説明

アイテムの推薦方法及び装置

【課題】 ユーザの行動と嗜好のずれを用いて、ユーザにとって意外性のある推薦を行う情報推薦方法及びそのシステムを提供する。
【解決手段】 アイテム特徴空間計算部112を備え、アイテム属性102を用いて、アイテム特徴空間105を構築し、行動モデル作成部113を備え、ユーザのアイテム選択履歴103を用いて、該ユーザの行動モデル106を求め、嗜好モデル作成部114を備え、ユーザのアイテム嗜好104を用いて、該ユーザの嗜好モデル107を求め、行動予測値計算部116・嗜好予測値計算部117・意外性係数・嗜好予測値併用推薦指標計算部118を備え、求められた嗜好予測値が大きく、行動予測値が小さいアイテムに対して小さな値となる推薦指標を計算し、推薦アイテム決定部115を備え、該指標が小さい非選択アイテムを、推薦アイテムとしてリストを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画コンテンツなどのアイテムを推薦する方法に係り、特に、ユーザの嗜好に沿いつつも、意外性のあるアイテムの推薦技術に関する。ここで、「アイテム推薦」とは、ユーザの嗜好に沿った情報アイテムをユーザに提示する機能で、「意外性のあるアイテム推薦」とは、ユーザの嗜好に沿いつつも、ユーザが容易には予測困難な情報を提示する機能のことである。
【背景技術】
【0002】
コンテンツなどの情報を配信する際に配信する情報を推薦するシステムとして、従来、「協調フィルタリング」方式が知られている非特許文献1参照。この協調フィルタリングとは、過去のユーザ履歴の類似性からユーザプロファイルやユーザがどういったタイプに属するか、等を推定し、次の推薦アイテムを決定する方式である。
【0003】
また、非特許文献2において、アイテムをクラスタリングし、ユーザの嗜好アイテムが属するクラスタの他のアイテムを、意外性のある推薦結果とする方式が述べられている。
【0004】
また、特許文献1において、顧客プロファイルのキーワードベクトルと未購入の書籍のキーワードベクトルをカテゴリ毎に求め、ベクトルの類似度を異なるカテゴリ間で計算し求められた類似アイテムを意外性のある推薦結果とする方式が述べられている。
【0005】
また、特許文献2において、アイテム選択分布を分析し、分布の中心に近くかつ分布形状から離れている非選択アイテムを推薦する方式が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-265808「情報検索システム及び情報検索方法」
【特許文献2】特願2009-249672「情報推薦方法及び装置」
【特許文献3】特開2004-194107「情報処理装置および情報処理方法、情報処理システム、記録媒体、並びにプログラム」
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G. Linden et al.: “Amazon.com Recommendations、Item-to-Item Collaborative Filtering”、IEEE Internet Computing、2003.
【非特許文献2】加藤由花他: “オンラインショッピングを対象とした正確性と意外性のバランスを考慮したレコメンダシステム”、情報処理学会論文誌、Vol.46、No. SIG 13 TOD 27、Sep. 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に代表される協調フィルタリング方式では、部分的に履歴が類似した別ユーザの全履歴中、未推薦の部分を参照して推薦アイテムを決定する方式が主体であり、一般に、「意外性のあるアイテム推薦」、即ちユーザにとって関心はあるが、容易に想定できないアイテムを推薦することは難しい。
【0009】
また、非特許文献2に記載の推薦方法では、アイテムを用いてクラスタを形成しているため、クラスタが固定され、ユーザの嗜好が変わらない限り常に同じクラスタから推薦結果が出力されること、及びユーザの嗜好アイテムと同クラスタのアイテムが推薦されるため、類似しており、必ずしも意外性があるとは言えないという問題があった。
【0010】
また、特許文献1に記載の推薦方法では、同じカテゴリであって、かつ意外なアイテムは、推薦できないという問題があった。また、カテゴリ分けされていないアイテムでは本発明が適用できなかった。
【0011】
