説明

アスファルト組成物

【課題】軟化点、伸度、弾性率が高く、かつ高温貯蔵安定性が優れるアスファルト組成物の提供。
【解決手段】ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロック(A)、及び共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体ブロックを水添して得られる少なくとも1つの水添共重合体ブロック(B)を包含するビニル芳香族単量体単位の含有量が30重量%を越え、50重量%以下の水添共役ジエン系共重合体(a)0.5〜50重量部、及びアスファルト(b)100重量部を含むことを特徴とするアスファルト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造の水添共役ジエン系共重合体を含有したアスファルト組成物に関する。本発明のアスファルト組成物は、軟化点、伸度、弾性率が高く、高温貯蔵安定性が優れる。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト組成物は、道路舗装、防水シート、遮音シート、ルーフィング等の用途に広く利用されている。その際、アスファルトに種々のポリマーを添加して、その性質を改良しようとする試みが多くなされている。そのポリマーの具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ゴムラテックス、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とからなるブロック共重合体等が使用されている。
近年、道路通行車両の増大、或いは高速化といった事情に伴って、優れた強度、耐摩耗性を有するアスファルト混合物の要求がますます高まっている。このため、より高い軟化点、伸度や弾性率などの機械的強度が必要とされ、例えば上記ブロック共重合体の分子量を上げることにより改良することが試みられている。しかしながら、このような方法では高温貯蔵時貯蔵安定性が充分でなく、溶融粘度が高くなり、道路舗装時の施工性が劣る。
【0003】
このため、一般にはアロマ系オイルの添加、硫黄や過酸化物の添加による架橋で貯蔵安定性を改良することが行われている。例えば、硫黄の使用(例えば、特許文献1参照。)が、また硫黄と加硫剤、硫黄含有加硫促進剤の併用が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、かかる改良方法においても未だに満足できる結果が得られておらず、さらなる改良が望まれていた。
また、特殊構造を有する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とからなる共重合体を用いたアスファルト組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、該組成物は、軟化点、弾性率、高温貯蔵安定性のバランスが不充分であり、また耐候性や低温特性等に劣ることから、さらなる改良が望まれていた。
【0004】
またビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体、フィラーを含有するルーフィングシングル用アスファルト組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、該組成物は、通常のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体を使用しているため、高温貯蔵安定性が不充分であり、且つ耐候性に劣ることから、ルーフィングシングルに用いるには、さらなる改良が望まれていた。
さらに、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体に、水素を添加してなる水添共重合体を用いたアスファルト組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、該組成物は、ビニル芳香族化合物の含有量が多いため、高温貯蔵安定性が優れるものの、軟化点、伸度、弾性率が不充分であり、道路舗装用に用いるには、さらなる改良が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特公昭57−24385号公報
【特許文献2】特開平3−501035号公報
【特許文献3】米国特許US2003/0149140号明細書
【特許文献4】米国特許第6,120,913号明細書
【特許文献5】特開2003−238813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の上記問題を解決するため、水添共役ジエン系共重合体とアスファルトとを含む組成物の特性改良について鋭意検討を行なった。本発明の目的は、軟化点、伸度及び弾性率が高く、また高温貯蔵安定性に優れるアスファルト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決するため、下記の水添共重合体(a)0.5〜50重量部、及びアスファルト(b)100重量部を包含することを特徴とするアスファルト組成物が、軟化点、伸度および弾性率が高く、また高温貯蔵安定性に優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.水添共役ジエン系共重合体(a)0.5〜50重量部及びアスファルト(b)100重量部を包含するアスファルト組成物であり、
成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロック(A)及び共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体ブロックを水添して得られる少なくとも1つの水添共重合体ブロック(B)を包含してなり、
次の特性(1)〜(6)を有することを特徴とする水添共役ジエン系共重合体。
(1)ビニル芳香族単量体単位の含有量が、成分(a)の重量に対して30重量%を越え、50重量%以下であり、
(2)成分(A)の含有量が、成分(a)に対して5〜40重量%であり、
(3)非水添ランダム共重合体ブロック中の共役ジエン部分のビニル結合量が、5〜45重量%であり、
(4)成分(a)のMFR(メルトフローレート:L条件)が、0.05〜10であり、
(5)成分(B)の二重結合の水添率が、60%以上であり、
(6)成分(a)が、成分(A)を少なくとも2つ有する水添共役ジエン系共重合体である。
2.成分(a)のMFR(L条件)が0.2〜2であり、成分(A)が成分(a)に対して10〜30重量%である水添共役ジエン系共重合体である請求項1に記載のアスファルト組成物、
