説明

アポトーシスを調節するためのβアドレナリン作動性受容体リガンド誘導体

本発明は、特にアポトーシスを抑制し、アポトーシス関連疾患および障害を治療および/または予防するためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニスト誘導体の新規な治療的使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にアポトーシスを調節するためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニスト誘導体の新規な治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
β−2−アドレナリン作動性受容体(ADRB2)アゴニストが、早期陣痛を治療する子宮収縮抑制薬として久しく用いられてきたが、限られた効果および毒性により、もはや第1選択薬として推奨されていない。オキシトシンアンタゴニストおよびカルシウムチャネル遮断薬は、有害影響の低いプロフィールを有する最近開発された薬物であり、それ故に、妊婦を含めた、高血圧を治療するために開発されたカルシウムチャネル遮断薬が子宮収縮抑制薬として認可されていなくても、これらはより広く用いられている(Kim他、Bjog 113 Suppl 3:113−115頁、2006年)。ADRB3は、自発性収縮に対する抑制作用を有する、ヒトの子宮筋層に存在し、優勢なADRBであることが近年示されている(Bardou他、Br J Pharmacol 130:1960−1966頁、2000年;Dennedy他、Bjog 108:605−609頁、2001年;Rouget他、J Clin Endocrinol Metab 90:1644−1650頁、2005年)。
【0003】
アポトーシスは、プログラムされた細胞死(PCD)の主なタイプの1つであり、特徴的な細胞形態をもたらし死に至る組織化された一続きの生化学的事象が関与している。アポトーシスに関する研究は、実質的に1990年代の初めから増加している。生物学的現象としての重要性に加えて、不完全なアポトーシスプロセスは、多数の疾患に関与しているとされてきた。不完全な抗アポトーシスエフェクターにより制御の効かない細胞増殖を招く恐れがあるため、癌はアポトーシス調節の決定的な役割の主な例である。
【0004】
Solary他、Eur.Respir.J.9、1293−1305頁、1996年による総説では、癌;ウイルス感染症;全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、自己免疫性糖尿病、炎症性腸症候群、1型糖尿病などの自己免疫疾患;劇症肝炎、慢性甲状腺炎を含めたCTL媒介自己免疫疾患などのfas媒介疾患;AIDS;骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、慢性好中球減少症、重症β−サラセミアなどの血液病;アルツハイマー病、パーキンソン病、小脳変性症、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症などの神経変性障害;および多発性嚢胞腎疾患、毒性肝疾患、心筋梗塞、心筋発作、粥腫、関節炎、骨粗鬆症および加齢などの虚血傷害を含めた他の様々な疾患におけるアポトーシスの役割が確認されている。
【0005】
アポトーシスはまた、子宮細胞の代謝回転および妊娠初期に主として関与している。げっ歯類の胚周囲の子宮上皮が、胚盤胞の存在に応答してアポトーシスを起こすことが十分に立証されている(Schlafke他、Anat.Rec.212:47−56頁、1985年;Parr他、Biol.Reprod.36:211−225頁、1987年;およびWelsh他、Am.J.Anat.192:215−231頁、1991年)。Joswig他、Reproductive Biology and Endocrinology 1:44頁、2003年では、着床に応答して子宮上皮および脱落膜における2つの異なるアポトーシスの経路が提案された。より最近には、Qian Zhang他、Endocrinology 147(5)、2215−2227頁、2006年で、発情周期および妊娠初期の間の子宮細胞の代謝回転におけるアポトーシスおよび増殖が研究された。これらの結果により、子宮細胞のアポトーシスおよび増殖のパターンが、性周期および妊娠に関連した子宮の変化を維持する上で重要な役割を果たす、非常に規則正しい細胞特異的な現象であることが示されている。特に、これらは、カスパーゼ−3に媒介された細胞のアポトーシスが、ハムスターおよびマウスにおける着床過程を開始する上で重要な役割を果たし得ることを示している。
【0006】
妊娠の分野におけるアポトーシスについての興味深い最初の話題は、胎盤の疾患である。実際、絨毛状の栄養膜のアポトーシスは、胎盤に関連する通常の妊娠疾患、すなわち、子宮内発育遅延(IUGR)および子癇前症の両方においてアップレギュレートされる(Smith SC他、Am J Obstet Gynecol 1997年;177:1395−401頁;Allaire A D他、Obstet Gynecol 2000年;96:271−6頁;Erel CT他、Int J Gynaecol Obstet 2001年;73:229−35頁;Ishihara N他、Am J Obstet Gynecol 2002年;186:158−66頁)。アポトーシス核は、対照の胎盤と比較して、胎児の成長が制限された胎盤でより豊富であることが最近示されているため(Madazli R他、J Obstet Gynaecol 2006年;26:5−10頁)、アポトーシスを抑制することはIUGRまたは子癇前症を治療するまたは予防するための有望な手法とみなすことができる。
【0007】
自発性早期陣痛は、解明されていても解明されていなくても、早産の最大の原因の1つであり、早産は、米国における最も多い乳児死亡の原因である(Callaghan他、Pediatrics 118、1566−1573頁、2006年)。自発性早期陣痛の多くの場合は解明されていないが、かなりの割合が生殖管感染症または絨毛膜羊膜炎に関連づけられる(Edwards他、Obstet.Gynecol.Clin.North Am.32、287−296頁、2005年)。
【0008】
Charpigny他、Biol.Reprod.、68、2289−2296頁、2003年では、アポトーシスに関連する遺伝子は、分娩中にアップレギュレートされることが示された。
【0009】
アポトーシス細胞死は、2つの選択的な収束経路、すなわち、細胞表面死受容体によって媒介される外因性経路、およびミトコンドリアによって媒介される内因性経路によって開始することができる(Dania他、Cell 116:205−219頁、2004年)。両経路において、細胞基質を切断するシステインアスパルチル特異的プロテアーゼ(カスパーゼ)が活性化され、エフェクターであるカスパーゼ−3の活性化は、アポトーシス細胞死の実行に重要である。bcl2ファミリーメンバーは、アポトーシスの調節において中心的な役割を果たしている。多領域のアポトーシス促進タンパク質BaxおよびBakは、これらのタンパク質が二重に欠損した細胞が、いくつかの異なる本来の死への刺激に対して抵抗性であるため、一緒になってアポトーシス細胞死に必要な出入り口を構成している(Danial他、Cell 116:205−219頁、2004年)したがって、BAX、Bcl−2および切断カスパーゼ−3は、アポトーシスを評価するために広く用いられている。
