説明

アプライト型床面処理装置

【課題】 アプライト型床面処理装置において、操作性をさらに向上させるとともに、その構成の複雑化の回避を図る。
【解決手段】 アプライト型床面処理装置の一例として真空掃除機10Aを例示すれば、本体部の下部前方に、下面Suの角度が変更可能な吸引ノズル13が設けられ、本体部の上部にハンドル14が設けられた構成において、進行方向Mを規定する操舵輪15が本体部の下部後方に設けられ、かつ、ハンドル14と操舵輪15との間は、ハンドル軸16、操舵輪調節軸161および回動伝達部から構成される操舵連結部で連結されている。これにより、複雑な構成を採用せずに、本体部全体を動かすことなく、吸引ノズル13を容易に方向転換させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプライト型の掃除機、カーペット洗浄装置、または床面洗浄装置等の床面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アプライト型の床面処理装置は、一般的に縦型の本体部とハンドル等の把持部を上部に備え、本体部の下部には床面処理を行う床面処理部を本体部に対し揺動自在に配置した構成を有している。本体部の下面後方には、通常、車輪(またはローラ等の回転部材)が設けられており、使用時には、使用者がハンドルを把持して操作することで、前記車輪により床面処理装置を床面上の所望の位置で床面処理をすることが可能となっている。また、本体部は、通常、床面処理部に対して略直立状態で保持できるように構成されているので、不使用時には略直立した状態のままで置くことができる。なお、床面処理装置の運搬時には、固定状態のままハンドルを使用状態まで倒すことで、床面処理部を浮かした状態で車輪により床面上を移動させることも可能である。
【0003】
床面処理装置の一例として図14に示すように真空掃除機(吸引清掃装置)を例に挙げると、従来の一般的なアプライト型掃除機610は、ハンドル614が上部に、吸引モータや集塵部を備えた掃除機本体611が下部に位置しており、当該掃除機本体611に対して回転ブラシ等を備えた吸引ノズル613が設けられている。この吸引ノズル613は、通常、掃除機本体611の下部に設けられたノズル支持軸(図示せず)を軸として揺動可能に構成されている。使用時には、吸引ノズル613で吸引された塵埃は、すぐに掃除機本体611に集塵される。
【0004】
このように、アプライト型掃除機610は、掃除機本体611に対して吸引ノズル613が直接接続された構成となっているので、キャニスター型掃除機と比較すると次のような利点を有する。つまり、キャニスター型掃除機は、掃除機本体と吸引ノズルとの間にホースまたは延長管等を接続して使用する構成となっているが、アプライト型掃除機610は、掃除機本体610および吸引ノズル613が実質的に一体化している。それゆえ、キャニスター型掃除機よりも、その機動性が良好である。また、アプライト型掃除機610は、一般的に、吸引ノズル613に回転ブラシを備えていることから強い集塵力を発揮できるので、例えば、カーペット掃除等に好ましく用いることができる。
【0005】
前記一般的なアプライト型掃除機610を使用する際には、使用者は上部のハンドル614を把持して下部の掃除機本体611を介して吸引ノズル613を移動させればよい。これにより、使用者は実質的にハンドル614を把持するのみでアプライト型掃除機610全体を操作することが可能となる。
【0006】
ここで、アプライト型掃除機610を前後に移動させるときには、使用者が、前後に歩きながら、ハンドル614を把持する腕を前後に動かすだけでよいので、その操作は比較的容易である。ところが、アプライト型掃除機610を方向転換させるときには、その操作性が低下する傾向にある。
【0007】
具体的には、アプライト型掃除機610を方向転換するときの支点を転換支点P0と定義すれば、当該転換支点P0は、図14に示すように、掃除機本体611および吸引ノズル613の接続部位近傍となる。そして、転換支点P0から吸引ノズル613の先端P1までの長さを「L1」と定義し、転換支点P0からハンドル614の先端P2までの長さを「L2」と定義すれば、長さL2は長さL1よりも十分に長くなる。
【0008】
このような位置関係において、吸引ノズル613が方向転換するときの角度を、進行角ψと定義し、このときハンドル613の横方向(進行方向に交差する方向)への変位の程度を、変位量WLと定義する。そして、使用者が進行角ψの方向転換を実現しようとすれば、当該使用者は、図14に示すように、ハンドル614を横方向に大きく動かさなければ、進行角ψに対応する変位量WLを実現することができない。
【0009】
ここで、吸引ノズル613は集塵を行うために床面を吸引することになる。それゆえ、アプライト型掃除機610の使用時には、吸引ノズル613の下面には、床面を吸引する負圧が常に生じる。この負圧は、吸引ノズル613を移動させるときの抵抗となり得る。さらに、床面がカーペットであれば、吸引ノズル613の下面が、カーペットパイルと単純に接触するだけでも、それなりの抵抗を受ける。これに加えて、回転ブラシが回転しながらカーペットパイルをかき上げれば、吸引ノズル613の下面は、より一層の抵抗を受けることになる。
【0010】
アプライト型掃除機610を前後方向に移動させる場合には、使用者は、腕を肩の下で前後に動かせばよいので、使用者にとって腕に力が入りやすくなる。これに対して、方向転換を行う場合には、使用者は、腕を左右に動かしながら前後にも動かす必要が生じる。そのため、腕を単純に前後に動かす場合に比べて大きな力が必要となる。その結果、方向転換時におけるアプライト型掃除機610の操作性が低下してしまう。
【0011】
そこで従来から、アプライト型掃除機の操作性を向上させるための改良技術が提案されており、例えば、特許文献1には、操縦特性を改良した真空掃除機が開示されている。この真空掃除機は、下部ベースと、この下部ベースに取り付けられ回動自在な円筒形状モータハウジングと、このモータハウジングに取り付けられた自在継手とを備えている、この構成によれば、真空掃除機のハンドルを捩じることで、上部本体を時計周り、または、反時計周りに捩じることができ、この捩じりにより、下部ベースを右方向または左方向に曲げることができる。
【0012】
また、特許文献2には、操作性を向上させた表面処理機器が開示されている。表面処理機器の一例として真空掃除機が挙げられており、この真空掃除機は、本体の基部に位置するローラ組立品と、ハンドルおよびクリーナヘッドの間に位置するリンク機構とを備えている。リンク機構とクリーナヘッドは支持軸により左右方向に揺動自在に接続されており、リンク機構は、ローラ組立品とハンドルとをハンドルの長手軸を中心に回転させたときにクリーナヘッドを新たな方向に転向させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表平9−503398号公報(対応国際公開番号:WO95/01748)
【特許文献2】特許4077823号公報(対応国際公開番号:WO2004/014211)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記従来の改良技術では、アプライト型床面処理装置の形状によっては、その操作性を十分に向上できない場合があることに加え、アプライト型床面処理装置の構成の複雑化を招くおそれがあることが、本発明者の詳細な検討により明らかとなった。
【0015】
具体的には、例えば、図13(a),(b)に模式的に示す真空掃除機510,520は、それぞれ、特許文献1に開示される真空掃除機または特許文献2に開示される表面処理機器に対応しているが、これら真空掃除機510,520は、柱状の掃除機本体511または521と、当該掃除機本体511または521の下部に取り付けられている吸引ノズル513または523(特許文献1では「下部ベース」、特許文献2では「クリーナヘッド」)とを備え、掃除機本体511または521に対し吸引ノズル513または523を中央のノズル支持軸517または527一点で揺動可能に支持している点で共通している。
【0016】
このような構成の真空掃除機510,520においては、いずれも上部のハンドル514または524を捩じる(図中矢印W1またはW2)ことで掃除機本体511または521を介して吸引ノズル513または523の方向転換を行うことになる。この場合、使用者がハンドル514または524を捩じるときに、上下方向に延伸する掃除機本体511または521が左右の回転方向に大きく揺動するので、掃除機本体511または521の重量が遠心力を加えてハンドル514または524を把持する手に掛かることになる。そのため、使用者は、方向転換時に手に掛かるモーメントが大きくなり、手に大きな荷重を受けるようになることから、ハンドル514または524の方向転換を重く感じてしまい、結果として、方向転換時の操作性を妨げてしまう。
【0017】
また、前記いずれの真空掃除機510,520においても、方向転換時にハンドル514,524を捩じるときの外力およびその応力は、支点513a,523aに集中してしまう。そのため、当該支点513a,523aの近傍の部位は、これら外力および応力に耐え得る強度が要求される。より高い強度を実現するためには、それ相応の構造または材料が必要となるため、掃除機の構成が複雑化するおそれがある。特に、真空掃除機520の場合、掃除機本体521と吸引ノズル523とは、ローラ組立品522を介してリンク機構の支持軸527で連結されているため、このリンク機構および支持軸527に外力および応力が集中しやすくなる。
【0018】
さらに、ローラ組立品522を備える真空掃除機520では、吸引用ファンおよびこれを駆動するためのモータ(吸引用モータ)をローラ組立品522の内部に収容する構成となっている。例えば、吸引ノズル523の内部に回転ブラシが設けられている構成であれば、ローラ組立品522は、リンク機構を介して吸引ノズル523と接続されているため、その構造上、前記吸引用モータは、回転ブラシを駆動するためのモータとして兼用することができない。それゆえ、吸引ノズル523内には、回転ブラシを回転駆動するための専用のモータを別途設ける必要がある。つまり、特許文献2に開示の表面処理機器が掃除機であれば、必然的に2モータ構成を採用することになり、掃除機の構成が、より一層複雑化する。
【0019】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、アプライト型床面処理装置において、操作性をさらに向上させるとともに、その構成の複雑化の回避を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るアプライト型床面処理装置は、前記の課題を解決するために、柱状の本体部と、処理対象の床面に対する下面を有し、前記本体部の下部に取り付けられている床面処理部と、前記本体部の上部に設けられ、使用者によって把持される把持部と、前記本体部の下部に、前記床面に当接可能となる位置に設けられ、その角度により前記床面処理部の進行方向を規定する操舵輪と、前記本体部における前記把持部および前記操舵輪の間に設けられ、前記把持部の操作に応じて、前記本体部および前記床面処理部から独立して前記操舵輪の角度を変更する操舵連結部と、を備えている構成である。
