説明

アクリル樹脂含有フィルムの製造方法及びアクリル樹脂含有フィルム、偏光板、液晶表示装置

【課題】偏光子との密着性が良好であり、かつ乾燥性の高いアクリル樹脂含有フィルムの製造方法を提供することにある。さらに該製造方法によって作製されたアクリル樹脂含有フィルム、それを用いた偏光板、液晶表示装置を提供する。
【解決手段】ドープ組成物を支持体に流延した後、剥離する工程を有するアクリル樹脂フィルムの製造方法であって、前記ドープ組成物は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、塩化メチレン、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有した固形分15〜45質量%のドープ組成物であり、前記アクリル樹脂とセルロース樹脂との質量比が95:5〜30:70であり、前記塩化メチレンと脂肪族アルコールとの比が85:15〜70:30であり、当該ドープ組成物を支持体に流延後に残留溶媒濃度が20〜50%の状態において剥離することを特徴とするアクリル樹脂含有フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂含有フィルムの製造方法、該製造方法によって製造されたアクリル樹脂含有フィルム、及びそれを用いた偏光板、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビ、ノートパソコン、カーナビゲーション、携帯電話等の液晶表示装置を搭載した情報機器の薄型、軽量化に関する開発がますます進んでいる。それにともない、液晶表示装置に用いられる偏光板用保護フィルムに対してもますます薄膜化の要求が強くなっている。しかしながら、フィルムを薄膜化すると透湿性が低下し、偏光板形成後に偏光子や偏光子とフィルムを貼り合わせる接着剤が劣化することがあった。
【0003】
上記問題に対して、例えば特許文献1には、セルロースエステルフィルムに特定の可塑剤を用いることで、薄膜の透湿性を向上させていた。しかしながら、このような可塑剤の使用によって製造されたフィルムでは、十分な透湿性を得ることができなかった。
【0004】
一方で、特許文献2には、セルロースエステル樹脂にアクリル樹脂を加え、これをフィルムとした技術が開示されている。しかしながら、フィルムとしてアクリル樹脂を含有させると、透明性や耐熱性の高いフィルムが得られる一方で、乾燥させるまでの時間を要し、かつ偏光子との密着性が低下するという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−183417号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/090900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、偏光子との密着性が良好であり、かつ乾燥性の高いアクリル樹脂含有フィルムの製造方法を提供することにある。さらに該製造方法によって作製されたアクリル樹脂含有フィルム、それを用いた偏光板、液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、ドープ組成物を支持体上に流延した後支持体から剥離するいわゆる溶液流延法において、溶媒に用いられる脂肪族アルコールの含有量を特定量とし、かつドープ組成物を剥離する際の残留溶媒濃度を特定のものとすることで、乾燥後のフィルムが疎膜化され、該フィルムの透湿度が向上し、偏光子との密着性が良好であり、乾燥性が高いアクリル樹脂含有フィルムを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるアクリル樹脂含有フィルムの製造方法は、ドープ組成物を支持体に流延した後、剥離する工程を有するアクリル樹脂フィルムの製造方法であって、前記ドープ組成物は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、塩化メチレン、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有した固形分15〜45質量%のドープ組成物であり、前記アクリル樹脂とセルロース樹脂との質量比が95:5〜30:70であり、前記塩化メチレンと脂肪族アルコールとの比が85:15〜70:30であり、当該ドープ組成物を支持体に流延後に残留溶媒濃度が20〜50%の状態において剥離することを特徴とする。
【0009】
また、前記アクリル樹脂含有フィルムの製造方法において、塩化メチレンと脂肪族アルコールとの比が、80:20〜75:25であることが好適である。
【0010】
また、前記アクリル樹脂含有フィルムの製造方法において、前記アクリル樹脂含有フィルムの膜厚が、10〜60μmであることが好適である。
【0011】
また、前記アクリル樹脂含有フィルムの製造方法において、前記セルロースエステル樹脂におけるアシル基の炭素数が3〜7であることが好適である。
【0012】
また、本発明にかかるアクリル樹脂含有フィルムは、前記アクリル樹脂含有フィルムの製造方法を用いて作製したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる偏光板は、前記アクリル樹脂含有フィルムを少なくとも一方の面に用いることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる液晶表示装置は、前記アクリル樹脂含有フィルム、または前記偏光板を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乾燥後のフィルムが疎膜化され、該フィルムの透湿度が向上し、偏光子との密着性が良好であり、乾燥性が高いアクリル樹脂含有フィルムの製造方法を提供することができる。さらに、該製造方法によって製造されたアクリル樹脂含有フィルム、それを用いた偏光板、および液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係るアクリル樹脂含有フィルムの製造方法は、ドープ組成物を支持体に流延した後、剥離する工程を有するアクリル樹脂フィルムの製造方法であって、前記ドープ組成物は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、塩化メチレン、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有した固形分15〜45質量%のドープ組成物であり、前記アクリル樹脂とセルロース樹脂との質量比が95:5〜30:70であり、前記塩化メチレンと脂肪族アルコールとの比が85:15〜70:30であり、当該ドープ組成物を支持体に流延後に残留溶媒濃度が20〜50%の状態において剥離することを特徴とする。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
