説明

アスファルト混合物の製造方法およびアスファルト混合物

【課題】バインダ貯蔵時における問題を有することなく、アスファルトラバーと同様の耐流動性改善効果が得られるアスファルト混合物の製造方法およびアスファルト混合物を提供する。
【解決手段】アスファルトと、骨材とを含むアスファルト混合物の製造方法である。アスファルトと骨材とを加熱混合した後、得られたアスファルトと骨材との混合物中に加硫ゴム粉を添加混合し、その後、加熱貯蔵する。加熱貯蔵時の温度は好適には150〜180℃の範囲内とし、加熱貯蔵時の時間は好適には0.5〜6時間の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルト混合物の製造方法(以下、単に「製造方法」とも称する)およびアスファルト混合物に関し、詳しくは、アスファルトと骨材とを含むアスファルト混合物の製造方法およびそれにより得られるアスファルト混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉砕した微細な加硫ゴム粉をあらかじめストレートアスファルトと混合し、熟成させることにより得られる改質バインダとして、アスファルトラバーが知られている。このアスファルトラバーバインダの特徴は、アスファルトと加硫ゴム粉とを高温で撹拌することで、加硫ゴム粉が膨潤することにより、高粘度のバインダへと改質されている点にある。このアスファルトラバーバインダを用いることで、舗装の耐流動性(耐わだち性)を改善することができる。
【0003】
アスファルトラバーの製造方法としては、加熱溶解したストレートアスファルトに廃タイヤのゴム粉末を添加し、所定温度に保持して所定時間の撹拌、混合をした後、これを所定温度で所定時間熟成させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−328139号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
わが国では、アスファルトバインダについては多現場少量出荷が多いため、一般のストレートアスファルトおよび改質アスファルトは、いずれも通常、製造後、輸送され、その後、高温状態でアスファルトタンクに一時貯蔵されて、このアスファルトタンクから必要に応じ適量を取り出すことにより、使用されている。
【0005】
しかしながら、従来のアスファルトラバーバインダをこれらと同様にタンク内で貯蔵すると、この貯蔵時の再加熱や過加熱によって、バインダの性状や性能が変化しやすいという問題があった。したがって、このような問題を有することなく、アスファルトラバーと同様の性能が得られる舗装材料としてのアスファルト混合物の実現が望まれていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、従来のようなバインダ貯蔵時における問題を有することなく、アスファルトラバーと同様の耐流動性改善効果が得られるアスファルト混合物の製造方法およびアスファルト混合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、アスファルト混合物を、アスファルトラバーのような、ゴム粉とアスファルトとをあらかじめ混合するプレミックスではなく、これらをアスファルト混合物製造時に直接混合物製造用ミキサーに投入して混合するプラントミックスにより調製するとともに、その後、一定温度で一定時間貯蔵した後に使用に供するものとすることで、上記問題を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のアスファルト混合物の製造方法は、アスファルトと、骨材とを含むアスファルト混合物の製造方法において、
前記アスファルトと骨材とを加熱混合した後、得られたアスファルトと骨材との混合物中に加硫ゴム粉を添加混合し、その後、加熱貯蔵することを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、前記加熱貯蔵時の温度は、好適には150〜180℃の範囲内であり、前記加熱貯蔵時の時間は、好適には0.5〜6時間の範囲内である。また、前記加硫ゴム粉の添加量は、前記アスファルトと骨材との混合物に対し0.1〜5.0質量%の範囲内とすることが好ましい。さらに、前記加硫ゴム粉の粒径は、好適には10〜5000μmの範囲内とする。
【0010】
また、本発明のアスファルト混合物は、上記本発明の製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成としたことにより、バインダ貯蔵時における性状変化や性能変化の問題を有することなく、アスファルトラバーと同様の耐流動性改善効果が得られるアスファルト混合物の製造方法およびアスファルト混合物を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適実施形態について詳細に説明する。
本発明は、アスファルトと骨材とを含む、舗装材料としてのアスファルト混合物の製造方法の改良に係るものである。
【0013】
本発明の製造方法においては、従来のアスファルトラバーのようなプレミックスに代えて、アスファルトとゴム粉との混合をプラントミックスで行うとともに、得られた混合物を一定時間加熱貯蔵する点に特徴がある。具体的には、まず、アスファルトと骨材とを加熱混合した後、得られたアスファルトと骨材との混合物中に加硫ゴム粉を添加混合し、その後、一定温度で一定時間加熱貯蔵することにより、アスファルト混合物を製造する。すなわち、本発明では、従来のアスファルトラバーを用いた舗装材料の製造方法において、実質的にバインダ製造を省略してバインダ貯蔵時の問題をなくすことができるとともに、混合後に一定の貯蔵時間を設けることにより、従来のアスファルトラバーのようなゴム粉の膨潤による耐流動性の改善を図ることが可能となったものである。
