説明

アシストハンドル

【課題】幅方向及び厚さ方向で従来よりコンパクトにすることが可能なアシストハンドルを提供する。
【解決手段】本発明のアシストハンドル30は、ガラス戸13の戸先框18に取り付けられたベース部31に、ハンドル部35と押圧部38とを可動状態に組み付けてなる。また、ガラス戸13には、シール部材25が開閉口10の待受突壁22から離間するときのシール離間位置とガラス戸13の閉塞位置との間に、アシストハンドル30を使用しないときに初動抵抗がピーク値になる抵抗ピーク位置が存在している。そして、その抵抗ピーク位置とシール離間位置との間に、押圧部38が開閉口10の内側面10Hから離間するアシスト終了位置が配置されるように押圧部38の押圧ストロークが設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の開閉口の内側でスライドする障子に取り付けられ、閉鎖状態の障子を開く際の初動抵抗を軽減することが可能なアシストハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアシストハンドルとして、サッシのガラス戸における戸先框に取り付けられたベース部に、ハンドル部と押圧部とを可動状態に組み付けた構造のものが知られている。このアシストハンドルでは、ガラス戸が閉鎖位置にあるときにハンドル部をベース部に対して戸尻側に引くと押圧部が戸先側に移動して開閉口の内側面を押圧し、ガラス戸の初動抵抗が軽減される。なお、このようなアシストハンドルには、ハンドル部がガラス戸の室内面と平行な面内で回動する所謂レバータイプ(例えば、特許文献1参照)と、ハンドル部が上下方向に延びた回動軸を中心に回動する所謂ヒレタイプ(例えば、特許文献2参照)と、ハンドル部がガラス戸の開閉方向にスライドするスライドタイプ(例えば、特許文献3参照)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−314095号公報(図2、図4)
【特許文献2】特開2006−97248号公報(図2、図4)
【特許文献3】特許第3927938号公報(図4、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のアシストハンドルでは、アシストハンドルのベース部が戸先框から戸尻側にはみ出して見栄えが悪くなるという問題が生じていた。また、アシストハンドルのベース部が戸先框から戸尻側にはみ出さないようにしたものでは、アシストハンドルの構成部品がガラス戸の厚さ方向に重ねられて、その結果、アシストハンドルがガラス戸から室内側に大きく突出し、カーテンに引っ掛かったり、和障子と干渉する等の事態が生じ得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、幅方向及び厚さ方向で従来よりコンパクトにすることが可能なアシストハンドルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、アシストハンドルが有する押圧部の押圧ストロークを小さくすれば、アシストハンドルが幅方向でコンパクトになって戸先框から戸尻側にはみ出すことがなくなり、その結果、アシストハンドルの構成部品を障子の厚さ方向に重ねる必要もなくなって、アシストハンドルが厚方向でもコンパクトになるという見地を見出した。そこで、アシストハンドルを使用せずに、障子(例えば、ガラス戸)の開操作抵抗と障子の位置との関係を調べたところ、障子が閉鎖位置からシール離間位置に移動する途中で開操作抵抗がピーク値となり、その後、障子がシール離間位置に至るまでの間は開操作抵抗が徐々に低下し、シール離間位置を過ぎると開操作抵抗が定常値になることがわかった。即ち、障子の開操作抵抗と位置との関係をグラフにした場合、開操作抵抗が定常値になる前に山形波形の初動抵抗が発生し、閉鎖位置とシール離間位置との途中で初動抵抗がピーク値になることがわかった。詳細には、障子の戸先框からシール部材のシール突片が突出し、障子が閉鎖位置にあるときにシール突片が弓なり形状になって開閉口の開口縁に密着したものでは、障子が閉鎖位置からシール離間位置に移動する途中で逆側に反った逆弓なり形状へと反転して、そのとき開操作抵抗がピーク値となることがわかった。これに対し、従来のアシストハンドルは、レバー、ヒレ、スライドのタイプの相違に拘わらず、障子がシール離間位置を過ぎた位置まで押圧部が開閉口の内側面を押し続けるように押圧部の押圧ストロークが設定されていることもわかった。
【0007】
ところで、従来のアシストハンドルでは、障子がシール離間位置を過ぎてもアシストが作用するので(即ち、過剰にアシストするので)、障子がシール離間位置を過ぎてから押圧部が押圧ストロークの終端に達するまでの間は開操作抵抗が定常値より小さくなる。そして、その後、押圧部が押圧ストロークの終端に達してアシストが終了すると、開操作抵抗が急峻に増加して定常値になり、障子が重くなるという感覚が生じることがあった。これらに鑑み、本願発明者は、アシストハンドルを使用した場合に、アシストハンドルを使用しない場合の障子の初動抵抗がピーク値となる抵抗ピーク位置とシール離間位置との間に、アシスト終了位置が配置されるように押圧部の押圧ストロークを設定することで、従来よりコンパクトでかつアシスト終了時の開操作抵抗の急峻な増加を抑えたアシストハンドルを発明するに至った。
【0008】
