説明

アスファルト改質用ブロック共重合体及びアスファルト組成物

【課題】煙・悪臭の発生を低減させ、かつ、柔軟性を兼ね備えたアスファルトルーフィング・防水シートの施工において用いられる熱工法用アスファルト組成物を提供する。
【解決手段】ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエン単量体単位を含有する重合体Bからなるブロック共重合体であり、
前記共役ジエン単量体単位が前記ブロック共重合体中に5〜45質量%含まれており、かつ、下記(a)〜(c)の条件を満たすアスファルト改質用ブロック共重合体。
(a)重合体ブロックAと重合体Bの割合が25/75〜50/50
(b)ブロック共重合体のGPC測定による数平均分子量[Mn]が標準ポリスチレン換算で4.5万以上
(c)ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合を[S]としたとき、[Mn]≦−0.1[S]+9.5の関係を満たす。なお、[Mn]の単位は万であり、[S]の単位は質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト改質用ブロック共重合体及びアスファルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルトルーフィング・防水シートの施工においては、加熱溶融アスファルトに基材を貼り付け、これらを積層する熱工法が主流として実施されている。
【0003】
近年、省エネルギー、環境負荷低減、作業環境改善等の観点から、ルーフィング材の裏面を加熱溶融させて基材に貼り付けるトーチ工法や、全く加熱することなく、粘接着剤を用いてルーフィング材を基材に貼り付ける、或いは裏面に自着層をもったルーフィング材を基材に貼り付ける常温工法を取り入れる施工が行われてきている。
【0004】
しかしながら、前記トーチ工法や前記常温工法では、防水性の信頼性が十分ではないため、依然として前記熱工法が主流である。
前記熱工法に用いられるアスファルトは、ストレートアスファルトに高温の空気を吹き込むことにより軟化点を高くした、いわゆるブローンアスファルトが殆どである。
ブローンアスファルトは、耐候性や耐水性に優れているものの、一方において、溶融粘度が高く、施工性が劣るという欠点を有している。
また、熱工法においては、300℃程度の高温で施工するため、ブローンアスファルト成分に含まれる低沸点成分の蒸発が起こったり、臭気が発生したりするため、作業現場付近の環境を悪くしているという問題もある。
さらに、性能的にもブローンアスファルトは針入度が小さく、特に低温環境下では、硬くて脆いという欠点がある。
【0005】
そのため、例えば特許文献1には、前記ストレートアスファルトに、高軟化点ワックスを添加し、アスファルト組成物の溶融粘度を下げることにより施工温度を低温化させ、施工性の向上を図っている。
【0006】
また、特許文献2には、アスファルトに反応性を付与する材料を添加した防水工事用アスファルト組成物が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、低温で施工可能な防水シートシール用改質アスファルト組成物が開示されており、アスファルト用添加剤としては低分子量ポリオレフィン、石油樹脂が用いられるが、これらの添加剤を添加しただけでは低温性能の十分な改善効果が期待できず、EVA、SBS、SIS、SEBS、SEPS等の、各種熱可塑性エラストマーの併用が不可欠になると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−238956号公報
【特許文献2】特開2005−213981号公報
【特許文献3】特開平10−287812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ワックス添加により、アスファルト組成物の凝集力が低下し、基材と防水シートの接着力が低下するという問題がある。
また、特許文献2に記載の技術は、アスファルトに反応性を付与する材料の選択によって反応の割合が異なることや、原産地や精製所等の違いにより、一定の特性を有するアスファルトを入手することは事実上困難であり、同一品質のアスファルト組成物を安定して得ることは難しいという問題がある。
さらに、特許文献3においては、各種の熱可塑性エラストマーが挙げられているものの、これらについて十分な検証が行われておらず、各種熱可塑性エラストマーを併用することにより、低温性能の十分な改善効果が得られるかが明らかではない。
【0010】
そこで、本発明においては、従来のアスファルトルーフィング・防水シートの熱工法に比べ低温度でも施工を可能し、煙・悪臭の発生を低減させ、かつ、耐熱性と柔軟性とを兼ね備えたアスファルトルーフィング・防水シートの施工において用いられる熱工法用アスファルト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、共役ジエン単量体単位を含有する重合体中に特定範囲のアルキレン単量体単位を含有した特定構造のブロック共重合体をアスファルトに配合し、得られたアスファルト組成物をアスファルトルーフィング・防水シートの熱工法に使用することにより、より低い温度で施工を可能にし、煙・悪臭の発生を低減させ、かつ、耐熱性と柔軟性とのバランスに優れた性能を兼ね備えることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
〔1〕
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエン単量体単位を含有する重合体Bからなるブロック共重合体であり、
