説明

アクチュエータの製造方法、アクチュエータ、移動機構、およびカメラモジュール

【課題】製造コストの上昇が抑制されつつ、簡易な構成で高精度の動作が可能なアクチュエータを実現する技術を提供する。
【解決手段】アクチュエータが製造される際に、次の工程(I)および(II)が行われる。(I)第1の素材を用いて構成される層と、該第1の素材と比較して温度変化に対する変形の度合いが異なる第2の素材を用いて構成される層とを含む複数層が積層されている板状部材が準備される。(II)該板状部材に対してエッチング処理が施されることで、該板状部材のうちの一部の板状部を構成する1以上の層の厚みが、該板状部材のうちの一部の板状部を除く残余の板状部を構成する1以上の層の厚みよりも薄くされるか、または一部の板状部から1以上の層が取り除かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータの製造方法およびアクチュエータ、ならびに該アクチュエータを搭載する移動機構およびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等に内蔵される所謂マイクロカメラユニット(MCU)が知られている。該MCUについては、数多く生産されており、近年では、撮像素子の高画素化が進むとともに、画質とユーザーの利便性とを追求する上でオートフォーカス(AF)機能の搭載が必須となりつつある。その一方で、携帯電話機の部品としてのMCUに対しては、小型化および低価格化に対する非常に高い要求がある。
【0003】
ところで、温度変化に応じた変形によって駆動するアクチュエータ(熱駆動型アクチュエータ)が知られている。該熱駆動型アクチュエータとしては、所謂バイメタルや形状記憶合金(SMA)を利用したものが挙げられる。そして、該熱駆動型アクチュエータの特徴として、体積当たりの発生力が大きく、また比較的単純な構成で移動機構の実現を可能とする。このため、小型化および低価格化が要求されるAF機能付きのMCUに対して、熱駆動型アクチュエータが適用されることが有望視されている。
【0004】
また、MCUの製造コストを低減するために、MCUに必要な機能を複数の層状のレイヤに持たせ、各レイヤについて、該レイヤが多数配列された大きな平板状の部材(ウエハ)を形成し、該複数のウエハの接合後に、多数のMCUをダイシングによって切り出す製造方法が提案されている(例えば、特許文献1,2等)。このようなウエハを用いた製造方法(ウエハレベルの製造方法)は、比較的画素数が少なく、焦点が固定されているMCUについて適用されている。
【0005】
更に、バイメタルを用いて高精度に移動対象部を移動させる半導体マイクロアクチュエータが提案されている(例えば、特許文献3,4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−200965号公報
【特許文献2】特開2007−12995号公報
【特許文献3】特開2002−192497号公報
【特許文献4】特開2003−136495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記ウエハレベルの製造方法によって製造されるMCUにAF機能を付加するためには、層状のアクチュエータ(アクチュエータ層)に相当する部分が多数配列されたウエハ(アクチュエータ層シート)を製作する必要がある。そして、該アクチュエータ層シートについてはバイメタル等が平板状に形成され、各アクチュエータ層において変形によって駆動力が生じれば良い。
【0008】
しかしながら、上記アクチュエータ層シートを用いて製造されるMCUでは、アクチュエータ層の全面に渡ってバイメタルが配設されるため、本来変形すべきでない固定部も、環境温度の変化や通電による加熱によって変形し、動作精度の低下を招く。その結果、移動対象部の位置ズレや傾き等が発生する虞がある。
【0009】
なお、上記特許文献3の技術のように、部分的にバイメタルを形成することで動作精度の向上を図ることも考えられるが、上記ウエハレベルの製造方法に適用することが難しく、製造コストの上昇を招く。
【0010】
また、上記特許文献4の技術のように、変形誤差を相殺する補正部材を形成することで動作精度の向上を図ることも考えられるが、構造の複雑化を招くとともに、上記ウエハレベルの製造方法への適用も難しく、製造コストの上昇を招く。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造コストの上昇が抑制されつつ、簡易な構成で高精度の動作が可能なアクチュエータを実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、第1の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第1の素材を用いて構成される層と、該第1の素材と比較して温度変化に対する変形の度合いが異なる第2の素材を用いて構成される層とを含む複数層が積層されている板状部材を準備する準備工程と、前記板状部材に対してエッチング処理を施すことで、前記板状部材のうちの一部の板状部を構成する1以上の層の厚みを、前記板状部材のうちの前記一部の板状部を除く残余の板状部を構成する前記1以上の層の厚みよりも薄くするか、または前記一部の板状部から前記1以上の層を取り除くエッチング工程と、を備える。
【0013】
第2の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第1の態様に係るアクチュエータの製造方法であって、前記一部の板状部が、基準部に対応する部分に含まれ、前記残余の板状部が、温度変化に応じて前記基準部を基準として変形することで駆動力を発生する可動部に対応する部分に含まれる。
【0014】
第3の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第2の態様に係るアクチュエータの製造方法であって、前記エッチング工程において、前記板状部材のうちの前記基準部に対応する部分に含まれる前記1以上の層に対して選択的にエッチング処理を施す。
【0015】
第4の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第2の態様に係るアクチュエータの製造方法であって、前記エッチング工程において、前記板状部材のうちの前記基準部に対応する部分に含まれる一部分を構成する前記1以上の層に対して選択的にエッチング処理を施す。
【0016】
第5の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第4の態様に係るアクチュエータの製造方法であって、前記残余の板状部が、前記基準部のうちの前記可動部と接続する接続部に対応する板状の部分を含む。
【0017】
第6の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第1から第5の何れか1つの態様に係るアクチュエータの製造方法であって、前記板状部材が、前記複数層が積層されたバイメタルを含む。
【0018】
第7の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第1から第5の何れか1つの態様に係るアクチュエータの製造方法であって、前記1以上の層が、形状記憶合金を用いて構成される層を含む。
【0019】
第8の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第1から第7の何れか1つの態様に係るアクチュエータの製造方法であって、前記エッチング工程において、前記エッチング処理の時間によって、前記一部の板状部を構成する1以上の層の厚み、または前記一部の板状部を構成する1以上の層の有無を調節する。
【0020】
第9の態様に係るアクチュエータの製造方法は、第1から第8の何れか1つの態様に係るアクチュエータの製造方法であって、エッチング処理によって前記アクチュエータの中空部分を形成する形成工程を更に備え、前記エッチング工程におけるエッチング処理と、前記形成工程におけるエッチング処理とが、マスクの形状を異ならせて、同一のエッチング装置によって行われる。
【0021】
第10の態様に係るアクチュエータは、基準部と、温度変化に応じて前記基準部を基準として変形することで駆動力を発生する可動部とを備え、前記基準部および前記可動部が、温度変化に対する変形の度合いが相互に異なる第1および第2層を含む複数層が積層された板状部をそれぞれ有し、前記基準部に含まれる前記第1層の厚みが、前記可動部に含まれる前記第1層の厚みよりも薄い。
【0022】
第11の態様に係るアクチュエータは、第10の態様に係るアクチュエータであって、前記基準部が、前記可動部と接続する板状接続部を有し、前記基準部のうちの前記板状接続部を除く残余の板状部に含まれる第1層の厚みが、前記板状接続部に含まれる前記第1層の厚みよりも薄い。
【0023】
第12の態様に係る移動機構は、第10または第11の態様に係るアクチュエータと、前記アクチュエータが発生する駆動力によって移動される移動対象部とを備える。
【0024】
