説明

アイドラガイド装置

調整ボルト41を捻じ込むことで、トラックフレーム11上に配設したスライドプレート27上をテーパ状ブロック26が摺動する。テーパ状ブロック26の第1傾斜面26aと嵌合したレール23、24を介して軸受21がトラックフレーム11の上方に移動する。これにより、軸受21のフック部21c上のスライドプレート31とトラックフレーム11の下面に固着したスライドプレート33との間隙S2を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ式走行装置におけるアイドラガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルドーザ、油圧ショベル及びクローラクレーン等のクローラ式走行装置を備えた車両においては、一般に駆動側のスプロケット軸と従動側のアイドラ軸との軸間距離を設定して、所定のたるみを履帯に持たせている。実際の走行時においては、例えば、スプロケットと履帯との噛合い部等に土砂、岩石等が咬み込まれることがある。このとき、履帯の全周に亘って張力(以下、シューテンションと言う。)が発生する。
【0003】
この発生したシューテンションからクローラ式走行装置を守るため、アイドラを回転自在に支承するアイドラヨークをクローラ式走行装置の前後方向にスライド可能に支持するアイドラガイド装置及びアイドラに加わった衝撃力を吸収するアイドラクッション装置が、クローラ式走行装置に設けられている。
【0004】
アイドラクッション装置は、シューテンションが所定の張力値以下の状態では、アイドラ軸とスプロケット軸との軸間距離を保持して、咬み込んだ土砂、岩石等を圧壊して、スプロケットと履帯との噛合いズレ(以下、履帯跳びと言う。)や履帯外れを防止している。また、シューテンションが所定の張力値以上となったときには、アイドラをスプロケット側に後退(以下、リコイルと言う。)させて、クローラ式走行装置を保護するように構成されている。
【0005】
このようなアイドラクッション装置は、本願出願人に係わるグリースフィティングの位置決め装置(例えば、特許文献1参照。)などにおいて開示されており、従来からバネ箱とも呼ばれて多用されている装置である。図8に示すアイドラクッション装置50は、特許文献1の従来例として記載されたアイドラクッション装置であって、図7に示すようなクローラ式走行装置89のトラックフレ−ム82内に配置されている。
【0006】
図7に示すように、クローラ式走行装置89では、トラックフレーム82の後端部に図示せぬ駆動モータにより回転駆動されるスプロケット88が配設され、前端部には従動回転するアイドラ91が配設されている。トラックフレーム82の下部には、複数のトラックローラ86が配設され、上部には複数のキャリアローラ87が配設されている。履帯84は、トラックローラ86やキャリアローラ87に支持されて、スプロケット88とアイドラ91との間に掛け回されている。
【0007】
図8に示すように、アイドラクッション装置50の前方にはアイドラガイド装置80が取り付けられている。アイドラガイド装置80は、ヨ−ク部分81a及びサポ−ト部分81bよりなるヨ−クユニット81を備えており、ヨークユニット81をトラックフレーム82上で摺動可能に配設している。
【0008】
アイドラクッション装置50は、ヨ−ク81a部分に圧入したピストンロッド51を備えた調整用のシリンダ52を備えている。アイドラ83は、サポ−ト部分81bによって回転自在に支承されている。
【0009】
ピストンロッド51は片側にフランジ52aを有するシリンダ52の一側に内嵌され、シリンダ52の他端には内部にグリ−ス通路を有するグリ−スガイド55が固着されている。グリ−スガイド55はシリンダ52と一体に構成されている。
【0010】
前記フランジ52aにはリコイルスプリング53の一端側が当接し、リコイルスプリング53の他端側は、リコイルスプリング53のカバ−となる円筒状のスプリングケ−ス54のボトム54aに当接している。スプリングケ−ス54のボトム54aとは反対側の部分にはフランジ54bが設けられ、スプリングケ−ス54の蓋となるカバ−56が取付けられている。
【0011】
前記グリ−スガイド55の外周にはスプリングケ−ス54のボトム54aがスライド可能に外嵌されている。グリ−スガイド55の端部にはネジが設けられている。同ネジにナット57を螺合させて締付けることで、スプリングケ−ス54とグリ−スガイド55との位置関係を調整することができる。グリ−スガイド55の端面には、グリ−スフィティング58が設けられている。
【0012】
