつけて配置されていると共に、スクレーパー本体16Aの先端部分が断面テーパー状に加工されており、被処理物の圧力を受けやすくなっている。そのため、スクレーパー本体16Aの先端部分は、搬送経路(仕切り3)を流れる被処理液やケーキ等の被処理物の圧力を受けて、図13(2)及び図14(2)に示すように、内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面にそれぞれ押し付けられるようになっており、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に接触するように構成されている。これにより長期の使用により磨耗が進んだ場合も、可動域限界までは接触し、掻き取り効果が維持できるようになっている。
【0031】
保持部材16Bは、図13及び図14に示すように、略J字状になっており、円弧状に形成された凹部16aにスクレーパー本体16Aの後端部分が保持されるようになっている。この凹部形状に対応するようにスクレーパー本体16Aの後端部分も円弧状に形成されているため、スクレーパー本体16Aが左右に回動可能になっている。また、保持部材16Bの平面部16bにはピン16Cが設けられており、スクレーパー本体16Aに穿設された孔をこのピン16Cに引掛けることによって、スクレーパー本体16Aを係止している。
【0032】
上記のとおり、スクレーパー本体16Aの後端部分が円弧状に形成されており、また、スクレーパー本体16Aは、穿設された孔に対してピンにより遊びを持って留められている構成であるため、クレーパー本体16Aに使用される樹脂等の材料の剛性が高い場合でも、スクレーパー本体16Aの先端部分が被処理液やケーキ等の被処理物の圧力を受け、内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面に接触しやすくなっている。なお、スクレーパー本体16Aに使用される樹脂等の材料の剛性が低い場合には、図示はしないが、スクレーパー本体16Aの後端部分を遊びなく拘束して固定してもよい。
【0033】
この第3の方法では、運転中の被処理液やケーキ等の被処理物の圧力によって常に内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面に接触しながら掻き取りを行うことができる。また、磨耗によって、スクレーパー本体16Aの先端部分が磨耗して減った場合でも、この先端部分の後続部分が追随して接触効果が得られるため、時間が経過しても安定した掻き取りが可能になり、長期の安定運転をおこなうことができる。さらに、長期の安定的な運転が可能となるため、スクレーパー本体16Aのメンテナンスのサイクルを延すことができる。
【0034】
なお、ろ過空間4の下部、すなわち被処理液送入口10,11側付近が、固液分離作用によるろ過濃縮が主となってくるため、少なくとも被処理液の送入口10,11側付近にスクレーパー16が取付けられていればよい。
【0035】
また、第3の方法に用いられる第2の実施形態のスクレーパー26は、図15及び図16に示すように、スクレーパー本体26Aと、このスクレーパー本体26Aを内側ろ材及び外側ろ材1,2の軸方向に対して回動自在に保持する保持部材26Bと、を備えたものである。
【0036】
保持部材26Bは、図16に示すように、仕切り3の上面と下面にそれぞれ取付けられる座板部材26a,26aと、これら座板部材26a,26a間に取付けられる軸部材26bと、この軸部材26bの軸周りに回動自在に取付けられ、スクレーパー本体26Aを保持する保持部材本体26c,26c,…と、を備えている。この構成により、図15に示すように、第1の実施形態と同様に、スクレーパー本体26Aは、搬送経路を流れる被処理液やケーキ等の被処理物の圧力を受けて、内側ろ材1と外側ろ材2のろ過面にそれぞれ押し付けられるようになっている。また、第1の実施形態と同様に、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に対して接触するように構成されている。これにより長期の使用により磨耗が進んだ場合も、可動域限界までは接触し、掻き取り効果が維持できるようになっている。なお、符号26dは軸部材26bに取付けられたリベットである。スクレーパー本体26Aが被処理物の圧力を受けたとき、このリベット26dにより、スクレーパー本体26Aの先端部分が流路中心方向に回動しないように保持部材本体26cの回動範囲が制限されるようになっている。
【0037】
以下に、内側ろ材1、外側ろ材2及び仕切り3との関係を説明する。後述するケーシング7の底板7Bに形成された被処理液送入口10,11から送入された被処理液は、固形分濃度も低く流動性を持った状態であり、ろ過空間4の下部では、内側ろ材1と外側ろ材2における円筒状のろ材の目開きを介してろ過濃縮が生じる。ろ過空間4の下部では、固液分離作用によるろ過濃縮が重要な機能となるが、ろ過濃縮がある程度進行すると濃縮されたケーキがろ過面に固着し、ろ過効率が低下するが、前述したスクレーパー16又は26により、表面に固着したケーキを掻き取っている。
【0038】
また、濃縮作用により流動性を失ったケーキは、ろ材との摩擦力が生じるため、回転するろ材により、内外側ろ材1,2の円周方向へ搬送が行われる。しかし、ろ過空間4にはスパイラル状(リボンスクリュー状)の仕切り3が配置されており、内外側ろ材1,2に沿って回転するするケーキが、この仕切り3と干渉することで、軸を中心に回転すると共に、軸方向への移動するようになる。この運動によりケーキはろ過濃縮をされながら、最終的に、ろ過空間4の上部に形成されたケーキ排出口14より排出されるものである。なお、後述するが、ケーキ排出口14には、ケーキの排出を抑制する背圧板15が取付けられており、排出量が強制的に抑制されることでケーキはろ過空間4内で圧密され、更に含水率を低下させることができる。