第13の態様に係るカメラモジュールは、第10または第11の態様に係るアクチュエータと、撮像素子と、被写体からの光を前記撮像素子まで導く光学系とを備え、前記撮像素子および前記光学系のうちの少なくとも一方が、前記アクチュエータが発生する駆動力によって移動される移動対象部に含まれる。
【発明の効果】
【0025】
第1から第9の何れの態様に係るアクチュエータの製造方法によっても、1以上の層の厚みが薄くなった部分、または1以上の層が取り除かれた部分を基準として駆動させることで、本来変形すべきでない部分が環境温度の変化や通電による加熱に拘わらず変形し難くなるため、製造コストの上昇が抑制されつつ、簡易な構成で高精度の動作が可能なアクチュエータを実現することができる。
【0026】
第3の態様に係るアクチュエータの製造方法によれば、駆動力の低下を招くことなく、製造コストの上昇の抑制と簡易な構成による高精度な動作とが両立可能なアクチュエータが実現される。
【0027】
第4の態様に係るアクチュエータの製造方法によれば、基準部における強度不足の発生を抑制することができる。
【0028】
第5の態様に係るアクチュエータの製造方法によれば、駆動力を発生させる際に応力が集中する部分の強度が高められる為、動作精度が高められる。
【0029】
第8の態様に係るアクチュエータの製造方法によれば、1以上の層の厚みまたは有無を容易に調節することができる。
【0030】
第9の態様に係るアクチュエータの製造方法によれば、製造コストの低減、および製造設備の小型化が図られる。
【0031】
第10または第11の態様に係るアクチュエータ、第12の態様に係る移動機構、および第13の態様に係るカメラモジュールの何れによっても、製造コストの上昇が抑制されつつ、簡易な構成で高精度の動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一実施形態に係るカメラモジュールを搭載した携帯電話機の概略構成を示す模式図である。
【図2】一実施形態に係る第1の筐体に着目した断面模式図である。
【図3】一実施形態に係るカメラモジュールの断面模式図である。
【図4】一実施形態に係るカメラモジュールを側方から見た模式図である。
【図5】レンズ群の構成を示す模式図である。
【図6】レンズ群の構成を示す模式図である。
【図7】レンズ群の構成を示す模式図である。
【図8】レンズ群の構成を示す模式図である。
【図9】レンズ群の構成を説明するための模式図である。
【図10】レンズ位置調整層の構造を示す上面模式図である。
【図11】レンズ位置調整層の構造を示す断面模式図である。
【図12】アクチュエータ層の構成を示す上面模式図である。
【図13】アクチュエータ層の構成を側方から見た模式図である。
【図14】アクチュエータ層の詳細な構成を説明するための上面模式図である。
【図15】アクチュエータ層の詳細な構成を説明するための下面模式図である。
【図16】アクチュエータ層の詳細な構成を説明するための断面模式図である。
【図17】アクチュエータ層の動作を説明するための断面模式図である。
【図18】第2平行ばねの構造を示す下面模式図である。
【図19】レンズ群と第2平行ばねとの関係を示す模式図である。
【図20】第1平行ばねの構造を示す上面模式図である。
【図21】レンズ群と第1平行ばねとの関係を示す模式図である。
【図22】カメラモジュールの製造フローを示すフローチャートである。
【図23】アクチュエータ層シートの製造フローを示すフローチャートである。
【図24】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図25】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図26】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図27】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図28】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図29】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図30】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図31】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図32】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図33】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図34】アクチュエータ層シートの製造工程を示す断面図である。
【図35】アクチュエータ層シートの一部の構成を示す平面模式図である。
【図36】複数のシートの接合工程等を説明するためのイメージ図である。
【図37】一変形例に係るアクチュエータ層の詳細な構成を示す上面模式図である。
【図38】一変形例に係るカメラモジュールの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
<(1)携帯電話機の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るカメラモジュール500を搭載した携帯電話機100の概略構成を示す模式図である。なお、図1および図1以降の他の図では方位関係を明確化するために、XYZの相互に直交する3軸が適宜付される。
【0035】
図1で示されるように、携帯電話機100は、折り畳み式の携帯電話機として構成され、ヒンジ部400によって、第1の筐体200と第2の筐体300とが回動可能に接続される。各筐体200,300は、板状の略直方体の形状を有し、各種電子部材を格納する。具体的には、第1の筐体200は、カメラモジュール500および表示ディスプレイを有し、第2の筐体300は、携帯電話機100を電気的に制御する制御部とボタン等の操作部材とを有する。
【0036】
また、第1の筐体200には、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800が搭載される。電流供給ドライバ600は、カメラモジュール500のヒータ層155(図15)への電流の供給を制御する。電気抵抗検出部700は、ヒータ層155における電気抵抗を検出する。コントラスト検出部800は、撮像素子181(図3)で得られる画像信号についてコントラストを検出する。
【0037】
また、第2の筐体300には、携帯電話機100の全体の動作を統括制御する回路基板上に合焦制御部310が搭載される。合焦制御部310は、電気抵抗検出部700およびコントラスト検出部800からの信号の入力に応じて、電流供給ドライバ600を介したヒータ層155への電流の供給量を制御する。該制御によって、カメラモジュール500の合焦状態を調整するオートフォーカス(AF)制御が実行される。
【0038】
図2は、第1の筐体200に着目した断面模式図である。図1および図2で示されるように、カメラモジュール500は、XY断面のサイズが約5mm四方であり、厚さ(Z方向の奥行き)が約3mm程度である小型の撮像装置、所謂マイクロカメラユニット(MCU)となっている。
【0039】
以下、カメラモジュール500の構成、製造工程、およびAF制御について順次説明する。
【0040】
<(2)カメラモジュールの構成>
<(2-1)カメラモジュールの概略構成>
図3は、カメラモジュール500の断面模式図であり、図3の矢印AR1の示す方向が+Z方向に対応する。なお、図3以降の他の図面においても、方位関係の明確化のために、+Z方向に対応する方向を示す矢印AR1が適宜付される。また、図4は、カメラモジュール500を側方から見た側面図である。
【0041】
図3で示されるように、カメラモジュール500は、撮影光学系としてのレンズ群20が移動可能に設けられる光学ユニットKBと、被写体像に関する撮影画像を取得する撮像部PBとを有する。
【0042】
撮像部PBは、例えば、CCDセンサ等の撮像素子181を有する撮像素子層18と、カバーガラス層17とが+Z方向にこの順序で積層された構成を有する。
【0043】
光学ユニットKBは、蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね12、第2枠層13、第2平行ばね14、アクチュエータ層15、およびレンズ位置調整層16が、−Z方向にこの順序で積層されて構成される。また、光学ユニットKBでは、第1平行ばね12と第2平行ばね14との間にレンズ群20が保持され、第1および第2平行ばね12,14とアクチュエータ層15との協働によって、レンズ群20がZ軸に沿った方向に移動する。なお、光学ユニットKBを構成する各部は、いずれもウエハ状態(ウエハレベル)で製作される。
【0044】
上記構成を有するカメラモジュール500では、蓋層10、第1および第2枠層11,13、レンズ位置調整層16、カバーガラス層17、および撮像素子層18が、レンズ群20に対する固定部となる。つまり、レンズ群20が、固定部を基準となる部分(基準部)として、該基準部に対して相対的に移動する。
【0045】
