説明

アシディチオバチルス属の細菌をトランスフォームするためのプラスミド、及びトランスフォーメーション法

【課題】アシディチオバチルス種属のための特別の機能的プラスミド、それらの効率的トランスフォーメーションを可能にする方法の提供。
【解決手段】アシディチオバチルス属の細菌、例えばアシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アシディチオバチルス・チオオキシダンス及びアシディチオバチルス・カルダス種における機能的プラスミド。そして、これらのプラスミドを利用して、アシディチオバチルス属の細菌、例えばアシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アシディチオバチルス・チオオキシダンス及びアシディチオバチルス・カルダス種を、上首尾にトランスフォームする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシディチオバチルス(Acidithiobacillus)属の細菌、例えばアシディチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、アシディチオバチルス・チオオキシダンス(Acidithiobacillus thiooxidans)及びアシディチオバチルス・カルダス(Acidithiobacillus caldus)種における機能的プラスミドを開示する。そして、これらのプラスミドによりアシディチオバチルス属の細菌、例えばアシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アシディチオバチルス・チオオキシダンス及びアシディチオバチルス・カルダス種を上首尾にトランスフォームする方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
アシディチオバチルス属の細菌は、好酸性で、独立栄養性で且つ化学無機栄養性であり、換言すれば、それらは、0〜4の酸性pHで生活し、炭素源はCOであり、エネルギー源は無機化合物である。この属の2つの種アシディチオバチルス・フェロオキシダンス、及びアシディチオバチルス・チオオキシダンスは、生物採鉱において極めて重要である。他方、アシディチオバチルス・カルダスは、生物採鉱において、益々、重要になりつつある。
【0003】
生物採鉱は、概して言えば、鉱石から金属を抽出するための微生物の利用である。その最も伝統的且つ重要な現われは、生物浸出法であるが、生物採鉱は、この方法に限られず、関与する微生物のモニタリング及び介入でもあり(これらの技術が複雑で常に発達している限り)、並びに方法の改良又は新しい技術の開発に関する研究室レベルの研究でもある。
【非特許文献1】English等、1995, Appl. Environ. Microbiol., 61: 3256-3260
【非特許文献2】Kusano等、1992, J.Bacteriol., 174: 6617-6623
【非特許文献3】Yankofsky等、1983, J.Bacteriol., 153: 652-657
【非特許文献4】Jin等、1992, Appl. Environ. Microbiol., 58: 429-430
【非特許文献5】Liu等、2000, J.Bacteriol., 182: 2269-2276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生物浸出法は、酸媒質中の複雑なマトリクスから、微生物の直接的又は間接的作用を用いて、金属を可溶化させる方法として定義される(Rawlings D.E. Microb. Cell Fact. 2005, 4(1):13)。微生物が金属又はその対イオンに作用する場合は、直接的であり、どちらの場合も関心ある金属のイオンを溶液中に放出させる。他方、微生物が、関心ある金属又はその対イオンの何れをも基質としないが、培地の酸性化により(例えば、硫酸産生)、又は可溶化させる必要のある塩(金属及び対イオン)と最終的に相互作用する酸化剤を生成するために、該金属の可溶化を加速して該可溶化に有利な化学的条件を生成する場合は、間接的である。アシディチオバチルス属に属する種(アシディチオバチルス・フェロオキシダンス、及びアシディチオバチルス・チオオキシダンスの両者、並びにアシディチオバチルス・カルダス)は、酸素を電子受容体として利用して還元されたイオウ化合物(例えば、硫化物、元素のイオウ、チオン酸塩など)の酸化速度を、増大させる成分を生成することができる。この方法において、それらは、硫酸を最終生成物として生成し、亜硫酸塩及びチオ硫酸塩などの還元種を中間生成物として生成して、鉱石中で硫化物に結合している金属の溶解を可能にする。特に、アシディチオバチルス・フェロオキシダンスは、酸素を電子受容体として利用して鉄(II)の鉄(III)への酸化に有利な生物学的成分を提供する。生成された鉄(III)は、存在する硫化物又は酸化する必要のある任意の化合物を酸化することのできる強力な酸化剤である。
【0005】
アシディチオバチルス 属の細菌の重要性ゆえに、遺伝子操作可能であると(それらの酸化活性の改良、関心ある機能例えば毒性化合物に対する耐性の組み込み、又はそれらの代謝に関して一層詳細な知見を得るために、それらをトンラスフォームする有効な方法を有すること)便利であろう。
【0006】
細菌の遺伝的荷重を改変するための最も伝統的な方法は、トランスフォーメーション法の利用である。この方法は、関心あるDNAの断片をトランスフォームすべき微生物に直接組み込むことにある。この技術には、様々なトランスフォーメーション技術の変法があり、その最も普通のものの一つは、エレクトロポレーションである。
【0007】