【0014】
本発明における加硫ゴム粉添加混合後の混合物の貯蔵条件としては、温度については、アスファルトと骨材とを加熱混合する際と同程度の温度とすることができ、好適には、150〜180℃、より好適には160〜170℃の範囲内とする。また、貯蔵時間については、少なくとも加硫ゴム粉を添加混合する際と同程度の時間とすることが好ましく、好適には、0.5〜6時間の範囲内とする。貯蔵温度が低すぎると加硫ゴム粉の膨潤が起きにくく、高すぎるとアスファルトの劣化が生ずるためである。また、貯蔵時間が短すぎると、貯蔵を行うことによる効果が得られず、長すぎるとアスファルトの劣化を招くおそれがある。本発明における上記混合物の貯蔵は、例えば、恒温槽を用いて行うことができる。
【0015】
本発明の製造方法においては、アスファルトと骨材とを加熱混合した後、得られたアスファルトと骨材との混合物中に加硫ゴム粉を添加混合し、さらに所定条件下で混合物の加熱貯蔵を行う点のみが重要であり、それ以外の具体的製造条件については、特に制限されるものではない。また、本発明のアスファルト混合物は、かかる本発明の製造方法により得られるものであり、少なくともアスファルトと骨材と加硫ゴム粉とを含むものであって、それ以外の詳細な配合等については、特に制限されるものではない。
【0016】
例えば、アスファルトと骨材との加熱混合は、150〜180℃の範囲で、常法に従い行うことができる。また、その後、これらアスファルトと骨材との混合物に加硫ゴム粉を添加混合する際の温度は150〜180℃の範囲とすることができる。
【0017】
本発明のアスファルト混合物における加硫ゴム粉の添加量は、好適には、アスファルトと骨材との混合物に対し、外添加で0.1〜5.0質量%の範囲内である。加硫ゴム粉の添加量がこの範囲よりも少ないと、耐流動性の向上が見られない場合があり、この範囲よりも多いと、ゴムの弾性により締固めが不十分となりやすく十分な耐久性が得られないおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0018】
また、本発明に用いる加硫ゴム粉としては、粒径が10〜5000μmの範囲内である微細ゴム粉を用いることが好ましい。加硫ゴム粉の材質等については特に限定されず、天然ゴムやイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム等を利用することができる。具体的には例えば、ゴムタイヤ、ウェザーストリップ、ホース類等の使用済み廃材、成形の際に生成する不要の端材、成形不良品等から得られる粉砕ゴム粉を好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明に用いるアスファルトとしては、ストレートアスファルト40/60、60/80、80/100、100/120等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ストレートアスファルトは、脱色アスファルトであってもよい。
【0020】
骨材の種類には特に制限はなく、砕石、砂、石粉など、通常の舗装用アスファルトに用いられるものを適宜用いることができる。
【0021】
本発明において、アスファルトと骨材との混合比率は、アスファルト4〜20質量%に対し、骨材96〜80質量%とすることができる。また、本発明のアスファルト混合物には、舗装材料中に通常混合して用いられる添加材を、適宜添加することが可能である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
(実施例1〜4)
下記表1中に物理性状を示すストレートアスファルト60/80(昭和シェル(株)製)6.0質量%と、下記表2中に示す粒度を有する骨材(密粒度アスファルトコンクリート(13))94.0質量%とを、下記表5に示す混合温度で加熱混合した。次いで、このアスファルトと骨材との混合物中に、下記表3中に詳細を示す加硫粉砕ゴム(USS東洋(株)製,TBゴム粉,品番♯4000)0.6質量%(外添加)を添加混合して、密粒度アスファルトコンクリート混合物を得た。
【0023】
得られた密粒度アスファルトコンクリート混合物を、165℃の恒温槽内にて、それぞれ所定時間(1,3,6,9時間)貯蔵した後、下記表5に示す締固め温度で供試体の作製を行った。
【0024】
(比較例1)
上記実施例と同様にして得られた密粒度アスファルトコンクリート混合物を、貯蔵せずに用いて、同様にして供試体の作製を行った。
【0025】
(比較例2)
下記表1中に示すストレートアスファルト60/80(昭和シェル(株)製)88質量%と、下記表3中に示す加硫粉砕ゴム(USS東洋(株)製,TBゴム粉,品番♯4000)12質量%とを、180℃で30分間加熱混合して、その後、180℃で2時間熟成させることにより、アスファルトラバーバインダを調製した。得られたアスファルトラバーバインダの物理性状を、下記表4中に示す。次いで、このアスファルトラバーバインダ6.2質量%と、下記表2中に示す骨材(密粒度アスファルトコンクリート(13))93.8質量%とを、下記表5に示す混合温度で加熱混合して、密粒度アスファルトコンクリート混合物を得た。この比較例2で用いているアスファルトラバーバインダは、従来作製されているアスファルトラバーに相当する。得られた密粒度アスファルトコンクリート混合物を用いて、下記表5に示す締固め温度で供試体の作製を行った。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