前記共役ジエン単量体単位が前記ブロック共重合体中に5〜45質量%含まれており、かつ、下記(a)〜(c)の条件を満たすアスファルト改質用ブロック共重合体。
(a)重合体ブロックAと重合体Bの割合が25/75〜50/50。
(b)ブロック共重合体のGPC測定による数平均分子量[Mn]が標準ポリスチレン換算で4.5万以上。
(c)ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合を[S]としたとき、[Mn]≦−0.1[S]+9.5の関係を満たす。なお、[Mn]の単位は万であり、[S]の単位は質量%である。
【0013】
〔2〕
前記共役ジエン単量体単位を含有する重合体B中に、アルキレン単量体単位が30〜90mol%含まれている前記〔1〕に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体。
【0014】
〔3〕
前記共役ジエン単量体単位を含有する重合体B中のアルキレン単量体単位が、前記共役ジエン単量体単位を水素添加反応することにより得られたものであり、前記水素添加反応前における、前記共役ジエンのビニル結合量が15〜50%である前記〔1〕又は〔2〕に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体。
【0015】
〔4〕
前記ブロック共重合体は、−70℃〜−45℃の範囲に1つ以上のtanδ(損失正接)ピーク1と、80℃以上100℃以下の範囲に1つ以上のtanδ(損失正接)ピーク2とを有している前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体。
【0016】
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体3〜15質量%と、ストレートアスファルト85〜97質量%とを含有するアスファルト組成物。
【0017】
〔6〕
前記アスファルト組成物を300℃で5時間放置した後の溶融粘度の変化率が、−40%〜+40%である前記〔5〕に記載のアスファルト組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアスファルト改質用ブロック共重合体を用いたアスファルト組成物は、溶融粘度が低く、加工性に優れ、250℃程度の比較的低温条件下における施工が可能であり、アスファルト成分に含まれる低沸点成分の蒸発や、煙、臭気の発生を防止することができる。
また、本発明のアスファルト組成物は、ブローンアスファルトに比べ、針入度が高く、適度な硬さと柔軟性と耐熱性とを有している。従って、本発明のブロック共重合体は、アスファルトルーフィング・防水シート施工の熱工法用等に使用されるブローンアスファルトの代替としてのストレートアスファルトの改質材として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0020】
〔アスファルト改質用ブロック共重合体〕
本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエン単量体単位を含有する重合体Bからなるブロック共重合体である。
重合体ブロックA、重合体B、ブロック共重合体の構成、及びブロック共重合体の製造方法については後述する。
【0021】
なお、本明細書において、「主体とする」とは、重合体ブロック中、単量体単位を60質量%以上含有することを意味する。
単量体単位を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0022】
前記「ビニル芳香族単量体」としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。これらの単量体は、単独でも2種以上の併用でもよい。
一方、「共役ジエン単量体」は、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、中でも1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、後述する本実施形態におけるアスファルト組成物において、熱安定性の観点から、1,3−ブタジエンがより好ましい。
これらの単量体は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本実施形態のブロック共重合体中に共役ジエン単量体単位が5〜45質量%であることが好ましい。
これにより、後述する本実施形態のアスファルト組成物は、耐だれ性に優れ、高い加熱安定性が得られ、耐折曲げ性に優れるものとなる。
【0024】
また、本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体は、下記(a)〜(c)の条件を満たす。
【0025】
(a):重合体ブロックAと重合体Bとの割合(A/B)が25/75〜50/50である。
重合体ブロックAと重合体Bとの割合A/Bが上記範囲であると、後述する本実施形態のアスファルト組成物において、優れた耐熱性、柔軟性が得られる。
好ましい重合体ブロックAと重合体Bの割合は27/73〜45/55であり、より好ましい重合体ブロックAと重合体Bの割合が27/73〜40/60である。
【0026】
(b):ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定による数平均分子量[Mn]が標準ポリスチレン間残で4.5万以上である。
ブロック共重合体の数平均分子量が4.5万以上であると、後述する本実施形態のアスファルト組成物において、優れた耐熱性が得られる。好ましい数平均分子量の範囲は4.75万以上である。
