説明

アミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物

【課題】不可逆的な吸湿性に乏しく、安定した品質で製造可能な次式


(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基を表わす。)で示されるアミノアルコール化合物に代わり得る化合物を提供すること。
【解決手段】次式


(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。nは0.5以上、1.5以下の正数を表わす。)で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物を使用する。かかる水和物はアミノアルコール化合物の2塩酸塩を水で処理する方法、フリーのアミノアルコール化合物を塩酸で処理する方法により製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物に関する。
【背景技術】
【0002】
式(3)

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物は、例えば医薬中間体として有用な化合物として知られている(例えば特許文献1参照。)。かかる式(3)で示されるアミノアルコール化合物は、その分子内にアミノ基やピリジン環を有するため、塩酸塩の形態を取り得るが、かかる式(3)で示されるアミノアルコール化合物の塩酸塩は、不可逆的な吸湿性を示すため、品質の安定性という点で、さらなる改善が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】国際公開第02/06232号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況のもと、本発明者らは、不可逆的な吸湿性に乏しく、安定した品質で製造可能な、式(3)で示されるアミノアルコール化合物に代わり得る化合物を開発すべく検討したところ、式(3)で示されるアミノアルコール化合物の塩酸塩を水で処理することにより、新規な化合物である式(1)

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基を表わす。nは0.5以上、1.5以下の正数を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物が製造でき、かかる式(1)で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物は、不可逆的な吸湿性に乏しく、安定した品質で製造可能であることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、式(1)

【0006】
(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基を表わす。nは0.5以上、1.5以下の正数を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物およびその製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の新規なアミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物は、不可逆的な吸湿性に乏しく、その品質の管理が容易であり、安定的に製造可能という点で、工業的な観点から有利な化合物となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
式(1)

【0009】
で示されるアミノアルコールの2塩酸塩の水和物(以下、水和物(1)と略記する。)の式中、R1は置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基を表わす。
【0010】
置換されていてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等およびこれらフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等を構成する芳香環の水素原子が、例えば低級アルキル基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基等で置換されたものが挙げられる。ここで低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。低級アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
【0011】
置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基とは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基であって、該低級アルキル基の1位の炭素原子上に前記置換されていてもよいアリール基を有するものであり、例えばベンジル基、4−メトキシベンジル基、(1−ナフチル)メチル基、(2−ナフチル)メチル基、1−フェニルエチル基、1−(1−ナフチル)エチル基、1−(2−ナフチル)エチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等が挙げられる。
【0012】
また、水和物(1)の式中、nは0.5以上、1.5以下の正数を表わす。かかるnは、水和物(1)の単結晶の調製が容易な場合には、調製した水和物(1)の単結晶をX線回折分析し、単位結晶格子中に含まれる無水物(1)と水分子とのモル比から求めることができ、また、水和物(1)の単結晶の調製が困難な場合には、例えば下式