【0021】
前記構成によれば、把持部と操舵輪とが、柱状の本体部に設けられる操舵連結部により連結されている。そのため、使用者が把持部を操作することにより、本体部全体を動かすことなく、操舵連結部を介して操舵輪の角度を変更することができる。それゆえ、使用者にとっては、把持部の操作に重さを感じることなく、床面処理部を容易に方向転換させることができる。しかも、別途操作部等を設けることなく、把持部および操舵輪を連結する操舵連結部を備えるだけでよいので、床面処理装置の構成の複雑化を有効に抑制することができる。したがって、アプライト型床面処理装置において、操作性をさらに向上させるとともに、その構成の複雑化を回避することができる。
【0022】
前記アプライト型床面処理装置においては、前記操舵連結部の一例として、前記本体部に対して回動可能に設けられ、その上端に前記把持部が固定されている回動軸と、当該回動軸の回動位置に合わせて前記操舵輪の角度を変更するように、前記回動軸の下端および前記操舵輪の間を連結する回動伝達部と、を備えている構成を挙げることができる。
【0023】
前記構成によれば、操舵連結部が回動軸および回動伝達部により構成されているため、把持部を回動させる動きを操舵輪に伝達し、当該操舵輪の角度を変えることが可能となる。それゆえ、複雑な構成を採用することなく、床面処理装置の操作性の向上を図ることが可能となる。また、本体部に対して揺動自在に取り付けられている床面処理部を本体部の左右で後述の処理部支持軸等により支持することが可能となるので、本体部に対する床面処理部の取り付け強度の向上を図ることが可能となる。
【0024】
さらに、前記操舵連結部は、前記回動軸の下端に連結されるギア機構またはジョイント機構と、当該ギア機構またはジョイント機構を上端に連結し、下端に前記回動伝達部を連結する第二回動軸と、をさらに備え、前記回動軸の上端に固定されている前記把持部は、前記本体部から見て前記進行方向の前寄りに位置してもよい。
【0025】
前記構成によれば、必要に応じてギア機構またはジョイント機構を用いることで、回動伝達部に連結される第二回動軸の位置に拘束されずに、本体部に対する把持部の位置を前寄りに設定することができる。それゆえ、家具またはベッドの下等の上下方向に狭い領域を床面処理する等の用途で、本体部を略水平状態とする場合であっても、把持部の位置を高い位置に保持することができる。それゆえ、使用者は、把持部を把持した状態でも腰を大きくかがめる必要性が低減されるので、操作性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0026】
また、操舵連結部がギア機構を備えているため、当該ギア機構に「変速機能」を付与することで、アプライト型床面処理装置の操作性を向上させることも可能である。例えば、把持部の操作により回動軸が回動するときの動きの「速度」を増加させれば、回動軸角度変化が小さくても、第二回動軸の角度変化を大きくすることができるので、操舵輪の角度変化も大きくすることができる。あるいは、回動軸が回動するときの動きの「速度」を低下させれば、使用者が把持部を操作するときに、回動軸の角度変化に要する力が軽減されるので、使用者は、より「軽い力」で把持部の操作を行うことが可能となる。
【0027】
前記アプライト型床面処理装置においては、前記操舵輪は1個のみでもよいが、複数設けられていてもよく、この場合、全ての前記操舵輪は、前記床面処理部の進行方向に直交する方向に沿って、一列に並んでいることが好ましい。
【0028】
前記構成によれば、操舵輪が複数設けられることで、床面処理装置の移動性を向上できるとともに、複数の操舵輪が進行方向に直交する方向に沿って並んでいれば、把持部の操作が例えば捩じり操作であれば、操作方向と床面処理部の転換方向とを直接的に対応させることができるので、方向転換の操作にわかりにくさが生じるおそれを回避することも可能となる。また、複数の操舵輪が一列に並んでいる構成においては、使用者が把持部を操作することにより、全ての操舵輪が同一の方向に向かって角度変化するように構成されていれば、床面処理部の進行方向を操舵輪で有効に規制することができる。
【0029】
前記構成においては、前記回動伝達部は、前記回動軸の下端に一方の端が固定されているカム部と、当該カム部の他方の端および前記操舵輪を連結するアーム部と、から少なくともなる構成を好ましい一例として挙げることができる。
【0030】
前記構成によれば、カム部およびアーム部の組合せによって、複数の操舵輪に対して回動軸の動きを良好に伝達することができるので、簡素な構成により操作性の向上を図ることが可能となる。
【0031】
また、前記構成においては、前記操舵輪には、当該操舵輪の上方を覆った状態で、当該操舵輪の転動軸を支持するカバー部材が設けられ、前記アーム部は、前記カバー部材における前記進行方向の前方または後方となる部位と、前記カム部の他方の端とを連結している構成を挙げることができる。
【0032】
前記構成によれば、カバー部材で操舵輪を覆うことで、操舵輪を保護できることに加え、当該カバー部材が回動伝達部と操舵輪とを接続する接続部材としても機能するので、操舵輪の保護と部材点数の増加の抑制との双方を実現することができる。
【0033】
また、前記アプライト型床面処理装置においては、前記操舵連結部の他の例として、電気信号の入力により前記操舵輪の角度を調節する車輪角度調節部と、前記把持部の操作を、前記車輪角度調節部に入力する電気信号に変換する角度調節信号生成部と、を備えている構成を挙げることもできる。
【0034】
前記構成によれば、回動軸および回動伝達部を備える機械的構成の操舵連結部に代えて、電気的構成の操舵連結部を備えていることになる。本発明では、当該構成でも、機械的構成と同様の効果を奏することができる。
【0035】
また、前記アプライト型床面処理装置においては、前記操舵輪の外周面が、前記本体部を起立させた状態では床面から離れ、前記起立させた状態から前記進行方向の後側に傾斜させた状態では前記床面に当接するように、当該操舵輪が前記本体部に取り付けられている構成であると好ましい。具体的には、操舵輪を覆うカバー部材を設けている構成であれば、当該カバー部材の前方を突出させてカバー前爪を備える構成を挙げることができる。
【0036】
前記構成によれば、本体部が起立状態であれば、操舵輪が床面から離れるため床面処理部が不用意に移動することがない。一方、使用者が把持部を把持して本体部を傾斜させれば、操舵輪が床面に当接するので、床面処理部を移動可能な状態とすることができる。このように本体部を起立させたり傾斜させたりするだけで、不使用状態または使用状態への切り換えが可能となるので、操作性をさらに一層向上させることができる。
【0037】
前記構成においては、さらに、前記本体部の下部に設けられ、当該本体部の延伸方向に対する前記下面の角度を変更する方向に、前記床面処理部を揺動可能に支持する処理部支持軸を備え、前記操舵輪は、前記本体部の下部において、前記床面処理部の進行方向の後方となる位置に設けられていることが、より好ましい。
【0038】
前記構成によれば、床面処理部は、本体部に対して処理部支持軸を軸として揺動可能に設けられており、操舵輪が本体部の下部後方に位置している。それゆえ、使用時に本体部を傾斜させれば、操舵輪の外周面が床面に当接するように、処理部支持軸の略下方に当該操舵輪を位置させることができ、また、不使用時に本体部を起立させれば、操舵輪の外周面を床面から離すことができる。それゆえ、使用者は軽い力で把持部を把持して本体部を起立させたり、傾斜させたりするだけで、操舵輪を容易に床面に当接させたり離したりすることができる。
【0039】
例えば、前述のようにカバー前爪を備える構成であれば、床面処理部が本体部に対し可動自在な状態で設けられているので、使用者は軽い力で把持部を把持して本体部を起立させるだけで、操舵輪を床面から容易に離すことができる。つまり、可動部を支点、本体部の上方に位置する把持部を力点、操舵輪を作用点と見なせば、支点から作用点(操舵輪)の距離に対し支点から力点(把持部)までの距離が長くなる。それゆえ、使用者は軽い力で把持部を把持して本体部を起立させるだけで、作用点(操舵輪)の近傍の突出したカバー体前方が操舵輪の下方に移動するため、操舵輪は床面から容易に離すことができる。したがって、操舵輪を床面から離したり当接したりするために複雑な構成を用いる必要がなく、床面処理装置の構成の複雑化を有効に回避することができる。
【0040】
さらに、前記処理部支持軸を備える構成において、前記操舵輪は、その外周面が全体的に平坦であるか、その外周面の縁部が中央部よりも突出した形状となっていると、より好ましい。
【0041】
前記構成によれば、本体部の傾斜状態における処理部支持軸の位置は、起立状態における処理部支持軸の鉛直方向の位置よりも高くなるが、本体部を倒伏状態とすれば、処理部支持軸の位置を、起立状態の位置に近づけることができる。しかも、本体部が倒伏状態にあれば、床面処理部の下方であって、処理部支持軸の前方に操舵輪が位置することから、床面処理部は、操舵輪によって移動可能な状態に維持されている。それゆえ、上下方向に狭い領域であっても、本体部を倒伏状態とするだけで、床面処理部の全体的な位置も低くすることができるので、ベッド等の家具下の床面を好適に掃除することができる。
【0042】
また、操舵輪の外周面が全体的に平坦であるか、縁部が中央部よりも突出した形状となっていれば、倒伏状態でハンドルを操作することにより操舵輪の縁部が床面と接することで処理部支持軸を押し上げることができる。それゆえ、本体部が倒伏状態となることで床面処理部の前部が少し浮いた状態となるおそれを有効に緩和し、床面に対する密着性を向上させることができる。その結果、床面処理作用の低下を有効に抑制することができながら床面処理位置の移動を軽快に行うことができる。
【0043】
さらに、前記操舵輪の少なくとも外周面は、弾性材料により構成されていることが好ましい。
【0044】
前記構成によれば、弾性材料で構成された外周面と床面とが当接するため、操舵輪が床面上で滑るようなおそれを有効に抑制することができる。それゆえ、床面処理装置の操作性をさらに一層向上させることができる。
【0045】
本発明に係るアプライト型床面処理装置の具体的構成は特に限定されず、さまざまな種類の床面処理装置に本発明を適用することができるが、代表的な床面処理装置として、真空掃除機を挙げることができる。この真空掃除機の具体的構成としては、例えば、前記本体部が吸引モータおよび集塵室を備え、前記床面処理部が回転ブラシを備えている構成を挙げることができる。
【発明の効果】
【0046】
