説明

アイロン

【課題】後端部の方向へアイロンを移動させるときの使い勝手の向上と、アイロンかけ中の設定温度の不用意な変更を防止する。
【解決手段】前端部6aおよび後端部6bを尖形に形成してヒータ2によって加熱されるベース3と、前記ベースの上方に配設した握り部11と、前記ベースを設定された温度に制御する温度制御部29と、前記ベースの温度を設定する温度設定部28とを備え、前記温度設定部を前記握り部に配設し、開閉自在なシャッター32により前記温度設定部を覆蓋可能に構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等のしわ伸ばしをおこなうアイロンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なアイロンは、かけ面の先端部分を尖った形状にしてあり、衣類の上を滑らせることで、アイロンの進行方向へ衣類を押し広げながらアイロンかけをおこない、衣類のしわを伸ばすとともに、衣類のボタン周りの細かい作業が容易におこなえるようになっている。アイロンかけ作業は、アイロン台上の限られた広さの中でおこなわれるので、衣類の形を整えながら衣類に押圧力を加えてアイロンを往復移動させ、前進と後退の動作が繰り返される。アイロンのかけ面は、一般的に後部が尖っていないため、後退時は、アイロンに押圧力を加えず、衣類上でかけ面の後部を浮かせるようにして移動させることによって、アイロンでしわを付ける誤操作を防止することができる。
【0003】
しかしながら、アイロンかけは、アイロンの前進と後退の往復動作で効率よく衣類のしわを伸ばすことができるので、後退時にかけ面の後部を浮かせるとしわ伸ばしの効率が低下することから、後退時にアイロンで衣類にしわを付けてしまう、所謂、戻りじわを付ける失敗は多く、アイロンで付けたしわはとり難いものである。
【0004】
そこで、図11に示すように、かけ面101の後端部102を尖った形状にすることが考えられている。このアイロンは、アイロンかけ作業中の小休止時にスタンドに載置して加熱し、使用時はスタンドから取り外してその余熱を利用し、電源コードが接続されていない状態でアイロンかけができるコードレスアイロンであり、コードが邪魔にならずに使い勝手がよく、後退時の戻りじわを防止することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記特許文献1に記載されたアイロンは、尖った後端部102の上方が把手体103で覆われており、衣類上でアイロンを後退させるときに、尖った後端部102の近傍の衣類が見えないという問題があることから、図12に示すように、尖った後端部102を視認可能にする空間部104を設け、前進と後退の両方向移動で効率よくアイロンかけがおこなえるとともに、かけ面101の後端部102の方向へアイロンを後退させるときの使い勝手をよくすることが考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−28385号公報
【特許文献2】特開2010−220809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、把手体の握り部105を把持した手で視線が遮られることから、アイロンを後退させるたびに、後端部102が視認可能な空間部104を覗くような姿勢になる。そこで、このような姿勢の負担を軽減するために、後端部102が前向きとなるように握り部105を他方の手に持ち替えて把持することにより、後端部102の方向へアイロンを前進させることができ、後退時の視認性と空間部104を覗くような姿勢の変化を解消することができる。
【0008】
しかしながら、ベースの温度を設定する温度設定部が握り部に設けられていると、握り
部105を他方の手に持ち替えて、後端部102が前向きとなるように把持した場合、掌で温度設定部が覆われるため、アイロンかけ時に強い押圧力が握り部に作用すると、温度設定部が不用意に誤操作されるという問題が生じる。
【0009】
近年、アイロンかけ時の使い勝手をよくするために、アイロン本体の小型化が進み、握り部105が小さく形成される。温度設定部が握り部105の上面に設けられる場合は、握り部105を把持した手の親指と人差し指との間に温度設定部が配設され、温度設定部に設けられる操作部や表示部の視認性が損なわれないようにしている。
【0010】