アシディチオバチルスの種のすべての操作は、複雑であり、それを研究室で培養することさえ容易ではない。これは、それを極めて酸性のpHに維持しなければならず、それが基質として利用する鉱石が問題のあるものであり又は培地中で塩の形態で沈殿し(鉄が共存する場合)又は元素のイオウのような微粒子であるからである。鉄の沈殿の存在は、コロニー中の赤褐色の核として肉眼で観察することができる。他方で、細菌は、特定の物質に付着して、如何なる微生物学的操作技術にも必要である洗浄段階で生物体量が損失する。
【0008】
上記の故に、これらの細菌のために特に設計された適当なトランスフォーメーション法を提供することが必要とされている。方法は、アシディチオバチルス 属の細菌、例えばアシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アシディチオバチルス・チオオキシダンス、及びアシディチオバチルス・カルダス 種を上首尾にトランスフォームすることを目的に設計されてきた。
【0009】
上記のように、微生物のトランスフォーメーションのために用いられる最も普通の技術の一つは、エレクトロポレーションである。エレクトロポレーションは、基本的に、短時間の高電圧放電を利用して、一時的に細胞膜を透過性にすることにある。ベクターが細胞に入るミクロポアとして知られる一時的な透過性の領域又は構造が、該膜に生成される。
【0010】
アシディチオバチルス種のエレクトロポレーションは、硫化鉄が基質として利用される場合には、細菌に結合した第一鉄イオン塩の存在はトランスフォーメーションベクターに有害でありうるので、困難となる。他方、イオウが基質として利用される場合には、洗浄後に、特定の物質に付着した細菌の一部が失われるので培養物を消耗するであろう。
【0011】
しかしながら、この方法が特殊化されるべきであるだけでなく、用いられる遺伝子ベクターは、細胞内で機能することを可能にするある種の特性を有するべきである。これらの一つは、複製起点(ori)に対応する。幾つかの場合に、それらは、種々の属に特異的であり、一つの特定の種に特異的でさえあって、それ故、アシディチオバチルス種をトランスフォームすることができても、アシディチオバチルス種に適した複製系を有しない限り、そのベクターの発現を達成することはないであろう。これは、理想的には、アシディチオバチルス種のプラスミドを得ること及びトランスフォーメーションベクターに組み込まれることが同定されたそのoriを必要とする。関心ある遺伝子の転写を確実にする強力な発現のプロモーターを有することも便利である。
【0012】
今日まで、非常に僅かのアシディチオバチルス種のプラスミドしか記載されておらず、殆ど特性決定されていない。Rawlingsは、それらの2つを研究した(Rawlings D.E., 2005, Plasmid 53: 137-147)が、それらのトランスフォーメーションにおける利用を記載していない。
【0013】
Englishによる刊行物(English等、1995, Appl. Environ. Microbiol., 61: 3256-3260)においては、アシディチオバチルス・ネアポリタヌス(Acidithiobacillus neapolitanus) は、エレクトロポレーションにより、単離されたアシディチオバチルス・インターメディウス(Acidithiobacillus intermedius)のレプリコン及び、アシディチオバチルス・ ネアポリタヌスにおけるカルボキシソームの形成に由来するペプチドの遺伝子を有して構築されたベクターでトランスフォームされている。この場合には、トランスフォーメーションが起きても、取り込まれたタンパク質の発現は認められなかったので、これは、上首尾なトランスフォーメーションのカテゴリーには入れられない。
【0014】
アシディチオバチルスのトランスフォーメーションの問題を扱っている他の刊行物は、Kusanoによるものであり(Kusano等、1992, J.Bacteriol., 174: 6617-6623)、そこでは、アシディチオバチルス・フェロオキシダンスがトランスフォームされているが、この種のプラスミドは、開示されていない。事実、この著者は、以前にアシディチオバチルス・フェロオキシダンスから単離された水銀耐性オペロン(merオペロン)を有するベクターを生成した。アシディチオバチルス・フェロオキシダンスの30の独立した株にエレクトロポレーションを行なって、一つのトランスフォーメーションしか起きず、効率は、1μgのベクター当たり120〜200の水銀耐性コロニーであった。このトランスフォーメーション効率は、非常に低く、それ故、これは、適当なトランスフォーメーションの選択肢とは考えられない。事実、この技術を扱ったKusanoによる他の研究はなく、この刊行物の結果を他のグループがアシディチオバチルス種を用いて再現することは可能でなかったので、その後、この適用可能性は確認されていない。
【0015】
大腸菌を供与体として利用する接合によるアシディチオバチルス種のトランスフォーメーションが達成されている3つの刊行物がある(Yankofsky等、1983, J.Bacteriol., 153: 652-657)、(Jin等、1992, Appl. Environ. Microbiol., 58: 429-430)及び(Liu等、2000, J.Bacteriol., 182: 2269-2276)が、これらの何れにおいても、良好なトランスフォーメーション効率は、得られていない。
【0016】
総括すると、現在の技術水準においては、アシディチオバチルス種属のための特別の機能的プラスミドも、それらの効率的トランスフォーメーションを可能にする方法(特に、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アシディチオバチルス・チオオキシダンス、及びアシディチオバチルス・カルダス 種のもの)も存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この技術的問題は、アシディチオバチルス種属のための特別な機能的プラスミド{該プラスミドは、単離されたアシディチオバチルス・フェロオキシダンス (Wenelen DSM 16786)及びアシディチオバチルス・チオオキシダンス (Licanantay DSM 17318) プラスミドの複製起点(ori)を含み、Wenelen(DSM 16786)株から単離された発現プロモーターに結合している。}を構築することにより、そして、アシディチオバチルス種のための特別なトランスフォーメーション法を促進及び開発することにより解決された。