また、特許文献2に記載の推薦方法では、推薦アイテムの選定において、行動の中心と嗜好の中心とが同一としており、行動の中心からのユークリッド距離によってアイテムを推薦しているため、必ずしも嗜好に合うとは言えないという問題があった。
【0012】
本発明の課題は、ユーザにとって意外性のある推薦を行うことの出来る情報推薦方法、及びそのシステム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明においては、処理部と記憶部とを備えたサーバを用い、アイテム属性とユーザがアイテムを選択した履歴とユーザの選択したアイテムに対する嗜好とを記憶し、該履歴及び嗜好に基づいて推薦を行う情報推薦方法、並びに情報推薦システムであって、処理部は、アイテムの属性からアイテム特徴空間を構築し、該履歴から該空間上でのユーザの行動分布を分析し、該嗜好から該空間上でのユーザの嗜好分布を分析し、該嗜好予測値が高く且つ該行動予測値が低い未選択アイテムを推薦アイテムとする情報推薦方法、並びに情報推薦システムを提供する。
【0014】
また、処理部は、アイテム選択履歴から行動モデルを作成し、アイテムに対する嗜好から嗜好モデルを作成し、未推薦アイテムについて行動予測値および嗜好予測値を算出し、行動予測値が大きいほうでは値が大きく、嗜好予測値が小さいほうでは値が小さくなる意外性係数を求め、該係数が小さく、嗜好予測値が大きい未推薦アイテムを推薦アイテムとする情報推薦方法、並びに情報推薦システムを提供する。
【0015】
本発明によれば、アイテム特徴空間上で、嗜好から近く、且つユーザの行動から離れているアイテムを推薦することが出来る。
【0016】
特徴空間上で距離が近いアイテムは類似しているため、嗜好に近いアイテムはユーザの嗜好に合っていると考えられ、また、行動から離れていると予測が困難であると考えられるため、意外性が高い。従って、ユーザにとって意外性のある推薦を行うことが出来る。
【0017】
また、本発明によれば、アイテムのカテゴリデータは必要なく、ユーザのアイテム選択履歴と嗜好を用いて、ユーザの嗜好に合致しかつユーザにとって意外性のある推薦を行うことが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アイテム特徴空間上で、ユーザの嗜好に合致しかつユーザにとって意外性のある推薦を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】情報推薦装置のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】情報推薦方法の流れの一例の図である。
【図3】アイテム属性のデータ構造の一例を示す図である。
【図4】アイテム特徴空間の軸を求める式の一例である。
【図5】アイテム選択履歴及びアイテム嗜好のデータ構造の一例を示す図である。
【図6】行動空間特徴行列を求める式の一例である。
【図7】嗜好空間特徴行列を求める式の一例である。
【図8】推薦指標を求める式の一例である。
【図9】推薦アイテム決定方法の流れの一例の図である。
【図10】推薦アイテムリスト生成方法の別の一例を示す図である。
【図11】推薦アイテムの範囲を求める式の一例である。
【図12】推薦アイテムの範囲を示すイメージ図である。
【図13】番組推薦装置のシステム構成の一例を示す図である。
【図14】番組推薦方法の流れの一例の図である。
【図15】番組情報の一例の図である。
【図16】番組特徴空間の軸を求める式の一例である。
【図17】番組嗜好のデータ構造の一例を示す図である。
【図18】推薦番組決定方法の流れの一例の図である。
【図19】番組嗜好を取得する方法の一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に従い説明する。
【0021】
まず、本明細書で用いる用語を定義する。
【0022】
本明細書で「アイテム」とは、推薦対象であり、例えば、購入の際のおすすめ商品を求めるECサイトでは商品、視聴の際におすすめ番組を提示するテレビでは番組である。また、「アイテム属性102」とは、該アイテムに関する情報であり、例えば、食品のアイテムである場合、該食品のカロリー、糖分等のことを指す。
【0023】
また、本明細書で「アイテム選択履歴103」とは、ユーザが選択したアイテムの種類と回数が記録されたデータであり、「選択アイテム」とは、入出力部121に出力された推薦結果リストからユーザが実際に選択したアイテム、アイテムが商品であるECサイト等では、詳細情報を閲覧した商品である。
【0024】