【0027】
(c):ブロック共重合体中の、重合体ブロックAの割合を[S]としたとき、[Mn]≦−0.1[S]+9.5の関係を満たす。なお、[Mn]の単位は万であり、[S]の単位は質量%である。
好ましくは、[Mn]≦−0.1[S]+9.2の範囲である。
後述する本実施形態のアスファルト組成物の溶融粘度との関係において、ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合[S]と、ブロック共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定による数平均分子量[Mn]との関係について検証したところ、上記式の関係を満たすことにより、適切な溶融粘度となり、良好な施工性が得られることを確認した。
【0028】
本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体を構成する重合体B中にアルキレン単量体単位を含有し、重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は30〜90mol%である。
本実施形態の重合体Bを構成するアルキレン単位とは、エチレン単位、プロピレン単位、ブチレン単位、ヘキシレン単位、及びオクチレン単位等のモノオレフィン単位を示し、特に、エチレン単位、プロピレン単位及びブチレン単位が、経済性の点で好ましい。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0029】
全重合体B中の、アルキレン単量単位の含有量が30〜90mol%であると、後述する実施形態のアスファルト組成物において、優れた熱安定性が得られ、柔軟性やべたつき性についても良好な特性が得られる。
好ましい全共重合体B中のアルキレンの含有量は、40mol%以上85mol%以下であり、より好ましくは50mol%以上80mol%以下である。
【0030】
前記重合体B中のアルキレン単量体構造を前記共役ジエン単量体から水素添加反応により得る場合、前記アルキレン単量体のビニル結合量が15〜50%であることが好ましい。
なお、前記共役ジエン単量体のビニル結合量は、後述する水素添加前のビニル結合量であるものとする。
これにより、後述する本実施形態のアスファルト組成物は、軟化点が高く、耐だれ性に優れ、高い耐熱性が得られ、耐折曲げ性に優れ、柔軟性が優れる。
なお、共役ジエン単量体のビニル結合量は、後述する水素添加前において、20〜45%であることが好ましい。
【0031】
本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体は、粘弾性測定試験において、−70℃以上−45℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク1を有していることが好ましい。これにより、本実施形態のアスファルト組成物は、良好な低温での耐折曲げ性、即ち柔軟性が発揮できるとともに低温条件下でも室温条件下と同程度の柔軟性が得られるようになる。
【0032】
また、本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体は、粘弾性試験において、80℃以上100℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2を有していることが好ましい。これにより、本実施形態のアスファルト組成物は、軟化点が高く、耐だれ性に優れ、高い耐熱性が得られるようになる。
なお、−65℃以上−50℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク1と、85℃以上95℃以下の範囲に1つ以上のtanδピーク2とを有することがより好ましい。
【0033】
前記tanδピーク温度は、本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体を、所定の大きさに切り出し測定用試料とし、所定の粘弾性装置を用いることにより測定できる。
具体的には、RSI Orchestrator(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名)の自動測定より検出されるピークから求められる。
【0034】
本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体の構造は、下記に示す一般式群から選択される少なくとも一つの構造が挙げられる。
(A−B)n、A−(B−A)n、[(A−B)n]Xm
Aは、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックである。
Bは、共役ジエン単量体単位を含有する重合体である。
上記Xは、例えば、四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物等のカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。
上記一般式中、加工性、耐熱性、低温特性等の性能バランスの観点から、A−B−Aの構造が好ましい。
上記一般式中、m及びnは、1以上の整数を示し、1〜5の整数であることが好ましい。
【0035】
重合体B中の共役ジエン単位のビニル結合単位の分布は、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状あるいは凹状に分布していてもよい。
ビニル結合単位の分布は、後述する重合中にビニル化剤を添加したり、重合中の温度を変化させたりする等の方法により制御できる。
【0036】