〔アクリル樹脂フィルムの製造方法〕
本発明のアクリル樹脂含有フィルムの製膜方法は、ドープ組成物を支持体上に流延し、加熱して溶剤の一部を除去した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥するいわゆる溶液流延製膜方法が用いられる。
【0021】
(有機溶媒)
本発明のアクリル樹脂含有フィルムの製造方法におけるドープ組成物を形成する有機溶媒は、塩化メチレン、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含むものである。これらはアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解する。
【0022】
なお、上記塩化メチレンと脂肪族アルコールとの比は、85:15〜70:30であり、80:20〜75:25であることが好ましい。
【0023】
上記範囲の脂肪族アルコールをドープ組成物に含有させておくと、後述する3)蒸発工程において、乾燥効率が向上する。また、蒸発する脂肪族アルコールがフィルム内に存在していた箇所に多数の空隙ができ、フィルムを疎膜化させることができる。その結果、偏光子との密着性に優れたフィルムとすることができる。一方、上記範囲を逸脱し、アルコール比率が低い領域では、フィルムの空隙が少なくなり、乾燥効率が悪くなる。その結果、偏光子との密着性が悪くなり問題となる。また、アルコール比率が高い領域では、フィルムの空隙が多くなりすぎ、フィルムの白濁(ヘイズ)が劣化し、透明光学フィルム用途の機能を持たなくなる。
【0024】
本発明のドープ組成物は、塩化メチレン、及び炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、アクリル微粒子の3種の固形分を15〜45質量%溶解させたものであることが好ましい。
【0025】
炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの中でもドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよい点などからエタノールが最も好ましい。
【0026】
以下、本発明のアクリル樹脂含有フィルムの好ましい製膜方法について説明する。
【0027】
1)溶解工程
溶解工程は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中でアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程などが挙げられる。
【0028】
アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0029】
ドープ中のアクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル微粒子の3種は、計15〜45質量%の範囲であることが好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
【0030】
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。この方法では、微粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去することができる。主ドープでは微粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
【0031】
図1は本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程を模式的に示した図である。
【0032】
アクリル微粒子仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へアクリル微粒子添加液を添加する。その後主ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
【0033】
図1中、この他の符号は以下の部材を表す。2、5、11、14、43 送液ポンプ、6、12、15 濾過器、4、13 ストックタンク、8、16 導管、10 紫外線吸収剤仕込釜、20 合流管、21 混合機、30 ダイ、31 金属支持体、32 ウェブ、33 剥離位置、34 テンター装置、35 ロール乾燥装置、37 巻き取りロール、41 微粒子仕込釜。
【0034】
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材にはアクリル微粒子が含まれているため、返材の添加量に合わせてアクリル微粒子添加液の添加量をコントロールすることが好ましい。返材とは、アクリル樹脂含有フィルムを細かく粉砕した物で、アクリル樹脂含有フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトしたアクリル樹脂含有フィルム原反が使用される。
【0035】
また、あらかじめアクリル樹脂とアクリル微粒子を混練してペレット化したものも、好ましく用いる事ができる。
【0036】
2)流延工程
ドープを送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、或いは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0037】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0038】
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜を「ウェブ」と呼ぶ。)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0039】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0040】
流延時の膜厚にもよるが、生産性、面品質、剥離性などの観点から、30〜240秒の範囲で当該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。より好ましくは、60〜180秒である。
【0041】
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0042】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。
【0043】
尚、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により20〜50質量%の状態で剥離され、30〜40質量%であることが好ましい。残留溶媒量が50質量%より多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易い。また、20質量%より少ない時点で剥離する場合、剥離点で乾燥過多によりフィルム端部に亀裂が発生しフィルム破断の原因になる。