また、本明細書で「アイテム嗜好104」とは、入出力部121から入力されたユーザのアイテムに対する嗜好であり、アイテムが商品の場合はその商品を購入した後の満足度合い、アイテムが食品である場合はその食品に対する好き嫌いの度合いである。
【0025】
図1を用いて、本発明のシステム構成例を説明する。本システムは、処理部111と、記憶部101、及び入出力部121から構成される。
【0026】
処理部111は、特徴空間計算部112、行動モデル作成部113、嗜好モデル作成部114、推薦アイテム決定部115、アイテム行動予測計算部116、アイテム嗜好予測値計算部117、意外性係数・嗜好予測値併用推薦指標計算部118とを備えている。
【0027】
記憶部101は、アイテム・属性102、アイテム選択履歴103、アイテム嗜好104、アイテム特徴空間105、ユーザ行動モデル106、ユーザ嗜好モデル107のデータベースを備えている。
【0028】
入出力部121は、タッチパネル、キーボード、リモコン、画像認識といった入力デバイス、ディスプレイ、ライト、プリンタ、音といった情報を提示する出力デバイスを用いたユーザインターフェースである。
【0029】
図2は、情報推薦方法の流れの一例の図である。
【0030】
まず、特徴空間計算部112が、アイテム属性102を用いて、アイテム属性を軸としてアイテムを空間的に配置するアイテム特徴空間を構築し、記憶部101に記憶する201。このアイテム特徴空間105の構築は、アイテム集合が決定された時点に行う。なお、ここでいう、「アイテム集合が決定された時点」とは、例えばECサイトの場合、商品の品揃えが確定した時点であり、テレビの場合は放送番組内容が確定した時点のことを指す。但し、アイテムが入力されるたびに新規に作成、更新されるようにしてもよい。
【0031】
次に、ユーザから入出力部121を介して推薦要求が入力されたことをトリガとし、又は自動的に、行動モデル作成部113が、アイテム選択履歴103を用いて、該ユーザの行動モデル106を作成する202。さらに、嗜好モデル作成部114がアイテム嗜好104を用いて該ユーザの嗜好モデル107を作成する203。
【0032】
次に、アイテム選択履歴103から、アイテム中の非選択アイテムを特定する204。その非選択アイテムに対し、前記行動モデルを基にユーザがアイテムを選択する行動を取る可能性の度合いを示す値を求め115、アイテム行動予測値とする205。
【0033】
同様に、前記嗜好モデルを元にユーザのアイテムに対する好き嫌いの度合いの予測値を求め116、アイテム嗜好予測値とする206。
【0034】
次に、求められた行動予測値と嗜好予測値を基に、意外性係数・嗜好予測値併用推薦指標計算部118が推薦指標を計算し、該指標に基づき推薦アイテム決定部115が、推薦アイテムリストを生成する207。
【0035】
次に、アイテム属性のデータ構造を示す図3を用いて、アイテム・属性102を説明する。
【0036】
アイテム・属性は、アイテム311〜314を行とし、属性301〜304を列とする行列で表される。例えば、アイテムiの属性jの値は値ij321となる。例えば、食品のアイテムである場合、アイテムiが「にんじんのポタージュ」、属性jが「カロリー」である場合、値ijは例えば「150キロカロリー」となる。
【0037】
次に、アイテム特徴空間の軸を求める式を示す図4を用いて、特徴空間計算部112が行うアイテム特徴空間構築処理201を説明する。
【0038】
各アイテムを空間上の点特徴点で表し、類似したアイテムに対応する特徴点間の距離が小さくなるように特徴空間を構築する。特徴空間としては、簡便な点からは、アイテムの各属性その物を軸とする空間でよい。しかし、属性値が類似したアイテムの特徴点間距離は小さくなるが、値の大きさやバラツキが属性毎に異なり、属性間に相関が存在することがあるため、必ずしもベストな特徴空間にならない場合もある。例えばアイテムが食品である場合、属性「カロリー」は数十から数百の値であるのに対し、属性「塩分」はほぼ2より小さな値である。このまま特徴点間のユークリッド距離を求めても、塩分の差はわずかな違いしかないため、アイテム間の類似度はほとんどカロリーで決まってしまう。また、属性「カロリー」と属性「糖分」とで相関がある場合、両者の値の大小が他の属性より類似度に大きな影響を与えることになる。
【0039】
