説明

アミノペプチダーゼ

【課題】遺伝子が、yfcK遺伝子の天然配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、且つアミノペプチダーゼをコードする、野生型細胞に存在する染色体遺伝子に欠損を有するグラム陰性細菌細胞を提供する。
【解決手段】グラム陰性細菌細胞は、アミノペプチダーゼb2324の天然配列と少なくとも80%の配列同一性を共有するアミノペプチダーゼを遺伝子がコードするような野生型細胞中に存在する染色体遺伝子に欠損を有する。これらの種類の細胞のいずれもが、異種のポリペプチドをコードする核酸を有するとき、培養される際にN末端非切断ポリペプチドを産生し、不純物として生じるN末端切断ポリペプチドを実質的に含まないポリペプチドが回収される。アミノペプチダーゼb2324の天然配列と少なくとも80%の配列同一性を共有するアミノペプチダーゼとポリペプチドを接触させることを含む、ポリペプチドからN末端アミノ酸を切断する方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、新規な細菌性アミノペプチダーゼの発見に関する。より具体的には、本発明は、細菌において欠失または過剰発現すると、組換えポリペプチドのようにバクテリア内に産生した非切断または切断ポリペプチドの回収を改善する重要な酵素活性に関する。
【0002】
2.関連技術の記載
タンパク質の一部では、グラム陰性細菌及び大腸菌などの始原細菌内で形成されるとき、細胞内のアミノペプチダーゼの存在によりN末端アミノ酸残基が断ち切られる。その結果、野生型ポリペプチドに密接に関連する不純物が、それと同時に、又は生成物精製プロセスの一部である次の細胞溶解の際に、細胞培養物中に入り込む。治療上有用なタンパク質を調製する場合、この不純物は野生型ポリペプチドから除去されなければならない。一例はヒト成長ホルモン(hGH)であり、これは、大腸菌中で生成される場合、そのN末端のフェニルアラニン残基は切断される。hGHのこの変異形態(des−phe hGH)は細胞溶解時に産生されて非切断hGH(天然hGH)との混合物を形成するもので、混合物から除去することは困難である。このような除去には、混合物を疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけることが必要となる。このような余分な精製段階は省略できることが好ましい。
加えて、場合によっては、N末端アミノ酸残基が切断されたポリペプチドを得て、天然配列の対応物と比較してそのようなポリペプチドの量を増幅し、より純粋な切断物質を得ることが望ましい。
既知の大腸菌アミノペプチダーゼのいくつかは、広い特異性を持ち、pepA、pepBおよびpepN等、N末端の様々な残基を切断できる(Escherichia coli and Salmonella, Frederick C. Neidhardt(編), ASM Press. Chapter 62 by Charles Miller-Protein Degradation and Proteolytic Modification, pp 938-954 (1996); Gonzales及びRobert-Baudouy, FEMS Microbiology Reviews. 18 (4):319-44 (1996))。大腸菌のK12株で発見されたb2324をコードする遺伝子yfcKは、大腸菌ゲノム配列決定プロジェクトにより「推定ペプチダーゼ」としてGenBankのデータベースに列挙された(受入番号AE000321)(Blattnerら, Science, 277: 1453-62 (1997))が、その酵素活性に関するそれ以上の情報は提供されていない。大腸菌株O157:H7の相同体は、K12株中のyfcK遺伝子と同一である。当技術分野において、純度の高い非切断または切断ポリペプチドを得るために操作できる細菌性アミノペプチダーゼを同定することが必要とされている。
【0003】
発明の概要
しかして、yfcKによりコードされる酵素b2324がアミノペプチダーゼとして、つまりポリペプチドからN末端を切断する酵素として同定された。その同定に基づき、本発明がなされた。
一実施態様では、アミノペプチダーゼb2324をコードするyfcK遺伝子を含めたこの酵素と相同なアミノペプチダーゼをコードする遺伝子が、染色体の遺伝子の破壊によりグラム陰性菌種から除去され、切断された不純物がもはや有意な量で生じない。これにより、切断された不純物を除去するための付加的な精製工程を省略できる。少なくとも一の得られた株が、親株と等しい量の非切断ポリペプチドを生成することが見出された。
特に、(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードするDNA分子又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも80%の配列同一性を有し、アミノペプチダーゼをコードする、染色体遺伝子に欠損を持つグラム陰性細菌細胞が提供される。そのような細胞の天然に生じる相当物は染色体遺伝子を含むが、本発明の細胞は、一般に遺伝子的手段によるが、使用可能なその他任意の方法により、野生型細胞への操作を行ってそのような遺伝子を削除するか又は無能化し、それによりアミノペプチダーゼがコードされないようにする。
【0004】
あるいは、本発明は、(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列と比較したとき少なくとも80%のポジティブのスコアを有するポリペプチドをコードするDNA又は(b)(a)のDNAの相補鎖を有する、染色体遺伝子に欠損を持つグラム陰性細菌細胞を提供し、前記ポリペプチドはアミノペプチダーゼである。
また更には、本発明は、配列番号1の1〜2067のヌクレオチド配列を有する天然配列yfcK遺伝子に対し、少なくとも80%の配列同一性を有し、アミノペプチダーゼをコードする、染色体遺伝子に欠損を持つグラム陰性細菌細胞を提供する。
別の実施態様では、染色体の天然配列yfcK遺伝子に欠損を持つ大腸菌細胞が提供される。
好ましくは、上記に規定したこのような細胞は、degPまたはfhuA等の、プロテアーゼをコードする少なくとも一の遺伝子に欠損を持つ。加えて、このような細胞は、細胞、好ましくは真核細胞、さらに好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト成長ホルモン等のヒト細胞に対して異種性のポリペプチドをコードする核酸を含むことができる。
【0005】
別の実施態様では、本発明は、(a)上記に規定した細胞を培養すること、および(b)細胞からポリペプチドを回収することを含む、異種ポリペプチドの生産方法を提供する。好ましくは、培養は醗酵槽内で行う。別の好ましい実施態様では、細胞の培養培地又は周縁質(ペリプラズム)からポリペプチドを回収する。さらに好ましい実施態様では、回収は細胞破壊によりライセートを形成し、好ましくは無傷ポリペプチドをライセートから精製することによる。さらに好ましくは、精製段階の前にライセートをインキュベートする。
【0006】
別の態様では、本発明は、ポリペプチドからのアミノ酸残基のN末端切断を防ぐ方法を提供し、ここで細胞は核酸が発現するような条件下においてポリペプチドをコードする核酸を含む。好ましくは、細胞からポリペプチドを回収する。加えて、ポリペプチドが、細胞、好ましくは真核細胞、さらに好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞に対して異種性であることが好ましい。好ましくは細胞は大腸菌細胞である。
さらなる態様では、本発明は、細胞から単離されたポリペプチドからN末端アミノ酸を切断する方法において、(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードするDNA分子又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対し、少なくとも80%の配列同一性を有する核酸によりコードされるアミノペプチダーゼにポリペプチドを接触させることを含んでなる方法を提供する。好ましくは、ポリペプチドをアミノペプチダーゼでインキュベートする。
【0007】
あるいは、(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324に対し、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノペプチダーゼにポリペプチドを接触させることを含む、細胞から単離されたポリペプチドからN末端アミノ酸を切断する方法が提供される。
特定の態様では、天然配列アミノペプチダーゼb2324にポリペプチドを接触させることを含む、ポリペプチドからN末端アミノ酸を切断するための方法が提供される。
【0008】
