説明

アクチュエータ及び該アクチュエータを用いた跳躍装置

【課題】ばねの性質と空気の性質を有するアクチュエータを提供すること、また、このアクチュエータを用いて、重量物を跳躍させ、跳躍タイミング、跳躍高さ及び方向を制御することも可能な跳躍装置を提供する。
【解決手段】支持端2,2の間に繊維を有した中空ゴム材3が配置された空気圧ゴム人工筋1aをアクチュエータとして用い、中空ゴム材3に圧縮空気を流入してから又は流入しながら張力を加えて中空ゴム材3を伸長させた状態とし、伸長させた状態から加えた張力を取り除くことで瞬発力を得る。また、このアクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1a、他の空気圧ゴム人工筋1b、上腿部材13、下腿部材16、足部18を備え、空気圧ゴム人工筋1aが上腿部材13と共に上腿部12を構成し、他の空気圧ゴム人工筋1bが下腿部材16と共に下腿部15を構成し、跳躍装置10を人の脚を模した構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばねと空気の両方の性質を有するアクチュエータ、及びこのアクチュエータを用いた跳躍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の跳躍装置の多くは、圧縮空気やばねを用いて、力学的エネルギーを蓄積し、この蓄積した力学的エネルギーを解放することにより、跳躍を実現させている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、シリンダの一端にピストン状のロッドが出没可能に収納され、シリンダ内にピストン状のロッドを突出方向に付勢するばねが収納されるとともに、シリンダの他端に軸方向に延出してT字状のハンドル軸が設けられ、シリンダの一端側の外周に径方向に延出した足乗せのステップが設けられた跳躍装置(ホッピング)が開示されている。このホッピングによれば、装置に力を与えて空気を圧縮し、この圧縮した空気の反力により、人体を跳躍させることができる。
【0004】
また、例えば下記特許文献2には、外殻を構成する回転構造体からなるカプセルと、カプセル内に装着された跳躍手段及び回転手段を備えた跳躍装置(跳躍・回転移動体)が開示されている。跳躍手段は、カプセルに対して回転可能に設けたシリンダからなる。また、回転手段は、シリンダをその軸に対して直角なX軸廻り及びY軸廻りにそれぞれ回転させるX軸モータ及びY軸モータからなる。この跳躍・回転移動体によれば、空気圧タンクに圧縮空気を蓄積し、空気圧アクチュエータに圧縮空気を一気に加えることにより、跳躍を実現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−135625号公報
【特許文献2】特開2004−9167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の跳躍装置にうち、上記特許文献1に開示される跳躍装置(ホッピング)は、空気をばねのように扱っていることから、大きな反力が発生して人の体重ほどの重量物を跳躍させることが可能となるが、その反力(特にタイミング)を制御することができず、したがって、反力が発生するタイミングでしか跳躍を行うことができないものであった。
【0007】
また、上記特許文献2に開示される跳躍装置(跳躍・回転移動体)は、跳躍タイミングや跳躍高さなどを制御することはできるが、駆動源となる空気圧アクチュエータに流入可能な圧縮空気の流量や、空気圧アクチュエータが発生可能な力に限界があるため、現時点では、重量が数十kgもあるような重量物を跳躍させるには至っていない。
【0008】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、重量物を跳躍させるとともに、跳躍タイミングが制御可能なばねの性質と、跳躍高さ及び方向が制御可能な空気の性質を有するアクチュエータを提供すること、また、このアクチュエータを用いて、重量物を跳躍させることができ、跳躍タイミング、跳躍高さ及び方向を制御することも可能な跳躍装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明に係る請求項1記載のアクチュエータは、二つの支持端2,2の間に繊維を有した中空ゴム材3が配置され、前記中空ゴム材3の内部に圧縮空気が流入されると該中空ゴム材3の径が拡張してその長さが短縮するとともに、前記中空ゴム材3の圧縮空気が流出されると該中空ゴム材3の径が収縮して元の長さに伸長する空気圧ゴム人工筋1(1a)をアクチュエータとして用い、
前記中空ゴム材3に圧縮空気を流入してから又は流入しながら、該中空ゴム材3をその長さ方向に張力を加えて伸長させた状態とし、該伸長させた状態から前記張力を取り除くことで瞬発力を得ることを特徴としている。
【0010】