そこで、本実施例では、アイテム属性102に対し、相関行列を用いた主成分分析を行う。主成分分析は、アイテム属性102のような複数のアイテムが複数の属性値で表現されているデータに対し、図5に示した属性値403の線形結合401の中で、アイテムに対して互いに独立で分散が大きくなるような係数402の組を求める。該分析は、属性値の相関行列の固有値問題に帰着することが知られており、上田尚一著、「主成分分析 講座情報をよむ統計学 8」、朝倉書店、2003年3月28日、求められた固有ベクトルの成分が求める係数402、固有値412は、線形結合値すなわち主成分得点401の分散を表す。
【0040】
ここで、小さな固有値に対応する線形結合すなわち主成分は、アイテム間で値の差が少ないため、アイテムの類似/相違を計測する値として役立たない。従って、一般にカイザー基準と呼ばれる基準により固有値が1以上の固有ベクトルに対応する主成分のみを選択し、さらにアイテムが特徴空間上で一様に分布するよう、固有値の二乗根で主成分得点を割った値411を特徴空間上の座標値とする。この場合、特徴空間の次元数は1以上の固有値数に等しい。
【0041】
次に、アイテム選択履歴及びアイテム嗜好のデータ構造を示す図5を用いて、アイテム選択履歴103を説明する。
【0042】
アイテム選択履歴はユーザ511〜514を行とし、アイテム501〜504を列とする行列で表される。例えば、ユーザkがアイテムiを3回選択若しくは購入した場合、値kiは「3」となる。ユーザkがアイテムを一度も選択していない場合、値kiは「0」となる。
【0043】
アイテム嗜好104も同様に図5の行列で表わされる。例えばユーザkがアイテムiを好きな度合いが5段階評価で「4」の場合、値kiは「4」となる。ユーザkのアイテムiに対する嗜好情報がない場合、値kiは「0」となる。
【0044】
次に行動空間特徴行列を求める式を示す図6を用いて、行動モデル作成部113が行うユーザ行動モデル作成処理202を説明する。ユーザ毎の選択アイテム分布は行動空間特徴行列601で表される。該行列は、ユーザが選択したアイテムの属性値の分散共分散行列611の逆行列であり、該分散共分散行列は図6に示した式で計算される。ここで、612はアイテム選択履歴103、図5の要素で、ユーザk、アイテムiに対応する値であり、621はユーザkの選択アイテムの平均ベクトルであり行動中心を表し、622はアイテム特徴空間構築処理201で求めたアイテムiの第p軸の座標値411であり、613は該座標値を成分とするアイテムiの特徴空間上の位置ベクトルである。
【0045】
次に、嗜好空間特徴行列を求める式を示す図7を用いて、嗜好モデル作成部114が行うユーザ嗜好モデル作成処理203を説明する。ユーザ毎のアイテム嗜好分布は行動空間特徴行列701で表される。該行列は、ユーザの嗜好が判明しているアイテムの属性値の分散共分散行列711の逆行列であり、該分散共分散行列は図7に示した式で計算される。ここで、712はアイテム選択履歴104、図5の要素で、ユーザk、アイテムiに対応する値であり、721はユーザkの嗜好アイテムの属性の平均ベクトルであり嗜好中心を表し、722イテム特徴空間構築処理201で求めたアイテムiの第p軸の座標値411であり、713は該座標値を成分とするアイテムiの特徴空間上の位置ベクトルである。
【0046】
次に、推薦指標を求める式を示す図8を用いて、アイテム行動予測値計算部116、アイテム嗜好予測値計算部117及び意外性係数・嗜好距離併用推薦指標計算部118における計算方法を説明する。推薦指標801は意外性係数802と嗜好予測値805の逆数との積で表される。意外性係数802は行動予測値803と嗜好予測値805の比で表される。行動予測値803は行動距離804の逆数で示され、行動距離804は選択アイテム属性値の分散共分散行列に対するマハラノビス距離に相当する。嗜好予測値805は嗜好距離806の逆数で示され、嗜好距離806は嗜好アイテム属性値の分散共分散行列に対するマハラノビス距離に相当する。嗜好距離806が小さいアイテムは、過去のユーザの嗜好アイテムの重心に近接しているので、該嗜好アイテムに類似したアイテムであり、ユーザが好むアイテムであることが期待できる。また、行動距離804が大きいアイテムは、過去にユーザが選択した複数のアイテムの分布から離れているので、ユーザの行動分布とは異なり、予測が困難なアイテムであることが期待できる。従って、これらの距離の比である意外性係数802が小さいアイテムは、ユーザの嗜好に合致するアイテムであり且つユーザ自身にとっては予測が困難であることが期待できる。
【0047】
