説明

アシストグリップ

【課題】取付作業者がクリップが確実にボディパネルに組み付けられたことを実感することができ、かつクリップの挿入荷重を低減できる引き出し自在のアシストグリップを提供する。
【解決手段】グリップ本体10と、摺動部12を引き出し自在に収容するとともにボディパネル70に取り付ける取付手段20とを備え、取付手段は、ベース部材30と、摺動部をボディパネルに固定するクリップ50と、ベース部材に嵌合して摺動部を収容するカバー部材とを備えるとともに、クリップを取付孔に係合した後に、カバー部材をベース部材に沿って所定距離スライドさせてカバー部材をベース部材に嵌着するとともに、グリップ本体を取付孔に固定する固定手段とを備え、クリップには脚部に切り起こされた弾性係止部の自由端に取付孔に係合する係止部が形成されており、カバー部材は、固定状態でこの係止部に当接する押圧栓を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の室内に取り付けられて、乗員の姿勢を支持することができるアシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは先願の特許文献1で、クリップによって車室内のボディパネルに取り付けられる収容状態から引き出して使用するアシストグリップの取付構造について提案した。この取付構造は、アシストグリップに形成された連結部と、この連結部を覆うキャップとからなっている。
【0003】
連結部は、グリップ本体の両端に突出して形成されている長孔を有する薄板状の摺動部と、この摺動部が載置されるベース部と、摺動部を押圧する押圧部材と、これら摺動部とベース部と押圧部材とを貫通するクリップとで構成されている。そして、貫通されたクリップの脚部をボディパネルに穿設された所定の取付孔へ挿通して、連結部をボディパネルに固定する。続いて、固定された連結部を覆うようにキャップをベース部に嵌着する。これにより、アシストグリップは引き出し自在にボディパネルに固定されるとともに、キャップに一体に形成された押圧栓がクリップの脚部の間隙部へ挿入されてクリップの取付孔からの脱落を防止するようになっている。
【0004】
しかし、この従来技術になる取付構造では、取付作業者がクリップが確実にボディパネルに組み付けられたことを実感することができなかった。また、内装部材の厚さが厚い場合には、クリップの挿入荷重が高くなって作業性が低下するなどの問題があり、必ずしも満足のゆくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−155234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたもので、取付作業者がクリップが確実にボディパネルに組み付けられたことを実感することができ、かつクリップの挿入荷重を低減できる引き出し自在のアシストグリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアシストグリップは、長孔を有する摺動部を両端に突出して備えるグリップ本体と、該摺動部を引き出し自在に収容するとともにボディパネルの取付孔に取り付ける取付手段とを備えるアシストグリップにおいて、前記取付手段は、前記摺動部を摺動可能に保持するベース部材と、該ベース部材と協働して前記摺動部を挟持する押圧部材と、前記長孔を介して前記取付孔に挿通され該摺動部を前記ボディパネルに摺動自在に固定するクリップと、前記ベース部材に嵌合して前記摺動部を収容するカバー部材とよりなり、かつ、前記クリップが前記押圧部材、前記摺動部、前記ベース部材の順に貫通された該ベース部材に前記カバー部材を仮組み付けする仮組み付け手段と、仮組み付けされた前記クリップを前記取付孔に挿通して該取付孔に係止した後に、前記カバー部材を前記ベース部材に沿って所定距離スライドさせて該カバー部材を該ベース部材に嵌着させるとともに、前記グリップ本体を前記取付孔に固定する固定手段とを備え、前記クリップは一端で連結されるU字状の脚部を有し、該脚部には切り起こされた弾性係止部の自由端に前記取付孔に係合する係止部が形成されおり、前記カバー部材は、該カバー部材が前記ベース部材に固定された固定状態で該クリップの該係合部に当接する押圧栓を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のアシストグリップにおいて、前記取付手段は、前記ベース部材と協働して前記摺動部を挟持する押圧部材をさらに備えることができる。