3.成分(a)が、官能基を有する原子団が結合している変性水添共重合体である請求項1に記載のアスファルト組成物、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアスファルト組成物は、軟化点、伸度及び弾性率が高く、また高温貯蔵安定性に優れる。そして、低配合量の水添共重合体を含有させた場合でも、著しく高い軟化点と弾性率を有するアスファルト組成物が得られることから、高価な改質ポリマーの使用を低減することが可能となると同時に溶融粘度も高くならないため、取扱い性が優れる。さらに、高温貯蔵安定性をはじめ、耐熱性、耐候性等が優れていることから、長期の高温貯蔵が可能となる等の効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明で使用する水添共役ジエン系共重合体(a)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添共重合体(以下、しばしば「ベース非水添共重合体」と称する)を水添して得られるものである。本発明の水添共役ジエン系共重合体は、ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロック(A)及び、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体ブロックを水添して得られる少なくとも1つの水添共重合体ブロック(B)を包含してなる。
本発明で使用する水添共役ジエン系共重合体(a)におけるビニル芳香族単量体単位の含有量は、水添共重合体に対して30重量%を越え、50重量%以下である。水添共役ジエン系共重合体のビニル芳香族単量体単位の含有量が上記の範囲にあるので、軟化点、弾性率の優れたアスファルト組成物が得られる。軟化点、弾性率、伸度等のバランスの点からは、ビニル芳香族単量体単位の含有量は、好ましくは35重量%を越え、48重量%以下である。
【0011】
ビニル芳香族単量体単位の水添共役ジエン系共重合体に対する含有率は、ビニル芳香族単量体単位のベース非水添共重合体に対する含有率とほぼ等しいので、ビニル芳香族単量体単位の水添共重合体に対する含有率は、ベース非水添共重合体に対する含有率として求める。ビニル芳香族単量体単位の水添共役ジエン系共重合体に対する含有率は、ベース非水添共重合体を検体として、紫外分光光度計を用いて測定する。
本発明で使用する水添共役ジエン系共重合体(a)において、重合体ブロック(A)の含有量は水添共重合体に対して5〜40重量%である。水添共役ジエン系共重合体の重合体ブロック(A)の含有量が上記範囲にあるので、軟化点の高いアスファルト組成物が得られる。アスファルト組成物の軟化点、高温貯蔵安定性の点で、好ましくは8〜35重量%、更に好ましくは10〜35重量%である。特に、高配合でより高い軟化点の組成物を得るには、重合体ブロック(A)の含有量は、多い方が好ましい。
【0012】
本発明において、重合体ブロック(A)の水添共役ジエン系共重合体に対する含有率は、重合体ブロック(A)のベース非水添共重合体に対する含有率とほぼ等しいので、重合体ブロック(A)の水添共重合体に対する含有率は、重合体ブロック(A)のベース非水添共重合体に対する含有率として求める。具体的には、四酸化オスミウムを触媒としてベース非水添共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法、以下、しばしば「四酸化オスミウム分解法」と称する)で求めたビニル芳香族重合体ブロック成分の重量(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求める。
【0013】
ビニル芳香族重合体ブロック(A)の含有量(重量%)
=(ベース非水添共重合体中のビニル芳香族重合体ブロック(A)の重量/ベース非水添共重合体の重量)×100。
なお、重合体ブロック(A)の水添共役ジエン系共重合体に対する含有率を直接測定する場合には、水添共重合体を検体として、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて行うことができる(Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法;以後、「NMR法」と称する)。
【0014】
なお、上記四酸化オスミウム分解法によって求めた重合体ブロック(A)の含有率(「Os値」と称する)と、上記NMR法によって求めた重合体ブロック(A)の含有率(「Ns値」と称する)には、相関関係がある。本発明者らが種々の共重合体を用いて検討した結果、その関係は次の式で表されることが分かった。
Os値=−0.012(Ns値)+1.8(Ns値)−13.0
従って、本発明においてNMR法によって重合体ブロック(A)の水添共重合体に対する含有率(Ns値)を求めた場合には、上記式に基づいてNs値をOs値に換算する。
本発明で使用される非水添ランダム重合体ブロックの共役ジエン部分のビニル結合量は、5〜45重量%である。非水添ランダム重合体ブロックの共役ジエン部分のビニル結合量が上記範囲にあることにより、軟化点、伸度、弾性率等のアスファルト特性バランスが良好なアスファルト組成物が得られる。アスファルト組成物の特性バランスの点からは、本発明で使用する非水添ランダム共重合体ブロック中の共役ジエン部分のビニル結合量は、好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは15〜35重量%である。
【0015】
上記非水添ランダム共重合体における共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができる。上記ビニル結合量は、ベース非水添共重合体を検体として赤外分光光度計を用いて測定される。
本発明で使用される水添共役ジエン系共重合体(a)のMFR(L)は、0.05〜10である。水添共役ジエン系共重合体のMFRが上記範囲にあることにより、軟化点等のアスファルト特性が良好で、且つ取り扱い性(低粘度)に優れたアスファルト組成物が得られる。アスファルト特性と取り扱い性とのバランスの点からは、本発明で使用する水添共役ジエン系共重合体のMFR(L)は、好ましくは0.1〜5、更に好ましくは0.2〜2である。
【0016】
本発明で使用される水添共役ジエン系共重合体(a)において、分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)は、好ましくは10以下、さらに好ましくは1.01〜8、特に好ましくは1.1〜5である。取り扱い性を重視する場合、好ましくは1.1〜3である。
水添共役ジエン系共重合体の重量平均分子量はベース非水添共重合体の重量平均分子量とほぼ等しいので、水添共重合体の重量平均分子量はベース非水添共重合体の重量平均分子量として求める。ベース非水添共重合体の重量平均分子量は、分子量が既知の市販の標準単分散ポリスチレンに関して得た検量線を使用して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求める。水添共役ジエン系共重合体の数平均分子量も同様にして求める。分子量分布は、重量平均分子量の数平均分子量に対する比として、計算で求める。
【0017】