また、カメラモジュール500は、ウエハ状態で製作され、その4つの側面(図4のZ軸に平行な側面)が、ダイシングによって形成された切断面となっている。該切断面では、光学ユニットKBおよび撮像部PBを構成する複数層の積層構造が露出する。
【0046】
また、カメラモジュール500では、レンズ群20は、固定部に結合された第1および第2平行ばね12,14によって支持される。詳細には、レンズ群20の−Z側におけるアクチュエータ層15と該レンズ群20との間には、第2平行ばね14が介挿される。また、レンズ群20の+Z側における第1枠層11と該レンズ群20との間には、第1平行ばね12が介挿される。このため、レンズ群20は、第1および第2平行ばね12,14によって挟持され、レンズ群20の移動時に、レンズ群20の姿勢および光軸が略一定に保持される。
【0047】
また、第1および第2平行ばね12,14は、移動の対象となる部材(移動対象部)としてのレンズ群20が+Z方向に移動する際に、弾性変形しつつ、レンズ群20の移動方向(+Z方向)とは反対方向の力を、該レンズ群20に対して付与する。一方、レンズ群20が−Z方向に移動する際には、第1および第2平行ばね12,14がレンズ群20に対して付与する力の方向は、レンズ群20の移動方向(すなわち−Z方向)と一致する。
【0048】
更に、レンズ群20が+Z方向に移動していない非駆動状態(例えば駆動前の静止状態)では、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ群20がレンズ位置調整層16の突起部162の上端面に対して押し付けられる。このため、該レンズ群20がレンズ位置調整層16によっても支持される。その結果、カメラモジュール500に対して強い衝撃が付与されても、レンズ群20の姿勢が保持される。
【0049】
また、該非駆動状態では、レンズ群20がZ軸に沿って変位可能な範囲(変位可能範囲)の最も−Z側の基準位置に配置されて静止する。なお、該基準位置は、例えば、撮像素子181において多数の画素回路が配列されている+Z側の面(撮像面)上に光学ユニットKBの焦点が配置されるような位置に設定される。
【0050】
アクチュエータとしてのアクチュエータ層15は、基準部を構成する枠体15f(図12)と、+Z方向への駆動力を発生させる可動部15a,15b(図12)とを有し、レンズ群20の−Z側に配置される。アクチュエータ層15は、温度変化に対する変形の度合いが相互に異なる複数の素材を用いてそれぞれ構成される複数層が積層された構造を有し、加熱に応じて駆動力を発生させる。
【0051】
但し、枠体15fでは、可動部15a,15bと比較して、複数層のうち一層が取り除かれた構成を有するため、基準部における不要な変形の発生が抑制される。アクチュエータ層15の構成および製造工程については更に後述する。
【0052】
なお、ここで言う「温度変化に対する変形の度合い」には、熱膨張率や熱収縮率等といった元の形状を基準とした元の形状と変形後の形状との間における比率(変形率)等が含まれる。
【0053】
可動部15a,15bは、レンズ群20の−Z側に突出した第1突起部201と接触し、可動部15a,15bが発生する駆動力が、第1突起部201を介してレンズ群20に伝達される。このため、アクチュエータ層15は、レンズ群20を所定方向(ここでは、+Z方向)に移動させる。なお、可動部15a,15bにおける+Z方向への変位(駆動変位)が小さくなっていく場面では、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によって、レンズ群20が所定方向とは反対方向(−Z方向)に移動する。
【0054】
このように、光学ユニットKBは、レンズ群20を該レンズ群20の光軸方向(+Z方向)に変位させることが可能な移動機構として機能する。
【0055】
なお、側面配線21は、カメラモジュール500の4つの側面のうちの1つの側面に配設される薄型の導電部材である。該側面配線21は、図4で示されるように、撮像素子層18を介して、ヒータ層155(図15)と、電流供給ドライバ600および電気抵抗検出部700とを電気的に接続する。なお、側面配線21と第2平行ばね14とが短絡しないように、第2平行ばね14と側面配線21との間に絶縁部14epが設けられる。
【0056】
<(2-2)レンズ群について>
レンズ群20は、ガラス基板を基材としてウエハレベルで作製され、例えば、2枚以上(ここでは2枚)のレンズを重ね合わせて成形される。該レンズ群20は、被写体からの光を撮像素子181に導く撮像レンズとして機能する。
【0057】
図5および図6は、レンズ群20の断面模式図であり、矢印AR2の示す方向が+Z方向に対応する。図7は、レンズ群20を下方(−Z側)から見たレンズ群20の外観を示す下面模式図であり、図8は、レンズ群20を上方(+Z側)から見たレンズ群20の外観を示す上面模式図である。
【0058】
図5および図6で示されるように、レンズ群20は、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1と、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2と、スペーサ層RBとを備える。ここでは、第1レンズ構成層LY1と第2レンズ構成層LY2とが、スペーサ層RBを介して結合され、該レンズ群20の光軸は、Z軸に沿った方向に設定される。
【0059】
また、図5から図7で示されるように、第1レンズG1を有する第1レンズ構成層LY1の一方主面(ここでは、−Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に第1突起部201が設けられる。更に、図5,図6および図8で示されるように、第2レンズG2を有する第2レンズ構成層LY2の一方主面(ここでは、+Z側)には、レンズとして機能しない非レンズ部に第2突起部202が設けられる。そして、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の非レンズ部の外縁は略正方形の形状を有する。
【0060】
また、図9は、スペーサ層RBの形状に着目して、スペーサ層RBを上方(+Z側)から見た図である。図9で示されるように、スペーサ層RBは、第1および第2レンズ構成層LY1,LY2の非レンズ部の外縁に沿って設けられ、XY断面の外縁および内縁の形状が矩形である環状の構成を有する。
【0061】
<(2-3)各機能層について>
以下、カメラモジュール500を構成する各機能層の詳細について説明する。なお、各機能層については、−Z側の面を一主面と称し、+Z側の面を他主面と称する。
【0062】
<(2-3-1)撮像素子層>
図3で示されるように、撮像素子層18は、光学ユニットKBを通過した被写体からの光を受光して、被写体の像に関する画像信号を生成する撮像素子181、その周辺回路、および撮像素子181を囲む外周部を備える。また、撮像素子181には、多数の画素回路が配列される。なお、撮像素子層18の一主面(−Z側の面)には、リフロー方式によるはんだ付けを行うためのはんだボールHBが設けられる。また、撮像素子層18の一主面には、撮像素子181に対する信号の付与、および該撮像素子181からの信号の読み出しを行う配線を接続するための各種端子が設けられる。
【0063】
例えば、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800が、例えば、第2の筐体300の回路基板上に設けられる。そして、リフロー方式によるカメラモジュール500のはんだ付けによって、コントラスト検出部800が、撮像素子層18に対して電気的に接続されるとともに、撮像素子層18を介して、電流供給ドライバ600および電気抵抗検出部700が、アクチュエータ層15に対して電気的に接続される。
【0064】
<(2-3-2)カバーガラス層>
図3で示されるように、カバーガラス層17は、略平板状であり且つXY断面が略正方形の形状を有し、透明なガラス等によって構成される。該カバーガラス層17は、撮像素子層18の他主面に対して接合され、撮像素子181を保護する。なお、カバーガラス層17が撮像素子層18上に接合された状態で撮像素子基板178を構成する。
【0065】
<(2-3-3)レンズ位置調整層>
レンズ位置調整層16は、樹脂材料を用いて構成されるとともに、撮像素子181とレンズ群20との間に配設され、且つ撮像素子181とレンズ群20との距離を調整する。具体的には、レンズ位置調整層16は、非駆動状態におけるレンズ群20の位置(初期位置)を規定する。なお、レンズ位置調整層16は、例えば、樹脂をエッチングする手法等を用いて生成される。
【0066】
図10は、レンズ位置調整層16を上方(+Z側)から見たレンズ位置調整層16の上面図である。図11は、レンズ位置調整層16の切断面XI−XIにて矢印方向に見たレンズ位置調整層16の断面図である。図10および図11で示されるように、レンズ位置調整層16は、枠体161と突起部162とを備える。
【0067】
