説明

アミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法

【課題】アミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)と鎖状二級アミン化合物との置換反応によりアミノチオフェンアルデヒド化合物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法に関する。詳しくは、チオフェンアルデヒド化合物と鎖状二級アミン化合物よりアミノチオフェンアルデヒド化合物を工業的に、着色成分が少なく、高収率で得るためのアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノチオフェンアルデヒド化合物は染料や医薬品、電子材料等の中間体として一般的に広く用いられる化合物であり、一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物と二級アミン化合物からアミノチオフェンアルデヒド化合物を製造する方法としては、一般的に塩基存在下、水、エタノール、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒中、または無溶媒中で加熱還流する方法が多数知られている(例えば特許文献1、非特許文献1〜7参照)。
【0003】
これらの方法では、二級アミンとしてジメチルアミンおよびピロリジン、ピペリジン、モルホリン等の環状二級アミンを用いた場合は比較的高収率で製造できるものの、多量な溶媒が必要であるなど工業的に製造適性が低く、さらにジメチルアミン以外の鎖状二級アミンでは収率が低いという欠点を有していた。
【0004】
また、2−ジメチルアミノエタノール中、銅粉とヨウ化第一銅の存在下リン酸第三カリウム水和物共存下、封管中でアミノ化する方法も提示されたが(非特許文献8参照)、この方法でも、環状アミンでは収率が良好であるものの、鎖状二級アミンで実施したところ反応が完結せず、高収率で工業的に製造が可能な方法の開発が必要とされた。
【0005】
そこで、一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物と2つの基の炭素数が各々4以上18以下である鎖状二級アミン化合物との反応において、酸解離定数(pKa(25℃、水溶液))が10.8以上である塩基性化合物を一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物に対し化学当量を超える過剰量を当該置換反応の反応液に含有させる方法が開示された(特許文献2参照)。しかしこの方法では、ジエチルアミン等の沸点が低い鎖状二級アミンを用いた場合、高温反応において徐々に反応の系外に排出されてしまうため反応収率が向上しない。また、比較的高収率で反応が進行する場合においても、精製工程を経ずに次工程の反応を実施すると、粗生成物の着色が激しいため次工程の反応生成物の着色に影響する場合が生じるケースが発生したため、着色成分の低減が求められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開特許2007/136059号パンフレット
【特許文献2】特開2010−100532号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chem.Heterocycl.Compd.(Engl.Transl.)第10巻 1151−1152頁(1974年)
【非特許文献2】Adv.Mat.第6号 43−45頁(1994年)
【非特許文献3】Synlett 第4巻 383−384頁(1998年)
【非特許文献4】Synth.Commun.第30巻 1359−1364頁(2000年)
【非特許文献5】J.Amer.Chem.Soc.第123巻 2810−2824頁(2001年)
【非特許文献6】Bioorg.Med.Chem.Lett.第11巻 2589−2592頁(2001年)
【非特許文献7】J.Mater.Chem. 第17巻 1166−1177頁(2007年)
【非特許文献8】Tetrahedron 第61巻第4号 903−918頁(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、チオフェンアルデヒド化合物と鎖状二級アミン化合物よりアミノチオフェンアルデヒド化合物を工業的に高収率で得るためのアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物と一般式(2)で表される鎖状二級アミン化合物をヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、第二属元素ヨウ化物の少なくとも1種の化合物共存下で反応させると、一般式(3)で表されるアミノチオフェンアルデヒド化合物を高収率で製造出来ることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明に係る課題は以下の手段により解決される。
〔1〕
下記一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物と下記一般式(2)で表される鎖状二級アミン化合物との置換反応により下記一般式(3)で表されるアミノチオフェンアルデヒド化合物を得るアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法において、当該置換反応の反応液にヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、第二族元素ヨウ化物の少なくとも1種を含有させることを特徴とするアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、Xはハロゲン原子を表し、R、Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基を表す。〕
【0012】
【化2】

【0013】
〔式中、R11、R12は各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、R11とR12は互いに結合して環を形成しない。〕
【0014】
【化3】