本発明で使用される水添共役ジエン系共重合体(a)は共役ジエン単量体単位とビニル芳香族化合物単量体単位とを含む非水添共重合体(即ち、ベース非水添共重合体)を水添して得られる。水添共重合体の該共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率は、60%以上である。水添共重合体の水添率は、アスファルト組成物の軟化点、弾性率、高温貯蔵安定性の点から、好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上、特に好ましくは90%以上である。
なお、水添共重合体におけるビニル芳香族単量体単位の二重結合の水添率に関しては特に限定はないが、水添率は好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。
【0018】
水添共役ジエン系共重合体における上記水添率は、核磁気共鳴装置を用いて測定することができる。
本発明で使用される水添共役ジエン系共重合体(a)は、ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロック(A)を少なくとも2つ有する水添共役ジエン系共重合体である。重合体ブロック(A)を2つ以上有する場合、アスファルト組成物の軟化点及び弾性率の高いものが得られる。
上記のように、水添共重合体ブロック(B)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体ブロックを水添して得られる。上記非水添ランダム共重合体における共役ジエン単量体単位/ビニル芳香族単量体単位重量比に関しては、特に限定はない。
【0019】
上記のように、水添共重合体ブロック(B)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体ブロックを水添して得られる。
本発明で使用する共役ジエン系共重合体(a)の構造に関しては、いかなる構造のものでも使用できる。本発明の水添共重合体の一態様として、少なくとも1個の水添共重合体ブロック(B)及び少なくとも2個の重合体ブロック(A)を包含する水添共重合体が挙げられるが、このような水添共重合体の例として、下記式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
【0020】
(A−B)n+1、 A−(B−A)
B−(A−B)n+1
[(A−B)]−X、 [(B−A)−B]−X、
[(A−B)−A]−X、 [(B−A)n+1]−X
(上記式において、各Aはそれぞれ独立してビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックを表す。各Bはそれぞれ独立して共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体を水添して得られる水添共重合体ブロックを表す。各nはそれぞれ独立して1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。各mはそれぞれ独立して2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。各Xはそれぞれ独立してカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を表す。)
そして、この中でもA−B−A構造が軟化点、伸度、弾性率等のアスファルト特性バランスが優れていることから特に好ましい。
【0021】
本発明で使用される水添共役ジエン系共重合体(a)において、非水添ランダム共重合体を水添して得られる水添共重合体ブロックB中のビニル芳香族単量体単位は、均一に分布していてもよいし、テーパー状に分布していてもよい。ここで、テーパー構造とは、B中のポリマー鎖に沿って、ビニル芳香族単量体単位の含有量が漸増する構造を意味する。
ブロックBの重合開始直後の共重合体中のビニル芳香族量をS1、重合途中、例えば導入した単量体の1/2が重合した時点での共重合体中のビニル芳香族量をS2、重合完了後の共重合体中のビニル芳香族量をS3とした場合、S2/S1>1 且つ S3/S2>1の関係が成り立つ構造である。そして、テーパー構造のブロックBを有する水添共役ジエン系共重合体が、アスファルト組成物の軟化点の点で好ましい。
【0022】
また、水添共重合体ブロックBには、ビニル芳香族単量体単位が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。また水添共重合体ブロックBには、ビニル芳香族単量体単位含有量が異なるセグメントが複数個存在していてもよい。
本発明で使用される水添共役ジエン系共重合体は、上記式で表される構造を有するものの任意の混合物であってもよい。
【0023】
本発明で用いる水添共役ジエン系共重合体(a)は、得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−20〜80℃の範囲に水添共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しないことが好ましい。ここで、「−20〜80℃の範囲に水添共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない」とは、この温度範囲において水添共重合体ブロック(B)の結晶化に起因するピークが現れないか、または、結晶化に起因するピークが認められるが、その結晶化による結晶化ピーク熱量が3J/g未満、好ましくは2J/g未満、更に好ましくは1J/g未満、特に好ましくは結晶化ピーク熱量が無いことを意味する。示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて−20〜80℃の範囲に水添重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない水添共役ジエン系共重合体は、アスファルト組成物にした場合、特に高温貯蔵安定性と伸度が良好である。上記のような−20〜80℃の範囲に水添共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない水添共重合体は、後述するようなビニル結合量調整剤や、共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整するための、後述するような調整剤を用いて後述するような条件下で重合反応を行うことによって得られる非水添共重合体を水添することによって得られる。
【0024】
結晶化ピーク温度及び結晶化ピーク熱量は、示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
本発明の水添共役ジエン系共重合体(a)において、共役ジエンは1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。共役ジエンの例として、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(即ちイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらのうち特に好ましいのは1,3−ブタジエン及びイソプレンである。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
