説明

アデノウイルスベクターおよびその作製方法

【課題】本発明は、比較的短い塩基長の外来塩基配列であっても、シャトルベクターを介することなく簡便に高効率に発現可能なアデノウイルスベクター(Adベクター)を提供することを課題とする。さらには、該Adベクターの作製方法に関する。
【解決手段】少なくともE1領域を欠損するE1領域欠損型Adのゲノムや、E1タンパク質の一部の機能が欠失していたり、E1タンパク質の発現が例えば癌細胞でだけ起こるような制限増殖型Adのゲノムを含み、当該AdゲノムにプロモーターならびにAdに対してユニークな制限酵素の認識配列を1または複数備えてなるAdベクターによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外来塩基配列を発現させるために使用されるアデノウイルスベクターおよびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遺伝子治療や遺伝子導入による実験系は、多くの場合、目的(治療用)遺伝子の過剰発現に基づいたものであった。一方近年、21−29塩基長の二本鎖RNA(small interfering RNA:siRNA)によって配列特異的に標的遺伝子の発現を抑制するRNA干渉(RNA interferance:RNAi)が注目されており、目的遺伝子の発現を抑制することによって、治療や遺伝子の機能解析を行う研究が盛んに行われている。RNAiによる標的遺伝子の特異的な発現抑制は、合成siRNAを用いる方法と、siRNAを発現するベクターに大別されるが、これら合成siRNAやsiRNAを発現するベクターをいかに目的の細胞に導入するかというデリバリーの問題が、RNAiを利用した研究を行う上で大きな課題のひとつとなっている。
【0003】
合成siRNAのデリバリーは、リポソームなどのトランスフェクション試薬を用いる方法が一般的である。一方、U6やH1、tRNAなどのRNAポリメラーゼIII系へのプロモーターにsiRNAや、ヘアピン型RNA(short hairpin RNA:shRNA)を発現するベクターをプラスミドベクターやウイルスベクターに搭載して利用することができる。siRNAは、shRNAからプロセシングにより産生されるものであるが、siRNAを広義に解釈して、siRNAにはshRNAの意味も含まれるものと考える場合もある。非ウイルスベクターであるプラスミドベクターを用いて遺伝子導入する場合は、遺伝子導入効率が低いため、遺伝子導入された細胞を、薬剤耐性遺伝子やグリーン蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を用いて選択しなければ、細胞集団全体としての遺伝子発現抑制効果は観察されないことが多い。一方、ウイルスベクターを用いた場合は、多くの細胞種で100%に近い遺伝子導入効率が期待できるため、遺伝子導入細胞を選択する必要がなく、効率よく遺伝子の機能阻害研究を行うことができる。
【0004】
ウイルスベクターを用いたRNAi研究には、レンチウイルス、レトロウイルスやアデノウイルス等のベクターが汎用されている。レトロ・レンチウイルスベクターは、1〜数コピーの遺伝子が標的細胞の染色体に組み込まれるため安定細胞株の作製に適している。この場合、コピー数が少ないので、siRNAのターゲット配列の検索の際には、”良く効く”配列を検索する必要がある。一方、アデノウイルスベクター(以下、単に「Adベクター」という。)は1〜数十コピーの遺伝子を染色体外DNAとして細胞核内に導入でき、一過性の遺伝子発現を示す。また、Adベクターはレトロ・レンチウイルスベクターに比べて、高い力価のウイルス液の調製が容易であり、動物個体への遺伝子導入に適している。これらのウイルスベクターは、感染域も異なっており、研究目的や用いる細胞に応じて、適したベクター系を使用することができる。
【0005】
in vitroへの適用や高効率・高力価のウイルス溶液が容易に得られる点から、Adベクターは、レトロ・レンチウイルスベクターに比べより広く用いられ、遺伝子機能解析のための基盤技術として、より多くの可能性を秘めていると考えられる。
【0006】
Adベクターについては、各種研究がなされており、例えば細胞に導入容易とするために、トリペプチドであるRGD配列をコードするDNAを導入したベクターなどが開発されている(特許文献1、2)。siRNA発現Adベクターの更なる普及のためには、簡便に高効率にベクターを作製する技術が必要となる。本発明者は、従来のAdベクター作製法を格段に簡略化し、簡単なin vitroライゲーションに基づいたプラスミド構築を利用してAdベクターを作製する技術を開発済みであり(特許文献3)、全世界で広く用いられている。例えば、目的の外来塩基配列を含むシャトルベクターを予め調製し、シャトルベクター上で得られた外来塩基配列の発現カセットを、Adベクターに組み込ませて目的の外来塩基配列を発現させる方法なども報告されている(非特許文献1、2)。
【0007】
shRNAやsiRNAなどの発現ベクターについては、既に特許が成立し(特許文献4)、ベクター構築受託サービスなども既に実用化されている。しかしながら、Adを発現ベクターとしてshRNAやsiRNAなどの短い塩基長の外来塩基配列を発現させるためには、上述のようにシャトルベクターを介さなければならず、煩雑であった。
【特許文献1】特許第3635462号公報
【特許文献2】特開2003−250566号公開公報
【特許文献3】米国特許第6303362号公報
【特許文献4】特許第3642573号公報
【非特許文献1】Hum Gene Ther 9 (1998) 2577-83