アイロンの向きを変えずに他方の手に持ち替えると、温度設定部に設けられる操作部や表示部が掌で覆われるようになり、温度設定部の不用意な誤操作を防止するために、他方の手に持ち替えるときにアイロンの向きも同時に変える必要があり、温度設定部の不用意な誤操作の防止と、使い勝手の向上を同時に解決することが課題であった。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、後端部の方向へアイロンを移動させるときの温度設定部の誤操作の防止と、前進と後退の両方向移動の使い勝手をよくして、効率よくアイロンかけがおこなえるアイロンを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明のアイロンは、前端部および後端部を尖形に形成してヒータによって加熱されるベースと、前記ベースの上方に配設した握り部を有する把手体と、前記ベースを設定された温度に制御する温度制御部と、前記ベースの温度を設定する温度設定部とを備え、前記温度設定部を前記握り部に配設し、開閉自在なシャッターにより前記温度設定部を覆蓋可能に構成したものである。
【0013】
これによって、後端部を前向きにして握り部を把持した場合でも、開閉自在なシャッターで温度設定部を覆うことができるため、アイロンかけ中に設定温度が不用意に変更される誤操作を防止することができ、設定された最適温度で効率よくアイロンかけをおこなうことができるとともに、後端部の方向へアイロンを移動させるときの視認性をよくしてアイロンでしわを付ける誤操作を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアイロンは、後端部の方向へアイロンを移動させるときの使い勝手の向上と、アイロンかけ中に設定温度が不用意に変更されることを防止することができ、前進と後退の両方向移動で効率よくアイロンかけをおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1におけるアイロンの側面図
【図2】同アイロンの温度設定部が露出した状態の要部上面図
【図3】同アイロンの温度設定部が覆蓋された状態の要部上面図
【図4】同アイロンの要部断面図
【図5】同アイロンの要部上面図
【図6】本発明の実施の形態2におけるアイロンの側面図
【図7】同アイロンの温度設定部が露出した状態の要部上面図
【図8】同アイロンの温度設定部が露出した状態の要部断面図
【図9】同アイロンの温度設定部が覆蓋された状態の要部上面図
【図10】同アイロンの温度設定部が覆蓋された状態の要部断面図
【図11】従来のアイロンのかけ面の下面図
【図12】従来のアイロンの他の例の後部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、前端部および後端部を尖形に形成してヒータによって加熱されるベースと、前記ベースの上方に配設した握り部と、前記ベースを設定された温度に制御する温度制御部と、前記ベースの温度を設定する温度設定部とを備え、前記温度設定部を前記握り部に配設し、開閉自在なシャッターにより前記温度設定部を覆蓋可能に構成したことにより、アイロンの向きを変えることなく、後端部を前向きにして握り部を把持した場合でも、温度設定部が開閉自在なシャッターにより覆われるため、アイロンかけ中に設定温度が不用意に変更される誤操作を防止することができ、設定された最適温度で効率よくアイロンかけをおこなうことができるとともに、後端部の方向へアイロンを移動させるときの視認性をよくしてアイロンでしわを付ける誤操作を防止することができる。
【0017】
第2の発明は、特に、第1の発明のシャッターは、開閉操作時の摺動方向を握り部の前後方向に設定し、後方への移動により温度設定部が露出するようにしたことにより、シャッターの移動量を少なくすることができ、温度設定部を覆蓋するときと、露出時の切り替え操作を容易におこなうことができる。温度設定部は、一般に温度を表示する温度表示部の後方側に設けられるため、少なくとも温度設定部を覆蓋することによって設定温度が不用意に変更される誤操作を防止することができる。
【0018】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のシャッターは、温度設定部が露出する位置へ移動させたとき、握り部内に収容されるようにしたことにより、温度設定部を操作可能な状態にしたときに、シャッターが握り部の表面に露出することがなく、握り具合が損なわれるのを防止して、使い勝手をよくすることができる。
【0019】