【0039】
実施の形態に係るろ過空間4は、上から下まで同一の横断面積を有する環状のものを示しているが、ろ過空間4の下部は、処理量を確保するために大容量のろ室容積を持たせ、他方、ろ過空間4の上部において脱水効率を向上させるために内外側ろ材1,2の半径差を狭めることが好適である。具体的には、図5に示すように、外側ろ材2の形状は同一のままで、被処理液送入口10,11側からケーキ排出口14側に向って、内側ろ材1の半径方向を連続的に拡大して行く形状(略円錐形状)、又は図6に示すように階段状に拡大して行く形状(多段円筒形状)を提案できる。また、図7に示すように、内側ろ材1の形状は同一のままで、被処理液送入口10,11側からケーキ排出口14側に向って、外側ろ材2の半径方向を連続的に縮小して行く形状、又は図8に示すように階段状に縮小して行く形状も提案することができる。
【0040】
内側洗浄管8は、図1及び図2に示されるように、内側ろ材1の内周面に沿って設けられており、また、複数の洗浄ノズル8A,8A,…が、内側ろ材1の内周面に対向するように内側洗浄管8に取付けられている。同様に、外側洗浄管9は、外側ろ材2の外周面に沿って設けられており、また、複数の洗浄ノズル9A,9A,…が、外側ろ材2の外周面に対向するように外側洗浄管9に取付けられている。そして、内側ろ材1 と外側ろ材2 を軸回りに回転させながら、これら複数の洗浄ノズル8A,8A,…;9A,9A,… から洗浄液を噴射して、目詰まりした内側ろ材1 と外側ろ材2のろ過面が洗浄されるものである。洗浄の際に噴射された洗浄液は洗浄排液として、ろ液と共に内側ろ材1内におけるケーシング7の底板7B、ケーシング7と外側ろ材2との間の部分の底板7Bに溜められ、最終的には、ろ液排出口12,13から排出されるようになっている。
【0041】
ここで、内外側ろ材1,2には、高圧の洗浄液が吹付けられ、洗浄されるが、洗浄液としてアルカリ性の薬品を吹付けて洗浄することが好ましい。また、内外側ろ材1,2のろ過面に超音波発信機を設置し、ろ材自体を振動させ洗浄すると洗浄力が向上するのでより好適である。
【0042】
なお、内外側洗浄管8,9及び洗浄ノズル8A,9Aの設置位置としては上記に限られず、ろ過空間4内に設置し、仕切り3等に洗浄ノズル(図示せず)を取付けて、ろ過空間4内から洗浄液を噴射してもよい。また、内外側洗浄管8,9を複数箇所設置してもよい。
【0043】
図3に示すように、ケーシング7の上板7Aにおける、ろ過空間4を投影した部分には、ケーキ排出口14が形成されており、ここから、脱水されたケーキが排出される。このケーキ排出口14には、背圧板15が取付けられており、この背圧板15によって排出抵抗を生じさせ、排出される汚泥の量を調整することで、さらにケーキを圧搾し、含水率の低下と、体積縮減が図られるものである。
【0044】
<本発明に係るろ過方法>
本発明に係るろ過装置を用いてのろ過方法について、以下に説明する。
まず、被処理液送入口10,11へ被処理液をポンプ圧送し、ろ過空間4内に被処理液を送入する。ろ過空間4内に送入された被処理液は、仕切り3に沿って螺旋状に上昇しながら、内側ろ材1と外側ろ材2とにより二面ろ過が行なわれる。内側ろ材1と外側ろ材2 をそれぞれ、モータ等の第1及び第2の回転駆動手段(図示せず)によって回転させられる。この際、必要に応じて内側ろ材1と外側ろ材2とをそれぞれ速度差をもって同一方向に回転させる。なお、内側ろ材1と外側ろ材2は、必ずしも両者を回転させる必要はなく、一方のみを回転させるようにしてもよい。
被処理液は、ポンプ圧送の圧力と、回転の摩擦力で仕切り3に沿って上昇していくが、内側ろ材1と外側ろ材2との間のろ過空間4の下部で固液分離がなされ、その上部で圧搾脱水がなされ、最終的に、ケーキ排出口14が形成されており、ここから、脱水されたケーキが排出される。
内側ろ材1と外側ろ材2 とを回転させ、仕切り3を回転させないようにすることで、前述したスクレーパー16又は26がそれぞれのろ過面に蓄積されたケーキを掻き取る。
ろ過空間4内の上部には、固液分離がなされた後の含水率の高いケーキが上昇してくるが、このケーキは内側ろ材1と外側ろ材2 との回転摩擦、及び背圧板15による排出抵抗によって圧搾が促進されて、含水率が低減されると共に体積縮減がなされてケーキ排出口14から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るろ過装置の縦断面図である。
【図2】そのI−I断面図(横断面図)である。
【図3】その平面図である。
【図4】仕切りを説明するための概略図である。
【図5】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図6】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図7】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図8】ろ過装置の他の実施例の概略を示す縦断面図である。
【図9】第2の方法のスクレーパーと内外側ろ材との関係を説明するための横断面図である。
【図10】そのスクレーパーを説明するための横断面図である。
【図11】本発明に係る第3の方法の第1の実施形態のスクレーパーと内外側ろ材との関係を説明するための横断面図である。
【図12】そのII−II断面図(部分断面図)である。
【図13】そのスクレーパーの外側ろ材側の運転前及び運転中の横断面図である。
【図14】そのスクレーパーの内側ろ材側の運転前及び運転中の横断面図である。