【0010】
国際公開第02/44139号は、アミン上にシクロヘキシル(アルキル)基を有するいくつかのプロパノールアミンが、ADRB3に対して有力なアゴニスト活性を有することを開示している。この文献によると、これらの化合物を、例えば、過敏性腸疾患(IBD)などの炎症性腸疾患などの胃腸疾患の治療において、腸動力のモジュレーターとして、脂肪分解剤、抗肥満薬、抗糖尿病薬、向精神薬、緑内障治療薬、瘢痕形成薬および抗うつ薬として、子宮収縮抑制薬として、早産を予防または遅延するための陣痛抑制薬として、ならびに月経困難症の治療および/または予防に適応とすることができると示唆されている。さらに、これらの化合物は、例えば、うつ病などある種の中枢神経系疾患の治療、また尿失禁などある種の泌尿器系疾患の治療に用いることができる。
【0011】
それにもかかわらず、アポトーシスを予防および/または抑制するためのこれらの化合物の使用は、開示も示唆もされていない。より一般的には、ADRB3とアポトーシスの間の関係は、今までのところ証明されていないまたは示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第02/44139号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Kim他、Bjog 113 Suppl 3:113−115頁、2006年
【非特許文献2】Bardou他、Br J Pharmacol 130:1960−1966頁、2000年
【非特許文献3】Dennedy他、Bjog 108:605−609頁、2001年
【非特許文献4】Rouget他、J Clin Endocrinol Metab 90:1644−1650頁、2005年
【非特許文献5】Solary他、Eur.Respir.J.9、1293−1305頁、1996年
【非特許文献6】Schlafke他、Anat.Rec.212:47−56頁、1985年
【非特許文献7】Parr他、Biol.Reprod.36:211−225頁、1987年
【非特許文献8】Welsh他、Am.J.Anat.192:215−231頁、1991年
【非特許文献9】Joswig他、Reproductive Biology and Endocrinology 1:44頁、2003年
【非特許文献10】Qian Zhang他、Endocrinology 147(5)、2215−2227頁、2006年
【非特許文献11】Smith SC他、Am J Obstet Gynecol 1997年;177:1395−401頁
【非特許文献12】Allaire A D他、Obstet Gynecol 2000年;96:271−6頁
【非特許文献13】Erel CT他、Int J Gynaecol Obstet 2001年;73:229−35頁
【非特許文献14】Ishihara N他、Am J Obstet Gynecol 2002年;186:158−66頁
【非特許文献15】Madazli R他、J Obstet Gynaecol 2006年;26:5−10頁
【非特許文献16】Callaghan他、Pediatrics 118、1566−1573頁、2006年
【非特許文献17】Edwards他、Obstet.Gynecol.Clin.North Am.32、287−296頁、2005年
【非特許文献18】Charpigny他、Biol.Reprod.、68、2289−2296頁、2003年
【非特許文献19】Danial他、Cell 116:205−219頁、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、アポトーシスおよびそのモジュレーターを制御する新規な生物学的標的を同定する必要がある。
【0015】
本発明者らは、現在、本発明の一目的である、ADRB3が、特に妊娠関連組織、すなわち子宮、胎盤および卵膜中のアポトーシス経路を制御する上で決定的な役割を演じていることを見出している。その上、驚くべきことに、国際公開第02/44139号において開示された化合物が、強力なアポトーシス抑制薬であることも発見している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の目的によれば、本発明は、雌性哺乳動物患者における妊娠関連組織のアポトーシスを予防するための医薬品の調製のためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニストの使用に関する。
【0017】
他の目的によれば、本発明は、妊娠関連組織のアポトーシスに関係する疾患および/または障害を予防および/または治療するのに適した医薬品;より具体的には、子宮のアポトーシスに関係する疾患および/または障害を予防および/または治療するのに適した医薬品;より具体的には、性周期障害、受胎障害および妊娠障害から選択された、妊娠関連組織のアポトーシスに関係する疾患および/または障害を予防および/または治療するのに適した医薬品の調製のためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニストの使用に関する。
【0018】
他の目的によれば、本発明は、生殖管感染症に罹患している雌性哺乳動物患者における妊娠関連組織のアポトーシスに関係する疾患および/または障害を予防および/または治療するのに適した医薬品;より具体的には、生殖管感染症に罹患している雌性哺乳動物患者における早期陣痛を予防および/または治療するのに適した医薬品;より具体的には、生殖管感染症に罹患している雌性哺乳動物患者における(生殖管感染症が絨毛膜羊膜炎である。)早期陣痛を予防および/または治療するのに適した医薬品の調製のためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニストの使用に関する。
【0019】
他の目的によれば、本発明は、妊婦における妊娠関連組織アポトーシスを予防および/または抑制するのに適した医薬品の調製のためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニストの使用に関する。
【0020】
他の目的によれば、本発明は、主に早期陣痛および早産の結果となる、生殖管感染症に罹患している女性における子宮のアポトーシスを予防する医薬品の調製のためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニストの使用に関する。
【0021】