第4の発明は、特に、第1の発明のシャッターは、略筒状に形成し、開閉操作時の摺動方向を握り部の周方向に設定したことにより、アイロンを前後方向へ移動させたときに、握り部に力が作用する方向と交差する方向に、シャッターの摺動方向を設定することができ、シャッターを所定の位置に保持することができる。
【0020】
第5の発明は、特に、第4の発明のシャッターは、温度設定部が露出する位置に切欠き部を設けたことにより、シャッターによる温度設定部の露出と覆蓋を容易におこなうことができる。
【0021】
第6の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、温度設定部に温度表示部を設け、シャッターは、前記温度設定部の覆蓋時に少なくとも前記温度設定部を視認可能に構成したことにより、温度設定部を覆蓋した状態で設定温度を視認することができ、使い勝手をよくすることができる。
【0022】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、アイロン本体と、前記アイロン本体を載置するスタンドとを具備し、前記アイロン本体は、後部に凹状の受電部を設けるとともに、前記受電部内に受電端子を設け、前記スタンドは、前記ベースを前上がりに傾斜させて載置する載置部を有し、前記受電部に嵌合する凸状の給電部を設けるとともに、前記給電部内に前記受電端子と接続する電極と、前記給電部の下方に前記ベースの後端部を収容する収容部とを設け、前記アイロン本体を前記スタンドに載置したとき、前記受電端子と前記電極の接続部が前記ベースの後端部より前方に位置するように設定したことにより、後端部の方向へアイロンを移動させるときに戻りじわを付ける誤操作を防止することができるとともに、かけ面の面積が減少することなく後端部を尖形に形成することができるので、かけ面の熱容量を確保してアイロンかけ時の温度低下を少なくすることができ、使い勝手のよいコードレスアイロンを実現することができる。また、ベースの後端部が受電端子の後端部から後方へ突出するので、アイロンかけの後退時に後端部の視認性を確保し、前進と後退の両方向移動で効率よくアイロンかけがおこなえる。
【0023】
第8の発明は、特に、第7の発明のアイロン本体の側面を受電部の開放端に向かって先細り状に形成したことにより、アイロンかけ時において、後端部の方向へアイロンを前進させるときに、ベースの後端部の視認性を確保することができ、後端部の方向へアイロンを移動させるときにアイロンでしわを付ける誤操作を防止することができ、使い勝手をよくすることができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるアイロンの側面図、図2は、同アイロンの温度設定部が露出した状態の要部上面図、図3は、同アイロンの温度設定部が覆蓋された状態の要部上面図、図4は、同アイロンの要部断面図、図5は、同アイロンの要部上面図である。本実施の形態のアイロンは、アイロン本体をスタンドに載置して加熱し、使用時は、スタンドからアイロン本体を取り外し、加熱されたアイロンの余熱でアイロンかけをおこなう、所謂コードレスアイロンである。
【0026】
図1〜図5において、アイロン本体1は、埋設したヒータ2によって加熱されるベース3と、このベース3の上面側に凹状に形成したスチームを発生させる気化室4と、ベース3の下面に気化室4で発生したスチームを噴出させるスチーム孔5を有し、ベース3の前端部6aと後端部6bを尖形に形成したかけ面6を備えている。スチーム孔5は、前端部6aと後端部6bの近傍を含めて、かけ面6の広い範囲に多数形成している。
【0027】
7は気化室4に供給する水を貯える樹脂製のタンク、8は手動操作によってタンク7から気化室4への水の供給と停止をおこなうスチーム釦、9はベース3の上面側を覆うように設けた断熱カバー、10は断熱カバー9の上方に配設した樹脂製の把手体で、握り部11を形成している。
【0028】
12はアイロン本体1の後部に設けたターミナル部13を後方から覆うように把手体10に取り付けた把手裏板で、アイロン本体1の後面から内方へ凹状に窪ませて受電部14を形成している。受電部14内には、ヒータ2回路と接続している受電端子15がターミナル部13から受電部14内に後方へ突出している。
【0029】
アイロン本体1を載置するスタンド16は、ベース3を前上がりに傾斜させて載置する載置部17を有し、載置部17にはベース3のかけ面6を下方から支持するローラーで構成した支持体17aを設けている。支持体17aに支持されたかけ面6の傾斜角度は、置き易く取り外しが容易な20〜30°に設定してあり、ローラーによって後方へ移動するようになっている。支持体17aは、ベース3の前後方向に2か所設けてあり、かけ面6の前部と後部を離れた位置で安定的に支持する。
