説明

アスファルト組成物

【課題】軟化点及び弾性率が高く機械的強度に優れ、それらと溶融粘度とのバランスも良好なアスファルト組成物を得る。
【解決手段】下記(1)〜(4)の条件を満たす(イ)ブロック共重合体3〜20質量%と、
(1)2個以上のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、1個以 上の共役ジエンを含有する重合体ブロック(B)とを有する。
(2)全ビニル芳香族化合物の含有量が20〜60質量%である。
(3)重量平均分子量が50,000〜500,000である。
(4)前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が、15 質量%〜45質量%である。
(ロ)アスファルト80〜97質量%と、
を含むアスファルト混合物100質量部と、
(ハ)二酸化珪素及び/又は珪酸塩を含有する無機充填剤0.3〜10質量部と、
(ニ)アルコキシ基を2個以上含有するシラン化合物0.1〜2.0質量部とを、含有するアスファルト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アスファルト及び所定のポリマーを含有するアスファルト組成物は、道路舗装、遮音シート、アスファルトルーフィング等の用途に広く利用されている。
このようなアスファルト組成物には、用途に応じた性能を付加するべく、種々のポリマーが含有されている。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ゴムラテックス、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とからなるブロック共重合体等が挙げられる。
【0003】
一方、近年、道路舗装用途においては、道路通行車両の増大、車両の高速化といった事情に伴って、優れた強度、耐摩耗性を有するアスファルト組成物の要求が高まっている。また、アスファルトルーフィング用途においても、経年や気温の変化による変形や亀裂を防止するため、耐熱性が高く、優れた強度を有するアスファルト組成物の要求が高まっている。このため、軟化点がより高く、高温での弾性率や機械的強度が高いアスファルト組成物が必要とされてきている。
【0004】
かかる要求に対応し、従来から種々の熱可塑性エラストマーを用いたアスファルト組成物が提案され、特にアスファルトとの親和性、物性改質に優れるスチレン系エラストマーを用いたアスファルト組成物が数多く提案されている(例えば、特許文献1及至4参照。)。
【0005】
特許文献1には、ビチューメンとスチレン−ブタジエンブロック共重合体、硫黄からなるアスファルト組成物の製造方法が提案されている。
特許文献2には、アスファルトとスチレン−ブタジエンブロック共重合体、分散剤、鉱油、シリカ及び/又はカーボンブラックからなる道路舗装用のアスファルト組成物が提案されている。
【0006】
特許文献3には、アスファルトと共役ジエン系共重合体、乳化剤、シランカップリング剤、エポキシ樹脂からなるアスファルト組成物が提案されている。
特許文献4には、ブローンアスファルトとスチレン−ブタジエン共重合体、はく離防止剤、再生添加剤、無機質粒子からなるアスファルト組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭57−24385号公報
【特許文献2】特開2003−277613号公報
【特許文献3】特開2010−174229号公報
【特許文献4】特開2009−126878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来提案されているアスファルト組成物は、いずれも軟化点、弾性率、機械的強度、及びそれらと溶融粘度とのバランスにおいて、未だ十分な特性を有しておらず改善すべき課題を有している。
【0009】
そこで、本発明においては、軟化点及び弾性率が高く、機械的強度に優れ、それらと溶融粘度とのバランスも良好なアスファルト組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ビニル芳香族重合体ブロックと共役ジエン化合物を含有する重合体ブロックからなるブロック共重合体とシリカと特定の構造を持つシラン化合物とをアスファルトに配合したアスファルト組成物が、軟化点、弾性率が高く機械的強度に優れ、それらと溶融粘度とのバランスも良好であり、道路舗装用、アスファルトルーフィング用として使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
〔1〕
(イ)ビニル芳香族化合物と共役ジエンからなるブロック共重合体であり、下記(1)〜 (4)の条件を満たすブロック共重合体3〜20質量%と、
(1)2個以上のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、1個以 上の共役ジエンを含有する重合体ブロック(B)とを有する。
(2)全ビニル芳香族化合物の含有量が20〜60質量%である。
(3)重量平均分子量が50,000〜500,000である。
(4)前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が、15 質量%〜45質量%である。
(ロ)アスファルト80〜97質量%と、
を含むアスファルト混合物100質量部と、
(ハ)結晶構造内に二酸化珪素及び/又は珪酸塩を含有する無機充填剤0.3〜10質量部と、
(ニ)1種以上のアルコキシ基を2個以上含有するシラン化合物0.1〜2.0質量部
と、
を、含有するアスファルト組成物。
〔2〕
前記(イ)ブロック共重合体の全共役ジエン中の平均ビニル結合量が30質量%以下である前記〔1〕に記載のアスファルト組成物。
〔3〕
前記(ニ)シラン化合物が、アミノ基を含有する前記〔1〕又は〔2〕に記載のアスファルト組成物。
〔4〕
前記(ニ)シラン化合物が、イソシアネート基を含有する前記〔1〕又は〔2〕に記載のアスファルト組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟化点及び弾性率が高く機械的強度に優れ、それらと溶融粘度とのバランスも良好なアスファルト組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
〔アスファルト組成物〕
本実施形態のアスファルト組成物は、
(イ)ビニル芳香族化合物と共役ジエンとからなるブロック共重合体であり、下記(1) 〜(4)の条件を満たすブロック共重合体3〜20質量%と、
(1)2個以上のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、1個以 上の共役ジエンを含有する重合体ブロック(B)とを有する。
(2)全ビニル芳香族化合物の含有量が20〜60質量%である。
(3)重量平均分子量が50,000〜500,000である。