これまで、空気圧ゴム人工筋1は、中空ゴム材3が短縮することで得られる力を利用して、主に人の腕などの屈筋を補助する装置などに用いられていた。ところが、この場合は、中空ゴム材3に圧縮空気を流入してから又は流入しながら、中空ゴム材3をその長さ方向に張力を加えて伸長させた状態とし、伸長させた状態から加えた張力を取り除くことにより、所望のタイミングでばねのような瞬発力を発生させる。
【0011】
請求項2記載の跳躍装置は、請求項1記載のアクチュエータを用いた跳躍装置であって、
前記アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aと、他の空気圧ゴム人工筋1bと、その一端部が回動自在に設けられた上腿部材13と、該上腿部材13の他端部に一端部が回動自在に連結された下腿部材16と、該下腿部材16の他端部に一端部が回動自在に連結された足部18と、を備え、
前記アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aは、前記上腿部材13の前側に配置され、該上腿部材13と共に上腿部12を構成し、一方の前記支持端2が前記上腿部材13の回動部14に接続されるとともに、他方の前記支持端2が前記上腿部材13と前記下腿部材16の回動連結部17よりも前側にて該下腿部材16に接続され、
前記他の空気圧ゴム人工筋1bは、前記下腿部材16の後側に配置され、該下腿部材16と共に下腿部15を構成し、一端が前記上腿部材13と前記下腿部材16の回動連結部17よりも後側にて該上腿部材13に接続されるとともに、他端が前記下腿部材16と前記足部18の回動連結部19よりも後側にて該足部18に接続されたことを特徴としている。
【0012】
すなわち、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aが大腿四頭筋に相当するとともに、他の空気圧ゴム人工筋1bが腓腹筋に相当し、全体として、人の脚の構造を模した跳躍装置となる。
【0013】
アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの中空ゴム材3に圧縮空気が流入されると、中空ゴム材3は短縮する。このとき、中空ゴム材3の内部圧力は上昇する。短縮する中空ゴム材3に張力を加えて、中空ゴム材3を、高い内部圧力を保持したまま伸長させた状態とする。このとき、跳躍装置10は、人が跳躍しようとして脚を曲げたような姿勢となる。アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの中空ゴム材3に加えた張力を取り除くと、跳躍装置10は、人が跳躍するような動作で跳躍する。
【0014】
また、中空ゴム材3に加えた張力を使用者の所望のタイミングで取り除くことができる。
【0015】
請求項3記載の跳躍装置は、請求項2記載の跳躍装置において、
前記アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの前記中空ゴム材3に流入される圧縮空気の圧力及び流量を制御可能に設けたことを特徴としている。
【0016】
大腿四頭筋に相当する、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの中空ゴム材3に流入される圧縮空気の圧力及び流量を制御することにより、跳躍高さが制御可能となる。
【0017】
請求項4記載の跳躍装置は、請求項2又は3記載の跳躍装置において、
前記他の空気圧ゴム人工筋1bを構成する中空ゴム材3に流入される圧縮空気の圧力及び流量を制御可能に設けたことを特徴としている。
【0018】
腓腹筋に相当する、他の空気圧ゴム人工筋1bの中空ゴム材3に流入される圧縮空気の圧力及び流量を制御することにより、(前後の)跳躍方向が制御可能となる。
【0019】
請求項5記載の跳躍装置は、請求項2又は3記載の跳躍装置において、
前記他の空気圧ゴム人工筋1bに換えて、伸縮性を有する他の弾性体を備えたことを特徴としている。
【0020】
他の空気圧ゴム人工筋1bに換えて、伸縮性を有する他の弾性体としても、空気圧ゴム人工筋1bの場合と同様、この弾性体は人の腓腹筋のように機能する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るアクチュエータによれば、空気圧ゴム人工筋の中空ゴム材に圧縮空気を流入してから又は流入しながら、中空ゴム材をその長さ方向に張力を加えて伸長させた状態とし、伸長させた状態から加えた張力を取り除くことにより、ばねのような瞬発力を発生させる。これにより、空気圧ゴム人工筋は、重量物を跳躍させるとともに、跳躍タイミングが制御可能なばねの性質と、中空ゴム材の内部圧力が制御可能な空気の性質を有するアクチュエータとなる。
【0022】