【0030】
スタンド16の後部には、載置部17に載置されたアイロン本体1の受電部14が嵌合する凸状の給電部18を設けている。この給電部18の前面にはアイロン本体1の載置時に受電端子15が貫通する孔19が左右方向に設けてあり、給電部18内に設けた電極20に受電端子15が接続されるように構成している。
【0031】
給電部18内には、アイロン本体1がスタンド16から取り外されているときに、孔19を閉じる方向へバネ付勢された開閉シャッター21が可動自在に設けられている。アイロン本体1の載置時は、受電部14に設けた支持部22により開閉シャッター21の操作部21aを後方へ押圧し、受電端子15側へのバネ付勢力に抗して開閉シャッター21を
回動させて孔19を開き、受電端子15が孔19を通して電極20と接続されるように構成している。
【0032】
支持部22は、把手裏板12と一体成型で薄板状に形成するとともに、受電部14内の上部に垂直方向に設けてあり、受電端子15の上方に配設し後方へ突出させている。給電部18の上面には、支持部22が嵌入可能な溝状のスリット23がアイロン本体1の変位方向、すなわち、前後方向に形成してあり、スリット23に支持部22が所定の長さで嵌合することでアイロン本体1の変位方向が規制される。
【0033】
支持部22が嵌入するスリット23の入り口、すなわち、給電部18の前面にスリット23に向かって傾斜する誘導部18aを設けている。誘導部18aは、略V字状に形成され、スリット23の前端部分から前方に向かって左右方向へ開くように傾斜しており、スタンド16への載置時に支持部22の先端が誘導部18aの傾斜面に当接したとき、スリット23の前端部分である入り口に向かって傾斜面を滑動し、スリット23内へと誘導される。
【0034】
給電部18の前面の下部、すなわち、誘導部18aの下方には、アイロン本体1の受電部14に向かって円弧状に突出する膨出部18bを形成してあり、スタンド16への載置時に受電部14の開放端14aが膨出部18bに当接したとき、円弧面に沿って開放端14aが左右方向へ滑動し、受電部14が給電部18に嵌合するようにアイロン本体1の後部を変位させる。
【0035】
したがって、アイロン本体1をスタンド16へ載置するときは、給電部18の前面の上部に設けた誘導部18aと、給電部18の前面の下部に設けた膨出部18bとで、アイロン本体1の受電部14を的確に給電部18嵌合させて、受電端子15と電極20を確実に接続させることができる。
【0036】
給電部18の下方には、アイロン本体1の載置時にベース3の後端部6bを収容する収容部24が設けてあり、アイロン本体1をスタンド16に載置したとき、受電端子15と電極20の接続部がベース3の後端部6bより前方に位置するように設定している。つまり、ベース3の後端部6bより前方に受電端子15の先端が位置するようにしている。
【0037】
収容部24は、載置部17の上面を後方に向かって先細り状に形成してあり、尖った形状の後端部6bが給電部18の下方にコンパクトに収容されるようにしている。そして、アイロン本体1は、タンク7が形成された側面10aを受電部14の開放端14aに向かって先細り状に形成している。
【0038】
受電端子15の下方には、ベース3の後端部6bの上面側を覆うようにカバー部25が設けてあり、受電部14を形成している把手裏板12を下方へ延設してカバー部25を形成している。そして、カバー部25は、その外周縁をベース3の外周縁に沿って後端部6bまで形成し、後端部6bの上方を後端部6bと略同形状で覆っている。
【0039】
スタンド16の後部には、給電部18の両側に放熱空間26が設けてあり、収容部24を介して給電部18の両側と連通するように形成し、外部の空気と円滑に置換されるようにしてあり、アイロン本体1をスタンド16に載置したとき、収容部24に位置し高温に加熱されるベース3の後端部6bの熱を収容部24から外部へ放出し、給電部18が過熱されるのを防止するようにしている。
【0040】
アイロン本体1をスタンド16に載置する載置部17の両側に、アイロン本体1の受電部14を給電部18へ案内するガイド部27が設けてあり、このガイド部27の後端27
aと給電部18との間に放熱空間26が形成され、放熱に十分な空間を確保している。載置部17の両側に設けたガイド部27の間隔は、スタンド16の後部に設けられている給電部18に近づくにしたがって狭くなっており、アイロン本体1の後部に設けた受電部14が給電部18へスムースに嵌合するようにしている。
