説明

アポダイズされたアパーチャを有するエレクトロクロミック光学素子

印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャを持つ光学素子が提供される。アポダイズされたアパーチャは、平面状の内表面および外表面を有する第1の基板、外表面および第1の基板の平面状の内表面と間隔をあけて対向する非平面状の内表面を有する第2の基板;ならびに第1の基板の平面状の内表面と第2の基板の非平面状の内表面との間に配置されたエレクトロクロミック媒体を備え、第1の基板の平面状の内表面および第2の基板の非平面状の内表面のそれぞれは、それらを被う透明導電材料の少なくとも部分的な層を有する。図1〜6のプロファイルは、アポダイズされたエレクトロクロミックアイリスの機能を実証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年12月3日に出願された米国仮特許出願第61/119,393号からの優先権の利益を主張し、この仮特許出願はその全体が本明細書において参照として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされた(apodized)エレクトロクロミックアパーチャからなる光学素子に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
携帯電話のようなモバイル通信デバイスのメーカーは、これらデバイスの機能性を増強し続ける。例えば、現在、携帯電話は、スチールカメラおよびビデオカメラ、ビデオストリーミングおよび/または双方向ビデオ通話機能を含むことができる。ユーザは、静止またはビデオ画像を撮り、ネットワークを経由して画像またはビデオファイルを送信することができる。機能性を増強する動向が続く一方で、製造者は、同様にかかる通信デバイスのサイズを縮小し続ける。
【0004】
かかるモバイル通信デバイスの縮小されたサイズが、調節可能なアパーチャもしくはアイリスを持つ絞りを、デバイスに含まれるカメラに使用することを制限してきた。機械式カメラアイリスは、入射光量を変化させるため、ならびに画像に利用しうる被写界深度を調節するための可変開口部を有する、カメラレンズ用の絞りである。大部分のフィルムカメラおよび多くのデジタルカメラには、かかる機械式アイリスが利用されている。機械式アイリスは、嵩張りすぎてコストが増加するであろうし性能に信頼性を欠く可能性もあるので、モバイル通信デバイスに使用するのは実用的でない。それゆえに、製造者は、携帯電話には調節可能なアイリスを通常は含めない。結果として、携帯電話は、(例えば、不快なショット雑音および読み出し雑音のために)低光量でも、あるいは例えば、積分時間を適切に短縮することができず過飽和の問題を生じるために高光量でも、いずれも良質な画像を生み出さない。携帯電話用カメラは、レンズ収差ゆえに被写界深度の不足および画像鮮鋭度の低下を示すこともありうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャを備える光学素子に関する。アポダイズされたアパーチャは、(i)外表面、および平面状の内表面を有する第1の基板、(ii)外表面、および第1の基板の平面状の内表面と対向する非平面状の内表面を有する第2の基板、ならびに(iii)第1の基板の平面状の内表面と、第2の基板の非平面状の表面との間に配置されたエレクトロクロミック媒体を備える。第1の基板の平面状の内表面および第2の基板の非平面状の内表面のそれぞれは、それらを被う導電材料の少なくとも部分的な層を有する。
【0006】
また、本発明は、印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャを備える光学素子に関する。アポダイズされたアパーチャは、(i)外表面、および平面状の内表面を有する第1の基板、ならびに(ii)外表面、および第1の基板の平面状の内表面との間にキャビティを形成するために該平面状の内表面と間隔をあけて対向する凸状の内表面を有する第2の基板を備える。該平面状の内表面および該凸状の内表面のそれぞれは、それらを被う透明導電材料の少なくとも部分的な層を有し、(iii)エレクトロクロミック媒体がキャビティ内に配置される。
【0007】
本明細書に開示される様々な非限定の実施形態は、図画と併せて読まれたときによりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本明細書に記載されるように測定された、時間0における実施例のアパーチャの初期の画像プロファイルである。
【図2】図2は、印加電圧の約1秒後における実施例のアパーチャの画像プロファイルである。
【図3】図3は、印加電圧の約4秒後における実施例のアパーチャの画像プロファイルである。
【図4】図4は、印加電圧の約18秒後における実施例のアパーチャの画像プロファイルである。
【図5】図5は、印加電圧の約110秒後における実施例のアパーチャの画像プロファイルである。
【図6】図6は、図5に示される緑ラインにガウス曲線フィッティングを適用した画像プロファイルである。
【図7】図7は、アパーチャが存在しないときに生じた画像プロファイルである。
【図8】図8は、比較例の固定アパーチャが存在するときに生じた画像プロファイルである。
【図9】図9は、図8に示される緑ラインにガウス曲線フィッティングを適用した画像プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本明細書および添付の請求項では、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「前記、該(the)」は、疑いの余地なく明示的に1つの指示対象に限定されない限り、複数の参照を含む。
【0010】
さらに、本明細書の目的のために、本明細書に用いられる成分、反応条件、および他の特性またはパラメータの量を表すすべての数は、他に指示されない限り、すべての事例において用語「約」によって修飾されると理解すべきである。従って、他に指示されない限り、以下の明細書および添付の請求項に提示される数値パラメータは、近似値であると理解すべきである。数値パラメータは、少なくとも、請求項の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、報告される有効数字の数と通常の丸め手法の適用とを考慮に入れて読まれるべきである。
【0011】
本明細書におけるすべての数値範囲は、列挙される範囲内のすべての数値およびすべての数値の範囲を含む。その上、本発明の広い範囲を提示する数値範囲およびパラメータは、本明細書に記載されるように近似値であるが、実施例のセクションに提示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、かかる数値は、測定装置および/または測定技術から生じるいくらかの誤差を本質的に含むことを理解すべきである。
【0012】
本開示では、本発明のいくつか異なった特徴および様態が、様々な例となる実施形態を参照して記載される。しかし、当然のことながら、本発明は、当業者が有用なことを見出すであろう任意の組み合わせにおいて、本明細書に記載される様々な特徴、様態および実施形態のいずれかを組み合わせることによって達成されうる多くの代わりの実施形態を包含する。
【0013】
前述のように、本発明は、印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャを備える光学素子を提供する。アポダイズされたアパーチャは、
(i)外表面、および平面状の内表面を有する第1の基板、
(ii)外表面、および第1の基板の平面状の内表面と間隔をあけて対向する非平面状の内表面を有する第2の基板、ならびに
(iii)第1の基板の平面状の内表面と、第2の基板の非平面状の表面との間に配置されたエレクトロクロミック媒体を備える。第1の基板の平面状の内表面および第2の基板の非平面状の内表面のそれぞれは、それらを被う導電材料の少なくとも部分的な層を有する。第2の基板およびエレクトロクロミック媒体のそれぞれの屈折率は、実質的に同じにすることができる。また、第1の基板(i)の屈折率は、第2の基板(ii)およびエレクトロクロミック媒体(iii)のそれぞれの屈折率と実質的に同じである。本発明の光学素子において、アポダイズされたアパーチャの中心領域は、エレクトロクロミック媒体の量が、アポダイズされたアパーチャの残りの部分に存在する量に比べて著しく少ない「瞳領域」を規定する。これは、この瞳領域における着色を最小限に抑える(あるいは全く無くす)のに役立つ。本発明のエレクトロクロミックアパーチャは、これまでに知られたもの、特に、対向する基板の両方が凸状か、または対向する基板の両方が凹状のものに優るいくつかの利点を提供することがわかった。本発明のアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャは、(例えば、対向する基板の2つの内表面の位置合わせがそれほど決定的に重要でない)より複雑でないデザインを提供し、延いてはアポダイズされたアパーチャのより複雑でない製造を提供する。
