説明

アイロン

【課題】制御板の周囲だけでなく、前部や後部を覆うことができ、電子部品の劣化による損傷が原因で過熱したときの安全を維持することを可能にしたアイロンを提供すること。
【解決手段】制御板5を覆うように握り部3a内部に筒状に形成した難燃性のフィルムの前部および後部の少なくとも一方に折り返し部4a(4b)を設け、その折り返し部4a(4b)を筒状に形成した部分の内側に折り返したことにより、万一、制御板5に実装した電子部品が劣化して過熱しても、難燃性のフィルム4で保護することができ、安全なアイロンを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等のしわ伸ばしに用いられるアイロンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアイロンでは制御板に対し前後方向を覆うことが容易ではないため、制御板に実装した電子部品が損傷等の原因で過熱したときの安全を維持することが不十分であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4、5及び6は従来のアイロンを示すもので、以下その構成について説明する。ヒータ(図示せず)により加熱されるベース101と、ベース101の上方に配設した把手102と、把手102の上部に形成した握り部102aと、握り部102aの内壁面に、難燃性のフィルム103を支持する支持部102bを設け、握り部102aの内面をフィルム103で覆うようにしている。制御板104はタイマー部105、ヒータ制御部(図示せず)、サージ電圧吸収部(図示せず)などを搭載し、フィルム103の内側に収納されている。
【0004】
フィルム103は制御板に搭載したタイマー部105、ヒータ制御部、サージ電圧吸収部などが異常過熱したとき、握り部102aの変形などを防止するもので、難燃性(自己消火性)を有する合成樹脂フィルムである。
【特許文献1】特開平10−277295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のアイロンでは、フィルム103を単純な長方形のシートで構成していることから、制御板104の前部及び後部を同時に覆うことが困難であり、また、別部品を追加する場合には、コストアップ、作業性の悪化等の問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、フィルムの一部に折り返し部をつけることで、構成部品を増やすことなく、かつ、作業性を損なわずに制御板過熱時の安全を維持することのできるアイロンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のアイロンは、フィルムの一部に折り返し部を設け、筒状に形成した内側に折り返すことによりアイロン本体への取り付け作業性に変更なく、また、部品点数を増やすことなく制御板の前部、または、後部を覆うものである。
【0008】
これによって、制御板の周囲だけでなく、前部や後部を覆うこができ、電子部品の劣化による損傷が原因で過熱したときの安全を維持することを可能にしたアイロンを実現させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアイロンは、制御板の周囲だけでなく、前部や後部を覆うことができ、電子部品の劣化による損傷が原因で過熱したときの安全を維持することを可能にしたアイロンを実現させるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、ヒータによって加熱されるベースと、前記ヒータへの通電を制御する電子部品を実装した制御板と、前記ベースの上方に配設し、かつ、前記制御板を収容する握り部を上部に備えた把手と、前記制御板を覆うように前記握り部内部に筒状に形成した難燃性のフィルムとを具備し、前記フィルムは前記筒状に形成した部分の前部および後部の少なくとも一方に折り返し部を設け、その折り返し部を前記筒状に形成した部分の内側に折り返したことにより、制御板の周囲だけでなく、前部や後部を覆うこができ、電子部品の劣化による損傷が原因で過熱したときの安全を維持することを可能にしたアイロンを実現させることができる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、折り返し部は、フィルムを展開したとき、その幅方向の略中央に配置させたことにより、制御板の周囲だけでなく、前部や後部を覆うこができ、電子部品の劣化による損傷が原因で過熱したときの安全を維持することを可能にすると同時に、折り返し部を筒状に形成した内側に折り返す作業性を向上させたアイロンを実現させることができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1の発明において、フィルムは、筒状に形成した部分と折り返し部との接続部を握り部内で下方に位置するよう配置させたことにより、制御板の周囲だけでなく、前部や後部を覆うこができ、電子部品の劣化による損傷が原因で過熱したときの安全を維持することを可能にすると同時に、折り返し部を筒状に形成した内側に折り返す作業性を向上させたアイロンを実現させることができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるアイロンの要部断面図、図2は握り部の図1におけるA−A断面図、図3はフィルムの展開図である。図1、2及び3において、ヒータ1により加熱されるベース2の上方に把手3が配設されている。把手3の上部に形成した握り部3aは後方に開口を有し、その内壁面に、制御板5を支持する支持部3bを設け、握り部3aの内面を難燃性のフィルム4で覆うようにしている。制御板5はタイマー部6、ヒータ制御部7、サージ電圧吸収部8などを搭載し、フィルム4の内側に収納されている。