(式中、wは水和物(1)中の水分含量(重量百分率値)を表わす。)
に従い、算出することができる。なお、水和物(1)中の水分含量は、例えば通常のカール・フィッシャー水分計を用いるカール・フィッシャー法、水和物(1)を熱重量測定する方法等により定量することができる。例えば、塩酸塩(2)の分子量が、301.21で、水和物(1)中の水分含量が4重量%の場合、nは、301.21×(0.04)/[18.02×(1−0.04)]=0.7となる。
【0013】
かかる水和物(1)としては、例えば2−ベンジルアミノ−1−(2−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物、2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物、2−ベンジルアミノ−1−(4−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物、2−ベンジルアミノ−1−(6−クロロ−3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物、2−ベンジルアミノ−1−(6−メチル−3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物、2−(4−メトキシベンジルアミノ)−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物、2−(1−フェニルエチルアミノ)−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物、2−ジフェニルメチルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物、2−ジベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物等が挙げられる。
【0014】
かかる水和物(1)は不斉炭素原子を有するため、光学異性体が存在するが、本発明の水和物(1)は、光学活性体であってもよいし、ラセミ体であってもよい。
【0015】
かかる水和物(1)は、例えば(i)式(2)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩(以下、2塩酸塩(2)と略記する。)を水で処理する方法、(ii)式(3)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物(以下、アミノアルコール化合物(3)と略記する。)を塩酸で処理する方法等により製造することができる。
【0016】
まず、(i)2塩酸塩(2)を水で処理する方法について説明する。
【0017】
かかる塩酸塩(2)としては、例えば2−ベンジルアミノ−1−(2−ピリジル)エタノールの2塩酸塩、2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩、2−ベンジルアミノ−1−(4−ピリジル)エタノールの2塩酸塩、2−ベンジルアミノ−1−(6−クロロ−3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩、2−ベンジルアミノ−1−(6−メチル−3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩、2−(4−メトキシベンジルアミノ)−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩、2−(1−フェニルエチルアミノ)−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩、2−ジフェニルメチルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩、2−ジベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩等が挙げられる。
【0018】
かかる塩酸塩(2)は、不斉炭素原子を有するため、光学異性体が存在するが、光学活性体を用いてもよいし、ラセミ体を用いてもよい。塩酸塩(2)の光学活性体を用いた場合には、水和物(1)の光学活性体が得られ、塩酸塩(2)のラセミ体を用いた場合には、水和物(1)のラセミ体が得られる。
【0019】
塩酸塩(2)を水で処理する方法としては、塩酸塩(2)と水とを接触させればよく、例えば水分を含んだ気体と塩酸塩(2)とを接触させる方法、塩酸塩(2)と水を混合する方法等が挙げられる。
【0020】
水分を含んだ気体と塩酸塩(2)とを接触させる方法における気体としては、例えば空気、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられ、好ましくは空気または窒素ガスが挙げられる。水分を含んだ気体中の水分含量は、気体中の相対湿度換算で、通常40〜99%、好ましくは50〜90%である。塩酸塩(2)と水分を含んだ気体とを接触させる温度は、通常5〜90℃、好ましくは20〜80℃である。
【0021】
かかる水分を含んだ気体と塩酸塩(2)との接触時間は、例えば該気体中の水分含量、該気体の通気量、該気体との接触面積等に応じて適宜決めればよい。
【0022】
