説明

アクチュエータ及び光走査装置

【課題】絶縁破壊を防止することが可能なアクチュエータ及び光走査装置を提供することを目的としている。
【解決手段】駆動梁と、前記駆動梁上に形成された下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電素子と、前記圧電素子上に設けられた上部電極とが積層されたアクチュエータであって、前記駆動梁上に形成された前記上部電極に電圧を供給するための配線と、前記上部電極とを接続する上部配線と、前記上部配線の下に前記下部電極の端部を覆うように形成されており、前記上部電極と前記下部電極とを絶縁する絶縁部と、を有し、前記絶縁部は、前記上部配線の幅方向の前記上部配線の両側に拡張された絶縁拡張部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動梁上に形成された下部電極と、下部電極上に設けられた圧電素子と、前記圧電素子上に設けられた上部電極とを有するアクチュエータ及び光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から圧電体の上面に上部電極、下面に下部電極を形成したアクチュエータを用いて、入射光を反射させるミラー部を回転軸回りに回転させ、反射光を走査する光走査装置が知られている。このアクチュエータでは、圧電体に電圧を印加するために、上部電極に接続される上部配線と、下部電極に接続される下部配線とが形成されている(例えば特許文献1)。
【0003】
図1は、従来のアクチュエータにおける上部配線を説明する図である。図1に示すアクチュエータ10は、下部電極11と上部電極12との間に圧電体が形成された積層構造を有する。下部電極11は、図示しない共通下部配線に接続されている。上部電極12には上部配線13が接続されている。アクチュエータ10では、共通下部配線と上部配線13とに電圧を印加することで圧電体を駆動する。
【0004】
また図1に示す従来のアクチュエータ10では、下部電極11と上部電極12とを積層したとき、下部電極11の端部11Tが上部電極12の下からはみでる構成となる。よってアクチュエータ10では、下部電極11と上部配線13とが接触しないように、下部電極11において上部配線13が形成される位置の端部11Tを覆うように絶縁部14が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−259213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術において、絶縁部14の幅t1と上部配線の幅t2との差t3が十分でない場合、上部電極と下部電極とに電位差の生じる大きな電圧を印加した際に絶縁部14が破壊する絶縁破壊が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべくなされたものであり、絶縁破壊を防止することが可能なアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成すべく、以下の如き構成を採用した。
【0009】
本発明は、駆動梁(150、170)と、前記駆動梁(150、170)上に形成された下部電極(172)と、前記下部電極(172)上に設けられた圧電素子(173)と、前記圧電素子(173)上に設けられた上部電極(174)とが積層されたアクチュエータ(151、171)であって、
前記駆動梁(150、170)上に形成された前記上部電極(174)に電圧を供給するための配線と、前記上部電極(174)とを接続する上部配線(175)と、
前記上部配線(175)の下に前記下部電極(172)の端部(172T)を覆うように形成されており、前記上部電極(174)と前記下部電極(172)とを絶縁する絶縁部(177)と、を有し、
前記絶縁部(177)は、前記上部配線(175)の幅方向の前記上部配線(175)の両側に拡張された絶縁拡張部(177A,177B)を有する。
【0010】
本発明は、駆動梁(150、170)と、前記駆動梁(150、170)上に形成された下部電極(172)と、前記下部電極(172)上に設けられた圧電素子(173)と、前記圧電素子(173)上に設けられた上部電極(174)とが積層されたアクチュエータ(151、171)と、前記アクチュエータ(151、171)により揺動されて入射光を反射させて反射光を走査させるミラー部(110)とを有する光走査装置(100)であって、
前記アクチュエータ(151、171)は、
前記駆動梁(150、170)上に形成された前記上部電極(174)に電圧を供給するための配線と、前記上部電極(174)とを接続する上部配線(175)と、