(4)前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が、15 質量%〜45質量%である。
(ロ)アスファルト80〜97質量%と、
を含むアスファルト混合物100質量部と、
(ハ)結晶構造内に二酸化珪素及び/又は珪酸塩を含有する無機充填剤0.3〜10質量部と、
(ニ)1種以上のアルコキシ基を2個以上含有するシラン化合物0.1〜2.0質量部
と、
を、含有する。
【0015】
((イ)ブロック共重合体)
本実施形態のアスファルト組成物を構成する(イ)ブロック共重合体(以下、ブロック共重合体(イ)と記載することもある。)は、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとからなる共重合体である。
先ず、ビニル芳香族化合物について説明する。
前記ビニル芳香族化合物は、ビニル基を有する芳香族化合物であり、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、特に、価格と機械強度とのバランスの観点から、スチレンが好ましい。これらの単量体は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
次に、共役ジエンについて説明する。
共役ジエンは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、中でも1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、本実施形態のアスファルト組成物の熱安定性の観点から、1,3−ブタジエンがより好ましい。
これらの単量体は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
ブロック共重合体(イ)は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)を2個以上有している。なお本明細書において、「主体とする」とは、重合体ブロック中、所定の単量体単位を50質量%以上含有することを意味し、60質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましい。
【0018】
ブロック共重合体(イ)は、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとからなる共重合体であって、ブロック共重合体(イ)中の全ビニル芳香族化合物の含有量は20〜60質量%であり、22〜57質量%であることが好ましく、24〜55質量%であることがより好ましい。
ブロック共重合体(イ)中の全ビニル芳香族化合物の含有量が上記範囲であると、後述する(ロ)アスファルトに対する溶解性が向上し、最終的に目的とするアスファルト組成物において優れた加工性、軟化点、弾性率、機械的強度が得られる。
ブロック共重合体(イ)中の全ビニル芳香族化合物の含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0019】
ブロック共重合体(イ)中におけるビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量は15質量%〜45質量%であり、17質量%〜43質量%が好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。
ブロック共重合体(イ)中におけるビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が上記範囲であると最終的に目的とするアスファルト組成物において優れた加工性、軟化点、弾性率、機械的強度が得られる。
ブロック共重合体(イ)中におけるビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量は、四酸化オスミウムを触媒として、共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法:以後「四酸化オスミウム法」と呼ぶ。)により測定できる。
また、ブロック共重合体(イ)中におけるビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法。以後「NMR法」と呼ぶ。)測定してもよい。
具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0020】
ブロック共重合体(イ)は、共役ジエンを含有する重合体ブロック(B)を1個以上有している。
ブロック共重合体(イ)は、当該ブロック共重合体(イ)の全共役ジエンを100質量%としたときの、平均ビニル結合量が30質量%以下である。
前記平均ビニル結合量は25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
ブロック共重合体(イ)の前記平均ビニル結合量が30質量%以上になると熱安定性が悪化し、アスファルト組成物の加工性が損なわれる。
前記ビニル結合量は、後述する第3級アミン化合物又はエーテル化合物等の、調整剤の使用により制御できる。
なお、本実施形態においては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合との合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を、ビニル結合量と呼ぶものとする。
ビニル結合量は、赤外分光光度計による測定(例えば、ハンプトン法)により測定でき、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0021】
ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量は、最終的に目的とするアスファルト組成物において、良好な加工性、軟化点、弾性率、機械的強度を得る観点から5万〜50万であり、6万〜47万が好ましく、7万〜45万がより好ましい。
ここで、ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求められる。
前記水添ブロック共重合体(イ)の分子量分布は、GPCによる測定により求められ、重量平均分子量と数平均分子量との比率により算出できる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定及び算出できる。
前記水添ブロック共重合体(イ)の分子量分布は10以下が好ましく、8以下がより好ましく5以下がさらに好ましい。
【0022】
ブロック重合体(イ)の構造については、特に制限されるものではなく、例えば、下記の一般式で表される構造を有するものが挙げられる。
A−(B−A)n、B−(A−B)m、(A−B)m、(A−B)m−X、(B−A)m−X