以上のように、本発明によれば、アプライト型床面処理装置の操作性をさらに向上できるともに、その構成の複雑化を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1に係るアプライト型床面処理装置の一例である真空掃除機の前面側の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す真空掃除機の背面側の構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示す真空掃除機の不使用状態の一例を示す概略側面図である。
【図4】(a)は、図1に示す真空掃除機が備える操舵連結部の要部構成の一例を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す操舵連結部において破線の円で囲んだ部位である、カム部およびアーム部の取付構成の一例を示す部分断面図であり、(c)は、(a)に示す操舵連結部が備える操舵輪が、真空掃除機の下部における位置の例を示す概略背面図である。
【図5】(a),(b)は、図4(a)に示す操舵連結部による操舵輪の角度変化の一例を示す模式図である。
【図6】(a)および(b)は、図1に示す真空掃除機に用いられる操舵輪の外形の一例を示す模式図であり、(c)は、図4(c)に示す操舵輪を備える真空掃除機を略水平に配置させてハンドルを捩じる動作を行ったときの操舵輪の挙動を示す模式図である。
【図7】図1に示す真空掃除機が起立状態および傾斜状態にあるときの側面からの対比を示す模式図である。
【図8】(a)〜(c)は、図1に示す真空掃除機が備える吸引ノズルと操舵輪との位置関係を示す部分側面図である。
【図9】図1に示す真空掃除機において方向転換を行う際の操舵連結部の動作例を示す模式図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係るアプライト型真空掃除機の構成の一例を示す概略側面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係るアプライト型真空掃除機の構成の他の例を示す概略側面図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係るアプライト型真空掃除機の構成の一例を示す概略側面図である。
【図13】(a),(b)は、従来の改良された真空掃除機において、方向転換を行う例を示す模式図である。
【図14】従来の一般的な真空掃除機において、方向転換を行う例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0049】
(実施の形態1)
[真空掃除機の全体構成]
本発明の一実施の形態に係る床面処理装置の一例である、アプライト型真空掃除機の全体構成について、図1ないし図3を参照して具体的に説明する。
【0050】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るアプライト型真空掃除機10Aは、本体筐体部11、本体集塵部12、吸引ノズル13、ハンドル14、操舵輪15、ハンドル軸16および副吸引部等を備えている。なお、以下の説明では、アプライト型真空掃除機10Aを適宜、真空掃除機10Aと略す。また、図1におけるブロック矢印Mは、吸引ノズル13(真空掃除機10A)の進行方向を示し、進行方向の順方向を前方向、進行方向の逆方向を後方向と定義する。
【0051】
本体筐体部11は、本体集塵部12とともに、真空掃除機10Aの本体部を構成している。図1に示すように、本体筐体部11の前側は、略円柱状の本体集塵部12を取り付け可能とする略湾曲面(図示せず)となっており、後側は、図2に示すように、矩形状の略平坦面となっている。本体筐体部11の後側の面には、持運び用把手111が設けられており、使用者は、この持運び用把手111を把持して真空掃除機10Aを持ち運ぶことができる。
【0052】
また、図2に示すように、この持運び用把手111は、ハンドル14の下部後面に設けられているコード巻取りフック112とともに、電源コード128を巻き取るためのフックとしても用いることができる。さらに、本体筐体部11の上面には、吸引ホース133を保持するホース保持体113も設けられている。また、本体筐体部11の上面の後方には、電源スイッチ129が設けられている。これら各構成については後述する。
【0053】
本体集塵部12は、図1に示すように、集塵胴部121および集塵頭部122から構成され、その内部が真空掃除機10Aの集塵室となっている。集塵胴部121は略円筒状であり、その上部にバックル部材123を介して集塵頭部122が取り付けられ、下部にはヒンジ部材124にて開閉可能に裏蓋125が設けられ、この本体集塵部12全体が本体筐体部11に着脱自在に取り付けられる。集塵頭部122の下面は、集塵胴部121の内部空間(集塵室)に面するが、この下面には、HEPAフィルタ221が設けられている。また、集塵胴部121の内部には、プレフィルタ222が設けられている。
【0054】
集塵胴部121の下面は排気カバー126に面している。本体筐体部11の下部には吸引モータ223(図中破線で示す)が組み込まれているが、排気カバー126は、この吸引モータ223の前方に、尾錠127により本体筐体部11に着脱自在能に取り付けられている。また、排気カバー126の内側には、吸引モータ223から排出される空気を濾過する排気フィルタ(図示せず)が設けられ、さらに、排気カバー126の前面には、濾過した空気を排気するための排気口224が設けられている。
【0055】
本体集塵部12が本体筐体部11に取り付けられることで、前記のとおり、真空掃除機10Aの本体部が構成されるが、この本体部の形状は、前方の略半分(本体集塵部12)が円柱状で、後方の略半分が角柱状となっている。したがって、本体部は、前方の面が突出するように湾曲し、後方の面が略平坦な柱形状を有している。
【0056】
吸引ノズル13は、図1に示すように、略平板状で、本体筐体部11の下部に設けられている。吸引ノズル13の後部は、本体筐体部11の下部の両側面を挟持するように、当該下部に取り付けられている。本実施の形態に係る真空掃除機10Aを、床面の掃除処理を行う床面処理装置と見れば、吸引ノズル13は床面処理部(処理ヘッド)に相当する。この床面処理部(吸引ノズル13)は、図3に示すように、床面処理の対象となる床面100に対面する下面Suを有している。また、吸引ノズル13は、本体筐体部11の下部において、ノズル支持軸13aを介して取り付けられており、当該ノズル支持軸13aを中心として図中矢印R2に示す方向に揺動可能となっている。それゆえ、吸引ノズル13は、柱状の本体部の延伸方向に対して、下面Suの角度が変更可能に構成されている。なお、図3においては、操舵輪15および後述する操舵連結部60Aの構成を説明する便宜上、図1に示す一部の構成の記載を省略している。
【0057】
吸引ノズル13の前部には、図1および図3に示すように、内部に円柱状の回転ブラシ131(図中破線で示す)が設けられている。回転ブラシ131は、進行方向Mに直交する方向に沿った位置で、下面Suに向かって露出するように設けられている。吸引ノズル13内には、この回転ブラシ131を回転駆動する駆動機構(エアタービン等、図示せず)も備えている。なお、吸引ノズル13の前部は、その内部に、横方向に延伸する回転ブラシ131が位置しているため、その横幅は多少大きくなっている。また、吸引ノズル13の前部下面13b(図3参照)は、後述するように、前方が上向きで後方が下向きに傾斜した傾斜面となっている。さらに、吸引ノズル13の前面には、弾性材料で構成されるガード部132が設けられている。このガード部132は、吸引ノズル13が家具または壁等に衝突したときに、当該家具または壁等を傷つけないようにするものである。
【0058】
吸引ノズル13は、吸引ホース133を介して本体集塵部12と接続されている。具体的には、図2に示すように、本体筐体部11の後方側面(図中向かって左側)には、吸引口114が設けられており、この吸引口114は本体集塵部12につながっている。また、吸引口114には吸引接続管115が装着されている。吸引接続管115は、L字状の管であり、一端が吸引口114に装着され、他端が吸引ホース133の一端(本体集塵部12側を下流とすれば、下流端)に接続されている。
【0059】
さらに、吸引ホース133の他端(上流端)は、吸引口114の位置とは反対側の側面(図中向かって右側)に位置するホースコネクタ136に接続されている。ホースコネクタ136は、延長管ホルダ116の一部に接続されたノズルホース137と吸引ホース133とを、当該延長管ホルダ116に対して着脱自在に接続する部材であり、必要に応じて、接続状態を解除して切り離すことができる。ノズルホース137は、吸引ノズル13の下面Suに設けられている吸引開口につながっている。したがって、使用時に電源スイッチ129をONすれば、本体筐体部11内で吸引モータ223が動作するので、吸引モータ223の吸引力は、集塵頭部122からHEPAフィルタ221を通り集塵胴部121から吸引口114、吸引接続管115、吸引ホース133、ホースコネクタ136およびノズルホース137を介して吸引ノズル13の吸引開口に達し、これにより吸引ノズル13に吸引力が生じる。
【0060】
また、ホースコネクタ136は、吸引ノズル13をノズルホース137から切り離すことができるが、切り離した状態でのホースコネクタ136には、吸引延長管134または隙間ノズル135が接続可能となっている。つまり、吸引ホース133は、吸引ノズル13から切り離すことで、吸引ノズル13とは異なる副吸引部を構成することができる。また、吸引延長管134および隙間ノズル135は、吸引ホース133に接続可能であるため、これらも、吸引ホース133とともに副吸引部を構成している。
【0061】
吸引ホース133は、不使用時には、図1および図2に示すように、本体筐体部11の上方にアーチ状に設けられるホース保持体113の上面に載置されることで、安定した状態で保持される。また、吸引延長管134および隙間ノズル135は、延長管ホルダ116を介して本体筐体部11に着脱可能に取り付けることができる。具体的には、図2に示すように、延長管ホルダ116は、本体筐体部11の側面に取り付けられ、吸引延長管134と略同径の凹部が上向きに設けられている。そして、吸引延長管134および隙間ノズル135を使用しないときには、吸引延長管134の一端から隙間ノズル135を当該吸引延長管134の内部に挿入し、この状態の吸引延長管134の他端を、延長管ホルダ116の凹部に差し込む。これによって、本体筐体部11の側面に吸引延長管134および隙間ノズル135を着脱可能に取り付けることができる。
【0062】
本体筐体部11の上部には、図1ないし図3に示すように、ハンドル軸16を介してハンドル14が設けられている。このハンドル14は、使用時に使用者によって把持される把持部であり、平均的な手のひらの大きさに合わせた寸法の楕円環状に形成されている。ハンドル14の下部後面には、コード巻取りフック112が設けられている。このコード巻取りフック112は、前述した持運び用把手111と対をなしており、持運び用把手111が下側を向いているのに対して、コード巻取りフック112が上側を向いている。そして、不使用時には、図2に示すように、電源コード128をこれらの間で巻き回すことで、当該電源コード128を本体筐体部11の後面に巻き取られて保持することができる。