前記上部配線(175)の下に前記下部電極(172)の端部(172T)を覆うように形成されており、前記上部電極(174)と前記下部電極(172)とを絶縁する絶縁部(177)と、を有し、
前記絶縁部(177)は、前記上部配線(175)の幅方向の前記上部配線(175)の両側に拡張された絶縁拡張部(177A,177B)を有する。
【0011】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絶縁破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来のアクチュエータにおける上部配線を説明する図である。
【図2】本発明の光走査装置を説明する第一の図である。
【図3】本発明の光走査装置を説明する第二の図である。
【図4】図2の部分Aを拡大した図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】絶縁膜の膜構成を示す第一の図である。
【図7】本実施形態の絶縁膜のリーク電流特性を示す図である。
【図8】絶縁膜の膜構成を示す第二の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図2は本発明の光走査装置を説明する第一の図であり、図3は本発明の光走査装置を説明する第二の図である。
【0015】
図2、図3において、本実施形態に係る光走査装置100は、ミラー110と、ミラー支持部120と、捻れ梁130と、連結梁140と、第1の駆動梁150と、可動枠160と、第2の駆動梁170と、固定枠180とを備える。また、図2に示すように、第1の駆動梁150は、駆動源151を備え、第2の駆動梁170は、駆動源171を備える。
【0016】
更に本実施形態の光走査装置100は、図3に示すように、ミラー支持部120の裏面にはリブ121が設けられ、第2の駆動梁170の裏面には、高調波重畳防止用リブ178が設けられている。
【0017】
本実施形態のミラー支持部120には、ミラー110の円周に沿うようにスリット122が形成されている。このスリット122により、ミラー支持部120を軽量化しつつ捻れ梁130による捻れをミラー110へ伝達することができる。また本実施形態の第2の駆動梁170は、裏面に凹部179を有する。凹部179は、図3に示すように三角形状に掘られた三角柱のような形状であって良く、可動枠160の裏面に複数形成されていることが好ましい。このように可動枠160に凹部179を複数形成することで、可動枠160の強度を保ちつつ、軽量化に貢献することができる。
【0018】
図2、図3において、ミラー支持部120の表面にミラー110が形成され、ミラー支持部120は、両側にある捻れ梁130の端部に連結されている。捻れ梁130は、揺動軸を構成し、軸方向に延在してミラー支持部120を軸方向両側から支持している。捻れ梁130が捻れることにより、ミラー支持部120に支持されたミラー110が揺動し、ミラー110に照射された光の反射光を走査させる動作を行う。捻れ梁130は、連結梁140に連結支持され、第1の駆動梁150に連結されている。
【0019】
第1の駆動梁150、連結梁140、捻れ梁130、ミラー支持部120及びミラー110は、可動枠160に取り囲まれている。第1の駆動梁150は、可動枠160に片側が支持され、内周側に延びて連結梁140と連結している。第1の駆動梁150は、捻れ梁130とは直交する方向に、ミラー110及びミラー支持部120を挟むように、対をなして2つ設けられている。
【0020】
第1の駆動梁150の表面には、駆動源151が形成されている。駆動源151は、振動板となる第1の駆動梁150の表面上の圧電素子の薄膜の上面に形成された上部電極と、圧電素子の下面に形成された下部電極とにより構成される。駆動源151では、上部電極と下部電極に印加する電圧の極性に応じて伸長したり縮小したりする。このため左側の第1の駆動梁150と右側の第1の駆動梁150とで異なる位相の電圧を交互に印加すれば、ミラー110の左側又は右側の第1の駆動梁150が上側に交互に振動し、捻れ梁130を揺動軸又は回転軸として、ミラー110を軸周りに揺動させることができる。
【0021】
このミラー110が捻れ梁130の軸周りに揺動する方向を、以後、水平方向と呼ぶ。例えば、第1の駆動梁150による水平駆動には、共振振動が用いられ、高速にミラー110を揺動駆動してよい。また可動枠160の外部には、第2の駆動梁170の一端が連結されている。第2の駆動梁170は、第1の駆動梁150と平行に延在する梁が、隣接する梁と端部で連結され、全体としてジグザグ状の形状を有する。