次に、推薦アイテム決定方法の流れを示す図9を用いて推薦アイテム決定部115における推薦アイテム決定方法を説明する。まず、ユーザkの全ての非選択アイテムアイテム選択履歴図5において値ki=0であるアイテムiに対し901、意外性係数・嗜好距離併用推薦指標計算部118で推薦指標を計算する902。次に、求められた推薦指標の昇順で該アイテムをソートする903。推薦指標が小さい順に推薦アイテムとする904。この時、推薦アイテム数nをシステム管理者若しくはユーザが指定することも出来る。その場合、推薦指標が小さい順に上位n番目までのアイテムが決定される。
【0048】
次に、図1、図8、図10〜図12を用いて、アイテムリスト生成207の別の実施例を説明する。図10は、推薦アイテムリスト生成方法の別の一例を示す図で、図11は、推薦アイテムの範囲を求める式の一例で、図12は、推薦アイテムの範囲を示すイメージ図である。
【0049】
まず、入出力部121を通じて、嗜好予測値下限1102、行動予測値上限1112を入力する1001。次に、意外性係数・嗜好予測値併用推薦指標計算部118において、ユーザkの全ての非選択アイテムアイテム選択履歴図5において値ki=0であるアイテムiに対し、嗜好予測値805並びに行動予測値803を計算する1002。
【0050】
次に、推薦アイテム決定部115において、嗜好予測値805が下限1102以上であり1101、且つ行動予測値803が上限1112以下であるアイテムを推薦アイテムと決定する1003。
【0051】
アイテム特徴空間構築処理201において構築された特徴空間を、図12に示すように模式的に2次元で表す。本実施例では、アイテムを平面状の円で表し、ユーザのアイテム選択の履歴がある選択アイテムを白丸1201及び二重線の白丸1202、ユーザの嗜好アイテムを二重線の白丸1202とすると、入力された嗜好予測値1102以上の範囲は1212で表される分布形状の内側になる。
【0052】
また、入力された行動予測値上限1112以下の範囲は、選択アイテムの分布形状を表す1211の外側になる。従って、2つの範囲の共通部分である太線で囲んだ範囲1213に含まれる、黒丸で表したアイテム1203が推薦アイテムとなる。
【0053】
次に、図13〜図19を用いて、本発明を、録画機能付き番組受信再生部を持つテレビ1331における番組推薦へ応用した例を説明する。
【0054】
図13は、番組推薦装置のシステム構成を示す図、図14は、番組推薦方法の流れを示す、図15は、番組情報を示す図、図16は、番組特徴空間の軸を求める式、図17は、番組嗜好のデータ構造を示す図、図18は、推薦番組決定方法の流れを示す図で、図19は、番組嗜好を取得する方法を示す図である。
【0055】
テレビ番組に関するEPGデータ1302を番組受信部1332から取り込む。
【0056】
全ての番組が取り込まれると、全ての番組に対し1401番組ベクトル生成部1312が番組EPGデータ1302を用いて番組ベクトル1306を計算する1402。EPGデータ例として1501から番組ベクトルを生成する手法は多数知られいているが特許文献3の方法などがある。次に、特徴空間計算部1313が番組ベクトル1306を用いて、番組特徴空間1307を構築する1403。1401〜1403の処理は、番組EPGデータが追加又は変更になる度に実行される。ユーザが番組再生部1333で、番組を視聴すると番組視聴履歴1304が更新され、番組録画部1334で録画予約すると、番組録画予約履歴1303が更新される。番組嗜好計算部1317は、番組録画予約履歴1303と番組視聴履歴1304を用いて番組嗜好1305を計算する。
【0057】
次に、ユーザが番組推薦を求めた時点で、行動モデル作成部1314が、番組視聴履歴1304を用いて、該ユーザの行動モデル1308を作成し1404、嗜好モデル作成部1315が番組嗜好1305を用いて該ユーザの嗜好モデル1315を作成する1405。次に、各未視聴番組1406に対し、前記行動モデルを基にユーザが番組を視聴する可能性の度合いを示す値を求め1318、行動予測値とし1407、前記嗜好モデルを元にユーザの番組に対する好き嫌いの度合いの予測値を求め1319、番組嗜好予測値とする1408。次に、求められた行動予測値と嗜好予測値を基に、意外性係数・嗜好予測値併用推薦指標計算部1302が推薦指標を計算し、該指標に基づき推薦番組決定部1316が、推薦番組リストを生成する1409。
【0058】