グリ−スガンを挿入する窓85は、トラックフレ−ム82に形成されている。ボトム54aの先端にはインロ−部54cが形成されており、前記トラックフレ−ム82に対して垂直に固着した支持板60の穴60aにインロ−部54cが嵌合されている。
【0013】
アイドラを回転自在に支承しているヨーク(上記特許文献1ではヨークユニットに相当)をトラックフレーム上で摺動案内するアイドラガイド装置としては、誘導輪(アイドラとも称する。以下では、アイドラと表記する。)案内装置(特許文献2参照。)などが開示されている。図9には、特許文献2に記載された従来例におけるアイドラガイド装置90の構成を示している。
【0014】
図9においてアイドラ91は、ブシュ93を介してアイドラ軸92に軸着されている。アイドラ軸92の両端には第1スライドプレート95及び第2スライドプレート96をそれぞれ有する一対の軸受94が配設され、ボルト97によりアイドラ軸92に固着されている。一対の軸受94は、アイドラ91を回転自在に支承しており、アイドラヨークの一部を構成している。
【0015】
一対のトラックフレーム105は、車両の左右に平行に配設されており、それぞれの上面には上面スライドプレート106が配設されている。また、各トラックフレーム105の外側面には側面案内板107が溶着されている。側面案内板107の両外側面は、トラックフレーム105の延設方向と平行に形成されている。一対のトラックフレーム105の両内側面にはそれぞれブラケット108が溶着固定されている。
【0016】
ブラケット108の下面には下面スライドプレート109が溶着されている。同下面スライドプレート109は、軸受94に形成したフック部102上の第2スライドプレート96と間隙S2を介して対峙している。
【0017】
軸受94の第1スライドプレート95はトラックフレーム105の上面スライドプレート106上に載置され、軸受94を介してアイドラ91をトラックフレーム105上に載架している。
【0018】
左右両軸受94の外側面にはシム100を介して案内面99を有するガイドブラケット98がボルト101により締着されている。ガイドブラケット98の案内面99とトラックフレーム105の側面案内板107との間には僅かな間隙S1 が存在するようにシム100により調整される。
【0019】
アイドラ91を支承したヨーク(図9の場合には、軸受94)は、トラックフレーム105の上面スライドプレート106上をアイドラ軸92の半径方向に摺動可能となっている。アイドラ91に対して図9の下方から上向きの力が加わった場合には、第2スライドプレート96がブラケット108に設けた下面スライドプレート109に当接して、アイドラ91が上方に移動することを防止する。アイドラ91に対してアイドラ軸92の軸方向への外力が加わった場合には、ガイドブラケット98の案内面99が側面案内板107に当接して軸方向への移動を防止する。
【0020】
特許文献2に記載されたアイドラガイド装置90などでは、車両走行中にアイドラ91がヨーク(軸受94)とともに摺動を繰り返して、軸受94の第1スライドプレート95及びトラックフレーム105の上面スライドプレート106が磨耗する。このとき、軸受94の第2スライドプレート96とトラックフレーム105のブラケット108に設けた下面スライドプレート109との間隙S2が大きくなってしまう。
【0021】
また、アイドラ91は常に下方への力が負荷されているとは限らず、例えば、不整地をクローラ式走行装置が走行している時などにおいては、アイドラ91は地面の凹凸によって上方に突き上げられる事態が発生する。また、車両の後進時においては、トラックフレーム105の上部を走行する履帯に対して張力が加わり、同上部を走行する履帯がスプロケットの後退回転により引っ張られて、アイドラは上方に持ち上げられてしまう。
【0022】
その結果、アイドラ91に対して図9の下方から上向きの力が加わり、第2スライドプレート96とブラケット108の下面スライドプレート109との間で衝突が発生し、第2スライドプレート96及び下面スライドプレート109が磨耗してしまう。
【0023】
クローラ式走行装置においては、車両に搭載した作業機に加わる付加荷重に対して車両の前後方向の安定性を維持するため、アイドラとスプロケットとをそれぞれ前後方向の安定性を維持するための支点として作用させている。このため、一般的にアイドラガイド装置としては、アイドラがアイドラ軸の軸方向へ移動するのを規制するガイド部材の磨耗に対して、アイドラが上下方向へ移動するのを規制するガイド部材の磨耗の方が大きくなっている。
【0024】
このようにして発生した磨耗によって、軸受94の第2スライドプレート96とトラックフレーム105の下面スライドプレート109との間隙S2が大きくなると、同間隙S2を移動して軸受94とトラックフレーム105とが大きく衝突することになる。