枠体161は、レンズ位置調整層16の外周部分を構成する略矩形の環状の部分であり、XY平面に略平行な板状の形状を有する。そして、枠体161は、Z軸に沿った方向に貫通する孔(貫通孔)16HLを形成し、枠体161を構成する+Y側の板状の部材および−Y側の板状の部材は、各板状の部分の下部から貫通孔16HL側に出っ張った部分(凸部)161Tをそれぞれ有する。また、枠体161の一主面は、隣接するカバーガラス層17に対して接合され、枠体161の他主面は、隣接するアクチュエータ層15(詳細には、枠体15f(図12))と接合される。
【0068】
突起部162は、枠体161に設けられる凸部161Tの内縁近傍において上方(+Z方向)に向けて立設される。該突起部162は、XZ平面に略平行で且つ略長方形の盤面を有する板状の部分であり、突起部162の長手方向がX軸に略平行な方向とされ、突起部162の短手方向がZ軸に略平行な方向とされる。そして、突起部162の+Z側の端面は、レンズ群20が当接することで、該レンズ群20を初期位置に配置する。
【0069】
また、図10では、撮像素子181を構成する複数の画素回路が配列される領域(画素配列領域)、すなわち撮像素子181の前面(撮像面)の外縁が破線で示されている。図10で示されるように、突起部162は、被写体からレンズ群20を介して撮像素子181の画素配列領域に至る光路を、該画素配列領域の幅が最も狭い方向において挟む位置に配設される。
【0070】
<(2-3-4)アクチュエータ層>
図12は、アクチュエータ層15を上方(+Z側)から見た該アクチュエータ層15の概略的な構成を示す上面図である。図13は、アクチュエータ層15を側方から見た該アクチュエータ層15の側面図である。
【0071】
図12および図13で示されるように、アクチュエータ層15は、外周部を構成する枠体15fと、枠体15fの内側の中空部分に対して枠体15fから突設される2枚の板状の可動部15a,15bとを備える。つまり、各可動部15a,15bは、基準部を構成する枠体15fに対して一端が固定された片持ち梁の構成を有する。そして、枠体15fの一主面は、隣接するレンズ位置調整層16(具体的には、枠体161)に対して接合され、枠体15fの他主面は、隣接する第2平行ばね14(具体的には、固定枠体141(図19))と接合される。
【0072】
図14は、アクチュエータ層15を上方(+Z側)から見た該アクチュエータ層15の詳細な構成を示す上面図である。図15は、アクチュエータ層15を下方(−Z側)から見た該アクチュエータ層15の詳細な構成を示す下面図である。図16は、アクチュエータ層15の切断面XVI−XVIにて矢印方向に見たアクチュエータ層15の断面を模式的に示す図である。
【0073】
図16で示されるように、アクチュエータ層15は、低熱膨張層151、熱伝導層152、高熱膨張層153、絶縁層154、およびヒータ層155が、+Z側から−Z側に向けてこの順番に積層されて構成される。つまり、アクチュエータ層15は、温度変化に対する変形の度合いが相互に異なる低熱膨張層151と高熱膨張層153とを含む複数層が積層された板状の部分(板状部)を有する。
【0074】
但し、図14で示されるように、低熱膨張層151については、可動部15a,15bに対応する部分には設けられるが、枠体15fに対応する部分には設けられない。具体的には、低熱膨張層151は、可動部15aを構成する部分(低熱膨張部)151aと、可動部15bを構成する部分(低熱膨張部)151bとによって構成される。そして、枠体15fでは、熱伝導層152が露出する。
【0075】
このため、可動部15a,15bでは、熱伝導層152を挟んで低熱膨張層151と高熱膨張層153とが配置された所謂バイメタル(Bi-metallic strip)が採用される。その一方で、枠体15fでは、低熱膨張層151が取り除かれているため、バイメタルの構造が採用されていない。
【0076】
低熱膨張層151は、高熱膨張層153を構成する素材よりも小さな熱膨張率を持つ素材によって構成される。該低熱膨張層151を構成する素材としては、例えば、熱膨張率が1.1×10-6/℃である鉄・ニッケル合金が採用されることが好ましい。但し、該素材の熱伝導率は、比較的低く、約8.8W・m-1・K-1である。
【0077】
熱伝導層152は、低熱膨張層151および高熱膨張層153を構成する素材よりも大きな熱伝導率を持つ素材によって構成される。該熱伝導層152を構成する素材としては、例えば、熱伝導率が105.5W・m-1・K-1である銅および銅合金、熱伝導率が204W・m-1・K-1であるアルミニウム、ならびに熱伝導率が90W・m-1・K-1であるニッケルのうちの何れか1つの素材であれば良い。
【0078】
高熱膨張層153は、低熱膨張層151を構成する素材よりも大きな熱膨張率を持つ素材によって構成される。該高熱膨張層153を構成する素材としては、例えば、熱膨張率が20×10-6/℃である鉄・ニッケル・マンガン合金、熱膨張率が30×10-6/℃であるマンガン・銅・ニッケル合金、熱膨張率が18×10-6/℃である鉄・ニッケル・クロム合金、および熱膨張率が18×10-6/℃である鉄・モリブデン・ニッケル合金のうちの何れか1つの素材であれば良い。但し、これらの素材の熱伝導率は、比較的低く、例えば、鉄・ニッケル・マンガン合金の熱伝導率は、約8.8W・m-1・K-1である。
【0079】
絶縁層154は、シリカ(二酸化珪素)等の絶縁体によって構成される。
【0080】
ヒータ層155は、絶縁層154の一主面上にパターンニングされ、例えば、金等の金属によって構成される。詳細には、図15で示されるように、ヒータ層155は、電極部155Ea,155Eb、ヒータ部155a,155b、および配線部1551〜1553を有する。
【0081】
電極部155Ea,155Ebは、枠体15fの隣り合う2つの角部近傍に設けられる。そして、電極部155Ea,155Ebは、側面配線21に対してそれぞれ電気的に接続され、電極部155Eaと電極部155Ebとの間に対して電圧の印加が可能である。
【0082】
ヒータ部155aは、可動部15aを構成し、該可動部15aのうちの枠体15fに固定される一端部(固定端)近傍から、該可動部15aの他端部(自由端)FT近傍に掛けて延設されるとともに、該自由端FT近傍で折り返されて、固定端近傍まで延設される。また、ヒータ部155bは、可動部15bを構成し、該可動部15bのうちの枠体15fに固定される一端部(固定端)近傍から、該可動部15bの他端部(自由端)FT近傍に掛けて延設されるとともに、該自由端FT近傍で折り返されて、固定端近傍まで延設される。
【0083】
配線部1551〜1553は、ヒータ部155a,155bと比較して、幅が広く、電気抵抗が低くなるように構成される。
【0084】
そして、ヒータ層155では、電極部155Eaと電極部155Ebとの間に、配線部1551とヒータ部155bと配線部1553とからなる配線と、ヒータ部155aと配線部1552とからなる配線とが電気的に並列に接続される。
【0085】
具体的には、電極部155Eaに対して、ヒータ部155aの一端部が電気的に接続され、該ヒータ部155aの他端部が、配線部1552の一端部に対して電気的に接続される。そして、該配線部1552の他端部が、電極部155Ebに対して電気的に接続される。また、電極部155Eaに対して、配線部1551の一端部が電気的に接続され、該配線部1551の他端部が、ヒータ部155bの一端部に対して電気的に接続される。そして、該ヒータ部155bの他端部が、配線部1553の一端部に対して電気的に接続され、該配線部1553の他端部が、電極部155Ebに対して電気的に接続される。
【0086】
したがって、電極部155Eaと電極部155Ebとの間に電圧が印加されると、電気抵抗が相対的に高いヒータ部155a,155bが、自身のジュール熱によって発熱する。つまり、発熱部としてのヒータ部155a,155bが電流の供給に応じて発熱する。
【0087】
図17は、ヒータ部155a,155bの発熱に応じた可動部15a,15bの変形態様を示す断面模式図である。図17は、図16で示されるアクチュエータ層15の断面図に対応する。なお、可動部15a,15bの変形の態様は、それぞれ同様であるため、ここでは、可動部15aの変形態様を例示して説明する。図16および図17では、可動部15aの変形態様が示されている。
【0088】
図16で示されるように、ヒータ部155aが発熱していない状態では、可動部15aが略平坦な形状を有する。これに対して、ヒータ部155aに対する通電に応答した発熱により、ヒータ部155aの発熱による熱量が、可動部15aの周辺の雰囲気および枠体15fに対して放出される熱量を上回ることで、可動部15aの温度が上昇する。このとき、可動部15aにおいては、高熱膨張層153が低熱膨張層151よりも大きく膨張する。そして、該膨張の違いによって、図17で示されるように、可動部15aが反るような変形を生じて、自由端FTが上方(+Z方向)へ変位する。
【0089】
このようにして、可動部15a,15bでは、温度変化に応じて基準部を基準とした変形が生じて、駆動力を発生させる。
【0090】
一方、ヒータ部155aに対する通電が停止されると、可動部15aの熱が熱伝導層152の存在によって枠体15fに急速に伝わるとともに、枠体15fからの放熱によって、可動部15aが急冷される。このとき、自由端FTにおける上方(+Z方向)への変位が低減されていき、図16で示されるように、可動部15aが略平坦な形状に戻る。