他の実施態様では、切断されたポリペプチドの生産方法は、(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードするDNA分子又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、アミノペプチダーゼをコードする核酸を有するグラム陰性細菌細胞を培養することを含んでなり、該細胞は、そのN末端に(一つの)アミノ酸が付加された対応する非切断ポリペプチドをコードする核酸を含んでおり、培養は、遺伝子が発現又は過剰発現し、非切断ポリペプチドをコードする核酸が発現するような条件下で行い、また、非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼとが発現後に接触してない場合、非切断ポリペプチドをアミノペプチダーゼに接触させて切断ポリペプチドを生成する。好ましい態様では、ポリペプチドは、細胞、好ましくは真核細胞、さらに好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞に対して異種性である。
【0009】
別の態様では、本発明は切断ポリペプチドの生産方法において、配列番号1の1〜2067のヌクレオチド配列を有する天然配列yfcK遺伝子と少なくとも80%の配列同一性を有し、アミノペプチダーゼをコードする核酸を持つグラム陰性細菌細胞を培養することを含む方法を提供し、ここで、細胞は、そのN末端に(一つの)アミノ酸が加えられた対応する非切断ポリペプチドをコードする核酸を含み、培養は、遺伝子が発現又は過剰発現し、且つ非切断ポリペプチドをコードする核酸が発現するような条件下で行い、また、非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼとが発現後に接触してない場合、非切断ポリペプチドをアミノペプチダーゼに接触させることにより切断ポリペプチドを生成する。
別の態様では、本発明は、天然配列yfcK遺伝子を有し、そのN末端に(一つの)アミノ酸が加えられた対応する非切断ポリペプチドをコードする核酸を含む大腸菌細胞を培養することを含む、切断ポリペプチドの生産方法を提供し、ここで、培養は、yfcK遺伝子が発現又は過剰発現し、非切断ポリペプチドをコードする核酸が発現するような条件下で行い、また、非切断ポリペプチドと、yfcK遺伝子によりコードされる天然配列アミノペプチダーゼb2324とが発現後に接触してない場合、非切断ポリペプチドを天然配列アミノペプチダーゼb2324に接触させることにより切断ポリペプチドを生成する。
【0010】
上述の切断ポリペプチド生産方法における好ましい態様は、細胞が、プロテアーゼをコードする少なくとも一の遺伝子に欠損を持ち、及び/又は、培養条件が、yfcK遺伝子(天然配列および相同体)が過剰発現するような条件であり、及び/又は接触がインキュベーションによりなされることを含む。yfcK遺伝子(天然配列および相同体)は、細菌細胞に天然のものでもよく、細菌細胞に導入してもよい。好ましくは、培養は醗酵槽内で行う。非切断細胞は、アミノペプチダーゼと接触させる前に細胞から回収することが好ましく、回収は細胞の培養培地又は周縁質(ペリプラズム)から行ってもよく、あるいは細胞破壊により行ってライセートを形成し、そこから好ましくは切断ポリペプチドを精製してもよい。また、精製段階の前にライセートをインキュベートしてもよい。好ましくは、少なくとも1時間、さらに好ましくは約2〜50時間、約20〜40℃、さらに好ましくは約30〜40℃でライセートをインキュベートする。
【0011】
好ましい実施態様の詳細な説明
定義
本明細書で使用する「細胞」「細胞系」「株」、及び「細胞培養」という表現は、互いに交換可能に使用され、そのような名称は全て子孫を含んでいる。従って、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」は初代の対象細胞及び、植え継ぎ回数には関係無く、それに由来する培養物を含んでいる。また、故意又は偶然の変異のために、全ての産物はDNA含量が正確に一致しないかもしれないことも理解される。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされるのと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異子孫が含まれる。明確な区別が意図される場合には、それは文脈から明らかになるだろう。
ここでの目的のための「細菌」は、グラム陰性細菌である。好ましい細菌の種類の一つは腸内細菌科である。腸内細菌科に属する細菌の例は、エシェリキア属、エンテロバクター属、エルウィニア属(Erwinia)、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、セラシア属、及びシゲラ属を含む。その他の種類の適切な細菌としては、アゾトバクタ、シュードモナス、根粒菌属、ビトレオシラ(Vitreoscilla)、及びパラコッカス(Paracoccus)が挙げられる。適切な大腸菌宿主は、大腸菌W3110(ATCC 27,325)、大腸菌294 (ATCC 31,446)、大腸菌B及び大腸菌X1776 (ATCC 31,537)を含む。これらの例は、限定的なものではなく例示であり、W3110が好ましい。上述の細菌のうちの任意の突然変異細胞も使用できる。当然ながら、バクテリウム属の細胞におけるレプリコンの複製可能性を考慮しながら適切な細菌を選択することが必要である。例えば、pBR322、pBR325,pACYC177、又はpKN410等の周知のプラスミドを使用してレプリコンを供給するとき、大腸菌、セラシア属、又はサルモネラ属を宿主として適切に使用することができる。
【0012】
「染色体yfcK遺伝子」とは、大腸菌ゲノム配列決定プロジェクト(Blattner等、上掲)によりGenBankのデータエースに「推定ペプチダーゼ」として列挙された(受入番号AE000321)タンパク質b2324をコードする遺伝子を指す。このタンパク質はデイホフの受入番号B56005及びSwissProtの受入番号P77182を持ち、遺伝子は大腸菌染色体上の52.59’に位置し、その塩基対の位置は、左端:2439784bp、右端:2441790bpである。その遺伝子配列は以下の通りである:
TTGCGCAGCCTTACACACATCGCTAAGATCGAGCCACCGCCTGTAAGACGAGTAACTTACGTGAAACACTACTCCATACAACCTGCCAACCTCGAATTTAATGCTGAGGGTACACCTGTTTCCCGAGATTTTGACGATGTCTATTTTTCCAACGATAACGGGCTGGAAGAGACGCGTTATGTTTTTCTGGGAGGCAACCAATTAGAGGTACGCTTTCCTGAGCATCCACATCCTCTGTTTGTGGTAGCAGAGAGCGGCTTCGGCACCGGATTAAACTTCCTGACGCTATGGCAGGCATTTGATCAGTTTCGCGAAGCGCATCCGCAAGCGCAATTACAACGCTTACATTTCATTAGTTTTGAGAAATTTCCCCTCACCCGTGCGGATTTAGCCTTAGCGCATCAACACTGGCCGGAACTGGCTCCGTGGGCAGAACAACTTCAGGCGCAGTGGCCAATGCCCTTGCCCGGTTGCCATCGTTTATTGCTCGATGAAGGCCGCGTGACGCTGGATTTATGGTTTGGCGATATTAACGAACTGACCAGCCAACTGGACGATTCGCTAAATCAAAAAGTAGATGCCTGGTTTCTGGACGGCTTTGCGCCAGCGAAAAACCCGGATATGTGGACGCAAAATCTGTTTAACGCCATGGCAAGGTTGGCGCGTCCGGGCGGCACGCTGGCGACATTTACGTCTGCCGGTTTTGTCCGCCGCGGTTTGCAGGACGCCGGATTCACGATGCAAAAACGTAAGGGCTTTGGGCGCAAACGGGAAATGCTTTGCGGGGTGATGGAACAGACATTACCGCTCCCCTGCTCCGCGCCGTGGTTTAACCGCACGGGCAGCAGCAAACGGGAAGCGGCGATTATCGGCGGTGGTATTGCCAGCGCGTTGTTGTCGCTGGCGCTATTACGGCGCGGCTGGCAGGTAACGCTTTATTGCGCGGATGAGGCCCCCGCACTGGGTGCTTCCGGCAATCGCCAGGGGGCGCTGTATCCGTTATTAAGCAAACACGATGAGGCGCTAAACCGCTTTTTCTCTAATGCGTTTACTTTTGCTCGTCGGTTTTACGACCAATTACCCGTTAAATTTGATCATGACTGGTGCGGCGTCACGCAGTTAGGCTGGGATGAGAAAAGCCAGCATAAAATCGCACAGATGTTGTCAATGGATTTACCCGCAGAACTGGCTGTAGCCGTTGAGGCAAATGCGGTTGAACAAATTACGGGCGTTGCGACAAATTGCAGCGGCATTACTTATCCGCAAGGTGGTTGGCTGTGCCCAGCAGAACTGACCCGTAATGTGCTGGAACTGGCGCAACAGCAGGGTTTGCAGATTTATTATCAATATCAGTTACAGAATTTATCCCGTAAGGATGACTGTTGGTTGTTGAATTTTGCAGGAGATCAGCAAGCAACACACAGCGTAGTGGTACTGGCGAACGGGCATCAAATCAGCCGATTCAGCCAAACGTCGACTCTCCCGGTGTATTCGGTTGCCGGGCAGGTCAGCCATATTCCGACAACGCCGGAATTGGCAGAGCTGAAGCAGGTGCTGTGCTATGACGGTTATCTCACGCCACAAAATCCGGCGAATCAACATCATTGTATTGGTGCCAGTTATCATCGCGGCAGCGAAGATACGGCGTACAGTGAGGACGATCAGCAGCAGAATCGCCAGCGGTTGATTGATTGTTTCCCGCAGGCACAGTGGGCAAAAGAGGTTGATGTCAGTGATAAAGAGGCGCGCTGCGGTGTGCGTTGTGCCACCCGCGATCATCTGCCAATGGTAGGCAATGTTCCCGATTATGAGGCAACACTCGTGGAATATGCGTCGTTGGCGGAGCAGAAAGATGAGGCGGTAAGCGCGCCGGTTTTTGACGATCTCTTTATGTTTGCGGCTTTAGGTTCTCGCGGTTTGTGTTCTGCCCCGCTGTGTGCCGAGATTCTGGCGGCGCAGATGAGCGACGAACCGATTCCGATGGATGCCAGTACGCTGGCGGCGTTAAACCCGAATCGGTTATGGGTGCGGAAATTGTTGAAGGGTAAAGCGGTTAAGGCGGGGTAA(配列番号1)