次に、図16を用いて、特徴空間計算部1313が行う番組特徴空間構築処理1403を説明する。番組ベクトル1603に対し、相関行列を用いた主成分分析を行う。主成分分析は、番組ベクトル1603とベクトル1602の内積で、番組ベクトルの各要素に対して互いに独立で分散が大きくなるようなベクトル1602を求める。該分析は、属性値の相関行列の固有値問題に帰着し、固有ベクトル1602が求められ、固有値1612は線形結合値主成分得点1601の分散を表す。
【0059】
ここで、固有値が1以上の固有ベクトルに対応する主成分のみを選択し一般にカイザー基準と呼ばれる、さらにアイテムが特徴空間上で一様に分布するよう、固有値の二乗根で主成分得点を割った値1511を特徴空間上の座標値とする。この場合、特徴空間の次元数は1以上の固有値数に等しい。
【0060】
次に、図17を用いて、番組嗜好1305を説明する。該データはユーザ1711〜1714を行とし、アイテム1701〜1704を列とする行列で表される。例えば、ユーザkがアイテムiを好きな度合いが5段階評価で「4」の場合、値kiは「4」となる。ユーザkのアイテムiに対する嗜好情報がない場合、値kiは「0」となる。
【0061】
次に、図18を用いて推薦番組決定部1316における推薦番組決定方法を説明する。まず、ユーザkの全ての未視聴番組に対し1801、意外性係数・嗜好距離併用推薦指標計算部1302で推薦指標を計算する1802。次に、求められた推薦指標の昇順で該番組をソートする1803。推薦指標が小さい順に推薦アイテムとする1804。この時、推薦アイテム数nをシステム管理者若しくはユーザが指定することも出来る。その場合、推薦指標が小さい順に上位n番目までのアイテムが決定される。
【0062】
次に、図19を用いて、番組嗜好1305の取得例を説明する。画面1901は録画機能付き番組受信再生部を持つテレビ1331の例であり、リモコン1910で操作する。画面には、録画された番組の一覧1902が表示されており、リモコンによって選択した番組1903のEPG等の詳細情報1904が表示される。選択した番組に対する1から5の5段階の嗜好1906を再生するボタン1807、削除するボタン1908が同時に表示される。画面内には文字列による番組検索窓1905があり、ユーザがリモコン操作によって検索文字列を入力する。
【0063】
ユーザがリモコン操作によって嗜好1906を操作すると、該嗜好が該番組の嗜好1305として取得される。また、ユーザが該番組を再生1907して且つ該番組の嗜好が最高の5でない場合は1だけ増やす。また、ユーザが該番組を消去1908した際に、該番組の視聴記録1204がなく且つ嗜好が最低の1でない場合は、該番組に対する嗜好を1だけ減らす。また、番組検索窓1905において入力された文字列をEPGデータに含む番組の嗜好が最高の5でない場合は1だけ増やす。これらの番組に対する嗜好及びその変更を随時録画機能付き番組受信再生部1331が番組嗜好1305へ反映する。
【符号の説明】
【0064】
111〜118…処理部
121…入出力部
102、321、403…アイテム属性値
103、521…アイテム選択履歴
104、521…アイテム嗜好
105…アイテム特徴空間
106…行動モデル
107…嗜好モデル
301〜304…アイテム属性
311〜314、501〜504…アイテム
511〜514…ユーザ
401…主成分
402…係数
411…特徴空間座標値
601…行動空間特徴行列
701…嗜好空間特徴行列
613、713…特徴空間位置ベクトル
801…推薦指標
802…意外性係数
805…嗜好予測値
806…嗜好距離
803…行動予測値
804…行動距離
1102…嗜好予測値下限
1112…行動予測値上限
1213…推薦アイテム範囲
1201…選択アイテム
1202…嗜好アイテム
1203…推薦アイテム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に格納されたアイテムの属性データと、ユーザがアイテムを選択した履歴データと、ユーザのアイテムの嗜好データとを保持し、前記属性データと前記履歴データと前記嗜好データとから推薦アイテムを決定し、該推薦アイテムをユーザへを提示する情報推薦方法であって、
前記属性データが示す属性に応じてアイテム特徴空間を構築し、
前記アイテム特徴空間内において、前記履歴データからユーザ行動モデルを作成するとともに、前記嗜好データからユーザ嗜好モデルを作成し、
前記アイテム特徴空間内において、前記履歴データから特定される未推薦アイテムに対して、前記ユーザ行動モデルを用いてユーザ行動予測値を算出し、
前記アイテム特徴空間内において、前記履歴データから特定される未推薦アイテムに対して、前記ユーザ嗜好モデルを用いて、ユーザ嗜好予測値を算出し、