即ち、上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るアシストハンドルは、障子及び障子にて開閉される開閉口の何れか一方又は両方にシール部材を設けて隙間風を防いだ障子開閉口機構に備えられ、障子の戸先框に取り付けられたベース部に、ハンドル部と押圧部とを可動状態に組み付けてなり、障子が閉鎖位置にあるときにハンドル部をベース部に対して戸尻側に引くと押圧部が戸先側に移動して開閉口の内側面を押圧し、障子の初動抵抗を軽減することが可能なアシストハンドルにおいて、シール部材が障子の閉鎖位置で密着したシール密着部から離間するときの障子のシール離間位置と閉鎖位置との間に、アシストハンドルを使用しないときに初動抵抗がピーク値になる抵抗ピーク位置が存在し、抵抗ピーク位置とシール離間位置との間に、押圧部が開閉口の内側面から離間するアシスト終了位置が配置されるように開閉口の内側面に対する押圧部の押圧ストロークを設定したところに特徴を有する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアシストハンドルにおいて、障子の戸先框及び開閉口の縦辺部分には、障子が閉鎖位置にあるときに障子の厚さ方向で対向する1対の戸先対向面が設けられると共に、それらのうち一方の戸先対向面から突出して先端部が他方の戸先対向面に密着するシール突片がシール部材に備えられ、シール突片は、障子が閉鎖位置にあるときに、先端部が基端部より障子の開閉方向の一方側に位置するように反った弓なり形状になると共に、障子が閉鎖位置から抵抗ピーク位置を通過するときに逆側に反った逆弓なり形状へと反転するように構成され、シール突片が逆弓なり形状へと反転した後、シール密着部から完全に離間する前の位置がアシスト終了位置となるように押圧ストロークを設定したところに特徴を有する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のアシストハンドルにおいて、ハンドル部は、上下方向に延びかつその下端寄り位置をベース部に回転可能に支持されて障子の室内面と平行な面内で回動可能なレバー構造をなし、ベース部に形成されて、押圧部を障子の開閉方向に直動可能に案内するガイド部と、ハンドル部の下端部と押圧部との何れか一方に形成された長孔と、他方に形成されて長孔に連結されたピンとを有して、ハンドル部の回動に連動させて押圧部を直動させるピン長孔連結機構と、押圧部を障子の戸尻側に付勢する付勢ばねとを備えたところに特徴を有する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載のアシストハンドルにおいて、ハンドル部は、上下方向に延びた手掛け部の上下の両端部から戸先側に1対の連結突出部を延ばした門形構造をなし、ベース部の内部で上下方向に延びて上下対称に配置されかつベース部によって上下方向の中間部を回転可能に支持されて障子の室内面と平行な面内で回動可能な1対の対称回動レバーと、1対の対称回動レバーが連動して対称回動するように1対の対称回動レバーの先端部同士を、ベース部の上下方向の中間位置で結合させるレバー結合機構と、各対称回動レバーの基端部と各連結突出部との何れか一方に形成された長孔と、他方に形成されて長孔に連結されたピンとを有して、ハンドル部の直動に連動して1対の対称回動レバーを回動させるピン長孔連結機構と、1対の対称回動レバーの先端部同士を結合してなるレバー先端結合部を障子の開閉方向で挟んだ1対の対向壁を有しかつ、押圧部と一体になってレバー先端結合部と共に障子の開閉方向に直動する直動中継部材と、押圧部を障子の戸尻側に付勢する付勢ばねとを備えたところに特徴を有する。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1又は2に記載のアシストハンドルにおいて、ハンドル部は、上下に延びかつベース部から障子と反対側に突出した構造をなすと共に、上下方向に延びた回動軸を中心に回動可能にベース部に連結され、押圧部は、1対になってベース部の上下の両端部で障子の開閉方向の直動可能に支持されると共に、それら1対の押圧部を障子の戸尻側に付勢する1対の付勢ばねを備え、ハンドル部のうち上下方向の両端部で回動軸より障子側に突出して、1対の押圧部における戸尻側の端面に摺接可能に当接した1対のハンドル基端摺接部を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアシストハンドルによれば、抵抗ピーク位置とシール離間位置との間にアシスト終了位置が配置されるように押圧部の押圧ストロークを設定したので、従来のアシストハンドルに比べて押圧部の押圧ストロークが小さくなる。この結果、アシストハンドルが幅方向でコンパクトになって戸先框から戸尻側にはみ出すことがなくなり、構成部品を障子の厚さ方向に重ねる必要もなくなるので厚方向でもコンパクトになる。また、上記押圧ストロークの設定により、アシスト力にて開操作抵抗のピーク値を下げてからアシストが終了するので、従来のように過剰なアシストが軽減されてアシスト終了時の開操作抵抗の急峻な増加が抑えられ、初動抵抗を徐々に開操作抵抗の定常値に近づけることができる。
【0014】
また、請求項2の構成では、障子開閉口機構のシール部材に備えたシール突片が、障子を開く過程で弓なり形状から逆弓なり形状へと反転するときに開操作抵抗がピーク値になり、そのピーク値を下げて初動抵抗を徐々に開操作抵抗の定常値に近づけることができる。
【0015】
さらに、本発明は、請求項3のアシストハンドルのように、ハンドル部がレバー構造をなしたものにも、請求項4のアシストハンドルのようにハンドル部が門形構造をなして直動するものにも、請求項5のアシストハンドルのように、ハンドル部が上下方向に延びた回動軸を中心に回動するものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態のアシストハンドルを備えた開閉口の断面図
【図2】アシストハンドルの斜視図
【図3】アシストハンドルの不使用状態の正断面図
【図4】アシストハンドルの使用状態の正断面図
【図5】図3のC−C断面におけるアシストハンドルの断面図
【図6】(A)図3のA−A断面におけるアシストハンドルの断面図,(B)図3のB−B断面におけるアシストハンドルの断面図
【図7】(A)閉鎖位置のガラス戸の平断面図,(B)抵抗ピーク位置通過直後のガラス戸の平断面図,(C)シール離間位置直前のガラス戸の平断面図
【図8】第2実施形態のアシストハンドルを備えた開閉口の断面図
【図9】アシストハンドルの斜視図
【図10】アシストハンドルの斜視図