また、これによりコードされるタンパク質は、以下の配列を有する:
MRSLTHIAKIEPPPVRRVTYVKHYSIQPANLEFNAEGTPVSRDFDDVYFSNDNGLEETRYVFLGGNQLEVRFPEHPHPLFVVAESGFGTGLNFLTLWQAFDQFREAHPQAQLQRLHFISFEKFPLTRADLALAHQHWPELAPWAEQLQAQWPMPLPGCHRLLLDEGRVTLDLWFGDINELTSQLDDSLNQKVDAWFLDGFAPAKNPDMWTQNLFNAMARLARPGGTLATFTSAGFVRRGLQDAGFTMQKRKGFGRKREMLCGVMEQTLPLPCSAPWFNRTGSSKREAAIIGGGIASALLSLALLRRGWQVTLYCADEAPALGASGNRQGALYPLLSKHDEALNRFFSNAFTFARRFYDQLPVKFDHDWCGVTQLGWDEKSQHKIAQMLSMDLPAELAVAVEANAVEQITGVATNCSGITYPQGGWLCPAELTRNVLELAQQQGLQIYYQYQLQNLSRKDDCWLLNFAGDQQATHSVVVLANGHQISRFSQTSTLPVYSVAGQVSHIPTTPELAELKQVLCYDGYLTPQNPANQHHCIGASYHRGSEDTAYSEDDQQQNRQRLIDCFPQAQWAKEVDVSDKEARCGVRCATRDHLPMVGNVPDYEATLVEYASLAEQKDEAVSAPVFDDLFMFAALGSRGLCSAPLCAEILAAQMSDEPIPMDASTLAALNPNRLWVRKLLKGKAVKAG(配列番号2)
【0013】
遺伝子又は核酸が「欠損を持つ」とは、細胞において問題の遺伝子が削除、不活性化、または無能化されていることにより、遺伝子によりコードされるタンパク質を細胞が生成しないことを意味する。例えば、b2324をコードする染色体yfcK遺伝子に欠損を持つ細胞は、培養してもその遺伝子産物を生成しない。同様に、プロテアーゼをコードする遺伝子に欠損を持つ細胞は、培養しても特定のプロテアーゼを生成しない。
【0014】
ここで用いられる場合、一般に、「ポリペプチド」は約10より多いアミノ酸を有する任意の細胞源由来のペプチド及びタンパク質を指す。「異種の」ポリペプチドは、大腸菌によって産生されるヒトタンパク質のような、利用される宿主細胞にとって外来のポリペプチドである。異種ポリペプチドは原核生物のものでも真核生物のものでもよいが、好ましくは真核生物のものであり、より好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトのものである。
哺乳類ポリペプチドの例は、例えば、レニン、ヒト成長ホルモンを含む成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク;1−アンチトリプシン;インスリンA−鎖;インスリンB−鎖;プロインスリン;トロンボポエチン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子等の凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化剤(t−PA)等のプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血性成長因子;腫瘍壊死因子−アルファ及びベータ;エンケファリナーゼ;ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA−鎖;リラキシンB−鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;ベータ−ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5又は−6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6)などの栄養因子、又はNGF等の神経成長因子;カルジオトロフィン−1(CT−1)等のカルジオトロフィン(心臓肥大因子);血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF−1、TGF−2、TGF−3、TGF−4、又はTGF−5を含むTGF−α及びTGF−βなどのトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CD−3、CD−4、CD−8、及びCD−19などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン−アルファ、−ベータ、及び−ガンマ等のインターフェロン;ヒト血清アルブミン(HSA)又はウシ血清アルブミン(BSA)などの血清アルブミン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−SCF、及びG−CSF;インターロイキン(ILs)、例えば、IL−1からIL−10;抗−HER−2抗体;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部等;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;抗体;及び上に列挙した任意のポリペプチドの断片などの分子を含む。対象となるポリペプチドの好ましい群は、hGH等のN末端フェニルアラニンを有するものである。対象となるポリペプチドの他の好ましい群は、hGH等、細菌の細胞培養培地または周縁質(ペリプラズム)に産生するものである。
【0015】
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード化配列を発現するために必要なDNA配列を指す。細菌に好適なコントロール配列は、プロモーターと、場合によってはオペレーター配列と、リボソーム結合部位を含む。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーターは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード化配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を促進するような位置にあるなら、コード化配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合しているDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合には隣接していて読み取り段階にあることを意味する。結合は、例えば、簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0016】
遺伝子又は核酸に関する「過剰発現」という用語は、例えばプロモーターによる等のそのような合成の人工的誘発が無いときに細胞により通常産生されるよりも多い量の特定のタンパク質の合成を指す。
ポリペプチドの「回収」という用語は、通常、産生された細胞から遊離したポリペプチドを得ることを意味する。
【0017】
本明細書で使用する「アミノペプチダーゼb2324ポリペプチド」、「アミノペプチダーゼb2324タンパク質」、及び「アミノペプチダーゼb2324」という用語は、天然配列アミノペプチダーゼb2324及びアミノペプチダーゼb2324相同体(以下でさらに定義する)を包含する。文脈により、アミノペプチダーゼb2324ポリペプチドは、例えば細菌細胞のような様々な供給源から単離されている場合や、または組換え法及び/又は合成法により調製されたものである場合がある。
「天然配列アミノペプチダーゼb2324」は、天然由来のアミノペプチダーゼb2324と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。そのような天然配列アミノペプチダーゼb2324は、自然から単離することができるか、または、組換え法及び/又は合成法により調製できる。「天然配列アミノペプチダーゼb2324」という用語は、アミノペプチダーゼb2324の、天然に生じる切断形態又は分泌形態(例えば細胞外ドメイン配列)、天然に生じる変異形態(例えば互い違いにスプライシングされた形態)、及び天然に生じる対立遺伝子変異体を特に包含する。本発明の一実施態様では、天然配列アミノペプチダーゼb2324は、アミノ酸1〜688(配列番号2)を有する成熟又は完全長天然配列アミノペプチダーゼb2324である。