【非特許文献2】Hum Gene Ther 10 (1999) 2013-7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、比較的短い塩基長の外来塩基配列であっても、シャトルベクターを介することなく簡便に高効率に発現可能なAdベクターを提供することを課題とする。さらには、該Adベクターの作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、E1領域を欠損するE1領域欠損型Adのゲノムや、E1タンパク質の一部の機能が欠失していたり、E1タンパク質の発現が例えば癌細胞でだけ起こるような、特定の細胞種でのみ複製できるようにした制限増殖型Adのゲノムを含み、当該AdゲノムにプロモーターならびにAdに対してユニークな制限酵素の認識配列を1または複数備えてなるAdベクターを構築することにより、上記課題を達成しうることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.Adのゲノムを含み、プロモーターおよびAdに対してユニークな制限酵素の認識配列を1または複数備えてなることを特徴とするAdベクタープラスミド。
2.Adに対してユニークな制限酵素の認識配列の少なくとも1が、プロモーター領域に配置されていることを特徴とする前項1に記載のAdベクタープラスミド。
3.Adのゲノムが、E1領域欠損型Adのゲノム、または制限増殖型Adのゲノムである請求項1または2に記載のアデノウイルスベクタープラスミド。
4.プロモーターが、ポリメラーゼII系またはポリメラーゼIII系のプロモーターである前項1〜3のいずれか1に記載のAdベクタープラスミド。
5.制限酵素の認識配列が、ClaI、SwaI、XbaI、Csp45I、PacI、I−CeuI、PI−SceIおよびI−SceIから選択される1または複数の制限酵素の認識配列である前項1〜4のいずれか1に記載のAdベクタープラスミド。
6.以下の工程を含むアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法:
1)Adのゲノムを準備する工程;
2)上記Adのゲノムに、プロモーターを導入する工程;
3)上記Adのゲノムに導入されたプロモーター領域に、Adおよび該導入されたプロモーターに対してユニークな制限酵素の認識配列を1または複数導入する工程。
7.Adのゲノムが、E1領域欠損型Adのゲノム、または制限増殖型Adのゲノムである、請求項6に記載のAdベクタープラスミドの作製方法。
8.プロモーターが、ポリメラーゼII系またはポリメラーゼIII系のプロモーターである前項6または7に記載のAdベクタープラスミドの作製方法。
9.制限酵素の認識配列が、ClaI、SwaI、XbaI、Csp45I、PacI、I−CeuI、PI−SceIおよびI−SceIから選択される1または複数の制限酵素の認識配列である前項6〜8のいずれか1に記載のAdベクタープラスミドの作製方法。
10.前項6〜9のいずれか1に記載のAdベクタープラスミドの作製方法において、さらに外来塩基配列をライゲーションする工程を含むAdベクタープラスミドの作製方法。
11.外来塩基配列の塩基長が、20〜80bpである前項10に記載のAdベクタープラスミドの作製方法。
12.前記外来塩基配列が、siRNAをコードする塩基配列を含む前項10または11に記載のAdベクタープラスミドの作製方法。
13.前項10〜12のいずれか1に記載の作製方法で作製したAdベクタープラスミドを、細胞にトランスフェクションすることによるAdベクターの作製方法。
14.前項10〜12のいずれか1に記載の作製方法で作製したAdベクタープラスミドを制限酵素で切断し、直鎖状としたものを細胞にトランスフェクションすることによるAdベクターの作製方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のAdベクタープラスミドにより、比較的短い塩基長の外来塩基配列、例えば目的の標的遺伝子に対するsiRNA配列をコードする塩基配列、例えばshRNAをコードする塩基配列からなる合成オリゴDNAを直接Adベクタープラスミドに導入することが可能となった。これにより、シャトルベクターからAdベクタープラスミドへの組み込み作業の必要がなくなり、簡便となった。外来塩基配列がライゲーションされたAdベクタープラスミドを、例えば293細胞(E1領域欠損型Adベクターや制限増殖型Adベクターの場合)または癌細胞(制限増殖型Adベクターの場合)にトランスフェクションすることにより、容易に比較的短い塩基長の外来塩基配列の発現が達成可能なAdベクターが構築される。また、本発明のAdベクターにより産生したshRNAから得られるsiRNAは、従来のシャトルベクターを介したAdベクターで産生したものと同様のRNAi効果が確認された。
【0012】
本発明のAdベクタープラスミドの作製方法を利用することにより、所望の外来塩基配列をAdベクタープラスミドにライゲーションするだけで外来塩基配列発現用Adベクタープラスミドの作製が可能となる。また作製されたAdベクタープラスミドを例えば293細胞(E1領域欠損型Adベクターや制限増殖型Adベクターの場合)または癌細胞(制限増殖型Adベクターの場合)にトランスフェクションすることで、Adベクターを極めて簡便に作製することができる。また、所望の外来塩基配列がsiRNAの場合には、siRNA発現Adベクターライブラリーの作製も容易になるため、創薬ターゲット遺伝子検索のための基盤技術の開発に応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のAdベクタープラスミドは、Adゲノムを含み、当該AdゲノムにプロモーターおよびAdに対してユニークな制限酵素の認識配列を少なくとも1種類備えてなることを特徴とする。本発明のAdベクターは、まず組換操作によってAdベクタープラスミドが作製され、Adベクタープラスミドを細胞にトランスフェクションすることによって作製される。