【0018】
本発明は、アシディチオバチルス種の細菌、例えばアシディチオバチルス・フェロオキシダンス、アシディチオバチルス・チオオキシダンス、及びアシディチオバチルス・カルダス 種を上首尾にトランスフォームすることを可能にするプラスミド、及びトランスフォーメーション法を開示する。
【0019】
これらのプラスミドは、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス(配列番号1により又はその逆相補的配列により表される)及びアシディチオバチルス・チオオキシダンス(配列番号2により又はその逆相補的配列により表される)から得られたプラスミドの単離された複製起点(ori)を含んだ。そして、配列番号3により表されるWenelen(DSM 16786)株から単離されたレダクターゼの発現プロモーターPnitを含んだ(Biosigma社所有)。Pnitプロモーターの利点は、後述(図3)のように、それが調節する遺伝子の発現を強く刺激することである。
【0020】
配列番号1及び2に表されたori、発現プロモーターPnit(配列番号3)、他の遺伝子に特異的な第二の複製起点、マルチクローニング部位、及び少なくとも一つのマーカー又はレポーター遺伝子の少なくとも一つを含むシャトル型クローニング遺伝子ベクター(プラスミド)を記載する。
【0021】
このトランスフォーメーション法は、アシディチオバチルス種を培養する条件を、それらをこの発明のプラスミドでトランスフォームされるのに適当にするために、徐々に変えていくことを含む。
【0022】
アシディチオバチルス種の培養物は、pH5〜7に適合し、基質は、四チオン酸塩に改変される。必要であれば、この基質は、最初に、硫化鉄から中間基質としての元素の硫黄に改変され、最終的に、四チオン酸塩に改変される。一度、この培養がこれらの条件で安定化されれば、任意の公知のトランスフォーメーション技術により、特にエレクトロポレーションによってトランスフォームされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
アシディチオバチルス種の細菌を効率的にトランスフォームされうるようにする方法を有することは、これらの細菌に、それらを有利にトランスフォームする遺伝子を組み込むことによりそれらを改良して、それらが参加する方法における効率を改良することを可能にするので、生物採鉱において非常に重要である。これを達成するためには、この属において機能的である複製起点を含むプラスミド、並びにこのトランスフォーメーションを可能にする方法が供給されることが基本である。
【0024】
このプラスミドの獲得への最初の工程は、アシディチオバチルス種のoriが供給されることである。プラスミドが、この目的のために、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス及びアシディチオバチルス・チオオキシダン種の株から単離された。一度これらのプラスミドが得られたならば、それらを、それらの中に存在する可能なoriを確立するために、配列決定して研究した。
【0025】
各事例において、推定のoriの存在を測定したが、それは、配列番号1の場合は、アシディチオバチルス・フェロオキシダンスに対応し、配列番号2の場合は、アシディチオバチルス・チオオキシダンスに対応する。当業者には、各DNA配列は、その逆相補的配列と同等であるということは明らかである。この故に、我々が、ある配列(本件では、配列番号1又は2)に言及する各時点において、我々は、その逆相補的配列にも言及している。
【0026】
アシディチオバチルス属の細菌の特殊なoriが与えられることは、我々に、初めて、クローニングのための(生成されたベクターが発現プロモーターを含まない場合)又は発現のための(ベクターが発現プロモーターを含む場合)、上首尾である蓋然性の高いトランスフォーメーションベクターを生成することを可能にする。
【0027】
この発明のプラスミドは、好ましくは、Wenelen(DSM 16786)株(BioSigma所有)から単離した発現プロモーターを含む。ニトロレダクターゼプロモーターPnitが、この株のゲノムにおいて同定され、他の培養条件において高度に発現される強力なプロモーターであることにつき選択された。このPnitは、配列番号3により表される。Pnitを我々のベクターに含ませることにより、我々は、我々が関心のある、このプロモーターにより調節される遺伝子の強力な発現を有することを確実にする。
【0028】
一度アシディチオバチルスのoriの配列番号1及び2、並びにPnitプロモーターの配列番号3が利用可能となったので、それらを含むトランスフォーメーションベクターをデザインした。
【0029】
2つの異なる属又は種で機能的であるシャトルベクターを特にデザインした。この場合、アシディチオバチルスのori(配列番号1又は2)から離れて、これらのベクターは、他の属に特異的である第二の複製起点を含む。これらのベクターは又、Pnitプロモーター、マルチクローニング部位、及び少なくとも一つのマーカー又はレポーター遺伝子をも包含する。
【0030】
第二の複製起点は、当分野で公知の、oripUC、oriColE1、orip15A、oriNTP1、oripBR345、oripBR322、oriR6Kなどの何れかから選択され、pUCoriが、特に、好適である。
【0031】
