説明

アゾ染料

本発明は、フタルイミド置換されたアニリンアップリング成分と芳香族炭素環又は芳香族へテロ環ジアゾ成分に基づく分散アゾ染料、そのような染料の製造方法並びに半合成及び特に合成疎水性繊維材料、とりわけ特に織物材料の染色又は捺染におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタルイミド置換されたアニリンカップリング成分を有する分散染料、そのような染料の製造方法、並びに半合成及び、より特に、合成疎水性繊維材料、とりわけ特に織物材料の染色又は捺染(Printing)におけるそれらの使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
N−アルキル−フタルイミドジアゾ成分及びアニリンカップリング成分を有する分散アゾ染料は従来から知られており、そして疎水性繊維材料の染色に使用されている。しかし、現在知られている前記染料を使用して得られる染色又は捺染が、いかなる場合においても最新の要望、より特に、光、洗濯及び汗の点から見た堅牢特性に関する要望、を満たしているわけではないことがわかってきた。特に青色染料の分野において、光、洗濯及び汗の点から見た優れた堅牢特性を有する鮮やかな色調の染色を与える新規染料に対する要望がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今回、驚くべきことに、本発明に従う染料は、上記に述べた基準を大いに満たすことが見いだされた。
【0004】
従って、本発明は、光、洗濯及び汗に対してとても良好な堅牢度を有する染料を産出し、加えて、吸尽法及びサーモゾル法、並びに織物捺染(textile printing)の両方で良好なビルドアップ特性を示す、分散染料に関する。前記染料はまた、抜染にも適する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明に従う染料は式(1)
【化1】

[式中
Arは式(1a)乃至(1l)
【化2】

で表される基を表し、
1は水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコ
キシ基又はハロゲン原子を表し、
2は水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、ハロゲン原子又は−NHCOR8(式中、
8は未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ
ル基、アミノ基又はハロゲン原子で置換された炭素原子数1乃至12のアルキル基、未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数5乃至30のアリール基、又は未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基又はハロゲン原子で置換された炭素原子数5乃至30のヘテロアリール基を表す。)を表し、
3は未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ
ル基、アミノ基、−COOR8基、−OCOR8基(式中、R8は上記で定義した通りであ
る。)もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数1乃至12のアルキル基、未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数1乃至12のアルケニル基、又は未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数6乃至36のアラルキル基を表し、
4は水素原子又は炭素原子数1乃至12のアルキル基を表し、
Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、
nは0又は1であり、
mは1乃至5の数であり、
2は、nが0かつmが1の場合、水素原子ではなく又はメチル基でもなく、
Yは−CO−又は−SO2−を表し、
5、R6及びR7は各々他と独立して水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、
炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C
OOR9又は−CONHR9(式中、R9は炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子
数5乃至30のアリール基又は炭素原子数5乃至30のヘテロアリール基を表す。)を表し、
10はハロゲン原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1乃至12のシアノアルキル基、炭素原子数5乃至30のアリール基又は炭素原子数6乃至36のアラルキル基を表し、
1及びZ2は各々他と独立して、臭素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を表すが、Z1及びZ2が塩素原子を表す式(1a)で表される基は除かれ、
3は臭素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基又は炭素原子
数1乃至12のアルキル基を表し、
4は塩素原子又は−CONH2を表し、
5は塩素原子、臭素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基又は炭素原子数1乃至
12のアルコキシ基を表し、
6及びZ7は各々他と独立して、水素原子、臭素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を表し、
8はシアノ基、ニトロ基又は炭素原子数1乃至12のアルコキシカルボニル基を表し