【0014】
第1の基板(i)および第2の基板(ii)は、同じかまたは異なった材料からなることができる。例えば、第1および第2の基板は、溶融シリカもしくは溶融石英のようなガラス、またはポリマー基板材料を備えることができる。第1の基板(i)は、ガラスを備えることができ、第2の基板は、ポリマー基板材料を備えることができるか、あるいはその逆である。同様に、第1の基板(i)は、ガラスを備えることができ、第2の基板(ii)は、ガラスを備えることができる。代わりに、第1の基板(i)は、ポリマー基板材料を備えることができ、第2の基板(ii)は、ポリマー基板材料を備えることができる。
【0015】
適切なガラス基板は、以下には限定されないが、広く知られた基板(例えば、上述のような溶融シリカおよび溶融石英)のいずれかを含むことができ、1.40以上または1.45以上、例えば1.50以上または1.65以上の屈折率を有するものを含むことができる。本発明の特定の実施形態において、基板(i)および/または基板(ii)は、1.40から1.75の屈折率を有するガラスを備えることができる。
【0016】
適切なポリマー基板は、限定なしにポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレタン(尿素)、ポリエステル、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリ(環状)オレフィン、ポリエポキシ、それらの共重合体、または上記いずれかの混合物を含むことができる。ポリマー基板は、上記基板のいずれかの組み合わせを、例えば、多層ラミネートの形態で備えることができる。ポリマー基板は、キャスト技術または成形技術、例えば射出成形技術のような、当分野で知られる任意の製造手段によって形成することができる。本発明の特定の実施形態において、ポリマー基板は、ポリカーボネート類、ポリ(環状)オレフィン類、ポリスチレン類、ポリウレタン類、ポリメタクリラート類、上記材料のいずれかの共重合体、または上記いずれかの混合物を備える。典型的に、基板(i)および(ii)の両方は、透明である(すなわち、光学的に澄んでいる)。しかしながら、いくつかの応用のために一方または両方が色合いを帯びるか、さもなければ着色されてもよい。本明細書では、「透明」は、少なくとも70パーセント、例えば、少なくとも80パーセント、または少なくとも85パーセントの視感透過率を有する基板を意味する。適切なポリマー基板は、限定なしに1.30から1.75、例えば1.35から1.70に及ぶ屈折率を有するものを含むことができる。
【0017】
前述のように、第1の基板(i)は、外表面、および平面状の内表面を有し、第2の基板(ii)は、外表面、および第1の基板の平面状の内表面と対向する非平面状の内表面を有する。第2の基板(ii)の非平面状の内表面は、典型的に凸状であるが、様々な非平面状の表面トポグラフィー、望ましい場合には、例えば球状、放物線状、または双曲線状のトポグラフィーを有してもよい。特定の実施形態において、(非平面状の内表面を有する)第2の基板(ii)は、内表面に付着した同じかまたは異なった材料の部分球または半球を有し、かくして凸状の内表面を形成する平面状の基板を備えることができる。かかる部分球または半球形状は、例えば、ガラスまたはポリマー基板の平面状の表面上にUV硬化性のアクリルもしくはエポキシ樹脂材料を分散することによって形成することができる。以下に論じられるように、この形状は、基板と基板間に配置されるエレクトロクロミック媒体との屈折率整合に対する融通性を提供する。
【0018】
代わりに、第2の基板(ii)は、上記基板材料のいずれかからなる、凸状の内表面を有する単一片とすることもできる。いずれにしても、第2の基板(ii)の凸状の内表面の曲率は、アパーチャの最大アポダイゼーションが達成されるように選択される。
【0019】
第1の基板(i)の外表面、および第2の基板(ii)の外表面のうち少なくとも1つは、実質的に平面状とすることができる、すなわち、それぞれの外表面のうち少なくとも1つは、本質的にいかなる波面歪もない表面とすることができる。
【0020】
前述のように、第1の基板(i)の平面状の内表面および基板(ii)の非平面状の内表面のそれぞれは、それらを被う透明導電性材料の少なくとも部分的な層を有する。導電材料は、エレクトロクロミックデバイスの分野で広く知られる材料のいずれかから選択することができる。本発明の目的のために、導電材料は、典型的にカーボンナノチューブ、金、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、インジウムスズ酸化物、および/または1つ以上の導電性ポリマーから選択される透明導電材料を備える。適切な導電性ポリマーの非限定の例は、ポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(ピリデン)(poly(pyridene))、ポリ(インドール)、ポリ(カルバゾール)、ポリ(アジン)、ポリ(キノン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリテトラチアフルバレン、ポリナフタリン、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、および/またはポリ(パラフェニレンビニレン)を含むことができる。適切な導電性ポリマーの詳細な議論については、Handbook of Conducting Polymers,2nd ed.,rev’d.,Marcel Dekker,Inc.,New York 1998を参照。本発明の光学素子において、第1の基板(i)および第2の基板(ii)のそれぞれの内表面における透明導電材料の少なくとも部分的な層は、1から1000オーム/□(オーム/スクエア)、例えば、1から100オーム/□、もしくは3から80オーム/□、または5から50オーム/□のように1から500オーム/□に及ぶ表面導電率を提供する。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、第2の基板(ii)の非平面状の内表面における透明導電材料の少なくとも部分的な層は、第1の基板(i)の平面状の内表面における透明導電材料の少なくとも部分的な層と間隔をあけて対向する。それらの間の分離距離は、以下には限定されないが、エレクトロクロミック媒体の濃度、および第2の基板(ii)の内表面のトポグラフィーを含む多くの要因に依存する。かかる要因を考慮に入れて、分離距離は、アポダイズされたアパーチャの瞳領域内におけるエレクトロクロミック媒体の着色を最小限に抑えるか、または完全に無くすように選択される。第1の基板(i)の内表面、および第2の基板(ii)の内表面のうち少なくとも1つにおける透明導電材料は、瞳領域において電気的に分離されることができる。瞳領域における用語「電気的に分離される」は、第1の基板(i)の内表面における瞳領域内の透明導電材料が、(例えば、以下に記載されるように)第2の基板(ii)の透明導電材料との電気通信から分離もしくは絶縁されること、またはその逆を意味する。これは、基板(i)および(ii)のそれぞれの内表面間に短絡をもたらすことなく、直接的な(すなわち、それぞれの内表面間にスペースのない)接触を可能にする。
【0022】
第1の基板(i)および第2の基板(ii)のそれぞれの内表面の一方または両方は、本質的にアポダイズされたアパーチャの瞳領域に透明導電材料を含まなくてもよいことが企図される。この形状は、瞳領域内における第1および第2の基板間には(短絡を生じることなく)スペースが存在しない、それゆえに瞳領域には着色が存在しないアポダイズされたアパーチャを提供する。本質的に瞳領域に透明導電材料を含まないアポダイズされたアパーチャは、基板(i)および/または(ii)のそれぞれの内表面の一方または両方の瞳領域を簡単にマスキングし、次に内表面(単数または複数)に透明導電材料を付けて、その後マスクを除去して透明導電材料を含まない瞳領域を提供することによって実現することができる。