〔アスファルト改質用ブロック共重合体の製造方法〕
本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体は、前記「ビニル芳香族単量体」、前記「共役ジエン単量体」を用いて、所定の重合を行い、その後、水添反応を行うことにより得られる。
重合方法については、特に限定されるものではなく、例えば、配位重合、アニオン重合又はカチオン重合等が挙げられる。構造の制御の容易さの観点からはアニオン重合が好ましい。
【0037】
アニオン重合のブロック共重合体の製造方法としては、公知の方法が適用できる。
例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0038】
重合工程後、所定の水添触媒を用い、水添反応を行うことにより、本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体が得られる。
水添反応に使用される触媒としては、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一触媒が知られている。
水添反応の具体的な方法としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報及び特公平2−9041号公報に記載された方法が挙げられる。例えば、炭化水素溶媒中で水添触媒の存在下に水素添加して、水素添加物を得ることができる。その際、ブロック共重合体の水素添加率は、反応温度、反応時間、水素供給量、触媒量等を調整することによりコントロールすることができる。
【0039】
〔アスファルト組成物〕
本実施形態のアスファルト組成物は、上述した本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体3〜15質量%と、アスファルト85〜97質量%とを含有している。
アスファルト改質用ブロック共重合体の含有量が3〜15質量%であると、耐熱性に優れたものとなり、また溶融粘度が高くなりすぎず、実用上良好な加工性が得られる。
これらの含有量は、好ましくは、アスファルト改質用ブロック共重合体4〜13質量%、アスファルト87〜96質量%、より好ましくは、アスファルト改質用ブロック共重合体5〜10質量%、アスファルト90〜95質量%の範囲である。
【0040】
本実施形態のアスファルト組成物は、300℃で5時間加熱したとき、加熱前後の溶融粘度を測定し、それぞれの数値から求めた溶融粘度の変化率が−40%以上+40%以下であることが好ましい。
具体的には、加熱条件をJIS K2207石油アスファルトの加熱安定性試験に従って行い、加熱前後のアスファルト組成物の180℃の溶融粘度を測定し、溶融粘度変化率を計算する。
【0041】
前記粘度の変化率が−40%以上であると、軟化点の低下を制御し、耐だれ性(だれ長さ)や耐折れ曲げ性についても良好な特性が得られ、また+40%以下であると溶融粘度が高くなりすぎず、実用上良好な加工性が得られる。
好ましい粘度の変化率の範囲は、−35%〜+35%、さらに好ましい変化率の範囲は、−30%〜+30%である。
【0042】
なお、本実施形態のアスファルト組成物を構成するストレートアスファルトとしては、石油精製の際の副生成物(石油アスファルト)、または天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの等が挙げられる。
前記ストレートアスファルトとしては、針入度が30〜300のストレートアスファルトが好ましい。
より好ましくは、針入度は60〜200である。アスファルト組成物には、必要により、瀝青の中のセミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ等を前記ストレートアスファルトに混合して使用することができる。
前記針入度は、JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に規定の針が5秒間に進入する長さを測定する。
【0043】
(アスファルト組成物を構成するその他の成分)
<粘着付与剤樹脂>
本実施形態のアスファルト組成物には、粘着付与剤樹脂を添加してもよい。
粘着付与剤樹脂としては、種類は特に限定はなく、例えば、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等の公知の粘着付与性樹脂が挙げられる。
粘着付与剤は単独で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
粘着付与剤の具体例としては、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。
粘着付与剤樹脂を用いることにより、接着強さの改良が図られる。
本実施形態のアスファルト組成物中における粘着付与剤樹脂の含有量は、本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体を100質量部としたとき、好ましくは0〜200質量部、より好ましくは0〜100質量部の範囲で使用される。
上記範囲の含有量とすることにより、長期貼り付け後においても接着力が強くなりすぎず、剥離の際の糊残りを防止することができる。
【0044】
<軟化剤>
本実施形態のアスファルト組成物には、軟化剤を添加してもよい。
軟化剤としては、鉱物油系軟化剤又は合成樹脂系軟化剤のいずれも使用できる。
鉱物油系軟化剤は、一般に、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物が挙げられる。