【0009】
また、本発明のアシストグリップにおいて、前記仮組み付け手段は、前記ベース部材の壁部に突出して形成された第1爪部と前記ベース部材の底部と、前記カバー部材に形成され、該第1爪部を摺接自在に係止する係止長孔と、該底部の端部に係止される段差部とよりなることが望ましい。
【0010】
さらに、本発明のアシストグリップにおいて、前記固定手段は、前記ベース部材の壁部に突出して形成されスライド方向に傾斜する斜面を有する第2爪部と、前記カバー部材の基端部に形成され固定状態で該第2爪部を係止する第1切欠部と、仮組み付け状態で該第2爪部が位置する第2切欠部と、該第1切欠部と第切欠部とを区画する係止片とからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアシストグリップにおいて、クリップは、脚部に切り起こされた弾性係止部を有し、その自由端部に取付穴に係止される係止部が形成されている。従って、脚部の全幅に亘って係止部が形成されている従来技術になるクリップに比べて、クリップ脚部を取付穴へ挿入する挿入荷重を大幅に低減することができる。
【0012】
また、取付手段は、仮組み付け手段を有するので、長手方向にスライド分だけずらした状態でカバー部材をベース部材に組み付ける際に、位置決めが容易であるとともに、わずかな押圧力で両者を仮組み付けすることができる。
【0013】
さらに、スライドさせてカバー部材をベース部材に嵌着させるとともに、グリップ本体を取付孔に固定する固定手段を備えるので、作業時に節度感があり、作業者がクリップが確実にボディパネルに組み付けられたことを実感することがでる。
【0014】
また、カバー部材をスライドさせることで、カバー部材の押圧栓がクリップの内部空間へ進入して、取付孔に係止されたクリップの係止部が外側へ押圧される。従って、クリップの脱落が阻止されるとともに、アシストグリップのボディパネルに対する高い取付強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のアシストグリップを車体パネルに取り付けた取付構造の主要部を示す部分断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面を示す断面図である。
【図3】取付手段の部品構成を示す説明図である。
【図4】ベース部材を上から見た斜視図である。
【図5】クリップを示す斜視図である。
【図6】カバー部材を下から見た斜視図である。
【図7】アシストグリップの仮組み状態を示す側面図である。
【図8】押圧栓の栓部のクリップとの位置関係を説明する概念図である。
【図9】取付手段におけるカバー部材とベース部材との係合状態を説明する部分斜視図である。(a)は仮組み状態であり、(b)は固定状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の好適な一実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明のアシストグリップ1を車体パネルに取り付けた取付構造の主要部を示す部分断面図であり、図2は、図1におけるA−A断面を示す。また、図3は、後述する取付手段20の部品構成を示す説明図である。
【0018】
本発明のアシストグリップ1は、両端に摺動部12を備えるグリップ本体10と、この摺動部12を収容するとともに車両ボディパネル70の取付孔72に取り付けられる取付手段20とを備える。
【0019】
摺動部12は、グリップ本体10に埋設された金属インサートである弾性を有する芯材よりなる。摺動部12には長手方向に長い長孔14が形成されている。長孔14の一辺には芯材から切り起こされたロック部16が一体に形成されている。この長孔14の大きさはアシストグリップ10の長手方向において、後述するクリップ50の幅よりも長いものとされている。
【0020】
図3に示すように、取付手段20は、摺動部12を摺動可能に保持するベース部材30と、このベース部材30と協働して摺動部12を摺動可能に挟持する押圧部材40と、摺動部12の長孔14を介して取付孔72に挿通し、摺動部12をボディパネル70に摺動自在に固定するクリップ50と、ベース部材30に嵌着して摺動部12を収容するカバー部材60とよりなる。
【0021】