レポーター遺伝子と結合されたマルチクローニング部位は、該クローニング部位への遺伝子の挿入によってレポーター遺伝子の非発現が決定付けられるように、この遺伝子ベクターデザイン中に含まれる。これは、関心ある遺伝子のクローニング部位への挿入が上首尾であったかどうかを立証することを可能にする。このクローニングを行なうために、マルチクローニング部位内の配列を認識する制限酵素の一つが、この配列が関心ある遺伝子中に存在しないことを確実にするように選択される。
【0032】
クローニング部位と結合したレポーター遺伝子は、基質の色、発光、又はその他例えばlacZ(β−ガラクトシダーゼ)遺伝子、gfp(グリーン蛍光タンパク質)、luc(ルシフェラーゼ)などの変化により同定されうる公知のレポーター遺伝子から選択される。このレポーター遺伝子は、特に、β−ガラクトシダーゼ、lacZ遺伝子である。
【0033】
このベクターは、その存在を選択により同定することを可能にするマーカー遺伝子であり、抗生物質耐性遺伝子から選択される。カナマイシンに対する耐性を与える遺伝子(kan)は、特に、好適である。
【0034】
好適な実施形態では、マルチクローニング部位はヒスチジンテイル(即ち、我々が発現を望むタンパク質のカルボキシル末端に最後のアミノ酸として組み込まれたままでいる6つのヒスチジンを編み込んだ配列)をも包含する。このペプチドを含む利点は、第一に、任意のクローン化タンパク質の発現を評価するのに容易に利用することのできる抗ヒスチジン抗体の存在にあり、第二に、このヒスチジンヘキサペプチドが、それを含むキメラタンパク質をニッケル/カドミウムアフィニティーカラムで精製することを可能にすることにある。
【0035】
図1は、本発明の好適な遺伝子ベクターを表しており、そこには、pUCori;本発明のori1又は2;カナマイシン耐性を与える遺伝子(kan)及びその各々のプロモーターPkan;lacZ遺伝子及びその各々のプロモーターPlac;並びにPnit及びヒスチジンテイル(His6)を含むマルチクローニング部位(MCS)がある。本発明のori1を有するベクターは、pBM−3PnH(登録商標)に対応し、ori2を有するのは、pBM−4PnH(登録商標)に対応する。このマルチクローニング部位は、図2に詳細において詳細に観察することができる。
【0036】
Pnitプロモーターの強さは、図3に示されており、これは、pBM−3PnH(登録商標)中でクローン化されて、アフィニティーカラム中で精製された後で検出されたアシディチオバチルス・フェロオキシダンスのラスティシアニンタンパク質の発現を示している。この検出は、化学発光ウエスタンブロットにより、ヒスチジン配列に対する特異的抗体を利用して行なわれた。レーン1及び2は、この構築物でトランスフォームされた大腸菌DH5αクローンの2つの精製物に対応している。レーン3は、pBM−3PnH(登録商標)ベクターだけでトランスフォームされた株の精製物(これは、陰性対照として取り込まれた)に対応している。Pnitにより調節されたタンパク質から得られた強い発現を観察することができる。
【0037】
この発明のプラスミドは、当分野で公知の方法により構築され、それらは、本質的に、アシディチオバチルスのori(配列番号1及び配列番号2)、並びにPnitプロモーター(配列番号3)を含んでいる。
【0038】
アシディチオバチルスのori(配列番号1及び2)及びPnitプロモーター(配列番号3)の両者は、本明細書において明示的に予期していない他の遺伝子構築物においても、独立に用いられうるということは、当業者には明らかである。配列番号1のori又は配列番号2のoriは、遺伝子構築物に組み込まれるたびに、アシディチオバチルス種における発現がかなり改善されるだろう。Pnitプロモーター(配列番号3)は、遺伝子構築物に組み込まれるたびに、プロモーターに結合した配列が強く発現するであろう。上記の目的のためのこれらの開示した配列のすべての利用は、本発明の自明の改変であると考えられる。
【0039】
一度この発明のプラスミドが構築されたならば、このプラスミドをアシディチオバチルス種に取り込ませることを可能にする方法を提供することが必要である。
【0040】
これらの細菌のトランスフォーメーションにおいて生じる第一の困難は、用いる基質が、実際上、すべての公知の操作方法に干渉することにある。これらのアシディチオバチルス種は、知られているように、鉄及び/又はイオウの供給源をエネルギー源として必要とする。A.フェロオキシダンス種は、伝統的に、硫酸鉄 (II)を基質として与えられる。それは、良好な基質である。鉄(III)イオンに酸化されるとき培養物の酸化力が増大するが、エレクトロポレーション法への干渉は、DNAベクターを悪化させることによりトランスフォーメーション前に起き、又は動電気アーク形成(細胞にダメージを与える)の可能性の増大により起きる。アシディチオバチルス属に適した他のエネルギー源は、元素のイオウであり、これは、不溶性であって、それ故粒子化形態で培地に加えるべきであるので不便であり、それを培地から除去する場合には、それは、多くの存在する細菌が該器脂質粒子に付着しているのでそれらを運び去るという不便さを有している。
【0041】
この方法で遭遇する最初の問題を解決するために、我々は、イオウの可溶性供給源である四チオン酸塩の利用を選んだ。我々は、アシディチオバチルス種の細菌は、培養を徐々に適合させた場合、四チオン酸塩をイオウ源として受け入れることを見出した。
【0042】
第一段階において、一般に用いられている硫酸第一鉄を、元素のイオウと交換し、これを、後に、更に、四チオン酸塩と交換する。基質の各交換は、接種物を元の培養物から取出して、異なる基質培地中で成長させることにより行なう。新規な培地の交換の前には、培養物が安定するまで待つことが必要である。これは、通常、基質の効果を行なってから3日〜2週間以内に、最も普通には一週間で起きる。
【0043】
アシディチオバチルス種のトランスフォーメーションにおいて遭遇する第二の不都合は、これらの細菌が発達する極めて酸性のpHであり、これは、通常、pH2より低い範囲にさえなる。
【0044】