【0014】
本発明においてAdとは、アデノウイルスをさし、本発明において使用可能なAdは、in vivoまたはin vitroでDNAやRNAなどの核酸配列を種々のタイプの細胞へ導入するビヒクルとしての機能を達成しうるものであれば良く、特に限定されない。代表的には、ヒトを宿主とするAd2型、5型、11型、35型、ヒト以外を宿主とするサルAd、マウスAd、イヌAd、ヒツジAdおよびトリAdなどが挙げられる。
【0015】
本発明においてAdのゲノムとは特に限定されないが、特定の細胞種でのみ複製できるようにしたAdのゲノム、具体的にはE1領域欠損型Adや、制限増殖型Adのゲノムなどが好適であり、特に好適にはE1領域欠損型のAdゲノムが挙げられる。特定の細胞種でのみ複製できるとは、例えばE1領域欠損型Adについては293細胞で、制限増殖型Adについては293細胞や癌細胞でのみ増殖できることをいう。
【0016】
E1領域欠損型Adゲノムとは、E1領域を欠損するAdゲノムをいい、制限酵素によりE1領域を切断し、欠損させたAdゲノムをいう。E1領域欠損とは、E1タンパク質をコードする領域を機能的に欠損させることを意味する。機能的に欠損させるとは、例えば、宿主細胞内で機能するE1タンパク質を発現させないようにすることであり、E1タンパク質をコードする遺伝子のすべてを欠損している必要はない。
一般に、AdにおいてE1領域を欠損させると、E1タンパク質を発現している細胞(例えば、293細胞)以外では増殖することができない。
【0017】
5型Adゲノム(GenBank Accession番号:M73260, M29978)の場合においてE1領域とは、具体的には342〜3253番目に相当する。したがって、本発明のAdベクタープラスミドは、宿主細胞内で機能するE1タンパク質を発現しないのであれば、342〜3253番目の領域の一部を有するものであってもよい。
【0018】
本発明のAdベクタープラスミドは、E1領域の他に、例えばE3領域を欠損させた5型Adゲノムの一部または全部であっても良い。5型Adゲノム(GenBank Accession番号:M73260, M29978)のE3領域とは、28133〜30818番目または27865〜30995番目に相当する部位をいう。
【0019】
制限増殖型Adは、E1タンパク質の発現が例えば癌細胞でのみ起こるAdであり、NATURE MEDICINE, 7, 781-787 (2001)に報告されているものを例示することができる。
【0020】
本発明のAdベクタープラスミドに備えられるプロモーターは、特に制限されない。例えば、ポリメラーゼII系(pol II系)またはポリメラーゼIII系(pol III系)のいかなるプロモーターであっても良い。具体的にはpol III系のプロモーターとしてU6プロモーターやH1プロモーターを例示することでき、pol II系のプロモーターとしてCMVプロモーターを例示することできる。
【0021】
本発明において、Adゲノムに対するプロモーターの導入位置は特に限定されない。プロモーターの導入位置は、アデノウイルスの複製に影響を及ぼさない部位であればどこでもよい。例えば、E1欠損領域、E3領域やE4領域と3’ITR(internal terminal repeat)の間の領域であってもよく、好適には、E1欠損領域が挙げられる。
【0022】
本発明におけるAdに対してユニークな制限酵素とは、AdゲノムDNAに本来存在しない制限酵素を意味する。同様に、導入されたプロモーターに対してユニークな制限酵素とは、該導入されたプロモーターDNAに本来存在しない制限酵素を意味する。このような制限酵素として、例えばClaI、SwaI、XbaI、Csp45I、PacI、I−CeuI、PI−SceIおよびI−SceIが挙げられる。本発明のAdベクタープラスミドに備えられる1または複数の制限酵素の認識部位は、上記に挙げられた制限酵素から1または複数、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜2の制限酵素を認識する配列であれば良い。より好適にはClaI、SwaI、XbaIおよびCsp45Iから選択される1または複数の制限酵素を認識する配列を本発明のAdベクタープラスミドに備えることができる。
【0023】
制限酵素認識配列の少なくとも1は、プロモーター領域の転写開始点付近に配置することが好ましく、例えば転写開始点から塩基数±20、好適には±10以内の領域に配置するのが好ましく、制限酵素認識配列中に転写開始点を含むように配置するのがより好ましい。
【0024】
本発明のAdベクタープラスミドの作製工程において、1または複数の制限酵素の認識配列を、各々制限酵素で消化し、外来塩基配列をシャトルベクターを介することなく、インビトロライゲーションにより導入することができる。導入する外来塩基配列の塩基長は、特に限定されないが、好ましくは10kb以下であり、ライゲーションが従来困難であった比較的短い塩基長、例えば15〜100bp、好ましくは20〜80bpの外来塩基配列をインビトロライゲーションにより導入することができる。導入する外来塩基配列は、特に限定されないが、例えば、タンパク質或いはペプチドをコードする塩基配列、所定の遺伝子の制御領域に存在する塩基配列、所定のタンパク質が結合できる塩基配列等、如何なる塩基配列であってもよい。特に、所定の遺伝子の制御に関連する塩基配列、例えば目的の標的遺伝子に対するsiRNA配列若しくはshRNAをコードする塩基配列が好適である。このような塩基配列を有するオリゴDNAを合成したものを使用することができる。