図4にベース部材30を上から見た斜視図を示す。ベース部材30は長方形の略板状に形成され、長手方向に一対の側壁31が立設されている。側壁31の内壁面には、カバー部材60を係止する第1爪部32と第2爪部33とが突出して設けられている。
【0022】
各側壁31に連続する底部34は略中央部が窪んだ浅皿状をなし、中央部にはクリップ50を挿通するクリップ挿通孔35が開口されている。クリップ挿通孔35と側壁31の間には、側壁31に平行して押圧部材40が載置される一対の台座部36が設けられている。この一対の台座部36は、摺動部12の長手方向の摺動を案内する摺動溝とされている。各台座部36には一対の突起36aが突出して設けられており、この突起36aにより押圧部材40の長手方向の移動が規制されるようにされている。クリップ挿通孔35の一端には、一側がクリップ挿通孔35に臨む矩形凹部38が形成されており、この矩形凹部38は、摺動部12が長手方向に移動する際に、押圧部材40に摺接したロック部16を収容可能に形成されている。
【0023】
また、底部34には、クリップ挿通孔35の長手方向に直交する周縁に沿って裏面側に延出する一対の突部37(図1)が形成されている。この一対の突部37によってクリップ50の脚部53が挟持され、クリップ50の長手方向における姿勢が安定して維持されるようにされている。また、底部34の左端部には、カバー部材60の嵌合突部69が嵌合する嵌合部39が形成されている。嵌合部39は、凹部39aと、凹部39aを覆う張出し部39bとからなり、断面逆L字形状にされており、嵌合突部69と凹凸嵌合可能とされている。
【0024】
押圧部材40は、矩形の板状枠体であり、板状枠体の内周はクリップ50が貫通して係合されるクリップ係合孔42とされている。
【0025】
図5の斜視図に示すように、クリップ50は、帯状の板金を折り曲げてU字状に形成されており、内部空間51を隔てて対向する一対の側壁52を備える。
【0026】
側壁52には、ボディパネル70の取付穴72に挿通される脚部53と、押圧部材40のクリップ係合孔42に係合して押圧部材40に保持される係合部54とが形成されている。脚部53には、側壁52から切り起こされて自由端が外側へ突出している弾性係止部55が形成されている。この自由端には、取付穴72の裏面周縁に当接して係止する一対の突起部56と、この自由端よりも内部空間51側に突出するR部57を有し、取付穴72に係止される第1係止部58とが形成されている。また、脚部53の基部には、一対のL字形状の第2係止部59が脚部53の基部から垂下するように形成されている。この第2係止部59は、その端部が外へ向かって突出しており、ベース部材30のクリップ挿通孔35の裏面周縁に係止するようにされている(図2)。係合部54は、押圧部材40のクリップ係合孔42の周縁に当接する当接部54aと、当接部54aに連続して上方へ折り曲げられた鍔部54bとからなっている。なお、図5においては、軸心Lから側壁52へ向かう方向を外方向とする。
【0027】
図6は、カバー部材60を下方から見た斜視図である。カバー部材60は、図2に示すように断面略台形のドーム部61と、このドーム部61の天井内周から垂下して一体に形成された押圧栓62とよりなる。ドーム部61の右端は開口63とされており、この開口63を介してグリップ本体10を挿通することができる。開口63の下端部は、ドーム部62の基部を連結する連結部64によって区画されており、開口63を介してグリップ本体12へ挿通されたカバー部材60が、組み付け前にグリップ本体12から脱落するのを防止するようにされている。
【0028】
ドーム部61の基部には、ベース部材30の側壁31に内嵌する段差壁65が形成されている。段差壁65には、ベース部材30の側壁31に突出して形成された第1爪部32と摺接可能に係合する長手方向(左右)に長い長孔66と、側壁31に突出して形成された第2爪部33と係止する係止手段67とが設けられている。係止手段67は、基端部に設けられた第1切欠き部67aと、右端が連結部64に区画される第2切欠き部67bと、第1切欠き部67aと第2切欠き部67bとを区画する係止片67cとからなる。また、基端部には、仮組状態でベース部材30の底端部34aに係止する段差部68が設けられている。
【0029】
押圧栓62は、ドーム部61の内周面に連続する四角柱状の押圧部62aと、この押圧部62aから垂下する断面が略五角形の栓部62bとよりなる。押圧部62aはクリップ50の対向する鍔部54bの間に挿入されて当接部52aを押圧し、栓部62bはクリップ50の内部空間51へ進入されて、弾性係止部55の自由端に形成された第1係止部58のR部57の内周面に当接するように形成されている。