【0063】
本体筐体部11の下部には、図1ないし図3に示すように、吸引ノズル13に加えて、操舵輪15が設けられている。この操舵輪15は、使用時にはノズル支持軸13aの略下方に位置し、その外周面が床面100に当接する一方、不使用時には、図3に示すように、その外周面が床面100から離れるように構成されている。操舵輪15は、吸引ノズル13の進行方向Mを規定するものであり、後述するように、使用者がハンドル14を把持して操作することで、その角度が変化するように構成されている。
【0064】
なお、本実施の形態では、操舵輪15は、図2に示すように、本体筐体部11の下部の両側方に1個ずつ、合計2個設けられている。これら2個の操舵輪15は、進行方向Mに直交する方向に沿って対をなす位置関係にある。また、これら2個の操舵輪15は、本体筐体部11のノズル支持軸13aの斜め後方下部に設けられることが好ましい。これにより、後述するように、不使用時に本体部を起立させた状態では、操舵輪15が床面に当接しない位置となり、通常使用時に使用者がハンドル14を把持して本体部を傾斜させた状態では、操舵輪15がノズル支持軸13aの略下方の位置となる。
【0065】
図3に示すように、操舵輪15とハンドル14とは、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161(図中破線)等を介して連結されている。ハンドル軸16および操舵輪調節軸161は、図3の矢印R1に示すように、回動可能に本体筐体部11に設けられており、ハンドル軸16は、本体筐体部11の上方に露出し、操舵輪調節軸161は本体筐体部11の内部に位置している。ハンドル14、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161は、一体的に構成されており、ハンドル14を左右に捩じる操作を行うと、当該ハンドル14の回動による位置変化に合わせてハンドル軸16および操舵輪調節軸161が回動し、さらにこの回動が操舵輪15に伝えられることで、当該操舵輪15の角度が変わる。つまり、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161は、ハンドル14の操作に応じて、操舵輪15の角度を変更する操舵連結部60Aを構成している。
【0066】
また図3に示すように、操舵輪15には、当該操舵輪15の上方を覆うカバー部材151が設けられている。カバー部材151の前部にはカバー前爪152が設けられている。このカバー前爪152は、カバー部材151の前方に向かって延伸する板状の部位であり、真空掃除機10Aが不使用状態であれば、図3に示すように、本体部(本体筐体部11および本体集塵部12)を起立させることにより、カバー前爪152が床面100に当接するため、操舵輪15の外周面が床面100から離れる。
【0067】
カバー部材151は、操舵輪15の上方を覆うだけでなく、当該操舵輪15の転動軸153を支持している。また、カバー部材151の上部には、本体筐体部11に対して回動自在に、車輪支持軸154が設けられている。この車輪支持軸154の方向は、ノズル支持軸13aおよび転動軸153を結ぶ直線に略一致する方向である。したがって、操舵輪15は、車輪支持軸154およびカバー部材151を介して、本体筐体部11に対して回動自在に取り付けられていることになるため、当該操舵輪15は、本体筐体部11に対してその角度が変更可能となっている。
【0068】
図1ないし図3に示す真空掃除機10Aにおいて、本体筐体部11、本体集塵部12、吸引ノズル13、ハンドル14、操舵輪15、およびハンドル軸16、並びに副吸引部(吸引ホース133等)の具体的な構成は特に限定されず、真空掃除機の分野で公知の各種構成を好適に用いることができる。
【0069】
例えば、本実施の形態では、本体部は、本体筐体部11および本体集塵部12から構成され、これらは分離可能な構成となっているが、一体化された構成であってもよい。また、本体部は、前面が略湾曲面で後面が略平坦面の柱状に構成されているが、この形状に限定されず、略四角柱形状であってもよいし、上方に向かって断面積が徐々に狭くなるような柱形状であってもよいし、全体的に柱形状であれば側面に凹部または凸部が設けられてよい。
【0070】
また、吸引ノズル13は、本実施の形態では略平板状であるが、この形状に限定されず、下面Suを有していれば、半球状または筐体状等の形状であってもよい。また、本実施の形態では、把持部としてハンドル14を備えているが、把持部の形状はこれに限定されず、ハンドル14以外の公知の把持部が用いられてもよい。
【0071】
また、図1に示す真空掃除機10Aにおいては、本体部(具体的には本体筐体部11)の内部に、吸引モータ223と、これにより回転駆動される吸引ファン(図示せず)とを備え、吸引ノズル13内に回転ブラシ131を備える構成となっている。この構成において、吸引モータ223の回転軸を、吸引ノズル13を支持するノズル支持軸13aから当該吸引ノズル13に向かって延伸するように設け、当該吸引モータ223の回転軸と回転ブラシ131とをベルト等で連結する構成を採用することもできる。この構成であれば、吸引モータ223により吸引ファンおよび回転ブラシ131を駆動することができるので、これらの駆動源を単一の吸引モータ223で兼用することが可能となる。それゆえ、真空掃除機10Aの構成を簡素化することも可能となる。
【0072】
また、吸引ノズル13を本体部に支持するためのノズル支持軸13aの具体的な構成も特に限定されない。本実施の形態では、後述するように、吸引ノズル13は、本体部の下部を挟持する位置に、左右一対のノズル支持軸13aを設けることによって、当該本体部に対して吸引ノズル13を揺動自在に支持しているが、ノズル支持軸13aは、本体部の下部を貫通するように1本が設けられる構成であってもよいし、軸ではなくベアリング機構のような機械的構成であってもよい。
【0073】
つまり、ノズル支持軸13aは、本体部の下部に設けられ、当該本体部の延伸方向に対して、下面Suの角度を変更する方向に、吸引ノズル13を揺動可能に支持するものであれば、どのような構成であってもよい。また、床面処理装置が真空掃除機10A以外の構成であれば、ノズル支持軸13aに対応する処理部支持軸は、床面処理部を揺動支持できるものであれば、公知のさまざまな構成を採用することができる。
【0074】
また、操舵輪15に設けられるカバー部材151およびカバー前爪152の具体的構成も特に限定されない。本実施の形態では、カバー部材151は、操舵輪15の略上半分を全体的に覆うように構成されているが、例えば、操舵輪15の上面だけを覆い、側面は露出している構成であってもよい。また、カバー前爪152は、本実施の形態では、平板状であるが、例えば、カバー部材151の前部がブロック状に構成され、その一部にカバー前爪152に相当するような床面当接面が設けられている構成であってもよい。また、カバー前爪152の長さは、操舵輪15の本体筐体部11への取付位置等の諸条件によって適宜設定され、特定の長さに限定されない。
【0075】
[操舵連結部の構成]
次に、真空掃除機10Aが備える操舵連結部60Aのより具体的な構成について、図3に加えて、図4(a)〜(c)および図5(a),(b)を参照して具体的に説明する。
【0076】
前記のとおり、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161は、操舵連結部60Aを構成しているが、さらに、図4(a)に示すように、操舵輪調節軸161につながる回動伝達部160も操舵連結部60Aを構成している。
【0077】
具体的には、操舵連結部60Aの一部である操舵輪調節軸161の上端には、図3に示すように、ハンドル軸16を介してハンドル14が設けられているが、その下端には、図4(a)に示すように、カム部162が設けられ、さらに、このカム部162は、アーム部163,164を介して一対の操舵輪15,15に連結されている。
【0078】
カム部162、アーム部163,164は、それぞれ細長い板状である。カム部162の一方の端(後端)には、操舵輪調節軸161の下端が固定され、その他方の端(前端)には、アーム部163および164の一方の端が取り付けられている。それぞれのアーム部163,164の他方の端は、カバー部材151のカバー前爪152に取り付けられている。カバー部材151は操舵輪15の上方を覆う部材であるだけでなく、カム部162およびアーム部163,164を介して、操舵輪調節軸161の下端と操舵輪15との間を連結する回動伝達部160を構成している。
【0079】
操舵輪調節軸161、カム部162、アーム部163,164、並びに操舵輪15の位置関係について見れば、操舵輪調節軸161は、図3に示すように、本体筐体部11の内部で、上下方向に沿って位置しており、その下端にカム部162の後端が固定されているので、細長い板状のカム部162は、操舵輪調節軸161の軸方向に交差するように設けられていることになる。また、カム部162の位置を基準とすれば、アーム部163,164の位置は、カム部162の前端において、当該カム部162の長手方向に交差するような配置となっている。カム部162は、2個の操舵輪15に挟まれる位置にあり、カム部162の配置方向および操舵輪15の配置方向は、略平行となるように並んでいる。
【0080】
ここで、アーム部163,164において、カム部162の前端に取り付けられる端を、内端と称し、カバー前爪152に取り付けられる端を外端と称すれば、内端および外端の取付構成は、いずれも、突起部が開口に挿入される構成(挿入構成)であると好ましい。例えば、図4(b)は、図4(a)の破線の円で囲った部位の断面図であるが、この図に示すように、カム部162の前端には、貫通孔162aが形成されており、この貫通孔162aに、アーム部163の内端下面に設けられた突起部163bが挿入される。さらに、突起部163bの上面には、上穴163aが形成されており、この上穴163aに、アーム部164の内端下面に設けられた突起部164bが挿入されている。アーム部163,164の外端とカバー前爪152との取付構成も同様であり、カバー前爪152に形成された貫通孔(図4(a)には図示せず)に、アーム部163,164の外端下面に設けられた突起部163c,164cが挿入されている。
【0081】
また、操舵輪15は、前述のとおり、その上方がカバー部材151に覆われ、当該カバー部材151の前部にはカバー前爪152が設けられ、このカバー前爪152にアーム部163,164の外端が取り付けられている。さらに、カバー部材151は、操舵輪15の転動軸153を支持するとともに、その上面には、車輪支持軸154が設けられている。車輪支持軸154を本体筐体部11に対して取り付ければ、カバー部材151および操舵輪15は、矢印R3に示すように、当該車輪支持軸154を中心として回動可能となる。