「アミノペプチダーゼb2324相同体」とは、配列番号2のアミノ酸配列を有するアミノペプチダーゼb2324ポリペプチドの残基1〜688のアミノ酸配列と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノペプチダーゼを意味する。このようなアミノペプチダーゼb2324相同体は、例えば、配列番号2の配列のN又はC末端、並びに一または複数の内部ドメインにおいて、一または複数のアミノ酸残基が付加されたか、又は欠失されたアミノペプチダーゼb2324ポリペプチドを含む。好ましくは、アミノペプチダーゼ2324相同体は、配列番号2の残基1〜688のアミノ酸配列と、少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、及びそれよりもさらに好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。相同体は天然配列を包含しない。
【0018】
yfcK遺伝子は、(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基の配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードするDNA分子又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対し、少なくとも80%の配列同一性を有し、アミノペプチダーゼをコードする遺伝子を指す。また、それは、配列番号1の核酸残基の完全な配列を有する染色体yfcK遺伝子に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、且つアミノペプチダーゼをコードする遺伝子を指す。このようなyfcK遺伝子は、例えば、配列番号1の配列の5’または3’末端、並びに内部中に一または複数の核酸残基が付加されているか、欠失されている、遺伝子yfcK遺伝子を含む。好ましくは、yfcK遺伝子は、配列番号1のヌクレオチド1〜2067の核酸配列と、少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、及びそれよりもさらに好ましくは少なくとも約95%の核酸配列同一性を有する。本用語は天然配列yfcK遺伝子(例えば染色体yfcK遺伝子)を含む。
【0019】
ここで同定されるアミノペプチダーゼb2324配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、アミノペプチダーゼb2324配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。ここで使用される%アミノ酸配列同一性値は、(Altschul等, Methods in Enzymology, 266: 460-480 (1996); http://blast.wustl/edu/blast/README.html)から得られるWU−BLAST−2により計算される。WU−BLAST−2は、殆どが初期値に設定される複数の検索パラメータを使用する。調節可能なパラメータは以下の値に設定する:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。HSP S及びHSP S2パラメータは動的な値であり、対象とする配列の組成及び配列が検索される特定のデータベースの組成及び特定の配列の組成により、プログラム自身によって確立される。しかしながら、感度をあげるように値を調節してもよい。%アミノ酸配列同一性の値は、整列させた領域内の「より長い」配列の残基の総数で一致する同一の残基を除した商によって決定される。「より長い」配列とは、整列させた領域における殆どの実残基を有する配列である(配列度を最大にするためにWU−BLAST−2により導入された間隙は無視する)。
「ポジティブ」という用語は、上記のように実施された配列比較の中で、比較された配列において同一ではないが類似の特性を有している残基(例えば、保存的置換の結果として)を含む。陽性の%値は、BLOSUM62マトリクス内でポジティブな値が付けられた残基の断片を、上記のように、より長い配列中の残基の総数で除した商によって決定される。
同様に、ここで同定されるアミノペプチダーゼb2324ポリペプチドのコード化配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、アミノペプチダーゼb2324コード化配列のヌクレオチド残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基のパーセントとして定義される。ここで使用される同一性の値は、オーバーラップスパン及びオーバーラップフラクションを各々1及び0.125に設定し、初期値に設定したWU−BLAST−2のモジュールのBLASTによって計算される。
【0020】
ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用する「単離された」とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、アミノペプチダーゼb2324の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのポリペプチドが含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも一の精製工程により調製される。
アミノペプチダーゼb2324をコードする「単離された」核酸分子は、同定され、アミノペプチダーゼb2324をコードする核酸の天然源に通常付随している少なくとも一の汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたアミノペプチダーゼb2324コード化核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離された核酸分子は、天然の細胞中に存在するアミノペプチダーゼb2324コード化核酸分子とは区別される。しかし、単離されたアミノペプチダーゼb2324ポリペプチドコード化核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にあるアミノペプチダーゼb2324を通常発現する細胞に含まれるアミノペプチダーゼb2324コード化核酸分子を含む。
【0021】
発明の実施形態
一態様では、本発明は、アミノペプチダーゼ(つまり、N末端フェニルアラニンとそれに隣接する別のアミノ酸との間を切断する酵素などの、ポリペプチドのN末端に位置するアミノ酸残基を断ち切る酵素)を欠き、よってポリペプチドの精製を向上させる、特定の細菌宿主細胞株に関する。
特に、この態様において、本発明は、(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基の配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードするDNA分子又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対し、少なくとも80%の配列同一性を有し、アミノペプチダーゼをコードする染色体遺伝子(そのような細胞の野生型バージョンに欠損を持たない)に欠損を持つグラム陰性細菌細胞を提供する。つまり、このような遺伝子はyfcK遺伝子の配列と、少なくとも80%の配列同一性を共有する。好ましくは、この遺伝子は、(天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードする)yfK遺伝子の配列と、少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、それよりもさらに好ましくは少なくとも約95%、および最も好ましくは100%の配列同一性を共有する。
【0022】
別の態様では、グラム陰性細菌細胞は、配列番号2の1〜688のアミノ酸残基の配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324に対し、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノペプチダーゼをコードする染色体遺伝子(そのような細胞の野生型バージョンではその遺伝子は欠損を持たない)に欠損を持つ。好ましくは、アミノペプチダーゼは、少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、それよりもさらに好ましくは95%の配列同一性を有する。これは、染色体天然配列yfcK遺伝子に欠損を持つ細胞を含む。