【0030】
また、ドーム部61の左基端部には、ベース部材30の底部34の左端部に形成された逆L字型の嵌合部39に嵌合する嵌合突部69が形成されている。
【0031】
次に、以上の各部材を用いてアシストグリップ1をボディパネル70に取り付ける取付方法を詳細に説明する。
【0032】
まず、左右のカバー部材60をグリップ本体10の両端から開口63を介して挿入してグリップ本体10へ配置する。次に、ベース部材30の一対の台座部36の間(摺動溝)へグリップ本体10の摺動部12を載置する。続いて、台座部36へ押圧部材40を配置する。これにより、摺動部12の長孔14とベース部材30のクリップ挿入孔35および押圧部材40のクリップ係合孔42が一連とされた貫通可能な連通孔が形成される。
【0033】
次に、押圧部材40側からクリップ50の脚部53をこの連通孔に挿通し、クリップ50の当接部54aを押圧部材40のクリップ係合孔42の周縁に当接させる。これにより、クリップ50の係合部54が押圧部材40に保持されるとともに、クリップ50の一対の第2係止部59は、ベース部材30のクリップ挿通孔35の裏面周縁に係止される。このとき、クリップ50の脚部53は、ベース部材30の裏面側に突出して形成されている突部37に当接して挟持されている。
【0034】
続いて、グリップ本体10に配置されたカバー部材60を、グリップ本体10の端部へ移動して、カバー部材60の基端部に形成された段差部68をベース部材30の底端部34aに係止するように位置決めする。そして、カバー部材60のドーム部61を押圧して段差部68を底端部34aに係止するとともに、カバー部材60の長孔66にベース部材30の側壁31に突出して形成された第1爪部32を係合して、カバー部材60をベース部材30に組み付ける。このようにして、図7に示すようなグリップ本体10の摺動部12に取付手段20が一体化されたアシストグリップ1の仮組体を得ることができる。
【0035】
なお、この仮組体におけるカバー部材60とベース部材30とは、ボディパネル70に取り付けられた固定状態に対して、長手方向に所定の長さDだけずれた状態で組み付けられている。これゆえ、図8に破線で示すように、押圧栓62の栓部62bはその稜線部62cがクリップ50の内部空間51を臨む状態で位置しており、クリップ50の弾性係止部55に形成された第1係止部58のR部57の内周面には当接していない。図8は、押圧栓62の栓部62bのクリップ50との位置関係を説明する概念図である。
【0036】
次に、仮組みされた取付手段20において、カバー部材60を押圧してクリップ50の脚部53をボディパネル70の取付穴72へ挿入する。すると、脚部53の弾性係止部55は内部空間51側へ弾性変形して撓むことより、取付穴72を通過する。弾性係止部55が取付穴72を通過すると、弾性係止部55の自由端に設けられた第1係止部58がR部57を介して取付穴72の周縁に係止するとともに、一対の突起部56が取付穴72の裏面周縁に当接して、アシストグリップ1がボディパネル70に仮固定される。
【0037】
そして、ボディパネル70に仮固定された取付手段20において、カバー部材60をベース部材30に沿って右方向へ所定距離Dだけスライドさせてアシストグリップ1をボディパネル70へ本固定する。
【0038】
カバー部材60をベース部材30に沿って所定距離Dだけスライドさせることにより、カバー部材60の内部に形成されている押圧栓62が、クリップ50の内部空間51へ進入し、図8に実線で示すように、栓部62bが第1係止部58のR部57の内周面に当接する。これにより、脚部53の内側への変形を阻止して第1係止部58の取付穴72への係合を確実なものとすることができる。また、押圧部62aは対向する鍔部54bの間に進入して鍔部54bの内側への変形を阻止する。つまり、押圧栓62をクリップ50に進入させることにより、クリップ50のボディパネル70に対する係合状態を安定して維持することができ、アシストグリップ10の取付穴72からの脱落を確実に防止することができる。
【0039】
図9は、取付手段20におけるカバー部材60の係止手段67とベース部材30の第1爪部32および第2爪部33との係合状態を説明する部分斜視図である。(a)は仮組み状態を、(b)は固定状態を示す。
【0040】