【0025】
さらに、例えばAdゲノムのE3領域の欠損部位に、発現を制御するプロモーター配列、例えばルシフェラーゼをコードする遺伝子およびポリA配列をこの順で有する塩基配列を導入することで、ルシフェラーゼ活性を測定して導入効率を評価することができる。また、ルシフェラーゼをコードする遺伝子に代えて、GFPをコードする遺伝子を用いた場合には、導入細胞におけるグリーン蛍光を測定することで、導入効率を評価することもできる。
【0026】
上記により得られたAdベクタープラスミドは、上記プラスミドゲノム両末端を、制限酵素を用いて線状にし、これを例えば293細胞(E1領域欠損型Adベクターや制限増殖型Adベクターの場合)または癌細胞(制限増殖型Adベクターの場合)にトランスフェクションするだけで、外来塩基配列、例えばsiRNA発現Adベクターの作製が可能となった。プラスミドゲノム両末端に存在する制限酵素の認識配列として、Adに対してユニークな制限酵素であって、上記E1領域などのクローニングに使用していない制限酵素の認識配列を導入することができる。そのような条件において、例えばPacI、ClaI、SwaI、XbaI、Csp45I、I−CeuI、PI−SceIおよびI−SceIから選択されるいずれかの制限酵素の認識配列を導入することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)Adベクタープラスミドの作製
1.pAdHM4の作製
E1領域およびE3領域の欠損型AdベクターゲノムであるpAdHM4は、非特許文献1に記載の方法により作製した。
【0029】
2.ヒトU6(hU6)プロモーター配列の導入
次に、pAdHM4のE1領域の欠損部位にhU6プロモーター配列を導入し、AdベクタープラスミドpAdHM4−hU6(1)、pAdHM4−hU6(2)およびpAdHM4−hU6(3)を構築した(図1a)。
【0030】
shRNAをコードするオリゴヌクレオチドを、直接的にhU6プロモーター配列の下流領域に導入するために、hU6プロモーターの下流領域には、ユニークな制限酵素認識部位(例えばClaI、SwaI、XbaI)および転写開始部位が必要である(図1、図2)。このような、制限酵素認識部位を導入した変形hU6プロモーターとして、以下に示すhU6(1)、hU6(2)およびhU6(3)プロモーターを構築した。
【0031】
hU6(1)およびhU6(2)プロモーター配列は、ClaI認識部位およびXbaI認識部位を含み、hU6(3)プロモーター配列は、SwaI認識部位およびXbaI認識部位を含む。ClaI若しくはSwaI、またはXbaIで消化されたpAdHM4−hU6(1)、pAdHM4−hU6(2)およびpAdHM4−hU6(3)のベクタープラスミドは、必要な配列を導入するために−20℃で保存することができ、次回以降再度消化する必要がなく、便利である。
ClaI若しくはSwaI、またはXbaIで消化されたpAdHM4−hU6(1)、pAdHM4−hU6(2)およびpAdHM4−hU6(3)等は、通常の方法により、大腸菌に形質転換した。
【0032】
i)各種プロモーター配列の増幅
ヒトU6プロモーター配列は、ヒトcDNAライブラリー(Clontech社)を用いて以下のプライマーで増幅した。
hU6-S1:5'- aaggtcgggcaggaagagggccta-3'(配列番号1)
hU6-AS1:5'- ggtctagaagtatcgatgtttcgtcctttccacaagatata-3'(配列番号2)
制限酵素XbaIおよびClaI認識部位は各々下線を施した。
hU6-AS2:5'- ggtctagaagtatcgattttcgtcctttccacaagatatat-3'(配列番号3)
制限酵素XbaIおよびClaI認識部位は各々下線を施した。
hU6-AS3:5'- ggtctagaagtatttaaattcgtcctttccacaagatatataa-3'(配列番号4)
制限酵素XbaIおよびSwaI認識部位は各々下線を施した。
配列は、DNAシークエンサー(ABI PRISM 310, Applied Biosystems社)を用いて決定した。
【0033】
hU6(1)、hU6(2)およびhU6(3)プロモーター配列は、各々hU6-S1/hU6-AS1、hU6-S1/hU6-AS2またはhU6-S1/hU6-AS3のプライマーセットを用いて増幅した(図2)。これらのプロモーター配列を、I−CeuIおよびPI−SceI認識部位(非特許文献1、2)を用いてインビトロライゲーションによりpAdHM4(非特許文献2)の誘導体であるE1領域欠損型のベクタープラスミドpAdHM4.1に導入した。Adゲノムの外側にはXbaI認識部位はない。
【0034】
3.siRNA発現用組換Adベクタープラスミドの構築(ルシフェラーゼ)
ルシフェラーゼに対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチドを合成し、ClaI/XbaIで消化したpAdHM4−hU6(2)、またはSwaI/XbaIで消化したpAdHM4−hU6(3)に組込み、ルシフェラーゼを標的遺伝子とする場合のsiRNAを発現するための組換Adベクタープラスミドを作製した。各組換Adベクタープラスミドは、各々、pAdHM4−hU6(2)−Lu、pAdHM4−hU6(3)−Luとした。
【0035】
ルシフェラーゼに対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチド
(a) 5'-cgacgctgagtacttcgaaatttcaagagaatttcgaagtactcagcgttttttggaaat-3'
(配列番号5)