【0044】
ウェブの残留溶媒濃度(%)は下記式(i)で定義される。
【0045】
式(i):残留溶媒濃度(%)={(流延フィルムの質量−乾燥フィルムの質量)/乾燥フィルムの質量}×100(%)
【0046】
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0047】
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mが好ましいが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0048】
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0049】
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
【0050】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0051】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0052】
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0053】
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
【0054】
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲でとることができる。
【0055】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
【0056】
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃が更に好ましく、70〜100℃が最も好ましい。
【0057】
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
【0058】
6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからアクリル樹脂含有フィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
【0059】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0060】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0061】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムの膜厚に特に制限はないが、後述する偏光板保護フィルムに使用する場合は10〜60μmであることが好ましく、25〜40μmであることがより好ましい。
【0062】
(アクリル樹脂含有フィルム)
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、前記製造方法によって製造されたものである。
【0063】
また、本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、フィルムを2つに折り曲げるような大きな応力を作用させても破断等の破壊がみられないこと、すなわち延性破壊が起こらないことが好ましい。なお、本願における延性破壊とは、ある材料が有する強度よりも、大きな応力が作用することで生じるものであり、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊と定義される。その破面には、ディンプルと呼ばれる窪みが無数に形成される特徴がある。
【0064】
昨今の液晶表示装置の大型化に伴う光学フィルムの大判化、薄膜化に伴いリワーク性、生産性の観点から光学フィルムの脆性への要求はますます高いものがあり、上記延性破壊が起こらないことが求められている。従って、延性破壊を起こらないアクリル樹脂含有フィルムを形成するには、用いるアクリル樹脂やセルロースエステル、その他添加剤等の材料構成を適宜選択することにより達成される。
【0065】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、ヘイズを低くし、プロジェクターのような高温になる機器や、車載用表示機器のような、高温の環境下での使用を考慮すると、その張力軟化点を、105〜145℃とすることが好ましく、110〜140℃に制御することがより好ましい。
【0066】
アクリル樹脂含有フィルムの張力軟化点温度の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、アクリル樹脂含有フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
【0067】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
【0068】
なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
【0069】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下である。より好ましくは0.5個/10cm四方以下、特に好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
【0070】
ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0071】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
【0072】
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。
【0073】
かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
【0074】
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が著しく低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
【0075】
また、目視で確認できない場合でも、当該フィルム上にハードコート層などを形成したときに、塗剤が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)をいう。
【0076】