【図11】アシストハンドルの不使用状態の正断面図
【図12】アシストハンドルの使用状態の正断面図
【図13】図11のD−D断面におけるアシストハンドルの断面図
【図14】図13のH−H断面におけるアシストハンドルの断面図
【図15】(A)図11のG−G断面におけるアシストハンドルの断面図,(B)図13のE−E断面におけるアシストハンドルの断面図
【図16】第3実施形態のアシストハンドルの不使用状態の正断面図
【図17】アシストハンドルの使用状態の正断面図
【図18】図16のJ−J断面におけるアシストハンドルの断面図
【図19】第4実施形態のアシストハンドルを備えた開閉口の断面図
【図20】アシストハンドルの斜視図
【図21】アシストハンドルの正断面図
【図22】(A)アシストハンドルの不使用状態の断面図,(B)アシストハンドルの使用状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1には、建物の窓としての開閉口10の平断面図が示されている。この開閉口10のうち室外側の略半分はアルミ及び樹脂にて形成されたガラス戸支持枠11にて囲まれ、室内側の略半分は木製の和障子支持枠12にて覆われている。そして、ガラス戸支持枠11の内側には、1対のガラス戸13,13(本発明の「障子」に相当する)が、互いにすれ違うようにスライド可能に支持される一方、和障子支持枠12の内側には、1対の和障子29,29が互いにすれ違うようにスライド可能に支持されている。
【0018】
各ガラス戸13は、1対のガラス板14,14をガラス枠15にて囲んで支持した二重ガラス構造をなしている。各ガラス枠15は、アルミの角筒体を枠状に接合して構成され、ガラス枠15のうち一方の縦辺部分が本発明に係る戸先框18となり、他方の縦辺部分が戸尻框16となっている。そして、両ガラス戸13,13の戸尻框16,16の間に設けたクレセント錠17にて施解錠されるようになっている。
【0019】
各ガラス戸13の戸先框18には、ガラス戸13と開閉口10の内側面10Hとの間の隙間風を防ぐためのシール部材25が取り付けられている。具体的には、各ガラス戸13における戸先框18のうちガラス戸13のスライド方向を向いた端面には、上下方向の全体にシール収容溝21が形成されている。これらに対し、ガラス戸支持枠11の各内側面10Hからは、各シール収容溝21内に突入可能な待受突壁22(本発明の「シール密着部」に相当する)が上下方向全体に亘って突出形成されている。
【0020】
シール収容溝21内にはガイド部品23とシール突片24とが設けられている。ガイド部品23は、シール収容溝21内における奥面と室内寄りの内側面とを被っている。また、室内側を被った部分がシール収容溝21の開口面まで膨らんだ形状をなし、室内寄りの内側面を被った部分は、シール収容溝21の幅方向における中央位置まで膨らんでいる。そして、ガラス戸13を閉じるとガイド部品23のテーパ面23Aが待受突壁22に当接し、テーパの作用により、ガラス戸13が室内側へ移動させられて、シール突片24が待受突壁22に密着するように構成されている。
【0021】
シール収容溝21のうち待受突壁22より室外側に配置された溝内側面と、その溝内側面と対向する待受突壁22の側面とは、本発明に係る「1対の戸先対向面」に相当する。その一方の「戸先対向面」に相当するシール収容溝21の溝内側面からは、シール部材25に備えた1対のシール突片24,24が、他方の「戸先対向面」に相当する待受突壁22の側面に向かって突出している。これら1対のシール突片24,24は、先端に向かって若干肉薄になったヒレ状をなし、互いに平行になって上下方向に延びている。そして、シール突片24,24はガラス戸13を閉じたときに待受突壁22に密着する。
【0022】
詳細には、シール突片24,24は、待受突壁22から離間した状態では、シール収容溝21の溝内側面から垂直に突出している。そして、ガラス戸13を閉じると、図7(A)に示すように、シール突片24,24の先端部が基端部より戸尻側にずれるように反った弓なり形状になってシール突片24,24の先端部が待受突壁22に密着する。一方、ガラス戸13を閉じた状態から開くと、その過程で、シール突片24,24が待受突壁22との摩擦によって逆側に反った逆弓なり形状へと反転する(図7(B)参照)。また、ガラス戸13を更に開くと、シール突片24,24が待受突壁22から順次、離間して(図7(C)参照)、シール収容溝21の溝内側面から垂直に突出した状態に弾性復帰する。
【0023】
図1に示すように、ガラス戸13,13を閉めた状態では、ガラス戸13,13における戸尻框16,16同士の間の隙間風もシール部材27によって防がれるようになっている。具体的には、一方のガラス戸13の戸尻框16には、他方のガラス戸13の戸尻框16と対向する面のうち戸先框18から離れた側の縁部に沿ってシール部材27が設けられている。このシール部材27には、前記した戸先框18のシール突片24と同形状の1対のシール突片26,26が備えられ、他方のガラス戸13の戸尻框16における戸先框18側の縁部に密着するようになっている。そして、これらシール突片26,26も、ガラス戸13の開操作時に弓なり形状から逆弓なり形状に反転する。また、戸尻框16側のシール突片26は、戸先框18側のシール突片24,24は、ガラス戸13を開く際に略同時に密着相手から離間する。
【0024】
なお、図7(C)に示すように一方のシール突片24が待受突壁22から離間し、他方のシール突片24が待受突壁22に接している状態から、ガラス戸13が僅かに開く側に移動して(図7(C)の左側に移動して)、他方のシール突片24も待受突壁22から離間したときの位置が、本発明に係る「シール離間位置」に相当する。また、図7(A)に示したガラス戸13の位置が本発明に係る「閉鎖位置」に相当する。
【0025】
さて、各ガラス戸13の戸先框18における室内面には、それぞれアシストハンドル30が取り付けられている。図2に示すように、アシストハンドル30は、戸先框18に取り付けられたベース部31に、ハンドル部35と押圧部38とを可動状態に組み付けてなる。