塩酸塩(2)と水とを混合する方法における水の使用量は、塩酸塩(2)に対して、通常0.5モル倍以上、好ましくは1モル倍以上であり、その上限は特にないが、あまり多すぎると、水和物(1)が水に溶解し、その取り出しが煩雑になるため、実用的には、塩酸塩(2)に対して、50モル倍以下である。
【0023】
塩酸塩(2)と水とはそのまま混合してもよいし、溶媒の存在下に混合してもよい。溶媒としては、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等の単独または混合溶媒が挙げられ、好ましくはアルコール系溶媒またはエーテル系溶媒が挙げられる。かかる溶媒を用いる場合のその使用量は、塩酸塩(2)に対して、通常0.5重量倍以上、好ましくは2重量倍以上であり、その上限は特にないが、あまり多すぎると容積効率が悪くなるため、実用的には30重量倍以下である。
【0024】
塩酸塩(2)と水との混合順序は特に制限されず、例えば塩酸塩(2)に水を加えてもよいし、水に塩酸塩(2)を加えてもよい。また、かかる混合の際に、攪拌等を行ってもよい。かかる塩酸塩(2)と水との混合時間は、攪拌等の条件、水の活量等に応じて適宜決めればよい。
【0025】
混合温度は、通常−30〜100℃、好ましくは−10〜80℃である。
【0026】
塩酸塩(2)と水とを、所定時間混合した後、例えば得られた混合物をそのままもしくは冷却処理した後、析出した結晶を濾取することにより、水和物(1)の結晶を取り出すことができる。また、例えば前記混合物を濃縮処理することにより、塩酸塩(1)を取り出すこともできる。
【0027】
取り出した塩酸塩水和物(1)は、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。
【0028】
続いて、(ii)アミノアルコール化合物(3)を塩酸で処理する方法について説明する。
【0029】
かかるアミノアルコール化合物(3)としては、例えば2−ベンジルアミノ−1−(2−ピリジル)エタノール、2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノール、2−ベンジルアミノ−1−(4−ピリジル)エタノール、2−ベンジルアミノ−1−(6−クロロ−3−ピリジル)エタノール、2−ベンジルアミノ−1−(6−メチル−3−ピリジル)エタノール、2−(4−メトキシベンジルアミノ)−1−(3−ピリジル)エタノール、2−(1−フェニルエチルアミノ)−1−(3−ピリジル)エタノール、2−ジフェニルメチルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノール、2−ジベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノール等が挙げられる。
【0030】
かかるアミノアルコール化合物(3)は、不斉炭素原子を有するため、光学異性体が存在するが、本発明には、光学活性体を用いてもよいし、ラセミ体を用いてもよい。アミノアルコール化合物(3)の光学活性体を用いた場合には、水和物(1)の光学活性体が得られ、アルコール化合物(3)のラセミ体を用いた場合には、水和物(1)のラセミ体が得られる。
【0031】
アミノアルコール化合物(3)を塩酸と反応させる際の塩酸の使用量は、アミノアルコール化合物(3)に対して、通常1.8モル倍以上であり、その上限は特にないが、あまり多すぎると経済的に不利になりやすいため、実用的には20モル倍以下、好ましくは10モル倍以下である。かかる塩酸の濃度は、通常5〜37重量%、好ましくは10〜37重量%である。
【0032】
アミノアルコール化合物(3)と塩酸との反応は、通常溶媒の存在下に実施される。溶媒としては、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒、および水等の単独または混合溶媒が挙げられ、好ましくはアルコール系溶媒、エーテル系溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は、アミノアルコール化合物(3)に対して、通常0.5重量倍以上、好ましくは2重量倍以上であり、その上限は特にないが、あまり多すぎると容積効率が悪くなるため、実用的には30重量倍以下である。
【0033】
反応は、通常アミノアルコール化合物(3)、溶媒および塩酸を混合することにより実施され、その混合順序は特に制限されず、例えばアミノアルコール化合物(3)と溶媒の混合物に塩酸を加えてもよいし、塩酸と溶媒の混合物中にアミノアルコール化合物(3)を加えてもよい。アミノアルコール化合物(3)と塩酸との混合時間は、例えば塩酸濃度、溶媒の使用の有無、攪拌等の条件に応じて適宜決めればよい。
【0034】
反応温度は、通常−30〜100℃、好ましくは−10〜80℃である。
【0035】
反応終了後、例えば得られた反応混合物を冷却して析出した結晶を濾取することにより、水和物(1)を取り出すことができる。また、例えば得られた反応混合物を濃縮して溶媒を除去することにより、水和物(1)を取り出すこともできる。
【0036】
取り出した塩酸塩水和物(1)は、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。
【0037】
なお、2塩酸塩(2)は、例えばアミノアルコール化合物(3)と、塩化水素/ジエチルエーテル溶液等の塩化水素の有機溶媒溶液とを接触、混合することにより製造することができる。また、アミノアルコール化合物(3)は、例えば式(5)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物を還元処理することにより製造することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、純度は、高速液体クロマトグラフィー(LC)法により分析した。