【0091】
ここで、仮に、熱伝導層152の他主面上の全面渡って低熱膨張層151が形成されていれば、枠体にもバイメタルが形成されてしまう。この場合、ヒータ部155a,155bの発熱や周囲の温度(環境温度)の変化に応じて、基準部を構成する枠体も少なからず変形する傾向を示す。このような不要な変形が生じれば、アクチュエータの変位の制御に対して、温度特性の悪化や連続して繰り返して動作させる際の動作精度の悪化を招く。
【0092】
しかしながら、本実施形態では、上述したように、熱伝導層152の他主面上のうちの可動部15a,15bを構成する部分の面上において低熱膨張層151が選択的に存在する。このため、基準部を構成する枠体15fにはバイメタルが形成されず、基準部を構成する枠体15fにおいて不要な変形が生じ難くなる。
【0093】
なお、アクチュエータ層15については、フォトリソグラフィ技術等を用いて形成されるが、詳細な製造工程については、後述する。
【0094】
<(2-3-5)第2平行ばね>
図18は、第2平行ばね14を下方(−Z方向)から見た該第2平行ばね14の下面外観図である。図19は、レンズ群20に接合された第2平行ばね14を示す図である。図18で示されるように、第2平行ばね14は、固定枠体141と、弾性部142とを有する弾性部材であり、ばね機構を形成する層(弾性層)となっている。
【0095】
固定枠体141は、第2平行ばね14の外周部を構成し、隣接するアクチュエータ層15の枠体15fと接合される。ここで、アクチュエータ層15のヒータ層155と、第2平行ばね14との間隔は、通常は、数十um程度しかない。このため、ヒータ層155に電圧および電流を供給する側面配線21を、例えば、印刷等によって撮像素子層18からアクチュエータ層15にわたって単に設けると、側面配線21が、固定枠体141にまでかかってしまう。つまり、側面配線21と第2平行ばね14とが短絡してしまう。
【0096】
そこで、該短絡を防ぐ目的で、固定枠体141の4隅の近傍の外縁に窪んだ切り欠き部143が設けられる。該切り欠き部143には、第2枠層13と第2平行ばね14とが接合される際、および第2平行ばね14とアクチュエータ層15とが接合される際に、接合に用いられるエポキシ系の樹脂等の接着剤が充填されることで、絶縁部14ep(図3および図4)が形成される。該絶縁部14epの存在により、側面配線21と第2平行ばね14とが接触することによる不要な短絡が防止される。
【0097】
弾性部142は、固定枠体141との接続部PG1と、レンズ群20との接合部PG2とを有し、接続部PG1と接合部PG2とが板状部材EBで繋がれる。そして、図19で示されるように、第2平行ばね14は、弾性部142に設けられる接合部PG2においてレンズ群20と接合される。ここでは、第1突起部201は、第2平行ばね14の固定枠体141と板状部材EBとの隙間を通って、アクチュエータ層15の可動部15a,15bのうちの自由端FT近傍と当接する。
【0098】
そして、レンズ群20が固定枠体141に対して+Z方向に移動されるにつれて、接続部PG1と接合部PG2とのZ方向の位置がずれ、板状部材EBは曲げ変形(たわみ変形)を生じて湾曲する。つまり、第2平行ばね14は、板状部材EBの弾性変形によって、レンズ群20の光軸方向(±Z方向)に弾性変形可能であり、ばね機構として機能する。
【0099】
なお、第2平行ばね14は、SUS系の金属材料またはりん青銅等を用いて作製される。例えば、SUS系の金属材料で第2平行ばね14が作製される場合は、フォトリソグラフィ技術により、平行ばねの形状のレジストが金属材料上にパターンニングされ、塩化鉄系のエッチング液に浸してウエットエッチングが行われることで、平行ばねのパターンが形成される。
【0100】
<(2-3-6)第2枠層>
図3で示されるように、第2枠層13は、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形状である環状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する。第2枠層13は、中空部分にレンズ群20が配置されることで、該レンズ群20を側方から囲む。なお、第2枠層13を構成する素材としては、樹脂やガラス等が挙げられ、該第2枠層13は、金属金型を用いたいわゆるプレス法や射出成型法等によって製作される。そして、第2枠層13の−Z側に位置する下端面(一主面)は、隣接する第2平行ばね14の固定枠体141と接合される。また、第2枠層の+Z側に位置する上端面(他主面)は、隣接する第1平行ばね12(詳細には、固定枠体121(図20))と接合される。
【0101】
<(2-3-7)第1平行ばね>
図20は、第1平行ばね12を上方(+Z方向)から見た該第1平行ばね12の上面外観図である。図20で示されるように、第1平行ばね12は、切り欠き部143が設けられていないことを除いて、第2平行ばね14と同様の構成および機能を有する弾性部材であり、固定枠体121と弾性部122とを備える。そして、固定枠体121の一主面は、隣接する第2枠層13の他主面と接合され、固定枠体121の他主面は、隣接する第1枠層11(詳細には、第1枠層11の−Z側の下端面)と接合される。
【0102】
図21は、レンズ群20に接合された第1平行ばね12を示す図である。図21で示されるように、弾性部122に設けられた接合部PG2は、レンズ群20の突起部202の+Z側の端面(上端面)と接合される。このため、固定枠体121に対してレンズ群20が+Z方向に相対的に移動されると、板状部材EBにおいて弾性変形が発生し、第1平行ばね12が、ばね機構として機能する。
【0103】
<(2-3-8)第1枠層>
図3で示されるように、第1枠層11は、第2枠層13と同様に、XY断面の外縁および内縁がそれぞれ略矩形状である環状の部材であり、Z軸に沿って貫通する中空部分を形成する。第1枠層11の中空部分は、レンズ群20が+Z方向に移動される際に、弾性変形する板状部材EBと突起部202とが移動可能な空間となる。なお、第1枠層11は、第2枠層13と同様な素材および製作方法によって形成される。そして、第1枠層11の−Z側に位置する下端面(一主面)は、隣接する第1平行ばね12の固定枠体121と接合される。また、第1枠層の+Z側に位置する上端面(他端面)は、隣接する蓋層10(詳細には、蓋層10の外周部近傍)と接合される。
【0104】
<(2-3-9)蓋層>
蓋層10は、XY断面の外縁が略正方形であるとともに、XY平面に略平行な盤面を有する板状の部材である。該蓋層10は、ガラス板等の透明な素材によって構成される。
【0105】
<(3)カメラモジュールの製造工程>
図22は、カメラモジュール500の製造工程を示すフローチャートである。図22で示されるように、(工程A)レンズ群20の生成(ステップS1)、(工程B)複数のシートの準備(ステップS2)、(工程C)組み立て治具の準備(ステップS3)、(工程D)シートの第1の接合(ステップS4)、(工程E)レンズ群20の取り付け(ステップS5)、(工程F)シートの第2の接合(ステップS6)、(工程G)撮像素子基板178の取り付け(ステップS7)、および(工程H)ダイシング(ステップS8)が順次に行われて、カメラモジュール500が製造される。
【0106】
<(3-1)レンズ群の生成(工程A)>
ステップS1では、レンズ群20が生成される。ここでは、まず、多数のレンズ群20がマトリックス状に配列されたウエハ(レンズ群ウエハ)が製作され、ダイシングにより、多数のレンズ群20が個片化されて、多数のレンズ群20が製作される。
【0107】
なお、レンズ群ウエハは、多数の第1レンズ構成層LY1が配列されたウエハ(第1レンズ構成層ウエハ)と、多数のスペーサ層RBが配列されたウエハ(スペーサ層ウエハ)と、多数の第2レンズ構成層LY2が配列されたウエハ(第2レンズ構成層ウエハ)とが積層されて、相互に接合されることで製作される。
【0108】
<(3-2)シートの準備(工程B)>
ステップS2では、カメラモジュール500を構成する各機能層に係るシートが、層毎に形成される。なお、ここでは、ウエハレベルの円盤状のシートが準備される。機能層毎のシートには、該機能層のチップにそれぞれ相当する多数の部分がマトリクス状に所定配列で形成される。
【0109】
具体的には、ステップS2では、蓋層10、第1枠層11、第1平行ばね12、第2枠層13、第2平行ばね14、アクチュエータ層15、およびレンズ位置調整層16といった各機能層のチップに相当する部分がそれぞれ所定配列で形成された各シートU10〜U16、ならびにカバーガラス層17と撮像素子層18とが接合されて形成される撮像素子基板178に係るチップを含むシート(撮像素子基板シート)U178がそれぞれ準備される。つまり、8枚のシートU10〜16,U178が準備される。
【0110】
ここで、アクチュエータ層15に相当する部分が所定配列で形成されたアクチュエータ層シートU15の製造工程について説明する。
【0111】
図23は、アクチュエータ層シートU15の製造工程を示すフローチャートである。アクチュエータ層シートU15は、以下のステップS21〜S31の工程が順次に行われることで製造される。また、図24〜図34は、アクチュエータ層シートU15の製造工程を説明するための断面図である。なお、図24〜図34では、1つのアクチュエータ層15が着目されている。