【0025】
これによって、軸受94とトラックフレーム105との衝突による打音が発生して走行騒音が増大する。また、アイドラ軸92と軸受94との間でガタが発生し、アイドル軸92と軸受94との間に注入している潤滑油の油漏れ等を誘発してしまう問題が生じてしまう。
【0026】
アイドラガイド装置における前記間隙を調整する手段は、クローラ式走行装置には備えられていない。このため、磨耗したガイドプレートを交換しない限り、間隙は増大したままの状態となる。その結果、走行騒音が大きなクローラ式走行装置となっていた。
【特許文献1】実願平4−41170号(実開平5−94078号)のマイクロフィルム
【特許文献2】実願平3−104649号(実開平5−40090号)のCD−ROM
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明では、上述の従来からの問題点を解決するものであり、トラックフレームの下面に設けた案内面とアイドラヨークにおける軸受の案内部との間隙、即ち、トラックフレームの下面に設けた下面スライドプレートと下面スライドプレートに対峙するアイドラヨークのガイドプレートとの間隙S2の調整を、容易化するとともに低い走行騒音を実現し、アイドラガイド装置における潤滑油の油漏れが防止されたアイドラガイド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本願発明の課題は、本願請求の範囲第1〜5項に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明では請求の範囲第1項に記載したように、トラックフレームの上面及び下面にそれぞれ設けられ、クローラ式走行装置におけるアイドラの半径方向の摺動面となる第1案内面及び第2案内面を有するアイドラガイド装置において、前記アイドラを回転自在に支承するアイドラヨークが、前記トラックフレームの上面に設けた前記第1案内面に載架され、前記トラックフレームの下面に設けた前記第2案内面と同第2案内面に対峙する前記アイドラヨークのガイドプレートとの間隙を調整する調整機構が、前記アイドラヨークに形成されてなることを最も主要な特徴とする。
【0029】
また、請求の範囲第2項に記載したように、アイドラヨークの構成として第1傾斜面を有したテーパ状ブロックと、同第1傾斜面に重ねて面摺接させたアイドラヨークとを有した構成とし、テーパ状ブロックを前記第1案内面上で摺動させて、アイドラヨークをトラックフレームに対して垂直方向に変位させる調整機構をアイドラヨークに形成したことを主要な特徴としている。
【0030】
更に、請求の範囲第3〜5項に記載したように、テーパ状ブロックを前記第1案内面上で摺動させる作動手段を前記調整機構に設けたことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0031】
本願発明では、トラックフレームの下面に設けた第2案内面と同第2案内面に対峙する前記アイドラヨークのガイドプレートとの間隙が、磨耗により増大しても、アイドラヨークに形成した調整機構によって前記間隙を簡単に調整することができる。しかも、調整機構がアイドラヨークに形成されているので、クローラ式走行装置を備えた車両が働いている作業現場においても、容易に前記間隙を調整することができる。
【0032】
前記間隙を調整する調整機構としては、請求の範囲第2項に記載したように第1傾斜面を有したテーパ状ブロックをトラックフレームの上面に設けた第1案内面上で摺動させ、第1傾斜面を利用してアイドラヨークをトラックフレームに対して垂直方向に変位させる機構とすることができる。テーパ状ブロックの第1傾斜面によるくさび作用を利用した簡単な調整機構によって、質量の大きなアイドラも容易に持ち上げることができ、前記間隙の調整を簡単に行うことができる。
【0033】
前記間隙を調整する調整機構としては、請求の範囲第2項に記載したような調整機構に限定されるものではなく、アイドラヨークのガイドプレートに第2案内面に対して接離可能な案内移動部材を配設した構成とすることもできる。同案内移動部材を前記ガイドプレートに対して接近させた接近量を調整することで、前記案内部材と第2案内面との間隙を調整できる。
また、前記間隙を調整することのできる構成であれば他の構成を用いて、前記調整機構とすることもできる。
【0034】
請求の範囲第2項に記載したようなテーパ状ブロックを用いた場合には、テーパ状ブロックを第1案内面上で摺動させる作動手段を用いることができる。作動手段としては、テーパ状ブロックを押圧する調整ボルトとテーパ状ブロックを調整ボルト側に押圧するバネとを備えた構成や、調整ボルトの代わりにシリンダ装置を用いた構成を用いることができる。