また、本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
【0077】
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
【0078】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
【0079】
また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
【0080】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、透明性を表す指標の1つであるヘイズ値(濁度)が1.0%以下であることが特徴であるが、液晶表示装置に組み込んだ際の輝度、コントラストの点から0.5%以下であることが好ましい。
【0081】
かかるヘイズ値を達成するには、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散を低減させることが有効である。
【0082】
アクリル粒子を使用する場合は、アクリル系樹脂とアクリル粒子との屈折率差を小さくすることも有効である。
【0083】
また、表面の粗さも表面ヘイズとしてヘイズ値に影響するため、アクリル粒子の粒子径や添加量を前記範囲内に抑えたり、製膜時のフィルム接触部の表面粗さを小さくしたりすることも有効である。
【0084】
なお、上記アクリル樹脂含有フィルムの全光線透過率およびヘイズ値は、JIS−K7361−1−1997およびJIS−K7136−2000に従い、測定した値である。
【0085】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、上記のような物性を満たしていれば、光学用のアクリル樹脂含有フィルムとして好ましく用いることができるが、以下の組成とすることにより、加工性、耐熱性に優れたフィルムを得ることができる。
【0086】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムにおいて、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂は、95:5〜30:70の質量比で含有されるが、好ましくはアクリル樹脂が50質量%以上である。
【0087】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムは、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂を含有して構成されていても良い。
【0088】
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量は、アクリル樹脂含有フィルムの55〜100質量%であり、好ましくは60〜99質量%である。
【0089】
以下、本発明の構成要素等について詳細な説明をする。
【0090】
〈アクリル樹脂〉
本発明に用いられるアクリル樹脂は特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
【0091】
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0092】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0093】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムに用いられるアクリル樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から重量平均分子量(Mw)が80000〜1000000であることが好ましい。
【0094】
本発明に係るアクリル樹脂等の樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
【0095】
溶媒:塩化メチレン
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0096】
本発明におけるアクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。さらに、生成共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
【0097】
この分子量とすることで、耐熱性と脆性の両立を図ることができる。
【0098】
本発明のアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0099】
〈セルロースエステル樹脂〉
本発明に用いられるセルロースエステル樹脂は、脂肪族のアシル基、芳香族のアシル基のいずれで置換されていても良いが、アセチル基で置換されていることが好ましい。
【0100】
本発明のセルロースエステル樹脂が、脂肪族アシル基とのエステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
【0101】
本発明において前記脂肪族アシル基とはさらに置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
【0102】
上記セルロースエステル樹脂が、芳香族アシル基とのエステルであるとき、芳香族環に置換する置換基Xの数は0または1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。
【0103】
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0104】
上記セルロースエステル樹脂において置換もしくは無置換の脂肪族アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の少なくともいずれか1種選択された構造を有する構造を有することが本発明のセルロース樹脂に用いる構造として用いられ、これらは、セルロースの単独または混合酸エステルでもよい。
【0105】
本発明に係るセルロースエステル樹脂の置換度は、アシル基の総置換度(T)が2.00〜2.99、アセチル基置換度(ac)が0.10〜1.89である。より好ましくはアセチル基以外のアシル基置換度(r)が2.00〜2.89である。アセチル基以外のアシル基は、炭素数が多い場合では脆性が低下し、炭素数が少ない場合では相溶性の低下と脆性が低下するため、その炭素数は3〜7であることが好ましい。
【0106】
本発明のセルロースエステル樹脂において、炭素原子数2〜7のアシル基を置換基として有するもの、即ちセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、及びセルロースベンゾエートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0107】
これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0108】
混合脂肪酸として、さらに好ましくは、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルであり、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
【0109】
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0110】
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0111】
本発明のセルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、75000以上であれば、1000000程度のものであっても本発明の目的を達成することができるが、生産性を考慮すると75000〜280000のものが好ましく、100000〜240000のものが更に好ましい。
【0112】
〈アクリル粒子〉
本発明においては、アクリル樹脂含有フィルムにアクリル粒子を含有させてもよい。
【0113】
前記アクリル粒子は、前記アクリル樹脂及びセルロースエステル樹脂とアクリル樹脂含有フィルム中で粒子の状態で存在すること(非相溶状態ともいう)が特徴である。
【0114】
上記アクリル粒子は、例えば、作製したアクリル樹脂含有フィルムを所定量採取し、溶媒に溶解させて攪拌し、充分に溶解・分散させたところで、アクリル粒子の平均粒子径未満の孔径を有するPTFE製のメンブレンフィルターを用いて濾過し、濾過捕集された不溶物の重さが、アクリル樹脂含有フィルムに添加したアクリル粒子の90質量%以上あることが好ましい。
【0115】
本発明に用いられるアクリル粒子は特に限定されるものではないが、2層以上の層構造を有するアクリル粒子であることが好ましく、特に下記多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。
【0116】
多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層重合体、ゴム弾性を示す架橋軟質層重合体、および最外硬質層重合体が、層状に重ね合わされてなる構造を有する粒子状のアクリル系重合体をいう。
【0117】
本発明のアクリル系樹脂組成物に用いられる多層構造アクリル系粒状複合体の好ましい態様としては、以下のようなものが挙げられる。(a)メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%、および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られる最内硬質層重合体、(b)上記最内硬質層重合体の存在下に、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体混合物を重合して得られる架橋軟質層重合体、(c)上記最内硬質層および架橋軟質層からなる重合体の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%とアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%とからなる単量体混合物を重合して得られる最外硬層重合体、よりなる3層構造を有し、かつ得られた3層構造重合体が最内硬質層重合体(a)5〜40質量%、軟質層重合体(b)30〜60質量%、および最外硬質層重合体(c)20〜50質量%からなり、アセトンで分別したときに不溶部があり、その不溶部のメチルエチルケトン膨潤度が1.5〜4.0であるアクリル系粒状複合体、が挙げられる。
【0118】
なお、特公昭60−17406号あるいは特公平3−39095号公報において開示されているように、多層構造アクリル系粒状複合体の各層の組成や粒子径を規定しただけでなく、多層構造アクリル系粒状複合体の引張り弾性率やアセトン不溶部のメチルエチルケトン膨潤度を特定範囲内に設定することにより、さらに充分な耐衝撃性と耐応力白化性のバランスを実現することが可能となる。
【0119】
ここで、多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最内硬質層重合体(a)は、メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
【0120】
ここで、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが好ましく用いられる。
【0121】
最内硬質層重合体(a)におけるアルキルアクリレート単位の割合は1〜20質量%であり、当該単位が1質量%未満では、重合体の熱分解性が大きくなり、一方、当該単位が20質量%を越えると、最内硬質層重合体(c)のガラス転移温度が低くなり、3層構造アクリル系粒状複合体の耐衝撃性付与効果が低下するので、いずれも好ましくない。
【0122】
多官能性グラフト剤としては、異なる重合可能な官能基を有する多官能性単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸のアリルエステル等が挙げられ、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。多官能性グラフト剤は、最内硬質層重合体と軟質層重合体を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は0.01〜0.3質量%である。
【0123】
アクリル系粒状複合体を構成する架橋軟質層重合体(b)は、上記最内硬質層重合体(a)の存在下に、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
【0124】
ここで、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
【0125】
また、これらの重合性単量体と共に、25質量%以下の共重合可能な他の単官能性単量体を共重合させることも可能である。
【0126】
共重合可能な他の単官能性単量体としては、スチレンおよび置換スチレン誘導体が挙げられる。アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとスチレンとの比率は、前者が多いほど生成重合体(b)のガラス転移温度が低下し、即ち軟質化できるのである。
【0127】
一方、樹脂組生物の透明性の観点からは、軟質層重合体(b)の常温での屈折率を最内硬質層重合体(a)、最外硬質層重合体(c)、および硬質熱可塑性アクリル樹脂に近づけるほうが有利であり、これらを勘案して両者の比率を選定する。