また、本発明に係る跳躍装置は、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋が大腿四頭筋に相当するとともに、他の空気圧ゴム人工筋が腓腹筋に相当し、全体として、人の脚の構造を模した跳躍装置となる。したがって、本発明に係る跳躍装置によれば、大腿四頭筋に相当する、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋が、上述したように、重量物を跳躍させるとともに、跳躍タイミングが制御可能なばねの性質と、跳躍高さ及び方向が制御可能な空気の性質を有することにより、重量物を跳躍させることができ、跳躍タイミング、跳躍高さ及び方向を制御することも可能となる。
【0023】
さらに、大腿四頭筋に相当する、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋の中空ゴム材に流入される圧縮空気の圧力及び流量を制御することにより、跳躍高さが制御可能となる。
【0024】
また、腓腹筋に相当する、他の空気圧ゴム人工筋の中空ゴム材に流入される圧縮空気の圧力及び流量を制御することにより、(前後の)跳躍方向が制御可能となる。
【0025】
さらに、他の空気圧ゴム人工筋に換えて、ばねやワイヤーなどの伸縮性を有する他の弾性体としても、空気圧ゴム人工筋の場合と同様にこの弾性体は人の腓腹筋のように機能し、跳躍装置を跳躍させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a),(b)空気圧ゴム人工筋の説明図である。
【図2】(a),(b),(c)本発明に係るアクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋の説明図である。
【図3】アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋と通常用途の空気圧ゴム人工筋の力の発生タイミングを比較する図(グラフ)である。
【図4】本発明に係る跳躍装置の実施の形態を示す図(側面図)である。
【図5】同実施の形態の機能ブロック図である。
【図6】(a),(b),(c)同実施の形態の跳躍動作を示す図である。
【図7】同実施の形態の跳躍の高さ及び方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
「アクチュエータ」
まず、本発明に係るアクチュエータを図1乃至3を参照して説明する。このアクチュエータには空気圧ゴム人工筋1を用いている。
【0028】
図1に示すように、空気圧ゴム人工筋1は、二つの支持端2,2の間にナイロンなどの繊維を有した中空ゴム材3が配置されてなる。この例では、ナイロン繊維は、中空ゴム材3に沿って、その内部に配置されているが、例えばマッキベン型人工筋のように、繊維が中空ゴム材3の外部に配置されていてもよい。空気圧ゴム人工筋1は、いずれか一方の支持端2がチューブ4を介してエアー供給源26に接続されている(図5参照)。特に図1(b)に示すように、エアー供給源26から中空ゴム材3の内部に圧縮空気が流入されると、中空ゴム材3の径が拡張してその長さが短縮する。また、中空ゴム材3のその長さ方向に外力(張力)が加わると、中空ゴム材3の径が収縮して元の長さに伸長するという特性がある。通常、空気圧ゴム人工筋1は、中空ゴム材3が短縮することで得られる力を利用して、主に人の腕などの屈筋を補助する装置などに用いられている。
【0029】
図2(a),(b)に示すように、空気圧ゴム人工筋1は、中空ゴム材3に圧縮空気が流入されていない状態では、中空ゴム材3の内部圧力は1atmである。中空ゴム材3に圧縮空気が流入されると、中空ゴム材3の内部圧力は上昇する。なお、図例では、中空ゴム材3の内部圧力は6atmに上昇する。図2(c)に示すように、空気圧ゴム人工筋1は、短縮する中空ゴム材3に対してその長さ方向に張力を加えると、6atmの高い内部圧力を保持したまま中空ゴム材3を伸長させることができる。このとき、中空ゴム材3は力学的エネルギーが蓄積された状態にある。中空ゴム材3を伸長させた状態から加えた張力を取り除くと、中空ゴム材3は瞬間的に短縮する。これにより、中空ゴム材3に蓄積された力学的エネルギーは解放され、中空ゴム材3からばねのような瞬発力を発生させることができる。このように、空気圧ゴム人工筋1を通常と異なる方法で用いることにより、空気圧ゴム人工筋1は、瞬発力を発生させるアクチュエータとなる。
【0030】
図3に実線にて示すように、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1は、中空ゴム材3を伸長させた状態から張力を取り除いたタイミングt1で瞬間的に高い圧力を得ることができる。すなわち、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1は、ばねと空気の両方の性質を有するようになる。なお、図中の一点鎖線は、比較例として、空気圧ゴム人工筋1を上述した通常の方法で用いて瞬発力を得ようとした場合であるが、この場合は、中空ゴム材3に圧縮空気を流入して所望の圧力に到達するまでに時間がかかり、所望の瞬発力が得られないことがわかる。