他の目的によれば、本発明は、早産期前期破水の女性における卵膜のアポトーシスを予防および/または治療するのに適した医薬品の調製のためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニストの使用に関する。
【0022】
他の目的によれば、本発明は、子宮内発育遅延または子癇前症が合併した妊娠女性における胎盤のアポトーシスを予防および/または治療するのに適した医薬品の調製のためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニストの使用に関する。
【0023】
他の目的によれば、前記β−3アドレナリン作動性受容体アゴニストは、式(I)の化合物、
【0024】
【化1】

[式(I)において、
Aは式(a)または(b)の基である。]
【0025】
【化2】

[式中、
Rは、水素もしくはハロゲン原子、−S(O)z(C−C)アルキル基、−NHSO(C−C)アルキル基、−SONH(C−C)アルキル基、−NHSOフェニル−(C−C)アルキル基または−NHSOフェニル基を表し、前記フェニルは、ハロゲン原子、(C−C)アルキル基または(C−C)アルコキシ基で場合によっては置換されており;
は、水素原子または(C−C)アルキル基、−CO(C−C)アルキル基、フェニル−(C−C)アルキル基または−CO−フェニル基を表し、前記フェニルは、ハロゲン原子または(C−C)アルコキシ基で場合によっては置換されており;
は、水素原子、−SO(C−C)アルキル基、−SOフェニル−(C−C)アルキル基または−SOフェニル基であり;
Xは、5−8個の原子を有する環を完成し、前記環は、飽和または不飽和であり、1または2個の(C−C)アルキル基で置換されていてもよく、1または2個のカルボニル基を有していてもよく;
n、mおよびzは、独立に0、1または2であり;
R3は、水素もしくはハロゲン原子、(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、−COO(C−C)アルキル基、−CO(C−C)アルキル基、−NHSO(C−C)アルキル基、−NHSOフェニル−(C−C)アルキル基、−NO、−CN、−CONR、−COOH、または4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾル−2−イルもしくは4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾル−2−イル基を表し;
およびRは、独立に、水素原子、フェニル、(C1−C4)アルキル基またはフェニル−(C1−C4)アルキル基を表す;または
およびRは、これらが結合されている窒素原子と共に、合計で5から7個の原子を有する環を形成してもよい。]
およびこの塩から選択される。
【0026】
本説明において、「(C−C)アルキル」および「(C−C)アルキル」という用語は、飽和の直鎖または分枝鎖を含む、C−C炭化水素およびC−C炭化水素から形成された一価基を指す。
【0027】
本説明において、「ハロゲン」という用語は、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素から選択された原子を指す。
【0028】
より具体的には、化合物は、nおよびmがそれぞれ0である化合物である。
【0029】
より具体的には、化合物は、Rが水素原子である化合物である。
【0030】
より具体的には、化合物は、Rが−NHSO(C−C)アルキル基、−NHSOフェニル−(C−C)アルキル基またはNHSOフェニル基から選択される化合物である。
【0031】
より具体的には、化合物は、Rが、−COO(C−C)アルキルまたは−CO(C−C)アルキルまたはCONRである化合物である。
【0032】
より具体的には、化合物は、Rがベンゼンの4位にある化合物である。
【0033】
より具体的には、化合物は、zが2である化合物である。
【0034】
より具体的には、化合物は、Xがメチレン、エチレンまたはプロピレンである化合物である。
【0035】
より具体的には、化合物は、Xがカルボニル、−CO−CO−基、−CO−C((C−C)アルキル)−CO−基、(C−C)アルキルで一置換されたもしくは二置換されたメチレンまたは−COCH−基である。
【0036】
より具体的には、−NHSOフェニル−(C−C)アルキル基および−SOフェニル−(C−C)アルキル基は、それぞれ、ベンジルスルホニルアミノおよびベンジルスルホニルである。
【0037】
結合される窒素原子を有するRおよびRが、5−7個の原子を有する環を形成するとき、環は、より具体的にはピペリジンおよびピロリジンである。
【0038】
以下の化合物は特に有利である。
【0039】
本明細書において化合物Aと呼ばれるエチル−4−{トランス−4−[((2S)−2−ヒドロキシ−3−{4−ヒドロキシ−3[(メチルスルホニル)−アミノ]フェノキシ}プロピル)アミノ]シクロヘキシル}ベンゾアート塩酸塩;これは上記で開示した、Aが式(a)の基である式(I)の化合物[Rは−NHSOメチルであり、RはOH、n=m=0であり、Rは−COOエチルである。]である。
【0040】
本発明による式(I)の化合物の塩は、ヒドロクロラート(hydrochlorate)、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、二水素リン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩など、医薬として許容される無機酸もしくは有機酸との付加塩およびピクリン酸塩もしくはシュウ酸塩などの式(I)の化合物の適当な分離もしくは結晶化を可能にする付加塩または、例えば、カンファースルホン酸およびマンデル酸または置換されたマンデル酸などの光学活性酸との付加塩を含む。
【0041】
式(I)の化合物が遊離のカルボキシル基を有するとき、これらの塩はまた、無機塩基との塩、好ましくはナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属との塩または有機塩基との塩を含む。
【0042】
式(I)の化合物の光学的に純粋な立体異性体および任意の割合での不斉炭素原子によるその異性体の混合物もまた、本発明の一部である。
【0043】
より具体的には、式(I)の化合物は、OH基を有するプロパノールアミンの炭素の立体配置が(S)である化合物である。
【0044】
式(I)の化合物は、(星印がついた)シクロヘキシル環の1位および4位の置換基の相対位置に応じて、「シス」または「トランス」幾何異性体の形態とすることができる。任意の割合でのこれらの純粋な異性体およびそれらの混合物は、本発明の一部である。
【0045】
任意の割合での上記の光学立体異性体および幾何立体異性体の混合物もまた、本発明の一部である。
【0046】
式(I)の化合物の調製方法は、国際公開第02/44139号に開示されている。
【0047】