前述のように、カバー部材60をベース部材30に被せてドーム部61を挿入方向に押圧することより、取付手段20は仮組み状態とされる。この仮組み状態では、ベース部材30の第1爪部32はカバー部材60の長孔66に係止されており、ベース部材30の第2爪部33はカバー部材60の第2切欠き部67bに位置している。また、カバー部材60の段差部68はベース部材30の底端部34aに係止されている。この段差部68が底端部34aに係止されることにより、ベース部材30の長手方向におけるカバー部材60の仮組み位置が位置決めされ、(a)に示す仮組み状態を容易に実現することができる。
【0041】
この仮組み状態からカバー部材60を右方向へ距離Dだけスライドさせると、ベース部材30の第1爪部32は、長孔66に係止された状態で相対的に左方向へ摺動される。また同時に、カバー部材60の係止片67cは内側へ弾性変形されて、スライド方向に傾斜面を有する第2爪部33を乗り越えて移動し、第2爪部33はカバー部材60の第1切欠部67aへ嵌入される。このようにして、取付手段20は(b)に示す固定状態とされる。なお、この固定状態では、図1に示すように、カバー部材60の嵌合突部69が、ベース部材30の嵌合部39に嵌合されていることは言うまでもない。
【0042】
本発明のアシストグリップ1において、クリップ50は、脚部53に切り起こされた弾性係止部55を有し、その自由端部に取付穴72に係止される第1係止部58が形成されている。従って、脚部の全幅に亘って係止部が形成されている従来技術になるクリップに比べて、取付穴72へクリップ脚部51を挿入する押圧力を大幅に低減することができる。
【0043】
また、仮組み状態におけるクリップ脚部51を取付穴72へ挿入してから、カバー部材60をベース部材30に沿ってスライドさせて、取付手段20を取付孔72へ固定するようにされている。これにより、カバー部材60の係止手段67がベース部材30の第2爪部33と係合するとともに、カバー部材60の嵌合突部69がベース部材30の嵌合部39に嵌合されるので、取付作業時に節度感があり、作業者がクリップが確実にボディパネルに組み付けられたことを実感することがでる。
【0044】
また、カバー部材60をスライドさせることで、カバー部材60の押圧栓63がクリップ50の内部空間51へ進入して取付孔72の周縁に係止されたクリップ50の第1係止部58を押圧するようにしたので、クリップ50の脱落を阻止するとともに、アシストグリップ1のボディパネル70に対する高い取付強度を得ることができる。
【0045】
さらに、カバー部材60によりアシストグリップ1の端部の見栄えを向上することができる。
【0046】
なお、本実施形態において、仮組み付け手段は、ベース部材30の壁部31に突出して形成された第1爪部32と、ベース部材30の底部34に形成された底端部34aと、カバー部材60に形成され、第1爪部32を摺接自在に係止する係止長孔66と、底端部34aに係止される段差部68とよりなる。
【0047】
また、固定手段は、ベース部材30の壁部31に突出して形成されスライド方向(右方向)に傾斜する斜面を有する第2爪部33と、カバー部材60の基端部に形成され固定状態で第2爪部33を係止する第1切欠部67aと、仮組み付け状態で第2爪部33が位置する第2切欠部67bと、第1切欠部67aと第2切欠部67bとを区画する係止片67cとからなる。
【0048】
以上のように構成されたアシストグリップ1のグリップ本体10を図1に示す収納状態から引き出して使用する場合には、まず、ベース部材30と押圧部材40との間から突出した摺動部12が長手方向へ移動して、ロック部16が押圧部材40の外周縁に当接する。さらに引き出しが進むと、ロック部16は弾性変形してベース部材30に形成された矩形凹部38に収納されるので、ロック部16は押圧部材40の下面に摺接しながら移動することができる。そして、押圧部材40を通過したロック部16は、弾性によって復元して押圧部材40のクリップ係合孔42の周縁に係合することができる。つまり、押圧部材40のクリップ係合孔42はロック部16の被係合部としても作用しており、グリップ本体10の引き出し状態を保持することができる。
【0049】
一方、使用状態のグリップ本体10を収納状態とする場合には、凸状のグリップ本体12の頂部を押圧すればよい。使用状態のグリップ本体10を押圧することで、ロック部16は弾性変形するので押圧部材40のクリップ係合孔42との係合が解除される。そして、弾性材料よりなる芯材が予め形成された形状に復元する弾性力により、図1に示す収納状態とすることができる。