【0015】
〔式中、R、Rは各々一般式(1)、(2)におけるR、Rと同義であり、R11、R12は各々一般式(2)におけるR11、R12と同義である。〕
〔2〕
前記一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物と前記一般式(2)で表される鎖状二級アミン化合物との置換反応により前記一般式(3)で表されるアミノチオフェンアルデヒド化合物を得るアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法において、当該置換反応の反応液にアルカリ金属ヨウ化物の少なくとも1種を含有させることを特徴とする前記〔1〕に記載のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法。
〔3〕
前記反応液に溶媒として水、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒を含有させることを特徴とする前記〔1〕に記載のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法。
〔4〕
前記反応液に酸化合物を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、チオフェンアルデヒド化合物と鎖状二級アミン化合物よりアミノチオフェンアルデヒド化合物を工業的に高収率で得るためのアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法は、前記一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物と前記一般式(2)で表される鎖状二級アミン化合物との置換反応により前記一般式(3)で表されるアミノチオフェンアルデヒド化合物を得るアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法において、当該置換反応の反応液にヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、第二族元素ヨウ化物の少なくとも1種を含有させることを特徴とする。この特徴は、請求項1から5に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0018】
本発明の実施態様としては、当該置換反応の反応液にアルカリ金属ヨウ化物を含有することが好ましい。また、反応溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましく、酸化合物を含有することが好ましい。
【0019】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態・態様について詳細な説明をする。
【0020】
《一般式(1)で表される化合物》
本発明のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法においては、原料(出発物質)の一つとして、下記一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物を用いる。
【0021】
【化4】

【0022】
一般式(1)において、Xはハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは臭素原子である。
【0023】
、Rは各々独立に水素原子またはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基)、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基)、アシルアミノ基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、トリフルオロメチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基)、スルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、ヘキシルスルホニルアミノ基、デシルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル(例えば、フッ化メチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、パーフルオロプロピル基)などが挙げられる。
【0024】
、Rとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基である。
【0025】
以下に、本発明に係る一般式(1)の具体的な構造を示すが、これらにより限定されない。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物は従来公知の合成法を用いて合成することができる。通常用いられる第一の製造方法としては、ブロモチオフェン誘導体のホルミル化が挙げられ、例えばJournal of American Chemical Society 第75巻989頁(1953年発行)等を参考にして合成することができる。
【0029】
第二の製造方法としてはチオフェンアルデヒド誘導体のブロモ化が挙げられ、例えば、Journal of Chemical Society 1721頁(1958年発行)、Journal of Heterocyclic Chemistry 第21巻第1号215−217頁(1984年発行)等を参考にして合成することができる。
【0030】
《一般式(2)で表される化合物》
本発明のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法においては、原料(出発物質)の一つとして、下記一般式(2)で表される鎖状二級アミン化合物を用いる。
【0031】
【化7】

【0032】
一般式(2)において、R11、R12は各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、直鎖でも分岐があってもよく、R11、R12は同一であっても異なっても良いが、R11とR12は互いに結合して環を形成しない。
【0033】
11、R12はさらに置換基を有していても良く、該置換基としては例えば前述のR、Rで表される置換基と同様の基、およびハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)が挙げられる。置換基として好ましくはアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アミノ基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子である。
【0034】
一般式(2)において、R11、R12は好ましくは各々独立に炭素数2以上18以下のアルキル基であり、より好ましくは各々独立に炭素数2以上12以下のアルキル基である。
【0035】
以下に、本発明に係る一般式(2)の具体的な構造を示すが、これらにより限定されない。
【0036】
【表1】

【0037】
《一般式(3)で表される化合物》
本発明のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法においては、下記一般式(3)で表されるアミノチオフェンアルデヒド化合物を得ることを特徴とする。
【0038】
【化8】