【0023】
代わりに、それぞれの内表面の一方または両方の瞳領域における透明導電材料を、例えばレーザーアブレーション技術によって、少なくとも部分的に除去することができる。一実施形態において、第1の基板(i)の内表面、および/または第2の基板(ii)の内表面における瞳領域の中心部分の透明導電材料は、レーザーアブレーション技術を用いて該中心部分の周りの導電材料の細いラインを除去する(すなわち、その内表面における残りの導電材料層から分離された導電材料の「島」を作り出す)ことによって、その内表面における透明導電材料の残りの部分から分離することができる。これは、短絡を生じることなく、2つの基板のそれぞれの内表面の直接的な(すなわち、2つの間にスペースのない)接触を可能にする。
【0024】
同様に、第1の基板(i)の内表面、および/または第2の基板(ii)の内表面における瞳領域の中心部分の透明導電材料は、(当分野で知られる材料のいずれかを含む)非導電性の有機または無機コーティング材料を瞳領域の中心部分に付ける(すなわち、その内表面上の導電材料を被う非導電材料の「島」を作り出す)ことによって、その内表面における透明導電材料の残りの部分から絶縁することができる。これは、短絡を生じることなく、2つの基板のそれぞれの内表面の直接的な(すなわち、2つの間にスペースのない)接触を可能にする。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、第2の基板(ii)の非平面状の内表面は、本質的に瞳領域に透明導電材料を含まない。この代わりの実施形態において、本質的に透明導電材料を含まない第2の基板(ii)の内表面の瞳領域は、瞳領域外の第2の基板(ii)の内表面に存在する導電材料が、第1の基板(i)の内表面における導電材料に接触しないことを条件として、第1の基板(i)の平面状の内表面における透明導電材料と直接的な接触状態にありうる。
【0026】
エレクトロクロミック媒体(iii)は、第1の基板(i)の平面状の内表面における導電層と、第2の基板(ii)の非平面状の内表面における導電層との間に配置される。エレクトロクロミック媒体(iii)は、当分野で知られるエレクトロクロミック材料のいずれかを備えることができ、任意の既知の形態(例えば、液体、ゲル、またはポリマー材料の形態)にありうる。例えば、エレクトロクロミック媒体(iii)は、溶媒相エレクトロクロミック媒体の形態にありうる。本発明の目的のために、用語「溶媒相エレクトロクロミック媒体」または「溶液相エレクトロクロミック媒体」は、液体ならびにゲル形態のエレクトロクロミック媒体を含むことが意図される。本発明の特定の実施形態において、エレクトロクロミック媒体は、液体形態の溶媒相エレクトロクロミック媒体を備える。エレクトロクロミック媒体は、印加電圧に応答して色または暗さが変化する、少なくとも1つのエレクトロクロミック化合物または色素を含む。典型的に、本発明の光学素子に用いられるエレクトロクロミック媒体は、電気活性なカソードおよびアノード材料を含む。溶液相エレクトロクロミック媒体において、エレクトロクロミック化合物(単数または複数)/色素(単数または複数)は、イオン導電性電解質中の溶液に含まれる。該材料は、電気化学的に還元または酸化されたときに溶液中に留まる。
【0027】
一般に、溶媒相エレクトロクロミック媒体は、少なくとも1つのアノード電気活性色素、少なくとも1つのカソード電気活性色素、および適切な溶媒に溶けやすい少量の塩(単数または複数)を含む。DC電圧が、(低K材料(低誘電率材料)、例えばガスケットまたはシール部材によって通常は分離された)2つのそれぞれの透明導電層を通して印加されたときに、アノード色素は、アノードの表面で電気化学的に酸化され、カソード色素は、カソードの表面で電気化学的に還元される。着色は、溶媒相エレクトロクロミック媒体中のアノード色素および/またはカソード色素のモル吸光係数が、それらの電気化学反応によって変化したときに達成される。一般に、色素の少なくとも1つは、可視波長域の消衰係数が著しく増加する。これらの着色種は、自由に電極(すなわち、それぞれの透明導電層)から拡散し、エレクトロクロミック媒体のバルク中で互いに会合することができる。電気化学的に変化した2つの色素間に酸化還元反応が生じて、それぞれの元の状態(すなわち、退色もしくは非着色状態)が再生される。アポダイズされたアパーチャの最終的な着色は、電極表面(すなわち、透明導電層のそれぞれの表面)における電気化学反応と、溶媒相エレクトロクロミック媒体のバルク中における拡散律速の酸化還元反応との平衡の結果である。かかる「自己消去セル」において、アポダイズされたアパーチャの着色状態を維持するためには、所定の印加電圧での電流が必要とされる。印加電圧なしでは、セルは、最終的に元の退色状態に戻るであろう。
【0028】
上記に関わらず、アポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャ内でのエレクトロクロミック着色は、一連の電圧パルスを印加することによって強めることができる。パルスは、電圧パルスをオンオフするか、もしくは2つの異なった印加電圧パルスを相互に発生させるか、または電流方向を反転するために逆極性パルスを発生させるか、いずれかによって印加することができる。(正負いずれかの方向の)印加電圧パルスの振幅(個別または任意の組み合わせのいずれか)、パルス時間、および/またはパルス周波数を調節することによって、着色および消色に影響を及ぼすことができる。
【0029】
また、アポダイズされたアパーチャは、例えば(エレクトロクロミック媒体を横切るのではなく)透明導電層の一方または両方の面内を通る急速な電池電力のバーストを利用した、アポダイズされたアパーチャの抵抗加熱に適合するように構成することができると考えられる。アパーチャの加熱は、エレクトロクロミック媒体の着色の反応速度を増加させるだけでなく、フェードして退色状態に戻る速度(「フェード速度」)を増加させるためにも役立つ。
【0030】
本発明の光学素子に用いられるエレクトロクロミック媒体は、例えば、ジヒドロフェナジン化合物のようなフェナジン化合物、および/またはジピリジニウム(すなわち、ビオロゲン)化合物を含む、当分野で知られるエレクトロクロミック化合物のいずれかを備えることができる。かかるフェナジン化合物およびその調製の適切な非限定の例は、米国特許第6,020,987号のコラム31、43行、コラム34、7行、および米国特許第4,902,108号のコラム13、49行からコラム15、42行に記載されるものを含むことができ、それらの引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。ビオロゲン化合物の適切な非限定の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,020,987号のコラム34、8〜55行に記載されるものを含む。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Electrochromism and Electrochromic Devices,Monk et al.,Cambridge University Press 2007,Chapter 11,pp.341−373も参照。適切なアノードエレクトロクロミック色素の具体的な例は、以下には限定されないが、5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナゼン(dimethylphenazene)、N,N,N,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、10−メチルフェノチアジン、10−エチルフェノチアジン、テトラチアフルバレン、フェロセンおよびその誘導体、および/またはトリアリールアミン類およびその誘導体を含むことができる。適切なカソードエレクトロクロミック色素の具体的な例は、以下には限定されないが、1,1’−ジフェニル−4,4’−ビピリジニウムジフルオロボラート、1,1’−ジ(n−ヘプチル)−4,4’ビピリジニウムジフルオロボラート、1,1’−ジベンジル−4,4’ビピリジニウムデフルオロボラート(defluoroborate)、および/または1,1’−ジ(n−プロピルフェニル)−4,4’−ビピリジニウムジフルオロボラートを含むことができる。
【0031】