(b) 5'-ctagatttccaaaaaacgctgagtacttcgaaattctcttgaaatttcgaagtactcagcgt-3'
(配列番号6)
(c) 5'-ccacgctgagtacttcgaaatttcaagagaatttcgaagtactcagcgttttttggaaat-3'
(配列番号7)
(d) 5'-ctagatttccaaaaaacgctgagtacttcgaaattctctcttgaaatttcgaagtactcagcgtgg-3'
(配列番号8)
配列は、DNAシークエンサー(ABI PRISM 310, Applied Biosystems社)を用いて決定した。
【0036】
配列番号5および6に記載のオリゴヌクレオチドが1セットで、このセットでpAdHM4−hU6(2)に使用し、pAdHM4−hU6(2)−Luが生じる。また、配列番号7と8に記載のオリゴヌクレオチドが1セットで、このセットでpAdHM4−hU6(3)に使用し、pAdHM4−hU6(3)−Luが生じる。
【0037】
4.siRNA発現用組換Adベクタープラスミドの構築(p53)
p53に対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチド(Brummelkamp et al., Science, 296, 550-3, 2002)を合成し、ClaI/XbaIで消化したpAdHM4−hU6(1)、pAdHM4−hU6(2)またはSwaI/XbaIで消化したpAdHM4−hU6(3)に組込み、p53を標的遺伝子とする場合のsiRNAを発現するための組換Adベクタープラスミドを作製した。各組換ベクタープラスミドは、pAdHM4−hU6(1)−p53,pAdHM4−hU6(2)−p53,pAdHM4−hU6(3)−p53)とした。
【0038】
p53に対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチド
(e) 5'-cgactccagtggtaatctacttcaagagagtagattaccactggagtctttttggaaat-3'
(配列番号9)
(f) 5'-ctagatttccaaaaagactccagtggtaatctactctcttgaagtagattaccactggagt-3'
(配列番号10)
(g) 5'-cggactccagtggtaatctacttcaagagagtagattaccactggagtctttttggaaat-3'
(配列番号11)
(h) 5'-ctagatttccaaaaagactccagtggtaatctactctcttgaagtagattaccactggagtc-3'
(配列番号12)
(i) 5'-ccgactccagtggtaatctacttcaagagagtagattaccactggagtctttttggaaat-3'
(配列番号13)
(j) 5'-ctagatttccaaaaagactccagtggtaatctactctcttgaagtagattaccactggagtcgg-3'
(配列番号14)
配列は、DNAシークエンサー(ABI PRISM 310, Applied Biosystems社)を用いて決定した。
【0039】
配列番号9および10に記載のオリゴヌクレオチドが1セットで、このセットでpAdHM4−hU6(1)に使用し、pAdHM4−hU6(1)−p53が生じる。また、配列番号11と12に記載のオリゴヌクレオチドが1セットで、このセットでpAdHM4−hU6(2)に使用し、pAdHM4−hU6(2)−p53が生じる。同様に、配列番号13と14に記載のオリゴヌクレオチドが1セットで、このセットでpAdHM4−hU6(3)に使用し、pAdHM4−hU6(3)−p53が生じる。
【0040】
shRNAをコードするオリゴヌクレオチド配列が組み込まれた各組換ベクタープラスミドは、XbaI認識部位では再度消化することができるが、ClaIまたはSwaI認識部位では消化されないようにデザインされている。
【0041】
3.および4.により、ルシフェラーゼおよびp53に対するsiRNAの発現ベクタープラスミドを容易に作製した。90%以上のAdベクタープラスミドには、正確にsiRNAをコードする配列が導入されていた。
【0042】
(実施例2)Adベクターの構築
実施例1により得られたAdベクタープラスミドを、制限酵素により消化し、直鎖ベクタープラスミドとしたものを293細胞にトランスフェクションすることにより、Adベクターを作製した。
具体的には、pAdHM4−hU6(2)−Lu、pAdHM4−hU6(3)−Lu、pAdHM4−hU6−p53、pAdHM4−hU6(1)−p53、pAdHM4−hU6(2)−p53またはpAdHM4−hU6(3)−p53)をPacIで消化し、293細胞にトランスフェクションすることにより、Ad−hU6(2)−Lu、Ad−hU6(3)−Lu、Ad−hU6−p53、Ad−hU6(1)−p53、Ad−hU6(2)−p53、Ad−hU6(3)−p53などの各Adベクターを作製した。
293細胞は、10%ウシ胎児血清(FCS)を含むDMEM培養液を用いて10日間培養し、各々直鎖ベクタープラスミドをトランスフェクションし、Adベクターを作製した。作製したAdベクターをCsCl勾配遠心分離により精製し、10mM Tris(pH 7.5),1mM MgClおよび10%グリセロールを含む溶液で透析し、−70℃で保存した。
【0043】
(比較例1)従来法によるAdベクタープラスミドの構築
piGene hU6(iGENE Therapeutics, Tsukuba, Japan)から入手したインタクトhU6プロモーター配列をシャトルベクタープラスミドpHM5に導入し、pHM5−hU6を作製した。
【0044】