式(I)の化合物は、性周期障害、受胎障害および妊娠障害などの関連する妊娠関連組織のアポトーシスに関係する疾患および/または障害、ならびに早産期前期破水、ならびに早期陣痛、特に生殖管感染症が引き金となった早期陣痛を、その予防および治療を必要とする女性の患者において予防および/または治療するのに適した医薬品の調製に有用である。かかる患者は、日常分析によって容易に同定することができる。
【0048】
本明細書で用いられる「雌性哺乳動物患者」という表現は、特に女性を意味する。
【0049】
本明細書で用いられる「性周期障害」という表現は、Qian Zhang他、Endocrinology 147(5)、2215−2227頁、2006年により示唆されたように、女性の月経周期の障害を意味し、特に、損傷を受けた子宮のアポトーシスを伴う障害を意味する。
【0050】
本明細書で用いられる「受胎障害」という表現は、Schlafke他、Anat.Rec.212:47−56頁、1985年;Parr他、Biol.Reprod.36:211−225頁、1987年;Welsh他、Am.J.Anat.192:215−231頁、1991年およびJoswig他、Reproductive Biology and Endocrinology 1:44頁、2003年で開示された、着床などの女性の受胎能の障害を意味し、特に損傷を受けた子宮のアポトーシスを伴う障害を意味する。
【0051】
本明細書で用いられる「妊娠障害」という表現は、Schlafke他、Anat.Rec.212:47−56頁、1985年;Parr他、Biol.Reprod.36:211−225頁、1987年;Welsh他、Am.J.Anat.192:215−231頁、1991年およびJoswig他、Reproductive Biology and Endocrinology 1:44頁、2003年で開示された、妊娠初期などの雌性哺乳動物における妊娠の障害を意味し、特に損傷を受けた子宮のアポトーシスを伴う障害を意味する。
【0052】
本発明の使用に対して、有効量の式(I)の化合物または有効量の医薬として許容されるその塩は、このような治療を必要とする哺乳動物に投与される。
【0053】
上記の式(I)の化合物および医薬として許容されるその塩は、治療しようとする哺乳動物の体重1kgあたり0.01から20mgを1日量として、好ましくは、0.1から10mg/kgを1日量として用いることができる。ヒトにおいて、治療しようとする個体の年齢、治療の種類、予防薬または治療薬、および障害の重篤度に応じて、用量は、好ましくは1日0.5mgから1500mgまで変わり、具体的には2.5から500mgまで変わり得る。式(I)の化合物は一般に、有効成分0.1から500mg、好ましくは0.5から100mgを投与単位として、1日1回から5回投与される。
【0054】
前記投与単位は、好ましくは、有効成分が製剤添加物と混合される医薬組成物中に配合される。
【0055】
したがって、その態様の他のものによれば、本発明は、有効成分として、上記の式(I)の化合物または医薬として許容されるその塩を含む医薬組成物に関する。
【0056】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所、経皮または直腸投与のための本発明の医薬組成物において、上記の式(I)および医薬として許容されるその塩の有効成分は、単位投与形態で、通常の医薬用担体と混合して、前述の障害を治療するために動物およびヒトに投与することができる。適当な単位投与形態は、錠剤、ゲルカプセル、散剤、顆粒剤および経口液剤または経口懸濁剤などの経口形態、舌下および口腔投与形態、皮下、筋肉内または静脈内投与形態、局所投与形態および直腸投与形態を含む。
【0057】
錠剤の形態の固体組成物を調製するとき、主な有効成分を、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴムなどの医薬用ビヒクルと混合する。錠剤は、スクロースまたは他の適当な物質でコーティングすることができるまたは錠剤は、それらが活性を持続するまたは遅らせるように処理することができ、連続的な方式で所定の量の有効成分を放出するよう処理することができる。
【0058】
ゲルカプセルの調製は、有効成分を希釈剤と混合し、得られた混合物を軟ゲルカプセルまたは硬ゲルカプセル中に注ぐことによって得られる。
【0059】
シロップ剤またはエリキシル剤の形態の調製は、有効成分を甘味剤、好ましくはカロリーが無い甘味剤、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベンと共に含むことができ、フレーバーエンハンサーおよび適当な着色料もまた共に含むことができる。
【0060】
水分散性散剤または水分散性顆粒剤は、ポリビニルピロリドンなどの、分散剤もしくは湿潤剤または懸濁化剤と混合し、甘味剤またはフレーバー矯正剤とも混合した有効成分を含むことができる。
【0061】
局所投与について、有効成分を、クリーム剤または軟膏剤を調製するために賦形剤に混ぜ入れるまたは例えば洗眼剤の形態で、眼内投与用のビヒクルに溶かす。
【0062】
直腸投与について、例えば、カカオ脂やポリエチレングリコールなど、直腸温で融解する結合剤で調製された坐剤を利用する。
【0063】
非経口投与について、例えば、プロピレングリコールまたはブチレングリコールなど、薬理学的に適合性のある分散剤および/または湿潤剤を含む、水性懸濁剤、食塩水または注射用無菌液を用いる。
【0064】
有効成分は、マイクロカプセルの形態で、場合によって1つまたは複数の担体または添加剤と配合することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】切断カスパーゼ−3タンパク質の発現を示す半定量化によるウェスタンブロット分析を表す図である。CTRL=対照;LPS=LPS10μg/ml、48時間;CA=絨毛膜羊膜炎。実験を、異なる3名の絨毛膜羊膜炎の女性から得られた子宮筋層試料(CA群)および無併発性妊娠でLPSで刺激されたまたは刺激されていない異なる5名の女性から帝王切開術で得られた5つの子宮筋層(それぞれLPS群およびCTRL群)において実施した。P<0.05対対照。
【図2】切断カスパーゼ−3タンパク質の発現を示す半定量化によるウェスタンブロット分析を示す図である。対照=時間が一致した実験;LPS=LPS10μg/ml、48時間、TNFα−ab=LPS10μg/ml+TNFα−ab0.6μg/ml、48時間。実験を、異なる3名の女性から選択的帝王切開術で得られた3つの子宮筋層において実施した。P<0.05対LPS。
【図3】切断カスパーゼ−3タンパク質の発現を示す半定量化によるウェスタンブロット分析を示す図である。対照=時間が一致した実験;LPS=LPS10μg/ml、48時間。化合物A(10−7M、10−6M、10−5M)を、LPS刺激の前に20分間加えた。実験を、異なる5名の女性から選択的帝王切開術で得られた5つの子宮筋層において実施した。#P<0.05対対照、P<0.05対LPS。