【0112】
まず、ステップS21では、図24で示されるように、低熱膨張層151、熱伝導層152、および高熱膨張層153がこの順番で積層された板状の部材(板状部材)であるバイメタルシート15Biが準備される。
【0113】
ステップS22では、図25で示されるように、バイメタルシート15Bi上に、膜状の絶縁層154が成膜される。
【0114】
ステップS23では、図26で示されるように、フォトリソグラフィ技術によって、絶縁層154上に、レジスト膜のパターン(レジストパターン)R1が形成される。
【0115】
ステップS24では、図27で示されるように、レジストパターンR1が形成されている絶縁層154上に、スパッタリングによって金属(例えば、金)の膜が成膜される。
【0116】
ステップS25では、所謂リフトオフ法によって、レジストパターンR1上に堆積している金属膜が、レジストパターンR1とともに除去される。このとき、図28で示されるように、ヒータ層155に相当する金属膜のパターンが出来上がる。
【0117】
ステップS26では、図29で示されるように、低熱膨張層151上にマスクR2が形成される。ここでは、バイメタルシート15Biのうちの枠体15fに対応する一部の板状の部分(板状部)が露出するようにマスクR2が形成される。ここで、マスクR2の形成は、フォトリソグラフィ技術や印刷等によって実現される。なお、該マスクR2の形成は、印刷や塗布等の低精度の工法によって実現されても良い。
【0118】
ステップS27では、下面側から低熱膨張層151のエッチングが行われる。エッチングの方式としては、例えば、塩化第二鉄水溶液をエッチング液として用いたウエットエッチングが採用される。具体的には、下面側から、エッチング液が噴霧される。ここでは、図30で示されるように、枠体15fに対応する一部の板状部を構成する低熱膨張層151に対して選択的にエッチングが行われることで、当該部分が取り除かれる。なお、低熱膨張層151の選択的なエッチングが行われても、バイメタルシート15Biの一体性は保持される為、以降の製造工程に対して悪影響は生じない。
【0119】
ところで、低熱膨張層151の厚みの減少に応じて、熱に応じてバイメタルが変形する量(変形量)が減少する。このため、エッチングの度合いが若干不足して、低熱膨張層151のうちの枠体15fに対応する部分がある程度残存しても、基準部における不要な変形が抑制される。一方、過度のエッチングによって、次の層である熱伝導層152が、若干薄くなったとしても、大した不具合は生じない。
【0120】
したがって、ここでは、熱伝導層152の素材として、エッチング液に対して溶けない特別な素材等が採用される必要性がなく、エッチング処理の時間によって、低熱膨張層151の厚みや有無等が調節されれば良い。
【0121】
ステップS28では、図31で示されるように、ステップS26で形成されたマスクR2が除去される。
【0122】
ステップS29では、図32で示されるように、アクチュエータ層15の枠体15fおよび可動部15a,15bに相当する部分を上下から覆うようにマスクR3,R4が形成される。ここで、マスクR3,R4の形成は、フォトリソグラフィ技術や印刷等によって実現される。
【0123】
ステップS30では、ステップS27と同様なエッチング液によるエッチングが行われる。このとき、図33で示されるように、アクチュエータ層15の中空部分に相当する部分が形成される。ここで、製造設備の簡略化を図る観点から、ステップS30におけるエッチング処理と、ステップS27におけるエッチング処理とが、マスクの形状を異ならせて、同一のエッチング装置によって実行される等、製造設備が共通化されることが好ましい。
【0124】
なお、ここでは、エッチングによって各中空部分に相当する部分が形成されたが、エッチングの代わりに、プレス加工が採用されても良い。
【0125】
ステップS31では、図34で示されるように、ステップS29で形成されたマスクR3,R4が除去される。なお、ステップS28におけるマスクR2の除去と、ステップS31におけるマスクR3,R4の除去についても、製造設備の簡略化を図る観点から、製造設備が共通化されることが好ましい。
【0126】
図35は、上記ステップS21〜S31の工程によって完成されるアクチュエータ層シートU15の一部分の構成例を示す平面模式図である。図35では、4つのアクチュエータ層15に相当する部分が示されている。アクチュエータ層シートU15は、後述するダイシング(工程H)において、図35で示される太破線に沿って切断されることで、アクチュエータ層15毎に分離される。
【0127】
<(3-3)組み立て治具の準備(工程C)>
ステップS3では、組み立て治具が準備される。該組み立て治具は、平板状の基台上に略同一の形状を有する多数の突起部が所定配列で設けられて構成される。なお、組み立て治具には、2カ所以上の所定の箇所に位置合わせのためのアライメントマークが形成される。また、突起部の上面は、平板状の基台の主面に対して略平行となるように構成される。なお、該上面上で各カメラモジュール500に相当するユニットが製作される。
【0128】
<(3-4)シートの第1の接合(工程D)>
ステップS4では、準備された8枚のシートU10〜16,U178のうちの3枚のシートU11〜U13が接合される。ここでは、第1枠層シートU11、第1平行ばねシートU12、および第2枠層シートU13について、各シートU11〜U13に含まれる各チップに相当する部分が互いに積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。そして、各シートU11〜U13が接着剤等を用いて接合される。
【0129】
図36は、ステップS4で3枚のシートU11〜U13が積層されて接合される様子、ステップS5でレンズ群20が取り付けられる様子、ステップS6で4枚のシートU10,U14〜U16が積層されて接合される様子、およびステップS7で撮像素子基板シートU178が接合される様子を合わせて模式的に示す図である。
【0130】
<(3-5)レンズ群の取り付け(工程E)>
ステップS5では、ステップS4で製作されたユニットの各第2枠層13の中空部分に、ステップS1で生成されたレンズ群20が、所定のマウンターによって取り付けられる。つまり、格子状の形状を有する第2枠層シートU13の各空隙に、レンズ群20がそれぞれ挿入される。ここでは、レンズ群20が接合部PG2に対して押し付けられつつ、第2突起部202の端面が、接合部PG2の一主面側に対して接合される。なお、接合手法としては、紫外線の照射によって硬化する接着剤(UV硬化接着剤)を用いて接合する手法等が挙げられる。
【0131】
<(3-6)シートの第2の接合(工程F)>
ステップS6では、ステップS2で準備された8枚のシートU10〜16,U178のうちの4枚のシートU10,U14〜U16が接合される。具体的には、ステップS5までに生成されたユニットの一主面側に対して、第2平行ばねシートU14、およびアクチュエータ層シートU15に含まれる各チップに相当する部分が、第2枠層シートU13に含まれる各チップに相当する部分に対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせが行われる。そして、各シートU14,U15が順次に接着剤等を用いて接合される。
【0132】
また、第1枠層シートU11の他主面側に対して、蓋層シートU10に含まれる各チップに相当する部分が、第1枠層シートU11に含まれる各チップに相当する部分に対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせが行われる。そして、この状態で、第1枠層シートU11の他主面側に対して、蓋層シートU10が接着剤等を用いて接合される。
【0133】
更に、アクチュエータ層シートU15の一主面側に対して、レンズ位置調整層シートU16に含まれる各チップに相当する部分が、アクチュエータ層シートU15に含まれる各チップに相当する部分に対してそれぞれ積層されるように、シート形状のまま位置合わせが行われる。そして、この状態で、アクチュエータ層シートU15の一主面側に対して、レンズ位置調整層シートU16が接着剤等を用いて接合される。
【0134】
<(3-7)撮像素子基板の取り付け(工程G)>
ステップS7では、ステップS6までにレンズ位置調整層16が接合されて形成されたユニットのレンズ位置調整層16の枠体161に対して、撮像素子基板178の外周部が接合されるように、レンズ位置調整層シートU16の一主面に対して、撮像素子基板シートU178の他主面が接合される。
【0135】
<(3-8)ダイシング(工程H)>
ステップS8では、多数のレンズ群20がそれぞれ挿入され、且つ8つのシートU10〜U16,U178が積層されて形成された積層部材が、ダイシングテープ等で保護された後、ダイシング装置によってチップ毎に切り離される。このとき、多数のカメラモジュール500が完成される。
【0136】