以下は、ルシフェラーゼまたはp53に対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチドの配列である。
(k) 5'-caccacgctgagtacttcgaaatttcaagagaatttcgaagtactcagcgtttttt -3'
(配列番号15)
(l) 5'-tacgaaaaaacgctgagtacttcgaaattctcttgaaatttcgaagtactcagcgt-3'
(配列番号16)
(m) 5'-caccgactccagtggtaatctacttcaagagagtagattaccactggagtctttttggaaa-3'
(配列番号17)
(n) 5'-gcattttccaaaaagactccagtggtaatctactctcttgaagtagattaccactggagtc-3'
(配列番号18)
配列は、DNAシークエンサー(ABI PRISM 310, Applied Biosystems社)を用いて決定した。
【0045】
配列番号15と16に記載のオリゴヌクレオチドが1セットで、このセットで、以下の方法によりpHM5−hU6−Luを作製し、さらにこれをpAdHM4のE1領域にI−CeuIとPI−SceI部位を用いて導入し、pAdHM4−hU6−Luが生じる。同様に、配列番号17と18に記載のオリゴヌクレオチドが1セットで、このセットでpHM5−hU6−p53を作製し、さらにこれをpAdHM4のE1領域にI−CeuIとPI−SceI部位を用いて導入し、pAdHM4−hU6−p53が生じる。
【0046】
使用説明書(iGENE Therapeutics. Inc.)に従い、pHM5−hU6のBspMI認識部位にルシフェラーゼまたはp53に対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチドを導入して、shRNA発現カセットを作製した。次にshRNA発現カセットをpAdHM4のE1領域にI−CeuIとPI−SceI部位を用いて導入し、pAdHM4−hU6−LuまたはpAdHM4−hU6−p53を構築した(非特許文献1)。
比較例1により得られたAdベクタープラスミドを、制限酵素により消化し、直鎖ベクタープラスミドとしたものを293細胞にトランスフェクションすることにより、Adベクターを作製した。
【0047】
(比較例2)標的配列を含まないAdベクターの構築
インタクトなhU6プロモーター配列のみを有し、標的配列を含まないAdベクター(Ad−hU6)も、実施例1および比較例1と同手法にてpAdHM4−hU6およびpHM5−hU6により構築した。
【0048】
(実験例1)ウイルスの生物学的タイターと物理化学的タイターの測定
Adeno-X Rapid Titer キット(Clontech, Palo Alto, CA, USA)を用いて生物学的タイター(infectious titer/ml)を、Maizel et al. (Maizel et al., Virology, 36, 115-25, 1968)の光学的手法により、物理化学的タイター(particle titer (PT)/ml)を測定した。生物学的タイターと物理化学的タイターの比は、Ad−hU6で1:36、Ad−hU6−Luで1:31、Ad−hU6(2)−Luで1:28、Ad−hU6(3)−Luで1:24、Ad−hU6−p53で1:22、Ad−hU6(1)−p53で1:29、Ad−hU6(2)−p53で1:12、Ad−hU6(3)−p53で1:15であった。
【0049】
(実験例2)細胞への形質導入およびルシフェラーゼアッセイ
ネオマイシン耐性遺伝子を有したルシフェラーゼ発現用プラスミドをA549細胞(肺癌細胞)にトランスフェクションし、安定にルシフェラーゼを発現するA549−Luc細胞を作製した。A549−Luc細胞は10%ウシ胎児血清(FCS)を含むDMEM培養液を用いて培養した。A549−Luc細胞を2×10cellsを12ウェルのディッシュに播種した。
【0050】
翌日、ルシフェラーゼに対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチドを含むベクター、即ちルシフェラーゼに対するsiRNAの発現ベクターであるAd−hU6(2)−LuまたはAd−hU6(3)−Luについて、各々300VP/cell、1000VP/cellまたは3000VP/cellをA549−Luc細胞に1.5時間形質導入した。同様にshRNAをコードするオリゴヌクレオチドを含まないベクター(Ad−hU6)およびp53に対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチドを含むベクター(Ad−hU6(1)−p53)を形質導入し、陰性コントロールとした。
【0051】
A549−Luc細胞でのルシフェラーゼの産生のために72時間細胞培養し、siRNAの各発現ベクターのルシフェラーゼ産生抑制効果を調べた。細胞中のルシフェラーゼの産生は、ルシフェラーゼアッセイシステム (PicaGene LT2.0; 東洋インキ社)を用いて測定した。
【0052】
その結果、Ad−hU6(2)−LuまたはAd−hU6(3)−Luを用いた場合は、ルシフェラーゼの発現は抑制された(図3)。
【0053】
(実験例3)細胞への形質導入およびp53のウエスタンブロッティング
次に、p53に対するshRNAをコードするオリゴヌクレオチドを含むベクターを用いて、発現したp53に対するsiRNAのRNAi効果について確認した。p53遺伝子は癌抑制遺伝子の一種であり、遺伝子産物としてp53タンパク質を発現する。
【0054】