加えて、エレクトロクロミック媒体は、溶媒(例えば、非プロトン性極性溶媒)、光吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、増粘剤もしくは粘度調整剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、および自立ゲルのような他の材料を、ポリマーマトリックスを含めて同様に含むことができる。エレクトロクロミック媒体は、プロピレンカーボネート、ベンゾニトリル、フェノキシアセトニトリル、ジフェニルアセトニトリル、スルホラン、スルホラート、および/またはホスホルアミドを備える溶媒を含むことができる。他の有用な溶媒は、以下には限定されないが、リン酸トリクレジル、リン酸クレジルなどのようなリン酸エステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミド(phosphonamide)、ジエチルホルムアミド、テトラメチル尿素などのようなアミド類、アセトニトリルのようなニトリル類、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジオクチルなどのようなエステル類、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどのようなカーボネート類、γ−ブチロラクトンのようなラクトン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのようなケトン類を含むことができる。上記溶媒のいずれも、単独かまたは任意に組み合わせて用いられ得る。溶媒の粘度は、エレクトロクロミック着色の応答速度に影響を及ぼすことができる。従って、より高い応答速度が必要とされるときには、より低い粘度の溶媒が一般に用いられる。
【0032】
加えて、溶液相エレクトロクロミック媒体は、溶液にイオン伝導性を提供するために、溶解した電解質、例えば、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラートおよび/またはテトラブチルアンモニウムブロミドを備えることができる。この目的に適した電解質物質は、当分野でよく知られている。
【0033】
前述のように、本発明の光学素子において、第2の基板(ii)およびエレクトロクロミック媒体(iii)の屈折率は、実質的に同じにすることができる。「実質的に同じ」屈折率は、第2の基板(ii)、およびエレクトロクロミック媒体(iii)のそれぞれの屈折率間の差が、+/−0.005以下、例えば+/−0.004以下、もしくは+/−0.003以下、または+/−0.002以下であることを意味する。かくして、第2の基板(ii)およびエレクトロクロミック媒体(iii)の組成は、(ii)および(iii)のそれぞれの屈折率が実質的に同じであるように選択される。また、第1の基板(i)、第2の基板(ii)、およびエレクトロクロミック媒体(iii)のそれぞれの屈折率は、実質的に同じにすることができる。(ii)および(iii)、ならびに望ましい場合には(i)、の屈折率のかかる「整合」は、優れた光学的品質を有する光学素子を提供する。
【0034】
注目すべきこととして、もし基板(ii)およびエレクトロクロミック媒体(iii)、ならびに望ましい場合には第1の基板(i)、のそれぞれの屈折率間の差が、上に述べた値より大きい、例えば、およそ+/−0.01の差、またはおよそ+/−0.1の差であれば、屈折率整合のこの欠如を調整するために、アポダイズされたアパーチャが使用される光学デバイス(例えば、携帯電話用カメラ)の光学部を修正することができる。端的に言えば、いくつかの事例では、上述のように(ii)および(iii)、ならびに望ましい場合には(i)、の屈折率を「整合」させることが望ましくないこともありうる。かかる事例では、光学素子自体の様々な構成要素を調整することによって、および/または光学素子を使用するデバイスの1つ以上の構成要素を調整することによって、光学素子の光学的パワーを維持することができる。例えば、アポダイズされたアパーチャを携帯電話用カメラに使用するときには、特定のパワーを持つカメラレンズと併せて、アポダイズされたアパーチャを使用することができる。同様に、アポダイズされたアパーチャ自体の基板の一方または両方にパワーを導入することもできる。第1および第2の基板のそれぞれの形状および屈折率のバランスを取ること、ならびにエレクトロクロミック媒体を調整することによって、アポダイズされたアパーチャ自体をレンズとして使用することもできる。
【0035】
本発明の光学素子において、アポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャは、エレクトロクロミック媒体を保護して第1および第2の基板のそれぞれの内表面における透明導電層の間に閉じ込めるために、アポダイズされたアパーチャの外周に、第1の基板(i)、第2の基板(ii)、およびエレクトロクロミック媒体(iii)と接触した少なくとも1つのシール部材(iv)をさらに備えることができる。かかるシール部材は、ガラスおよび/またはポリマー基板材料、ならびに導電層に対して良好な密着性を有する材料からなるべきである。また、シール部材は、酸素、水蒸気および他の気体に対して低透過率を示す必要があり、かつ接触して閉じ込めるべきエレクトロクロミック媒体と相互作用してはならず、それを汚染してはならない。シール部材として用いるのに適した材料は、以下には限定されないが、液晶デバイス用として知られる樹脂のいずれかのような、熱可塑性、熱硬化性およびUV硬化性のシール用有機樹脂を含む(米国特許第4,297,401号、第4,418,102号、第4,695,490号、第5,596,023号、および第5,596,024号を参照)。周辺シール部材として用いるのに適した材料は、上述のように低誘電率材料である。適切なシール材料のいくつか非限定の例は、エポキシ、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、それらの共重合体および混合物)、シリコーン類、ポリエステル類、ポリアミド類および/またはポリウレタン樹脂に基づく材料を含むことができる。上記材料のいずれも、基板材料、例えばガラスへの結合性を高めるためにシラン修飾することができる。適切な場合には、シール部材を基板(i)および(ii)に付着させるために、適切な接着剤を用いることができる。
【0036】
さらに、当分野で知られるいずれかのような接着剤の1つ以上のうち、シール数を構成しうることに注目すべきである。この目的に適した接着剤は、以下には限定されないが、熱可塑性、熱硬化性およびUV硬化性の有機樹脂に基づく接着剤を含むことができる。適切な接着剤は、例えば、エポキシ、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、それらの共重合体および混合物)、シリコーン類、ポリエステル類、ポリアミド類および/またはポリウレタン樹脂に基づくものを含むことができる。http://www.us.schott.com/epackaging/english/glass/technical_powder/solder.htmlに記載されるような、はんだガラス材料の使用も同様に考慮される。
【0037】
明らかに、アポダイズされたアパーチャの動作中のショート(すなわち、短絡)を防ぐために、基板(i)の内表面および基板(ii)の内表面上に提供される(電極として機能する)それぞれの透明導電層間のいかなる物理的接触も回避されなくてはならない。従って、本発明の特定の実施形態において、それぞれの透明導電層は、互いに間隔をあけて配置されなくてはならない。それぞれの透明導電層の物理的分離を維持するために、上記シール部材自体がスペーサーとして機能することができる、および/または絶縁材料からなる個別の光学素子部材をスペーサーとして使用することができる。
【0038】