*)ブルックフィールド粘度計による測定値である。
【0030】
【表5】

【0031】
各供試体の作製は舗装試験法便覧に準拠して行い、同様に舗装試験法便覧に準拠して、その密度、空隙率および動的安定度(耐わだち性の指標)の測定を行った。その結果を、下記表6中に示す。また、貯蔵時間と動的安定度の値との関係を、図1のグラフに示す。
【0032】
【表6】

【0033】
上記表6の結果より、本発明に従い混合した密粒度アスファルトコンクリート混合物を恒温層内で貯蔵することにより、動的安定度が向上することが確認された。特に、実施例2〜4におけるように、貯蔵時間が3時間以上であると、従来のプレミックスタイプのアスファルトラバーを用いた比較例2と同等以上の性能を得ることができることがわかる。一方で、長時間の高温貯蔵はアスファルトの劣化を伴うことから、かかる観点からは、熟成時間は5時間以内が好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例における貯蔵時間と動的安定度の値との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトと、骨材とを含むアスファルト混合物の製造方法において、
前記アスファルトと骨材とを加熱混合した後、得られたアスファルトと骨材との混合物中に加硫ゴム粉を添加混合し、その後、加熱貯蔵することを特徴とするアスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
前記加熱貯蔵時の温度を150〜180℃の範囲内とする請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項3】
前記加熱貯蔵時の時間を0.5〜6時間の範囲内とする請求項1または2記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項4】
前記加硫ゴム粉の添加量を、前記アスファルトと骨材との混合物に対し0.1〜5.0質量%の範囲内とする請求項1〜3のうちいずれか一項記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項5】
前記加硫ゴム粉の粒径を10〜5000μmの範囲内とする請求項1〜4のうちいずれか一項記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項記載の製造方法により製造されたことを特徴とするアスファルト混合物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−209197(P2009−209197A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50974(P2008−50974)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】