【0031】
上述したアクチュエータによれば、空気圧ゴム人工筋1の中空ゴム材3に圧縮空気を流入してから又は流入しながら、中空ゴム材3をその長さ方向に張力を加えて伸長させた状態とし、伸長させた状態から加えた張力を取り除くことにより、所望のタイミングでばねのような瞬発力を発生させる。これにより、空気圧ゴム人工筋1は、重量物を跳躍させるとともに、跳躍タイミングが制御可能なばねの性質と、中空ゴム材3の内部圧力が制御可能な空気の性質を有するアクチュエータとなる。
【0032】
また、空気圧ゴム人工筋1の中空ゴム材3に蓄積された力学的エネルギーは、圧縮空気による圧力エネルギーと、ばねによる弾性エネルギーの総和であり、空気圧ゴム人工筋1は、これらの二つの力学的エネルギーを同時に利用するため、重量物を跳躍させることに適したアクチュエータとなる。
【0033】
「跳躍装置」
次に、本発明に係る跳躍装置を図4乃至7を参照して説明する。この跳躍装置10は、そのアクチュエータとして、上述したアクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1を用いている。
【0034】
図4に示すように、跳躍装置10は、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1(1a)と、他の空気圧ゴム人工筋1(1b)と、上腿部12と、下腿部15と、足部18とを備え、全体として、人の脚の構造を模した装置となる。
【0035】
また、跳躍装置10の上部には胴部11が設けられている。胴部11は、上腿部12に連結されており、跳躍装置10を例えば二足歩行ロボットの脚に適用した場合にこのロボットの胴体となる。
【0036】
上腿部12は、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aと、上腿部材13とを備えている。上腿部材13は、略矩形の長体からなり、その一端部が、回転ジョイント14を介して、胴部11に回動自在に連結されている。回転ジョイント14は、上腿部材13の回動部となる。なお、他端部には下腿部15の下腿部材16が連結されている。アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aは、人体における大腿四頭筋に相当するように、胴部11と下腿部材16の間にて上腿部材13の前側に配置されている。アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aは、一方の支持端2が、上腿部材13の回動部に接続されている。また、他方の支持端2が、上腿部材13と下腿部材15の回動連結部よりも前側にて、下腿部材15に接続されている。
【0037】
下腿部15は、他の空気圧ゴム人工筋1bと、下腿部材16とを備えている。下腿部材16は、略矩形の長体からなり、その一端部が、回転ジョイント17を介して、上腿部材13に回動自在に連結されている。回転ジョイント17は、上腿部材13と下腿部材16の回動連結部となる。なお、他端部には足部18が連結されている。他の空気圧ゴム人工筋1bは、人体における腓腹筋に相当するように、上腿部材13と足部18の間にて下腿部材16の後側に配置されている。他の空気圧ゴム人工筋1bは、その一端、すなわち、一方の支持端2が、上腿部材13と下腿部材16の回動連結部よりも後側にて、上腿部材13に接続されている。また、その他端、すなわち、他方の支持端2が、下腿部材16と足部18の回動連結部よりも後側にて、足部18に接続されている。
【0038】
足部18は、略矩形の長体部材を備えており、人体における足首に相当する一端部が、回転ジョイント19を介して、下腿部材16の他端部に回動自在に連結されている。回転ジョイント19は、下腿部材16と足部16の回動連結部となる。また、足部18の他端部は、つま先に相当するように、前側を向いて配置されている。
【0039】
なお、胴部11(胴部材)、上腿部材13、下腿部材16及び足部18(足部材)は、アルミ合金などの軽金属を材料として形成されている。
【0040】
図4及び5に示すように、人体における膝に相当する、上腿部材13と下腿部材16の回動連結部には第一駆動部20が設けられている。第一駆動部20は、モータ21とクラッチ22からなり、モータ21の動力がクラッチ22を介して回転ジョイント17に伝達されるように構成されている。
【0041】
また、人体における足首に相当する、下腿部材16と足部18の回動連結部には第二駆動部23が設けられている。第二駆動部23は、第一駆動部20と同様に、モータ24とクラッチ25からなり、モータ24の動力がクラッチ25を介して回転ジョイント19に伝達されるように構成されている。