なお、上記各一般式において、Aはビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)であり、Bは共役ジエン化合物を含有する重合体ブロック(B)である。以下、それぞれ単にブロック(A)、ブロック(B)と言うこともある。
nは1以上の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。
mは2以上の整数であり、好ましくは2〜8の整数である。
Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を示す。
【0023】
ブロック共重合体(イ)中に、ブロック(A)、ブロック(B)がそれぞれ複数存在している場合、それらの分子量や組成等の構造は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、各ブロックの境界は、必ずしも明瞭に区別される必要はない。
【0024】
ブロック共重合体(イ)中のビニル芳香族化合物の分布は、特に限定されるものではなく、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状、凹状に分布していてもよい。
また、ビニル芳香族化合物の分布形式は、それぞれ複数個共存していてもよい。
さらに、ブロック共重合体(イ)中には、ビニル芳香族化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。
また、ブロック共重合体(イ)中の各ブロック(A)、ブロック(B)中のビニル結合単位の分布については特に限定されないが、分布があってもよい。ビニル結合の分布は、重合中に後述する調整剤を添加したり、重合中の温度を変化させたりすることにより制御できる。
【0025】
ブロック共重合体(イ)は、2個以上の重合体ブロック(A)を有する構造であり、これにより、目的とするアスファルト組成物において良好な加工性、耐熱性、弾性率、機械的強度が得られる。
具体的には、上記構造の中、A−(B−A)n、(A−B)m−Xが好ましい。
ブロック共重合体(イ)は、上記一般式で表す構造を有する共重合体の任意の混合物でもよい。
【0026】
((イ)ブロック共重合体の製造方法)
本実施形態のアスファルト組成物を構成する(イ)ブロック共重合体は、例えば、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてリビングアニオン重合を行うことにより得られる。
【0027】
前記炭化水素溶媒としては、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0028】
前記重合開始剤としては、一般的に、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンに対し、アニオン重合活性がある脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等の有機アルカリ金属化合物を使用できる。
例えば、炭素数1〜20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物が好ましく、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が適用できる。
具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムとの反応生成物、ジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。
さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書に開示されている有機アルカリ金属化合物も適用できる。
【0029】
また、前記重合開始剤として上述した有機アルカリ金属化合物を用いて、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとを共重合する際に、所定の調整剤を用いることにより、重合体に組み込まれる共役ジエンに起因するビニル結合(1,2又は3,4結合)の含有量や、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとのランダム共重合性を調整できる。
このような調整剤としては、例えば、第3級アミン化合物、エーテル化合物、金属アルコラート化合物が挙げられる。
調整剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記調整剤の第3級アミン化合物としては、一般式R123N(ここで、R1、R2、R3は炭素数1〜20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基を示す。)で表される化合物が適用できる。
例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N',N",N"−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N'−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0031】
前記調整剤のエーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物等が適用できる。
直鎖状エーテル化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。
環状エーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0032】
前記調整剤の金属アルコラート化合物としては、例えば、ナトリウム−t−ペントキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ペントキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
【0033】
前記重合開始剤として、上述した有機アルカリ金属化合物を用いて、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン重合体を重合する方法としては、従来公知の方法を適用できる。
例えば、バッチ重合、連続重合、あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。特に、耐熱性に優れた共重合体を得るためにはバッチ重合が好適である。
重合温度は0℃〜180℃が好ましく、30℃〜150℃がより好ましい。
重合時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1〜10時間である。
また、重合系の雰囲気としては、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
