説明

アイロン

【目的】ヒータの熱量を時間に対して1/fゆらぎ制御することで、短時間で設定温度に加熱し、被加熱物の状態に関係なく温度制御できるアイロンを提供する。
【構成】時間を計時するタイマー2からの出力で1/f演算器3は演算を行い、この1/f演算器3の1/fゆらぎ制御出力により出力可変手段4はヒータ1への出力を可変し、ヒータ1は1/fゆらぎ制御に対応してベース5の温度を短時間に上昇させて一定に保ち、ベース温度の低下を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は一般の家庭で使用されるアイロンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来は、ヒータ出力は所定値で終始動作していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来のアイロンでは、ベースが設定温度に達するまでの時間が長く、また被加熱物の温度によってベースの温度がかなりふらつく場合もあった。さらに、この布種によっても温度のふらつき方が違っていた。
【0004】本発明は上記問題を解決するもので、設定温度に達するまでの時間を短くし、ベース温度をほぼ一定にできるアイロンを提供することを目的とするものである。
【0005】さらに、本発明は被加熱物の布種の関係なく、一定のベース温度を保つことのできるアイロンを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明のアイロンは、ヒータと、時間を計時するタイマーと、前記ヒータの出力を可変させる出力可変手段と、前記タイマーの出力で演算を行ない、前記出力可変手段に出力する1/f演算器を有し、ヒータの熱量を時間に対して1/fのゆらぎ制御するものである。
【0007】さらに、本発明のアイロンは、ヒータと、時間を計時するタイマーと、前記ヒータの出力を可変させる出力可変手段と、複数の布種を選択できる切り換え手段と、この切り換え手段と前記タイマーの出力で演算を行ない、前記出力可変手段に出力する1/f演算器とを有し、ヒータの熱量を時間に対して1/fのゆらぎ制御するものである。
【0008】
【作用】本発明は上記した構成により、ヒータの熱量が時間に対して反比例するように1/f制御されるので、効率的に被加熱物に熱を与えることができ、設定温度に達するまでの時間を短くすることができる。さらには、被加熱物の布種に応じて、効率的に熱を与えることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例のアイロンの回路ブロック図、図2は同アイロンのヒータへの出力図である。アイロンは、図1に示すように、ヒータ1を備えており、このヒータ1はベース5の温度を上昇させるものである。さらにアイロンは、時間計時を行うタイマー2、このタイマー2からの出力で演算を行なう1/f演算器3、この1/f演算器3の出力よりヒータ1への出力を可変する出力可変手段4を備えている。
【0010】次に、この動作について図1、図2を参照しながら説明する。ここで、説明を簡単にするために数値を仮定し、被加熱物を加熱するベース5の温度を50℃とし、この50℃になるためにヒータ1に印加する電圧を50Vとする。また、1/f演算器の持つ1/fの出力パターンを図2のように仮定し、この出力可変手段4の標準切り替え時間を50秒にする。
【0011】加熱をスタートすると、1/f演算器3がタイマー2に計時信号を送り、計時信号を受けたタイマー2は計時を開始し、同時に出力可変手段4に図2のような信号を送る。また、1/f演算器3は常時タイマー2を入力しており、各期間a〜eに設定された時間の間同じ出力を出力可変手段4に出力し続ける。たとえば出力可変手段4は期間aの間に電圧55Vを45秒間ヒータ1に印加するように1/f制御される。すなわち電圧55Vは基準の温度50℃に対応する印加電圧50Vより高く、このときの時間45秒は標準切り替え時間の50秒より短かくなっている。その後タイマー2が45秒を計時し終ると、1/f演算器3はタイマー2にリセット信号を出力し、再び計時信号を出力する。同時に出力可変手段4に次の期間bの出力をする。この期間bの間、出力可変手段4は45Vの電圧をヒータ1に印加する。そしてこの期間bの時間の55秒をタイマー2が計時すると、前回と同様に次の期間cのパターンにするため、タイマー2にリセット信号を送り、その後計時信号を送る。同時に出力可変手段4に期間cの出力をし、出力可変手段4はヒータ1に50Vを50秒間出力する。以上を繰り返す動作を順次行っていく。
【0012】このように、ヒータ1に印加する電圧を時間に対して1/f制御にすると、図2の期間aでは電圧が高いので、ベースの表面温度は上昇する。次の期間bではヒータ1に印加する電圧が低くなるので、ベース5の表面温度は低下するが、この期間bでは期間aでベースの表面に蓄えられた熱量が内部に浸透していくという効果がある。この1/f制御によるゆらぎを行うと所定時間後のベース5の表面と内部との温度差が定常加熱時に比べて小さくなる。したがって、50V一定でヒータ1に印加した場合よりも、ベース5の内部までが高い温度を保っているので、ベース5が温度低下しにくい。そこで被加熱物の状態にほぼ関係なく加熱することができる。