なお、該ダイシング工程の途中で、側面配線21が形成される。具体的には、一方向に沿ったダイシングが行われた時点で、各カメラモジュール500の側面に相当する切断面において、各ヒータ層155(具体的には、電極部155Ea,155Eb)が露出する。このため、切断面に側面配線21を形成するための導電材料が塗布され、その後、他方向に沿ったダイシングが行われることで、多数のカメラモジュール500が完成される。
【0137】
<(4)カメラモジュールにおけるAF制御>
図1で示されるように、第1の筐体200には、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800が搭載されるとともに、第2の筐体300には、合焦制御部310が搭載される。
【0138】
電気抵抗検出部700は、ヒータ層155の電気抵抗を検出し、該電気抵抗を示す信号を合焦制御部310に対して出力する。
【0139】
合焦制御部310は、ヒータ層155の電気抵抗に基づいて、可動部15a,15bの変形(具体的には、自由端FTの変位)を検出する。該自由端FTの変位の検出については、ヒータ層155(具体的には、ヒータ部155a,155b)における形状と電気抵抗との関係が一義的に決まることが利用されて実行される。
【0140】
そして、合焦制御部310は、自由端FTの変位を検出しつつ、電流供給ドライバ600を介してヒータ層155に供給する電流を制御することで、可動部15a,15bの変形量、すなわち自由端FTの変位を制御する。このとき、自由端FTによる第1突起部201の押し上げにより、レンズ群20が+Z方向に移動されることで、レンズ群20と撮像素子181との離隔距離が変更されて、光学ユニットKBの焦点の位置が変更される。
【0141】
また、コントラスト検出部800は、撮像素子181で得られる画像信号について、コントラストを検出する。例えば、隣接画素間の階調値の差分を画像全体について積算した数値が、コントラストを示す評価値として検出される。該コントラストを示す評価値を示す信号は、合焦制御部310に対して出力される。
【0142】
AF制御を行う際には、合焦制御部310の制御により、まず、レンズ群20と撮像素子181との離隔距離が予め設定された多段階の離隔距離に順次に設定され、各離隔距離に設定される状態で撮像素子181によって画像信号が取得される。換言すれば、レンズ群20の+Z方向への繰り出し位置が、予め設定された多段階の位置に設定されるとともに、各繰り出し位置にレンズ群20が配置される時点において撮像素子181によって画像信号が取得される。
【0143】
なお、このとき、合焦制御部310が、電気抵抗検出部700で検出されるヒータ層155の電気抵抗をモニタリングしつつ、電流供給ドライバ600を介したヒータ層155への電流の供給を制御することで、レンズ群20の繰り出し位置が変更される。
【0144】
次に、合焦制御部310が、コントラスト検出部800によって各繰り出し位置について検出されたコントラストを示す評価値に基づいて、コントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置を検出する。該コントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置にレンズ群20が配置されている状態が、被写体に合焦している状態に相当する。
【0145】
そして、合焦制御部310の制御により、レンズ群20がコントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置まで移動されることで、カメラモジュール500における被写体に対する合焦が実現される。すなわち、AF制御が実現される。
【0146】
なお、非駆動状態では、レンズ群20は、第1および第2平行ばね12,14の弾性力によってレンズ位置調整層16に対して押し付けられる。このため、携帯電話機等が一般に使用される−20〜+70℃程度の温度範囲(使用環境温度範囲)内では、自由端FTが、第1および第2平行ばね12,14の弾性力に抗して変位しないように設計される。
【0147】
以上のように、一実施形態に係るアクチュエータ層15の製造方法によれば、基準部については低熱膨張層151が取り除かれた構成が、エッチングを用いた容易な方法によって実現される。その結果、アクチュエータ層15を、低熱膨張層151が取り除かれた基準部を基準として駆動させることで、本来変形すべきでない部分が、環境温度の変化や通電による加熱に拘わらず変形し難くなる。このため、製造コストの上昇が抑制されつつ、簡易な構成で高精度の動作が可能なアクチュエータが実現される。
【0148】
また、低熱膨張層151のうち、可動部15a,15bを構成する部分についてはエッチング処理が施されず、基準部を構成する部分についてはエッチングが施される。このため、駆動力の低下を招くことなく、製造コストの上昇の抑制と簡易な構成による高精度な動作とが両立可能なアクチュエータが実現される。
【0149】
また、エッチング処理の時間によって、低熱膨張層151の厚みまたは有無が容易に調節される。更に、低熱膨張層151のエッチング処理と、中空部分を形成するエッチング処理とが、同一の装置によって行われれば、製造コストの低減、および製造設備の小型化が図られる。
【0150】
そして、一実施形態に係るアクチュエータ層15、移動機構としての光学ユニットKB、およびカメラモジュール500によれば、製造コストの上昇が抑制されつつ、簡易な構成で高精度の動作が可能となる。
【0151】
<(5)変形例>
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0152】
◎例えば、上記一実施形態では、枠体15fには、低熱膨張層151が設けられなかったが、これに限られない。例えば、図37で示されるように、枠体15fが、該枠体15fのうちの各可動部15a,15bと接続する板状の部分(板状接続部)15CAすなわち固定部近傍に低熱膨張層151が設けられた枠体15fAに変更されても良い。なお、板状接続部15CAの低熱膨張層の形状については、矩形に限られず、例えば、半円状の形状や櫛形の形状等、その他の形状が採用されても良い。
【0153】
ここでは、枠体15fの枠体15fAへの変更に伴って、低熱膨張部151a,151bが、板状接続部15CAまで延長された低熱膨張部151aA,151bAにそれぞれ変更される。更に、図1〜図3等で示されるように、アクチュエータ層15、光学ユニットKB、カメラモジュール500、第1の筐体200、および携帯電話機100が、アクチュエータ層15A、光学ユニットKBA、カメラモジュール500A、第1の筐体200A、および携帯電話機100Aにそれぞれ変更される。
【0154】
このような構成によれば、アクチュエータ層15Aにおいて駆動力を発生させる際に応力が集中する板状接続部15CAの剛性等の強度が高められる。すなわち、枠体15fにおける強度不足の発生が抑制される。その結果、アクチュエータ層15Aの動作精度が高められる。
【0155】
ところで、このような構成を実現するには、上記一実施形態の図29のステップS26において、板状接続部15CAに対応する部分にもマスクR2が形成されれば良い。そして、ステップS27において、バイメタルシート15Biのうちの板状接続部15CAに対応する板状部を除く枠体15fに対応する部分を構成する低熱膨張層151に対して選択的にエッチング処理が施されれば良い。換言すれば、バイメタルシート15Biのうちの枠体15fに対応する板状部に含まれる一部分を構成する低熱膨張層151に対して選択的にエッチング処理が施され、該一部分を除く残余の板状部(板状接続部15CAに対応する板状部)を構成する低熱膨張層151についてはエッチング処理が施されなければ良い。
【0156】
◎また、上記一実施形態では、バイメタルシート15Biのうちの枠体15fに対応する部分を構成する低熱膨張層151がエッチング処理によって取り除かれたが、これに限られない。例えば、バイメタルシート15Biのうちの枠体15fに対応する部分を構成する低熱膨張層151の厚みが、エッチング処理によって、バイメタルシート15Biのうちの可動部15a,15bに対応する部分を構成する低熱膨張層151の厚みよりも薄くされても、上記一実施形態と同様な効果が得られる。
【0157】
また、バイメタルシート15Biのうちの枠体15fに対応する部分を構成する低熱膨張層151だけでなく、熱伝導層152もエッチング処理によって取り除かれても良い。すなわち、枠体15fに対応する部分を構成する複数層のうちの1以上の層が取り除かれれば良い。但し、該1以上の層には、温度変化に対する変形の度合いが相互に異なる複数層のうちの1以上の層が含まれる。なお、バイメタルシート15Biの一体性を保持するために、該1以上の層は、バイメタルシート15Biを構成する複数層のうちの一部の層となる。
【0158】
更に、バイメタルシート15Biのうちの枠体15fに対応する部分を構成する低熱膨張層151が取り除かれるとともに、熱伝導層152のエッチング処理によって、枠体15fに対応する部分における熱伝導層152の厚みが、可動部15a,15bに対応する部分における熱伝導層152の厚みよりも薄くされても良い。すなわち、枠体15fに対応する部分を構成する複数層のうちの1以上の層の厚みが、可動部15a,15bに対応する部分を構成する複数層のうちの1以上の層の厚みよりも薄くされれば良い。但し、該1以上の層には、温度変化に対する変形の度合いが相互に異なる複数層のうちの1以上の層が含まれる。