9は水素原子、臭素原子、塩素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子
数5乃至30のアリール基又は炭素原子数6乃至36のアラルキル基、及び
10は水素原子、シアノ基、ニトロ基又は−COR4(式中、R4は上記に定義した通りである。)を表す。]で表される化合物に対応する。
【0006】
1乃至R9で表される基又はZ1乃至Z10で表される基の何れかがアルキル基である場
合、その基又はそれらの基は直鎖又は枝分かれであり得る。アルキル基の例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第二−ブチル基、第三−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−デシル基及びn−ドデシル基である。
【0007】
置換されたアルキル基は、例えば、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−アミノエチル基、2−アミノプロピル基、4−アミノブチル基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基及び4−クロロブチル基である。
【0008】
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、第二−ブトキシ基、第三−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、n−デシルオキシ基及びn−ドデシルオキシ基である。
【0009】
適したハロゲン置換基はフッ素原子、並びにより特に塩素原子及び臭素原子である。
【0010】
8、R9、R10又はZ9に指定されたアリール基は、好ましくは5乃至24の炭素原子
、より特に6乃至14の炭素原子を有する。
【0011】
適したアリール基の例は、フェニル基、トリル基、メシチル基、イシチル基、2−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2−アミノフェニル基、3−アミノフェニル基、4−アミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、ナフチル基
及びフェナントリル基である。
【0012】
3、R10又はZ9としてのアラルキル基は好ましくは6乃至30の炭素原子、より特に7乃至12の炭素原子を有する。
【0013】
適したアラルキル基の例は、ベンジル基、2−フェニルエチル基、トリルメチル基、メシチルメチル基及び4−クロロフェニルメチル基である。
【0014】
5、R6、R7又はR8としてのヘテロアリール基は好ましくは4個又は5個の炭素原子及びO、S及びNのグループからの1個又は2個のヘテロ原子を含む。それらは、例えば、ピロリル基、フリル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、プリニル基又はキノリル基であり得る。
【0015】
式(1)において、R1は好ましくは、水素原子、メチル基又はメトキシ基であり、よ
り特に水素原子である。
【0016】
同様に好ましいものは、式(1)中のR2が水素原子、メチル基、塩素原子、アセチル
アミノ基、プロピオニルアミノ基又はメトキシアセチルアミノ基を表す、式(1)で表される染料である。
【0017】
式(1)中のR2がメチル基又はアセチルアミノ基を表す、式(1)で表される染料が
より特に好ましい。
【0018】
式(1)において、R3は好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基
、アリル基、1−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−アセトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基又は2−エトキシカルボニルエチル基である。
【0019】
特に好ましいものは、式(1)中のR3がエチル基又は2−メトキシエチル基を表す式
(1)で表される染料である。
【0020】
式(1)におけるR4は好ましくは水素原子又はメチル基であり、より特に水素原子で
ある。
【0021】
式(1)におけるYは好ましくは−CO−である。
【0022】
好ましいものは、式(1)中の、R4が水素原子を表し、nは0であり及びmは2又は
3である、式(1)で表される染料である。
【0023】
同様に、好ましいものは式(1)中のR5、R6及びR7がそれぞれ水素原子を表す、式
(1)で表される染料である。
【0024】
式(1)におけるArで表される基は、ジアゾ化に適しているアミンAr−NH2から
誘導される。アゾ染料の製造に適しているジアゾ成分Ar−NH2は当業者によく知られ
ている。
【0025】
適したArで表される基の例は、
【化3】

である。
【0026】
式(1)におけるArは好ましくは、式(1a)、(1d)又は(1j)で表される基である。
【0027】
特に好ましいものは、Arが式
【化4】

の基を表す、式(1)で表される染料である。
【0028】
式(1)で表される適した染料の例は、式(101)乃至(200)(λmax=吸収極
大の波長)の化合物である:
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
【化19】

【0044】
【化20】

【0045】
【化21】

【0046】
【化22】

【0047】
【化23】

【0048】
【化24】

【0049】
特に好ましいものは、式(101)乃至式(106)
【化25】

で表される染料である。
【0050】
本発明はまた、式Ar−NH2(式中、Arは上記で定義した通りである。)で表され
るジアゾ成分をジアゾ化し、そして式(2)
【化26】

(式中、R1乃至R7、X、n、m及びYは上記に定義した通りである。)で表されるカップリング成分とカップリングする、式(1)で表される染料の製造方法に関する。
【0051】
式(2)で表されるカップリング成分は新規であり、そして本発明はまたそれに関する。
【0052】
式(2)で表されるカップリング成分は、それ自体は既知の製造方法、例えば式(3)で表される成分を式(4)で表される成分とで縮合させることによる製造方法に従い合成することができる。
【化27】