【0128】
例えば、被覆層厚さの小さな用途においては、必ずしもスチレンを共重合しなくとも良い。
【0129】
多官能性グラフト剤としては、前記の最内層硬質重合体(a)の項で挙げたものを用いることができる。ここで用いる多官能性グラフト剤は、軟質層重合体(b)と最外硬質層重合体(c)を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.5〜5質量%が好ましい。
【0130】
多官能性架橋剤としては、ジビニル化合物、ジアリル化合物、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物などの一般に知られている架橋剤が使用できるが、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200〜600)が好ましく用いられる。
【0131】
ここで用いる多官能性架橋剤は、軟質層(b)の重合時に架橋構造を生成し、耐衝撃性付与の効果を発現させるために用いられる。ただし、先の多官能性グラフト剤を軟質層の重合時に用いれば、ある程度は軟質層(b)の架橋構造を生成するので、多官能性架橋剤は必須成分ではないが、多官能性架橋剤を軟質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.01〜5質量%が好ましい。
【0132】
多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最外硬質層重合体(c)は、上記最内硬質層重合体(a)および軟質層重合体(b)の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%およびアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%からなる単量体混合物を重合して得られるものが好ましい。
【0133】
ここで、アクリルアルキレートとしては、前述したものが用いられるが、メチルアクリレートやエチルアクリレートが好ましく用いられる。最外硬質層(c)におけるアルキルアクリレート単位の割合は、1〜20質量%が好ましい。
【0134】
また、最外硬質層(c)の重合時に、アクリル樹脂との相溶性向上を目的として、分子量を調節するためアルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用い、実施することも可能である。
【0135】
とりわけ、最外硬質層に、分子量が内側から外側へ向かって次第に小さくなるような勾配を設けることは、伸びと耐衝撃性のバランスを改良するうえで好ましい。具体的な方法としては、最外硬質層を形成するための単量体混合物を2つ以上に分割し、各回ごとに添加する連鎖移動剤量を順次増加するような手法によって、分子量を内側から外側へ向かって小さくすることが可能である。
【0136】
この際に形成される分子量は、各回に用いられる単量体混合物をそれ単独で同条件にて重合し、得られた重合体の分子量を測定することによって調べることもできる。
【0137】
本発明に好ましく用いられる多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体の粒子径については、特に限定されるものではないが、10nm以上、1000nm以下であることが好ましく、さらに、20nm以上、500nm以下であることがより好ましく、特に50nm以上、400nm以下であることが最も好ましい。
【0138】
粒径の大きな微粒子を用いる事により、より少ない添加量で充分な効果を得ることが可能であり好ましいが、アクリル樹脂との屈折率に大きな差がある場合にはフィルムの透明性を損なうおそれがあるので、両者の屈折率を近似させる事が重要である。
【0139】
本発明に好ましく用いられる多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体において、コアとシェルの質量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体を100質量部としたときに、コア層が50質量部以上、90質量部以下であることが好ましく、さらに、60質量部以上、80質量部以下であることがより好ましい。
【0140】
コア層の割合が50質量部未満の場合には、製膜したフィルムに延伸などの加工を施した際に、粒子が変形して樹脂と粒子との屈折率差を生じ、結果としてフィルムの透明性を損なうおそれがある。
【0141】
このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”およびクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0142】
また、本発明に好ましく用いられるアクリル粒子として好適に使用されるグラフト共重合体であるアクリル粒子の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
【0143】
グラフト共重合体であるアクリル粒子に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴムなどが使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
【0144】
また、アクリル樹脂およびアクリル粒子のそれぞれの屈折率が近似している場合、本発明のアクリル樹脂含有フィルムの透明性を得ることができるため、好ましい。具体的には、アクリル粒子とアクリル樹脂の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
【0145】
このような屈折率条件を満たすためには、アクリル樹脂の各単量体単位組成比を調整する方法、および/またはアクリル粒子に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法などにより、屈折率差を小さくすることができ、透明性に優れたアクリル樹脂含有フィルムを得ることができる。
【0146】
なお、ここで言う屈折率差とは、アクリル樹脂が可溶な溶媒に、本発明のアクリル樹脂含有フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル樹脂)と不溶部分(アクリル粒子)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
【0147】
本発明においてアクリル樹脂に、アクリル粒子を配合する方法には、特に制限はなく、アクリル樹脂とその他の任意成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、アクリル粒子を添加しながら一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する方法が好ましく用いられる。