また、ビニル芳香族化合物の例として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンがあげられる。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0025】
上記のように、本発明で用いる水添共役ジエン系共重合体(a)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添共重合体を水添して得られる。該非水添共重合体の製造方法については特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてアニオンリビング重合により製造することができる。炭化水素溶媒の例として、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンなどの脂環式炭化水素類;及びベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。
【0026】
重合開始剤の例としては、共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対してアニオン重合活性を有する脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。好適な有機アルカリ金属化合物の例としては、炭素数1から20の脂肪族および芳香族炭化水素リチウム化合物であり、1分子中に少なくとも1個のリチウムを含む化合物(モノリチウム化合物、ジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物など)が挙げられる。具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムとの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。さらに、米国特許第5,708,092号、英国特許第2,241,239号、米国特許第5,527,753号等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
【0027】
本発明において、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合する際に、重合体に組み込まれる共役ジエン単量体単位に起因するビニル結合(1,2ビニル結合または3,4ビニル結合)の量の調整や共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整するために、調整剤として第3級アミン化合物またはエーテル化合物を添加することができる。
第3級アミン化合物の例として、式RN(ただし、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基または第3級アミノ基を有する炭化水素基である)で表される化合物が挙げられる。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0028】
エーテル化合物の例としては、直鎖状エーテル化合物および環状エーテル化合物が挙げられる。直鎖状エーテル化合物の例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等の、エチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等の、ジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。また、環状エーテル化合物の例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテルが挙げられる。
【0029】
本発明において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。重合温度は、通常0〜180℃、好ましくは30〜150℃である。重合に要する時間は他の条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1〜10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体及び溶媒を液相に維持するのに充分な圧力の範囲であれば特に限定はない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物(水、酸素、炭酸ガスなど)が混入しないように留意する必要がある。
【0030】
本発明において、前記の重合が終了した時点で2官能以上のカップリング剤を用いてカップリング反応を行うこともできる。2官能以上のカップリング剤には特に限定はなく、公知のものを用いることができる。2官能性のカップリング剤の例として、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類が挙げられる。3官能以上の多官能カップリング剤の例として、3価以上のポリアルコール類;エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物;式R4−nSiX(ただし、各Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基を表し、各Xはそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、nは3または4を表す)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えばメチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物;式R4−nSnX(ただし、各Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基を表し、各Xはそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、nは3または4を表す)で表されるハロゲン化錫化合物、例えばメチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も多官能カップリング剤として使用できる。
【0031】
本発明で使用する水添共役ジエン系共重合体(a)において、官能基を有する原子団が少なくとも1つ結合している変性水添共役ジエン系共重合体を使用することもできる。官能基を有する原子団としては、例えば水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシシラン基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。水添共役ジエン系共重合体は、共役ジエン系共重合体の重合終了時にこれらの官能基含有原子団を形成もしくは含有する化合物を反応させることにより得られる変性共役ジエン系共重合体を水添することにより得られる。