【0015】
把手3の後部に取着し、かつ、電源コード9を出没自在に収納するコードリール装置10はロックレバー11を把手3側のリールケース12に配設しており、電源コード9を巻き取るリール13のストッパー部13aに位置するようにロックレバーバネ14によって常に一方向に付勢されている。ロックレバー11を押し下げる押圧部15aを一体に形成した巻取りボタン15をリールケース12上部に配設し、巻取りボタンバネ16によってロックレバー11から離れる方向に付勢している。
【0016】
フィルム4の有する難燃性(自己消火性)は、所定の厚さで、幅1.25cm、長さ12.5cmの試験片を垂直に支持し、試験片の下端より口径9.4mmのブンゼンバーナーによる青色炎を10秒間接炎し、炎を取り去った後に10秒以内に消炎する性能を有するものである。
【0017】
ここで、フィルム4に設けた前部の折り返し部4aおよび後部の折り返し部4bの長さLは握り部3aの内面の高さHよりも高くしてある。
【0018】
以上のように構成されたアイロンの作用、動作について、以下に説明する。
【0019】
握り部3a内にフィルム4を配設するには、フィルム4を円筒状に握り部3aの内面の高さHよりも小さく丸め、前部の折り返し部4aを円筒状の内側に折り込んだ状態で、後方に設けた開口から握り部3a内に入れると、フィルム4の復元力によりフィルム4は握り部3aの内面を覆うように広がり固定される。このとき、前部折り返し部4aの長さLは、握り部3a内面の高さHよりも長くしてあるので、円筒状の内側に折り込んだ状態が維持され、円筒部より外れることはない。
【0020】
その後、フィルム4に内面を覆われた握り部3a内に制御板5を収納し、制御板5の前端部を支持部3bで上下から挟み込んで保持し、最後に後部の折り返し部4bを前部同様に円筒内に折り込んだ後、把手3後部にコードリール装置10を、その上部で握り部3aの後方開口を覆うように取り付ける。このようにすることにより、制御板5の後方への脱落を防止するとともに、フィルム4の前部の折り返し部4aおよび後部の折り返し部4bの円筒部内側に折り込んだ状態を維持し、制御板5の前後方向の安全性を確保することができる。
【0021】
なお、後部の折り返し部4bの長さLも、前部折り返し部4aと同様に握り部3a内面の高さHよりも長くしてある。
【0022】
また、アイロンかけ終了後、電源コード9を収納するときは、ロックレバーバネ14に抗して押し下げられた巻取りボタン15の押圧部15aによりロックレバー11が下がりストッパー部13aから外れる。このとき、フィルム4の後部の折り返し部4bにより、制御板5は握り部3a内部で移動することなく確実に固定されており、ロックレバー11の動作を妨げることはない。そしてリール13は規制を解かれて回動し、電源コード9を巻取りながら収容することができる。
【0023】
これにより、コードリール装置10の動作を妨げることなく、握り部3aの内面を難燃性のフィルム4で覆った状態で制御板5を握り部3a内に収納することができるため、万一、制御板5に実装した電子部品が劣化して過熱しても、難燃性のフィルム4で保護することができ、安全なアイロンを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明にかかるアイロンは、制御板の過熱に対する保護を安価で簡単に実現することができるので、衣類等のしわ伸ばしを行うアイロンに限らず、各種制御板搭載装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1のアイロンの要部断面図
【図2】同アイロンの図1におけるA−A断面図
【図3】同アイロンのフィルムの展開図
【図4】従来のアイロンの外観図
【図5】従来のアイロンの握り部の断面図
【図6】従来のアイロンの握り部の図5におけるB−B断面図
【符号の説明】
【0026】
1 ヒータ
2 ベース
3 把手
4 フィルム
5 制御板
6 タイマー部
7 ヒータ制御部
8 サージ電圧吸収部
9 電源コード
10 コードリール装置
11 ロックレバー
12 リールケース
13 リール
14 ロックレバーバネ
15 巻取りボタン
16 巻取りボタンバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータによって加熱されるベースと、前記ヒータへの通電を制御する電子部品を実装した制御板と、前記ベースの上方に配設し、かつ、前記制御板を収容する握り部を上部に備えた把手と、前記制御板を覆うように前記握り部内部に筒状に形成した難燃性のフィルムとを具備し、前記フィルムは前記筒状に形成した部分の前部および後部の少なくとも一方に折り返し部を設け、その折り返し部を前記筒状に形成した部分の内側に折り返したアイロン。
【請求項2】
折り返し部は、フィルムを展開したとき、その幅方向の略中央に配置させた請求項1記載のアイロン。
【請求項3】
フィルムは、筒状に形成した部分と折り返し部との接続部を握り部内で下方に位置するよう配置させた請求項1記載のアイロン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−49007(P2008−49007A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230067(P2006−230067)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】