説明

アイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置

【課題】 自動車、特にタクシーなど客待ち時や休憩時などに、乗車室内の適正温度確保のために長時間のアイドリングを行っている自動車のアイドリングストップを推進し、もって温室効果ガスの削減と燃料エネルギーの節約を図るための、アイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置を提供すること。
【解決手段】 バッテリーから電気の供給を受け駆動する小型省電力のヒートポンプ式又はスターリング式の冷・暖房システム装置一体型ユニット1を自動車の余剰空間に着脱自在に設置するとともに、乗車室内側通風路と車外側通風路等を車体既存のサービスホール等を利用し着脱自在に接続することにより、現在使用中の自動車にも簡単に実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特にタクシーなど客待ち時や休憩時などに、乗車室内の適正温度確保のために長時間のアイドリングを行っている自動車のアイドリングストップを推進するための、アイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の乗車室内温度調整のための冷・暖房装置は、ハイブリッドカーや電気自動車など一部の自動車を除きエンジンにより駆動されているため、乗車室内の温度調整が特に必要な夏期や冬期にアイドリングストップを行うと、乗車室内の適正温度確保のための温度調整が出来なくなる問題がある。
【0003】
この問題を解決する手段として、アイドリングストップ時にサブバッテリーにより空調機又は保温機を駆動することによる、アイドリングストップ時の車両空調及び保温方法並びに車両空調及び保温システムの方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、蓄冷式冷房装置による車内の冷房方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】 特開2007−50739
【特許文献2】 特開2006−137393
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた従来のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置は、夏期や冬期におけるタクシー運転手等の車内での客待ち時や休憩時、長距離トラックなどの長距離運転手等の車内での休憩時など、長時間のアイドリングストップには対応していないものであった。
【0005】
特にタクシーにおいては、客待ち後に乗客を乗せた際、車内が快適な温度に調整されている必要があるため、ほとんどアイドリングストップが実行されてなく、エンジンをかけ従来どおりエアコンによる冷房やヒーターによる暖房が行われているのが現実であり、アイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置は装備されていない。
【0006】
本発明は、このような従来のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置が有していた問題を解決しようとするものであり、アイドリングストップを推進しもって温室効果ガスの削減と燃料エネルギーの節約を図るための、アイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は上記目的を達成するために自動車のトランクルームなどの余剰空間を設置箇所とし、乗車室内空間とを乗車室内吸入口と乗車室内吹出口で形成する通風路で接続すると共に、外部空気取入口と車外への排熱排出口で形成する通風路及び排水用ドレンパイプを設けたものである。
【0008】
また、第2の課題解決手段は、地域により異なる温度調整の使用目的により、冷暖房能力又は冷房能力、暖房能力のいずれかの能力を持ち、併せて制御機能及び送風機能を有するものである。
【0009】
また、第3の課題解決手段は、自動車の発電機より電気の供給を受け蓄電された車載バッテリーから、設置箇所に設けた電気供給部より電気の供給を受け駆動する、ヒートポンプ式又はスターリング式の冷・暖房システム装置である。
【0010】
また、第4の課題解決手段は、使用環境条件により、前記車載バッテリーに加えるかもしくは単独で自動車の発電機及び太陽電池より電気の供給を受け蓄電された補助バッテリーから電気の供給を受けるものである。
【0011】
また、第5の課題解決手段は、操作スイッチ部は電気配線により運転席周辺に設置するか又はリモコンによる遠隔操作とするものである。
【0012】
さらに、第6の課題解決手段は、冷・暖房システム装置一体型ユニットとし、前記設置箇所及び各通風路、排水用ドレンパイプ、電気供給部、操作スイッチ電気配線に対し着脱自在に設置接続されているものである。
【0013】
上記第1の課題解決手段による作用は次のとおりである。すなわち、自動車車体に冷・暖房システム装置一体型ユニットを取り付ける空間さえ確保すれば、各通風路及び排水用ドレンパイプの配管は取り回しが簡単であり設置の自由度が高いため、冷・暖房システム装置一体型ユニットは車体内部のみでなく車体外部、例えばトランク上部や屋根などに収納ボックスを設け設置することができる。
