説明

アスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法

【課題】アスベスト材に鉄板、木板、布、及び合成樹脂板のいずれか1又は2以上からなるシート材を重ね、これらをねじ、釘又はステープラーからなる仮止め手段で支持部材に固定する際に発生するアスベストを含む粉塵の大気飛散を防止する方法を提供する。
【解決手段】アスベスト材10の上にシート材11を重ね、これらをねじ、釘又はステープラーからなる仮止め手段13で支持部材12に固定する際に発生する粉塵の大気飛散を防止する方法であって、仮止め手段13の周りの全部又は一部を、真空掃除機23に接続された覆い部材14で覆い、仮止め手段13の近傍に風速8〜30m/秒の気流を発生させて、仮止め手段13の施工時に発生する粉塵を吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト材の上に鉄板、木板、布、及び合成樹脂板のいずれか1又は2以上からなるシート材を重ね、これらをねじ、釘又はステープラーからなる仮止め手段で支持部材に固定する際に発生するアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年アスベストの健康被害が問題となっており、アスベストを使用した建築物や構造物の解体を行っている。この工事に当たって、アスベスト材の上に例えば、鉄板等を釘で止めることがあり、実験によれば、アスベスト材の上に釘を打った場合、周囲の空気を5L/分で5分間吸引させると、アスベストの微繊維が3000〜14000本程度捕集されている。
このようなアスベストの発塵に対しては、例えば、押さえ部材間に張設したプラスチックシートを接着剤を使用して貼り付け、封じ込める技術が特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3120874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アスベスト材の面の広さ分のプラスチックシートを用意する必要があり、更にそのようなプラスチックシートを使用しても、その上から薄鉄板等を釘付けする場合には、アスベスト材を貫通して釘止めされるので、結果として、量は減ったとしてもかなりの量のアスベスト粉塵が発生する。また、アスベスト材の上にプラスチックシートをねじ止めする場合においては、アスベスト材に孔を開ける必要があるので、多少のアスベスト粉塵が発生することが確認されている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、アスベスト材に鉄板、木板、布、及び合成樹脂板のいずれか1又は2以上からなるシート材を重ね、これらをねじ、釘又はステープラーからなる仮止め手段で支持部材に固定する際に発生するアスベストを含む粉塵の大気飛散を防止する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1〜第3の発明に係るアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法は以下のように構成されている。
(第1の発明) アスベスト材の上に鉄板、木板、布、及び合成樹脂板のいずれか1又は2以上からなるシート材を重ね、これらをねじ、釘又はステープラーからなる仮止め手段で支持部材に固定する際に発生する粉塵の大気飛散を防止する方法であって、
前記仮止め手段の周りの全部又は一部を、真空掃除機に接続された覆い部材で覆い、前記仮止め手段の近傍に風速8〜30m/秒(好ましくは10〜20m/秒)の気流を発生させて、前記仮止め手段の施工時に発生する粉塵を吸引することを特徴とする。
【0007】
(第2の発明) 第1の発明に係るアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法において、前記覆い部材は内部が視認できる透明材からなっていることを特徴とする。
【0008】
(第3の発明) 第1、第2の発明に係るアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法において、前記覆い部材の一部に前記真空掃除機に接続されるホースの先端部が接続され、該ホースの中間位置には重力若しくはフィルター又はこれらの双方によって、前記粉塵中の粗粒物を回収するごみ回収手段が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜3記載のアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法は、アスベスト材の上に鉄板、木板、布、及び合成樹脂板のいずれか1又は2以上からなるシート材を重ね、これらをねじ、釘又はステープラーからなる仮止め手段で支持部材に固定するに際し、仮止め手段の周りの全部又は一部を、真空掃除機に接続された覆い部材で覆い、仮止め手段の近傍に風速8〜30m/秒(好ましくは10〜20m/秒)の気流を発生させて、仮止め手段の施工時に発生する粉塵を吸引しているので、仮止め手段の施工中にその周囲からアスベスト粉塵が発生することがない。
【0010】
特に、請求項2記載のアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法において、覆い部材は内部が視認できる透明材からなっているので、内部の状況を外部から視認できる。
そして、請求項3記載のアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法においては、覆い部材の一部に真空掃除機に接続されるホースの先端部が接続され、ホースの中間位置には重力若しくはフィルター又はこれらの双方によって、粉塵中の粗粒物を回収するごみ回収手段が設けられているので、大きな粉塵、屑、小石等を分離してごみ回収手段に収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(A)、(B)は本発明の一実施の形態に係るアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法の説明図である。