本発明で使用できる変性水添共役ジエン系共重合体において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性水添共役ジエン系共重合体が好ましい。
【0032】
本発明において、上記官能基を有する化合物としては、例えば特公平4−39495号公報(米国特許第5,115,035号に対応)に記載された末端変性処理剤を用いることができる、具体的には、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε−カプロラクトン、4−メトキシベンゾフェノン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0033】
本発明で使用できる変性水添共役ジエン系共重合体は、有機リチウム化合物を重合触媒として上述のような方法で得た共役ジエン系重合体のリビング末端に、官能基を形成もしくは含有する変性剤を付加反応させることにより、共重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性共役ジエン系共重合体が得られ、これに水素を添加することにより変性水添共役ジエン系共重合体を得ることができる。変性水添共役ジエン系共重合体を得る他の方法として、共役ジエン系共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加した重合体に官能基含有の変性剤を付加反応させる方法が上げられる。後者の場合、共重合体の水添物を得た後にメタレーション反応させてから、変性剤を反応させて変性水添共役ジエン系共重合体を得ることもできる。
【0034】
本発明で使用できる変性水添共役ジエン系共重合体においては、上記のいずれの変性方法においても、反応温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜120℃である。変性反応に要する時間は他の条件によって異なるが、好ましくは24時間以内であり、特に好適には0.1〜10時間である。
変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般に水酸基やアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。
【0035】
本発明で使用する水添共役ジエン系共重合体を得るために使用する水添触媒としては、特に制限はされない。従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニュウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭63−4841号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0036】
本発明で使用する水添共役ジエン系共重合体において、水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
上記のようにして得られた水添共役ジエン系共重合体の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、水添重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば水添後の反応液にアセトンまたはアルコール等の水添共重合体等に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接共重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、本発明の水添共役ジエン系共重合体には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0037】
次に、本発明に使用される成分(b)のアスファルトに関して説明する。
本発明で用いることができるアスファルトの例としては、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、または天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したものなどを挙げることができ、その主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものである。具体的にはストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤などを使用することができる。これらは混合して使用しても良い。本発明において好ましいアスファルトは、針入度(JIS−K 2207によって測定)が30〜300、好ましくは40〜200、更に好ましくは45〜150のストレートアスファルトである。本発明のアスファルト組成物において、水添共役ジエン系共重合体成分(a)の配合割合は、アスファルト100重量部に対して0.5〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは2〜20重量部である。
【0038】
本発明においては、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、スラッグウール、ガラス繊維などの無機充填剤、カーボンブラック、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載されたものが挙げられる。添加剤の量に関しては特に制限はなく、適宜選択することができるが、通常、50重量部以下である。
【0039】
本発明のアスファルト組成物の製造方法に関しては、特に限定はない。また、水添共役ジエン系共重合体及びアスファルトの混合物を攪拌する際の条件に関しても特に制限はないが、160〜200℃(通常は、180℃前後)の温度で行なうことが好ましく、攪拌時間は好ましくは30分〜6時間、更に好ましくは2〜3時間である。攪拌速度に関しては、用いる装置により適時選択すればよいが、通常、100〜8,000rpmで行なう。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において、水添共役ジエン系共重合体の特性、アスファルト組成物の物性の測定等は、次のようにして行った。
【0040】
1.各種共重合体
1−1)スチレン含有量
水添前の共重合体を使用し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
1−2)スチレン重合体ブロック含有量
水添前の共重合体を使用し、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。共重合体の分解にはオスミウム酸0.1g/125ml第3級ブタノール溶液を用いた。