【0035】
調整ボルトによるテーパ状ブロックの位置調整は、手動によって調整ボルトを回転させることも、駆動モータ等を利用して調整ボルトを回転させて行うこともできる。駆動モータとして制御モータを用いたときには、遠隔操作により、例えば、操縦席からの遠隔操作により、テーパ状ブロックの摺動位置の調整を行わせることができる。
【0036】
シリンダ装置を用いた作動手段の場合には、シリンダ装置としてグリースシリンダを用いることも、油圧ポンプからの吐出圧を利用した油圧シリンダを用いることもできる。油圧シリンダを用いたときには、遠隔操作によりテーパ状ブロックの摺動位置の調整を行わせることができる。
【0037】
作動手段を用いることにより、テーパ状ブロックの摺動及びテーパ状ブロックの位置決めが容易になり、作動手段で移動させたテーパ状ブロックの摺動位置に応じて、前記間隙を調整できる。
【0038】
本願発明によって、ガイドプレート、第1案内面及び第2案内面等の磨耗によって、アイドラガイド装置の案内部における間隙が増大しても、これを容易に修正することができる。しかも、アイドラガイド装置の案内部における間隙の修正を車両が働いている作業現場において、容易に行うことができるようになる。
【0039】
これによって、間隙調整の容易化、アイドラ軸と軸受とのガタ付きの防止、走行騒音の低減等を実現するアイドラガイド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、アイドラガイド装置及びアイドラクッション装置を適用したクローラ式走行装置を有するブルドーザの側面図である。(実施例)
【図2】図2は、図1のP部詳細図である。(実施例1)
【図3】図3は、図2のM−M断面後面図である。(実施例1)
【図4】図4は、アイドラガイド装置の間隙調整前の側面図である。(実施例1)
【図5】図5は、アイドラガイド装置の間隙調整後の側面図である。(実施例1)
【図6】図6は、他の実施例における図1のP部詳細図である。(実施例2)
【図7】図7は、アイドラガイド装置を適用したクローラ式走行装置の側面図である。(従来例)
【図8】図8は、アイドラガイド装置及びアイドラクッション装置の組立構造の側面図である。(従来例)
【図9】図9は、アイドラガイド装置の断面図である。(従来例)
【符号の説明】
【0041】
1 ブルドーザ
10 クローラ式走行装置
11 トラックフレーム
12 スプロケット
13 アイドラ
17 履帯
18 アイドラ軸
20 アイドラガイド装置
21 軸受
21a、b フランジ部
21c フック部
23、24 レール
23a、24a 溝
26 テーパ状ブロック
26a 第1傾斜面
27、28 スライドプレート
30 アイドラヨーク
30a 第2傾斜面
31 スライドプレート
32 ブラケット
33 スライドプレート
34 第1案内面
35 第2案内面
36 ガイドブラケット
36a ガイド面
39 ガイドプレート
41 調整ボルト
42 ロックナット
43 バネ
44 グリースシリンダ
45 ピストン
46 グリースニップル
50 アイドラクッション装置
51 ピストンロッド
52 シリンダ
53 リコイルスプリング
54 スプリングケース
54a ボトム
54b フランジ
54c インロー部
55 グリースガイド
58 グリースフィッティング
60 支持板
80 アイドラガイド装置
81 ヨークユニット
81a ヨーク部分
81b サポート部分
82 トラックフレーム
83 アイドラ
84 履帯
85 窓
88 スプロケット
89 クローラ式走行装置
90 アイドラガイド装置
91 アイドラ
92 アイドラ軸
94 軸受
95 第1スライドプレート
96 第2スライドプレート
98 ガイドブラケット
99 案内面
102 フック部
105 トラックフレーム
106 上面スライドプレート
107 側面案内板
108 ブラケット
109 下面スライドプレート
S1、S2、S2’ 間隙
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の好適な実施の形態によるアイドラガイド装置を、ブルドーザのクローラ式走行装置に配設した例を用いて添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明のアイドラガイド装置は、以下で説明する実施例に限定されるものではなく、トラックフレームの下面に設けた第2案内面35と同第2案内面35に対峙する前記アイドラヨークのガイドプレートとの間隙を調整することができる構成であれば、多様な構成のものを採用することができる。
【実施例1】
【0043】