【0012】
図1(A)に本発明の一実施の形態に係るアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法を示すが、アスベスト材の一例である石綿シート10の上にシート材の一例である鉄板11を被せ、下に配置された木製支持部材(例えば、垂木、野地板)12の上に、仮止め手段の一例である釘13を打ち込んで固定している。そして、釘13の周りを覆い部材の一例である部分切欠き透明カバー14で覆っている。この部分切欠き透明カバー14は、透明プラスチック(例えば、ポリカーボネイト)によって構成され、横幅が例えば15〜30cm、長さが20〜40cm程度となっている。
【0013】
この部分切欠き透明カバー14は、図1(B)に示すように、前部15及び前上部16が開放となって、かつ底面周囲は同一平面状となって底部内側は開放となっている。そして、後部には真空ホース18の接続口17が設けられて、前側から後ろ側にかけて、徐々にその断面が小さくなり、接続口17の内側に吸い込まれた空気が円滑に流れるようになっている。なお、前上部16の開放部分はハンマー17aが十分動かせる広さを有している。
【0014】
接続口17には真空ホース18の先部が接続され、この真空ホース18の基部には、重力及びフィルターの双方によって、粉塵中の粗粒物(例えば、砂、小さい砂利、ゴミ、釘、ねじ)を回収するごみ回収手段19が設けられている。このごみ回収手段19は、開閉できる箱20の中に、風速を遅くして異物(粗粒物)を重力によって分離する沈降室21と、フィルター22が設けられ、真空ホース18で吸引された粗粒物を分離して、真空掃除機23の負担を減らしている。
【0015】
このごみ回収手段19の排気口24には、真空掃除機23に接続される別の真空ホース25が接続されている。真空掃除機23は周知の構造となって、内部にゴミ回収用のバッグ26と真空ポンプ27が設けられていると共に、排気口にはフィルター28が設けられ、アスベスト粉塵を外部に一切出さないようにしている。
【0016】
従って、真空掃除機23を作動させると、真空ホース24、ゴミ回収手段19及び真空ホース18を介して、部分切欠き透明カバー14の前側から気流が吸い込まれ、釘13の周りに風速8〜30m/秒の接続口17に向かう気流を発生させる。なお、風速が8m/秒未満では粉塵の吸引力がなく、風速が30m/秒を超える場合真空掃除機23の吸引能力を超えてしまう。
従って、部分切欠き透明カバー14を、釘13の頭部が前上側16の開口から覗けるようにして被せ、釘13の頭部をハンマー17aで叩くと、石綿シート10からアスベスト粉塵が発生するが、部分切欠き透明カバー14の高速気流に流されて、外部に排出されず、最終的にはその殆どが真空掃除機23に吸引される。
【0017】
前記実施の形態においては、具体的数字を用いて説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲で数値を変更してもよい。
また、前記実施の形態では釘でアスベスト材を固定した例について説明したが、ねじやステープラーで止める場合も本発明は適用される。
部分切欠き透明カバーの形状は前記した実施の形態に限定されず、要は仮止め手段の周囲に高速の気流を発生すればよい。
シート材は、鉄板以外に、木板、布、又は合成樹脂板を使用することができ、これらを2以上組み合わせてもよい。また、ハンマーやドリルが電動の場合は、仮止め手段の周りの全部を覆い部材で覆うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)、(B)は本発明の一実施の形態に係るアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法の説明図である。
【符号の説明】
【0019】
10:石綿シート、11:鉄板、12:木製支持部材、13:釘、14:部分切欠き透明カバー、15:前部、16:前上部、17:接続口、17a:ハンマー、18:真空ホース、19:ゴミ回収手段、20:箱、21:沈降室、22:フィルター、23:真空掃除機、24:排気口、25:真空ホース、26:バッグ、27:真空ポンプ、28:フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベスト材の上に鉄板、木板、布、及び合成樹脂板のいずれか1又は2以上からなるシート材を重ね、これらをねじ、釘又はステープラーからなる仮止め手段で支持部材に固定する際に発生する粉塵の大気飛散を防止する方法であって、
前記仮止め手段の周りの全部又は一部を、真空掃除機に接続された覆い部材で覆い、前記仮止め手段の近傍に風速8〜30m/秒の気流を発生させて、前記仮止め手段の施工時に発生する粉塵を吸引することを特徴とするアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法。
【請求項2】
請求項1記載のアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法において、前記覆い部材は内部が視認できる透明材からなっていることを特徴とするアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載のアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法において、前記覆い部材の一部に前記真空掃除機に接続されるホースの先端部が接続され、該ホースの中間位置には重力若しくはフィルター又はこれらの双方によって、前記粉塵中の粗粒物を回収するごみ回収手段が設けられていることを特徴とするアスベストを含む粉塵の大気飛散防止方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−102912(P2009−102912A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276744(P2007−276744)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000248196)株式会社コトガワ (13)
【Fターム(参考)】