第3の態様では、グラム陰性細菌細胞は、(a)配列番号2の1〜688の範囲の天然配列アミノペプチダーゼb2324のアミノ酸残基の配列と比較したとき、少なくとも80%のポジティブスコアを示すポリペプチドをコードするDNA又は(b)(a)のDNAの相補鎖を含む遺伝子(そのような細胞の野生型バージョンではその遺伝子は欠損を持たない)に欠損を持ち、ここでポリペプチドはアミノペプチダーゼである。これは、アミノペプチダーゼb2324の天然配列と比較したとき、100%のポジティブスコアを示す細胞を含む。
【0023】
本発明の対象となる細胞は、グラム陰性細菌、例えば、サルモネラ属、エルシニア属、ヘモフィルス属、カウロバクター属、アグロバクテリウム属、ビブリオ属などの配列決定されたゲノムを有する細菌であり、それらではyfcK相同体が予想される。さらに好ましくは、細胞はサルモネラ属、又は腸内細菌科、さらに好ましくは大腸菌、最も好ましくはW3110である。
場合によっては、細胞は、そのような細胞の野生型バージョンに存在する一または複数の別の染色体遺伝子、例えば細菌プロテアーゼをコードする遺伝子などにさらに欠損を持つ。プロテアーゼの調節を制御する遺伝子、又はプロテアーゼに欠損を持つ大腸菌株が知られている(Beckwith及びStrauch, 1998年8月11日公開のWO88/05821; Chaudhury及びSmith, J. Bacteriol., 160:788-791 (1984); Elish等, J. Gen. Microbiol., 134:1355-1364 (1988); Baneyx及びGeorgiou, “Expression of proteolytically sensitive polypeptides in Escherichia coli," In: Stability of Protein Pharmaceuticals, Vol. 3: Chemical and Physical Pathways of Protein Degradation, Ahern and Manning編 (Plenum Press, New York, 1992), p. 69-108)。
これらプロテアーゼ欠損株の一部は、タンパク分解性に感受性のペプチド、中でも医学的又は商業的に潜在的価値のあるものを効率的に生産する試みに使用されてきた。米国特許第5508192号(Georgiou等)には、多数のプロテアーゼ欠損及び/又は熱ショックタンパク質欠損細菌宿主が開示されている。そのような宿主には、単一、二重、三重、四重プロテアーゼ欠損細菌、及びrpoH遺伝子の突然変異も有する単一プロテアーゼ細菌が含まれる。開示されたプロテーアゼ遺伝子の例は、大腸菌において多量の組換えタンパク質を産生することが報告されているdegP ompT ptr3、 prc (tsp)、及びdegP rpoH株を含む。Park等, Biotechnol. Prog., 15:164-167 (1999) にも、2つの細胞エンベローププロテアーゼ(degP prc)に欠損を有する株(HM114)が、もっと多くのプロテアーゼに欠損を有する他の株よりも、成長速度がやや速く、多くの融合タンパク質を生産することが報告されている。ここでの細胞は、そのようなプロテアーゼの任意の一または複数に欠損を有していてよいが、好ましくはそのようなプロテアーゼはプロテアーゼIIIをコードする染色体ptr3、プロテアーゼompTをコードする染色体ompT、及び/又はプロテアーゼDegPをコードする染色体degPである。株はまた、tonA (fhuA)、phoA、及び/又はdeoCに欠損を有してもよい。好ましくは、細胞はdegP及び/又はfhuAに欠損を有する。最も好ましくは、細胞は遺伝子型W3110 ΔfhuA Δ(arg-F-lac)169 phoAΔE15 deoC2 degP::kanR ilvG2096 ΔyfcKを有する。
【0024】
別の実施態様では、細胞は、細胞に対して異種性のポリペプチドをコードする核酸を有する。核酸は任意の手段により細胞中に導入することができるが、好ましくは、組換え発現ベクターの使用により、又は、最も好ましくはベクターによる、相同組換えにより、核酸を形質転換するために使用される。
適切な異種ポリペプチドの例は、上に規定したものであり、また、メチオニン残基を起点とし、第二残基としてフェニルアラニンを有するタンパク質及びポリペプチド、ならびに、フェニルアラニンを起点とするタンパク質(つまり、成熟型において、フェニルアラニンを起点とするか、又は開始メチオニンを除去するためにタンパク質分解的に処理されるもの、及びヒト成長ホルモン等の成熟タンパク質のN末端としてPheを残すように切断されたシグナルペプチドを有するプレプロタンパクであるもの)を含む。従って、成熟又は最終産物のアミノ末端がPheであるように生成された細菌細胞に異種であるあらゆるポリペプチドが本発明の目的のためにここで含まれる。
【0025】
フェニルアラニンの排除要件に合致するヒトポリペプチドの例には、コラーゲンα2鎖前駆体、T細胞表面糖タンパク質cd3デルタ鎖前駆体、インスリン前駆体、インテグリンα−3前駆体、インテグリンα−5前駆体、インテグリンα−6前駆体、インテグリンα−7前駆体、インテグリンα−e前駆体、インテグリンα−m前駆体、インテグリンα−v前駆体、インテグリンα−x前駆体、ホスファチジルコリン−ステロールアシルトランスフェラーゼ前駆体、リンパ球機能関連抗原3前駆体、間質性コラゲナーゼ前駆体、好中球コラゲナーゼ前駆体、モチリン前駆体、好中球−1前駆体、血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ前駆体、骨シアロタンパク質ii前駆体、成長ホルモン変異体前駆体(Seeburg, DNA 1:239-249 (1982))、ソマトトロピン前駆体、小誘発性サイトカインa13前駆体、小誘発性サイトカインa27前駆体、小誘発性サイトカインb11前駆体、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー番号8前駆体、甲状腺刺激ホルモンβ鎖前駆体、血管内皮成長因子c前駆体、プレプロインスリン(BE885196-A)、ヒト成長ホルモン変異体HGH−V(EP89666-A)、ヒトプロインスリン(US4431740)、pAP−1によりコードされるヒト成長ホルモン(hGH)及びAPシグナルペプチド(EP177343-A)、ヒト成長ホルモン(hGF)前駆体(EP245138-A)、ヒトBMP(EP409472-A)、ヒトLFA−3(CD58)タンパク質(DE4008354-A)、ヒトII型インターロイキン−1レセプター(EP460846-A)、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#6(WO9206111-A)、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#7(WO9206111-A))、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#8(WO9206111-A)、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#10(WO9206111-A)、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#9(WO9206111-A)、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#11(WO9206111-A)、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#12(WO9206111-A)、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#13(WO9206111-A)、腎毒性の小さいアプロチニン類似物#14(WO9206111-A)、アルファ6Aインテグリンサブユニット(WO9219647-A)、アルファ6Bインテグリンサブユニット(WO9219647-A)、ヒトLFA−3タンパク質(EP517174-A)、ヒトプラズマカルボキシペプチダーゼ(US5206161-A)、リンパ芽球腫由来IL−1R(WO9319777-A)、ヒトLFA−3(JP06157334-A)、リンパ球活性化により誘導される(ILA)ヒトレセプター(CA2108401-A)、内皮細胞タンパク質レセプター(WO9605303-A1)、ヒトレシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)(WO9717434-A2)、ヒト可溶型CD30抗原(DE9219038-U1)、ヒト小CCN様成長因子(WO9639486-A1)、ヒトプラズマカルボキシペプチダーゼB(US5593674-A)、ヒト成長ホルモン(WO9820035-A1)、プラスミドpKFN−864断片によりコードされるインスリン類似体(EP861851-A1)、 