重合圧力は、上記温度範囲においてモノマー及び溶媒を液相に維持することができる圧力範囲に設定すればよく、特に限定されるものではない。
さらに、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が混入しないように留意する必要がある。
【0034】
また、前記重合工程の終了時に、2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行ってもよい。
2官能カップリング剤としては、従来公知のものを適用でき、特に限定されるものではない。
例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
また、3官能以上の多官能カップリング剤としては、従来公知のものを適用でき、特に限定されるものではない。例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA、1,3−ビス(N−N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の多価エポキシ化合物;一般式R4-nSiXn(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3〜4の整数を示す)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えば、メチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素及びこれらの臭素化物等;一般式R4-nnn(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3〜4の整数を示す)で表されるハロゲン化錫化合物、例えば、メチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の、多価ハロゲン化合物が挙げられる。
また、上記の他、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等を使用してもよい。
【0035】
ブロック共重合体(イ)は、官能基を有する原子団が結合した変性ブロック共重合体であってもよい。
前記「官能基を有する原子団」としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。
特に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が好ましい。
【0036】
変性ブロック共重合体は、例えば、アニオンリビング重合により、官能基を有する重合開始剤や官能基を有する不飽和単量体を用いて重合したり、リビング末端に官能基を形成もしくは含有する変性剤を付加反応させたりすることにより得られる。
前記変性剤としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、4−メトキシベンゾフェノン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N'−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0037】
その他の方法としては、ブロック共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加したブロック共重合体に官能基を有する変性剤を付加反応させることにより得られる。
なお、後者の方法の場合には、ブロック共重合体(イ)を得た後にメタレーション反応させてから、変性剤を反応させることにより、変性ブロック共重合体を作製することもできる。
【0038】
変性反応を行う温度は、0〜150℃が好ましく、20〜120℃がより好ましい。変性反応に要する時間は他の条件によって異なるが、24時間以内であることが好ましく、0.1〜10時間がより好ましい。
用いた変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般にアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、アミノ基等に変換できる。なお、このような変性共重合体においては、変性共重合体に、一部変性されていない共重合体が混在してもよい。
【0039】
また、上述した変性ブロック共重合体は、二次変性ブロック共重合体であってもよい。
二次変性ブロック共重合体は、変性ブロック共重合体に、当該変性ブロック共重合体の官能基と反応性を有する二次変性剤を反応させることにより得られる。
二次変性剤としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する変性剤が挙げられ、これらの官能基から選ばれる官能基を少なくとも2個有するものとする。
なお、官能基が酸無水物基である場合には、酸無水物基を1個具備するものであってもよい。
【0040】
上記のように、変性ブロック共重合体に二次変性剤を反応させる場合、変性ブロック共重合体に結合されている官能基1当量あたり、二次変性剤の使用量は0.3〜10モルが好ましく、0.4〜5モルがより好ましく、0.5〜4モルがさらに好ましい。
変性ブロック共重合体と二次変性剤とを反応させる方法については、公知の方法が適用でき、特に限定されるものではない。例えば、後述する溶融混練方法や、各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
二次変性剤としては、具体的には、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン等が好適である。
【0042】
また、ブロック共重合体(イ)は、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、その無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物でグラフト変性した変性ブロック共重合体であってもよい。
α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水マレイン酸イミド、アクリル酸又はそのエステル、メタアクリル酸又はそのエステル、エンド−シス−ビシクロ〔2,2,1〕−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、ブロック共重合体(イ)100質量部当たり、通常0.01〜20質量部であるものとし、好ましくは0.1〜10質量部である。
グラフト変性する場合の反応温度は100〜300℃が好ましく、120〜280℃がより好ましい。
グラフト変性する具体的な方法としては、例えば、特開昭62−79211号公報に記載の方法が適用できる。
【0043】
本実施形態のアスファルト組成物中におけるブロック共重合体(イ)の含有量は、後述するアスファルト(ロ)との合計量を100質量%としたとき、3〜20質量%であり、好ましくは4〜17質量%、より好ましくは5〜15質量部である。