【図15】本発明に係る第3の方法の第2の実施形態のスクレーパーと内外側ろ材との関係を説明するための横断面図である。
【図16】そのスクレーパーの正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…内側ろ材、1A…上板、2…外側ろ材、3…仕切り、4…ろ過空間、5…内筒回転軸、7…ケーシング、7A…上板、7B…底板、8…内側洗浄管、9…外側洗浄管、10…被処理液送入口、11…被処理液送入口、12…ろ液排出口、13…ろ液排出口、14…ケーキ排出口、15…背圧板、16…スクレーパー、16A…スクレ−パー本体、16B…保持部材、16C…ピン、16a…凹部、16b…平面部、19…支持部材、26…スクレーパー、26A…スクレーパー本体、26B…保持部材、26a…座板部材、26b…軸部材、26c…保持部材本体、26d…リベット、56…スクレーパー、56A…スクレーパー本体、56B…ボルト、56C…取付部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材及び外側ろ材と、
前記内側ろ材と前記外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、
前記内側ろ材及び前記外側ろ材に付着したケーキをそれぞれ掻き取るスクレーパーと、を備え、
前記ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、
前記内側ろ材及び/又は前記外側ろ材は軸心周りに回転し、前記スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされ、
前記スクレーパーは、ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触するように構成された、
ことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記スクレーパーは、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に接触するように構成された、請求項1記載のろ過装置。
【請求項3】
前記スクレーパーは、先端部分から後端部分にかけて、前記仕切りの幅方向の中央部分に向かうように、前記内側ろ材及び外側ろ材の接線方向に対して振り角をつけてそれぞれ配置された、請求項1又は2記載のろ過装置。
【請求項4】
前記スクレーパーは、スクレ−パー本体と、このスクレーパー本体の先端部分に対し、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触及び離間する態様をそれぞれ取り得る状態で、スクレーパー本体を保持する保持部材と、を備えた、請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過装置。
【請求項5】
前記スクレーパーは、スクレーパー本体と、このスクレーパー本体を内側ろ材及び外側ろ材の軸方向に対して回動自在に保持する保持部材と、を備えた、請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過装置。
【請求項1】
同心状に配置された、円筒状又は円錐状の内側ろ材及び外側ろ材と、
前記内側ろ材と前記外側ろ材との間のろ過空間に設けられたスパイラル状の仕切りと、
前記内側ろ材及び前記外側ろ材に付着したケーキをそれぞれ掻き取るスクレーパーと、を備え、
前記ろ過空間の一端側から被処理液を送入して、ろ過空間内の他端側からケーキを排出し、前記内側ろ材及び前記外側ろ材を通したろ液を外部に排出する構成のろ過装置であって、
前記内側ろ材及び/又は前記外側ろ材は軸心周りに回転し、前記スパイラル状の仕切りは回転しない構成とされ、
前記スクレーパーは、ろ過空間を搬送される被処理物の圧力を受けて、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触するように構成された、
ことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記スクレーパーは、ろ過面との接触部分が磨耗すると、これに後続する部分が順次ろ過面に接触するように構成された、請求項1記載のろ過装置。
【請求項3】
前記スクレーパーは、先端部分から後端部分にかけて、前記仕切りの幅方向の中央部分に向かうように、前記内側ろ材及び外側ろ材の接線方向に対して振り角をつけてそれぞれ配置された、請求項1又は2記載のろ過装置。
【請求項4】
前記スクレーパーは、スクレ−パー本体と、このスクレーパー本体の先端部分に対し、内側ろ材及び外側ろ材のそれぞれのろ過面に接触及び離間する態様をそれぞれ取り得る状態で、スクレーパー本体を保持する保持部材と、を備えた、請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過装置。
【請求項5】
前記スクレーパーは、スクレーパー本体と、このスクレーパー本体を内側ろ材及び外側ろ材の軸方向に対して回動自在に保持する保持部材と、を備えた、請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−68171(P2008−68171A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247379(P2006−247379)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
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