【図4】BAXおよびBcl−2タンパク質の発現を示す半定量化によるウェスタンブロット分析を示す図である。対照=時間が一致した実験;LPS=LPS10μg/ml、48時間。化合物A(10−7M、10−6M、10−5M)を、LPS刺激の前に20分間加えた。実験を、異なる7名の女性から選択的帝王切開術で得られた7つの子宮筋層において実施した。#P<0.05対対照、P<0.05対LPS、**P<0.01対LPS。
【図5】IL−6およびIL−8の濃度に対する化合物Aの効果を示す図である。結果(平均値±標準誤差、pg/mlで)は、異なる5名の女性から選択的帝王切開術で得られた子宮筋層に繰り返して実施した5回の実験から得られている。#P<0.05対対照、P<0.05対LPS、**P<0.01対LPS。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0067】
薬物および溶液
リポ多糖類(LPS)(エシェリキア・コリ(Escherichia coli)055:B5、参照:L2880)を、Sigma−Aldrich社から購入し、蒸留水に溶かした。化合物Aは、Sanofi−Midy Research Center、Exploratory Research Department、Sanofi−Aventis S.p.Aからの寄贈品であった。化合物Aを、1mM溶液に対して30%無水エタノール、2%ジメチルスルホキシドおよび蒸留水の混合物中に溶かし、その後、蒸留水で希釈した。最終の最高浴濃度は、エタノールが0.3%であり、DMSOが0.02%であった。
【0068】
生体試料
子宮筋層生検試料は、次に概説する異なる4通りの臨床状態の妊娠中の女性から得られた。i)分娩後に子宮摘出を受けた確立された絨毛膜羊膜炎の女性1名;ii)分娩後の出血のため分娩後に子宮摘出を受けた絨毛膜羊膜炎のない女性1名;iii)選択的帝王切開術を受けた確立された絨毛膜羊膜炎の女性3名;iv)他の理由(児頭骨盤不均衡)で選択的帝王切開術を受けた絨毛膜羊膜炎のない女性10名。帝王切開術を受けた女性には、その手順を、妊娠38−40週の間の妊娠期間に、分娩開始の前にすべて実施した。臨床上の絨毛膜羊膜炎は、子宮圧痛および/または膿性のもしくは悪臭のある羊水が、次の分娩前体温37.8℃以上、母体頻拍(拍動数120/分以上)、母体の1mm3あたり18,000細胞以上の白血球増加、または胎児頻拍(拍動数160/分以上)のうちいずれか2つと共に存在するものとして古典的に定義され(Redline RW他、Placenta 2005年;26 Suppl A:S114−117頁)、本試験に含まれるすべての場合において、妥当性が検証された基準を用いて1人の病理学者により胎盤の陽性培養または胎盤の組織学的評価によって確認された(Redline RW他、Pediatr Dev Pathol 2003年;6:435−448頁)。したがって、この試験の残りにおいて、絨毛膜羊膜炎は、確立された絨毛膜羊膜炎を意味する。
【0069】
子宮筋層の細片を、前述のように子宮筋線維の大部分が反対の胎盤部位で縦方向となる、すぐの漿膜下部位から切除した(Rouget C他、J Clin Endocrinol Metab 2005年;90:1644−1650頁、Leroy MJ他、Biochem Pharmacol 1989年;38:9−15頁)。この試験は、「生物医学研究における人の保護のための諮問委員会(Comite Consultatif de Protection des Personnes pour la Recherche Biomedicale)」(CCPPRB、Dijon、France)によって認可されており、インフォームドコンセントは、すべてのドナーから得られた。
【0070】
確立された絨毛膜羊膜炎の女性または分娩後の出血を伴う女性から得られた組織は、後述のように、新鮮な組織を用いてウェスタンブロット実験を実施したまたは組織学的評価およびヘキスト染色のためパラフィンに包埋した。
【0071】
無併発性妊娠から得られた子宮筋層生検試料を、絨毛膜羊膜炎の影響を模倣するLPS実験モデルを開発するために用いた。
【0072】
E.コリLPSによる子宮筋層生検試料の刺激
無併発性妊娠の女性から得られた子宮筋層生検試料を、無菌のダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中に直ちに移し、無菌のリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した。生検試料を小型の細片に切り、抗生物質を使用せず、それぞれをDMEM培養培地2mlを含む24穴プレートに入れた。次いで、サイトカインレベルを基底値に戻させるために、細片をCO5%で37℃で48時間インキュベートした(Fortunato SJ他、Am J Reprod Immunol 1994年;32:184−187頁)。
【0073】
LPS(エシェリキア・コリ055:B5)で絨毛膜羊膜炎の女性から得られた子宮筋層試料の知見を再現するために、子宮筋層細片を、異なる3種のLPS濃度(50ng/ml、1μg/mlおよび10μg/ml)で異なる3通りの時間(8時間、24時間、48時間)でインキュベートした。
【0074】
第2の実験において、子宮筋層組織中のLPS誘導アポトーシスにおけるTNFの役割を評価するために、細片を、LPS10μg/mlで抗TNF抗体(0.6μg/ml)を含んでまたは含まずに48時間インキュベートした(ヒトTNFα/TNFSF1A抗体、R&D systems Europe、Lille、France、使用した抗体の濃度を、製造業者の推奨に基づいて選択した。)。
【0075】
ADRB3刺激のLPS誘導アポトーシスを妨害する能力を評価することを目標とした第3の実験において、化合物Aの存在下または非存在下で、子宮筋層細片をLPS10μg/mlで48時間インキュベートし、選択的なADRB3アゴニスト(Croci T他、J Pharmacol Exp Ther 2007年;321:1118−1126頁)(0.1μM、1μM、および10μM)をLPS刺激を開始する直前に加えた。時間が一致した対照実験を、化合物Aの溶媒、すなわち、最終浴濃度として、0.3%エタノールおよび0.02%DMSOを含有する蒸留水、刺激されていない子宮筋層試料およびLPSにより刺激された子宮筋層試料を用いて実施した。
【0076】
刺激期間の終わりに、上清試料および組織を速やかに液体窒素で凍結させ、−80℃で貯蔵した。
【0077】
ウェスタンブロット分析