(式(3)及び式(4)中、R1乃至R7、X、n、m及びYは上記に定義した通りであり及びHalはハロゲン原子を表す。)
【0053】
式(3)で表されるアニリンは既知であり及び幾つかは市販されている。式(4)で表されるハロゲン化合物は同様に既知であるか又は既知の方法、例えば国際公開第2003/027070号パンフレットに開示されている方法によって得られる。
【0054】
本発明はまた、式(2)で表されるカップリング成分の製造方法に関する。
【0055】
ジアゾ化は、それ自体は既知の方法、例えば酸性媒体中、例えば塩酸を含んだ又は硫酸を含んだ水性媒体中、における亜硝酸ナトリウムを用いる方法で行われる。しかしながら、ジアゾ化は他のジアゾ化剤、例えばニトロシル硫酸を使用しても同様に行われ得る。ジアゾ化において、追加される酸、例えば、リン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸もしくは塩酸又はこれら酸の混合物、例えばプロピオン酸及び酢酸の混合物が反応媒体中に存在し得る。前記ジアゾ化は−10℃乃至30℃、例えば−10℃乃至室温で有利に行われる。
【0056】
式(2)で表されるカップリング成分に対するジアゾ化された化合物のカップリングは、同様に、既知の方法、例えば酸性、水性又水性−有機媒体中で、有利には−10℃乃至30℃、より特に10℃より低い温度でもたらされる。使用される酸の例としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、硫酸及びリン酸である。
【0057】
前記ジアゾ成分Ar−NH2は既知であるか又は既知の方法で製造できる。
【0058】
本発明はまた、式(1)で表される染料の少なくとも1種及び式(1)で表される以外染料の少なくとも1種を含む染料混合物に関する。
【0059】
本発明に従う染料混合物中に使用可能な、式(1)で表される以外の適した染料は、例えば、国際公開第2006/131530号パンフレットに記載の式(I)、(II)、(III)(IV)及び(V)で表されるアゾ染料、国際公開第2005/056690号パンフレットの実施例1乃至5に記載された染料及び国際公開第2005/040283号パンフレットに公開された式(I)で表されるアゾ染料である。
【0060】
さらにまた、本発明に記載の式(1)で表される染料と有利に混合可能な、適した染料は、例えば、C.I.ディスパースバイオレット(C.I.Disperse Violet)107、C.I.ディスパースブルー(C.I.Disperse Blue)60、C.I.ディスパースブルー284、C.I.ディスパースブルー295、C.I.ディスパースブルー337、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ディスパースブルー365、C.I.ディスパースブルー368、C.I.ディスパースブルー378、C.I.ディスパースブルー380である。
【0061】
本発明に従う染料混合物は、例えば、個々の染料を単純に混合することによって、製造することができる。
【0062】
本発明に従う染料混合物における個々の染料の量は幅広く変えることができる。本発明に従う染料混合物は、有利には、1種以上の式(1)で表される染料を少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも30質量%及びより特に少なくとも40質量%含有する。
【0063】
本発明に従う染料及び染料混合物は、半合成及び、より特に、合成疎水性繊維材料、とりわけ特に織物材料の染色又は捺染に使用することができる。このような半合成及び/又は合成疎水性繊維材料を含む混合繊維からできている織物材料も、同様に本発明に従う染料又は染料混合物を使用して染色又は捺染することができる。
【0064】
考慮する半合成繊維材料はより特に2.5酢酸セルロース及び三酢酸セルロースである。
【0065】
合成疎水繊維材料は、より特に、線形の、芳香族ポリエステル、例えばテレフタル酸及びグリコール、より特にエチレングリコールのポリエステル又はテレフタル酸及び1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの縮合生成物;ポリカーボネート、例えばα,α−ジメチル−4,4−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン及びホスゲンのポリカーボネート、並びにポリ塩化ビニルとポリアミドに基づいた繊維、からなる。
【0066】
本発明に従う染料及び染料混合物の前記繊維材料への適用は、既知の染色手段に従ってもたらされる。例えば、ポリエステル繊維材料は、慣用のアニオン性又は非イオン性分散剤及び所望により慣用の膨潤剤(担体)の存在下において、80乃至140℃の温度で、水性分散剤からの吸尽法によって染色される。2.5酢酸セルロースは好ましくは65乃至85℃で染色され及び三酢酸セルロースはは好ましくは65乃至115℃の温度で染色される。
【0067】
本発明に従う染料及び染料混合物は染浴中で同時に存在しているウール及び綿を着色しないか又はそのような材料をほんのわずかしか(非常に良好に制限される)着色されないため、よって、それらはポリエステル/ウール及びポリエステル/セルロース繊維の混織織布の染色に満足に使用されることもできる。