図1は、本願発明に係わるアイドラガイド装置20を配設したクローラ式走行装置10を有するブルドーザ1の側面図である。ブルドーザ1は中央部に前後方向に延びた長いフレーム2を備え、同フレーム2の左右両側にはそれぞれクローラ式走行装置10が配設されている。フレーム2の上部には操縦席3等が搭載され、フレーム2の前部には作業機4が取り付けられている。
【0044】
クローラ式走行装置10のトラックフレーム11の前端部には、アイドラ13がアイドラガイド装置20を介して前後方向に移動可能及び回転可能に支承されている。アイドラガイド装置20は、アイドラクッション装置50によって支承され、アイドラ13をスプール側に移動させる外力が加わったときに、同外力に対する緩衝機能を有している。
【0045】
クローラ式走行装置10のトラックフレーム11の後端部には、図示せぬ駆動エンジンにより回転駆動されるスプロケット12が配設されている。スプロケット12とアイドラ13との間には履帯17が掛け回されている。スプロケット12とアイドラ13との間に掛け回された履帯17のうちでトラックフレーム11の下方側を走行する履帯17、即ち、地面に接触する側を走行する履帯17は複数のトラックローラ15によって支持されている。
【0046】
また、スプロケット12とアイドラ13との間に掛け回された履帯17のうちでトラックフレーム11の上方側を走行する履帯17、即ち、地面から離れた側を走行する履帯17はキャリアローラ16によって支持されている。
【0047】
アイドラクッション装置50の前方にはアイドラガイド装置20が取り付けられている。アイドラガイド装置20はトラックフレーム11上に載置されたテーパ状ブロック26と、テーパ状ブロック26上に載置したアイドラヨーク30とを備えている。アイドラヨーク30及びテーパ状ブロック26は、アイドラクッション装置50のピストンロッド51の作動により、図1の左右方向に沿ってトラックフレーム11上を摺動することができる。アイドラ13は、アイドラヨーク30によって回転自在に支承されている。
【0048】
図4、図5に示すように、アイドラクッション装置50は、アイドラヨ−ク30に当接したピストンロッド51を備えた調整用のシリンダ52を備えている。尚、ピストンロッド51とアイドラヨーク30とを一体的に作動させるように構成することも、ピストンロッド51がアイドラヨーク30に当接しているだけの構成とすることもできる。
【0049】
ピストンロッド51は片側にフランジ52aを有するシリンダ52の一側に内嵌され、シリンダ52の他端には内部にグリ−ス通路を有するグリ−スガイド55が固着されている。グリ−スガイド55はシリンダ52と一体に構成されている。
【0050】
前記フランジ52aにはリコイルスプリング53の一端側が当接し、リコイルスプリング53の他端側は、リコイルスプリング53のカバ−となる円筒状のスプリングケ−ス54のボトム54aに当接している。スプリングケ−ス54のボトム54aとは反対側の部分にはフランジ54bが設けられ、スプリングケ−ス54の蓋となるカバ−56が取付けられている。
【0051】
前記グリ−スガイド55の外周にはスプリングケ−ス54のボトム54aがスライド可能に外嵌されている。グリ−スガイド55の端部にはネジが設けられている。同ネジにナット57を螺合させて締付けることで、スプリングケ−ス54とグリ−スガイド55との位置関係を調整することができる。グリ−スガイド55の端面には、グリ−スフィティング58が設けられている。
【0052】
グリ−スガンを挿入する窓85は、トラックフレ−ム11に形成されている。ボトム54aの先端にはインロ−部54cが形成されており、前記トラックフレ−ム11に対して垂直に固着した支持板60の穴60aにインロ−部54cが嵌合されている。
【0053】
履帯17の張りを強めるには、図示せぬスプロケットとアイドラ13との軸間距離を大きくすることにより行える。このためには、窓85から挿入したグリ−スガンをグリ−スフィティング58に嵌合させ、グリ−スガイド55を通してシリンダ52にグリ−スを注入する。これにより、ピストンロッド51が突出してアイドラ83が押し出され、前記軸間距離を大きくすることができる。
【0054】
履帯17の張りを弱めるには、アイドラ13をスプロケット側に移動させることにより行える。このためには、グリ−スをシリンダ52から排出して、ピストンロッド51を縮小させ、履帯17に加わっている張力によってアイドラ13をスプロケット側に引き戻すことで、前記軸間距離を小さくすることができる。
【0055】
アイドラ13に対しては、常にリコイルスプリング53の付勢力が加わっている。このため、アイドラ13が外部から大きな衝撃力を受けて、アイドラ13がスプロケット側に変位するときには、前記衝撃力をリコイルスプリング53によって吸収することができる。