【0159】
なお、上記一変形例に係るカメラモジュール500Aについては、枠体15fAに対応する部分のうちの板状接続部15CAに対応する部分を除く残余の板状部に含まれる低熱膨張層151の厚みが、板状接続部15CAに対応する部分に含まれる低熱膨張層151の厚みよりも薄くされても良い。
【0160】
◎また、上記一実施形態では、アクチュエータ層15において、バイメタルが採用されたが、これに限られない。例えば、アクチュエータ層15のうち、低熱膨張層151が、形状記憶合金(SMA)に置換されるとともに、熱伝導層152と高熱膨張層153の部分がベースとなる基板(例えば、シリコン製の基板)に置換されても良い。このとき、枠体に相当する部分について、SMAがエッチング処理によって取り除かれるか、または枠体に相当する部分のSMAの厚みが、可動部に相当する部分のSMAの厚みよりも薄くなるようにエッチング処理が施されても良い。なお、このような構成では、加熱に応じてSMAが収縮して、可動部の自由端が上方(+Z方向)に変位するような記憶処理がSMAに施されていれば良い。
【0161】
◎また、上記一実施形態では、エッチング液の噴霧によってエッチング処理が行われたが、これに限られない。例えば、エッチング液への浸漬によってエッチング処理が行われても良い。また、研磨等のような機械的な処理を含まないレーザーやその他の手段等といった種々の手段によってエッチング処理が行われても良い。
【0162】
◎また、上記一実施形態では、可動部15a,15bによって移動される移動対象部が、光学系としてのレンズ群20であったが、これに限られない。例えば、撮像素子等のその他の部材を移動対象部としても良い。詳細には、被写体からの光を撮像素子に導く光学系にあたるレンズ群20Bを固定し、上記一実施形態においてレンズ群20を移動させるための構成と同様な構成によって撮像素子層をZ方向に移動させても良い。
【0163】
図38は、レンズ群20Bを固定して、該レンズ群20Bの光軸Axに沿った方向に撮像素子層18Bを前後に移動させる一態様の概念図を例示する図である。図38では、撮像素子層18Bを光軸Axに沿って前後に移動させる撮像部PBBが描かれている。このような構成では、アクチュエータ層の動作に応じて撮像素子層18Bが光軸Axに沿って前後に移動されて、レンズ群20Bと撮像素子層18Bとの距離が変更されることで、AF制御が実現される。このように、可動部15a,15bの曲げ変形に応じて撮像素子および光学系のうちの少なくとも一方が移動されれば、AF制御が実現される。
【0164】
また、アクチュエータによって移動される移動対象部は、光学系や撮像素子等といった撮像装置を構成する要素に限られない。例えば、移動対象部は、光ピックアップレンズの対物レンズ等といったその他のものであっても良い。すなわち、本発明は、アクチュエータと、該アクチュエータが発生する駆動力によって移動対象部が移動される移動機構一般に適用可能である。
【0165】
◎また、上記一実施形態では、2本の可動部15a,15bが設けられたが、これに限られず、可動部は、1本でも良いし、3本以上であっても良い。
【0166】
◎また、上記一実施形態では、可動部15a,15bが、その一端が枠体15fに対して固定された、いわゆる片持ち梁の構成を有していたが、これに限られない。例えば、可動部の両端が枠体に対して固定された、いわゆる両持ち梁の構成を有するものも考えられる。
【0167】
◎なお、上記一実施形態および上記各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0168】
15,15A アクチュエータ層
15a,15b 可動部
15Bi バイメタルシート
15CA 板状接続部
15f,15fA 枠体
18,18B 撮像素子層
20,20B レンズ群
181 撮像素子
100,100A 携帯電話機
151 低熱膨張層
151a,151b,151aA,151bA 低熱膨張部
152 熱伝導層
153 高熱膨張層
154 絶縁層
155 ヒータ層
500,500A カメラモジュール
KB 光学ユニット
PB,PBB 撮像部
U15 アクチュエータ層シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の素材を用いて構成される層と、該第1の素材と比較して温度変化に対する変形の度合いが異なる第2の素材を用いて構成される層とを含む複数層が積層されている板状部材を準備する準備工程と、
前記板状部材に対してエッチング処理を施すことで、前記板状部材のうちの一部の板状部を構成する1以上の層の厚みを、前記板状部材のうちの前記一部の板状部を除く残余の板状部を構成する前記1以上の層の厚みよりも薄くするか、または前記一部の板状部から前記1以上の層を取り除くエッチング工程と、
を備えることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記一部の板状部が、
基準部に対応する部分に含まれ、
前記残余の板状部が、
温度変化に応じて前記基準部を基準として変形することで駆動力を発生する可動部に対応する部分に含まれることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記エッチング工程において、
前記板状部材のうちの前記基準部に対応する部分に含まれる前記1以上の層に対して選択的にエッチング処理を施すことを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記エッチング工程において、
前記板状部材のうちの前記基準部に対応する部分に含まれる一部分を構成する前記1以上の層に対して選択的にエッチング処理を施すことを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記残余の板状部が、
前記基準部のうちの前記可動部と接続する接続部に対応する板状の部分を含むことを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記板状部材が、
前記複数層が積層されたバイメタルを含むことを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記1以上の層が、
形状記憶合金を用いて構成される層を含むことを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記エッチング工程において、
前記エッチング処理の時間によって、前記一部の板状部を構成する1以上の層の厚み、または前記一部の板状部を構成する1以上の層の有無を調節することを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか1つの請求項に記載のアクチュエータの製造方法であって、
エッチング処理によって前記アクチュエータの中空部分を形成する形成工程、
を更に備え、
前記エッチング工程におけるエッチング処理と、前記形成工程におけるエッチング処理とが、マスクの形状を異ならせて、同一のエッチング装置によって行われることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項10】
基準部と、
温度変化に応じて前記基準部を基準として変形することで駆動力を発生する可動部と、
を備え、
前記基準部および前記可動部が、
温度変化に対する変形の度合いが相互に異なる第1および第2層を含む複数層が積層された板状部をそれぞれ有し、
前記基準部に含まれる前記第1層の厚みが、前記可動部に含まれる前記第1層の厚みよりも薄いことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項11】
請求項10に記載のアクチュエータであって、
前記基準部が、
前記可動部と接続する板状接続部を有し、
前記基準部のうちの前記板状接続部を除く残余の板状部に含まれる第1層の厚みが、前記板状接続部に含まれる前記第1層の厚みよりも薄いことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のアクチュエータと、
前記アクチュエータが発生する駆動力によって移動される移動対象部と、
を備えることを特徴とする移動機構。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載のアクチュエータと、
撮像素子と、
被写体からの光を前記撮像素子まで導く光学系と、
を備え、
前記撮像素子および前記光学系のうちの少なくとも一方が、前記アクチュエータが発生する駆動力によって移動される移動対象部に含まれることを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2011−109853(P2011−109853A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263988(P2009−263988)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】