パラフィン系炭化水素の炭素原子数が全炭素原子中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、ナフテン系炭化水素の炭素原子が30〜45%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、また、芳香族系炭化水素の炭素原子が35%以上のものが芳香族系オイルと呼ばれている。
軟化剤としては、ゴム用軟化剤であるパラフィン系オイルが好ましく、合成樹脂系軟化剤としては、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が好ましいものとして挙げられる。
軟化剤を含有させることにより、本実施形態のアスファルト組成物において、密着性や粘着性の改良が図られる。
本実施形態のアスファルト組成物中の軟化剤の含有量は、軟化剤のブリード抑制や、本実施形態のアスファルト組成物において実用上十分な機械強度を確保する観点から、0〜100質量%であることが好ましい。
軟化剤のアスファルト組成物中の含有量は、0〜50質量%の範囲がより好ましく、0〜30質量%以下の範囲がさらに好ましい。
【0045】
<安定剤>
本実施形態のアスファルト組成物には、酸化防止剤、光安定剤等の安定剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0046】
<添加剤>
本実施形態のアスファルト組成物には、その他、必要に応じて、従来アスファルト組成物に慣用されている各種添加剤、例えばシリカ、タルク、炭酸カルシウム、鉱物質粉末、ガラス繊維等の充填剤や補強剤、鉱物質の骨材、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類、あるいは、アゾジカルボンアミド等の発泡剤、アタクチックポリプロビレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンープロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレンーイソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及び本発明以外のスチレンーブタジエン系ブロック共重合体、スチレンーイソプレン系ブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン系ブロック共重合体などの合成ゴムを添加してもよい。
【0047】
〔アスファルト組成物の製造方法〕
本実施形態のアスファルト組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の混合機、熱溶融釜、ニーダー等により加熱溶融混練し、均一混合する方法で製造できる。
例えば、熱溶融釜にストレートアスファルトを浸漬し、完全に溶融させ、ホモミキサーなどの攪拌機で攪拌しながら、本実施形態のアスファルト改質用ブロック共重合体や各種添加剤を添加し、その後、攪拌速度を上げ、混練することによりアスファルト組成物が製造できる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0049】
先ず、実施例及び比較例に適用した、評価方法及び物性の測定方法について下記に示す。
〔I.ブロック共重合体の組成及び構造の評価〕
(I−1)スチレン含有量、ブタジエンのビニル結合量、全重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量
ブロック共重合体中のスチレン含有量、ブタジエンのビニル結合量、重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。
測定機器:JNM−LA400(JEOL製)
溶媒:重水素化クロロホルム
測定サンプル:ブロック共重合体を水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度:50mg/ml
観測周波数:400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数:64回
パルス幅:45°
測定温度:26℃
【0050】
(I−2)数平均分子量および分子量分布
水添前のブロック共重合体の数平均分子量及び分子量分布は、下記の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
分子量分布は、得られた重量平均分子量と数平均分子量との比により算出した。
測定装置:LC−10(島津製作所製)
カラム:TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm)、2本
溶媒:テトラヒドロフラン
検量線用サンプル:市販(東ソー株式会社製)の標準ポリスチレン、10点測定
【0051】
(I−3)tanδピーク
後述する実施例、比較例で作製した水添後のブロック共重合体を測定材料として用い、これを幅10mm、長さ35mmのサイズにカットし、測定用試料とした。
装置ARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名)の捻りタイプのジオメトリーに、測定用試料をセットし、実効測定長さは25mm、ひずみ0.5%、周波数1Hz、−70℃〜50℃まで、昇温速度3℃/分の条件により測定した。
tanδピーク温度は、RSI Orchestrator(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名)の自動測定より検出されるピークから求めた値である。
【0052】
〔II.アスファルト組成物の特性〕
(II−1)溶融粘度
ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORYIES、INC.製)を用い、温度条件は160℃、180℃、スピンドル番号は28で測定した。
溶融粘度は250℃以下であれば実用上良好であると判断した。
【0053】
(II−2)軟化点
JIS−K 2207に準じて、アスファルト組成物の軟化点を測定した。
規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。
軟化点は、90℃以上であれば実用上良好であると判断した。
【0054】
(II−3)針入度
JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に規定の針が5秒間に進入する長さを測定した。
針入度の規格は、40に近い方が良好であるものと判断した。
【0055】
(II−4)耐だれ性(だれ長さ)
JIS−K 2207に準じ、鋼板の上に載せた大きさ40mm×60mm、厚さ3mm(3個取り)の型枠にアスファルト組成物を流し込み、冷却後、アスファルト組成物を型枠通りの大きさに削り取り、型枠を外した。
次に、70±2℃に保った高温空気槽中に試料台を試料の長辺方向が垂直になるように懸垂した。
5時間後試料台を取り外し、試料の長辺方向の最大長さを読み取り、測定値から60mmを差し引いた数値のうち、最大長さをだれ長さとした。
耐だれ性(だれ長さ)は、5mm以下であれば、実用上良好であると判断した。
【0056】
(II−5)耐折曲げ性
長さ100mm、幅50mm、厚さ3mmに成形したアスファルト組成物のシートを温度調整されたドライアイス−エタノール液に10分間以上浸漬後、シートを取り出し、すばやく直径が15mmの金属棒にシートの長手方向を曲げる様に巻き付け、シートに亀裂が発生しない最低の温度を測定し、低温での柔軟性を評価した。
【0057】
(II−6)べたつき試験
60℃恒温室内に2時間養生し、保護手袋をした指で押さえた時の感触を3名の試験者で確認を行い、施工時における周囲の汚染の程度を評価した。
【0058】
(II−7)加熱安定性
アスファルト組成物を300℃で5時間加熱し、加熱前後のそれぞれの試料につき180℃の溶融粘度を測定する。
具体的には、加熱条件をJIS K2207石油アスファルトの加熱安定性試験に従って行い、加熱前後のアスファルト組成物の180℃の溶融粘度を測定し、溶融粘度変化率を計算した。
溶融粘度の変化率を加熱安定性として判断した。
なお、溶融粘度測定装置として、「ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORYIES、INC.製)を用いた。
溶融粘度の変化率が−40%〜+40%の範囲であれば、アスファルト組成物の分解や架橋が抑制されており、性能の低下や施工性の劣化が防止され、実用上良好な流動性が確保でき、熱安定性に優れているものと判断した。
【0059】
〔III.水添触媒の調製〕
ブロック共重合体の水添反応に用いた水添触媒は下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に、乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビスシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、水添触媒を調製した。
【0060】
〔IV.ブロック共重合体の調製〕
<ポリマー1:スチレン−ブタジエン−アルキレン−スチレンブロック共重合体:A−B−A)>
ここで、A、Bは下記の重合体ブロックを示すものとする。(以下、同様)
A:ポリスチレンブロック
B:ポリブタジエンブロック(ブタジエン−アルキレン)
内容積が20Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.035質量部と、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」と記載する。)を、n−ブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で15分間重合した。
その後、ブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を加えて75℃で80分間重合した。
次に、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン(濃度22質量%)を加えて75℃で20分間重合した。
上述のようにして得られたポリマーは、スチレン含有量30質量%、ブタジエン含有量70質量%、ポリブタジエン部のビニル結合量41モル%、ポリマー全体の数平均分子量6万、分子量分布1.03であった。
【0061】
次に、上述のようにして得られたポリマーに、上記(III)により調製した水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして88ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られたブロック共重合体(ポリマー1)の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は87mol%であった。
また、ポリマー1のtanδピーク温度は−53℃と89℃であった。
なお、前記ブロック共重合体(ポリマー1)の重合体B中のアルキレン単量体単位は、水添前のポリブタジエン部のビニル結合の位置に依存するため、エチレン及び/又はブチレンとなる。以下、(ポリマー2)〜(ポリマー12)においても同様である。
【0062】
<ポリマー2:スチレン−ブタジエン−アルキレン−スチレンブロック共重合体>