ブロック共重合体(イ)の含有量を前記範囲とすることにより、本実施形態のアスファルト組成物は、溶解性、加工性が良好で、軟化点が高く、弾性率並びに機械的強度にも優れ、アスファルト特性のバランスが良好なものとなる。
【0044】
((ロ)アスファルト)
本実施形態のアスファルト組成物を構成する(ロ)アスファルトとしては、石油精製の際の副生成物(石油アスファルト)、又は天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの等をいずれも使用できる。
具体的には、針入度が30〜300のストレートアスファルトが好ましく、針入度60〜200のストレートアスファルトがより好ましい。
(ロ)アスファルトとしては、瀝青の中のセミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ等を前記ストレートアスファルトに混合して使用することができる。
なお、前記針入度は、JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に規定の針が5秒間に進入する長さを測定する。
(ロ)アスファルトの含有量は、上述したブロック共重合体(イ)との合計質量(100質量%)に対して80〜97質量%であり、好ましくは83〜96質量%、より好ましくは85〜95質量%である。
【0045】
((ハ)無機充填剤)
本実施形態のアスファルト組成物を構成する(ハ)無機充填剤は、結晶構造内に二酸化珪素及び/又は珪酸塩を含有する無機充填剤である。例えば、無水シリカ、含水シリカ、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、カオリン、珪藻土等が挙げられ、中でも無水シリカ、含水シリカ、タルクが価格と機械的強度に優れる点で好ましい。これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
無機充填剤(ハ)の含有量としては、ブロック共重合体(イ)とアスファルト(ロ)の合計(アスファルト混合物)の量100質量部に対し、0.3〜10質量部であり、好ましくは0.5〜8質量部であり、より好ましくは0.5〜7質量部である。この範囲における本実施形態のアスファルト組成物は、軟化点が高く、弾性率並びに機械的強度にも優れる。
【0046】
((ニ)シラン化合物)
本実施形態のアスファルト組成物を構成するシラン化合物(ニ)は、1種以上のアルコキシ基を2個以上含有するシラン化合物であり、有機官能基として1個以上のアミノ基又は1個以上のイソシアネート基を有することが好ましい。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、中でも3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが機械的強度に優れる点で好ましい。
シラン化合物(ニ)の含有量は、ブロック共重合体(イ)とアスファルト(ロ)の合計(アスファルト混合物)の量100質量部に対し0.1〜2.0質量部であり、好ましくは0.2〜1.8質量部であり、より好ましくは0.3〜1.5質量部である。この範囲における本実施形態のアスファルト組成物は、軟化点が高く、弾性率並びに機械的強度にも優れる。
【0047】
((ホ)その他の成分)
本実施形態のアスファルト組成物には、上述したブロック共重合体(イ)、アスファルト(ロ)、無機充填剤(ハ)、シラン化合物(ニ)の他、後述する各成分を添加することができる。
<粘着付与剤樹脂>
本実施形態のアスファルト組成物には、粘着付与剤樹脂を添加してもよい。
粘着付与剤樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等の公知の粘着付与性樹脂が挙げられる。
粘着付与剤樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
粘着付与剤樹脂の具体例としては、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。
粘着付与剤樹脂を用いることにより、本実施形態のアスファルト組成物において施工性及び弾性率の改良が図られる。
本実施形態のアスファルト組成物中における粘着付与剤樹脂の含有量は、上述したブロック共重合体(イ)を100質量部としたとき、好ましくは0〜200質量部、より好ましくは0〜100質量部の範囲で使用される。
上記範囲の含有量とすることにより、施工性及び弾性率の改良効果が確実に得られる。
【0048】
<軟化剤>
本実施形態のアスファルト組成物には、軟化剤を添加してもよい。
軟化剤としては、鉱物油系軟化剤又は合成樹脂系軟化剤のいずれも使用できる。
前記鉱物油系軟化剤としては、一般に、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。
なお、パラフィン系炭化水素の炭素原子数が全炭素原子中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、ナフテン系炭化水素の炭素原子が30〜45%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、また、芳香族系炭化水素の炭素原子が35%以上のものが芳香族系オイルと呼ばれている。
また、合成樹脂系軟化剤としては、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が好ましいものとして挙げられる。
軟化剤としては、ゴム用軟化剤であるパラフィン系オイルが好ましい。
軟化剤を含有させることにより、本実施形態のアスファルト組成物において、施工性の改良が図られる。
本実施形態のアスファルト組成物中の軟化剤の含有量は、軟化剤のブリード抑制や、本実施形態のアスファルト組成物において実用上十分な機械強度を確保する観点から、上述したブロック共重合体(イ)を100質量部としたとき、0〜100質量部であることが好ましく、0〜50質量部の範囲がより好ましく、0〜30質量部の範囲がさらに好ましい。
【0049】
<安定剤>
本実施形態のアスファルト組成物には、酸化防止剤、光安定剤等の各種安定剤を添加してもよい。
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
前記光安定剤としては、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0050】
<添加剤>
本実施形態のアスファルト組成物には、その他、必要に応じて、従来、アスファルト組成物に慣用されている各種添加剤を添加することができる。