Ad−hU6、Ad−hU6−Lu、Ad−hU6−p53、Ad−hU6(1)−p53、Ad−hU6(2)−p53またはAd−hU6(3)−p53について、各々300VP/cellまたは1000VP/cellをA549細胞(肺癌細胞)に1.5時間形質導入し、3日間培養した。その後、A549細胞からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティングによりp53の発現を調べた。
【0055】
細胞抽出液は、プロテアーゼインヒビターのカクテルを含む溶解緩衝液(25 mM Tris [pH 7.5], 1% Triton X-100, 0.5% sodium deoxycholate, 5 mM EDTA, 150 mM NaCl)(シグマ社)を用いて調製した。タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンを標準にして Bio-Rad assay kit (Bio-Rad社)を用いて測定した。
タンパク質試料液(10μg)を、12.5% SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いてImmobilon-P膜(Millipore社)により電気泳動した。ブロックエース(大日本製薬)でブロックした後、膜を抗p53抗体 (Santa Cruz Biotechnology社)とともに加温し、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体(American Qualex Antibodies社)またはペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgM抗体(Oncogene Research Products社)とともに加温したものについて、蛍光測定により計測した。シグナルは、 LAS-3000(富士フィルム社)を用いて計測し、Image Gauge Software(富士フィルム社)を用いて定量した。
【0056】
その結果を図4に示した。図4において、各レーンに付した試料は、以下に示す各ベクターを形質導入したA549細胞である。
1:Ad−hU6
2:Ad−hU6−Lu
3:Ad−hU6−p53
4:Ad−hU6(1)−p53
5:Ad−hU6(2)−p53
6:Ad−hU6(3)−p53
【0057】
アクチンは、内在コントロールとした。A549細胞(肺癌細胞)でのp53の発現は、Ad−hU6(1)−p53、Ad−U6(2)−p53、Ad−U6(3)−p53処理によりAd−hU6−p53と同様の効果を示した。Ad−hU6−p53またはAd−hU6(1)−p53の抑制効果は、Ad−U6(2)−p53またはAd−U6(3)−p53で処理したときに比べて、1.5から2分の1程度劣った。Ad−hU6およびAd−hU6−Luについては、p53発現抑制は認められなかった(図4)。これらの結果から、ClaI若しくはSwaI認識部位を転写開始部位に含む新規hU6プロモーターは、従来法で作製されたhU6プロモーターと同様に効果的であり、本発明の作製方法により作製されたAdベクターは、標的遺伝子の発現を抑制しうることが確認された。
【0058】
従来のsiRNA発現用プラスミドでは、ApaI、BbsI、BgIII、EcoRV、SalI、XbaI認識部位を有するU6またはH1プロモーターを用いていた(Brummelkamp et al., Science 296, 550-553, 2002; Lee et al., Nat Biotechnol., 2002; Paddison et al., Genes Dev 16, 2002; Paul et al., Nat Biotechnol., 20, 500-5, 2002; Sui et al., Proc Nstl Acad Sci USA, 99, 5515-20, 2002; Yu et al., Proc Nstl Acad Sci USA, 99, 6047-52, 2002; Boden et al., Nucleic Acids Res., 31, 5033-8, 2003)。
【0059】
本実施例では、ClaI若しくはSwaI認識部位を転写開始部位に含み、プロモーターの下流領域にXbaI認識部位を含むU6プロモーターを用いた。従来のsiRNA発現用プラスミドに使用可能なすべてのプロモーターの改変、例えばU6またはH1プロモーターの改変は、効果的なRNAi作用のために有効である。前記の改変は、U6またはH1プロモーターの機能を損なわない。近年、ポリメラーゼII系など多くのタイプのポリメラーゼが、ポリメラーゼIII系と同様にsiRNA発現用に用いられるようになった。本発明は、他のsiRNA発現用プロモーターを用いても使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のAdベクター並びにAdベクタープラスミドの作製方法を利用することにより、所望の外来塩基配列をAdベクタープラスミドにライゲーションするだけで外来塩基配列発現用Adベクタープラスミドの作製が可能となり、例えば293細胞(E1領域欠損型Adベクターや制限増殖型Adベクターの場合)または癌細胞(制限増殖型Adベクターの場合)等にトランスフェクションすることで、Adベクターを極めて簡便作製ことができる。また、所望の外来塩基配列がsiRNAの場合には、siRNA発現Adベクターライブラリーの作製も容易になるため、創薬ターゲット遺伝子検索のための基盤技術の開発に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1a】siRNAの発現用のベクタープラスミド、pAdHM4−hU6(1)、pAdHM4−hU6(2)およびpAdHM4−hU6(3)を示す図である。pAdHM4−hU6(1)、pAdHM4−hU6(2)は、ClaIおよびXbaI認識部位含み、pAdHM4−hU6(3)はSwaIおよびXbaI認識部位を含む。