【0068】
本発明に従う染料及び染料混合物は、サーモゾル法によって、吸尽法による及び捺染法のための染色するの適している。
【0069】
前記繊維材料は様々な加工形態、例えば、繊維、毛糸もしくは不織布の形態、織物の形態又は編物の形態、であり得る。
【0070】
本発明に従う染料及び染料混合物を、使用の前に染料調合物へと変換することが有利である。その目的のために、染料はその粒子径が平均0.1乃至10ミクロンであるように粉砕する。粉砕は分散剤の存在下において行うことができる。例えば、乾燥させた染料は分散剤と共に粉砕されるか又は分散剤と共にペースト形態となるまで練るかして、続いて真空で又は噴霧化によって乾燥される。そうして得られた調合物は、水を添加した後、捺染ペースト又は染浴を製造するために使用されることができる。
【0071】
捺染のために、慣用の増粘剤、例えば、改質又は非改質の天然物、例えばアルギン酸塩、ブリティッシュガム、アラビアガム、結晶ガム、イナゴマメ粉、トラガカント、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、でん粉又は合成製品、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸もしくはそのコポリマー又はポリビニルアルコールが使用される。
【0072】
本発明に従う染料及び染料混合物は、前記材料に、より特にポリエステル材料に、非常に良好な使用中の堅牢特性、例えば、より特に光、熱固着、プリーツ、塩素及び湿度に対する良好な堅牢度、例えば水、汗及び洗濯に対する堅牢度を有するあざやかな色合いを与え;染色が終った染色物はまた、摩擦に対する非常に良好な堅牢度によりきわだっている。特記すべきは、光、汗及び特に洗濯の観点から染色の結果として得られた染色物の良好な堅牢特性である。汗、特に洗濯に関する得られた染色物の良好な堅牢特性がより特に重視されるべきである。
【0073】
本発明に従う染料及び染料混合物はまた、他の染料と共に混合した色合いの調製においても充分に使用することができる。
【0074】
本発明に従う染料及び染料混合物はまた、超臨界CO2法からの疎水性繊維材料を染色
するのにも非常に適している。
【0075】
本発明はまた、本発明に従う染料及び染料混合物の前記使用に関するものであり、並びに半合成又は合成疎水性繊維材料、より特に織物材料の染色又は捺染のための方法に関するものであり、この方法において、本発明に従う染料は前記材料に適用されるか又はこれら材料に取り込まれる。前記疎水性繊維材料は好ましくは織物ポリエステル材料である。さらに、本発明に従う工程及び好ましい工程条件によって処理され得る基質は本発明に従う染料の使用についての詳細な説明に記載されている。
【0076】
本発明はまた、前記工程によって染色又は捺染された疎水性繊維材料、より特にポリエステル織物材料に関する。本発明に従う染料はまた、現代的な再生方法、例えば熱転写捺染に適している。
【0077】
下記に示す実施例は本発明を詳細に説明するものである。実施例において、特記しない限り、部は質量部であり及び%は質量%である。温度は摂氏温度で示す。質量部と容量部との関係はグラムと立法センチメートルとの関係と同じである。
【実施例】
【0078】
I.製造例
製造例I.1
A.カップリング成分の製造
乾燥した3−アセトアミド−N−エチルアニリン9.3g(0.05mol)を110℃に加熱し、及びトルエン2mL及び酢酸ナトリウム6.2gをそこへ添加した。激しく攪拌しながら、N−(4−ブロモブチル)フタルイミド21.63g(0.07mol)のトルエン25mL溶液を130℃でゆっくり滴下添加し、そして続いて混合物中で形成された酢酸を蒸留除去した。次に混合物を100℃まで冷却し、そして残留している揮発性成分を減圧蒸留によって分離した。あとに残った粘性状油を少量のメタノール/水(1:1)と共に攪拌し、そして水相を分離除去した。エタノール/水(1:1)から結晶化した純生成物は80℃の融点を有し、収量は14.0g(75%)であった。
【0079】
B.ジアゾ化
40%ニトロシル硫酸21gを実験反応装置に入れた。15乃至20℃で、2,6−ジブロモ−4−ニトロアニリン6.1gを導入した。15乃至20℃で2時間攪拌した後、混合物を氷水60gに注ぎ、そしてさらに15分間攪拌した。過剰量の亜硝酸塩をスルファミン酸を加えてつぶした。
【0080】
C.カップリング
4−アセチルアミノ−N−(3−フタルイミドプロピル)−N−エチルアニリン7.4gの80%酢酸50mL溶液を実験反応装置に入れ、そしてサーフィノール(Surfynol)104E(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)を3滴そこへ添加した。氷40gを加えた後、Bで製造したジアゾニウム塩の溶液を、内部温度が0乃至5℃であるようにゆっくり滴下添加した。混合物を0乃至5度で1時間及び室温で一晩攪拌した。水100mLを添加した後、固体を吸引ろ過し、脱イオン水で洗浄し、そして乾燥させた。式(101a)で表される化合物13.1gを得た。
【化28】