【0013】図3は本発明の他の実施例のアイロンの回路ブロック図、図4は同アイロンのヒータへの出力図である。アイロンは、図3に示すように、ヒータ6を備えており、このヒータ6はベース10の温度を上昇させるものである。さらにアイロンは、時間計時を行うタイマー7、複数の被加熱物の布種を選択できる切り換え手段11、この切り換え手段11とタイマー7からの出力で演算を行なう1/f演算器8、この1/f演算器8の出力よりヒータ6への出力を可変する出力可変手段9を備えている。
【0014】次に、この動作について図3、図4を参照しながら説明する。ここで、説明を簡単にするために数値、布種を仮定し、まず麻の場合では、被加熱物を加熱するベース10の温度を200 ℃とし、この200 ℃になるためにヒータ6に印加する電圧を80Vとし、毛の場合には、被加熱物を加熱するベース10の温度を150 ℃とし、この150 ℃になるためにヒータ6に印加する電圧を60Vとする。また、1/f演算器8の持つ1/fの出力パターンを図4のように仮定し、この出力可変手段9の標準切り替え時間を50秒にする。
【0015】麻の場合には、加熱をスタートすると、1/f演算器8がタイマー7に計時信号を送り、計時信号を受けたタイマー7は計時を開始し、同時に出力可変手段9に図4のような信号を送る。また、1/f演算器8は常時タイマー7を入力しており、各期間a〜dに設定された時間の間同じ出力を出力可変手段9に出力し続ける。たとえば出力可変手段9は期間aの間に電圧88Vを45秒間ヒータ6に印加するように1/f制御される。その後、タイマー7が45秒を計時し終わると、1/f演算器8はタイマー7にリセット信号を出力し、再び計時信号を出力する。同時に出力可変手段9に次の期間bの出力をする。この期間bの間、出力可変手段9は72Vの電圧をヒータ6に印加する。そして、この期間bの時間の55秒をタイマー7が計時すると、前回と同様に次の期間cのパターンにするため、タイマー7にリセット信号を送り、その後時計信号を送る。同時に出力可変手段9に期間cの出力をし、出力可変手段9はヒータ6に80Vを50秒間出力する。以上を繰り返す動作を順次行っていく。
【0016】毛の場合には、加熱をスタートすると、1/f演算器8がタイマー7に計時信号を送り、計時信号を受けたタイマー7は計時を開始し、同時に出力可変手段9に図4のような信号を送る。また、1/f演算器8は常時タイマー7を入力しており、現在の期間a〜dに設定された時間の間同じ出力を出力可変手段9に出力し続ける。このとき出力可変手段9は期間aの間に電圧66Vを45秒間ヒータ6に印加するように1/f制御される。その後、タイマー7が45秒を計時し終わると、1/f演算器8はタイマー7にリセット信号を出力し、再び計時信号を出力する。同時に出力可変手段9に次の期間bの出力をする。この期間bの間、出力可変手段9は54Vの電圧をヒータ6に印加する。そして、この期間bの時間55秒をタイマー7が計時すると、前回と同様に次の期間cのパータンにするため、タイマー7にリセット信号を送り、その後計時信号を送る。同時に出力可変手段9に期間cの出力をし、出力可変手段9はヒータ6に60Vを50秒間出力する。以上を繰り返す動作を順次行っていく。
【0017】このように布種を選択できるため、その布種の応じた最適な1/f制御ができる。したがって、被加熱物の布種に関係なく、効率のよい加熱をすることができる。
【0018】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、被加熱物の状態に関係なく、ベース温度低下の少ないアイロンを提供できる。さらには、被加熱物の布種に応じた最適な1/f制御ができ、ベース温度低下の少ないアイロンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のアイロンの回路ブロック図である。
【図2】同アイロンのヒータへの出力図である。
【図3】本発明の他の実施例のアイロンの回路ブロック図である。
【図4】同アイロンのヒータへの出力図である。
【符号の説明】
1,6 ヒータ
2,7 タイマー
3,8 1/f演算器
4,9 出力可変手段
5,10 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヒータと、時間を計時するタイマーと、前記ヒータの出力を可変させる出力可変手段と、前記タイマーの出力で演算を行ない、前記出力可変手段に出力してヒータの熱量を時間に対して1/f制御する1/f演算器とを有するアイロン。
【請求項2】 ヒータと、時間を計時するタイマーと、前記タイマーの出力を可変させる出力可変手段と、複数の布種を選択できる切り換え手段と、この切り換え手段と前記タイマーの出力で演算を行ない、前記出力可変手段に出力してヒータの熱量を時間に対して1/f制御する1/f演算器とを有するアイロン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−84400
【公開日】平成5年(1993)4月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−250000
【出願日】平成3年(1991)9月30日
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)