【0039】
参考例1
N−ベンジル−2−ヒドロキシ−2−(3−ピリジル)アセトアミド10g、テトラヒドロフラン50mLおよび水素化ホウ素ナトリウム4.68gの混合物に、内温55〜62℃で三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体23.4gを2時間かけて滴下し、同温度で1時間42分攪拌、反応させた。その後、内温40℃まで冷却し、同温度で7.8重量%塩酸38.6gを20分かけて滴下した。その後、内温50℃に昇温し、同温度で53分攪拌、保持した後、酢酸エチル50mLを加え、20重量%水酸化ナトリウム水溶液25.8gを加えてpH6.7に調整した。内温55℃に昇温した後、分液処理し、有機層と水層を得た。水層は酢酸エチル30mLでさらに2回抽出処理し、得られた酢酸エチル層を先に得た有機層と合一した。合一後の有機層168gのうちの42gを濃縮処理した。濃縮残渣にテトラヒドロフラン25mLを加えて濃縮処理し、2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノール1.6gを含む濃縮残渣12.7gを得た。収率:67%。
【0040】
実施例1
前記参考例1で得た2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノール1.6gを含む濃縮残渣12.7gに、テトラヒドロフラン12.5gおよびメタノール0.5gを加え、2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールを含む溶液を調製した。該液溶液のうちの5.1gを、35重量%塩酸1.7gとテトラヒドロフラン20mLとの混合溶液中に、内温1〜2℃で、8分かけて滴下した後、種晶を加えて、同温度で30分攪拌、保持した。これに、先に調製した2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールを含む溶液の残り20.6gを、同温度で1時間10分かけて滴下した後、同温度で1時間15分攪拌、保持し、析出した結晶を濾取した。濾取した結晶をテトラヒドロフランで洗浄した後、乾燥させて、2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物2.2gを得た。水分含量から、0.92水和物(n=0.92)であることが分かった。純度:97.2%(LC面積百分率値)。含量:96.5重量%(0.92水和物として)。収率:95%。
【0041】
水分含量(カール・フィッシャー法):5.2%
塩素含量(元素分析法):23.0%
【0042】
H−NMRスペクトルデータ(δ/ppm,DMSO−d
9.76(brs,1H),9.62(brs,1H),8.88(d,1H,J=1.7Hz),8.84(dd,1H,J=1.1,5.5Hz),8.52(d,1H,J=8.2Hz),8.01(dd,1H,J=5.5,8.2Hz),7.5−7.7(m,2H),7.3−7.5(m,3H),5.37(dd,1H,J=3.4,8.5Hz),4.19(brs,2H),3.28(m,1H),3.12(m,1H)
【0043】
参考例2
(2R)−N−ベンジル−2−ヒドロキシ−2−(3−ピリジル)アセトアミド0.96g、テトラヒドロフラン5mLおよび水素化ホウ素ナトリウム0.47gの混合物に、内温5〜10℃で三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体2.3gを28分かけて滴下した後、内温50℃に昇温し、同温度で3時間攪拌、反応させた。その後、内温40℃まで冷却し、同温度で7.8重量%塩酸3.9gを10分かけて滴下した。その後、内温50℃に昇温し、同温度で1時間攪拌、保持した後、酢酸エチル5mLを加え、20重量%水酸化ナトリウム水溶液2.5gを加えてpH6.5に調整した。内温55℃に昇温した後、分液処理し、有機層と水層を得た。水層は酢酸エチル3mLでさらに2回抽出処理し、得られた酢酸エチル層を先に得た有機層と合一した。合一後の有機層を濃縮処理し、得られた濃縮残渣にテトラヒドロフラン20mLを加えてさらに濃縮処理し、(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノール0.67gを含む有機層5.0gを得た。収率:73%
【0044】
実施例2
前記参考例2で得た(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノール0.67gを含む濃縮残渣5.0gに、テトラヒドロフラン5gおよびメタノール0.2gを加え、(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールを含む溶液を調製した。該溶液のうちの2.0gを、35重量%塩酸0.69gとテトラヒドロフラン8mLとの混合溶液中に、内温0〜5℃で15分かけて滴下した後、種晶を加え、同温度で30分保持した。これに、先に調製した(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールを含む溶液の残りの8.2gを1時間かけて滴下した後、内温0〜5℃で1時間攪拌、保持し、析出した結晶を濾取した。濾取した結晶をテトラヒドロフランで洗浄した後、乾燥させて、(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物0.90gを得た。水分含量から、1.1水和物(n=1.1)であることが分かった。純度:98.4%(LC面積百分率値)。含量:98.6重量%(1.1水和物として)。収率:96%。