【0056】
尚、図1では引き出し線を増やすと見づらくなるので、図4で示したアイドラクッション装置50で用いた符号を全て記載しているものではない。また、アイドラクッション装置50の構成は、本願発明の本質をなすものではなく、アイドラの摺動に対してクッション作用を奏することのできるアイドラクッション装置であれば、他の公知の構成を用いることができる。
【0057】
図3〜図5に示すように、アイドラガイド装置20はトラックフレーム11上に載置されたテーパ状ブロック26と、テーパ状ブロック26の第1傾斜面26aに載置したアイドラヨーク30とを備えている。アイドラヨーク30及びテーパ状ブロック26は、アイドラクッション装置50のピストンロッド51の作動により、図4、図5の左右方向に沿ってトラックフレーム11上を摺動することができる。
【0058】
ピストンロッド51がアイドラヨーク30に当接しているだけの構成の場合には、ピストンロッド51の伸張によりアイドラヨーク30及びテーパ状ブロック26は図4、図5の左方向に摺動する。また、ピストンロッド51の縮小によりピストンロッド51の先端とアイドラヨーク30の当接部位との間に図示せぬ間隙が形成されても、図示せぬ履帯から加わったアイドラ13を図4、図5の右方向に押圧する押圧力によって前記隙間がなくなり、リコイルスプリング55を圧縮する方向に移動する構成とすることができる。
【0059】
図2、図3に示すように、アイドラガイド装置20はアイドラヨーク30と一対のトラックフレーム11の上面に配設したスライドプレート27上を摺動する一対のテーパ状ブロック26とを備えている。アイドラヨーク30には一対の軸受21が形成され、各軸受21はアイドラ軸18に軸着したブッシュ19を介してアイドラ13を回転自在に支承している。
【0060】
アイドラ軸18と各軸受21とのアイドラ軸方向に対する位置決めは、例えば、アイドラ軸18に形成した周方向の溝と同溝に挿入した一対のボルト22との係合によって行うことができる。各ボルト22はそれぞれの軸受21に螺合しており、アイドラ軸18の溝内に出没させることができる。
【0061】
各軸受21には、外側に向かって張出したフランジ部21a、21b及びフック部21cが形成されている。フランジ部21a、21bの下面には、クローラ式走行装置10の前後方向に傾斜する傾斜面24cが形成されている。
【0062】
フランジ部21a、21bの下面に形成した傾斜面24cには、レール23、24がボルト25を介して締結されている。レール23、24には、クローラ式走行装置10の前後方向に傾斜する第2傾斜面30aを有する溝23a、24aが形成されている。
【0063】
レール23、24の溝23a、24aには、第1傾斜面26aと底面26bとでくさび形の第1傾斜面26aを形成したテーパ状ブロック26が嵌着しており、前記第2傾斜面30aに沿って第1傾斜面26aを摺動させることができる。第1傾斜面26aと第2傾斜面30aとは平行な傾斜面となっている。
【0064】
テーパ状ブロック26の底面26bにはスライドプレート28が固着され、同スライドプレート28はトラックフレーム11の上面に固着したスライドプレート27上に載置している。
【0065】
前記フック部21cの上面にはスライドプレート31が固着され、同スライドプレート31はトラックフレーム11の内側に形成したブラケット32の下面に固着したスライドプレート33と対峙して配設されている。スライドプレート31とスライドプレート33との間には間隙S2が形成されている。
【0066】
尚、スライドプレート33を固着したブラケット32の下面は、ブラケット32をトラックフレーム11の構成部材の一部と見なして、本願明細書、請求の範囲及び要約においてはトラックフレーム11の下面という表現でも記載している。
【0067】
これにより、テーパ状ブロック26によって軸受21を有するアイドラヨーク30を支承して、テーパ状ブロック26とアイドラヨーク30とを有するアイドラヨーク30を、トラックフレーム11の上面に固着したスライドプレート27上に載架することができる。
【0068】
また、テーパ状ブロック26をスライドプレート27上で摺動させることにより、アイドラヨーク30をトラックフレーム11に対して上方に持ち上げることができる。これにより、アイドラヨーク側のスライドプレート31とトラックフレーム側のスライドプレート33との間隙S2を調整することができる。
【0069】
尚、本発明では、トラックフレーム11の上面に固着したスライドプレート27の案内面を第1案内面34とし、トラックフレーム11に形成したブラケット32の下面に固着したスライドプレート33の案内面を第2案内面35と称している。