例えば、炭酸カルシウム、鉱物質粉末、ガラス繊維等の充填剤や補強剤、鉱物質の骨材、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類、あるいは、アゾジカルボンアミド等の発泡剤、アタクチックポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及び本発明以外のスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン系ブロック共重合体等の合成ゴムが挙げられる。
【0051】
〔アスファルト組成物の製造方法〕
本実施形態のアスファルト組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の混合機、熱溶融釜、ニーダー等により加熱溶融混練し、均一混合する方法が挙げられる。
例えば、熱溶融釜に、アスファルト(ロ)を浸漬し、完全に溶融させ、ホモミキサー等の攪拌機で攪拌しながら、ブロック共重合体(イ)、無機充填剤(ハ)、シラン化合物(ニ)及びその他の所定の添加剤を添加し、その後、攪拌速度を上げ、混練することによりアスファルト組成物を製造できる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0053】
〔ブロック共重合体の構造の特定方法〕
<(1)ブロック共重合体(イ)のビニル芳香族化合物の含有量>
ブロック共重合体を用い、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
【0054】
<(2)ブロック共重合体(イ)のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量>
ブロック共重合体を用い、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。
ブロック共重合体(イ)の分解には、オスミウム酸0.1g/125mL第三級ブタノール溶液を用いた。
【0055】
<(3)ブロック共重合体(イ)中の共役ジエンのビニル結合量>
ブロック共重合体を用い、赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−230)を用いて測定した。
ブロック共重合体(イ)中の共役ジエンのビニル結合量はハンプトン法により算出した。
【0056】
<(4)ブロック共重合体(イ)の重量平均分子量>
GPC〔装置:LC−10(島津製作所製)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mm×30cm)〕により測定した。
溶媒はテトラヒドロフランを用いた。測定条件は温度35℃とした。
分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量とした。
なお、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量をいう。
【0057】
〔アスファルト組成物の物性測定方法〕
<(1)針入度>
JIS−K 2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った測定用のアスファルト組成物の試料に、規定の針が5秒間に進入する長さを測定した。
【0058】
<(2)溶融粘度>
ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORYIES、INC.製)を用い、温度条件は180℃で測定した。
溶融粘度は、180℃で10,000mPa・s以下であれば、実用上良好であると判断した。
【0059】
<(3)軟化点>
JIS−K 2207に準じて、アスファルト組成物の軟化点を測定した。
規定の環に測定用のアスファルト組成物の試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、前記試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。
軟化点は、135℃以上であれば、実用上良好であると判断した。
【0060】
<(4)引張最大強度>
引張試験機による引張最大強度を測定した。得られた引張最大強度が0.7以上であれば、実用上良好であると判断した。
・測定装置:TG−5KN(株式会社ミネベア)
・測定条件
測定温度:40℃
クロスヘッドスピード:1mm/min
チャック間:5mm
サンプル:短冊形状、幅6mm×長さ40mm×厚み2mm
【0061】
<(5)貯蔵弾性率(G’)>
ダイナミックシェアレオメーターによる動的粘弾性を測定した。得られた貯蔵弾性率(G’)から、貯蔵弾性率(G’)は、10,000Pa以上であれば、実用上良好であると判断した。測定装置、測定条件を、下記に示す。
・測定装置:ARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製 )
・測定条件
測定温度:70℃
測定モード:パラレルプレート(直径25mmφ)
GAP:1.5mm
角速度:6.28rad/sec
歪:10%
サンプル量:1g
【0062】
〔アスファルト組成物を構成するブロック共重合体(イ)の調製〕
<製造例1:ブロック共重合体(イ)−1>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換し、シクロヘキサン5720g、予め精製したスチレン240gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を約70℃に設定した。
次いで、n−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(純分で0.85g)を添加し、スチレンの重合を開始した。
スチレンがほぼ完全に重合してから10分後に、1,3−ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液(純分で560g)を添加し重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合し最高温度(95℃)に達してから10分後に、カップリング剤として四塩化ケイ素を添加し、カップリングさせた。
カップリング剤添加より10分後に、水0.5g加えて失活させた。
得られたブロック共重合体溶液に、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、その後、溶媒を加熱除去しブロック共重合体(イ)−1を得た。
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックを(A)、共役ジエンを含有する重合体ブロックを(B)とし、Xをカップリング残基としたとき(以下、同様とする。)、得られたブロック共重合体は、ブロック構造が(A−B)4−Xでカップリング率が85質量%、スチレンの含有量が28質量%、重量平均分子量が36.9万、重合体ブロック(A)の含有量が27質量%、ブタジエン部の平均ビニル結合量が14質量%であった。