通常、トランスフォームした細胞をトランスフォームされてない細胞と容易に区別することができる特性を与える選択遺伝子を、トランスフォーメーションベクターに組み込んで、トランスフォーメーションが起きたかどうかを確認する。殆どの場合に、何らかの抗生物質に対する耐性を与える遺伝子が組み込まれ、トランスフォーマントは、この抗生物質を培養培地に混入させることにより選択される。複雑な有機分子である多くの抗生物質は、変性されて、それらの活性は、酸性pHで、部分的に又は全面的に阻止される。それ故、pH2は、トランスフォームされたアシディチオバチルス種の選択を困難なものにする。
【0045】
この問題を解決するために、この発明の方法は、培養pHを徐々に変えることを含む。培地のpHの増加は一度に0.5〜1とし、各増加は5〜15日の間隔で行なって、新たなpH増加を行なう前に常に培養物の安定性を確保する。
【0046】
培養培地のpHは、元と同じ組成であるが水酸化ナトリウムによって一層高いpH(一度に0.5〜1)に調節された培養培地溶液を調製することにより増大される。
【0047】
この培養pHの増加及び培養基質の変化は、同時に又は順次的に行なうことができ、どちらが先でも差異を生じない。
【0048】
一度、安定なアシディチオバチルス種の培養が、中性近くのpH5〜7で四チオン酸塩を基質として用いて得られたならば、その培養物のトランスフォーメーションを、当分野で公知の任意の技術特にエレクトロポレーションを用いて行なうことができる。もしこのトランスフォーメーション法がそれを必要とするのであれば、適当な緩衝液を用いた氷冷洗浄をトランスフォーメーション前に行なう。
【0049】
一度、この発明のプラスミドを用いるトランスフォーメーションが完了したならば、それらの細胞を、選択成分(その耐性がトランスフォームされたベクターに含まれているもの)を含むプレート上で成長させるべきである。これらのプレートを、25〜45℃で7〜14日間インキュベートする。成長するコロニーは、上首尾にトランスフォームされた細胞に相当する。
【0050】
この発明の幾つかの実施例を、以下に提供する。それらは、決して、本発明の制限ではなく、例示と考えるべきものである。
【実施例】
【0051】
実施例1.ベクターの構築
配列番号で表されるoriを含む断片を、PCRにより増幅し、完了時に、制限酵素(PagI/HpaI)により方向付けた。kan断片を、pTOPOベクターから得て、図2に示したScal部位にてマルチクローニング部位(MCS)に接続し、pUCの複製起点をpBluescriptベクターから得た。その結果生成した断片をPagI/HpaI部位に、T4リガーゼ酵素を用いて結合してori1とした。このXhoI/HindIII制限部位中のPnitプロモーター、及びSacI部位内の6ヒスチジンの配列は、その後、この遺伝子ベクターに加えられた。
【0052】
その結果生成したプラスミドは、pBM−3PnH(登録商標)と命名され、予想サイズ約4500bpを有し、その構造は、図1に表示されている。
【0053】
この結合生成物は、大腸菌を、標準的条件下でエレクトロポレーションによりトランスフォームするのに利用した。トランスフォーマントを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天培地にて選択した。
【0054】
カナマイシン耐性コロニーを、LBkan50μg/mL液体培地で培養して、耐性クローンのプラスミドDNAを単離して、制限地図(HindIII、HpaI、EcoRI、SmaIなどによる酵素的切断)及び、構築したプラスミド中に存在する種々のセクターPCR増幅により示されるプラスミドとして同定した。これらの結果は、単離したプラスミドが構築されたベクターであることを確認した。
【0055】
実施例2.アシディチオバチルス・フェロオキシダンスのエレクトロポレーションによるトランスフォーメーション
先ず、培養基質を本発明の基質である四チオン酸塩に合わせ、培養物のpHは一定に維持した。
【0056】
硫酸第一鉄を硫酸塩源として利用して、pH2.5で成長するアシディチオバチルス・フェロオキシダンスの10mLの培養物が与えられた。
【0057】
該培養物の1mLの接種物を採取して、9mLの1%S培地に移した。この培養物を、1週間、30℃でインキュベートした。
【0058】
S中の培養物の1mLの接種物を、次いで、9mLの9K0.1%四チオン酸塩培地に移した(その組成は、表1に示してある)。この培養物を、30℃で、1週間インキュベートした。
【表1】

【0059】
この培養のpHは、その後、基質を維持しながら中性に近いpHに調節した。
【0060】
この目的のために、9K 1%四チオン酸塩(pH2.5)中の培養物1mLを採取して、9mLの9K 0.1%(pH3.5)四チオン酸塩培地に接種した。この培養物を、30℃で、1週間インキュベートした。この作業を、最初は、pH4.5の培地に接種し、次いで、pH5.5の培地に接種して反復した。
【0061】
トランスフォーメーション前に生物体量を増すために、10mLの9K 0.1%四チオン酸塩(pH5.5)の培養物を、90mLの同じ培地に接種した。この作物を、1週間、飽和に達するまで30℃で成長させた。
【0062】
接種物をこの飽和培養物から採取し、同じ培地で10%に希釈して、一晩インキュベートして新鮮な培養物を得た。
【0063】
翌朝、細胞を、8,000rpmの10分間の遠心分離により集めた。これらの細胞を、40mLのA溶液(9K 塩ベース、pH1.8)を用いて氷冷洗浄した。次いで、第二の冷却洗浄を40mLの溶液B(PBS 5mM、サッカロース 0.3M、10mM EDTA、pH8.0)を用いて行なった。最後に、30mLのエレクトロポレーション用の緩衝溶液C(PIPES 3mM(登録商標)、サッカロース 272mM、pH6.4)を用いて第三の氷冷洗浄を行なった。
【0064】
これらの洗浄後に、ペレットを1mLの溶液Cに再懸濁させて、エレクトロポレーションを実施するまで氷上に維持した。