【0042】
図4及び5に示すように、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aは、チューブ4を介してエアー供給部26に接続されている。これと同様に、他の空気圧ゴム人工筋1bは、チューブ4を介してエアー供給部26に接続されている。エアー供給部26は、二つ設けられて、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aと他の空気圧ゴム人工筋1bのそれぞれに割り当てるように構成してもよいし、一つだけ設けられて、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aと他の空気圧ゴム人工筋1bを一つで統括するように構成してもよい。
【0043】
図4及び5に示すように、跳躍装置10は、上述した第一駆動部20、第二駆動部23及びエアー供給部26,26を制御する制御部27を備えている。また、この制御部27は、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aと他の空気圧ゴム人工筋1bのそれぞれの中空ゴム材3に流入される圧縮空気の圧力及び流量制御を行う。さらに、制御部27は、第一駆動部20と第二駆動部23のそれぞれのモータ21,24及びクラッチ22,25を制御し、外力付与手段として、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aと他の空気圧ゴム人工筋1bのそれぞれの中空ゴム材3,3に外力(張力)を付与する制御を行うとともに、外力解除手段として、中空ゴム材3,3から外力(張力)を取り除くための制御を行う。
【0044】
ここから、跳躍装置10の跳躍動作を図6及び7を参照して説明する。図6(a)に示すように、初期状態では、跳躍装置10は待機姿勢となるが、制御部27によって、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの中空ゴム材3に所定量の圧縮空気が流入され、中空ゴム材3は短縮する。このとき、中空ゴム材3の内部圧力は、1atmから6atm程度に上昇する。
【0045】
図6(b)に示すように、制御部27による第一駆動部20及び第二駆動部23の駆動制御を行い、上腿部材13と下腿部材16の連結部及び下腿部材16と足部18の連結部がそれぞれ所定角度回動し、上腿部材13と下腿部材16のなす角度が狭まるとともに、下腿部材16と足部18のなす角度が狭まり、人が跳躍しようと脚を曲げた姿勢(跳躍準備姿勢)となる。このとき、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの短縮した中空ゴム材3には、第一駆動部20により張力が付与され(外力付与)、中空ゴム材3は、6atm程度の高い内部圧力を保持したまま伸長される。また、制御部27による圧縮空気の流入制御を行い、他の空気圧ゴム人工筋1bの中空ゴム材3に所定量の圧縮空気が流入される。
【0046】
跳躍準備姿勢をとった跳躍装置10に対して、所望の跳躍タイミングで、制御部27によって第一駆動部20(モータ21及びクラッチ22)を制御し、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの中空ゴム材3に加えた張力を取り除く(外力解除)と、中空ゴム材3は瞬間的に短縮してばねのような瞬発力を発生させる。図6(c)に示すように、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの中空ゴム材3が瞬発力を発生させると、上腿部材13と下腿部材16の回転ジョイント17及び下腿部材16と足部18の回転ジョイント19はそれぞれ回動し、上腿部材13と下腿部材16のなす角度が広がるとともに、下腿部材16と足部18のなす角度が広がり、足部18が地面を蹴るように動作するとともに、上腿部材13と下腿部材16が脚を伸ばすように動作する。すなわち、跳躍装置10は、人が跳躍するような動作で跳躍する。
【0047】
さらに、他の空気圧ゴム人工筋1bは、上腿部材13と足部18の距離を機構的に制限する二関節筋でもあり、跳躍装置10の重心の動きを直線に近いものにする機能を有する。
【0048】
図7に示すように、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aの中空ゴム材3に流入される圧縮空気の圧力及び流量制御により、この中空ゴム材3の内部圧力を制御することが可能となる。これにより、跳躍装置10の跳躍高さHを制御することができる。
【0049】
また、図7に示すように、他の空気圧ゴム人工筋1bの中空ゴム材3に流入される圧縮空気の圧力及び流量制御により、この中空ゴム材3の内部圧力を制御することが可能となる。これにより、跳躍装置10の前後の跳躍方向を制御することができる。なお、跳躍装置10は、他の空気圧ゴム人工筋1bが軟らかければ前方へ、硬ければ後方へと跳躍する。