【0148】
また、アクリル粒子をあらかじめ分散した溶液を、アクリル樹脂、及びセルロースエステル樹脂を溶解した溶液(ドープ液)に添加して混合する方法や、アクリル粒子及びその他の任意の添加剤を溶解、混合した溶液をインライン添加する等の方法を用いることができる。
【0149】
本発明のアクリル粒子としては、市販のものも使用することができる。例えば、スタフィロイドAC−3355(ガンツ化成社製)、デルペットSRB215(旭化成ケミカルズ社製)等を挙げることができる。
【0150】
本発明のアクリル樹脂含有フィルムにおいて、当該フィルムを構成する樹脂の総質量に対して、0.05〜45質量%のアクリル粒子を含有することが好ましい。
【0151】
(偏光板保護フィルム)
本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムを偏光板保護フィルムとした場合、該保護フィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、更に35μm以上が好ましい。また、150μm以下、更に120μm以下が好ましい。特に好ましくは25以上〜90μmが好ましい。上記領域よりもアクリル樹脂フィルムが厚いと偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いと、フィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
【0152】
(偏光板)
本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムを用いた偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理したアクリル樹脂フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面に該アクリル樹脂フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが70〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)を用いることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号公報、特開2003−170492号公報に記載の方法で作製することができる。または、更にディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号公報に記載の方法で光学異方性層を形成することができる。或いは、特開2003−12859号公報に記載のリターデーションRoが590nmで0〜5nm、Rtが−20〜+20nmの無配向フィルムも好ましく用いられる。
【0153】
本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
【0154】
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0155】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0156】
(画像表示装置)
本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムを用いて作製した偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた画像表示装置を作製することができる。
【0157】
本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムは前記偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置またはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型、OCB型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられる。また、本実施形態に係るアクリル樹脂フィルムは、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種画像表示装置にも好ましく用いられる。
【実施例】
【0158】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0159】
[実施例1]
〈アクリル樹脂含有フィルムA1の作製〉
(A1用ドープ液の調製)
BR85(アクリル樹脂、三菱レイヨン社製) 70質量部
セルロースエステル
(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、Mw=200000) 30質量部
塩化メチレン 213.9質量部
エタノール 67.6質量部
【0160】
(アクリル樹脂含有フィルムの製膜)
上記作製したドープ液を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒濃度(残留溶剤量)が35質量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。この際、流延から剥離までに要した時間は100秒であった。
【0161】
剥離したアクリル樹脂のウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶媒濃度は10質量%であった。
【0162】
テンターで延伸後130℃で5分間緩和を行った後、120℃、130℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、アクリル樹脂含有フィルムA1を得た。ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向(流延方向)の延伸倍率は1.1倍であった。
【0163】
表1記載のアクリル樹脂含有フィルムフィルムA1の残留溶媒濃度は0.1質量%であり、膜厚は60μm、巻数は4000mであった。
【0164】
以下、塩化メチレン、エタノールの組成比、及び剥離する際の残留溶媒濃度を下記の表1記載のように変えた以外は、アクリル樹脂含有フィルムA1と同様にして、アクリル樹脂含有フィルム2〜10を作製した。
【0165】
<偏光板H1〜H10の作製>
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
【0166】
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記アクリル樹脂含有フィルムA1〜A10と、裏面側にはコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて偏光板H1〜H10を作製した。