【0070】
図3に示すように左右両軸受21に形成したフランジ部21a、21bの外側面には、シム37を介してガイドブラケット36がボルト38により締着されている。ガイドブラケット36のガイド面36aとトラックフレーム11の側面に固着したガイドプレー39との間は、僅かな間隙S1が存在するようにシム37の枚数により調整されている。
【0071】
アイドラ13に対してアイドラ軸18の軸方向への外力が加わったときには、ガイドブラケット36のガイド面36aがガイドプレート39に当接して、アイドラ13のアイドラ軸方向への移動を防止している。
【0072】
テーパ状ブロック26の位置を調整する作動手段としては、図2に示すようにテーパ状ブロック26を図2の左方向に押圧する調整ボルト41と、テーパ状ブロック26を調整ボルト側に付勢するバネ43とから構成されている。
【0073】
調整ボルト41は、レール23の突起部23bに穿設したネジ孔23cに螺合しており、調整ボルト41の突起部23bからテーパ状ブロック26への突出量はロックナット42によって固定することができる。
【0074】
バネ43は、軸受21とテーパ状ブロック26との間に配設されている。バネ43の付勢力によって、テーパ状ブロック26が図2における左方向へ不必要な移動を行うのを抑制することができる。即ち、テーパ状ブロック26の遊びを抑制することができる。また、調整ボルト41を緩めて調整ボルト41を図5の状態から図4の状態、即ち、テーパ状ブロック26から離れる方向に移動させたとき、バネ43の付勢力によってテーパ状ブロック26は調整ボルト41の移動に追従することができる。
【0075】
調整ボルト41とバネ43とによって、テーパ状ブロック26をスライドプレート27上で摺動させる作動手段が構成されている。
【0076】
図4に示す状態から、スライドプレート31及びスライドプレート33や、スライドプレート27及びスライドプレート28が磨耗すると、アイドラヨーク側のスライドプレート31とトラックフレーム側のスライドプレート33との間隙S2が、拡大する。
【0077】
このとき、図5に示すように調整ボルト41を手動で回転させ、前記ネジ孔23c方向に捻じ込んで、テーパ状ブロック26を図4の左方向へ摺動させる。 テーパ状ブロック26が図4の左方向へ摺動することにともなって、アイドラヨーク30は図4の上方に移動する。
【0078】
そして、図5に示すようにアイドラヨーク30側のスライドプレート31とトラックフレーム側のスライドプレート33との間隙S2’を縮小させた状態に調整することができる。スライドプレート31とスライドプレート33との間隙S2’が最適の間隙になると、ロックナット42を回転させて調整ボルト41の位置を固定する。
【0079】
このとき、アイドラクッション装置50のピストンロッド51の突出量は変化しておらず、アイドラクッション装置50によるアイドラヨーク30に対する押圧力は一定の状態となっている。
【0080】
調整ボルト41は手動にて回転させる構成について説明を行ったが、駆動モータ等を介して調整ボルト41を回転させることもできる。更に、駆動モータとして回転量を制御することのできる制御モータを用いることで、調整ボルト41の回転量を制御することができ、アイドラヨーク側のスライドプレート31とトラックフレーム側のスライドプレート33との間隙S2を遠隔制御にて調整することができる。
【実施例2】
【0081】
図6には、本願発明に係わる他の実施例を示している。実施例1では、テーパ状ブロック26を摺動させる作動手段として、調整ボルト41とバネ43とによる作動手段を説明した。これに対して、実施例2における作動手段で、調整ボルト41の代わりにグリースシリンダ44を用いた作動手段を用いている。
【0082】
実施例2における作動手段として、グリースシリンダ44を用いた構成を除いた他の構成は、実施例1における構成と同様の構成となっている。そのため、実施例2における説明としては、実施例1と同様の構成については実施例1で用いたと同じ部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。実施例1と異なる構成を中心に以下で説明する。
【0083】
図6において、作動手段としてのグリースシリンダ44は、軸受21にブラケット48を介して取り付けられている。ピストン45の先端部はテーパ状ブロック26に当接している。ピストン45の伸張によりテーパ状ブロック26は、スライドプレート27上を図6の左方向に摺動することができる。
【0084】