【0082】
ここで、一対の操舵輪15,15は、本体筐体部11の下部において、吸引ノズル13の進行方向Mに直交する方向に沿って、一列に並んでいる。具体的には、図4(c)における向かって左側に模式的に示すように、本体筐体部11の下部を背面から見れば、図中実線で示す操舵輪15−1,15−1は、当該本体筐体部11を挟む状態で対をなす位置に設けられている。なお、図4(c)は、向かって左側および右側のいずれの図においても、真空掃除機10Aの背面図であるので、図面の手前側から向こう側に沿った方向が進行方向Mとなる。
【0083】
また、操舵輪15は2個以上設けられてもよいので、例えば、一対の操舵輪15−1,15−1の内側に隣接して、さらに破線で示す操舵輪15−2,15−2が設けられることにより、合計4個の操舵輪15を備える構成であってもよい。あるいは、操舵輪15−1,15−1のちょうど中間となる位置に、一点鎖線で示す操舵輪15−3が設けられることにより、合計3個の操舵輪15を備える構成であってもよいし、操舵輪15−1〜15−3が全て設けられることにより、合計5個の操舵輪15を備える構成であってもよい。
【0084】
このような構成で、操舵輪調節軸161、カム部162、アーム部163,164、並びに操舵輪15がそれぞれ連結されていれば、操舵輪調節軸161とカム部162とが固定された状態で連結されているのに対し、カム部162の前端およびアーム部163,164の内端、並びに、カバー前爪152およびアーム部163,164の外端は、完全に固定されない状態で連結され、一対の操舵輪15,15は本体筐体部11の下部に、回動可能に取り付けられていることになる。
【0085】
それゆえ、使用者は、ハンドル14を捩じる操作を行えば、捩じり(回動)によるハンドル14の位置変化がハンドル軸16および操舵輪調節軸161に伝えられ、図4(a)および図5(a)に示すように、操舵輪調節軸161は、矢印R1に示す方向に回動する。この回動は、さらにカム部162に伝えられ、図5(a)に示すように、カム部162の前端が例えば実線の位置から二点鎖線の位置に移動する。これにより、アーム部163,164は、カム部162の長手方向に対して交差する方向に揺動するので、アーム部163,164にカバー部材151を介して連結されている操舵輪15が矢印R3の方向に回動する。その結果、図5(a)に示すように、操舵輪15の角度が変更されることになる。
【0086】
また、一対の操舵輪15,15が進行方向Mに直交する方向に沿って並んでいれば、ハンドル14の捩じり操作の方向と、吸引ノズル13の転換方向とを直接的に対応させることができる。それゆえ、方向転換の操作にわかりにくさが生じるおそれを回避することも可能となる。さらに、複数の操舵輪15が一列に並んでいる構成においては、使用者がハンドル14を操作することにより、全ての操舵輪15が同一の方向に向かって角度変化するように構成されていれば、吸引ノズル13の進行方向Mを複数の操舵輪15で有効に規制することができる。
【0087】
なお、本実施の形態では、カム部162、アーム部163,164およびカバー前爪152の取付構成が図4(b)に示すような挿入構成であることから、カム部162およびアーム部163,164の具体的構成に自由度を与えることもできる。例えば、本体筐体部11および吸引ノズル13の具体的構成により、カム部162として、より長い板状部材を用いる必要がある場合でも、挿入構成を採用することで、図5(b)に示すように、カム部162の前端の移動に合わせて、アーム部163,164が適切に追従し、操舵輪15の角度を変更することが可能となる。
【0088】
なお、操舵輪調節軸161、カム部162、アーム部163,164の具体的な構成は特に限定されず、真空掃除機10Aの具体的構成または用途等に合わせて、同様の機構が用いられる分野で公知の形状、寸法、材質等を好適に採用することができる。また、後述する実施の形態2または3でも説明するように、操舵連結部60Aの具体的構成も、操舵輪調節軸161、カム部162、アーム部163,164を備える構成に限定されない。
【0089】
例えば、本実施の形態では、操舵輪調節軸161は、ハンドル軸16を介してハンドル14の捩じりによる位置変化が伝達される構成であるため、捩じり力に対する耐久性または剛性を有する材料または形状を採用していれば、どのような種類のものでも好適に用いることができる。また、操舵輪調節軸161が捩じり力に対する耐久性または剛性を有する構成となっている場合には、カム部162またはアーム部163,164あるいはこれら双方の部材は、可撓性を有する材料または形状を採用していると好ましい。これにより、例えば、操舵輪15が床面100から受ける抵抗等により、当該操舵輪15の車輪支持軸154と操舵輪調節軸161との間で、回動の程度にずれが生じたときに、当該ずれを緩衝することが可能となる。
【0090】
[操舵輪の構成]
次に、操舵連結部60Aが備える操舵輪15の具体的な構成について、図4(c)に加えて、図6(a),(b)を参照して具体的に説明する。
【0091】
操舵輪15の具体的な形状は特に限定されないが、当該操舵輪15は、その外周面が全体的に平坦であるか、その外周面の縁部が中央部よりも突出した形状となっていると、より好ましい。例えば、図6(a)に示すように、その転動軸153(軸心)を通る断面形状が略長方形状となっている一般的な車輪15aを用いている。これに対して、例えば、図6(b)に示すように、断面形状が二山形状の車輪15bを用いてもよい。
【0092】
一般的な車輪15aの構成は特に限定されず、その外周面が全体的に平坦となっていればよい。また、二山形状の車輪15bの具体的な構成も特に限定されず、その外周面の縁部が中央部よりも突出することで、外周面の断面に突出部が2個形成される形状であれば、突出の程度等は特に限定されない。なお、車輪15aおよび車輪15bは、転動軸153を通る断面全体が単一の材料で構成されているが、これに限定されず、例えば、転動軸153の近傍すなわち車輪15a,15bの転動中心は金属製であり、外周面近傍は樹脂製である構成であってもよいし、内部が中空となっている構成であってもよい。すなわち、図6(a),(b)に示す車輪15a,15bの形状は、必ずしも軸心(転動軸153)を通る断面形状とは限らず、進行方向Mに対する投影形状(外形の断面形状)が、図示される形状となっていればよい。
【0093】
車輪15aまたは車輪15bのような形状は、当該車輪15a,15bが傾斜した状態となったときに、操舵輪15の縁部が床面100に当接することで、当該操舵輪15の転動軸153の相対位置を高く維持できることが可能な形状となっている。つまり、図6(a),(b)の上図に示すように、車輪15a,15bが通常の体勢のときに、転動軸153の床面100から高さをHw1とすれば、図6(a),(b)の下図に示すように、車輪15a,15bが傾斜した体勢では、傾斜した転動軸153のうち上方の高さHw2は、Hw1よりも高くなる。
【0094】
なお、図4(c)における向かって左側に示すように、2〜5個の複数の操舵輪15を備えている構成では、全ての操舵輪15が、一般的な車輪15aであってもよいし、二山形状の車輪15bであってもよいし、これら車輪15a,15bが混在してもよい。
【0095】
加えて、図4(c)における向かって右側に模式的に示すように、操舵輪15としては、車輪15a,15bに代えてローラ15cを用いてもよい。車輪15a,15bは、その外周面の横幅が直径よりも小さくなっているが、ローラ15cは外周面の横幅の比率が大きくなっている。この場合には、操舵輪15が傾斜したときに操舵輪15の縁部が床面100に当接したときの操舵輪15の転動軸153の相対的な位置をより高くすることが可能となる。このように、本発明においては、操舵輪15としては、吸引ノズル13を移動させることができ、かつ、ハンドル14の操作により方向転換できるものであれば、どのような形状の回転体でも好適に用いることができる。
【0096】
なお、操舵輪15が傾斜した体勢において、転動軸153の相対的な位置がより高くなれば、ノズル支持軸13aの相対的な位置も高くすることができる。ノズル支持軸13aは吸引ノズル13の後部に位置しているので、吸引ノズル13の前部を下げることが可能となり、後述するように、本体部を略水平の状態で維持したときに、吸引ノズル13の床面との密着性の減少を補うことが可能となる。
【0097】
本発明においては、操舵輪15として用いられる車輪15a,15bまたはローラ15cの具体的な構成は特に限定されないが、これらの少なくとも外周面は弾性材料により構成されていることが好ましい。弾性材料としては、具体的には、例えば、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等のゴム(エラストマー)材料、あるいはコルク等を挙げることができるが、特に限定されない。
【0098】
これら弾性材料は、少なくとも外周面のみに用いられればよいが、外周面を含む操舵輪15の大部分あるいは操舵輪15全体が弾性材料により構成されてもよい。例えば、操舵輪15を回転可能に支持するための転動軸153を保持する部分は、剛性の大きい金属または樹脂材料により構成され、それ以外の部分が弾性材料により構成されればよい。
【0099】
このように、操舵輪15において、少なくとも、その外周面が弾性材料で構成されていれば、床面100と弾性材料の面とが当接することになる。それゆえ、床面100の状態または材質によらず、操舵輪15が床面100上で滑るようなおそれを有効に抑制することができる。それゆえ、真空掃除機10Aの操作性をさらに一層向上させることができる。
【0100】
[真空掃除機の使用例]
次に、本実施の形態に係る真空掃除機10Aの代表的な使用例について、その基本的な動作および操作方法とともに、図6(c)および図7ないし図9を参照して具体的に説明する。
【0101】
まず、図7における向かって左側に示すように、真空掃除機10Aが不使用状態であれば、本体部(本体筐体部11および本体集塵部12)が起立した状態にある。この起立状態は、図3に示す状態と同じであり、操舵輪15は、本体部の起立によって前方が下がり後方が上がった位置に保持されている。これは、本体筐体部11の下部であって、ノズル支持軸13aの斜め後方となる位置に設けられており、操舵輪15を回動可能に支持する車輪支持軸154の配置方向は、ノズル支持軸13aと転動軸153とを結ぶ直線に略一致しているためである。
【0102】
操舵輪15の前部には、カバー部材151の一部であるカバー前爪152が設けられているので、このカバー前爪152が床面100に当接し、かつ、操舵輪15の外周面は床面100から離れる。また、転動軸153の軸心は、ノズル支持軸13aの軸心の斜め後方下部に位置しているため、ノズル支持軸13aの床面100に対する相対位置は、後述する使用状態(本体部が傾斜した状態)と比較して低くなる。
【0103】