【0167】
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したアクリル樹脂含有フィルムを得た。
【0168】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0169】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したアクリル樹脂含有フィルムの上にのせて配置した。
【0170】
工程4:工程3で積層したアクリル樹脂含有フィルムと偏光子と裏面側アクリル樹脂含有フィルムを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0171】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とアクリル樹脂含有フィルムとコニカミノルタタックKC4UYとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、それぞれ、アクリル樹脂含有フィルムに対応する偏光板H1〜H10を作製した。
【0172】
ここで、下記評価基準を用いて偏光板H1〜H10の密着性及びヘイズの評価を行った。
【0173】
(密着性)
上記のように作成した偏光板の偏光子と光学フィルムとを手で剥離し、接着性を下記のように評価した。
【0174】
◎:材料破壊が起こり、全く剥がれない。
【0175】
○:材料破壊が起こるが、試料フィルムとPVAフィルム間で剥がれる面積が大きい。
【0176】
△:一部材料破壊が起こるが、試料フィルムとPVAフィルム間で剥がれる面積が大きい。
【0177】
×:試料フィルムとPVAフィルムとの間で剥がれる。
【0178】
(ヘイズ測定評価)
上記のように作製した偏光板についてJIS K−7136に従って、ヘイズメーター(NDH2000型、日本電色工業(株)製)を使用して測定した。
【0179】
○:0.2%以下
△:0.2〜0.3%
×:0.3%以上

【0180】
【表1】

【0181】
表1の結果から明らかなように、アクリル樹脂とセルロース樹脂との質量比が95:5〜30:70の範囲内であり、塩化メチレンと脂肪族アルコールであるエタノールとの比が85:15〜70:30であるドープ組成物であって、なおかつ当該ドープ組成物を残留溶媒濃度が20〜50%の状態において支持体流延後に剥離した実施例1〜5は、密着性に優れるアクリル樹脂含有フィルムを製造することが可能となった。
【0182】
また、一般にフィルムが疎膜化された場合、フィルム内部、表面ともに空隙の発生が増加するに従い、入射光に対しての拡散光が増加する結果、ヘイズが上昇してしまう。しかしながら、前記実施例1〜5は、ヘイズの生じにくいアクリル樹脂含有フィルムとすることができた。
【0183】
一方で、溶媒残留濃度を50%より高い状態で剥離した比較例1,5は、剥離時に縦スジが生じてしまったことからヘイズに劣る結果となった。また、溶媒残留濃度を20%より低い状態で剥離した比較例4は、剥離時にすでに乾燥していたため、密着性に劣る結果となった。上記実施例1〜5に比べて脂肪族アルコールの質量比が小さい比較例2は、フィルムの空隙が少なくなり、乾燥効率が悪くなった結果、密着性に劣るフィルムとなった。脂肪族アルコールの質量比が大きい比較例3は、フィルムの空隙が多くなった結果、ヘイズに劣る結果となった。
【符号の説明】
【0184】
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストックタンク
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 ダイ
31 金属支持体
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター装置
35 ロール乾燥装置
41 粒子仕込釜
42 ストックタンク
43 ポンプ
44 濾過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープ組成物を支持体に流延した後、剥離する工程を有するアクリル樹脂フィルムの製造方法であって、
前記ドープ組成物は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、塩化メチレン、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有した固形分15〜45質量%のドープ組成物であり、
前記アクリル樹脂とセルロース樹脂との質量比が、95:5〜30:70であり、
前記塩化メチレンと脂肪族アルコールとの比が、85:15〜70:30であり、
当該ドープ組成物を支持体に流延後に、残留溶媒濃度が20〜50%の状態において剥離することを特徴とするアクリル樹脂含有フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記塩化メチレンと脂肪族アルコールとの比が、80:20〜75:25であることを特徴とする請求項1に記載のアクリル樹脂含有フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記アクリル樹脂含有フィルムの膜厚が、10〜60μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のアクリル樹脂含有フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記セルロースエステル樹脂におけるアシル基の炭素数が3〜7であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のアクリル樹脂含有フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクリル樹脂含有フィルムの製造方法を用いて作製したことを特徴とするアクリル樹脂含有フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のアクリル樹脂含有フィルムを少なくとも一方の面に用いることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項5に記載のアクリル樹脂含有フィルム、または請求項6に記載の偏光板を用いることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−28676(P2013−28676A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164407(P2011−164407)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】