【0039】
一般式(3)におけるR、Rは各々一般式(1)、(2)におけるR、Rと同義であり、R11、R12は各々一般式(2)におけるR11、R12と同義である。
【0040】
以下に、本発明に係る一般式(3)の具体的な構造を示すが、これらにより限定されない。また、上記で示した一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物との反応により生成する構造のみに限定されることはない。
【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
《アミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法》
本発明の製造方法では、前述のチオフェンアルデヒド化合物と鎖状二級アミン化合物とを、ヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、第二族元素ヨウ化物の少なくとも1種を含有させて反応することにより、対応するアミノチオフェンアルデヒド化合物を高収率で製造することができる。当該置換反応の反応液にこれらの化合物を少なくとも1種類含有することにより、理由は定かではないが副生成物が減少し、反応収率が著しく向上し、生成物の着色が低減することがわかった。
【0045】
一般式(2)の化合物の添加量は、一般式(1)の化合物1モルに対し0.01〜10モルであり、好ましくは1.0〜4.0モルである。
【0046】
本発明に用いられるアルカリ金属ヨウ化物としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムが挙げられる。第二族元素ヨウ化物としては、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウムが挙げられる。
【0047】
ヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、第二族元素ヨウ化物のうち、当該置換反応に含有する化合物としては、好ましくはヨウ素またはアルカリ金属ヨウ化物であり、より好ましくはヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムであり、最も好ましくはヨウ化カリウムである。
【0048】
ヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、第二族元素ヨウ化物の添加量は、一般式(1)の化合物1モルに対し0.005〜2モルであり、好ましくは0.01〜1モルである。
【0049】
本発明の製造方法は、溶媒を用いても用いなくても良いが、溶媒を用いることが好ましい。
【0050】
溶媒としては水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、等)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、ホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、等)、スルホン系溶媒(例えば、ジプロピルスルホン、スルホラン、ジブチルスルホン、等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチレンスルホキシド、等)、エステル系(例えば、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸エチル、n−酪酸エチル、n−酪酸ブチル、イソ酪酸メチル、吉草酸エチル、n−カプロン酸メチル、n−カプロン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、等)、エーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、アミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、等)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,4−ジクロロブタン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、等)、炭化水素系溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、等)、等が挙げられる。
【0051】
反応溶媒は、1種を用いても、複数を併用しても良い。
【0052】
上記溶媒のうち、好ましくは水、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、炭化水素系溶媒であり、さらに好ましくは水、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒である。
【0053】
反応溶媒の量は一般式(1)で表される化合物の0.3〜50倍容量、好ましくは0.5〜20倍容量、より好ましくは1〜10倍容量である。
【0054】
反応温度は50〜200℃で製造が可能であるが、好ましくは70〜180℃で反応すると良い。
【0055】
反応時間は1分〜72時間、好ましくは5分〜48時間、さらに好ましくは10分〜24時間である。
【0056】
さらに、一般式(1)と一般式(2)の化合物の反応を促進するために反応時に酸化合物を添加してもよい。用いることのできる酸化合物としては特に限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等が好ましく用いられる。添加量は限定されないが、一般式(1)の化合物1モルに対して0.01〜9モルであり、好ましくは0.05〜3.0モルであり、より好ましくは0.1〜1.0モルである。
【0057】
また一般式(2)と前述の酸化合物の塩をあらかじめ添加しておくことも好ましい。添加方法としては、第一には、あらかじめ一般式(2)と酸化合物を有機溶媒中、モル比1:1で混合撹拌し、得られた固体をろ過、乾燥して添加する方法が挙げられる。
【0058】
第二には、反応に用いる一般式(2)の化合物の量に加えて一般式(2)の塩調製に必要な一般式(2)の化合物をあらかじめ反応容器に入れ、塩調製に必要な量の酸化合物を加えて撹拌し、塩を調製後に一般式(1)のチオフェン化合物を添加しても良い。この場合、一般式(1)のチオフェン化合物を添加する前に塩酸や臭化水素酸等に含まれる水を加熱還流により留去することが好ましい。
【0059】
一般式(2)の塩化合物の添加量は一般式(1)1モルに対し0.05〜20モル、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.1〜1モルである。
【実施例】
【0060】
以下に実際の製造例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、得られた化合物の構造は、1H−NMR、MSスペクトルから同定した。
〔実施例1:例示化合物(3−2)の合成〕
(実施例1−1)
化合物(1−1):5−ブロモチオフェン−2−カルボアルデヒド3.82g(20mmol)にDMSO 11.5ml、化合物(2−2):ジエチルアミン4.39g(60mmol)、ヨウ化カリウム0.66g(4mmol)、ジエチルアミン塩酸塩0.44g(4mol)を加えて18時間加熱還流撹拌した。反応終了後80℃まで放冷してから、水50mlを加え、80℃で3時間加熱撹拌した。トルエンで抽出し、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=1:3)、例示化合物(3−2)を得た。
(実施例1−2)