本明細書では、用語「アポダイズされた」および関連する用語(例えば、アポダイズすること、アポダイゼーションなど)は、(例えば、アパーチャの中心での)透射光の最大パーセンテージから(例えば、アパーチャの端での)透射光の最小パーセンテージへ半径に沿ってスムーズかつ段階的に移行するアパーチャを指す。完全にアポダイズされたアパーチャは、それに対する光透過率(T)が、その半径(x)に沿ってガウス曲線(すなわち、T=exp(αx)として変化するアパーチャであろう。光学素子、例えばカメラのアイリスとして使用されるときに、本発明のアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャは、自動的「拡張」および「収縮」を容易にする点でヒトの目の瞳孔に倣う。励起エネルギーが増加するにつれて、アパーチャは、レンズを通る光量を減少させるように収縮する。本発明によって可能となる収縮するアパーチャは、レンズシステムの実効F値を変化(すなわち、増加)させ、延いてはその被写界深度を増加させる。同様に、励起エネルギーが減少するにつれて、アパーチャは、レンズを通る光量を増加させるように拡張する。アパーチャが完全に透明になるにつれて、(他のいかなるシステム要素も制限要因として機能しないと仮定すると)開放アパーチャは、レンズの機械的絞りのみで制限される。かくして、アポダイズされたアパーチャは、ガウス半径方向透過率曲線(Gaussian radial transmittance curve)によって特徴付けられる。エレクトロクロミック媒体の厚さは、アポダイズされたアパーチャの半径に沿って増加し、第2の基板の非平面状(例えば、凸状)の内表面によって変化する。
【0039】
一般に、第1の基板(i)の内表面および第2の基板(ii)の内表面における透明導電材料の少なくとも部分的な層は、コントローラと電気的に繋がった対向導電電極として機能し、電圧を印加することによって、エレクトロクロミックアパーチャにエネルギーを付与するように動作することができる。印加電圧の大きさは、例えば、典型的な携帯電話用カメラモジュールのCMOSイメージセンサのような光学センサによって測定される、光条件に応答して変化する。前述のように、本発明は、暗い照明条件では、多くの光量を通過させるために「開」となり(すなわち、印加電圧の減少もしくは解除によりエレクトロクロミック媒体へのエネルギーが遮断される);条件がより明るいときには、光を減衰させるか、またはその一部を遮断するために「閉」となる(すなわち、電圧印加によりエレクトロクロミック媒体にエネルギーが付与される)アポダイズされたアパーチャを提供する。かくして、本エレクトロクロミック媒体は、改善された解像度と、例えばレンズおよびセンサによる、総合的な焦点合わせとを提供するために(例えば、瞳領域におけるアパーチャの中心での)透射光の最大パーセンテージから(例えば、アパーチャの端での)透射光の最小パーセンテージへ半径に沿ってスムーズかつ段階的に移行するアポダイズされたアパーチャを提供する。本エレクトロクロミック媒体は、自動的にエネルギーが付与されうる、および/またはエネルギーが遮断されうる、および/またはイメージングアレイセンサの周囲において感知される照明条件の変化に応答して連続的に変化しうる媒体であり、その結果として、暗い光条件では、改善されたセンサ照明が提供され、一方でより明るい光条件では、改善された焦点合わせとレンズ収差のより良好な制御とがさらに提供される。
【0040】
特定の実施形態において、本発明は、印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャを備える光学素子に関し、アポダイズされたアパーチャは、(i)外表面、および平面状の内表面を有する第1の基板、ならびに(ii)外表面、および第1の基板の平面状の内表面との間にキャビティを形成するために該平面状の内表面と間隔をあけて対向する凸状の内表面を有する第2の基板を備え、該平面状の内表面および該凸状の内表面のそれぞれは、それらを被う透明導電材料の少なくとも部分的な層を有し、該導電材料は、インジウムスズ酸化物を備え、該アポダイズされたアパーチャは、(iii)キャビティ内に配置されたエレクトロクロミック媒体を備える。第2の基板およびエレクトロクロミック媒体の屈折率は、+/−0.003より大きくは相違し得ない。この実施形態において、アポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャは、アポダイズされたアパーチャの外周に、第1の基板(i)、第2の基板(ii)、およびエレクトロクロミック媒体(iii)と接触した上記シール部材材料のいずれかからなるシール部材(iv)をさらに備えることができる。基板(i)および(ii)にシール部材を付着させるために、適切な接着剤を使用することができる。あるいは接着剤自体が、シール部材として機能することができる。(i)、(ii)および(iii)の屈折率は、+/−0.003より大きくは相違し得ない。(i)の外表面および(ii)の外表面の少なくとも1つは、実質的に平面状である。
【0041】
本発明のアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャは、通常は、CCDもしくはCMOSチップのような、画素化されたイメージングアレイセンサとともに実装される。しかしながら、アポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャは、他のタイプのセンサとともに実装することもでき、カラーフィルタ、あるいはセンサと関連するプロセスの有無に関わらず、本発明の範囲に影響を及ぼすことなく実装されることができる。
【0042】
本発明のいずれの光学素子(単数または複数)においても、アポダイズされたアパーチャの第1および第2の基板のそれぞれの外表面は、基板の一方または両方の外表面の少なくとも一部に結合された、ハードコートおよび/または耐摩耗コーティングのような保護コーティング、反射防止(「AR:anti−reflective」)コーティング、防曇コーティング、酸素バリアコーティング、および/または赤外(IR:infra−red)吸収コーティング、および/またはIR反射コーティング、および/または従来の反射コーティングから選ばれる、少なくとも1つのコーティングを用いて少なくとも部分的に被覆されることができる 留意すべきことは、コーティングは、外表面全体を覆うこともできるが、その必要はないことである。ARコーティングの適切な非限定の例は、当術分野でよく知られる真空蒸着およびスパッター技術のような付着手段によって、基板(i)および/または(ii)の外表面(単数または複数)上か、または代わりに基板の外表面(単数または複数)に付けられた自立膜上に堆積されうる金属酸化物、金属フッ化物、または他のかかる材料の単層コーティングまたは多層コーティングを含むことができる。IR反射コーティングの適切な非限定の例は、例えば、PVDメタライゼーション法によって付けられた、NiCrおよび/または金層のような、非常に薄い部分的に透明な金属層を含むことができる。かかる材料および付着手段は、Dresden,GermanyのCreavac Vakuumbeschechtung GmbHから入手可能である。IR反射コーティングの適切な例(例えば、Laser GoldおよびLaser Black)も、Epner Technology,Inc.から入手可能である。また、適切なIR反射コーティングは、Canoga Park,CAのCPFilms Inc.から商標名AgHTの下で入手可能な銀ベースコーティング、および商標名AuAREの下で入手可能な金ベースコーティングを含むことができる。IR吸収コーティングの適切な非限定の例は、IR吸収色素材料、例えば、環境光の条件下で光化学的に安定であり近赤外スペクトル領域内の光を吸収するもの、例えば、(約830nmにおけるピークIR吸収を提供する)5,5’−ジクロロー11−ジフェニルアミノ−3,3’−ジエチル−10,12−エチレンチアトリカルボシアニンペルクロラート;(約780から約800nmにおけるピークIR吸収を提供する)2,4ジ−3−グアイアズレニル−1,3−ジヒドロキシシクロブテンジイリウムジヒドロキシド、ビス(分子内塩);および(約900から約1000nmにおけるピークIR遮断を提供する)1−ブチル−2−[2−[3[(1−ブチル−6−クロロベンゾ[cd]インドール−2(1H)−イリジエン)エチリデン]−2−クロロ−5−メチル−1−シクロヘキセン−1−イル]エテニル]−6−クロロベンゾ[cd]インドリウムテトラフルオロボラートを備えるコーティングである。
【0043】
移行コーティングも用いることができる。本明細書では、用語「移行コーティング」は、2つのコーティング間の特性の勾配を作り出すのに役立つコーティングを意味する。例えば、本明細書には限定されないが、移行コーティングは、比較的硬いコーティングと比較的柔らかいコーティングとの間に硬さの勾配を作り出すのを助けることができる。移行コーティングの例は、放射線硬化されたアクリラートベース薄膜を含む。
【0044】