【0045】
水分含量(カール・フィッシャー法):6.0%
光学純度(キラル高速液体クロマトグラフィー法):100%ee
【0046】
H−NMRスペクトルデータ(δ/ppm,DMSO−d
9.77(brs,1H),9.62(brs,1H),8.88(d,1H,J=1.7Hz),8.85(dd,1H,J=1.0,5.6Hz),8.52(d,1H,J=8.1Hz),8.01(dd,1H,J=5.6,8.1Hz),7.5−7.7(m,2H),7.3−7.5(m,3H),5.37(dd,1H,J=3.4,8.5Hz),4.19(brs,2H),3.28(m,1H),3.11(m,1H)
【0047】
参考例3
水分吸脱着測定装置(HIDEN ANALYTICAL社製 IGAsorp)を用いて、前記実施例2で得られた(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の1.1水和物(n=1.1)33.5mgを、温度25℃で相対湿度5%から相対湿度95%まで12時間以上かけて段階的に加湿した。さらに、同温度で相対湿度95%から相対湿度0%まで30時間以上かけて段階的に除湿した。測定後の試料重量は33.5mgであり、測定前の試料重量に対する吸湿量は0重量%であった。加湿および除湿の間の試料の重量変化を経時的に記録した結果を図1に示した。図1から、(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物は不可逆的な吸湿性に乏しいことが分かる。
【0048】
参考例4
(2R)−N−ベンジル−2−ヒドロキシ−2−(3−ピリジル)アセトアミド1g、テトラヒドロフラン22.5mLおよび水素化ホウ素ナトリウム0.75gの混合物に、内温22℃で三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体3.5gを滴下し、内温60℃に昇温、同温度で4時間10分攪拌、反応させた。その後、内温50℃まで冷却し、同温度で10重量%塩化水素/メタノール溶液14mLを23分かけて滴下した。その後、内温58℃に昇温、同温度で15分攪拌、保持した後、内温1℃まで冷却し、同温度で50分攪拌、保持した。不溶分を濾別した後、水45gおよび酢酸エチル35mLを加え、内温50℃に昇温し、20重量%水酸化ナトリウム水溶液9.5gを加え、pH9.5に調整後、分液処理し、有機層と水層を得た。水層は酢酸エチルで再度2回抽出処理し、得られた酢酸エチル層を先に得た有機層と合一した。合一した有機層を、内温50℃で飽和食塩水で洗浄処理した後、濃縮処理し、濃縮残渣0.89gを得た。濃縮残渣に、メタノール4gを加えた後、還流させた後、内温21℃まで冷却した。その後、塩化水素/ジエチルエーテル溶液(塩化水素濃度:1mol/L)1mLを加え、種晶を加えた後、さらに塩化水素/ジエチルエーテル溶液(塩化水素濃度:1mol/L)7mLを滴下した。同温度で5分攪拌、保持し、テトラヒドロフラン12mLを滴下した後、内温2℃まで冷却した。同温度で1時間攪拌、保持した後、析出した結晶を濾取、洗浄、乾燥させ、(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩0.9gを得た。
【0049】
比較例1
前記参考例4と同様に実施して得られた(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩33.1mgを、水分吸脱着測定装置(HIDEN ANALYTICAL社製 IGAsorp)を用いて、温度25℃で相対湿度5%から相対湿度95%まで12時間以上かけて段階的に加湿した。さらに、同温度で相対湿度95%から相対湿度0%まで30時間以上かけて段階的に除湿した。測定後の試料重量は34.5mgであり、測定前の試料重量に対する吸湿量は4.2重量%であった。加湿および除湿の間の試料の重量変化を経時的に記録した結果を図2に示した。図2から、(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩は不可逆的な吸湿性を示すことが分かる。
【0050】
参考例5
前記実施例2と同様に実施して得られた(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の0.99水和物(n=0.99)37g、N,N−ジメチルホルムアミド35g、テトラヒドロフラン35gおよびトリエチルアミン24gの混合物を25℃で30分攪拌した後、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール・水和物1.8g、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩27gおよびテトラヒドロフラン158gを加えた。この混合物に内温25〜27℃で(7−ベンジルオキシ−1H−インドール−3−イル)酢酸36gおよびテトラヒドロフラン90gの混合溶液を50分かけて滴下し、同温度で20時間10分攪拌、反応させた。