n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.033質量部添加した。
水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして77ppm添加して水添反応を行った。
その他の条件は、上述した(ポリマー1)と同様にして、水添ブロック共重合体(ポリマー2)を得た。
ブロック共重合体(ポリマー2)の水添前のポリブタジエン部のビニル結合量は40モル%、数平均分子量は5.3万、分子量分布1.03、水添後のポリマー2の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は75mol%、tanδピーク温度は−52℃、92℃であった。
【0063】
<ポリマー3:スチレン−ブタジエン−アルキレン−スチレンブロック共重合体>
n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.042質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して、0.25モル添加した。
水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして71ppm添加して水添反応を行った。
その他の条件は、上述した(ポリマー1)と同様にして、ブロック共重合体(ポリマー3)を得た。
ブロック共重合体(ポリマー3)の水添前のポリブタジエン部のビニル結合量は28モル%、数平均分子量は4.9万、分子量分布1.03、水添後のポリマー2の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は70mol%、tanδピーク温度は−58℃、91℃であった。
【0064】
<ポリマー4:スチレン−ブタジエン−アルキレン−スチレンブロック共重合体>
上記ポリマー1と同様に、内容積が20Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、スチレン18質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.040質量部と、TMEDAをnーブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で15分間重合した。
その後、ブタジエン65質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を加えて75℃で80分間重合した。
次に、スチレン17質量部を含むシクロヘキサン(濃度22質量%)を加えて75℃で20分間重合した。
上述のようにして得られたポリマーは、スチレン含有量35質量%、ブタジエン含有量65質量%、ポリブタジエン部のビニル結合量45モル%、ポリマー全体の数平均分子量5.7万、分子量分布1.03であった。
【0065】
次に、上述のようにして得られたポリマーに、上記(III)により調製した水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして75ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られたブロック共重合体(ポリマー4)の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は74mol%、tanδピーク温度は−53℃、93℃であった。
【0066】
<ポリマー5:スチレン−ブタジエン−アルキレン−スチレンブロック共重合体>
上記ポリマー1と同様に、内容積が20Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.042質量部と、TMEDAをnーブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で15分間重合した。
その後、ブタジエン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を加えて75℃で80分間重合した。
次に、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン(濃度22質量%)を加えて75℃で20分間重合した。
上述のようにして得られたポリマーは、スチレン含有量40質量%、ブタジエン含有量60質量%、ポリブタジエン部のビニル結合量40モル%、ポリマー全体の数平均分子量4.8万、分子量分布1.04であった。
【0067】
次に、上述のようにして得られたポリマーに、上記(III)により調製した水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして67ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られたブロック共重合体(ポリマー5)の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は65mol%、tanδピーク温度は−51℃、93℃であった。
【0068】
<ポリマー6:スチレン−ブタジエン−アルキレン−スチレンブロック共重合体>
上記ポリマー1と同様に、内容積が20Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、スチレン24.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.045質量部と、TMEDAをnーブチルリチウム1モルに対して0.1モル添加し、70℃で25分間重合した。