【0050】
上述した跳躍装置10によれば、大腿四頭筋に相当する、アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋1aが、ばねと空気の両方の性質を有することにより、重量物を跳躍させることができ、跳躍タイミングを制御することも可能となる。
【0051】
なお、上述した跳躍装置10では、他の空気圧ゴム人工筋1bを腓腹筋に相当するように配置した構成としているが、他の空気圧ゴム人工筋1bに換えて、ばねやワイヤーなどの伸縮性を有する他の弾性体としてもよい。他の弾性体としても、空気圧ゴム人工筋1bの場合と同様にこの弾性体は人の腓腹筋のように機能し、跳躍装置10を跳躍させることができる。他の弾性体を用いた場合、空気圧ゴム人工筋1bのように空気を流入させるものではないため、長さや弾性力の制御を行うことはできないが、安価に得られるという利点がある。
【0052】
また、上述した跳躍装置10を二足歩行ロボットなどに適用すれば、跳躍高さや跳躍タイミングを更に精緻に制御することにより、このロボットを走行させることも可能となる。さらに、このロボットは、地震などの災害により倒壊した家屋などを移動する場合、あるいは、崖などの急激な段差を移動する場合などのように、障害物が多く存在する地形を移動する必要がある場合に、跳躍や走行を駆使することにより、障害物を乗り越えながら素早く進退させることができるようになる。
【符号の説明】
【0053】
1…空気圧ゴム人工筋
1a…アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋
1b…他の空気圧ゴム人工筋
2…支持端
3…中空ゴム材
10…跳躍装置
11…胴部
12…上腿部
13…上腿部材
14…回動部となる回転ジョイント
15…下腿部
16…下腿部材
17…回動連結部となる回転ジョイント
18…足部
19…回動連結部となる回転ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの支持端の間に繊維を有した中空ゴム材が配置され、前記中空ゴム材の内部に圧縮空気が流入されると該中空ゴム材の径が拡張してその長さが短縮するとともに、前記中空ゴム材の圧縮空気が流出されると該中空ゴム材の径が収縮して元の長さに伸長する空気圧ゴム人工筋をアクチュエータとして用い、
前記中空ゴム材に圧縮空気を流入してから又は流入しながら、該中空ゴム材をその長さ方向に張力を加えて伸長させた状態とし、該伸長させた状態から前記張力を取り除くことで瞬発力を得ることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のアクチュエータを用いた跳躍装置であって、
前記アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋と、他の空気圧ゴム人工筋と、その一端部が回動自在に設けられた上腿部材と、該上腿部材の他端部に一端部が回動自在に連結された下腿部材と、該下腿部材の他端部に一端部が回動自在に連結された足部と、を備え、
前記アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋は、前記上腿部材の前側に配置され、該上腿部材と共に上腿部を構成し、一方の前記支持端が前記上腿部材の回動部に接続されるとともに、他方の前記支持端が前記上腿部材と前記下腿部材の回動連結部よりも前側にて該下腿部材に接続され、
前記他の空気圧ゴム人工筋は、前記下腿部材の後側に配置され、該下腿部材と共に下腿部を構成し、一端が前記上腿部材と前記下腿部材の回動連結部よりも後側にて該上腿部材に接続されるとともに、他端が前記下腿部材と前記足部の回動連結部よりも後側にて該足部に接続されたことを特徴とする跳躍装置。
【請求項3】
請求項2記載の跳躍装置において、
前記アクチュエータとなる空気圧ゴム人工筋の前記中空ゴム材に流入される圧縮空気の圧力及び流量を制御可能に設けたことを特徴とする跳躍装置。
【請求項4】
請求項2又は3又記載の跳躍装置において、
前記他の空気圧ゴム人工筋を構成する中空ゴム材に流入される圧縮空気の圧力及び流量を制御可能に設けたことを特徴とする跳躍装置。
【請求項5】
請求項2又は3記載の跳躍装置において、
前記他の空気圧ゴム人工筋に換えて、伸縮性を有する他の弾性体を備えたことを特徴とする跳躍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111687(P2013−111687A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259133(P2011−259133)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【Fターム(参考)】