化合物(2−2)4.68g(64mmol)をDMSO11.5mlに溶解し、氷冷して硫酸0.20g(2mmol)を滴下した。10分撹拌後、化合物(1−1)3.82g(20mmol)およびヨウ化カリウム0.66g(4mmol)を加えて内温80℃で18時間加熱撹拌した。反応終了後、実施例1−1と同様に処理し、例示化合物(3−2)を得た。
(実施例1−3〜1−10)
実施例1−2において溶媒、ヨウ素/ヨウ化物、酸化合物を表3のように変更した他は実施例1−2と同様の操作を行い、例示化合物(3−2)を得た。尚、実施例1−3、1−9は硫酸を添加せずに実施した。
(実施例1−11〜1−13)
実施例1−1において溶媒、ヨウ素/ヨウ化物を表3のように変更した他は実施例1−1と同様の操作を行い、例示化合物(3−2)を得た。
(実施例1−14)
実施例1−2においてDMSOを5.75mlに変更し、さらにトルエン5.75mlを加えた他は実施例1−2と同様の操作を行い、例示化合物(3−2)を得た。
(比較例1−21)
化合物(1−1)3.82g(20mmol)に化合物(2−2)4.39g(60mmol)、水11.5mlを加えて24時間加熱還流したが、反応は完結しなかった。放冷後、トルエンで抽出し、その後は実施例1−1と同様に後処理し、例示化合物(3−2)を得た。
(比較例1−22)
化合物(1−1)3.82g(20mmol)に化合物(2−2)4.68g(64mmol)、トルエン11.5mlを加え、氷冷して硫酸0.49g(5mmol)を滴下し10分氷冷撹拌した。その後加熱還流したが反応が途中で停止し、8時間後と16時間後に一旦放冷して化合物(2−2)4.39g(60mmol)を加えた(化合物(2−2)追加量合計8.78g(120mmol))。結局24時間加熱還流したが反応は完結しなかった。放冷後トルエンで抽出し、その後は実施例1−1と同様に後処理をして例示化合物(3−2)を得た。
(比較例1−23)
実施例1−1において、ヨウ化カリウムを加えない以外は実施例1−1と同様にして加熱撹拌した。この際反応終了までに24時間要した。その後は実施例1−1と同様に処理し、例示化合物(3−2)を得た。
(比較例1−24)
実施例1−1において、ヨウ化カリウムをヨウ化第一銅0.76g(4mmol)に変更した以外は実施例1−1と同様にして加熱撹拌した。この際反応終了までに24時間要した。その後は実施例1−1と同様に処理し、例示化合物(3−2)を得た。
(比較例1−25)
化合物(1−1)3.82g(20mmol)、化合物(2−6)5.85g(80mol)、銅粉0.13g(2mmol)、ヨウ化銅0.38g(2mmol)、リン酸カリウム一水和物8.49g(40mmol)、2−ジメチルアミノエタノール40mlを窒素雰囲気下65℃で48時間加熱撹拌した。その後は実施例1−1と同様に処理し、例示化合物(3−2)を得た。
〔実施例2:例示化合物(3−6)の合成〕
(合成例1) ジ−n−オクチルアミン臭化水素酸塩の合成
化合物(2−6):ジ−n−オクチルアミン1.21g(5mmol)をトルエンに溶解し、氷冷撹拌しながら48%臭化水素酸0.93g(5.25mmol)を滴下した。15分撹拌後、析出した固体をろ過、水およびトルエンで洗浄、乾燥し、ジ−n−オクチルアミン臭化水素酸塩1.47gを得た(収率91%)。
(実施例2−1) 例示化合物(3−6)の合成
実施例1−1において、化合物(2−2)を化合物(2−6)14.49g(60mmol)、ジエチルアミン塩酸塩を合成例1で調製したジ−n−オクチルアミン臭化水素酸塩1.29g(4mmol)に変えた他は同様にして、内温110℃18時間加熱撹拌した。反応終了後80℃まで放冷してから、水0.9ml(50mmol)を加え、80℃で3時間加熱撹拌して加水分解した。
【0061】
放冷後、トルエン10mlを加えてさらに氷冷し、48%臭化水素酸7.08g(42mmol)を内温が15℃を超えないようにゆっくり滴下し、さらに30分氷冷撹拌した。
【0062】
反応液をろ過し、水30ml、次いでトルエン15mlで洗浄した。ろ液を水、飽和炭酸ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥してろ過した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=1:9)、例示化合物(3−6)を得た。
(実施例2−2)
実施例1−2において、化合物(2−2)を化合物(2−6)15.45g(64mmol)に置き換えた以外は実施例1−2と同様に反応液を調製し、内温110℃で18時間加熱撹拌した。その後は実施例3−1と同様に後処理を行い、例示化合物(3−6)を得た。
(比較例2−21)
比較例1−21において化合物(2−2)を化合物(2−6)14.49g(60mmol)に置き換えた以外は比較例1−21と同様の反応を実施した。24時間加熱還流したが、薄層クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーで目的物(3−6)の生成を確認できなかった。
(比較例2−22)
化合物(2−6)15.45g(64mmol)にトルエン30mlを加え、撹拌しながら濃臭化水素酸0.67g(4mmol)をゆっくり滴下した。さらに室温下で1時間撹拌後、ディーンスターク管を設置して脱水しながら30分間加熱還流した。室温まで放冷後、例示化合物(1−1)3.82g(20mmol)を加え、を加え、窒素雰囲気下で反応中に生じる水を除去しながら4時間加熱還流した。反応終了は液体クロマトグラフィーで確認し、室温まで放冷し、水30mlを加えて室温下で40時間撹拌した。さらに氷冷撹拌しながら濃臭化水素酸0.68mlを滴下し、1時間さらに氷冷撹拌した。反応液をろ過し、固体をトルエンで洗浄してろ液を水洗後、5%炭酸ナトリウム水溶液、ついで飽和食塩水で洗浄し、有機相を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶出溶媒:トルエン/酢酸エチル30:1)、例示化合物(3−6)を得た。
〔実施例3:例示化合物(3−1)の合成〕
(実施例3−1)
実施例1−1において、化合物(2−2)をジメチルアミン:化合物(2−1)の40%水溶液6.76g(60mmol)、ジエチルアミン塩酸塩をジメチルアミン塩酸塩0.33g(4mmol)に置き換えた他は同様に、内温80℃で8時間加熱撹拌した。反応終了後室温まで放冷し、反応液を水115mlにあけ、析出した固体をろ過した。固体を2回水洗後乾燥し、粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=3:1)、目的の例示化合物(3−1)を得た。
(実施例3−2)
実施例1−2において、化合物(2−2)を化合物(2−1)の40%水溶液7.21g(64mmol)に置き換えた他は同様に、内温80℃で8時間加熱撹拌した。反応終了後、実施例3−1と同様に後処理し、例示化合物(3−1)を得た。
(比較例3−21)
比較例1−21において化合物(2−2)を化合物(2−1)の40%水溶液6.76g(60mmol)に置き換えた以外は比較例1−21と同様の操作を行い、12時間加熱還流した。反応終了後放冷し、析出した固体をろ過、2回水洗し、実施例3−1と同様の精製を行い、目的の例示化合物(3−1)を得た。
(比較例3−23)
実施例3−2においてヨウ化カリウムを加えない以外は実施例3−2と同様にして加熱撹拌した。この際反応終了までに12時間要した。その後は実施例3−2と同様に処理し、例示化合物(3−2)を得た。
〔実施例4:反応液の着色評価〕
各々の実施例および比較例において、トルエンで抽出、洗浄、ろ過後、有機層をトルエンでメスフラスコを用いて200mlに希釈した。この溶液の着色の濃淡を下記評価方法により5人で目視評価し、5人の平均点を算出した。
4点 : 基準より着色が明らかに薄い
3点 : 基準より着色がやや薄い
2点 : 比較例1−22を基準とし、同程度の着色がある
1点 : 基準より明らかに着色が濃い
【0063】
【表2】