霊長類CXCケモカイン「IBICK」ポリペプチド(WO9832858-A2)、ヒト小CCN様成長因子(US5780263-A)、ヒトプラズマヒアルロニダーゼ(phHAse)のアミノ酸配列(WO9816655-A1)、ヒトII型IL−IRタンパク質(US5767064-A)、ホモサピエンスクローンCC365_40タンパク質(WO9807859-A2)、ヒト成長ホルモン(US5955346-A)、ヒト可溶型成長ホルモンレセプター(US5955346-A)、ヒトCD30抗原タンパク質(WO9940187-A1)、ヒトニューロピリン−1(WO9929858-A1)、ヒト脳組織由来ポリペプチド(クローンOMB096)(WO9933873-A1)、ヒトトルプロテインPRO285(WO9920756-A2)、ヒト分泌ペプチドのアミノ酸配列(WO9911293-A1)、ヒト分泌ペプチドのアミノ酸配列(WO9911293-A1)、ヒト分泌ペプチドのアミノ酸配列(WO9911293-A1)、ヒト分泌ペプチドのアミノ酸配列(WO9911293-A1)、ヒト分泌タンパク質のアミノ酸配列(WO9907891-A1)、ヒト分泌タンパク質のアミノ酸配列(WO9907891-A1)、ヒト分泌タンパク質のアミノ酸配列(WO9907891-A1)、ヒトプラズマカルボキシペプチダーゼB(PCPB)thr147(WO9855645-A1)、ヒトケモカインMIG−βタンパク質(EP887409-A1)、ヒト分泌性タンパク質のアミノ酸配列(WO200052151-A2)、プラスミドpWRG1630によりコードされるヒトhGH/EGF融合タンパク質(US6090790-A)、cDNAクローン3470865によりコードされるヒト分泌タンパク質(WO200037634-A2)、ヒト単球由来タンパク質FDF03DeltaTM(WO200040721-A1)、ヒト単球由来タンパク質FDF03-S1(WO200040721-A1)、ヒト単球由来タンパク質FDF03−M14(WO200040721-A1)、ヒト単球由来タンパク質FDF03−S2(WO200040721-A1)、ヒト分泌タンパク質#2(EP1033401-A2)、ヒトプレプロ−血管内皮成長因子C(WO200021560-A1)、ヒト膜輸送タンパク質、MTRP−15(WO200026245-A2)、ヒト血管内皮成長因子(VEGF)−Cタンパク質(WO200024412-A2)、ヒトTANGO191(WO200018800-A1)、インターフェロンレセプター−HKAEF92(WO9962934-A1)、ヒトインテグリンサブユニットα−10スプライシング変異体(WO9951639-A1)、ヒトデルタ1−ピロリン−5−カルボキシレートレダクターゼ相同体(P5CRH)(US6268192-B1)、ヒト成長/分化因子6様タンパク質AMF10(WO200174897-A2)、ヒトトランスポーター及びイオンチャネル−6(TRICH−6)タンパク質(WO200162923-A2)、ヒトトランスポーター及びイオンチャネル−7(TRICH−7)タンパク質(WO200162923-A2)、ヒトマトリックスメタロプロチナーゼ(metalloprotinase)−1(MMP−1)タンパク質(WO200166766-A2)、ヒトマトリックスメタロプロチナーゼ(metalloprotinase)−8(MMP−8)タンパク質(WO200166766-A2), ヒトマトリックスメタロプロチナーゼ(metalloprotinase)−18P(MMP−18P)タンパク質WO200166766-A2)、ヒトG−タンパク質結合レセプター6(GPCR6)タンパク質(WO200181378-A2)、ヒトZlec1タンパク質(WO200166749-A2)、ヒトマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)様タンパク質(WO200157255-A1)、ヒト遺伝子15コード化分泌タンパク質HFXDI56 (WO200154708-A1)、ヒト遺伝子9コード化分泌タンパク質HTEGF16(WO200154708-A1)、ヒト分泌タンパク質(SECP)#4(WO200151636-A2)、ヒト遺伝子20コード化分泌タンパク質HUSIB13 (WO200151504-A1)、ヒト遺伝子28コード化分泌タンパク質HISAQ04(WO200151504-A1)、ヒト遺伝子35コード化分泌タンパク質HCNAH57(WO200151504-A1)、ヒト遺伝子17コード化分泌タンパク質HBMCF37(WO200151504-A1)ヒト腫瘍壊死因子(TNF)刺激遺伝子−6(TSG−6)タンパク質(US6210905-B1)、FCTR10(WO200146231-A2)、 ヒト遺伝子18コード化分泌タンパク質HFKHW50(WO200136440-A1)、ヒト遺伝子18コード化分泌タンパク質HFKHW50(WO200136440-A1)、ヒト遺伝子13コード化分泌タンパク質HE8FC45(WO200077022-A1)、ヒト遺伝子32コード化分泌タンパク質HTLIF12(WO200077022-A1)、ヒト遺伝子4コード化分泌タンパク質HCRPV17(WO200134643-A1)、ヒト遺伝子23コード化分泌タンパク質HE8OK73(WO200134643-A1)、ヒト遺伝子4コード化分泌タンパク質HCRPV17(WO200134643-A1)、ヒト遺伝子22コード化分泌タンパク質HMSFK67(WO200132676-A1)、ヒト遺伝子22コード化分泌タンパク質HMSFK67(WO200132676-A1)、ヒト遺伝子22コード化分泌タンパク質HMSFK67((WO200132676-A1)、ヒト遺伝子19コード化分泌タンパク質HCRNF14(WO200134800-A1)、ヒト遺伝子6コード化分泌タンパク質HNEEB45(WO200132687-A1)、ヒト遺伝子6コード化分泌タンパク質HNEEB45(WO200132687-A1)、ヒト遺伝子9コード化分泌タンパク質HHPDV90(WO200132675-A1)、ヒト遺伝子1コード化分泌タンパク質B7-H6(WO200134768-A2)、ヒト遺伝子3コード化分泌タンパク質HDPMS12(WO200134768-A2)、ヒト遺伝子13コード化分泌タンパク質クローンHRABS65(WO200134768-A2)、ヒト遺伝子1コード化分泌タンパク質HDPAP35(WO200134768-A2)、ヒト遺伝子3コード化分泌タンパク質HDPMS12(WO200134768-A2)、ヒト遺伝子17コード化分泌タンパク質HACCL63(WO200134769-A2)、ヒト遺伝子17コード化分泌タンパク質HACCL63(WO200134769-A2)、ヒト遺伝子10コード化分泌タンパク質HHEPJ23(WO200134629-A1)、ヒト遺伝子10コード化分泌タンパク質HHEPJ23(WO200134629-A1)、ヒト遺伝子5コード化分泌タンパク質HE9QN39 (WO200134626-A1)、ヒト遺伝子14コード化分泌タンパク質HCRNO87(配列番号104)(WO200134626-A1)、ヒト遺伝子5コード化分泌タンパク質HE9QN39 (WO200134626-A1)、ヒト遺伝子14コード化分泌タンパク質HCRNO87(配列番号145)(WO200134626-A1)、ヒト遺伝子4コード化分泌タンパク質HSODE04(WO200134623-A1)、ヒト遺伝子6コード化分泌タンパク質HMZMF54(WO200134623-A1)、ヒト遺伝子18コード化分泌タンパク質HPJAP43(WO200134623-A1)、ヒト遺伝子27コード化分泌タンパク質HNTSL47(WO200134623-A1)、ヒト遺伝子4コード化分泌タンパク質HSODE04(WO200134623-A1)、ヒト遺伝子6コード化分泌タンパク質HMZMF54(WO200134623-A1)、ヒト遺伝子18コード化分泌タンパク質HPJAP43(WO200134623-A1)、ヒト遺伝子27コード化分泌タンパク質HNTSL47(WO200134623-A1)、ヒト遺伝子21コード化分泌タンパク質HLJEA01(WO200134767-A2)、ヒト遺伝子25コード化分泌タンパク質HTJNX29(配列番号115)(WO200134627-A1)、ヒト遺伝子25コード化分泌タンパク質HTJNX29(配列番号165)(WO200134627-A1)、ヒトTANGO509アミノ酸配列(WO200121631-A2)、ヒトTANGO210タンパク質( WO200118016-A1)、ヒト癌関連タンパク質12(WO200118014-A1)、ヒト癌関連タンパク質18(WO200118014-A1)、ヒトB7−4分泌(B7−4S)タンパク質(WO200114557-A1)、ヒトB7−4膜(B7−4M)タンパク質(WO200114557-A1)、ヒトB7−4分泌(B7−4S)タンパク質(WO200114556-A1)、ヒトB7−4膜(B7−4M)タンパク質(WO200114556-A1)、ヒトインターロイキンDNAX80変異体(WO200109176-A2)、ヒトレシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)(WO200105943-A2)、ヒトポリペプチドPRO1419のアミノ酸配列(WO200077037-A2)、ヒトアルファ11インテグリン鎖のアミノ酸配列(WO200075187-A1)、ヒトA259(WO200073339-A1)、ヒト骨髄由来ペプチド(WO200166558-A1)、ヒト腫瘍関連抗原性標的−169(TAT169)タンパク質(WO200216602-A2)、ヒト遺伝子3コード化分泌タンパク質HKZAO35ID(WO200218411-A1)、ヒト遺伝子3コード化分泌タンパク質HKZAO35ID(WO200218411-A1)、ヒト遺伝子11コード化分泌タンパク質HLYCK27(WO200218435-A1)、ヒトINTG−1タンパク質(WO200212339-A2)、ヒト遺伝子15コード化分泌タンパク質HFPHA80、配列70(WO200216390-A1)、ヒト遺伝子15コード化分泌タンパク質HFPHA80、配列94(WO200216390-A1)、ヒト遺伝子2コード化分泌タンパクHDQFU73、配列69(WO200224719-A1)、ヒト遺伝子8コード化分泌タンパク質HDPTC31、配列75(WO200224719-A1)、ヒト遺伝子2コード化分泌タンパクHDQFU73、配列90(WO200224719-A1)、ヒト遺伝子6コード化分泌タンパク質HDPRJ60、配列95(WO200224719-A1)、ヒト遺伝子8コード化分泌タンパク質HDPTC31、配列99(WO200224719-A1)、ヒト遺伝子8コード化分泌タンパク