1−3)ビニル結合含量
水添前の共重合体を使用し、赤外分光光度計(装置名:FT/IR−230;日本分光社製)を用い、ハンプトン法により算出した。
1−4)MFR(メルトフローレート:L条件)
水添共役ジエン系共重合体を使用し、メルトインデクサー(L247;TECHNOL SEVENCO.,LTD製)を用い、JIS K7210に準じた方法により算出した。なお、L条件とは試験温度が230℃、試験荷重が2.16kgfであり、測定値の単位はg/10分間である。
1−5)分子量分布
水添前の共重合体を使用し、GPC〔装置は、ウォーターズ製〕で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量(ポリスチレン換算分子量)と数平均分子量の比から分子量分布を求めた。
1−6)水添率
水添率は、核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX−400)で測定した。
【0041】
2.水添触媒の調製
水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加攪拌して室温で保存した。
3.水添ジエン系共重合体の作成
作成した共重合体の構造を表1にまとめた。
【0042】
<ポリマー1>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、共重合を以下の方法で行った。
シクロヘキサン10重量部を反応器に仕込んで温度70℃に調整した後、n−ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入したブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の重量に対して0.125重量%、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下TMEDAと称する)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.4モル添加し、その後モノマーとしてスチレン10重量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22重量%)を約3分間かけて添加し、反応器内温を約70℃に調整しながら30分間反応させた。
【0043】
次に、ブタジエン58重量部とスチレン22重量部とを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22重量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その後、30分間反応させた。この間、反応器内温は約70℃になるように調整した。なお、反応終了後にサンプリングしたポリマー溶液を解析したところ、ブタジエンの重合転化率;100%、スチレンの重合転化率;100%、ポリマー中のスチレン含量は35.6重量%であった<ブロックB部のスチレン含量は27.5重量%となる>。
その後、更にモノマーとしてスチレン10重量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22重量%)を約3分間かけて添加し、反応器内温を約70℃に調整しながら30分間反応させ、共重合体を得た。得られた共重合体のスチレン含有量は42重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は20重量%、ブタジエン部のビニル結合量は26重量%、分子量分布は1.1であった。
【0044】
次に、得られた共重合体に、上記水添触媒を共重合体の重量に対してチタンとして100重量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の重量に対して0.3重量%添加し、水添共重合体(以下、ポリマー1と称する)を得た。ポリマー1のMFR(L)は0.7であり、水添率は98%であった。
【0045】
<ポリマー2>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.10重量%とし、1段目に供給するスチレンを7.5重量部に、2段目に供給するブタジエンを59重量部、スチレンを26重量部に、また3段目に供給するスチレンを7.5重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は41重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は15重量%、ブタジエン部のビニル結合量は25重量%、分子量分布は1.2であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー2と称する)を得た。ポリマー2のMFR(L)は0.4であり、水添率は98%であった。
【0046】
<ポリマー3>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.10重量%とし、1段目に供給するスチレンを4重量部に、2段目に供給するブタジエンを59重量部、スチレンを33重量部に、また3段目に供給するスチレンを4重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は41重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は8重量%、ブタジエン部のビニル結合量は24重量%、分子量分布は1.2であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー3と称する)を得た。ポリマー3のMFR(L)は3.8であり、水添率は97%であった。
【0047】
<ポリマー4>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.16重量%とし、1段目に供給するスチレンを18.5重量部に、2段目に供給するブタジエンを52重量部、スチレンを11重量部に、また3段目に供給するスチレンを18.5重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は48重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は37重量%、ブタジエン部のビニル結合量は30重量%、分子量分布は1.2であった。
次に、得られた共重合体に、上記水添触媒を共重合体の重量に対してチタンとして85重量ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー4と称する)を得た。ポリマー4のMFR(L)は2.0であり、水添率は70%であった。
【0048】