急速凍結した子宮筋層組織は、Ultra−Turraxを用いてホモジナイズ緩衝液[10mMトリス−HCl(pH7.4)、1mM EDTA、ロイペプチン40mg/ml−1、2mMペファブロック]中でホモジナイズした。4℃で15分間500×gで最初の遠心を行った後、上清の全タンパク質含有量を、ブラッドフォード法により標準としてBSAで決定した。試料(レーンごとにタンパク質40μg)を、2×Laemmli緩衝液(Laemmli UK他、J Mol Biol 1970年;47:69−85頁)中で溶かし(体積/体積)、10%SDS−PAGEによる電気泳動の前に5分間煮沸した。タンパク質を、ニトロセルロースメンブラン(Hybond−P、Amersham Biosciences)に移した。非特異的な抗体結合を遮断するため、メンブランを、トリス緩衝食塩水/Tween20(TBST)(10mMトリス、150mM NaCl、および0.1%Tween20、pH7.8)中の10%脱脂粉乳粉末で室温で1時間インキュベートした。遮断されたメンブランを、TBSTで3回洗浄した。次いで、ブロットを、1:200希釈の一次切断カスパーゼ−3抗体(ASP175、Cell Signaling Technologies、Beverly、MA、USA)または1:500希釈の一次BAXポリクローナル抗体(sc−493、Santa Cruz、USA)または1:500希釈の一次BCL2ポリクローナル抗体(sc−7382、Santa Cruz、USA)を用いてPBST中の1%脱脂粉乳粉末で4℃で終夜インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、ブロットを、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合した抗ウサギIgG(NA 934、Amersham、USA)もしくは抗マウスIgG(NA 931、Amersham、USA)の全抗体を用いて1:10000希釈で室温で45分間インキュベートし、その後PBSTで5回洗浄した。免疫反応性タンパク質を、化学発光(ECL(商標)検出試薬、RPN2105、Amersham、USA)およびX線フィルム(Hyperfilm(商標)、Amersham Bioscience社、USA)への照射によって検出した。バンドの強度を、NIH Image 1.62プログラムを用いてデンシトメトリーで分析し、タンパク質ローディング対照として用いたグリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)に対するモノクローナル抗体で得られたバンドの強度によって標準化した。結果は、任意密度単位(A.D.U)の平均値±標準誤差として表される。
【0078】
免疫組織化学分析
子宮筋層細片を、4%パラホルムアルデヒドで1時間固定し、次いで、パラフィンに包埋し、5マイクロメートル厚の切片に切った。子宮筋層切片の脱パラフィン、および再水和後、抗原回復を、圧力鍋を用いてpH6の温かいクエン酸緩衝液中で10分スライドをインキュベートすることによって行った。内因性ペルオキシダーゼ活性を3%過酸化水素(H)で遮断した後、スライドを、一次抗切断カスパーゼ−3IgG(1:100)のどちらかでインキュベートし、リン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、その後、ビオチン化抗ウサギ(1:600)免疫グロブリンと共にそれぞれ1時間インキュベートした。新たに洗浄した後、スライドをペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(1:800)中で30分間インキュベートし、次いで、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)溶液と共に、明らかに目に見える色を発色するまでインキュベートした。その反応は、再蒸留水での広範な洗浄によって停止した。続いて、その標本をヘマトキシリンで対比染色した。組織学的な変化を、染色の全体的な強度の変動によって評価した。負の制御を一次抗体を取り除くことによって実施した。
【0079】
ヘキスト染色
アポトーシス細胞および壊死細胞を区別するために、染色質凝縮状態を、核のヘキスト−33342での染色によって評価した。子宮筋層試料のパラフィン包埋した切片を前述の通り再水和させた。次いで、スライドをヘキスト−33342(2μg/ml)で2分間インキュベートした。これらのスライドを蒸留水ですすぎ、Aquatex(C)でマウントした。染色した核を、切り替え式の蛍光顕微鏡で×100の倍率で、350nmの励起光を用いて可視化した。
【0080】
リアルタイム定量的RT−PCR
全RNAを、製造業者の説明書に従ってトリゾール溶液(Life Technologies、Groningen、The Netherlands)を用いて、異なる5名の女性から得られた5つの子宮筋層組織から調製した。RNAの完全性を、アガロースゲルの臭化エチジウム染色分析によっておよび光学密度(OD)の吸収比OD260nm/OD280nm≧1.8によって検証した。全RNA1マイクログラムを、製造業者の説明書に従って、Super script II RNアーゼH−逆転写酵素(Invitrogen Life Technologies、Groningen、The Netherlands)と共にオリゴ(dT)を用いて逆転写させた。リアルタイム定量PCR分析を、iCycler iQリアルタイム検出システム機器(Bio−Rad、Marnes−la−Coquette、France)において、SYBR Green PCR活性化試薬(Sigma、Saint Louis、Missouri、USA)を用いて、最終体積25μlとして、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーの両方で200nMと共に逆転写された全RNA25ngを用いて実施した。PCR産物を、単一の増幅産物の予想したサイズが実際得られたことを保証するために臭化エチジウム染色されたアガロースゲルでも分析した。
【0081】
それぞれの反応を2回繰り返して行い、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)をそれぞれの実験で用いて、cDNA量の変動を制御した。制御によって倍の変動として表されたいかなる所与の遺伝子の相対定量も、製造業者のプロトコルに従って所与の遺伝子のサイクル閾(Ct)値間の差を決定した後、式2−Δ(ΔCtA−ΔCtB)[式中、ΔCtAは対象となる遺伝子のΔCtであり;ΔCtBはGAPDHのΔCtであり、ΔCt=実験群のCt−対照群のCtである。]を用いて算出した。PCRを特異的プライマー:GAPDH(順方向、5’TGCACCACCAACTGCTTAGC3’および逆方向、5’GGCATGGACTGTGGTC−ATGAG3’)およびカスパーゼ−3(順方向、5’AGAACTGGACTGTGGCATTGAG3’および逆方向、5’GCTTGTCGGCATACTGTTTCAG3’)を用いて実施した。
【0082】
サイトカイン濃度測定
サイトカイン測定値を、Cytometric Bead Array(CBA;Bender MedSystems)によって決定した。5つの子宮筋層細片の上清を、標識された結合ビーズおよび検出試薬と共に暗所で室温で3時間インキュベートし、フローサイトメーター(FACSCalibur;BD Biosciences)でそれぞれのCBA分析ソフトウェア(BD Biosciences)およびBender MedSystems社のソフトウェアを用いることによって分析した。定量用のサイトカイン標準液(pg/mL)ならびにブランクを、試料と同じ方式で処理した。それぞれの実験を、結果の再現性を保証するために繰り返して実施した。