質HDPTC31、配列100(WO200224719-A1)、ヒトプロインスリン類似体(WO200204481-A2)、腫瘍関連抗原性標的タンパク質、TAT136(WO200216429-A2)、腫瘍関連抗原性標的ポリペプチド(TAT)136(WO200216581-A2)、ヒトCD30タンパク質配列(WO200211767-A2)、ヒトインターロイキン1R2(IL−1R2)タンパク質配列(WO200211767-A2)、ヒトG−タンパク質結合レセプター−7(GPCR−7)タンパク質(WO200206342-A2)、ヒトG−タンパク質結合−レセプター(GPCR6a)(WO200208289-A2)、ヒトG−タンパク質結合−レセプター(GPCR6b)(WO200208289-A2)、ヒトII型インターロイキン−1レセプター(WO200187328-A2)、ヒトA259ポリペプチド(WO200181414-A2)、ヒト血管細胞接着分子、VCAM1(US6307025-B1)、ヒト血管細胞接着分子、VCAM1b(US6307025-B1)、ヒトトランスポーター及びイオンチャネル(TRICH)−6(WO200177174-A2)、及びヒトタンパク質修飾・維持分子−8(PMMM−8)(WO200202603-A2)が含まれる。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、(a)異種ポリペプチドをコードする核酸を有する細胞を培養すること、及び(b)その細胞からポリペプチドを回収することを含む、異種ポリペプチド生産方法を提供する。回収は、細胞の、細胞質、周縁質、又は培養培地から行ってよいが、好ましくは細胞の周縁質又は培養培地からポリペプチドを回収する。培養は醗酵槽において行うのが好ましい。以下に記載するようにして、培養パラメータを使用し、常套的にポリペプチド生産を行った。
所望のポリペプチドが細胞質中で産生される場合、細胞の溶解前又は溶解後のインキュベーションは必要ではないが、それは切断物質形成の効率を上昇させうる。所望のポリペプチドが周縁質又は細胞培養培地中に分泌されたら、インキュベーションを行うことが好ましく、少なくとも約0.5時間行うことを推奨する。周縁質に産生したポリペプチドの好ましい回収方法は、大量の場合はホモジナイザー、フレンチプレス細胞、及びマイクロフリューダイザーを、少量の場合は超音波処理器等を使用して分裂又は切断することである。分裂した細胞からライセートが形成され、それから無傷のポリペプチドを精製することができる。好ましくは、そのようなライセートを精製段階の前にインキュベートする。このインキュベーションは、任意の適切な温度で行うことができるが、好ましくは室温以下で約1時間、さらに好ましくは2〜50時間行う。ポリペプチド及び細胞のタイプは、好ましくは上記に規定したものである。
【0027】
加えて、本発明は、核酸が発現するような条件下で細胞を培養することを含む、ポリペプチドからのアミノ酸残基のN末端切断を防ぐ方法を提供し、本方法では、細胞は、ポリペプチドをコードする核酸を含む。このような培養条件は常套的なものであり、当技術分野において周知である。好ましくは、ポリペプチドは細胞から回収する。好ましいポリペプチド及び細胞の種類は上述したようなものである。
あるいは、切断ポリペプチドが、不純物である非切断ポリペプチドから精製されたものである場合、逆の状況も適用される。この態様では、本発明は、上述のようにポリペプチドにアミノペプチダーゼb2324タンパク質を接触させることを含む、ポリペプチドからN末端アミノ酸を切断する方法を提供し、本方法では、好ましくは、アミノペプチダーゼb2324タンパク質でインキュベーションすることにより接触を行う。切断ポリペプチドを生産するためのさらなる方法は、yfcK遺伝子(遺伝子は細胞に対し内因性又は異種)を含み、且つN末端に(一の)アミノ酸が付加された対応する非切断ポリペプチドを有する細菌細胞を培養することを伴い、本方法では、yfcK遺伝子を発現又は過剰発現する条件下で培養を行い、非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼb2324タンパク質が発現後に接触していない場合は、非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼb2324を接触させることにより、切断ポリペプチドを生産するものである。
【0028】
好ましくは、ポリペプチドは細胞に対して異種であり、さらに好ましくは上記の分類のポリペプチドの一つである。好ましくは、細胞の種類は上記に規定したものから選択されるが、但し、欠失されるyfcK遺伝子を持たないものは除く。yfcK遺伝子はベクターにより導入するこもできるし、または宿主細胞に内因性であってもよく、好ましくはポリペプチドをコードする核酸の発現と比較して過剰発現し、よって酵素的切断反応を助ける。
別の好ましい態様では、アミノペプチダーゼb2324タンパク質との接触前に細胞から非切断ポリペプチドを回収する。回収において、好ましくは(上述のような技術を使用して)細胞を破壊し、溶解させる。溶解後、好ましくは、非切断ポリペプチドをアミノペプチダーゼb2324タンパク質と共にインキュベートし、それによりアミノ末端を切断し、切断されたポリペプチドをインキュベートしたライセートから精製する。好ましくは、ライセートは約20〜40℃で少なくとも約1時間、さらに好ましくは約30〜40℃で約2〜50時間インキュベートする。
【0029】
I.非切断ポリペプチドの生成及び回収
A.複製可能ベクター中への核酸の挿入
対象とするポリペプチドをコードする核酸は、対象のポリペプチドをコードするものである限り、任意の供給源からのcDNAでもゲノムDNAでも適切である。
異種核酸(例えばcDNA又はゲノムDNA)は、適切なプロモーターの制御下でバクテリウム属において発現するように、複製可能ベクターに適切に挿入される。この目的のために多くのベクターが使用可能であり、適切なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入される核酸の大きさと、ベクターで形質転換される特定の宿主細胞によって決まる。各ベクターは、それと適合する特定の宿主細胞に応じて様々な成分を含む。宿主の決まった種類によって、ベクター成分は通常、限定はされないが、次のうち1以上を含む:シグナル配列、複製開始点、一または複数のマーカー遺伝子、プロモーター、及び転写終結配列。
一般に、宿主細胞と適合性のある種由来の複製及び制御配列プラスミドベクターが大腸菌宿主に関して使用される。ベクターは、通常、複製部位と、形質転換した細胞における表現型を選択できるマーキング配列とを有する。例えば、大腸菌は、典型的に大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される(例えばBolivar等, Gene, 2: 95 (1977)参照)。pBR322はアンピシリン及びテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含み、よって形質転換された細胞の同定に簡便な手段を提供する。pBR322プラスミド、あるいは、その他細菌プラスミド又はファージも、選択可能マーカー遺伝子を発現するために大腸菌宿主が使用できるプロモーターを通常有しているか、あるいは有するように改変される。
【0030】
(i)シグナル配列成分
ここで対象となるポリペプチドをコードするDNAは、直接発現されるだけではなく、好ましくはシグナル配列あるいは成熟ポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである別のポリペプチドとの融合体としても発現される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、又はベクターに挿入されたポリペプチドDNAの一部であってもよい。選択された異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。
天然又は真核生物のポリペプチドシグナル配列を認識及び加工しない細菌宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される適切な原核生物シグナル配列により置換される。
【0031】
(ii)複製開始点成分