【0081】
D.シアノ化
染料(101a)4.15gのDMF80mL溶液をCuCN1.37g及びNaCN0.15gのDMF100mL溶液へ105℃で30分かけて滴下添加した。混合物を105℃で2時間攪拌した。室温まで冷却した後、水15mLを滴下添加し、そして室温で一晩攪拌し続けた。続いて、固体を吸引ろ過し、15%NH3溶液及び水で洗浄し、そし
て乾燥させた。
収量:式(101)で表される染料3.0g
【化29】

【0082】
製造例I.2−I.6
式(102)乃至式(106)で表される染料を、製造例I.1に記載した方法と同様に製造した。
【化30】

【0083】
II.適用例
実施例II.1:
ポリエステル繊維(Tersuisse 5−4204)試料を、式(101)乃至式
(105)で表される染料の1種を1%含む染浴において、135℃で高温吸尽法により染色した。得られた染色は、昇華、洗濯及び汗に関する堅牢度≧4の値を示した。
【0084】
実施例II.2:
実施例II.1に記載したように、ポリエステル繊維の試料を、式(101)乃至式(105)で表される染料ではなく、表1に示した染料混合物1乃至48を使用して染色した。表1で表される数値データはいずれの場合も質量%を示す。そのようにして得られた染物は、昇華、洗濯及び汗に関して高い堅牢度の値を示した。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

[式中、
Arは式(1a)乃至式(1l)
【化2】

で表される基を表し、
1は水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコ
キシ基又はハロゲン原子を表し、
2は水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、ハロゲン原子又は−NHCOR8(式中、R8は、未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒ
ドロキシル基、アミノ基もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数1乃至12のアルキル基、未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数5乃至30のアリール基、又は未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数5乃至30のヘテロアリール基を表す。)を表し、
3は未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ
ル基、アミノ基、−COOR8基、−OCOR8基(式中、R8は上記で定義した通りであ
る。)もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数1乃至12のアルキル基、未置換の
もしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数2乃至12のアルケニル基、又は未置換のもしくは1種以上の炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基もしくはハロゲン原子で置換された炭素原子数6乃至36のアラルキル基を表し、
4は水素原子又は炭素原子数1乃至12のアルキル基を表し、
Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、
nは0又は1であり、
mは1乃至5の数であり、
2はnが0かつmが1の場合には水素原子ではなく又はメチル基でもなく、
Yは−CO−又は−SO2−を表し、
5、R6及びR7は各々他と独立して、水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基
、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−COOR9又は−CONHR9
(式中、R9は炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数5乃至30のアリール基
又は炭素原子数5乃至30のヘテロアリール基を表す。)を表し、
10は水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子数1乃至12のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1乃至12のシアノアルキル基、炭素原子数5乃至30のアリール基又は炭素原子数6乃至36のアラルキル基を表し、
1及びZ2は各々他と独立して、臭素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を表すが、ただしZ1及びZ2が塩素原子を表す式(1a)で表される基は除かれ、
3は臭素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基又は炭素原子
数1乃至12のアルキル基を表し、
4は塩素原子又は−CONH2を表し
5は塩素原子、臭素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基又は炭素原子数1乃至
12のアルコキシ基を表し、
6及びZ7は各々他と独立して、水素原子、臭素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を表し、
8はシアノ基、ニトロ基又は炭素原子数1乃至12のアルコキシカルボニル基を表し