<ポリマー5>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.12重量%とし、1段目に供給するスチレンを13重量部に、2段目に供給するブタジエンを56重量部、スチレンを18重量部に、また3段目に供給するスチレンを13重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は44重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は26重量%、ブタジエン部のビニル結合量は27重量%、分子量分布は1.1であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー5と称する)を得た。ポリマー5のMFR(L)は0.1であり、水添率は96%であった。
【0049】
<ポリマー6>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.13重量%とし、1段目に供給するスチレンを10重量部に、2段目に供給するブタジエンを75重量部、スチレンを5重量部に、また3段目に供給するスチレンを10重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は25重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は20重量%、ブタジエン部のビニル結合量は35重量%、分子量分布は1.1であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー6と称する)を得た。ポリマー6のMFR(L)は1.0であり、水添率は98%であった。
【0050】
<ポリマー7>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.13重量%とし、1段目に供給するスチレンを12重量部に、2段目に供給するブタジエンを44重量部、スチレンを32重量部に、また3段目に供給するスチレンを12重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は56重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は24重量%、ブタジエン部のビニル結合量は23重量%、分子量分布は1.1であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー7と称する)を得た。ポリマー7のMFR(L)は0.8であり、水添率は93%であった。
【0051】
<ポリマー8>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.085重量%とし、1段目に供給するスチレンを2重量部に、2段目に供給するブタジエンを59重量部、スチレンを37重量部に、また3段目に供給するスチレンを2重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は41重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は4重量%、ブタジエン部のビニル結合量は27重量%、分子量分布は1.1であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー8と称する)を得た。ポリマー8のMFR(L)は1.0であり、水添率は99%であった。
【0052】
<ポリマー9>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.16重量%とし、1段目に供給するスチレンを22.5重量部に、2段目に供給するブタジエンを52重量部、スチレンを3重量部に、また3段目に供給するスチレンを22.5重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は48重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は45重量%、ブタジエン部のビニル結合量は20重量%、分子量分布は1.2であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー9と称する)を得た。ポリマー9のMFR(L)は2.0であり、水添率は98%であった。
【0053】
<ポリマー10>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、TMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加する以外は、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.115重量%とし、1段目に供給するスチレンを10重量部に、2段目に供給するブタジエンを72重量部、スチレンを8重量部に、また3段目に供給するスチレンを10重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は28重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は20重量%、ブタジエン部のビニル結合量は55重量%、分子量分布は1.1であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー10と称する)を得た。ポリマー10のMFR(L)は1.1であり、水添率は97%であった。
【0054】
<ポリマー11>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.10重量%とし、1段目に供給するスチレンを10重量部に、2段目に供給するブタジエンを65重量部、スチレンを15重量部に、また3段目に供給するスチレンを10重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は35重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は20重量%、ブタジエン部のビニル結合量は15重量%、分子量分布は1.1であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー11と称する)を得た。ポリマー6のMFR(L)は0.02であり、水添率は96%であった。
【0055】
<ポリマー12>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.145重量%とし、1段目に供給するスチレンを9重量部に、2段目に供給するブタジエンを60重量部、スチレンを22重量部に、また3段目に供給するスチレンを9重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は40重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は18重量%、ブタジエン部のビニル結合量は35重量%、分子量分布は1.1であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー12と称する)を得た。ポリマー12のMFR(L)は15であり、水添率は97%であった。