ユーザ行動予測値とユーザ嗜好予測値とから、未推薦アイテムの推薦指標を算出し、
該指標を用いて推薦するアイテムを決定することを特徴とする情報推薦方法。
【請求項2】
請求項1の情報推薦方法において、
前記ユーザ行動予測値が大きいときは値が大きく、前記ユーザ嗜好予測値が大きいときは値が小さくなる意外性係数を求め、前記意外性予測係数が小さく、前記ユーザ嗜好予測値が大きいアイテムを、推薦アイテムとすることを特徴とする情報推薦方法。
【請求項3】
請求項2の情報推薦方法において、
前記意外性係数として、前記ユーザ行動予測値と前記ユーザ嗜好予測値との比を用いることを特徴とする情報推薦方法。
【請求項4】
請求項2の情報推薦方法において、
前記未推薦アイテムの、前記意外性係数と前記ユーザ嗜好予測値の逆数との積、または線形和を求め、該値の小さい順に前記推薦アイテムとすることを特徴とする情報推薦方法。
【請求項5】
請求項2の情報推薦方法において、
前記ユーザ行動予測値として、ユーザ行動モデルの中心からのマハラノビス距離の逆数を用い、前記ユーザ嗜好予測値として、前記ユーザ嗜好モデルの中心からのマハラノビス距離の逆数を用いることを特徴とする情報推薦方法。
【請求項6】
記憶部と、処理部と、入出力部とを備え、
前記記憶部は、アイテムの属性データと、アイテム選択履歴と、アイテム嗜好とを備え、
前記処理部は、特徴空間計算部と、行動モデル作成部と、嗜好モデル作成部と、アイテム行動予測値計算部と、アイテム嗜好予測値計算部と、意外性係数・嗜好予測値併用推薦指標計算部と、推薦アイテム決定部と、を備え、
前記特徴空間部は、前記記憶部のアイテムの属性データが示す属性に応じてアイテム特徴空間を構築し、記憶部に格納し、
前記行動モデル作成部は、前記履歴データからユーザ行動モデルを作成して記憶部に格納し、
前記嗜好モデル作成部は、前記嗜好データからユーザ嗜好モデルを作成して記憶部に格納し、
前記アイテム行動予測値計算部は、前記履歴データから特定される未推薦アイテムに対して、前記ユーザ行動モデルを用いてユーザ行動予測値を算出し、
前記アイテム嗜好予測値計算部は、前記履歴データから特定される未推薦アイテムに対して、前記ユーザ嗜好モデルを用いて、ユーザ嗜好予測値を算出し、
前記意外性係数・嗜好予測値併用推薦指標計算部は、ユーザ行動予測値とユーザ嗜好予測値とから、未推薦アイテムの推薦指標を算出し、
前記推薦アイテム決定部は、該指標を用いて推薦するアイテムを決定することを特徴とする情報推薦装置。
【請求項7】
請求項6の情報推薦装置において、
前記推薦指標は、ユーザ行動予測値が大きいときは値が大きく、ユーザ嗜好予測値が大きいときは値が小さくなる意外性係数とユーザ嗜好予測値とを組み合わせることにより、意外性予測値が小さく、ユーザ嗜好予測値が大きいアイテムに対応する値が小さくなる指標であることを特徴とする情報推薦装置。
【請求項8】
請求項7の情報推薦装置において、
前記意外性係数として、ユーザ行動予測値とユーザ嗜好予測値との比を用いることを特徴とする情報推薦装置。
【請求項9】
請求項7の情報推薦装置において、
前記推薦アイテム決定部は、未推薦アイテムの、意外性係数とユーザ嗜好予測値の逆数との積、または線形和を求め、該値の小さい順に推薦アイテムとすることを特徴とする情報推薦装置。
【請求項10】
請求項7の情報推薦装置において、
前記ユーザ行動予測値計算部は、ユーザ行動予測値として、ユーザ行動モデルの中心からのマハラノビス距離の逆数を用いて計算し、
前記ユーザ嗜好予測値計算部は、ユーザ嗜好予測値として、ユーザ嗜好モデルの中心からのマハラノビス距離の逆数を用いて計算することを特徴とする情報推薦装置。
【請求項11】
請求項1の情報推薦方法において、
前記ユーザ行動予測値の上限と前記ユーザ嗜好予測値の下限とを入力とし、前記特徴空間内で該行動予測値が該上限以下で且つ該嗜好予測値が該下限以上のアイテムを出力することを特徴とする情報推薦方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図12】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−98975(P2012−98975A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247001(P2010−247001)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】