ここで、吸引ノズル13の前部下面13bは、当該吸引ノズル13の前部に位置することから、吸引ノズル13におけるノズル支持軸13aは後部に位置することになる。ノズル支持軸13aの相対的な位置が低くなれば、吸引ノズル13の後部が下がることになるので、吸引ノズル13の前部に位置する前部下面13bは、その後部が支点となって、その前部が浮き上がった傾斜状態で保持される。
【0104】
この真空掃除機10Aを使用者が使用するときには、図7における向かって右側に示すように、本体部を後方に傾斜させる。この傾斜状態が使用状態となる。つまり、使用者は、ハンドル14等を把持して、図中矢印C1で示す方向に本体部を傾斜させる。これにより、操舵輪15の位置がノズル支持軸13aの略下方に移動し、カバー部材151の前部が上がり後部が下がるため、図中矢印C2で示すように、床面100に当接していたカバー前爪152は上方に移動し、上方に位置していた操舵輪15が下方に移動する。その結果、操舵輪15の外周面が床面100に当接するので、真空掃除機10Aは操舵輪15によって床面100上を移動可能となる。なお、本体部の傾斜角度(本体傾斜角)Asについては特に限定されないが、一般的には40〜50°の範囲内であればよく、約45°であると好ましい。
【0105】
また、傾斜状態においては、起立状態と比較して、床面100に対するノズル支持軸13aの位置が上方に移動する(図中一点鎖線の差Df参照)。これに伴い、相対的に下方に位置していた吸引ノズル13の後部は、図中矢印C3に示すように上方に移動する。このとき、吸引ノズル13の前部下面13bは、床面100に対して全体的に当接する。
【0106】
より具体的には、図8(a)に示すように、吸引ノズル13の前部下面13bは、起立状態では、床面100との間で角度αを形成するように、前方が上向きに傾斜している。なお、この角度αを、本体傾斜角Asと区別する便宜上、「下面傾斜角α」と称する。この状態では、前述したように、カバー前爪152が床面100に当接しているので、操舵輪15の外周面は床面100から離れている。次に、起立状態から傾斜状態に移行すると、ノズル支持軸13aの位置が上方に移動するので、吸引ノズル13は、後部が上方に移動するので、吸引ノズル13の前部下面13bも後方が上がるように移動する。その結果、図8(b)に示すように、床面100との間の下面傾斜角αが相殺され、前部下面13bと床面100とが略一致する位置関係となるので、当該前部下面13bは、全体的に床面100に当接する。
【0107】
しかも、図8(b)(および図7の傾斜状態)においては、カバー前爪152が略水平状態に位置するように上方に移動し、操舵輪15の外周面が床面100に当接するので、吸引ノズル13は、操舵輪15により移動可能になるとともに、吸引ノズル13の前部に設けられる回転ブラシ131は床面100に対して十分に当接することになる。その結果、真空掃除機10Aは、掃除が可能な使用体勢に移行することができる。
【0108】
その後、使用者は、電源スイッチ129を操作して吸引モータ223(図1参照)を動作させる。これにより、本体集塵部12の内部(集塵室)の気圧が低下し、吸引ホース133を介して吸引ノズル13に吸引力が生じる。そこで、使用者は、ハンドル14を把持して吸引ノズル13を所望の方向に移動させて掃除を行う。
【0109】
ここで、使用者が吸引ノズル13の方向転換を行いたいときには、図9に示すように、ハンドル14を矢印R1の方向に捩じる操作を行えばよい。これにより、ハンドル14の捩じり(回動)による位置変化が、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161を介してカム部162に伝達され、カム部162の前端が左右に揺動することで、アーム部163,164を介して一対の操舵輪15の角度が変化する。例えば、図9において、ハンドル14を向かって右側に捩じれば、真空掃除機10Aの本体部全体を動かすことなく、操舵輪15の角度を矢印M1の方向(向かって右方)に変化させることができる。それゆえ、使用者にとっては、ハンドル14を大きく揺動させることなく、かつ、ハンドル14の操作に重さを感じることなく、吸引ノズル13を矢印M1の方向に容易に移動させることができる。同様に、ハンドル14を向かって左側に捩じれば、操舵輪15の角度を矢印M2の方向(向かって左方)に変化させることができるので、吸引ノズル13を矢印M2の方向に容易に移動させることができる。
【0110】
このように、ハンドル14を操作して操舵輪15の方向を変化させるだけで、吸引ノズル13そのものは角度を変えることなく斜め方向に移動することができる。それゆえ、例えば、前方の壁面に向かって掃除をする場合であっても、吸引ノズル13の前方を壁面に対して平行な位置に維持しながら、掃除する領域を順次変更することが可能となる。したがって、従来の真空掃除機と比較して、例えば、室内の隅の領域を掃除することが非常に容易となるだけでなく、方向変換時に吸引ノズル13そのものの方向が変わらないため、床面100がカーペットであっても、その方向転換時に床面100から受ける抵抗を軽減することができる。
【0111】
また、本実施の形態においては、操舵輪15を本体部の下部の斜め後方に設けているので、操舵輪15を前方に設けるよりも、操舵連結部60Aの構成を簡素化できるとともに、図7に示すように、本体部を起立状態とするだけで、操舵輪15の外周面を床面100から離すことができる。つまり、吸引ノズル13は、本体部に対してノズル支持軸13aを軸として揺動可能に設けられているので、ノズル支持軸13aを支点、本体部の上方に位置するハンドル14を力点、操舵輪15を作用点とすれば、支点(ノズル支持軸13a)から作用点(操舵輪15)の距離に対して、支点(ノズル支持軸13a)から力点(ハンドル14)までの距離が長くなる。それゆえ、使用者は軽い力でハンドル14を把持して本体部を起立させるだけで、作用点(操舵輪15)の近傍に位置する突出したカバー前爪152が操舵輪15の下方に移動するので、操舵輪15を床面から容易に離すことができる。
【0112】
また、下面Suのうち、最も前方となる前部下面13bを傾斜面とすれば、支点であるノズル支持軸13aすなわち吸引ノズル13の後部が下に移動するので、吸引ノズル13の前部は相対的に上に移動する。それゆえ、傾斜状態で床面100に当接している前部下面13bを床面100から離すことができる。前部下面13bには回転ブラシ131が露出しているので、下面傾斜角αの大きさ、あるいは、回転ブラシ131の位置によっては、回転ブラシ131そのものを床面100に接触しないように保持や保管することが可能となる。
【0113】
また、図9に示すように、吸引ノズル13は、本体部(図9では本体筐体部11)の下部を挟持する位置に設けられる、左右一対のノズル支持軸13aによって、当該本体部に対して揺動自在に支持されている。そのため、従来の改良技術(図13(a),(b)参照)と比較して、簡単な構成で特別な材料等を使用することなく、本体部に対する吸引ノズル13の取り付け強度の向上を図ることが可能となる。それゆえ、真空掃除機10Aの高コスト化を回避することができる。
【0114】
加えて、図8(c)に示すように、例えば、家具またはベッドの下等の上下方向に狭い領域を掃除するときに、本体部を略水平に維持すると、操舵輪15の位置はノズル支持軸13aの前方に移動する。この状態(倒伏状態と称する。)では、起立状態と同じようにノズル支持軸13aの相対位置が傾斜状態と比較して低くなるので、吸引ノズル13の後部は、傾斜状態(図中二点鎖線)と比較して下がることになる。
【0115】
例えば、図8(a)に示すように、起立状態におけるノズル支持軸13aの鉛直方向の位置を高さHs1とし、図8(b)に示すように、傾斜状態におけるノズル支持軸13aの位置は高さHs2とすれば、高さHs2は、明らかに高さHs1よりも高くなる。ところが、図8(c)に示すように、本体部を倒伏状態とすれば、ノズル支持軸13aの位置は、起立状態の高さHs1に近づく。倒伏状態においては、ノズル支持軸13aの位置は高さHs1と完全に一致するわけではないが、ほぼ高さHs1にノズル支持軸13aを位置させることができる。
【0116】
しかも、本体部が倒伏状態にあれば、吸引ノズル13の下方であって、ノズル支持軸13aの前方に操舵輪15が位置することから、吸引ノズル13は、操舵輪15によって移動可能な状態に維持されている。それゆえ、上下方向に狭い領域であっても、本体部を倒伏状態とするだけで、吸引ノズル13の全体的な位置も低くすることができるので、床面100を好適に掃除することができる。
【0117】
さらに、真空掃除機10Aにおいては、操舵輪15が、一般的な車輪15aまたは二山形状の車輪15bであれば、本体部を倒伏状態で使用する場合に、より好ましくなる。具体的には、図8(c)に示すように、本体部が傾斜状態(図中二点鎖線で示す。)にあれば、操舵輪15はノズル支持軸13aの略下方に位置する(図8(b)も参照)が、本体部が倒伏状態(図中実線で示す。)に変化すると、ノズル支持軸13aの位置が傾斜状態よりも下方に移動する。これにより、吸引ノズル13の前部が少し上がるため、起立状態(図8(a)参照)と同様に、当該前部に設けられている前方下面13bの前縁が少し浮いたような状態となる。
【0118】
このように本体部が倒伏状態にあるときに、ハンドル14の側から、本体部、吸引ノズル13および操舵輪15の位置関係を見ると、図6(c)に示すように、本体部(本体筐体部11および本体集塵部12)と吸引ノズル13とが、それぞれ略水平に配置されているだけでなく、ハンドル14およびハンドル軸16も略水平に配置されている(ハンドル軸16は図中破線で図示)。しかしながら、この倒伏状態では、図8(c)に示すように、車輪支持軸154は、図中点線Sx2で示す傾斜した状態となっているため、床面100に対して操舵輪15が傾斜する。
【0119】
つまり、車輪支持軸154は、図8(c)において点線Sx1で示すように、ノズル支持軸13aおよび転動軸153を結ぶ直線に略一致するように配置しているため、本体部が傾斜状態にあれば、車輪支持軸154が略垂直状態で維持される(図8(b)も参照)。それゆえ、傾斜状態では、使用者がハンドル14を操作することで操舵輪15の方向のみを変化させることができ、床面100に対する操舵輪15の傾斜は発生しない。これに対して、本体部が倒伏状態となれば、車輪支持軸154の延伸方向は、点線Sx1で示す略垂直の状態から点線Sx2で示す傾斜した状態に変化する。
【0120】
このように車輪支持軸154が傾斜した状態で、図6(c)に示すように、使用者がハンドル14を捩じる操作を行うと、操舵連結部60Aにより操舵輪15の方向が変化したときに、当該操舵輪15は床面100に対して傾斜する。操舵輪15は一般的な車輪15aまたは二山形状の車輪15bであるので、当該操舵輪15の縁部が床面100に当接する。
【0121】