【0056】
<ポリマー13>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.14重量%とし、1段目に供給するスチレンを14重量部に、2段目に供給するブタジエンを70重量部、スチレンを2重量部に、また3段目に供給するスチレンを14重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は30重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は28重量%、ブタジエン部のビニル結合量は20重量%、分子量分布は1.1であった。
次に、得られた共重合体に、上記水添触媒を共重合体の重量に対してチタンとして75重量ppm添加する以外は、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー13と称する)を得た。ポリマー13のMFR(L)は2.0であり、水添率は50%であった。
【0057】
<ポリマー14>
反応器に供給するモノマー等の量を変え、ポリマー1と同様に共重合体を得た。
n−ブチルリチウムの供給量を0.14重量%とし、1段目に供給するスチレンを31重量部に、2段目に供給するブタジエンを60重量部、スチレンを9重量部に変えること以外は、同様の方法で重合を行った。得られた共重合体のスチレン含有量は40重量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は31重量%、ブタジエン部のビニル結合量は20重量%、分子量分布は1.2であった。
次に、ポリマー1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(以下、ポリマー14と称する)を得た。ポリマー14のMFR(L)は1.5であり、水添率は95%であった。
【0058】
4.アスファルト組成物の調製
実施例1〜5、比較例1〜9において、下記の要領でアスファルト組成物を製造した。
750ミリリットルの金属缶にストレートアスファルト60−80〔日本国 新日本石油(株)製〕を500g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸した。次に、溶融状態のアスファルトの中に所定量の水添ジエン系共重合体を攪拌しながら少量づつ投入した。完全投入後5000rpmの回転速度で90分間攪拌してアスファルト組成物を調製した。
【0059】
5.アスファルト組成物の特性
5−1)軟化点(リング&ボール法)
JIS−K 2207に準じて、組成物の軟化点を測定した。規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。
5−2)溶融粘度
160℃でブルックフィールド型粘度計により測定した。
5−3)針入度
JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に規定の針が5秒間に進入する長さを測定した。
5−4)伸度
JIS−K 2207に準じ、試料を形枠に流し込み、規定の形状にした後、恒温水浴内で15℃に保ち、次に試料を5cm/minの速度で引っ張ったとき、試料が切れるまでに伸びた距離を測定した。
5−5)弾性率
ダイナミックシェアレオメーターによる動的粘弾性を測定し、得られた複素弾性率(G)と損失正接(tanδ)からバインダのわだち掘れに対する評価指標として弾性率=G/tanδを求めた。なお、測定装置、測定条件は以下の通り。
・測定装置:Rheometric Scientific社製 ARES
・測定条件
測定温度:60℃
角速度:10rad/sec
測定モード:パラレルプレート(直径50mmφ)
サンプル量:2g
5−6)高温貯蔵安定性(分離特性)
アスファルト組成物製造直後、内径50mm、高さ130mmのアルミ缶に、アスファルト組成物をアルミ缶の上限まで流し込み、180℃のオーブン中で、24時間加熱した。その後、アルミ缶を取り出し自然冷却させた。次に室温まで下がったアスファルト組成物の下端から4cm、上端から4cmを採取し、それぞれ上層部と下層部の軟化点を測定し、その軟化点差を高温貯蔵安定性の尺度とした。軟化点差が小さいほど、高温貯蔵安定性は良好である。
【実施例】
【0060】
本発明を実施例に基づいて説明する。
(実施例1〜3)
水添共重合体としてポリマー1,2,3を用い、表2に記載の材料及び配合処方(共重合体は3.5%)に従い、アスファルト組成物を得た。その特性を表2に示す。
(比較例1〜5)
水添共重合体としてポリマー6〜9、14を用い、表3に記載の材料及び配合処方(共重合体は3.5%)に従い、アスファルト組成物を得た。その特性を表3に示す。
(実施例4、5、比較例6〜9)
水添共重合体としてポリマー4、5、10〜13を用い、表4に記載の材料及び配合処方(共重合体は8.0%)に従い、アスファルト組成物を得た。その特性を表4に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のアスファルト組成物は、道路舗装用、ルーフィング・防水シート用、シーラントの分野で利用でき、低配合量の水添共重合体を含有させた場合でも、著しく高い軟化点と弾性率を有し、溶融粘度も高くなく、取扱い性の優れるアスファルト組成物が得られることから、特に道路舗装用の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添共役ジエン系共重合体(a)0.5〜50重量部及びアスファルト(b)100重量部を包含するアスファルト組成物であり、
成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロック(A)及び共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体ブロックを水添して得られる少なくとも1つの水添共重合体ブロック(B)を包含してなり、
次の特性(1)〜(6)を有することを特徴とする水添共役ジエン系共重合体。
(1)ビニル芳香族単量体単位の含有量が、成分(a)に対して30重量%を越え、50重量%以下であり、
(2)成分(A)の含有量が、成分(a)に対して5〜40重量%であり、
(3)非水添ランダム共重合体ブロック中の共役ジエン部分のビニル結合量が,5〜45重量%であり、
(4)成分(a)のMFR(メルトフローレート:L条件)が、0.05〜10であり、
(5)成分(B)の二重結合の水添率が、60%以上であり、
(6)成分(a)が、成分(A)を少なくとも2つ有する水添共役ジエン系共重合体である。
【請求項2】
成分(a)のMFR(L条件)が0.2〜2であり、成分(A)が成分(a)に対して10〜30重量%である水添共役ジエン系共重合体である請求項1に記載のアスファルト組成物。
【請求項3】
成分(a)が、官能基を有する原子団が結合している変性水添共重合体である請求項1に記載のアスファルト組成物。