【0026】
ベース部31は、横方向(ガラス戸13の開閉方向と平行な方向)より上下方向が長く、横方向より厚さ方向(ガラス戸13を内外に貫通する方向)が小さい偏平直方体状のベースカバー32の内側に、板金製の固定板金ベース33を収容してなる。なお、ベースカバー32は、戸先框18側が開放していて、その開放口からベースカバー32内に固定板金ベース33が組み付けられている。また、図2の右側には、アシストハンドル30が、ハンドルボディ36及びベースカバー32を排除した状態で示されている。
【0027】
ハンドル部35は、上下方向に延びかつその下端寄り位置をベース部31に回転可能に支持されて、ガラス戸13の室内面と平行な面内で回動する。また、ハンドル部35の回動中心は、ベース部31における上端寄りかつ戸尻寄り位置に配置されている。詳細には、ハンドル部35は、戸先框18との対向面に溝開口を有した角溝構造のハンドルボディ36の内側に、図2の右側に示した縦長で板金製のレバープレート37を収容してなる。レバープレート37のうち回動中心より上側には、1対の螺子止め孔37A,37Aが貫通形成され、それらに挿通したビス37V,37Vがハンドルボディ36に締め付けられている(図5参照)。
【0028】
ハンドル部35の回転中心には、回動支持ピン35Pがレバープレート37に固定された状態で設けられ、ハンドル部35の下端部には、連結ピン37Pがレバープレート37に固定された状態で設けられている。また、ハンドルボディ36のうち戸先框18側を向いた面には、上下方向の中間位置に段差部が設けられて、その段差部より上側部分が戸先框18側に厚くなっている。そして、ハンドル部35のうち段差部より下側部分がベース部31に戸先框18と反対側から重ねられている。また、ハンドル部35は、非操作時には、鉛直方向の真っ直ぐ延びた直立姿勢に保持され、その直立姿勢でハンドル部35のうち戸尻側の側面とベース部31における戸尻側の側面とが面一になるように配置されている(図3参照)。
【0029】
なお、図2の左側部分に示すように、ハンドル部35における戸先側の側面には、先端部を戸先側へと膨出させて滑り止め突部35Zが形成されている。
【0030】
図2の右側部分に示すように、固定板金ベース33のうち下端部を除いた部分における戸尻側端部には、室内側に隆起した溝形のピン支持部33Wが形成されている。そして、回動支持ピン35Pがベースカバー32に形成された貫通孔32K(図6(A)参照)を通してピン支持部33Wに回転可能に支持されかつ抜け止めされている。
【0031】
図3に示すように、固定板金ベース33のうち戸先側の端部において上下方向で対称となる位置には、1対のベース取付孔33A,33Aが形成されている。これに対し、ベースカバー32には、上端部における戸先側の角部と、下端部における戸先側の角部とが、ベースカバー32の箱形本体部32Aに対して離脱可能な蓋部32B,32B(図2参照)になっている。そして、箱形本体部32Aから蓋部32B,32Bを離脱した状態でベース取付孔33A,33Aを露出させて、それらベース取付孔33A,33Aに挿通した図示しない螺子にてベース部31が戸先框18に固定される。
【0032】
図2の左側部分に示すように、ベースカバー32のうち戸先側を向いた側面には、上下方向の中央に矩形孔32Cが形成され、その内部に押圧部38が直動可能に収容されている。押圧部38は、全体が断面長方形の略角柱状をなしてガラス戸13の開閉方向に延びている。また、押圧部38における戸先側の縁部からは戸先框18側に向かって係止突条38T(図6(B)参照)が形成され、押圧部38を後方に移動したときに、この係止突条38Tが固定板金ベース33の縁部を覆うようになっている。
【0033】
図3に示すように、ベースカバー32には、矩形孔32Cの上下の開口縁からベースカバー32内の水平方向に本発明に係る「ガイド部」に相当するガイド壁32G,32Gが延びている。また、押圧部38は、長手方向の中間部で段付き状に幅が変わって前端側(戸先側)が幅広で後端側(戸尻側)が幅狭になっている。そして、押圧部38のうち前側の幅広部分がガイド壁32G,32Gに摺接して直動可能にガイドされている。
【0034】
押圧部38の後端部には、上下方向に延びた縦長孔38Lが形成されている。また、ベースカバー32には、回動支持ピン35Pが通された貫通孔32Kの下方に、縦長孔38Lに対応した横長孔32Lが形成されている。この横長孔32Lは、ハンドル部35の回動中心を中心とした円弧状をなし、回動支持ピン35Pの下方に位置している。そして、図5に示すように、ハンドル部35の下端部に備えた連結ピン37Pが、横長孔32L及び縦長孔38Lに挿入されている。これにより、図4に示すように、ハンドル部35の上端部を回動中心より戸尻側に引くと、押圧部38が戸先側に直動してベース部31から突出する(図4参照)。
【0035】
押圧部38の下方には、ベースカバー32の内面にバネ支持支柱32Pが形成され、そこにトーションコイルバネ39が取り付けられている。また、トーションコイルバネ39の一端部が固定板金ベース33の曲げ部33Zに係止する一方、他端部が連結ピン37Pに係止している。そして、このトーションコイルバネ39により、ハンドル部35が鉛直方向に延びた直立姿勢に付勢され、押圧部38がベース部31内に没入する方向に付勢されている。
【0036】
なお、本実施形態ではハンドル部35及び押圧部38が、可動範囲の一端側に移動すると、連結ピン37Pがピン支持部33Wの横長孔32Lにおける一端部のレバーストッパ脚部33B1に当接して位置決めされる一方、ハンドル部35及び押圧部38を可動範囲の他端側に移動すると、連結ピン37Pがピン支持部33Wの横長孔32Lにおける他端部のレバーストッパ脚部33B2に当接して位置決めされる(図6(B)参照)。即ち、押圧部38の直動ストロークは、レバーストッパ脚部33B1,33B2の配置によって設定されている。
【0037】