【0041】
給電部18は、収容部24の上面を構成する下面18cを前上がりに傾斜させてあり、アイロン本体1がスタンド16から容易に取り外すことができるようにしている。また、下面18cの後部は、後端部6bが収容部24に収容されるように後端部6bの後方へ延設している。
【0042】
カバー部25の上面側には、収容部24の下面18c側へ円弧状に膨出させたリブ25aを設けており、アイロン本体1をスタンド16へ載置するときと、スタンド16から取り外すときに、アイロン本体1の変位方向、すなわち、前後方向に設けたリブ25aの頂部が給電部18の下面18cに当接して、スムースに着脱できるようにしている。
【0043】
握り部11の上面側に温度設定部28が設けてあり、かけ面6を所定の温度(例えば、80〜200℃)に加熱されるように設定する。温度設定部28でアイロンかけをおこなう繊維に適した温度に設定すると、握り部11内に配設した温度制御部29によりヒータ2への通電を制御し、サーミスタ等の温度検知部30によりベース3の温度を検知して設定された温度に制御される。
【0044】
温度設定部28の前方には、温度表示部31が設けられている。温度表示部31は、例えば、低、中、高等の温度を示す目盛と、この目盛に対応したLED等のランプが設けてあり、設定された温度と、現在温度等を表示することができる。
【0045】
握り部11には、前後方向(矢印イ方向)に摺動可能なシャッター32が設けられている。シャッター32を後方へ移動させることによって温度設定部28を握り部11の上面に露出させることができ、前方へ移動させることによって、温度設定部28をシャッター32で上方から覆蓋し、覆い隠すことができるようにしている。シャッター32は、温度設定部28が露出する位置へ移動させたときは握り部11内に収容され、握り具合が損なわれないようにしている。
【0046】
以上のように構成された本発明のアイロンについて、以下、その動作、作用を説明する。アイロンかけをおこなうときは、スタンド16の載置部17に設けられている支持体17a上にアイロン本体1のかけ面6を載置し、受電端子15が電極20に接続された状態で、電源コード33を通じて電極20に通電する。
【0047】
温度設定部28が握り部11の上面に露出するように、シャッター32を後方へ移動させて、露出した温度設定部28を押圧し、アイロンかけをおこなう繊維に適した所定の温度(例えば、200℃)に加熱されるように設定するとともに、温度表示部31に設定温度が表示されるように操作する。気化室4が水の蒸発可能温度に上昇すると、スチーム釦8の手動操作によってタンク7内の水を気化室4へ滴下供給することができる。
【0048】
給電部18の下方にベース3の後端部6bを収容する収容部24が設けてあり、アイロン本体1をスタンド16に載置したとき、受電端子15と電極20の接続部がベース3の後端部6bより前方に位置するように設定しているので、かけ面6の面積を大きく減少させることなく後端部6bを尖形に形成してかけ面6の熱容量を確保することができる。したがって、余熱を利用したコードレスアイロンにおいても後端部6bを尖形に形成することが可能になり、スチームを利用したアイロンかけ時の温度低下を少なくすることができ、使い勝手のよいコードレスアイロンを実現することができる。
【0049】
握り部11を把持してアイロン本体1をスタンド16から取り外し、衣類等の上を前後方向へ押圧しながら移動させると、前進時は尖った前端部6aによって衣類を押し広げながらしわ伸ばしがおこなえ、また、図2に示すように、後端部6bを前端部6aと略同じ尖り角度に尖った形状に形成しているので、後退時も前進時と同様に衣類を押し広げながらしわを伸ばすことができるので、戻りじわの発生を防止することができ、後端部6bの方向へアイロンを移動させるときの使い勝手をよくすることができる。
【0050】
また、ベース3の後端部6bが電極20と接続する受電端子15の後端部から後方へ突出するので、アイロンかけの後退時に後端部6bの視認性を確保し、前進と後退の両方向移動で効率よくアイロンかけがおこなえる。
【0051】
また、前端部6aを前向きにして把持した前進動作の状態で、アイロン本体1を後退させることができるとともに、アイロン本体1の向きを変えることなく他方の手に持ち替えると、後端部6bを前にして前進させることができる。
【0052】
このとき、温度設定部28は握り部11を把持した手で隠れ、握り部11を握る力が温度設定部28に作用して不用意に押圧される。そこで、シャッター32を前方へ移動させて温度設定部28を上方から覆蓋した状態で使用することにより、アイロンかけ中に設定温度が不用意に変更されないようにすることができる。