【0065】
このエレクトロポレーションにおいては、pBM−3PnH(登録商標)を実施例1に示したように利用した。
【0066】
10μLの容積の7gのPBM−3PnH(登録商標)ベクターを利用し、次いで、そのDNAを30分間透析した。400μLの細胞を、0.2cmのキュベットにて、2,500〜3,000V及び400Ωでエレクトロポレーションを行なった。
【0067】
400μLのエレクトロポレーションした細胞の各々は、個々に、選択なしで、10mLの9K 0.1%四チオン酸塩培地にて接種された。加えて、陰性対照の、400μLのエレクトロポレーションしてない細胞に、独立に、10mLの9K 1.0%四チオン酸塩培地を接種した(別フラスコ中)。すべての培養物を、一晩、30℃で、撹拌しながらインキュベートした。
【0068】
翌日、DOPプレートを、50μg/mLカナマイシン、pH5.5にて調製した。DOP固体培地は、文献(Liu, Z.等、1999, p. 39-49, R. Amils 及び A. Ballester (編) International Biohydrometallurgy Symposium, Elsevier, Amsterdam, オランダ国)、(Peng, J.B.等、1994, J. Gen. Appl. Microbiol. 40:243-253)に記載されている。200μLの各培養物を採取して、二通り、調製したプレートに均一にまいた。これらのプレートを7日間30℃でインキュベートした。すべてのプレートは、トランスフォーマントの存在を示した。これらのプレートの一つは、後に、カナマイシンを含まないpH5.5のDOP固体培地(A)、及びカナマイシン50μg/mLを含むpH5.5のDOP固体培地(B)に複製された。図4は、これら2つのプレートの写真を示している。カナマイシンのないプレートAにおいては、最初にトランスフォームされたすべてのコロニーが得られた。他方、カナマイシンの培地を含むプレートBでは、遺伝子を発現し続ける安定なトランスフォーマントのみが成長するのが見られた。4つの安定にトランスフォームされたアシディチオバチルス・フェロオキシダンスコロニーが得られた。
【0069】
PCR試験を、選択培地(B)で成長したこれらの4コロニー1、2、3及び4の各々について、同時に、トランスフォームされたベクター中に存在するカナマイシン耐性遺伝子を認識するスプリッターを用いて行なった。改変されてない陰性対照も含まれ、pBM−3PnH(登録商標)ベクターを陽性対照のためのテンプレートとして用いた。増幅の結果は、これらのクローンがカナマイシン遺伝子を有することを示し、陽性対照のものと同一サイズのバンドが得られた。
【0070】
実施例3.トランスフォームされたアシディチオバチルス・フェロオキシダンス株からのベクターの回収
このプラスミドDNAを、アルカリ溶解法により、pBM−3PnH(登録商標)でトランスフォームして、50μg/mlのkanを含む9Kイオウ培地で成長させたアシディチオバチルス・フェロオキシダンスのクローンから分離した。最初のゲルを、図5に示したようにベクターの存在を確認するために調製し、10μLの抽出物混合物を第一のレーンに入れ、トランスフォームしたアシディチオバチルス・フェロオキシダンス株からのプラスミドDNAの同抽出物混合物20μLを第二のレーンに入れた。第三及び第四レーンは、それぞれ、分子標準100bp及びラムダHindIIIに対応する。示されたバンドは、ベクターの予想されたサイズに合致する。これは、ベクターを回収することができるならば、トランスフォーメーションが安定であることを示している。
【0071】
このトランスフォーメーションの成功の確認の第二の方法であるPCR増幅を、ベクターに含まれるカナマイシン耐性遺伝子(kan)に対して行なった。PCR反応を、pBM−3PnH(登録商標)でトランスフォームしたアシディチオバチルス・フェロオキシダンス株、トランスフォームしてない株、pBM−3PnH(登録商標)ベクター、及び水(陰性対照)について行なった。図6Aは、これらの反応の結果を示しており、レーン1は、pBM−3PnH(登録商標)でトランスフォームしたアシディチオバチルス・フェロオキシダンス株に対応し;レーン3は、ベクターpBM−3PnH(登録商標)であり、これは、陽性対照として役立ち;レーン4は、トランスフォームしてないアシディチオバチルス・フェロオキシダンス株に対応し;レーン2及び5は、水を用いた陰性対照であり;そしてレーン6及び7は、100bp及びλHindIII分子標準にそれぞれ対応している。トランスフォームされた株(1)は、陽性対照(3)と同じバンドを示しており、トランスフォームしてない株の陰性対照(4)ではバンドは認められないということが観察される。それ故、この結果回収されたプラスミドは、pBM−3PnH(登録商標)に相当する。
【0072】
アシディチオバチルス・フェロオキシダンスのトランスフォームした株から単離されたプラスミドDNAを利用して、大腸菌の培養物をトランスフォームした。その結果を、図6Bに示してあり、そこでは、トランスフォームされた大腸菌株が成長しているカナマイシンを含む培養プレートが示されている。
【0073】
上記の実施例は、この発明の例示と考えなければならず、添付の請求の範囲に記載された範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】アシディチオバチルス属の細菌をトランスフォームするのに有用である好適な遺伝子ベクターを表しているダイヤグラムを示している。このダイヤグラムは、pUCori;本発明のori1又は2;カナマイシンに対する耐性を与える遺伝子(kan)及びそのそれぞれのプロモーターPkan;lacZ遺伝子及びそのそれぞれのプロモーターPlac、及びマルチクローニング部位、MCS(プロモーターPnit及びヒスチジンテイルHis6を含む)を示している。この発明のori1を有するベクターは、pBM−3PnH(登録商標)に対応し、及びこの発明のori2を有するベクターは、pBM−4PnH(登録商標)に対応する。