さて、本実施形態のアシストハンドル30における押圧部38の直動ストロークは、以下のように設定されている。即ち、図7(A)に示すように、ガラス戸13を閉じかつ押圧部38が直動ストロークの後端位置に配置された状態で、押圧部38の端面が開閉口10の内側面10Hに対して所定寸法(例えば、1[mm])の隙間を開けて対向するように配置されている。そして、ハンドル部35の上端部を戸尻側に引きながらガラス戸13を開いたときに、両シール突片24,24が、図7(A)に示した弓なり形状から、図7(B)に示した逆弓なり形状へと反転するまで押圧部38が開閉口10の内側面10Hを押圧し続け、さらに、両シール突片24,24が逆弓なり形状へと反転した後、図7(C)に示すように、一方のシール突片24が待受突壁22から離間し、他方のシール突片24が待受突壁22に密着した状態になる位置まで押圧部38が開閉口10の内側面10Hを押圧する。そして、他方のシール突片24が待受突壁22から離間する前に、押圧部38が内側面10Hを押圧する押圧ストロークの終端に達して押圧が停止し、それ以上、ガラス戸13を開くと、他方のシール突片24が待受突壁22から離間するように押圧部38の押圧ストロークが設定されている。
【0038】
ここで、シール部材25にシール突片24,24を備えたガラス戸13では、それらシール突片24,24が弓なり形状から逆弓なり形状に反転するときに、ガラス戸13の初動抵抗がピーク値になる。即ち、本実施形態では、シール突片24が弓なり形状から逆弓なり形状へと反転するときのガラス戸13の位置である「抵抗ピーク位置」と、シール突片24が待受突壁22から離間するときのガラス戸13の位置である「シール離間位置」との間に、押圧部38によるアシストが終了するときのガラス戸13の位置である「アシスト終了位置」が配置されている。
【0039】
本実施形態のアシストハンドル30の構成に関する説明は以上である。この構成により、本実施形態のアシストハンドル30では、抵抗ピーク位置とシール離間位置との間にアシスト終了位置が配置されるように押圧部38の押圧ストロークが設定されているので、従来のアシストハンドルに比べて押圧部38の押圧ストロークが小さくなる。この結果、アシストハンドル30が幅方向でコンパクトになって戸先框18から戸尻側にはみ出すことがなくなり、構成部品をガラス戸13の厚さ方向に重ねる必要もなくなるので厚方向でもコンパクトになり、図1に示すように、和障子29とガラス戸13との間を近づけることが可能になる。また、上記した押圧ストロークの設定により、アシスト力にてガラス戸13の開操作抵抗のピーク値を下げてからアシストが終了するので、従来のように過剰なアシストが軽減されてアシスト終了時の開操作抵抗の急峻な増加が抑えられ、初動抵抗を徐々に開操作抵抗の定常値に近づけることができる。
【0040】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図8〜図15に基づいて説明する。図8に示すように本実施形態の開閉口10における各ガラス戸13の戸先框18には、前記第1実施形態のアシストハンドル30とは異なるスライド式のアシストハンドル40がそれぞれ取り付けられている。これらアシストハンドル40は、図9に全体が示されており、第1実施形態のアシストハンドル30と同様に、戸先框18に固定されるベース部41にハンドル部45と押圧部48とをスライド可能に備えてなる。
【0041】
ベース部41は、外側を樹脂製のベースカバー42に被われている。そのベースカバー42は、図10に示すように、上下方向に長く延びた偏平箱形本体42Sの上下両端部から戸先框18と反対側に1対の偏平角形フード部42T,42Tを突出させた構造になっている。偏平角形フード部42T,42Tは、偏平箱形本体42Sのうち幅方向の中央より戸先側に配置されている。また、各偏平角形フード部42Tのうち戸尻側を向いた略面全体は、挿抜開口42Kになっている。
【0042】
ハンドル部45は、偏平箱形本体42Sの略半分の幅をなしかつ上下方向で偏平箱形本体42Sと同じ長さをなした手掛け部46と、その手掛け部46の上下の両端部から戸先側に向かって張り出した突片状の1対の連結突出部47,47とを備えた門形構造をなしている。そして、それら連結突出部47,47を偏平角形フード部42T,42Tの挿抜開口42K,42Kに挿抜させて、アシストハンドル40がガラス戸13の開閉方向にスライドする。
【0043】
ここで、アシストハンドル40の直動ストロークの一端側では、図10の左側部分に示すように、連結突出部47,47が略全体が偏平角形フード部42T,42T内に挿入されると共に、手掛け部46のうち戸尻側の側面と偏平箱形本体42Sの戸尻側の側面とが面一になる。一方、アシストハンドル40の直動ストロークの他端側では、図10の右側部分に示すように、連結突出部47,47が略全体が偏平角形フード部42T,42Tの外側に露出して、手掛け部46全体が偏平箱形本体42Sより戸尻側に突出した状態になる。
【0044】
なお、図9に示すように、手掛け部46のうち連結突出部47,47に挟まれた部分には、指掛け溝46Mが形成されている。また、図13に示すように、手掛け部46のうち戸先框18と反対側の面は、上下方向の両端部から中央に向かって徐々に戸先框18から離れるように丸みを帯びて膨出した形状になっている。
【0045】
図11に示すように、ベース部41の内部には、1対の対称回動レバー50,50が備えられている。これら1対の対称回動レバー50,50は、ベース部41の内部で上下方向に延びて上下対称に配置されている。また、1対の対称回動レバー50は、ベース部41のうち上下方向の中央寄りに形成されて対称配置された1対のレバー回動支持軸42N,42Nにて回転可能に支持されている。さらに、1対の対称回動レバー50,50の先端部には、それぞれギヤ50G,50Gが備えられ、それらギヤ50G,50G同士が噛合して1対の対称回動レバー50,50が対照的に回動するようになっている。
【0046】