9は水素原子、臭素原子、塩素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、炭素原子
数5乃至30のアリール基又は炭素原子数6乃至36のアラルキル基を表し、及び
10は水素原子、シアノ基、ニトロ基又は−COR4(式中、R4は上記で定義した通りである。)を表す。]で表される染料。
【請求項2】
前記式中、R1は水素原子、メチル基又はメトキシ基を表す、請求項1に記載の式(1
)で表される染料。
【請求項3】
前記式中、R2は水素原子、メチル基、塩素原子、アセチルアミノ基、プロピオニルア
ミノ基又はメトキシアセチルアミノ基を表す、請求項1に記載の式(1)で表される染料。
【請求項4】
前記式中、R3は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、アリル基、1−メ
トキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−アセトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基又は2−エトキシカルボニルエチル基を表す、請求項1に記載の式(1)で表される染料。
【請求項5】
前記式中、R4は水素原子又はメチル基を表す、請求項1に記載の式(1)で表される
染料。
【請求項6】
前記式中、Yは−CO−を表す、請求項1に記載の式(1)で表される染料。
【請求項7】
前記式中、R4は水素原子を表し、nは0であり及びmは2又は3である、請求項1に
記載の式(1)で表される染料。
【請求項8】
前記式中、R5、R6及びR7はそれぞれ水素原子を表す、請求項1に記載の式(1)で
表される染料。
【請求項9】
前記式中、Arは式(1a)、(1d)又は(1j)で表される基を表す、請求項1に記載の式(1)で表される染料。
【請求項10】
前記式中、Arは式
【化3】

で表される基を表す、請求項1に記載の式(1)で表される染料。
【請求項11】
式Ar−NH2(式中、Arは請求項1で定義した通りである。)で表されるジアゾ成
分をジアゾ化し、そして式(2)
【化4】

(式中、R1乃至R7、X、n、m及びYは請求項1で定義した通りである。)で表されるカップリング成分とカップリングする、請求項1に記載の式(1)で表される染料の製造方法。
【請求項12】
式(2)
【化5】

(式中、R1乃至R7、X、n、m及びYは請求項1で定義した通りである。)で表される化合物。
【請求項13】
式(3)で表される化合物を式(4)
【化6】

(式(3)及び式(4)中、R1乃至R7、X、n、m及びYは請求項1で定義した通りであり及びHalはハロゲン原子を表す。)で表される化合物と縮合させる、請求項12に記載の式(2)で表される化合物の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の式(1)で表される染料の少なくとも1種及び式(1)で表される以外の染料の少なくとも1種を含む染料混合物。
【請求項15】
請求項1に記載の式(1)で表される染料又は請求項14に記載の染料混合物を半合成又は合成疎水性繊維材料の材料に適用させる又は該材料に取り込ませる、半合成又は合成疎水性繊維材料の染色方法又は捺染方法。
【請求項16】
半合成及び特に合成疎水性繊維材料、とりわけ特に織物材料の染色又は捺染における、請求項1に記載の式(1)の染料の使用。
【請求項17】
請求項15に記載の方法によって染色又は捺染される、半合成又はより特に合成疎水性繊維材料、とりわけ特に織物材料。

【公表番号】特表2010−533751(P2010−533751A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516457(P2010−516457)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058828
【国際公開番号】WO2009/013122
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(300052420)ハンツマン アドバンスト マテリアルズ (スイッツァランド) ゲーエムベーハー (26)
【氏名又は名称原語表記】HUNTSMAN ADVANCED MATERIALS (SWITZERLAND) GMBH
【Fターム(参考)】