【0063】
<製造例2:ブロック共重合体(イ)−2>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換し、シクロヘキサン5720g、予め精製したスチレン280gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を約70℃に設定した。
次いで、n−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(純分で0.61g)を添加し、スチレンの重合を開始した。
スチレンがほぼ完全に重合してから10分後に、1,3−ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液(純分で520g)を添加し重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合し最高温度(95℃)に達してから10分後に、カップリング剤として四塩化ケイ素を添加し、カップリングさせた。
カップリング剤添加より10分後に、水0.5g加えて失活させた。
得られたブロック共重合体溶液に、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、その後溶媒を加熱除去しブロック共重合体(イ)−2を得た。
得られたブロック共重合体は、ブロック構造が(A−B)4−Xでカップリング率が83質量%、スチレンの含有量が33質量%、重量平均分子量が62.0万、重合体ブロック(A)の含有量が31質量%、ブタジエン部の平均ビニル結合量が13質量%であった。
【0064】
<製造例3:ブロック共重合体(イ)−3>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、シクロヘキサン5720g、予め精製したスチレン48gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を約70℃に設定した。
次に、n−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(純分で0.63g)とN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し、70℃で20分間重合した。
次に、スチレンを含むシクロヘキサン溶液(純分で304g)、1,3−ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液(純分で400g)を添加し70℃で50分間重合した。
次に、スチレンを48g添加し、70℃で20分間重合した。
重合を完結させた後、水0.5g加えて失活させた。
得られたブロック共重合体溶液に、オクタデシル−3−(3,5−ジブチル−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、その後、溶媒を加熱除去しブロック共重合体(イ)−3を得た。
得られたブロック共重合体は、ブロック構造がA−A/B−Aでスチレンの含有量が49質量%、重量平均分子量が15.9万、重合体ブロック(A)の含有量が13質量%、ブタジエン部の平均ビニル結合量が21質量%であった。
【0065】
<製造例4:ブロック共重合体(イ)−4>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換して、下記の方法によりバッチ重合を行った。
先ず、シクロヘキサン5720g、予め精製したスチレン64gを仕込み、ジャケットに温水を通水して内容物を約70℃に設定した。
次に、n−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(純分で0.23g)とN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミンをn−ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し、70℃で20分間重合した。
次に、スチレンを含むシクロヘキサン溶液(純分で272g)、1,3−ブタジエンを含むシクロヘキサン溶液(純分で264g)を添加し70℃で50分間重合した。
次に、スチレンを64g添加し、70℃で20分間重合した。
重合を完結させた後、水0.5g加えて失活させた。
得られたブロック共重合体溶液に、オクタデシル−3−(3,5−ジブチル−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、その後、溶媒を加熱除去しブロック共重合体(イ)−4を得た。
得られたブロック共重合体は、ブロック構造がA−A/B−Aでスチレンの含有量が67質量%、重量平均分子量が27.5万、重合体ブロック(A)の含有量が16質量%、ブタジエン部のビニル結合量が26質量%であった。
【0066】
〔アスファルト(ロ)〕
アスファルト(ロ)として、ストレートアスファルト150−200(新日本石油株式会社製)を使用した。
【0067】
〔無機充填剤(ハ)〕
無機充填剤(ハ)として、シリカVN−3(日本シリカ株式会社製)を使用した。
【0068】
〔シラン化合物(ニ)〕
シラン化合物(ニ)として、
シラン化合物(ニ)−1:KBM―603(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン/信越化学工業株式会社製)
シラン化合物(ニ)−2:KBE−9007(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン/信越化学工業株式会社製)
以上、2種を使用した。
【0069】
下記表1に、上述した〔製造例1〜4〕により作製したブロック共重合体(イ)−1〜4の構造として、下記の項目の数値を示す。
・全ビニル芳香族化合物の含有量(質量%)
・ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量(質量%)
・(イ)ブロック共重合体の、全共役ジエン中の平均ビニル結合量(質量%)
・重量平均分子量(万)
【0070】
【表1】

【0071】
〔実施例1〕
350gのストレートアスファルト150−200を750ccの容器に入れ、容器を180℃のオイルバスに浸漬し、ストレートアスファルトを完全溶解させた。
次に、回転速度3000rpmでストレートアスファルトをホモミキサーで攪拌しながら、VN−3、4.0gとKBM−603、2.0gとを予め混合させた配合物をストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−1、48gを、少しずつストレートアスファルト中に添加した。
添加が終了したら、攪拌速度を6000rpmに上げ、90分間混練してアスファルト組成物を得た。