各対称回動レバー50のうちギヤ50Gを有した先端部と反対側の基端部には、対称回動レバー50の回転半径方向に延びた長孔50Lが形成されている。そして、ハンドル部45の両連結突出部47,47から突出した1対のハンドル連結ピン45P,45Pが、両対称回動レバー50,50の長孔50L,50Lにそれぞれ挿入されている。これにより、ハンドル部45をスライドさせると、1対の対称回動レバー50,50が対称回転する。また、上記したように、ギヤ50G,50Gの噛合により対称回動レバー50,50同士は非対称に回転することができないので、ハンドル部45は対称回動レバー50,50に結合されたことによって傾動が規制されて平行移動するようにスライドする。
【0047】
図15(A)に示すように、ハンドル連結ピン45Pは、長孔50Lを貫通した部分にワッシャ45Wが螺子止めされている。また、ハンドル連結ピン45Pの基端部側には、段付き状に拡径された台座部45Dが形成され、その台座部45Dとワッシャ45Wとの間に対称回動レバー50における長孔50Lの縁部が挟まれている。また、図14に示すように、ベースカバー42の偏平箱形本体42Sにおいてハンドル部45が重ね合わされる部分には、ハンドル部45を戸尻側にスライドさせたときに、台座部45D,45Dをガイドするガイド溝42G,42Gが形成されている。これらガイド溝42G,42Gのガイドによってもハンドル部45の回動が規制され、ハンドル部45がスムースに平行移動するようにスライドする。
【0048】
図13に示すように、ベースカバー42の偏平箱形本体42Sのうち戸先框18側の開口は底蓋板金53によって閉塞されている。その底蓋板金53における上下の両端部には、図11に示すように、1対のベース取付孔53A,53Aが形成されている。これら1対のベース取付孔53A,53Aは、ベースカバー42の厚さ方向で偏平角形フード部42T,42T(図9参照)に対向している。また、ベースカバー42は、図9に示すように、1対の偏平角形フード部42T,42Tを構成する部分が分離可能なキャップ42B,42Bになっている。そして、これらキャップ42B,42Bを取り外してベース取付孔53A,53Aを露出させて、それらベース取付孔53A,53Aに挿通した図示しない螺子にてベース部41が戸先框18に固定される。また、底蓋板金53の戸尻側端部には、ベース部41に向かって折り曲げられたフランジ部53B(図15参照)が形成されている。
【0049】
図13に示すように、上記した各対称回動レバー50を回動可能に支持する各レバー回動支持軸42Nは、ベースカバー42のうち底蓋板金53と対向する内面から底蓋板金53に向かって突出している。そして、各レバー回動支持軸42Nの基端部には、段付き状に拡径した台座部42Mが備えられ、そこにトーションコイルバネ51が取り付けられている。また、図11に示すように、ベースカバー42の内面には、1対のレバー回動支持軸42Nより上下方向の端部寄り位置に1対のストッパ突部52,52が形成されている。そして、各トーションコイルバネ51の一端部がストッパ突部52に係止する一方、トーションコイルバネ51の他端部が対称回動レバー50に係止している。そして、各トーションコイルバネ51の弾発力によって対称回動レバー50,50のうちギヤ50G,50Gにて噛合したレバー先端結合部が戸先側に向かうように付勢されている。
【0050】
図9に示すように、ベースカバー42の戸先側の側面には矩形孔42Cが形成され、その矩形孔42Cの上下の開口縁からは、図11に示すように、ベースカバー42の内側に本発明に係る「ガイド部」に相当するブロックガイド42Z,42Zが延びている。押圧部48は、ブロック状をなしかつブロックガイド42Z,42Zにガイドされ、図12に示すように矩形孔42Cから突出したり、図11に示すように矩形孔42C内に没入するように直動する。
【0051】
押圧部48は、直動中継部材54を介してレバー先端結合部に連結されている。直動中継部材54は、図15(B)に示すように、底蓋板金53に重ね合わされる連絡壁54Aの両端部から1対の対向壁54B,54Cを起立させて対峙させた構造になっている。そして、図11に示すように、それら1対の対向壁54B,54Cの間に1対の対称回動レバー50,50のレバー先端結合部が配置され、一方の対称回動レバー50に備えた当接爪50Sが一方の対向壁54Bに当接し、他方の対称回動レバー50に備えた当接爪50Tが他方の対向壁54Cに当接している。また、直動中継部材54のうち戸先側の対向壁54Cには、その上下の両端部を戸先側に直角曲げしてブロック挟持部54Dが形成され、そのブロック挟持部54Dにブロック状の押圧部48が挟持されている。以上の構成により、ハンドル部45をベース部41に対して戸尻側に引くと、押圧部48がベース部41から戸先側に突出する。
【0052】
さて、本実施形態のアシストハンドル40では、押圧部48の直動ストロークの後端位置では、図11に示すように対称回動レバー50とストッパ突部52との当接によって、押圧部48が位置決めされる。一方、押圧部48の直動ストロークの前端位置では、図14に示した台座部45Dがガイド溝42Gに当接することによって押圧部48が位置決めされる。そして、第1実施形態と同様に、このアシストハンドル40においても、ガラス戸13の抵抗ピーク位置とシール離間位置との間にアシスト終了位置が配置されるように押圧部48の押圧ストロークが設定されている。これにより第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0053】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を、図16〜図18に基づいて説明する。本実施形態のアシストハンドル40Vは、対称回動レバー50V,50V同士がピン結合されている点とハンドル部45Vの手掛け部46と連結突出部47,47との角部外側が丸みを帯びている点とが第2実施形態と相違している。具体的には、図16に示すように、両対称回動レバー50V,50Vの先端部にはU字溝50Y,50Yが形成され、それら両U字溝50Y,50Yを共通の連結ピン61が貫通した状態に設けられている。