ここで、ハンドル14を捩じらない状態では、当該ハンドル14、操舵輪15および吸引ノズル13の後部の位置は、図6(c)において二点鎖線で示すように、相対的に低い位置となる。これに対して、ハンドル14を捩じると、図6(c)において実線で示すように、操舵輪15の相対的な位置が高さHu(図6(a),(b)に示す高さHw2および高さHw1の差分)だけ上がることになるので、ノズル支持軸13aの相対的な位置も上がる。
【0122】
これにより、吸引ノズル13の後部が上がり前部が下がることになるので、図8(c)に示す、前方下面13bの前縁が少し浮いた状態が有効に緩和される。したがって、吸引ノズル13の下面Su(図7参照)の床面100に対する密着性(当接性)が向上するので、本体部が倒伏状態にあっても吸引ノズル13による吸引作用の低下を有効に抑制することができる。それゆえ、ベッドの下等といった上下方向に狭い領域であっても、ハンドル14を操作しながら前後させるだけで、床面100を好適に掃除することができる。したがって、本体部が傾斜状態であっても倒伏状態であっても、良好な掃除性能を実現することができる。
【0123】
[変形例]
本実施の形態では、起立状態で操舵輪15を床面100から離すことにより、不使用状態において吸引ノズル13(真空掃除機10A)の移動を制限しているが、この構成に限定されず、例えば、操舵輪15を回転不能とするようにロックする構成であってもよい。この場合、傾斜状態から起立状態に切り換えるときに、機械的構成または電気的構成等により、自動的に操舵輪15をロックするように構成されてもよい。
【0124】
また、操舵輪15が本体部の下部後方以外の部位に設けられているときには、操舵輪15そのものを、機械的構成または電気的構成等により全体的に上方に移動させることで、床面100から離すように構成されてもよい。
【0125】
さらに、本実施の形態における起立状態および傾斜状態(図7参照)は相対的な位置関係であるので、起立状態および傾斜状態の具体的な角度は特に限定されないことは言うまでもない。したがって、起立状態は本体部が直角に限定されず、また、傾斜状態に移行するときの具体的な角度も真空掃除機10Aの具体的構成に応じて適宜設定される。同様に、傾斜状態の角度に対応して設定される前部下面13bの下面傾斜角α(図8(a)参照)の具体的な角度も特に限定されない。
【0126】
また、本実施の形態では、操舵輪15は、本体部の下部後方に設けられているが、操舵輪15の位置はこの部位に限定されず、本体部の下部直下であってもよいし、下部前方であってもよい。例えば、操舵輪15が本体部の下部前方に位置している場合には、カバー部材151の後部に延伸部を設け、この延伸部にアーム部163,164を取り付ければよい。つまり、回動伝達部160がカム部162およびアーム部163,164から構成されていれば、アーム部163,164は、カバー部材151の前方または後方となる部位とカム部162の前端とを連結すればよい。
【0127】
また、本実施の形態では、操舵輪15にはカバー部材151が取り付けられているが、操舵輪15を保護または支持する構成はこれに限定されない。本実施の形態であれば、カバー部材151によって操舵輪15を保護できることに加え、当該カバー部材151が回動伝達部160と操舵輪15とを接続する接続部材としても機能する。さらにカバー部材151で転動軸153を支持するとともに、その上部に車輪支持軸154を設けることで、操舵輪15そのものを本体筐体部11に支持することができる。それゆえ、操舵輪15の保護と部材点数の増加の抑制との双方を実現することができるが、カバー部材151と、回動伝達部160との接続部材と、操舵輪15の支持部材とは、それぞれ別の部材であってもよいし、カバー部材151が無く、代わりに、接続部材および支持部材を兼ねる部材が操舵輪15に設けられてもよい。
【0128】
また、本実施の形態では、カム部162およびアーム部163,164から回動伝達部160が構成されており、これにより、簡素な構成で、複数の操舵輪15に対して操舵輪調節軸161の動きを良好に伝達することができるが、当該回動伝達部160はこの構成に限定されず、例えば、操舵輪調節軸161の回動位置に合わせて操舵輪15の角度を変更するように、これらの間を連結する構成であれば、公知の他の構成であっても好適に用いることができる。
【0129】
また、本実施の形態では、操舵輪15は2個設けられているが、この数に限定されず、3個以上設けられてもよい。さらに、操舵輪15以外に、車輪またはローラ等の回転体が下面Suに面するように設けられてもよい。なお、操舵輪15は、吸引ノズル13の進行方向Mを規定するものであるため、操舵輪15が複数設けられている場合には、これら操舵輪15は、進行方向Mに直交する方向に沿って一列に並んでいることが好ましい。これにより、ハンドル14の捩じり操作と吸引ノズル13の転換方向とが直接的に対応するので、方向転換の操作に煩雑さが生じるおそれを回避することができる。
【0130】
さらに、回動伝達部160を含む操舵連結部60Aの構成は、ハンドル軸16、操舵輪調節軸161を含む前記構成に限定されず、使用者がハンドル14を把持して任意の角度で捩じることで、ハンドル14の捩じり(回動)に応じて自身が回動し、この回動の変化によって操舵輪15の角度を変える構成であればよい。例えば、ハンドル軸16が操舵輪15近傍まで延伸し、ハンドル軸16の下端に直接カム部162が固定される構成であってもよいし、ハンドル軸16が無く、本体部の上方にハンドル14が直接設けられ、操舵輪調節軸161の上端に直接ハンドル14が固定される構成であってもよい。
【0131】
また、操舵輪調節軸161は、本体部(本実施の形態では、本体筐体部11)に対して回動可能に設けられていればよく、それゆえ、操舵輪調節軸161は、本体部の内部に完全に収容されるかたちで設けられてもよいし、本体部の背面に全部または一部が露出するかたちで設けられてもよい。
【0132】
なお、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161は、本実施の形態では、本体部に対して回動可能に設けられ、その上端にハンドル14が固定されている回動軸に相当する。例えば、ハンドル軸16をハンドル14につながる第一回動軸と定義すれば、操舵輪調節軸161は第二回動軸と定義することができる。ここで、本実施の形態では、操舵連結部60Aには、回動軸が少なくとも1本含まれていればよく、それゆえ、前記のとおり、真空掃除機10Aの構成上、回動軸としては、ハンドル軸16または操舵輪調節軸161のいずれか一方を備えていれば、部材点数の増加を抑制することができる。
【0133】
一方、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161を組み合わせて備えることによって、既存のアプライト型真空掃除機10Aに対して、その構成をほとんど変えることなく、操舵連結部60Aを追加装備することが可能となる場合がある。この場合、複雑な構成に設計変更することなく、真空掃除機10Aの操作性を向上させることが可能となる。
【0134】
加えて、本実施の形態では、床面処理装置として真空掃除機10Aを例示して本発明を説明しているが、本発明はこれに限定されず、アプライト型であり、床面処理部により床面を処理する構成であれば、どのような種類のものにも適用することができる。例えば、他の床面処理装置として、床面処理部が床面を研磨する研磨パッドを備える床面研磨機、床面処理部が床面にワックスまたは塗料等の液体を塗布する床面塗工機、床面がカーペットである場合に、床面処理部が当該カーペットを洗浄するカーペット洗浄機等を挙げることができる。
【0135】
(実施の形態2)
前記実施の形態1においては、真空掃除機10Aが備える操舵連結部60Aは、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161、並びに、カム部162、アーム部163,164を備える構成であったが、本実施の形態では、操舵連結部として他の構成を備える例について、図10および図11を参照して説明する。
【0136】
図10に示すように、本実施の形態に係る第一の構成例の真空掃除機10Bは、ハンドル14およびハンドル軸16が本体部の前方に位置している構成(前方ハンドル構成)を有している。この真空掃除機10Bにおいては、本体筐体部17の上部に前方突出部117(図中一点鎖線の楕円で示す)が設けられ、この前方突出部117の前部上面にハンドル軸16を介してハンドル14が設けられている。
【0137】
より具体的には、本体筐体部17の基本構成は、前記実施の形態1における本体筐体部11と同じであるが、上下方向に延伸する位置にある筐体(本体筐体部11に対応)の直上には、斜め前方に向かって延伸する前方突出部117が一体的に設けられ、この前方突出部117の前部上面にハンドル軸16が設けられている。
【0138】
また、本体筐体部17内には、真空掃除機10Aと同様に操舵輪調節軸161が設けられ、前方突出部117は、この操舵輪調節軸161とハンドル軸16との間に位置しており、その内部にはギア機構165が設けられている。ギア機構165は、例えば、ハンドル軸16の下端に固定される扇ギアと、操舵輪調節軸161の上端に固定される上端ギアと、扇ギアおよび上端ギアの間に介在する中間ギアと、から構成されている。これにより、使用者が前方に位置するハンドル14を捩じる操作(矢印R1方向)を行うことで、ハンドル軸16およびギア機構165を介して、ハンドル14の位置変化が操舵輪調節軸161に伝達され、当該操舵輪調節軸161が回動する(矢印R1方向)。
【0139】
このように、第一の構成例の真空掃除機10Bは、本体部に前方突出部117が含まれているため、ハンドル軸16、操舵輪調節軸161、ギア機構165および回動伝達部160から構成される操舵連結部60Bを備えていることになる。
【0140】
ここで、ギア機構165は、操舵連結部60Bにおいて、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161を接続し、ハンドル14の位置変化を伝達するための手段(位置変化伝達部)として機能すればよいが、さらに、ハンドル14を位置変化させる際の動き、言い換えれば、ハンドル軸16が回動するときの動きについて、その「速度」を増減できる手段(回動速度変速部)としても機能すると、より好ましい。
【0141】
例えば、ハンドル14を捩じることでハンドル軸16が所定角度で回動するが、この回動の「速度」を増加させれば、使用者によるハンドル14の捩じりの程度が小さくても(捩じりによる角度変化が小さくても)、ギア機構165による「変速機能」によって、ハンドル軸16の回動速度を増加させれば、操舵輪15の角度変化を大きくすることができる。あるいは、回動速度を低下させれば、ハンドル14の捩じりに要する力が軽減されるので、使用者は、より「軽い力」でハンドル14の操作を行うことが可能となる。
【0142】
また、図11に示すように、本実施の形態に係る第二の構成例の真空掃除機10Cは、ハンドル14およびハンドル軸16が前側に傾斜した構成(スラントハンドル構成)を有している。この真空掃除機10Cにおいては、本体筐体部18の上部に、上方傾斜部118が設けられ、この上方傾斜部118の上面にハンドル軸16を介してハンドル14が設けられている。