【0083】
結果の統計分析
群間の差を、分散分析(ANOVA)によって決定し、それに続いてダンの多重比較検定によって決定した。統計分析を、GraphPad Instatバージョン3(GraphPad Software、San Diego、CA)を用いて実施した。P<0.05のとき、すべての差を有意とみなした。
【0084】
選択的ADRB3アゴニストである化合物Aのアポトーシスおよび炎症に対する効果
切断カスパーゼ−3抗体を用いた、異なる4名の確立された絨毛膜羊膜炎の女性から得られた4つの子宮筋層組織試料の免疫染色は、分娩後の出血を伴う女性から得られた1つの対照組織(Sheiner E他、J Matern Fetal Neonatal Med 2005年;18:149−154頁)(データ未掲載)においても、選択的帝王切開術で得られた3つの組織(データ未掲載)においても観察されなかった強い染色(データ未掲載)を示した。この染色は、特に子宮筋層の細胞中にあった。最適条件(すなわち、LPS刺激の8時間、24時間、48時間の時間経過および50ng/ml、1μg/ml、10μg/mlの用量反応の実験後に決定された、10μg/ml、48時間)におけるLPS刺激はまた、特に子宮筋層の細胞中にあった強い切断カスパーゼ−3染色を伴った(データ未掲載)。
【0085】
絨毛膜羊膜炎の女性(n=4)、分娩後の出血を伴う女性(n=1)またはLPSで刺激された選択的帝王切開術を用いた女性(n=4)もしくはLPSで刺激されていない選択的帝王切開術を用いた女性(n=4)から得られた子宮筋層切片のヘキスト−33342染色は、絨毛膜羊膜炎およびLPS刺激(データ未掲載)が両方とも、分娩後の出血または帝王切開術(データ未掲載)と比較して、アポトーシスの開始を示す凝縮した染色質を有する細胞の割合の増加を伴うことを示した。
【0086】
同じ3名の絨毛膜羊膜炎の女性から得られたまたは帝王切開術およびLPSで刺激されたもしくは刺激されていない(対照)5名から得られた妊娠時の子宮筋層から調製されたメンブランのウェスタンブロットは、切断カスパーゼ−3に対応する17−kDaバンドおよび19−kDaバンド(データ未掲載)を示した。
【0087】
濃度測定の免疫ブロット分析は、切断カスパーゼ−3タンパク質が、絨毛膜羊膜炎およびLPS刺激後のどちらの場合においても、対照として用いたLPS刺激のない選択的帝王切開術と比較して、著しく過剰発現したことを示した(任意密度単位、ADUで表され、絨毛膜羊膜炎、LPS10μg/mlおよび対照群がそれぞれ921±39、941.6±134、対452±50.6であった。P<0.05)(図1)。LPS刺激によって誘導された切断カスパーゼ−3の過剰発現は、絨毛膜羊膜炎のインビトロLPS誘導モデルの外部バリデーションを提供する、絨毛膜羊膜炎の女性の妊娠時の子宮筋層から調製されたメンブランで実施したウェスタンブロット実験において観察されたもの(図1)と同程度であった。
【0088】
切断カスパーゼ−3のこの過剰発現は、TNF−α受容体を選択的TNF−α抗体で遮断することにより強く拮抗され、ヒトの出産間近の子宮筋層におけるLPS誘導アポトーシスに、TNF−αシグナル伝達経路が関与することが示唆される(図2、ANOVA P<0.05、n=3)。
【0089】
本発明者らの炎症モデルにより、上清のサイトカイン産生の測定によって妥当性を検証した。本発明者らの実験条件では、LPS刺激は、48時間のときに、IL6(平均値±標準誤差、pg/mlで、それぞれ対照群およびLPS群が28860±5257対61860±12190;異なる5名の女性による実験n=10、P<0.05)およびIL8(pg/mlで、対照群およびLPS群がそれぞれ8855±1486対16080±2834;異なる5名の女性による実験n=10、P<0.05)の有意な増加を伴ったが、IL1B、IL10、IL12BまたはTNF濃度の有意な増加を伴わなかった。
【0090】
定量的リアルタイムRT−PCRでは、時間が一致した対照に比べて、LPS10μg/mlを用いた48時間のインキュベーションが、転写レベルの2.36±0.22倍の増加を伴ったことを示したため、切断カスパーゼ−3タンパク質のこの過剰発現はまた、転写レベルで観察された(異なる3名の女性から得られた子宮筋層組織で実施した実験n=3)。
【0091】
カスパーゼ−3mRNA発現に対するこの弱い効果は、本発明者らの実験条件、すなわち、LPSを用いた48時間のインキュベーションによって説明することができる。実際、探索的分析において、本発明者らは、カスパーゼ−3mRNA発現の経時的傾向(3時間、6時間、12時間、48時間、72時間)を評価し、mRNA発現のピークが約3時間の刺激で起こることを見出した(対照と比較して、3時間で8.6倍、6時間で6.1倍、16時間で2.3倍、48時間で2.1倍、72時間で1.2倍の増加)。
【0092】
別の実験において、ウェスタンブロット実験では、選択的ADRB3アゴニストである化合物Aが、濃度依存的な様式で切断カスパーゼ−3発現のLPS誘導変化に著しく拮抗することができることを明らかにした(図3、ANOVA P<0.001)。さらに、本発明者らは、BAXタンパク質の増加およびBCL2タンパク質の減少によって発現される、ミトコンドリア経路のLPS誘導活性のアポトーシスがそれぞれ、濃度依存的な様式で拮抗されることを観察した(図4、ANOVA、P<0.01)。化合物A自体は、LPSで刺激されていない組織において、切断カスパーゼ−3、BAXおよびBCL2の発現に影響を与えなかった(データ未掲載)。最高濃度の化合物Aの溶媒、すなわち、0.3%エタノールおよび0.02%DMSOを含む蒸留水は、LPSで刺激されていないまたは刺激された組織において、切断カスパーゼ−3、BAXおよびBCL2発現に影響を与えなかった(データ未掲載)。
【0093】
定量的リアルタイムRT−PCRは、ADRB3処理がカスパーゼ−3転写物濃度の減少を伴うことを示したため、化合物Aのカスパーゼ−3の過剰発現に対する効果を少なくとも部分的に転写レベルで説明した。(対照と比較して、GAPDHに標準化された、LPS単独が2.08±0.63倍、10−7M化合物Aを含むLPSが1.17±0.81倍、10−6M化合物Aを含むLPSが0.84±0.53倍、10−5M化合物Aを含むLPSが0.93±0.41倍の増加、ANOVA、P<0.05)。
【0094】
最後に、効果がIL8に対してのみ静的に有意であっても、化合物Aは、IL6およびIL8を濃度依存的な様式で減少させた(ANOVA P=0.01;図5)。化合物Aは、LPSで刺激されていない組織におけるIL6およびIL8の放出に対して影響を与えなかった(データ未掲載)。TNFは、48時間でフローサイトメトリー技法の検出の低いレベル下となった。
【0095】
全体的に見て、これらの結果から、化合物Aがヒトの出産間近の子宮筋層におけるLPS誘導アポトーシスとサイトカイン産生を逆転させることが実証される。
【0096】
本発明による医薬組成物
代表的な例として、錠剤の形態の、本発明による化合物の単位剤形は、以下の成分を含むことができる。