【0014】
また、第2の課題解決手段による作用は、すなわち、日本国内においても一部地域、例えば沖縄や北海道では気候条件が著しく異なるため、あえて冷・暖房の両能力を持つ必要はなく、いずれか一方の能力を持つことにより温度調整の使用目的を達成することができる。
【0015】
また、第3の課題解決手段による作用は、すなわち、電気の供給を受け駆動する小型省電力のヒートポンプユニット及びスターリング冷凍機は、すでに国内電気メーカーにより実用化されているとともに、さらなる研究開発が進められていることから、本発明の冷・暖房システム装置として利用することができる。
【0016】
また、第4の課題解決手段による作用は、すなわち、アイドリングストップが長時間にわたる場合や極暑時極寒時に使用する場合は車載バッテリーの蓄電不足を招くことから、補助バッテリーを追加するか、もしくは単独した補助バッテリーから電気の供給を受けることにより、車載バッテリーの蓄電不足によるエンジンの再始動不能を防止することができる。
【0017】
また、第5の課題解決手段による作用は、すなわち、冷・暖房システム装置一体型ユニットの設置箇所に左右されず、簡単な電気配線または電気配線作業を行うことなく運転手が自由に操作することができる。
【0018】
更に、第6の課題解決手段による作用は、すなわち、冷・暖房システム装置一体型ユニットを自動車車体から着脱自在とすることにより、使用しない時期や本体メンテナンスの際に簡単に取り外すことができるうえ他の自動車と共有することができる。
【発明の効果】
【0019】
上述したように本発明のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置は、自動車への設置箇所の自由度が高く、さらに温度調整の使用目的にあった能力が選択できるとともに、長時間のアイドリングストップに対応することができる、冷・暖房システム装置一体型ユニット着脱自在のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0021】
図1においては本発明の一実施形態を示した全体構成図であり、主な機能部品の自動車への配置例を示している。図2は冷・暖房システム装置一体型ユニットの通風路の模式図であり、空気の流れを示している。図3は冷・暖房システム装置一体型ユニットへの電気供給系統の系統図であり、電気の流れを示している。図4は冷・暖房システム装置一体型ユニットの着脱自在箇所の概略箇所図であり、着脱自在箇所を示している。
【0022】
図1は、乗用自動車特にタクシーに一般的に採用されているセダンタイプの自動車に本発明を実施した場合の、主な機能部品の配置例を示している。トランクルーム14に設置した冷・暖房システム装置一体型ユニット1と乗車室内空間13とを、乗車室内吸入口2と乗車室内吹出口3で形成する通風路で接続する。また、外部空気取入口4と排熱排出口5で形成する通風路及び排水用ドレンパイプ6を設置する。その際、各通風路及び排水用ドレンパイプ6は、自由に曲げることのできるフレキシブルパイプを使用し、自動車車体12の既設サービスホールなどの空洞部を利用しダクト配管すれば、自動車車体12の改造は内装の穴あけ程度の改造で済む。
【0023】
図2は、冷・暖房システム装置一体型ユニット1の通風路の空気の流れを示している。なお、冷・暖房システム装置一体型ユニット1は図示していない制御機能と送風機能及び小型省電力のヒートポンプ式ユニット又はスターリング冷凍機により構成されている。現時点で適用可能な小型省電力ヒートポンプ式ユニットは、例えば松下電器産業株式会社の超小型ヒートポンプユニットが適用できる。また、スターリング冷凍機は、例えばツインバード工業株式会社のフリー・ピストン・スターリング・クーラーが適用できる。
【0024】
乗車室内吸入口2及び乗車室内吹出口3の先端部は、乗車室内空間13内においてはダクトの取回しにより自由に設置できる。
【0025】
外部空気取入口4の先端部は、自動車車体12の外部又はトランクルーム14に設置する。ただし、冷・暖房システム装置一体型ユニット1にヒートポンプ式冷暖房システムを使用した場合は、冷房時はトランクルーム14に設置し外部空気取入口4の先端部周辺空間を断熱の上蓄冷材などで冷却しておけば冷房効率を上げることができる。また、暖房時は外部空気取入口4の先端部をエンジンルーム15に設置しエンジンルーム15内の蓄温熱を利用すれば暖房効率を上げることができる。
【0026】
図3は、冷・暖房システム装置一体型ユニット1への自動車の発電機7からの電気の流れを示している。図3(a)は発電機7より電気の供給を受け蓄電された車載バッテリー8より冷・暖房システム装置一体型ユニット1へ電気を供給できる。図3(b)は車載バッテリー8の蓄電不足を補うため、車載バッテリー8に加え発電機7及び太陽電池10より電気の供給を受け蓄電された補助バッテリー9より冷・暖房システム装置一体型ユニット1へ電気を供給できる。図3(c)は車載バッテリー8の蓄電は利用せず、発電機7及び太陽電池10より電気の供給を受け蓄電された補助バッテリー9より冷・暖房システム装置一体型ユニット1へ電気を供給できる。
【0027】
なお、電気供給のための電気配線は、電気コード自体がフレキシブルかつ小径なため自動車車体12の既設サービスホールなどの空洞部を利用し配線すれば自由かつ簡単に設置できる。
【0028】