【0143】
より具体的には、本体筐体部18の基本構成も、前記実施の形態1における本体筐体部11と同じであるが、上下方向に延伸する位置にある筐体(本体筐体部11に対応)の直上に、前方に傾斜する上面を有する上方傾斜部118が一体的に設けられ、この上方傾斜部118の上面にハンドル軸16が設けられている。
【0144】
また、本体筐体部18内には、真空掃除機10Aと同様に操舵輪調節軸161が設けられているが、上方傾斜部118は、この操舵輪調節軸161とハンドル軸16との間に位置しており、その内部にはジョイント機構166が設けられている。ジョイント機構166は、例えば、傾斜したハンドル軸16の下方端面に当接する等速ジョイントとして構成されている。これにより、使用者が、ハンドル14を捩じる操作(矢印R1方向)を行うことで、傾斜したハンドル軸16が回動し(矢印R1方向)、この回動がジョイント機構166を経由して操舵輪調節軸161に伝達され、当該操舵輪調節軸161が回動する(矢印R1方向)。
【0145】
このように、第二の構成例の真空掃除機10Cは、本体部に上方傾斜部118が含まれているため、ハンドル軸16、操舵輪調節軸161、ジョイント機構166および回動伝達部160から構成される操舵連結部60Cを備えていることになる。
【0146】
本実施の形態に係る各構成例においては、ハンドル14が真空掃除機10Bまたは10Cの前寄りに位置するため、本体部を略水平にして掃除を行う場合(図8(c)参照)に、使用者が大きく腰を屈める必要がなくなる。それゆえ、操作性をより向上できるという利点がある。
【0147】
なお、ギア機構165およびジョイント機構166の具体的構成は特に限定されるものではなく、回動軸の回動を同軸上から異なる位置に伝達できる構成、または、回動軸の回動を異なる方向に伝達できる構成であれば、公知のどのような構成でも用いることができる。また、本実施の形態では、操舵連結部60B,60Cが広義の回動軸として、ハンドル軸16および操舵輪調節軸161を備える点で、前記実施の形態1と同様であるが、これら回動軸の間にギア機構165またはジョイント機構166が連結されているため、ハンドル軸16を第一回動軸と定義すれば、操舵輪調節軸161は第二回動軸として定義することができる。もちろん、操舵連結部60B,60Cの構成によっては、これら以外の回動軸を備えてもよいことはいうまでもない。
【0148】
(実施の形態3)
前記実施の形態1または2においては、真空掃除機10A〜10Cのいずれも、機械的構成の操舵連結部60A〜60Cを備える構成であったが、本実施の形態では、操舵連結部として電気的構成を備える例について、図12を参照して説明する。
【0149】
図12に示すように、本実施の形態に係る真空掃除機10Dは、操舵連結部60Dを除いて前記実施の形態1に係る真空掃除機10Aと同一の構成であるが、操舵連結部60Dは、ハンドル14の操作を電気信号に変換する角度調節信号生成部167と、この角度調節信号生成部167で生成した電気信号の入力により、操舵輪15の角度を調節する車輪角度調節部168とから構成されている。角度調節信号生成部167および車輪角度調節部168は公知の配線169により接続されている。このような構成によっても、前記実施の形態1あるいは前記実施の形態2と同様の作用効果を得ることができる。
【0150】
なお、角度調節信号生成部167および車輪角度調節部168の具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0151】
例えば、ハンドル14による操作が、前記実施の形態1および2と同様に、当該ハンドル14を捩じるものである場合には、角度調節信号生成部167として、ハンドル14の捩じり(回動)による位置変化に応じた電気信号を生成する公知のダイヤル式入力装置;ハンドル14の捩じりによる位置変化が一定の大きさを超えた否かを基準に接点の開閉が行われる公知のリレー式スイッチ装置;ハンドル軸16の先端に設けられたマーカーの位置変化を検出し、この検出結果から電気信号を生成するセンサ装置;等を挙げることができる。あるいは、ハンドル14を捩じる操作を行うのではなく、ハンドル14に別途レバーまたはスイッチ等の公知の操作部が設けられている場合には、当該操作部の操作により電気信号を生成する公知の構成を採用すればよい。この場合、角度調節信号生成部167には前記操作部が含まれる。
【0152】
また、例えば、操舵連結部60Dが、前記実施の形態1および2と同様に、カム部162およびアーム部163,164を備える回動伝達部160を含む構成であれば、車輪角度調節部168としては、カム部162の後端に小型モータ(必要に応じてギア機構)を設け、当該小型モータの動作によりカム部162の前端を揺動させる構成を採用することができる。この場合、回動伝達部160および小型モータが車輪角度調節部168に相当する。あるいは、小型モータに代えて、公知のアクチュエータ等を採用することもできる。
【0153】
さらに、本実施の形態における操舵連結部60Dは、角度調節信号生成部167および車輪角度調節部168以外の構成を含んでもよいことは言うまでもない。
【0154】
なお、本発明は上記各実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、床面処理部を下部に備え、ハンドル等の把持部を上部に備える真空掃除機、床面研磨機、床面塗工機、カーペット洗浄機等のアプライト型床面処理装置の分野に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0156】
10A〜10D 真空掃除機(床面処理装置)
11 本体筐体部(本体部)
12 本体集塵部(本体部、集塵室)
13 吸引ノズル(床面処理部)
13a ノズル支持軸(処理部支持軸)
14 ハンドル(把持部)
15 操舵輪
15a,15b 車輪(操舵輪)
15c ローラ(操舵輪)
16 ハンドル軸(回動軸、操舵連結部)
60A〜60D 操舵連結部
100 床面
131 回転ブラシ
151 カバー部材
160 回動伝達部
161 操舵輪調節軸(第二回動軸、操舵連結部)
162 カム部(回動伝達部、操舵連結部)
163 アーム部(回動伝達部、操舵連結部)
164 アーム部(回動伝達部、操舵連結部)
165 ギア機構(操舵連結部)
166 ジョイント機構(操舵連結部)
167 角度調節信号生成部(操舵連結部)
168 車輪角度調節部(操舵連結部)
223 吸引モータ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の本体部と、
処理対象の床面に対する下面を有し、前記本体部の下部に取り付けられている床面処理部と、
前記本体部の上部に設けられ、使用者によって把持される把持部と、
前記本体部の下部に、前記床面に当接可能となる位置に設けられ、その角度により前記床面処理部の進行方向を規定する操舵輪と、
前記本体部における前記把持部および前記操舵輪の間に設けられ、前記把持部の操作に応じて、前記本体部および前記床面処理部から独立して前記操舵輪の角度を変更する操舵連結部と、を備えていることを特徴とする、アプライト型床面処理装置。
【請求項2】
前記操舵連結部は、
前記本体部に対して回動可能に設けられ、その上端に前記把持部が固定されている回動軸と、
当該回動軸の回動位置に合わせて前記操舵輪の角度を変更するように、前記回動軸の下端および前記操舵輪の間を連結する回動伝達部と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項3】
前記操舵連結部は、
前記回動軸の下端に連結されるギア機構またはジョイント機構と、
当該ギア機構またはジョイント機構を上端に連結し、下端に前記回動伝達部を連結する第二回動軸と、をさらに備え、
前記回動軸の上端に固定されている前記把持部は、前記本体部から見て前記進行方向の前寄りに位置していることを特徴とする請求項2記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項4】
前記操舵輪は複数設けられているとともに、
全ての前記操舵輪は、前記床面処理部の進行方向に直交する方向に沿って、一列に並んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項5】
前記回動伝達部は、
前記回動軸の下端に一方の端が固定されているカム部と、
当該カム部の他方の端および前記操舵輪を連結するアーム部と、から少なくとも構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項6】
前記操舵輪には、当該操舵輪の上方を覆った状態で、当該操舵輪の転動軸を支持するカバー部材が設けられ、
前記アーム部は、前記カバー部材における前記進行方向の前方または後方となる部位と、前記カム部の他方の端とを連結していることを特徴とする、請求項5に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項7】
前記操舵連結部は、
電気信号の入力により前記操舵輪の角度を調節する車輪角度調節部と、
前記把持部の操作を、前記車輪角度調節部に入力する電気信号に変換する角度調節信号生成部と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項8】
前記操舵輪の外周面が、前記本体部を起立させた状態では床面から離れ、前記起立させた状態から前記進行方向の後側に傾斜させた状態では前記床面に当接するように、当該操舵輪が前記本体部に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項9】
前記本体部の下部に設けられ、当該本体部の延伸方向に対する前記下面の角度を変更する方向に、前記床面処理部を揺動可能に支持する処理部支持軸を備えており、
前記操舵輪は、前記本体部の下部において、前記床面処理部の進行方向の後方となる位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項10】
前記操舵輪は、その外周面が全体的に平坦であるか、または、その外周面の縁部が中央部よりも突出した形状となっていることを特徴とする、請求項4に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項11】
前記操舵輪の少なくとも外周面は、弾性材料により構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のアプライト型床面処理装置。
【請求項12】
真空掃除機であることを特徴とする、請求項1、2、7または8に記載のアプライト型床面処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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