【図2】マルチクローニング部位MCSの配列を示しており、その中に、プロモーターPnit、クローニング制限部位、及び6つの最後のヒスチジンの配列が示されている。
【図3】この発明のベクター中にクローン化されたタンパク質の発現を評価しているゲルの写真を示している。pBM−3PnH(登録商標)ベクターは、我々のWenelen(DSM 16786)株のアシディチオバチルス・フェロオキシダンスのラスティシアニン遺伝子を、クローン化遺伝子として取り込むように構築された。このベクターを用いて、大腸菌DH5α培養物をトランスフォームし、次いで、クローン化されたタンパク質をヒスチジンに対するアフィニティーカラム(NTA−アガロース)を用いて精製した。陰性対照として、大腸菌DH5α培養物を、クローン化遺伝子を有しないpBM−3PnH(登録商標)でトランスフォームした。その精製の生成物を、化学発光ウエスタンブロットで、6−ヒスチジン配列を認識する抗体を用いて検出し、化学発光及びオートラジオグラフィーにより顕出させた。レーン1及び2は、アシディチオバチルス・フェロオキシダンスのラスティシアニン遺伝子を含む構築物でトランスフォームした2つの大腸菌DH5αクローンの精製物に対応している。レーン3は、pBM−3PnH(登録商標)ベクターだけでトランスフォームした大腸菌クローンの陰性対照を示している。
【0075】
結論:クローン化ラスティシアニンタンパク質の強い発現が、pBM−3PnH(登録商標)ベクターにおいて認められる。これは、Pnitプロモーターが、それが調節する遺伝子の発現を強く刺激するプロモーターであることを立証している。
【図4】選択プレート中のアシディチオバチルス・フェロオキシダンストランスフォーマントに対応する2つの培養プレートの写真を示している。アシディチオバチルス・フェロオキシダンス培養物を、カナマイシン耐性遺伝子を含むpBM−3PnH(登録商標)プラスミドでトランスフォームした。プレートA.カナマイシンを含まない培地、DOP pH5.5にまかれたトランスフォーマントに対応する(pBM−3PnH(登録商標)によるトランスフォーメーションとDOP kan50μg/mL pH5.5における選択から最初に得られる)。プレートB.カナマイシンを含むプレート(DOPkan50μg/mL pH5.5)上の複製物に対応する。
【0076】
結論:トランスフォームされたコロニーの発達が、両プレートで観察され、これは、この発明のトランスフォーメーション法の成功を示している。プレートAでだけ成長したコロニーは、不安定なトランスフォーマントである。全部で4つの安定なトランスフォーマントが得られた。
【図5】プラスミドDNAの、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス株の培養物からの抽出の結果を示すゲルの写真を示している。10μLの抽出混合物を第一のレーンに載せ、20μLを第二のレーンに載せ、レーン3及び4は、それぞれ、分子標準100bp及びλ HindIIIに対応している。
【0077】
結論:アシディチオバチルス・フェロオキシダンスは、ベクターを回収することができるので、安定である。
【図6】(図6A)kan遺伝子のPCRによる増幅の結果を示すゲルの写真を示している。レーン1の試料において、PCRの基質は、pBM−3PnH(登録商標)でトランスフォームしたアシディチオバチルス・フェロオキシダンス株からのDNAの抽出であった。レーン3は、陽性対照であり、そこでは、PCR基質は、精製されたpBM−3PnH(登録商標)プラスミドであり、レーン2,4及び5は、陰性対照に対応している。レーン2及び5での基質は水であり、レーン4では、トランスフォームしてないアシディチオバチルス・フェロオキシダンス株からのDNAの抽出を用いた。レーン6及び7は、それぞれ、分子標準100bp及びHindIIIに対応している。
【0078】
結論:トランスフォームされた株(1)は、陽性対照(3)と同じバンドを与え、トランスフォームしてない株の陰性対照(4)においてはバンドが認められないということが認められる。それ故、回収されたプラスミドは、プラスミドpBM−3PnH(登録商標)に対応している。
【0079】
(図6B)大腸菌トランスフォーマント選択プレートに対応する培養プレートの写真を示している。大腸菌培養物を、カナマイシン耐性遺伝子を含むトランスフォームしたアシディチオバチルス・フェロオキシダンスクローンから回収したpBM−3PnH(登録商標)プラスミドによりトランスフォームした。このプレートは、50μg/mLカナマイシンを補ったルリア−ベルタニ(LB)寒天培地にまかれたトランスフォーマントに対応する。
【0080】
結論:アシディチオバチルス・フェロオキシダンスのトランスフォーメーションは、ベクターを無傷で回収して新たなトランスフォーメーションで利用することができるので、成功である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシディチオバチルス属の細菌のトランスフォーメーションのためのプラスミドであって、アシディチオバチルス属の細菌から単離した複製起点を含み、配列番号1及び2又はそれらのそれぞれの逆相補的配列に表されたoriの一つに含まれる核酸配列を主として含み、そして調節する遺伝子の発現を強く刺激する配列番号3で表されるWenelen株(DSM16786)から単離されたニトロゲナーゼプロモーターPnitを含むことを特徴とする当該プラスミド。
【請求項2】
アシディチオバチルス属、特にアシディチオバチルス・フェロオキシダンス種の細菌をトランスフォームすることを可能にする、配列番号1又はその逆相補的配列により表されるoriの一つに含まれる核酸配列を基本的に含むことを特徴とする請求項1に記載のプラスミド。
【請求項3】