【0022】
そして、第2の駆動梁170の他端は、固定枠180の内側に連結されている。第2の駆動梁170も、可動枠160を左右両側から挟むように、対をなして2つ設けられている。また第2の駆動梁170の表面には、曲線部を含まない矩形単位毎に、圧電素子の薄膜が駆動源171として形成されている。
【0023】
矩形単位毎に隣接している駆動源171同士で、異なる位相の電圧を印加することにより、隣接する矩形梁を交互に上方向に反らせ、各矩形梁の上動の蓄積を可動枠160に伝達することができる。そして、水平方向と直交する方向、つまり垂直方向にミラー110を揺動させることができる。例えば第2の駆動梁170による駆動力は、非共振振動により発生させてもよい。
【0024】
以下に本実施形態の駆動源151と駆動源171について説明する。本実施形態の駆動源151、駆動源171は、それぞれが上部電極と下部電極とを有する。駆動源151と駆動源171とが有する上部電極及び下部電極には、固定枠180に設けられた端子群T1及びT2から引き出された上部配線及び下部配線が接続されている。
【0025】
本実施形態では、第2の駆動梁170による駆動力を非共振振動により発生させる際に、上部電極及び下部電極に電位差の大きい電圧を印加した場合にも、絶縁破壊が起こらないようにした。
【0026】
以下に本実施形態における上部電極と下部電極について説明する。図4は、図2の部分Aを拡大した図であり、図5は図4のB−B断面図である。図4、図5では、駆動源171を例にしている。
【0027】
駆動源171は、振動板となる第2の駆動梁170上に下部電極172、圧電素子173、上部電極174が積層されて構成されている。上部電極174は、上部配線175により、光走査装置100の外部の駆動電圧供給部から引き出された配線と接続されている。下部電極172は、下部共通配線176により光走査装置100の外部の駆動電圧供給部に接続されている。
【0028】
更に本実施形態では、下部電極172と上部電極174とが電気的に接続されることを防止するため、絶縁部177が形成されている。
【0029】
本実施形態の絶縁部177は、上部配線175から離れる方向に伸びる絶縁拡張部177A、177Bを含む。絶縁拡張部177Aと絶縁拡張部177Bとは、上部配線175を挟んで両側に形成されており、第2の駆動梁170に形成された各種配線と接触しないように形成される。また本実施形態の絶縁部177Aと絶縁部177Bの幅をそれぞれ幅TA、TBとし、上部配線175の幅を幅TCとしたとき、幅TA、TBは、幅TCの3倍以上であることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、このように絶縁部177に絶縁拡張部177Aと絶縁拡張部177Bとを含む構成にしたため、上部電極174と下部電極172とに電位差の生じる大きな電圧を印加した場合に絶縁部177が破壊される絶縁破壊を防止することができる。
【0031】
本実施形態はこの構成により、下部電極172の端部172Tが上部電極174からはみ出すような構成であっても、上部電極174と上部配線175の電気的接続の信頼性を維持しつつ、駆動源171に大きな電圧を印加することができる。
【0032】
したがって本実施形態では、下部電極172と上部電極173とに電位差の大きい電圧を印加する必要がある非共振振動により、第2の駆動梁170の駆動力を発生させることもできる。尚本実施形態での大きな電圧とは、例えば80V〜150V程度の電圧であっても良い。また本実施形態の幅TA、TBは、幅TCの3倍以上でなくても良い。本実施形態では、例えば幅TA、TBは、10〜150ミクロン程度であれば良い。
【0033】
また本実施形態では、幅TAと幅TBとは同じものとしたが、これに限定されない。例えば幅TAの方が幅TBより広い構成であっても良いし、その逆であっても良い。
【0034】
尚本実施形態では、駆動源170の部分Aに限らず、上部電極174と上部配線175とが接続される場所については全て同様の構成を有する。また本実施形態では駆動源170についてのみ説明したが、駆動源150においても同様である。すなわち駆動源150を構成する上部電極に上部配線が接続される場所には、絶縁拡張部を有する絶縁部が設けられている。
【0035】
次に本実施形態の絶縁部177を構成する絶縁膜について説明する。本実施形態の絶縁部177を構成する絶縁膜は、比誘電率の異なる有機絶縁膜と無機絶縁膜を積層したものであっても良い。
【0036】
図6は、絶縁膜の膜構成を示す第一の図である。以下に図6に示す絶縁膜の形成方法について説明する。