【0064】
溶媒名: DMSO ジメチルスルホキシド
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMI 1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
NMP N−メチルピロリドン
※1 DMSO/トルエン(1:1vol)
※2 2−ジメチルアミノエタノール
以上の結果から明らかなように、本発明のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法を用いた場合には、高収率で、かつ着色成分の少ない生成物が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物と下記一般式(2)で表される鎖状二級アミン化合物との置換反応により下記一般式(3)で表されるアミノチオフェンアルデヒド化合物を得るアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法において、当該置換反応の反応液にヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物、第二族元素ヨウ化物の少なくとも1種を含有させることを特徴とするアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法。
【化1】

〔式中、Xはハロゲン原子を表し、R、Rは各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基を表す。〕
【化2】

〔式中、R11、R12は各々独立に炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、R11とR12は互いに結合して環を形成しない。〕
【化3】

〔式中、R、Rは各々一般式(1)、(2)におけるR、Rと同義であり、R11、R12は各々一般式(2)におけるR11、R12と同義である。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるチオフェンアルデヒド化合物と前記一般式(2)で表される鎖状二級アミン化合物との置換反応により前記一般式(3)で表されるアミノチオフェンアルデヒド化合物を得るアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法において、当該置換反応の反応液にアルカリ金属ヨウ化物の少なくとも1種を含有させることを特徴とする請求項1に記載のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項3】
前記反応液に溶媒として水、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒を含有させることを特徴とする請求項1に記載のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記反応液に酸化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアミノチオフェンアルデヒド化合物の製造方法。