【0072】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、VN−3、11.9gとKBM−603、2.0gとを予め混合させた配合物をストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−1、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0073】
〔実施例3〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、VN−3、11.9gとKBM−603、4.0gとを予め混合させた配合物をストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−1、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0074】
〔実施例4〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、VN−3、19.9gとKBM−603、2.0gとを予め混合させた配合物をストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−1、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0075】
〔実施例5〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、VN−3、19.9gとKBE−9007、2.0gとを予め混合させた配合物をストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−1、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0076】
〔比較例1〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−1、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0077】
〔比較例2〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、VN−3、19.9gをストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−1、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0078】
〔比較例3〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、VN−3、19.9gとKBM−603、2.0gとを予め混合させた配合物をストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−2、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0079】
〔比較例4〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、VN−3、19.9gとKBM−603、2.0gとを予め混合させた配合物をストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−3、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0080】
〔比較例5〕
実施例1と同様に、完全溶融させたストレートアスファルトをホモミキサーにより3000rpmで攪拌しながら、VN−3、19.9gとKBM−603、2.0gとを予め混合させた配合物をストレートアスファルト中に添加した。
その後、上述のようにして得られたブロック共重合体(イ)−4、48gを、実施例1と同様に添加、混練後、アスファルト組成物を得た。
【0081】
下記表2中に示す実施例1〜5、比較例1〜5のアスファルト組成物は、道路舗装用アスファルト組成物の例であり、特性の測定方法については、上述した道路舗装用アスファルト組成物に適用される方法を用いた。
【0082】
〔実施例1〜5〕及び〔比較例1〜5〕のアスファルト組成物の、(1)針入度、(2)180℃溶融粘度、(3)軟化点、(4)引張最大強度、(5)70℃貯蔵弾性率G'のそれぞれの測定値を下記表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
表2に示すように、実施例1〜5においては、良好な溶融粘度、高軟化点、高弾性率、高引張強度を有し、前記溶融粘度と、軟化点、弾性率、機械的強度とのバランスが良好であることから、実用上十分な加工性と耐熱性、機械的強度を有するアスファルト組成物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のアスファルト組成物は、道路舗装用アスファルト、アスファルトルーフィング等として、産業上の利用の可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)ビニル芳香族化合物と共役ジエンからなるブロック共重合体であり、下記(1)〜 (4)の条件を満たすブロック共重合体3〜20質量%と、
(1)2個以上のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、1個以 上の共役ジエンを含有する重合体ブロック(B)とを有する。
(2)全ビニル芳香族化合物の含有量が20〜60質量%である。
(3)重量平均分子量が50,000〜500,000である。
(4)前記ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)の含有量が、15 質量%〜45質量%である。
(ロ)アスファルト80〜97質量%と、
を含むアスファルト混合物100質量部と、
(ハ)結晶構造内に二酸化珪素及び/又は珪酸塩を含有する無機充填剤0.3〜10質量部と、
(ニ)1種以上のアルコキシ基を2個以上含有するシラン化合物0.1〜2.0質量部
と、
を、含有するアスファルト組成物。
【請求項2】
前記(イ)ブロック共重合体の全共役ジエン中の平均ビニル結合量が30質量%以下である請求項1に記載のアスファルト組成物。
【請求項3】
前記(ニ)シラン化合物が、アミノ基を含有する請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。
【請求項4】
前記(ニ)シラン化合物が、イソシアネート基を含有する請求項1又は2に記載のアスファルト組成物。

【公開番号】特開2012−251040(P2012−251040A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123376(P2011−123376)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】