バネ43によって、テーパ状ブロック26は図6の左方向への不必要な移動、即ち、遊びが抑制されている。また、ピストン45が縮小したときには、バネ43の付勢力によってテーパ状ブロック26をピストン45の縮小動作に追従して図6の右方向に移動させることができる。
【0085】
グリースシリンダ44のバルブネジ47を緩めて、グリースニップル46にグリースを注入することで、ピストン45を伸張させることができる。また、グリースニップル46からグリースを抜き取ることで、ピストン45を縮小させることができる。
【0086】
グリースシリンダ44を用いたことにより、テーパ状ブロック26を摺動させる押圧力を高めることができ、テーパ状ブロック26の摺動を滑らかに行わせることができる。また、グリースシリンダ44の代わりに油圧シリンダを用いることもできる。油圧シリンダを遠隔制御することで、アイドラヨーク側のスライドプレート31とトラックフレーム側のスライドプレート33との間隙S2を遠隔制御により調整することができる。
【0087】
本願発明によって、クローラ式走行装置を備えた車両の作業現場においても、容易にアイドラヨーク側のスライドプレート31とトラックフレーム側のスライドプレート33との間隙S2を調整することができるようになる。これにより、アイドラ軸と軸受とのガタ付きの防止や、走行騒音の低減等を作業現場において容易に実現させることができる。
【0088】
しかも、前記間隙を調整するためには、従来のもののようにアイドラを取外して、磨耗部品の溶接補修や磨耗部品の交換を行う等を行う必要がない。このため、従来のものにおいては、前記間隙を調整するため、質量の大きなアイドラを取外すことのできる設備がない作業現場においても調整作業を容易に行うことができるようになる。
【0089】
このため、クローラ式走行装置を備えた車両の作業現場において、前記間隙を調整することが必要になればいつでも前記間隙の調整を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、一対のガイド面間に配設した摺動部材を一方のガイド面に摺接させ、他方のガイド面との間に間隙を持たせているガイド装置等において、前記間隙を調整することが必要となるガイド装置等に対して本願発明の技術を適用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックフレームの上面及び下面にそれぞれ設けられ、クローラ式走行装置におけるアイドラの半径方向の摺動面となる第1案内面及び第2案内面を有するアイドラガイド装置において、
前記アイドラを回転自在に支承するアイドラヨークが、前記トラックフレームの上面に設けた前記第1案内面に載架され、
前記トラックフレームの下面に設けた前記第2案内面と同第2案内面に対峙する前記アイドラヨークのガイドプレートとの間隙を調整する調整機構が、前記アイドラヨークに形成されてなることを特徴とするアイドラガイド装置。
【請求項2】
請求の範囲第1項記載のアイドラガイド装置において、
前記アイドラヨークは、第1傾斜面を有したテーパ状ブロックと、同第1傾斜面に摺接し、かつ前記第1傾斜面と平行な第2傾斜面とを備えたアイドラヨークであって、
前記調整機構が、前記テーパ状ブロックを前記第1案内面上で摺動させて、前記アイドラヨークを前記トラックフレームに対して垂直方向に変位させる機構となっているアイドラガイド装置。
【請求項3】
請求の範囲第2項記載のアイドラガイド装置において、
前記調整機構が、前記テーパ状ブロックを前記第1案内面上で摺動させる作動手段を備えてなるアイドラガイド装置。
【請求項4】
請求の範囲第3項記載のアイドラガイド装置において、
前記作動手段が、前記テーパ状ブロックを前記第1傾斜面の下り傾斜方向側に押圧し、かつ前記アイドラヨークに螺合した調整ボルトと、前記テーパ状ブロックを前記調整ボルト側に付勢するバネとを備えてなるアイドラガイド装置。
【請求項5】
請求の範囲第3項記載のアイドラガイド装置において、
前記作動手段が、前記テーパ状ブロックを前記第1傾斜面の下り傾斜方向側に押圧し、かつ前記アイドラヨークに配設したシリンダ装置と、前記テーパ状ブロックを前記シリンダ装置側に付勢するバネとを備えてなるアイドラガイド装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【国際公開番号】WO2005/049412
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515605(P2005−515605)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016990
【国際出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)