その後、ブタジエン53質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度22質量%)を加えて75℃で85分間重合した。
次に、スチレン22.5質量部を含むシクロヘキサン(濃度22質量%)を加えて75℃で25分間重合した。
上述のようにして得られたポリマーは、スチレン含有量47質量%、ブタジエン含有量53質量%、ポリブタジエン部のビニル結合量23モル%、ポリマー全体の数平均分子量4.8万、分子量分布1.08であった。
【0069】
次に、上述のようにして得られたポリマーに、上記(III)により調製した水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして30ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られたブロック共重合体(ポリマー6)の重合体B中のアルキレン単量体単位の含有量は35mol%、tanδピーク温度は−65℃、94℃であった。
【0070】
<ポリマー7〜ポリマー12:スチレン−ブタジエン−アルキレン−スチレンブロック共重合体>
ポリマー1〜ポリマー6に示す方法と同様に、添加するスチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、ブタジエン、スチレン、チタンを、下記表2に示すポリマーが得られるように変量して各ポリマーを得た。
【0071】
〔実施例1〕
364gのストレートアスファルト80−100(新日本石油株式会社製)を750ccの容器に入れ、容器を180℃のオイルバスに浸漬し、ストレートアスファルトを完全溶解させた。
次に、回転速度3000rpmでストレートアスファルトをホモミキサーで攪拌しながら、上述のようにして得られたブロック共重合体(ポリマー1)36gを少しずつ、ストレートアスファルト中に添加した。
添加が終了したら、攪拌速度を6000rpmに上げ、90分間混練してアスファルト組成物を得た。
【0072】
〔実施例2〜6〕、〔比較例1〜7〕
表1〜表3に示す各ポリマーを用い、それぞれのブロック共重合体とアスファルトとの比率に従い、実施例1と同様の混練方法により、アスファルト組成物を得た。
【0073】
〔比較例8、9〕
実施例1と同様のポリマー1を用い、ブロック共重合体とアスファルトとの比率を変えた。その他の条件は、実施例1と同様の混練方法でアスファルト組成物を得た。
得られた各アスファルト組成物の物性を、下記〔表1〕、〔表2〕、〔表3〕に示した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
実施例1〜6のように、特定の構造を有するブロック共重合体のアスファルト組成物を用いることによって、溶融粘度が低く加工性に優れ、かつアスファルト性能特に耐熱性と低温特性とのバランスに優れるアスファルト組成物が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のアスファルト改質用ブロック共重合体及びアスファルト組成物は、アスファルト防水シートの熱工法の分野において、産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA及び共役ジエン単量体単位を含有する重合体Bからなるブロック共重合体であり、
前記共役ジエン単量体単位が前記ブロック共重合体中に5〜45質量%含まれており、かつ、下記(a)〜(c)の条件を満たすアスファルト改質用ブロック共重合体。
(a)重合体ブロックAと重合体Bの割合が25/75〜50/50。
(b)ブロック共重合体のGPC測定による数平均分子量[Mn]が標準ポリスチレン換算で4.5万以上。
(c)ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合を[S]としたとき、[Mn]≦−0.1[S]+9.5の関係を満たす。なお、[Mn]の単位は万であり、[S]の単位は質量%である。
【請求項2】
前記共役ジエン単量体単位を含有する重合体B中に、アルキレン単量体単位が30〜90mol%含まれている請求項1に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体。
【請求項3】
前記共役ジエン単量体単位を含有する重合体B中のアルキレン単量体単位が、前記共役ジエン単量体単位を水素添加反応することにより得られたものであり、前記水素添加反応前における、前記共役ジエンのビニル結合量が15〜50%である請求項1又は2に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体。
【請求項4】
前記ブロック共重合体は、
−70℃〜−45℃の範囲に1つ以上のtanδ(損失正接)ピーク1と、
80℃以上100℃以下の範囲に1つ以上のtanδ(損失正接)ピーク2と、
を、有している請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアスファルト改質用ブロック共重合体3〜15質量%と、ストレートアスファルト85〜97質量%とを含有するアスファルト組成物。
【請求項6】
前記アスファルト組成物を300℃で5時間放置した後の溶融粘度の変化率が、−40%〜+40%である請求項5に記載のアスファルト組成物。

【公開番号】特開2011−246648(P2011−246648A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123230(P2010−123230)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】