【0050】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更してもよい。例えば、上記の実施の形態では、ベース部材30に載置された摺動部12に押圧部材40を配置してからクリップ50を挿入するようにされていた。しかし、予めクリップ50に押圧部材40を係合したサブアッシーを準備しておき、このサブアッシーをベース部材30に載置された摺動部12の長孔16に挿入するようにしてもよい。これにより、仮組み作業時の作業性をより向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のアシストグリップは、自動車の車室内にグリップ本体の両端部が収納状態で取り付けられ、使用時にはグリップ本体を引き出して使用するアシストグリップとして好適である。
【符号の説明】
【0052】
1:アシストグリップ 10:グリップ本体 12摺動部 14:長孔 16:ロック部 20:取付手段 30:ベース部材 31:側壁 32:第1爪部 33:第2爪部 34:底部 34a底端部 39:嵌合部 40:押圧部材 50:クリップ 51:内部空間 53:脚部 54:係合部 55:弾性係止部 57:R部 58:係止部 60:カバー部材 61:ドーム部 62:押圧栓 62a:押圧部 62b:栓部 67:係止手段 67a:第1切欠部 67b:第2切欠部 67c:係止片 70:ボディパネル 72:取付穴 74:内装部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長孔を有する摺動部を両端に突出して備えるグリップ本体と、
該摺動部を引き出し自在に収容するとともにボディパネルの取付孔に取り付ける取付手段とを備えるアシストグリップにおいて、
前記取付手段は、前記摺動部を摺動可能に保持するベース部材と、
前記長孔を介して前記取付孔に挿通され該摺動部を前記ボディパネルに摺動自在に固定するクリップと、
前記ベース部材に嵌合して前記摺動部を収容するカバー部材とよりなるとともに、
前記クリップが前記押圧部材、前記摺動部、前記ベース部材の順に貫通された該ベース部材に前記カバー部材を仮組み付けする仮組み付け手段と、
仮組み付けされた前記クリップを前記取付孔に挿通して該取付孔に係止した後に、前記カバー部材を前記ベース部材に沿って所定距離スライドさせて該カバー部材を該ベース部材に嵌着するとともに、前記グリップ本体を前記取付孔に固定する固定手段とを備え、
前記クリップは一端で連結されるU字状の脚部を有し、該脚部には切り起こされた弾性係止部の自由端に前記取付孔に係合する係止部が形成されおり、
前記カバー部材は、該カバー部材が前記ベース部材に固定された固定状態で該クリップの該係合部に当接する押圧栓を有することを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記取付手段は、前記ベース部材と協働して前記摺動部を挟持する押圧部材をさらに備える請求項1に記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記仮組み付け手段は、前記ベース部材の壁部に突出して形成された第1爪部と前記ベース部材の底部と、前記カバー部材に形成され、該第1爪部を摺接自在に係止する係止長孔と、該底部の端部に係止される段差部とよりなる請求項1又は2に記載のアシストグリップ。
【請求項4】
前記固定手段は、前記ベース部材の壁部に突出して形成されスライド方向に傾斜する斜面を有する第2爪部と、前記カバー部材の基端部に形成され固定状態で該第2爪部を係止する第1切欠部と、仮組み付け状態で該第2爪部が位置する第2切欠部と、該第1切欠部と第切欠部とを区画する係止片とからなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアシストグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−250568(P2012−250568A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122825(P2011−122825)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】