そして、その連結ピン61の一端部が、図18に示すように、押圧部48から後方に延びたピン支持板60に結合されている。これにより、アシストハンドル40Vは、前記実施形態のアシストハンドル40と同様に、対称回動レバー50V,50Vが対称的に回動して押圧部48が直動する(図16と図17参照)。その他の構成は、第2実施形態と同じであるので、第2実施形態と同じ部位には、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0054】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態を、図19〜図22に基づいて説明する。図20に示すように、本実施形態のアシストハンドル70のベース部71は、上下方向に延びた連絡部72における上下の両端部から戸先側に1対の第1ベース突部73,73を突出させて備えると共に、連絡部72における上下の両端部から室内側に1対の第2ベース突部74,74を突出させて備えている。また、ハンドル部75は、上下方向に延び、第2ベース突部74,74の間にハンドル部75が配置されている。そして、各第1ベース突部73と各第2ベース突部74との交差部分に配置されかつ上下方向に延びた回転中心軸を中心にしてハンドル部75が回動可能になっている。
【0055】
ハンドル部75の長手方向の中間部は、図22(A)に示すように、回動中心より戸先框18から離れるに従って戸尻側に若干傾斜するように突出して、途中で戸先側に折り返された略フック形状をなしている。また、ハンドル部75の回動軸方向から見ると、アシストハンドル70の不使用時には、ハンドル部75全体が第2ベース突部74と重なりかつハンドル部75における戸先框18から離れた側の面が第2ベース突部74における戸先框18から離れた側の面と面一になっている。
【0056】
ベース部71のうち戸先框18に宛がわれる部分は、板金製の底蓋プレート77によって被われている。また、ベース部71のうち底蓋プレート77以外は、樹脂で構成されたベース部本体71Hになっていて、ベース部本体71Hに底蓋プレート77が螺子止めされている。
【0057】
図21に示すように、両方の第1ベース突部73の内部には、それぞれ略角柱状の押圧部78,78がガラス戸13の開閉方向に直動可能に収容されている。その押圧部78には、図22(A)に示すように、第1ベース突部73と反対側の面にバネ収容溝78Aが形成されている。また、ベース部本体71Hからはバネ収容溝78A内に向かってバネ受け片71Sが突出形成されている。そのバネ受け片71Sは、アシストハンドル70の不使用時には、バネ収容溝78Aのうち戸先側の端部に位置している。そして、バネ収容溝78Aのうち戸尻側の端面とバネ受け片71Sとの間に圧縮コイルバネ79が収容され、その圧縮コイルバネ79の弾発力によって押圧部78が戸尻側に付勢されている。
【0058】
ハンドル部75の上下の両端部には、回動中心から底蓋プレート77側に突出して、各押圧部78における戸尻側の端面に当接した1対のハンドル基端摺接部75K,75Kが設けられている。そして、ハンドル部75を戸尻側に回動させると、図22(B)に示すように、ハンドル基端摺接部75K,75Kが押圧部78,78に摺接しながら圧縮コイルバネ79に抗して押圧部78をベース部71から戸先側に押し出す。
【0059】
また、押圧部78の直動ストロークの後端位置では、図22(A)に示すようにハンドル基端摺接部75Kとベース部71の内面(図22(A)の符号71N)との当接によって押圧部78が位置決めされる。一方、押圧部78の直動ストロークの前端位置では、図22(B)に示すように、ハンドル部75とベース部71の外面(図22(B)の符号71M)との当接によって押圧部78が位置決めされる。また、第1及び第2の実施形態と同様に、このアシストハンドル70においても、図19に示すように、ガラス戸13を閉じかつ押圧部78が直動ストロークの後端位置に配置された状態で、押圧部78の端面が開閉口10の内側面10Hに対して所定寸法の隙間を開けて対向するように配置されると共に、ガラス戸13の抵抗ピーク位置とシール離間位置との間にアシスト終了位置が配置されるように押圧部78の押圧ストロークが設定されている。これにより第1〜第3の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0060】
なお、本発明は、前記第1〜第4の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、前記実施形態では、シール部材25に1対のシール突片24,24を備えた例を挙げたが、本発明はこれに限らず、シール突片を1つ備えたもの及び、3つ以上備えたものにも適用することができる。さらに、シール突片はヒレ状のものに限らず、例えば、ブラシ状やチューブ状のものにも適用可能である。
【0061】
[実施例]
上記した第1、第2、第4の実施形態と同構造のアシストハンドル30,40,70を製造して、上記した第1実施形態のガラス戸13と同構造の流通品である窓用アルミサッシに取り付けた。ここで、実施例で用いたアルミサッシでは、抵抗ピーク位置がガラス戸13を閉鎖位置から3.9[mm]開いた位置にあり、シール離間位置がガラス戸13を閉鎖位置から7.5[mm]開いた位置にあった。これに対し、アシストハンドル30,40,70の全てにおいて、アシスト終了位置をガラス戸13を閉鎖位置から5[mm]開いた位置に設定し、ガラス戸13の閉鎖状態で押圧部38,48,78の端面と開閉口10の内側面10Hとの間の隙間を1[mm]に設定するために、押圧部38,48,78の直動ストロークを6[mm]にした。そして、アシストハンドル30,40,70を操作し、その際の操作抵抗を計測したところ、ガラス戸13の初動抵抗がガラス戸13を開操作したときの定常値を越えることはなかった。また、従来の同じアシスト比(ハンドル操作力の増幅率。レバー比とも言う)のアシストハンドルに比べても同等又はそれ以上に快適にガラス戸13を開くことができるという感覚を得た。これにより、ガラス戸13が抵抗ピーク位置とシール離間位置との間にアシスト終了位置が配置されるようにアシストハンドルの押圧ストロークを設定すれば十分であることが確認できた。