図4は、冷・暖房システム装置一体型ユニット1の着脱自在箇所を示している。冷・暖房システム装置一体型ユニット1は自動車車体12に対し確実に固定できかつ簡単に着脱できる構造である設置箇所17を介し設置する。乗車室内吸入口接続18と乗車室内吹出口接続19と外部空気取入口接続20と排熱排出口接続21と排水用ドレンパイプ接続22は隙間なく確実に接続できかつ簡単に着脱できる。電気供給部接続23はカプラー式やソケット式などにより確実に接続できかつ簡単に着脱できる。操作スイッチ電気配線接続24はカプラー式などにより確実に接続できかつ簡単に着脱できる。なお、操作をリモコンによる遠隔操作とする場合は不要である。
【0029】
以上のように、本発明を自動車へ実施する際は、自動車車体12に対する改造が小規模であり、現在使用中の自動車にも簡単に実施できる。なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、実施する自動車の車体形状や車体構造により、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】 本発明の一実施形態における主な機能部品の配置例を示した全体構成図である。なお、寸法、形状、構造、配置箇所等を限定するものではない。
【図2】 冷・暖房システム装置一体型ユニットの通風路内の空気の流れを示した模式図である。なお、寸法、形状、構造等を限定するものではない。
【図3】 冷・暖房システム装置一体型ユニットへの電気供給系統を示した系統図であり、(a)は車載バッテリーより供給するもの、(b)は車載バッテリーに加え補助バッテリーより供給するもの、(c)は補助バッテリーより供給するものである。
【図4】 冷・暖房システム装置一体型ユニットの着脱自在箇所を示した概略箇所図である。なお、寸法、形状、構造、配置箇所等を限定するものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 冷・暖房システム装置一体型ユニット
2 乗車室内吸入口
3 乗車室内吹出口
4 外部空気取入口
5 排熱排出口
6 排水用ドレンパイプ
7 発電機
8 車載バッテリー
9 補助バッテリー
10 太陽電池
11 操作スイッチ又はリモコン
12 自動車車体
13 乗車室内空間
14 トランクルーム
15 エンジンルーム
16 エンジン
17 設置箇所
18 乗車室内吸入口接続
19 乗車室内吹出口接続
20 外部空気取入口接続
21 排熱排出口接続
22 排水用ドレンパイプ接続
23 電気供給部接続
24 操作スイッチ電気配線接続

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のトランクルームなどの余剰空間を設置箇所とし、乗車室内空間とを乗車室内吸入口と乗車室内吹出口で形成する通風路で接続すると共に、外部空気取入口と車外への排熱排出口で形成する通風路及び排水用ドレンパイプを設けたことを特徴とするアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置。
【請求項2】
前記乗車室内温度調整装置は、地域により異なる温度調整の使用目的により、冷暖房能力又は冷房能力、暖房能力のいずれかの能力を持ち、併せて制御機能及び送風機能を有することを特徴とする請求項1に記載のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置。
【請求項3】
前記乗車室内温度調整装置は、自動車の発電機より電気の供給を受け蓄電された車載バッテリーから、設置箇所に設けた電気供給部より電気の供給を受け駆動する、ヒートポンプ式又はスターリング式の冷・暖房システム装置であることを特徴とする請求項1、2に記載のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置。
【請求項4】
前記乗車室内温度調整装置は、使用環境条件により、前記車載バッテリーに加えるかもしくは単独で自動車の発電機及び太陽電池より電気の供給を受け蓄電された補助バッテリーから電気の供給を受けることを特徴とする請求項1〜3に記載のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置。
【請求項5】
前記乗車室内温度調整装置は、操作スイッチ部は電気配線により運転席周辺に設置するか又はリモコンによる遠隔操作とすることを特徴とする請求項1〜4に記載のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置。
【請求項6】
前記乗車室内温度調整装置は、冷・暖房システム装置一体型ユニットとし、前記設置箇所及び各通風路、排水用ドレンパイプ、電気供給部、操作スイッチ電気配線に対し着脱自在に設置接続されていることを特徴とする請求項1〜5に記載のアイドリングストップ時の乗車室内温度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−154853(P2009−154853A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341931(P2007−341931)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(508028896)
【Fターム(参考)】