【0053】
設定温度は、アイロンかけをおこなう繊維に合わせて設定されており、同じ衣類に対してアイロンをかけている間は、設定温度を変更することはなく、アイロンかけ中にシャッター32を開閉する操作は発生しない。したがって、アイロンかけ中にアイロン本体1の向きを変えることなく他方の手に持ち替えることができ、前端部6aまたは後端部6bを前にして前進させることができ、アイロンかけ中に設定温度が不用意に変更されることなく、使い勝手をよくすることができる。
【0054】
また、シャッター32の開閉操作時の摺動方向を握り部11の前後方向に設定し、後方への移動により温度設定部28が露出するようにしたものであり、シャッター32の移動量を少なくすることができる。温度設定部28は、一般に温度を表示する温度表示部31の後方側に設けられるため、少なくとも温度設定部28を覆蓋することによって、設定温度が不用意に変更される誤操作を防止することができる。
【0055】
また、シャッター32は、温度設定部28が露出する位置へ移動させたとき、握り部11内に収容されるようにしたものであり、温度設定部28を操作可能な状態にしたときにシャッター32が握り部11の表面に露出することがなく、握り具合が損なわれるのを防止して、使い勝手をよくすることができる。
【0056】
また、アイロン本体1の側面10aを受電部14の開放端14aに向かって先細り状に形成しているので、アイロンかけ時の後退時はもとより、後端部6bを前にした前進時も、ベース3の後端部6bの視認性を良好に確保することができ、後端部6bの方向へアイロン本体1を移動させるときの使い勝手をよくすることができる。
【0057】
したがって、受電部14の開放端14aは後端部6bの近傍に位置することから、必然的に小さくなり、開放端14aが外側から嵌合する給電部18も左右方向に小さく構成する必要がある。
【0058】
本発明では、受電部14を給電部18へ導く誘導部18aと膨出部18bを給電部18の前面に設けるとともに、支持部22が嵌入するスリット23を給電部18の上面の中央
部に設け、さらに、支持部22と、給電部18の下面18cに当接するカバー部25に設けたリブ25aを、受電部14の左右方向の略中央位置に設けて給電部18の左右方向の大きさを小型化し、アイロン本体1の側面10aが後端部6bの方向へ先細りした形状を実現している。
【0059】
(実施の形態2)
図6は、本発明の第2の実施の形態におけるアイロンの側面図、図7は、同アイロンの温度設定部が露出した状態の要部上面図、図8は、同アイロンの温度設定部が露出した状態の要部断面図、図9は、同アイロンの温度設定部が覆蓋された状態の要部上面図、図10は、同アイロンの温度設定部が覆蓋された状態の要部断面図である。
【0060】
本実施の形態の特徴は、シャッター34を略筒状に形成し、開閉操作時の摺動方向を握り部11の周方向に設定したものである。他の構成は第1の実施の形態と同じであり、詳細な説明は第1の実施の形態のものを援用する。
【0061】
略筒状に形成したシャッター34は、握り部11の略中心位置を前後方向に延びる軸11aを中心として、握り部11に対して周方向(矢印ロ方向)に回動可能に設けてあり、握り部11に設けた温度設定部28を覆蓋する位置と、露出する位置に保持することができる。
温度設定部28は、握り部11に設けた空洞部11b内に、タクトスイッチ28aを設けたプリント基板28bを配設して構成してあり、タクトスイッチ28aを押圧することによって所望の温度に設定することができる。
タクトスイッチ28aの利点は、少しの押圧ストロークで軽く操作ができることであるが、一方で、温度設定部28が設けられている握り部11は、しわを伸ばすために強く握られることがあり、使用中に生じやすい誤操作の防止と、温度設定の操作性を両立させることができる。
【0062】
シャッター34に切欠き部34aが設けてあり、温度設定部28を握り部11に露出させるときは、シャッター34を回動させて切欠き部34aを温度設定部28に対向させることによって操作可能に露出させることができる。
上記構成によれば、シャッター34を略筒状に形成し、開閉操作時の摺動方向を握り部11の周方向に設定したものであり、アイロンを前後方向へ移動させたときに、握り部11に力が作用する方向と交差する方向に、シャッター34の摺動方向を設定することができ、使用中にシャッター34の位置が不用意に変位することがなく、所定の位置に保持することができる。また、シャッター34に、温度設定部28を露出させる切欠き部34aを設けたものであり、温度設定部28の露出と覆蓋を容易におこなうことができる。