保護コーティングの適切な例は、以下には限定されないが、オルガノシラン類を備える耐摩耗性コーティング、放射線硬化されたアクリラートベース薄膜を備える耐摩耗性コーティング、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニアのような無機材料に基づく耐摩耗性コーティング、紫外線硬化性タイプの有機耐摩耗性コーティング、酸素バリアコーティング、UVシールドコーティング、およびそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、保護コーティングは、放射線硬化されたアクリラートベース薄膜の第1のコーティングとオルガノシランを備える第2のコーティングとを備えることができる。市販の保護コーティング製品の例は、それぞれSDC Coatings,Inc.およびPPG Industries,Inc.から入手可能なSILVUE(登録商標)124およびHI−GARD(登録商標)コーティングを含む。
【0045】
次に、本明細書に開示される様々な実施形態が以下の実施例に示される。
【実施例】
【0046】
セクションIは、エレクトロクロミック溶液の調製、および溶液とレンズとの屈折率整合について記載する。セクションIIは、エレクトロクロミックアイリスの作製について記載する。セクションIIIは、本発明のエレクトロクロミックアイリスおよび比較例の固定アパーチャをテストするために用いる方法について記載する。セクションIVは、図1〜9に提示される実施例および比較例のイメージング結果について記載する。
【0047】
セクションI−エレクトロクロミック溶液の調製
パートA− n−ヘプチルビオロゲンテトラフルオロボラートの調製
n−ヘプチルビオロゲンテトラフルオロボラートの調製を、2つのステップで実施した。次の材料を、精製なしにAldrichから購入した:n−ヘプチルブロミド、99%(629−04−9)、4,4’−ビピリジン(bipyridine)(553−26−4)98%、アセトニトリル(75−05−08)、ナトリウムテトラフルオロボラート(13755−29−8)およびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(429−42−5)。
【0048】
ステップ1−ジブロミドの調製
1,000mlの三口丸底フラスコに、アセトニトリル(200mL)、4,4’−ジピリジン(0.08モル、12.5g)およびn−ヘプチルブロミド(0.25モル、45.23g)を加え、溶液を機械式撹拌器によってかき混ぜた。結果として生じた黄色い澄んだ溶液を加熱し、約30分間沸騰させた。約2時間30分後に、溶液は暗い色になり黄色い沈殿が形成された。80℃で約16時間にわたって溶液を還流し、その後室温に冷却した。黄色い沈殿を、濾過により分離し、新鮮なアセトニトリルで洗浄し、空気乾燥して26.5gの生成物を得た。回収された生成物を、さらなる精製なしにステップ2に用いた。
【0049】
ステップ2−塩交換/精製
1リットルのビーカー中でナトリウムテトラフルオロボラート(0.22モル、24.15g)を混合に伴っておよそ700mLの脱イオン水に溶解し、ステップ1の生成物(0.045モル、23.1g)を加えた。ステップ1の黄色い生成物は、周囲温度で徐々に白く変色した。2時間の混合後に、ブフナー漏斗を用いてNo.54濾紙で濾過することにより白い沈殿を回収し、約26gの生成物を得た。回収された生成物をオーブン中、90℃で数時間にわたって真空乾燥し、21.4gの生成物を得た。面積%HPLC試験法による分析から、この生成物が99.9%であることが明らかになった。600mLのビーカー中で生成物(10g)を250mLの脱イオン水から再結晶化した。結果として生じた懸濁液を加熱し、温度が約90℃のときに澄んだ色になった。熱い澄んだ溶液を、同じホットプレート上で加熱した300mLの2つのエルレンマイヤーフラスコ中へNo.40濾紙を通して濾過した。結果として生じた濾液を周囲温度に冷却し、結晶性の沈殿を形成した。再結晶化された生成物(6.8g)を、面積%HPLC試験法によって分析した。該試験法は100%を示し、検出可能な不純物はなかった。
【0050】
パートB−セル溶液の調製
次の材料を、精製なしにAldrichから調達した:プロピレンカーボネート(108−32−7)、ベンゾニトリル(100−47−0)、5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジン(DMPZ、15546−75−5)および典型的なMw=1,3MMのポリビニルピロリドン(PVP)(9003−39−8)。TINUVIN(登録商標)P紫外線吸収剤を、Ciba Geigyから調達した。589nm/20℃における屈折率を、ATAGOからのデジタル屈折計Automatic Digital Refractometer model RX−7000αを用いて、取扱説明書Cat.No.3262における製造者の推奨手順に従って測定した。
【0051】
ステップ1−溶媒混合物の調製
ベンゾニトリル(50.88g)およびプロピレンカーボネート(49.12g)を、適切な容器中で一緒に混合した。結果として生じた混合物の屈折率は、1.4816であった。
【0052】
ステップ2−3% PVP溶媒混合物の調製
ポリビニルピロリドン(3g)を、ステップ1の生成物(97.0g)中に溶解した。結果として生じた溶液の屈折率は、1.4819であった。
【0053】
ステップ3−原液の調製
適切な容器中に、ステップ2の生成物(20.0g)を加えた。テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート(0.10M、0.6585g)およびTINUVIN(登録商標)P紫外線吸収剤(0.0200g)を、混合しながら加えた。結果として生じた溶液の屈折率は、1.4821であった。
【0054】
ステップ4−エレクトロクロミックセル溶液(0.06M)の調製
n−ヘプチルビオロゲンテトラフルオロボラート(0.1584g)を、ステップ3の生成物(5.0g)中に溶解し、無色の澄んだ溶液を生じた。溶液に、DMPZ(0.0631g)を加えると、澄んだ溶液の色が緑がかった色になった。結果として生じた溶液の屈折率は、1.4844であった。
【0055】
パートC−エレクトロクロミックセル溶液のN−FK5半球レンズへの屈折率整合
550nmの波長でエレクトロクロミックアイリスレンズに使用されるN−FK5ガラス(Schott)の屈折率1.4890に整合するためには、光分散曲線に基づいて、セル溶液を、589nmで測定された屈折率1.4851±0.0003に整合する必要があることが判明した。光分散曲線を、Metricon Prism Coupler,Model 2010Mを用いて測定し、装置操作用ソフトウェアバージョン1.81のコーシーフィットモジュールを用いて計算した。
【0056】
屈折率の1.4844から1.4851への調整は、ステップ4の生成物(2.7550g)に、3重量%PVP溶液を含む100%ベンゾニトリル(0.0374g)を加えることによって行った。結果として生じた溶液を、約0.5gの4Aモレキュラーシーブビーズ(8〜12メッシュ)とともに約16時間撹拌し、0.45マイクロメートルのカートリッジを通して濾過した。結果として生じた屈折率は、589nmにおいて1.4850であった。得られた屈折率が±0.0003以内であったので、さらなる調節は必要なかった。
【0057】
セクションII−エレクトロクロミックアイリスの作製
次の材料を用いた:インジウムスズ酸化物が被覆された、寸法が25mm×25mm×1.1mmの2枚のスライドガラス、Delta Technologiesからの品目X−178;2本の30ゲージ針;MSPT,Inc.Mountain View,CA.から調達されたN−FK5ガラス製の2.5mmボールレンズから調製された半球レンズであって、Opticfab Corp.Santa Clara,CA.によって2.5mmボールレンズの曲率と約300マイクロメートルの厚さとを有する半球レンズになるまで研磨された半球レンズ;Loctite(登録商標)M−121HP(商標)Hysol(登録商標)医療デバイス用エポキシ接着剤;およびDYMAX Light Weld(登録商標)429−ゲルガラス接着剤;