その後、内温24℃で酢酸エチル264gおよび10重量%食塩水132gを加え、攪拌、分液処理し、有機層を5重量%食塩水132gおよび20重量%食塩水132gの順に攪拌、分液処理した後、酢酸エチルを加え、濃縮処理し、有機層281gを得た。得られた有機層に酢酸エチル104gを加え、内温46℃まで昇温し、種晶を加え、同温度で30分攪拌した後、内温1℃まで冷却した。この混合物に、内温1〜25℃で、n−ヘプタン302gを3時間59分かけて滴下し、内温25℃で45分攪拌した後、内温0℃まで2時間30分かけて冷却、同温度で1時間攪拌した。析出した結晶を濾取、洗浄、乾燥させ、N−ベンジル−2−[7−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−N−[(2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル]アセトアミド51.3g(純分)を得た。収率:90%
【0051】
水素化リチウムアルミニウム9.4gおよびテトラヒドロフラン144gの懸濁液を内温10℃に冷却し、これに前記と同様にして得られたN−ベンジル−2−[7−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]−N−[(2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル]アセトアミド24gおよびテトラヒドロフラン88gの混合溶液を同温度で1時間38分かけて滴下し、同温度で5時間45分攪拌、反応させた。その後、内温0℃まで冷却した。冷却後の反応混合物を、酢酸エチル65g中に、内温−14〜−1℃で1時間20分かけて滴下した。その後、内温40℃まで昇温、同温度で1時間攪拌した。これに、内温25℃で硫酸ナトリウム78gおよび水71gを加えて攪拌した後、不溶分を濾別した。得られた濾液に、内温40℃で、トルエン234g、水68gおよび35重量%塩酸27gを加えた後、分液処理し、有機層と水層を得た。有機層はさらに3.6重量%塩酸27gで抽出処理し、得られた水層を先に得た水層と合一した。合一後の水層に、トルエン175gおよびテトラヒドロフラン180gを加え、内温40℃で15重量%水酸化ナトリウム水溶液74gを滴下してpH6.8に調整した後、分液処理し、有機層と水層を得た。水層をさらにトルエン70gで抽出処理し、得られたトルエン層を先に得た有機層と合一した。合一した有機層を261gとなるまで濃縮処理した。濃縮残液に、活性炭2.7gを加え、内温65℃に昇温した。これに、n−ヘプタン148gを加えた後、同温度で不溶物を濾別し、不溶物はトルエン15.1gおよびn−ヘプタン11.9gの混合液で洗浄した。得られた濾液および洗液を内温50℃まで冷却し、種晶を加え、同温度で1時間15分攪拌した。さらに、内温0℃まで20時間15分かけて冷却し、同温度でn−ヘプタン74gを1時間30分かけて滴下した。さらに、同温度で2時間攪拌、保持し、析出した結晶を濾取、洗浄、乾燥させ、(1R)−2−(ベンジル{2−[7−(ベンジルオキシ)−1H−インドール−3−イル]エチル}アミノ)−1−ピリジン−3−イルエタノール18.3g(純分)を得た。収率:78%
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】参考例3の(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の水和物の重量の経時変化を表わしたグラフである。
【図2】比較例1の(1R)−2−ベンジルアミノ−1−(3−ピリジル)エタノールの2塩酸塩の重量の経時変化を表わしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基を表わす。nは0.5以上、1.5以下の正数を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物。
【請求項2】
式(2)

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩を水で処理することを特徴とする式(1)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。nは0.5以上、1.5以下の正数を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物の製造方法。
【請求項3】
式(3)

(式中、Rは置換されていてもよいアリール基を1位の炭素原子上に有する低級アルキル基を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物を塩酸で処理することを特徴とする式(1)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。nは0.5以上、1.5以下の正数を表わす。)
で示されるアミノアルコール化合物の2塩酸塩の水和物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−315992(P2006−315992A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139419(P2005−139419)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】