アシディチオバチルス属、特にアシディチオバチルス・チオオキシダンス種の細菌をトランスフォームすることを可能にする、配列番号2又はその逆相補的配列により表されるoriの一つに含まれる核酸配列を基本的に含むことを特徴とする請求項1に記載のプラスミド。
【請求項4】
異なる属又は種の2以上の微生物において利用することのできるベクター(「シャトル」ベクター)であることを特徴とする請求項1に記載のプラスミド。
【請求項5】
他の種に特異的な第二の複製起点、クローニング部位及び少なくとも一つのマーカー遺伝子を含むことを特徴とする請求項4に記載のプラスミド。
【請求項6】
Pnitプロモーターが、マルチクローニング部位に隣接していて、クローン化遺伝子の発現を調節することを特徴とする請求項5に記載のプラスミド。
【請求項7】
クローニング部位、好ましくはマルチクローニング部位に隣接して、6ヒスチジンペプチドをコードする配列があり、それがヒスチジンテールとして、該プラスミドによりクローン化したタンパク質のカルボキシル末端に残ることを特徴とする請求項5に記載のプラスミド。
【請求項8】
第二の複製起点を、oripUC、oriColE1、orip15A、oriNTP1、oripBR345、oripBR322、oriR6Kから選択することを特徴とする請求項5に記載のプラスミド。
【請求項9】
レポーター遺伝子を、公知のレポーター遺伝子、例えばlacZ(β−ガラクトシダーゼ)、gfp(グリーン蛍光タンパク質)、luc(ルシフェラーゼ)、又は他の基質の色の変化により同定することのできるものから選択することを特徴とする請求項8に記載のプラスミド。
【請求項10】
クローニング部位への遺伝子の挿入によってレポーター遺伝子の非発現が決定づけられるように、レポーター遺伝子が該クローニング部位に結合されていることを特徴とする請求項9に記載のプラスミド。
【請求項11】
レポーター遺伝子が、β−ガラクトシダーゼ lacZ遺伝子であることを特徴とする請求項10に記載のプラスミド。
【請求項12】
抗生物質耐性遺伝子から選択する第二のマーカー遺伝子を有することを特徴とする請求項9に記載のプラスミド。
【請求項13】
好ましくは、カナマイシンに対する耐性を与える遺伝子(kan)であることを特徴とする請求項12に記載のプラスミド。
【請求項14】
第二の複製起点がpUCoriであることを特徴とする請求項8に記載のプラスミド。
【請求項15】
アシディチオバチルス属の細菌をトランスフォームする方法であって、下記の工程を含むことを特徴とする方法:
a.アシディチオバチルス種の培養物を用意する工程;
b.培養物のpHを除々に改変し、pHを5〜7に到達させる工程;
c.培養基質を四チオン酸塩へ変更する工程;
d.アシディチオバチルス種において自身を発現させることのできる請求項1〜14の何れかに規定したトランスフォーメーションベクターを用意する工程;及び
e.工程dで与えられたトランスフォーメーションベクターにより改変された培養物から得られたアシディチオバチルス種をトランスフォームし、トランスフォームされたアシディチオバチルス種を得る工程;
ただし、段階b及びcは、同時に又は順次的に行なうことができ、どちらが先でもよい。
【請求項16】
段階b)を、0.5から1ずつのpH増加により行ない、各増加を5〜15日の間隔で行ない、培養物の安定性をpHの新たな増加の前に確実にすることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
間隔が、好都合な5〜7日の持続期間であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
段階c)において、培養基質を先ず硫酸第二鉄から元素のイオウに変え、次いで、四チオン酸塩に変えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
基質の各変化は3日〜2週間続く段階であり、これにより培養物の安定性を確実にすることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
間隔が、好都合な5〜9日の持続期間であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
工程d)で与えられるベクターが、アシディチオバチルス種のプラスミドから単離された複製起点を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項22】
トランスフォーメーションを、既存の任意のトランスフォーメーション技術によって行なうことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項23】
エレクトロポレーションが好適に用いられる技術であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アシディチオバチルス種の培養物が、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス培養物であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項25】
アシディチオバチルス種の培養物が、アシディチオバチルス・チオオキシダンス培養物であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項26】
アシディチオバチルス種の培養物が、アシディチオバチルス・カルダス培養物であることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−22283(P2009−22283A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186794(P2008−186794)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(505393463)バイオシグマ・エス・エー (5)
【Fターム(参考)】