一方のITO被覆スライドガラス上に、セルを調製するために使用される構成要素を置くために、寸法が20×25mmの矩形スペースを用いた。30ゲージ針を一方の上隅に配置し、かつ他の30ゲージ針を他方の上隅の端から5mmに配置した一端によって、このスペースを規定した。半球レンズを、20×25mm矩形の中心に置いた。別のITO被覆スライドガラスを、それぞれのITO被覆スライドガラスから端の5mmが露出するように矩形を被って置いた。結果として生じた組立品を、組立品の上下に取り付けた小型バインダークリップによって一緒に保持した。セルの2つの反対端におけるギャップを、エポキシ接着剤を用いて針に接触することなく埋めた。セルの厚さを固定するために周囲温度で一晩セルを硬化し、その後針を除去した。一端における約0.2mmの注入口を除く4辺すべてのセルギャップを、さらに多くのエポキシ接着剤を用いて埋めた。プロセスを完了するために、次にセルを105℃で1時間硬化した。続いて、屈折率が整合されたパートCのエレクトロクロミックセル溶液が入ったビーカー中に、セルを、注入口を下にして置き、約30水銀柱インチで5分間にわたって真空チャンバに入れた。セル溶液が、組立品中に引き上げられるのを可能にするために、真空をゆっくり窒素ガスで置換した。セルを、パートCの生成物で真空充填した後に、開口部を、DYMAX Light Weld(登録商標)429−ゲルガラス接着剤でシールし、DYMAX(登録商標)5000−ECチャンバ中で7秒間の紫外光への曝露により硬化した。得られたセルを、アセトンで清浄化した。露出したITO被覆表面の両方を、導電性接着剤で付着面が被覆された導電性銅テープ(約6.3mm幅)でカバーし、電気的接続を容易にするための母線としての機能を果たした。結果として生じたセルを、DYMAX(登録商標)5000−ECチャンバ中で再び7秒間紫外光に曝露した。セルの母線を、LAMBA Model LLS5018電源に接続した。電圧が0.6から1.2V超まで増加したときに、セルが着色した。電圧が0.6V未満まで減少したときに、セルが元の無色の外観へ退色し始めた。
【0058】
セクションIII−エレクトロクロミックアイリスをテストするために用いられる方法
セクションIIの生成物を、Olympus SZH10ズーム式実体顕微鏡の対物レンズの約40から60mm下方の装着具に入れて、散乱光源により最大強度で照明した。顕微鏡を、ズーム設定を2.5にセットした1.5×対物レンズを用いてセットアップした。顕微鏡上のアパーチャを、値6にセットした。装着具を、手動プラスチックシャッターを含むステージに接続した。
【0059】
室内照明の影響を最小限に抑えるために、顕微鏡の接眼レンズを、黒いプラスチックカバーおよび黒い遮光材料で覆った。顕微鏡のステージ領域の周りも、黒いプラスチック遮光材料で包んだ。エレクトロクロミックセルのそれぞれの面の母線領域を、1.2Vを供給するようにセットされたLAMBDA LLS5008デジタル電源に接続した。
【0060】
C−マウントコネクタによって顕微鏡に搭載されたAVT Stingray 145Cカラーデジタルカメラを用いて、画像を取得した。FireWire 800ケーブルおよびFireWire PCIカードを用いて、デジタルカメラをコンピュータに接続した。画像を、AVTソフトウェア(SmartView 1.10)を用いて取得した。カメラを、次の設定値:フォーマット=F7モード0、ISO感度=400、幅=1388、長さ=1038、積分時間=140ミリ秒、高信号対雑音比=8画像、フレーム/秒=0.85を用いてセットアップし、ホワイトバランスなどすべての自動調節機能は停止した。画像を、300画像について毎秒0.85フレームの速度で取得した。300画像のうち、およそ24画像が電圧オフ(サンプルとして)で、約100画像が電圧1.2Vオンで、約100画像が電圧オフで、さらに約75の暗画像が(光源とサンプルとの間の手動シャッターを閉じて)取得された。暗画像を平均化して、以下に示されるプロファイルにおけるカメラシステムからのダークノイズを差し引くために用いた。画像を、RAWフォーマットで保存した。
【0061】
すべての取得画像をデータ取得中に自動解析するようにカスタマイズされた、WaveMetricsからのIgor Pro(version 6.1x)を用いて、データを解析した。画像を、Igor Pro中にロードし、AVT Stringrayの取扱説明書に示されるRGRG....GBGB...のデベイヤ機能(a debayering function)を用いて、RAWフォーマットからRGBフォーマットへ変換した。解析して図1〜9に示した画像に対して、RAWからRGBへの画像変換以外に、さらなる画像処理を行わなかった。図7における「アパーチャなし」、ならびに図8および9における比較例「固定アパーチャ」(Edmund Opticsからの300マイクロメートル精密ピンホール、マウント付き、NT56−285)に対する画像が、積分時間が120ミリ秒でフレーム/秒が0.98であること以外は同じセットアップを用いて収集した。それぞれの解析画像から抽出された強度プロファイルは、画像の中心を通る縦線に沿うものであった。
【0062】
ソフトウェアは、画像を時間の関数として解析するのに加えて、アイリスの断面「強度」プロファイルを時間の関数として表示するようにプログラムされたものである。留意すべきことは、図示されたプロファイルが、該プロファイルと同じ座標に沿って平均暗画像情報を引き去ったデータに由来することである。平均暗画像は、プラスチックシャッターが閉の位置にある(光が存在しない)60から75フレームの平均であった。同じく留意すべきことは、プロファイルが、データの縦の列から抽出され、信号対雑音比を改善するために+/−8ピクセルにわたって平均化されたことである。
【0063】
セクションIV−イメージング結果
エレクトロクロミックアイリスに対する強度プロファイルを、図1では時間0、図2では約1秒、図3では約4秒、図4では約18秒、図5では約110秒において撮られた画像から導出した。図6は、110秒後における図5の緑の応答曲線に対する、ガウス曲線の曲線フィッティングを示す。図7は、所定の位置にアパーチャがないプロファイルを表す。図8は、300マイクロメートル固定アパーチャの比較例を表す。アイリスの解析画像は、SmartView 1.10ソフトウェアを用いて収集され(データ取得前に自動ホワイトバランスが適用され、その後ホワイトバランスが固定された)、Igor Pro中に表示された。図の強度プロファイルは、画像に関するデータの縦の列から導出された赤、緑および青(それぞれ実曲線、長破線、および短破線)の曲線を示す。
【0064】
図1〜6のプロファイルは、アポダイズされたエレクトロクロミックアイリスの機能を実証する。図1では、電圧がオフのときに、アイリスは完全に開いている。1.2Vが印加されると、約1秒後に図2、約4秒後に図3、約18秒後に図4、および約110秒後に図5において実証されるように、エレクトロクロミックアイリスが活性化してアポダイズされたアパーチャが形成される。図6は、図5の緑の応答(破線)が、如何に忠実にアポディゼーションに有用なガウス分布(実線)を忠実に表すかを実証する。Igor Proの組み込みガウシアンフィットルーチンを用いて得られたガウス幅パラメータ(結果として生じた幅パラメータはSqrt(2)標準誤差に等しい)が、Igor Proの該幅パラメータをSqrt(2)で除して、その結果に2を乗じることによって、ガウスビーム[2標準誤差]に対するより伝統的なビームウエストの計算に変換された。アポダイズされたアパーチャのガウス幅(ビームウエスト)は、約316マイクロメートルであった。比較例「固定アパーチャ」のプロファイル(幅が約300マイクロメートル+/−10マイクロメートル)が図8に示され、図9ではプロファイルにガウス曲線フィッティングが適用される。図9におけるプロファイルは、アポダイズされたアパーチャ(実線)と固定アパーチャ(破線)との差を明確に実証する。図7は、アパーチャの存在しないプロファイルを示す。
【0065】
本発明の特定の実施形態が、例示を目的として上に記載されたが、添付の請求項に規定される本発明から逸脱することなく、本発明の詳細に関する多くの変更がなされうることは当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャを備える光学素子であって、
前記アポダイズされたアパーチャは、
(i)平面状の内表面、および外表面を有する第1の基板であって、前記平面状の内表面は、それを被う透明導電材料の少なくとも部分的な層を有する、第1の基板;
(ii)外表面、および前記第1の基板の前記平面状の内表面と対向する非平面状の内表面を有する第2の基板であって、前記非平面状の内表面は、それを被う透明導電材料の少なくとも部分的な層を有する、第2の基板;ならびに
(iii)前記第1の基板の前記平面状の内表面と、前記第2の基板の前記非平面状の内表面との間に配置されたエレクトロクロミック媒体
を備える、
光学素子。
【請求項2】