【0097】
化合物A 50.0mg
マンニトール 223.75mg
クロスカルメロースナトリウム 6.0mg
コーンスターチ 15.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.25mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌性哺乳動物患者における妊娠関連組織のアポトーシスを予防する医薬品の調製のためのβ−3アドレナリン作動性受容体アゴニストの使用。
【請求項2】
妊娠関連組織のアポトーシスに関係する疾患および/または障害を予防および/または治療するのに適した医薬品の調製のための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記妊娠関連組織のアポトーシスに関係する疾患および/または障害が、子宮アポトーシス関連疾患および/または障害である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記妊娠関連組織のアポトーシスに関係する疾患および/または障害が、性周期障害、受胎障害および妊娠障害から選択される、請求項2または3に記載の使用。
【請求項5】
前記医薬品が、生殖管感染症に罹患している雌性哺乳動物患者において妊娠関連組織のアポトーシスに関係する疾患および/または障害を予防および/または治療するのに適している、請求項2から4の一項に記載の使用。
【請求項6】
前記医薬品が、生殖管感染症に罹患している雌性哺乳動物患者において早期陣痛を予防および/または治療するのに適している、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記生殖管感染症が、絨毛膜羊膜炎である、請求項5または6に記載の使用。
【請求項8】
妊婦における妊娠関連組織のアポトーシスを予防および/または抑制するのに適した医薬品の調製のための、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記医薬品が、子宮内発育遅延または子癇前症を予防および/または治療するのに適している、請求項2に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬品が、早産期前期破水を予防および/または治療するのに適している、請求項2に記載の使用。
【請求項11】
前記アゴニストが、式(I)の化合物
【化1】

[式(I)において、
Aは式(a)または(b)の基であり、
【化2】

式中、
Rは、水素もしくはハロゲン原子、−S(O)z(C−C)アルキル基、−NHSO(C−C)アルキル基、−SONH(C−C)アルキル基、−NHSOフェニル−(C−C)アルキル基または−NHSOフェニル基を表し、(前記フェニルは、ハロゲン原子、(C−C)アルキル基または(C−C)アルコキシ基で場合によっては置換されており;
は、水素原子または(C−C)アルキル基、−CO(C−C)アルキル基、フェニル−(C−C)アルキル基または−CO−フェニル基を表し、前記フェニルは、ハロゲン原子または(C−C)アルコキシ基で場合によっては置換されており;
は、水素原子、−SO(C−C)アルキル基、−SOフェニル−(C−C)アルキル基または−SOフェニル基であり;
Xは、5−8個の原子を有する環を完成し、前記環は、飽和または不飽和であり、1または2個の(C−C)アルキル基で置換されていてもよく、1または2個のカルボニル基を有していてもよく;
n、mおよびzは、独立に0、1または2であり;
R3は、水素もしくはハロゲン原子、(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、−COO(C−C)アルキル基、−CO(C−C)アルキル基、−NHSO(C−C)アルキル基、−NHSOフェニル−(C−C)アルキル基、−NO、−CN、−CONR、−COOH、または4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾル−2−イルもしくは4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾル−2−イル基を表し;
およびRは、独立に、水素原子、フェニル、(C1−C4)アルキル基またはフェニル−(C1−C4)アルキル基を表す;または
およびRは、これらが結合されている窒素原子と共に、合計で5から7個の原子を有する環を形成してもよい。]ならびにこれらの立体異性体および混合物、これらの医薬として許容される塩である、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
式(I)において、nおよびmがそれぞれ0である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
式(I)において、Rが水素原子である、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
式(I)において、Rが、−NHSO(C−C)アルキル基、−NHSOフェニル−(C−C)アルキル基または−NHSOフェニル基から選択される、請求項11から13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
式(I)において、Rが、−COO(C−C)アルキルまたは−CO(C−C)アルキルまたはCONRである、請求項11から14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
式(I)において、Rがベンゼンの4位にある、請求項11から15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
式(I)において、zが2である、請求項11から16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
式(I)において、Xがメチレン、エチレンまたはプロピレンである、請求項11から17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
式(I)において、Xがカルボニル、−CO−CO−基、−CO−C((C−C)アルキル)−CO−基、((C−C)アルキルで一置換もしくは二置換された)メチレン基または−COCH−基である、請求項11から18のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−532342(P2010−532342A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514191(P2010−514191)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002752
【国際公開番号】WO2009/019607
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】