【0063】
なお、実施の形態1、2において、シャッター32、34を透明体、または半透明体で構成すれば、温度設定部28の覆蓋時に温度設定部28を視認可能にすることができる。また、温度設定部28に近接して温度表示部31を設け、温度設定部28と温度表示部31を覆蓋した場合にも、設定温度あるいは現在温度を視認することができ、使い勝手をよくすることができる。また、本実施の形態2の温度設定部28の構成は、図示しない実施の形態1においても同様の構成であり、タクトスイッチを設けたプリント基板を握り部11内に配設して構成している。
【0064】
なお、本実施の形態1、2は、温度制御部29を電子制御にておこなうようにしたが、バイメタルによって熱を感知する一般的なサーモスタットで構成してもよい。この場合、温度設定部28は、サーモスタットの動作温度を機械的に調節するツマミ等の操作部によって構成することができる。
【0065】
また、本実施の形態1、2は、アイロン本体1をスタンド16に載置して加熱し、使用時は、スタンド16からアイロン本体1を取り外してアイロンかけをおこなうコードレスアイロンについて記載したが、アイロン本体に電源コードが接続されたコード付きアイロンであっても同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0066】
なお、本発明の実施の形態は、その一部を実施してもよく、また記載された範囲内において任意に組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明にかかるアイロンは、後端部の方向へアイロンを移動させるときの使い勝手の向上と、アイロンかけ中の設定温度が不用意に変更されることを防止することができ、前進と後退の両方向移動で効率よくアイロンかけをおこなうことができるので、アイロンとして有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 アイロン本体
2 ヒータ
3 ベース
6a 前端部
6b 後端部
10 把手体
11 握り部
16 スタンド
28 温度設定部
29 温度制御部
32,34 シャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部および後端部を尖形に形成してヒータによって加熱されるベースと、前記ベースの上方に配設した握り部と、前記ベースを設定された温度に制御する温度制御部と、前記ベースの温度を設定する温度設定部とを備え、前記温度設定部を前記握り部に配設し、開閉自在なシャッターにより前記温度設定部を覆蓋可能に構成したアイロン。
【請求項2】
シャッターは、開閉操作時の摺動方向を握り部の前後方向に設定し、後方への移動により温度設定部が露出するようにした請求項1記載のアイロン。
【請求項3】
シャッターは、温度設定部が露出する位置へ移動させたとき、握り部内に収容されるようにした請求項1または2記載のアイロン。
【請求項4】
シャッターは、略筒状に形成し、開閉操作時の摺動方向を握り部の周方向に設定した請求項1記載のアイロン。
【請求項5】
シャッターは、温度設定部が露出する位置に切欠き部を設けた請求項4記載のアイロン。
【請求項6】
温度設定部に温度表示部を設け、シャッターは、前記温度設定部の覆蓋時に少なくとも前記温度設定部を視認可能に構成した請求項1〜4のいずれか1項に記載のアイロン。
【請求項7】
アイロン本体と、前記アイロン本体を載置するスタンドとを具備し、前記アイロン本体は、後部に凹状の受電部を設けるとともに、前記受電部内に受電端子を設け、前記スタンドは、前記ベースを前上がりに傾斜させて載置する載置部を有し、前記受電部に嵌合する凸状の給電部を設けるとともに、前記給電部内に前記受電端子と接続する電極と、前記給電部の下方に前記ベースの後端部を収容する収容部とを設け、前記アイロン本体を前記スタンドに載置したとき、前記受電端子と前記電極の接続部が前記ベースの後端部より前方に位置するように設定した請求項1〜6のいずれか1項に記載のアイロン。
【請求項8】
アイロン本体の側面を受電部の開放端に向かって先細り状に形成した請求項7記載のアイロン。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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