【図1b】Adベクター作製方法を示す図である。
【図2】(A)インタクトなhU6プロモーター配列を示す。(B)hU6(1)プロモーター配列を示す。このプロモーターにおいて、ClaI認識部位は転写開始位置に備えられる。(C)hU6(2)プロモーター配列を示す。このプロモーターにおいて、ClaI認識部位は転写開始位置に備えられる。(D)hU6(3)プロモーター配列を示す。このプロモーターにおいて、SwaI認識部位は転写開始位置に備えられる。
【図3】siRNAを発現するAdベクターを用いたときのA549−Luc細胞におけるルシフェラーゼの発現抑制効果を示す図である。
【図4】siRNAを発現するAdベクターを用いたときのA549細胞におけるp53の発現抑制効果を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
図4における符号は、以下のとおりである。
1:Ad−hU6
2:Ad−hU6−Lu
3:Ad−hU6−p53
4:Ad−hU6(1)−p53
5:Ad−hU6(2)−p53
6:Ad−hU6(3)−p53

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノウイルスのゲノムを含み、プロモーターおよびアデノウイルスに対してユニークな制限酵素の認識配列を1または複数備えてなることを特徴とするアデノウイルスベクタープラスミド。
【請求項2】
アデノウイルスに対してユニークな制限酵素の認識配列の少なくとも1が、プロモーター領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアデノウイルスベクタープラスミド。
【請求項3】
アデノウイルスのゲノムが、E1領域欠損型アデノウイルスのゲノム、または制限増殖型アデノウイルスのゲノムである請求項1または2に記載のアデノウイルスベクタープラスミド。
【請求項4】
プロモーターが、ポリメラーゼII系またはポリメラーゼIII系のプロモーターである請求項1〜3のいずれか1に記載のアデノウイルスベクタープラスミド。
【請求項5】
制限酵素の認識配列が、ClaI、SwaI、XbaI、Csp45I、PacI、I−CeuI、PI−SceIおよびI−SceIから選択される1または複数の制限酵素の認識配列である請求項1〜4のいずれか1に記載のアデノウイルスベクタープラスミド。
【請求項6】
以下の工程を含むアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法:
1)アデノウイルスのゲノムを準備する工程;
2)上記アデノウイルスのゲノムに、プロモーターを導入する工程;
3)上記アデノウイルスのゲノムに導入されたプロモーター領域に、アデノウイルスおよび該導入されたプロモーターに対してユニークな制限酵素の認識配列を1または複数導入する工程。
【請求項7】
アデノウイルスのゲノムが、E1領域欠損型アデノウイルスのゲノム、または制限増殖型アデノウイルスのゲノムである、請求項6に記載のアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法。
【請求項8】
プロモーターが、ポリメラーゼII系またはポリメラーゼIII系のプロモーターである請求項6または7に記載のアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法。
【請求項9】
制限酵素の認識配列が、ClaI、SwaI、XbaI、Csp45I、PacI、I−CeuI、PI−SceIおよびI−SceIから選択される1または複数の制限酵素の認識配列である請求項6〜8のいずれか1に記載のアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1に記載のアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法において、さらに外来塩基配列をライゲーションする工程を含むアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法。
【請求項11】
外来塩基配列の塩基長が、20〜80bpである請求項10に記載のアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法。
【請求項12】
前記外来塩基配列が、siRNAをコードする塩基配列を含む請求項10または11に記載のアデノウイルスベクタープラスミドの作製方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1に記載の作製方法で作製したアデノウイルスベクタープラスミドを、細胞にトランスフェクションすることによるアデノウイルスベクターの作製方法。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれか1に記載の作製方法で作製したアデノウイルスベクタープラスミドを、制限酵素で切断し、直鎖状としたものを細胞にトランスフェクションすることによるアデノウイルスベクターの作製方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−61582(P2008−61582A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243464(P2006−243464)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】