【0037】
下部電極172が形成されたウェハに、無機絶縁膜をALD(Atomic Layer. Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法等により形成する。ここで使用する無機絶縁膜は、金属酸化物や金属窒化物である。
【0038】
無機絶縁膜を形成した後、有機絶縁膜をスピンコート法やディップ法で形成する。使用する有機絶縁膜は、BCB系、ノボラック系、アクリル系、ポリイミド系、ポリアミド系等である。有機絶縁膜を形成した後、有機絶縁膜上に再度無機絶縁膜を形成する。
【0039】
本実施形態では、例えば下部電極172が形成されたウェハに、ALD法でAlを厚さ50nmで成膜した。Al膜の誘電比率は9.0〜10である。のまた本実施形態では、Al膜上にスピンコート法でBCB樹脂(ダウケミカル製:CYCLOTENE)を厚さ2μmで成膜した。BCB樹脂膜の比誘電率は、2.5〜3.0である。そしてBCB樹脂膜上に再度厚さ50nmのAl膜を成膜した。
【0040】
図7は、本実施形態の絶縁膜のリーク電流特性を示す図である。図7によれば、有機絶縁膜のみの単層の絶縁膜に比べて、有機絶縁膜と無機絶縁膜とを積層した絶縁膜の方が、耐圧が向上することがわかる。
【0041】
したがって本実施形態の絶縁部177では、絶縁耐圧が高くなり、より絶縁破壊が発生しにくくなる。また本実施形態の絶縁部177では、有機絶縁膜のみの単層の絶縁膜と比べて、耐薬品性や耐湿性も改善することができる。
【0042】
尚本実施形態の絶縁膜の膜構成は、無機絶縁膜−有機絶縁膜−無機絶縁膜の3層としたが、これに限定されない。例えば図8に示すように2層の構成であっても良い。図8は、絶縁膜の膜構成を示す第二の図である。
【0043】
図8の例では、下部電極172が形成されたウェハに有機絶縁膜が形成され、有機絶縁膜の上に無機絶縁膜が形成される。そして無機絶縁膜の上に上部電極174が形成されている。
【0044】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0045】
100 光走査装置
110 ミラー
120 ミラー支持部
130 捻れ梁
140 連結梁
150 第1の駆動梁
151、171 駆動源
160 可動枠
170 第2の駆動梁
172 下部電極
173 圧電素子
174 上部電極
175 上部配線
177 絶縁部
180 固定枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動梁と、前記駆動梁上に形成された下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電素子と、前記圧電素子上に設けられた上部電極とが積層されたアクチュエータであって、
前記駆動梁上に形成された前記上部電極に電圧を供給するための配線と、前記上部電極とを接続する上部配線と、
前記上部配線の下に前記下部電極の端部を覆うように形成されており、前記上部電極と前記下部電極とを絶縁する絶縁部と、を有し、
前記絶縁部は、前記上部配線の幅方向の前記上部配線の両側に拡張された絶縁拡張部を有するアクチュエータ。
【請求項2】
前記絶縁拡張部の幅は、
前記上部配線の幅の少なくとも3倍以上である請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記絶縁部は、
無機絶縁膜と有機絶縁膜とを含む膜構成の絶縁膜である請求項1又は2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記絶縁部は、
前記有機絶縁膜を前記無機絶縁膜で挟む膜構成である請求項3記載のアクチュエータ。
【請求項5】
駆動梁と、前記駆動梁上に形成されており、下部電極と、前記下部電極上に設けられた圧電素子と、前記圧電素子上に設けられた上部電極とが積層されたアクチュエータと、前記アクチュエータにより揺動されて入射光を反射させて反射光を走査させるミラー部と、を有する光走査装置であって、
前記アクチュエータは、
前記駆動梁上に形成された前記上部電極に電圧を供給するための配線と、前記上部電極とを接続する上部配線と、
前記上部配線の下に前記下部電極の端部を覆うように形成されており、前記上部電極と前記下部電極とを絶縁する絶縁部と、を有し、
前記絶縁部は、前記上部配線の幅方向の前記上部配線の両側に拡張された絶縁拡張部を有する光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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