【符号の説明】
【0062】
10 開閉口
10H 内側面
13 ガラス戸(障子)
18 戸先框
22 待受突壁(シール密着部)
24 シール突片
25 シール部材
30,40,40V,70 アシストハンドル
31,41,71 ベース部
35,45,75 ハンドル部
38,48,78 押圧部
39,51 トーションコイルバネ(付勢ばね)
47 連結突出部
50,50V 対称回動レバー
50G ギヤ(レバー先端結合部)
50L 長孔
54 直動中継部材
54A 連絡壁
54B,54C 対向壁
60 ピン支持板
61 連結ピン
72 連絡部
75K ハンドル基端摺接部
78A バネ収容溝
79 圧縮コイルバネ(付勢ばね)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子及び前記障子にて開閉される開閉口の何れか一方又は両方にシール部材を設けて隙間風を防いだ障子開閉口機構に備えられ、前記障子の戸先框に取り付けられたベース部に、ハンドル部と押圧部とを可動状態に組み付けてなり、前記障子が閉鎖位置にあるときに前記ハンドル部を前記ベース部に対して戸尻側に引くと前記押圧部が戸先側に移動して前記開閉口の内側面を押圧し、前記障子の初動抵抗を軽減することが可能なアシストハンドルにおいて、
前記シール部材が前記障子の前記閉鎖位置で密着したシール密着部から離間するときの前記障子のシール離間位置と前記閉鎖位置との間に、前記アシストハンドルを使用しないときに前記初動抵抗がピーク値になる抵抗ピーク位置が存在し、前記抵抗ピーク位置と前記シール離間位置との間に、前記押圧部が前記開閉口の内側面から離間するアシスト終了位置が配置されるように前記開閉口の内側面に対する前記押圧部の押圧ストロークを設定したことを特徴とするアシストハンドル。
【請求項2】
前記障子の戸先框及び前記開閉口の縦辺部分には、前記障子が前記閉鎖位置にあるときに前記障子の厚さ方向で対向する1対の戸先対向面が設けられると共に、それらのうち一方の戸先対向面から突出して先端部が他方の戸先対向面に密着するシール突片が前記シール部材に備えられ、
前記シール突片は、前記障子が前記閉鎖位置にあるときに、先端部が基端部より前記障子の開閉方向の一方側に位置するように反った弓なり形状になると共に、前記障子が前記閉鎖位置から前記抵抗ピーク位置を通過するときに逆側に反った逆弓なり形状へと反転するように構成され、
前記シール突片が前記逆弓なり形状へと反転した後、前記シール密着部から完全に離間する前の位置が前記アシスト終了位置となるように前記押圧ストロークを設定したことを特徴とする請求項1に記載のアシストハンドル。
【請求項3】
前記ハンドル部は、上下方向に延びかつその下端寄り位置を前記ベース部に回転可能に支持されて前記障子の室内面と平行な面内で回動可能なレバー構造をなし、
前記ベース部に形成されて、前記押圧部を前記障子の開閉方向に直動可能に案内するガイド部と、
前記ハンドル部の下端部と前記押圧部との何れか一方に形成された長孔と、他方に形成されて前記長孔に連結されたピンとを有して、前記ハンドル部の回動に連動させて前記押圧部を直動させるピン長孔連結機構と、
前記押圧部を前記障子の戸尻側に付勢する付勢ばねとを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアシストハンドル。
【請求項4】
前記ハンドル部は、上下方向に延びた手掛け部の上下の両端部から戸先側に1対の連結突出部を延ばした門形構造をなし、
前記ベース部の内部で上下方向に延びて上下対称に配置されかつ前記ベース部によって上下方向の中間部を回転可能に支持されて前記障子の室内面と平行な面内で回動可能な1対の対称回動レバーと、
前記1対の対称回動レバーが連動して対称回動するように前記1対の対称回動レバーの先端部同士を、前記ベース部の上下方向の中間位置で結合させるレバー結合機構と、
各前記対称回動レバーの基端部と各前記連結突出部との何れか一方に形成された長孔と、他方に形成されて前記長孔に連結されたピンとを有して、前記ハンドル部の直動に連動して前記1対の対称回動レバーを回動させるピン長孔連結機構と、
前記1対の対称回動レバーの先端部同士を結合してなるレバー先端結合部を前記障子の開閉方向で挟んだ1対の対向壁を有しかつ、前記押圧部と一体になって前記レバー先端結合部と共に前記障子の開閉方向に直動する直動中継部材と、
前記押圧部を前記障子の戸尻側に付勢する付勢ばねとを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアシストハンドル。
【請求項5】
前記ハンドル部は、上下に延びかつ前記ベース部から前記障子と反対側に突出した構造をなすと共に、上下方向に延びた回動軸を中心に回動可能に前記ベース部に連結され、
前記押圧部は、1対になって前記ベース部の上下の両端部で前記障子の開閉方向の直動可能に支持されると共に、それら1対の押圧部を前記障子の戸尻側に付勢する1対の付勢ばねを備え、
前記ハンドル部のうち上下方向の両端部で前記回動軸より前記障子側に突出して、前記1対の押圧部における戸尻側の端面に摺接可能に当接した1対のハンドル基端摺接部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアシストハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−169092(P2011−169092A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84764(P2010−84764)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)