前記第2の基板の屈折率、および前記エレクトロクロミック媒体の屈折率は、実質的に同じである、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1の基板の屈折率は、前記第2の基板の屈折率および前記エレクトロクロミック媒体の屈折率と実質的に同じである、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
前記第1の基板(i)の前記外表面、および前記第2の基板(ii)の前記外表面のうち少なくとも1つは、実質的に平面状である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1の基板(i)の前記平面状の内表面における透明導電材料の前記少なくとも部分的な層、および前記第2の基板(ii)の前記非平面状の表面における透明導電材料の前記少なくとも部分的な層は、1から1000オーム/□に及ぶ表面導電率を提供する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第2の基板(ii)の前記非平面状の内表面における透明導電材料の前記少なくとも部分的な層は、前記第1の基板(i)の前記平面状の内表面における透明導電材料の前記少なくとも部分的な層と間隔をあけて対向する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
前記アポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャの中心領域は、瞳領域を規定する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
前記第2の基板(ii)の前記非平面状の内表面は、前記瞳領域における前記透明導電材料を本質的に含まない、請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1の基板(i)の前記内表面、および前記第2の基板(ii)の前記内表面のうち少なくとも1つにおける前記透明導電材料は、前記瞳領域において電気的に分離される、請求項7に記載の光学素子。
【請求項10】
前記エレクトロクロミック媒体は、溶媒相エレクトロクロミック媒体を備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項11】
前記溶媒相エレクトロクロミック媒体は、液体の形態である、請求項10に記載の光学素子。
【請求項12】
前記第2の基板の前記非平面状の内表面は、凸状である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項13】
前記アポダイズされたアパーチャは、ガウス半径方向透過率曲線によって特徴付けられる、請求項1に記載の光学素子。
【請求項14】
前記エレクトロクロミック媒体の厚さは、前記アポダイズされたアパーチャの半径に沿って増加する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項15】
前記エレクトロクロミック媒体の厚さは、前記第2の基板の前記非平面状の内表面によって変化する、請求項1に記載の光学素子。
【請求項16】
前記導電材料は、カーボンナノチューブ、金、酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、および/またはインジウムスズ酸化物から選択される透明導電材料を備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項17】
前記第1の基板および前記第2の基板は、同じ材料かまたは異なった材料を備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項18】
前記第1の基板および/または前記第2の基板は、ガラスを備える、請求項17に記載の光学素子。
【請求項19】
前記第1の基板および/または前記第2の基板は、1.40から1.75の屈折率を有するガラスを備える、請求項18に記載の光学素子。
【請求項20】
前記第1の基板および/または前記第2の基板は、ポリマー基板を備える、請求項17に記載の光学素子。
【請求項21】
前記第1の基板および/または前記第2の基板は、1.30から1.75の屈折率を有するポリマー基板を備える、請求項20に記載の光学素子。
【請求項22】
前記ポリマー基板は、ポリカーボネート類、ポリウレタン類、ポリ(環状)オレフィン類、ポリスチレン類、ポリメタクリレート類、それらの共重合体、または前記いずれかの混合物を備える、請求項16に記載の光学素子。
【請求項23】
前記第1の基板(i)および前記第2の基板(ii)は、透明である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項24】
前記エレクトロクロミック媒体は、フェナジン化合物および/またはビオロゲン化合物を備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項25】
前記エレクトロクロミック媒体は、プロピレンカーボネート、ベンゾニトリル、および/またはフェノキシアセトニトリルを備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項26】
前記アポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャは、前記アポダイズされたアパーチャの外周に、前記第1の基板(i)、前記第2の基板(ii)、および前記エレクトロクロミック媒体(iii)と接触した(iv)少なくとも1つのシール部材をさらに備える、請求項1に記載の光学素子。
【請求項27】
前記第1の基板(i)の前記外表面、および/または前記第2の基板(ii)の前記外表面は、保護コーティング、防曇コーティング、酸素バリアコーティング、反射防止コーティング、IR吸収コーティング、IR反射コーティング、および/または従来の反射コーティングから選ばれる、少なくとも1つのコーティングを用いて少なくとも部分的に被覆される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項28】
印加電圧の大きさに応答する可変光透過率を有するアポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャを備える光学素子であって、
前記アポダイズされたアパーチャは、
(i)外表面、および平面状の内表面を有する第1の基板、ならびに
(ii)外表面、および前記第1の基板の前記平面状の内表面との間にキャビティを形成するために前記平面状の内表面と間隔をあけて対向する凸状の内表面を有する第2の基板、ならびに
(iii)前記キャビティ内に配置されたエレクトロクロミック媒体
を備え、
前記平面状の内表面および前記凸状の内表面のそれぞれは、それらを被う透明導電材料の少なくとも部分的な層を有し、前記導電材料は、インジウムスズ酸化物を備える、
光学素子。
【請求項29】
前記第2の基板の屈折率、および前記エレクトロクロミック媒体の屈折率は、+/−0.003より大きくは相違しない、請求項28に記載の光学素子。
【請求項30】
前記第1の基板(i)の屈折率、前記第2の基板(ii)の屈折率、および前記エレクトロクロミック媒体(iii)の屈折率は、+/−0.003より大きくは相違しない、請求項28に記載の光学素子。
【請求項31】
前記第1の基板(i)の前記外表面、および前記第2の基板(ii)の前記外表面のうち少なくとも1つは、実質的に平面状である、請求項28に記載の光学素子。
【請求項32】
前記アポダイズされたエレクトロクロミックアパーチャは、前記アポダイズされたアパーチャの外周に、前記第1の基板(i)、前記第2の基板(ii)、および前記エレクトロクロミック媒体(iii)と接触した(iv)少なくとも1つのシール部材をさらに備える、請求項28に記載の光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−510649(P2012−510649A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539685(P2011−539685)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/066542
【国際公開番号】WO2010/065713
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ,インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】