発現ベクターは、一または複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は様々な細菌に対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大腸菌などの大部分のグラム陰性細菌に好適である。
【0032】
(iii)選択遺伝子成分
通常、発現ベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。この遺伝子は、選択培地中で増殖する形質転換された宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されない宿主細胞は、培地中で生存できない。この選択可能マーカーは、この発明で利用され、定義されるような遺伝学的マーカーとは区別される。典型的な選択遺伝子は、(a)例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質又はその他の毒素に耐性を付与し、(b)遺伝学的マーカーの存在によって誘導される欠陥以外の栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバチラス菌に対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
選択技術の一例においては、宿主細胞の増殖を抑止する薬物が用いられる。この場合、対象の核酸で首尾よく形質転換したこれらの細胞は、抗薬物性を付与し、選択療法を生存するポリペプチドを産生する。このような優性選択の例では、薬物ネオマイシン(Southern等, J. Molec. Appl. Genet, 1:327 (1982))、ミコフェノール酸(Mulligan等, Science, 209:1422 (1980))又はハイグロマイシン(Sugden等, Mol. Cell. Biol., 5:410-413 (1985))が使用される。上述の3つの例は、各々、適当な薬剤であるG418又はネオマイシン(ジェネティシン)、xgpt(ミコフェノール酸)、又はハイグロマイシンに対する耐性を伝達するために、真核生物での制御下において、細菌性遺伝子を利用する。
【0033】
(iv)プロモーター成分
対象のポリペプチドを産生するための発現ベクターは、宿主生物によって認識され、対象のポリペプチドをコードする核酸と作用可能に連結される適切なプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系(Chang等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979))、アラビノースプロモーター系(Guzman等, J. Bacteriol., 174:7716-7728 (1992))、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP36,776)、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター(deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25(1983))を含む。しかし、他の既知の細菌性プロモーターも適当である。それらのヌクレオチド配列は公表されており、それにより、任意の必要な制限酵素サイトを供給するためのリンカー又はアダプターを用いて、当業者は対象のポリペプチドをコードするDNAにそれらを作用可能に連結する(Siebenlist等, Cell, 20:269(1980))ことが可能となる。
また、細菌系で使用されるプロモーターも、通常、対象のポリペプチドをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガルノ(S.D.)配列を有する。該プロモーターは、制限酵素による消化によりDNAの細菌性供給源から取り外すことができ、所望のDNAを含むベクター中へ挿入することができる。
【0034】
(v)ベクターの構築及び解析
一または複数の上に列挙した成分を含む適切なベクターの作成には標準的なライゲーション技術を用いる。単離されたプラスミド又はDNA断片を切断し、整え、そして必要とされるプラスミドの生成のために望ましい型に再ライゲーションする。
構築されたプラスミド中において正しい配列であることを確認する解析のために、ライゲーション混合物を用いて、大腸菌K12菌株294(ATCC31,446)又は他の株を形質転換し、適当な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって、成功した形質転換細胞を選択する。形質転換細胞からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により解析し、及び/又はSanger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74:5463-5467 (1977)又はMessing等, Nucleic Acids Res., 9:309 (1981)の方法、又はMaxam等, Methods in Enzymology, 65:499(1980)の方法により配列決定される。
【0035】
B.宿主細胞の選択及び形質転換
上記に定義したように、欠損を持つyfcK遺伝子をつくるという目的のために、多種のグラム陰性細菌細胞が使用でき、上述したものはその例示である。組換えDNA産物醗酵に一般的な宿主株であるため、大腸菌W3110は好ましい親株である。好ましくは、宿主細胞は最低限の量のタンパク質分解性酵素しか分泌しない。例えば、W3110はタンパク質をコードする遺伝子に遺伝的突然変異を生じるような影響を及ぼすことができ、そのような大腸菌宿主の例を、それらの遺伝子型とともに、下記の表に示す:

また、36F8を作製する際の中間体、即ち、27B4(米国特許第5304472号)及び35E7(27B4より増殖の優れた自発的温度耐性コロニー単離体)も適当である。さらに適当な株は、1990年8月7日発行の米国特許第4946783号に開示されている変異体ペリプラズムプロテアーゼを有する大腸菌株である。
【0036】
本発明の変異細胞は、親細胞へのyfcK遺伝子の染色体組込み、又は下記の実施例に示すものを含む他の技術によって作製されてもよい。
ポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞へ挿入する。ポリペプチドをコードするベクターによる形質転換を含む任意の適切な方法を使用して、核酸を適切な細菌細胞に導入する。形質転換とは、染色体外成分又は染色体に挿入されたものとしてDNAが複製可能なように該DNAを生物体中へ導入することを意味する。使用する宿主細胞に応じて、形質転換はそれらの細胞に適する標準的な技術を用いて行われる。Sambrook等, Molecular Cloning:A Laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)のセクション1.82に記載されるように、塩化カルシウムを利用するカルシウム処理は、一般的に、原核細胞又は実質的に細胞壁障壁を含む他の細胞へ用いられる。形質転換のための他の方法では、Chung及びMiller, Nucleic Acids Res., 16:3580 (1988)中で記載されるように、ポリエチレングリコール/DMSOが用いられる。さらに他の方法は、エレクトロポレーションと称される技術の使用である。
ポリペプチドをコードする遺伝子を大腸菌宿主ゲノムに挿入することによる形質転換の一例は、大腸菌ゲノムのDNAに見られる配列に相補的なDNA配列を形質転換用のベクターに含めることを伴う。このベクターを大腸菌に形質移入することにより、ポリペプチドをコードする遺伝子の挿入物とゲノムとの相同的組換えが行われる。好ましくは、上述の発現ベクトルで宿主細胞を形質転換し、様々なプロモーターを誘発するのに適するように変更された常套的栄養培地中で培養することにより、核酸を導入する。
【0037】
C.宿主細胞の培養
本発明の対象のポリペプチドを生産するために使用される原核細胞は、Sambrook等, 上掲中に一般的に記載されるように適当な培地中で培養される。
発現又は過剰発現した遺伝子産物を分泌するために、宿主細胞を遺伝子産物の分泌に十分な条件下で培養する。このような条件は、例えば、細胞による分泌を可能にする温度、栄養、及び細胞密度の条件を含む。さらに、このような条件は、当業者に既知であるように、細胞の1区画から別の区画への、転写、翻訳、及びタンパク質通過といった基本的細胞機能を細胞が行えるような条件である。
アルカリホスフェートプロモーターが使用される場合、本発明の対象のポリペプチドの生産のために使用される大腸菌細胞は、Sambrook等, 上掲中に一般的に記載されるようにアルカリホスフェートプロモーターが部分的に又は完全に誘導され得る適切な培地中で培養される。無機リン酸塩の非存在下又はリン酸塩欠乏レベル下では、培養の必要性は決して発生しない。第一に、培地が含んでいる無機リン酸塩はタンパク質合成の誘導レベル以上であり、細菌の増殖に十分な量の無機リン酸塩を含む。細胞が増殖し、リン酸塩を利用する場合、培地中のリン酸塩レベルを低下させ、それによりポリペプチドの合成の誘導を引き起こす。
【0038】
炭素、窒素及び無機リン酸塩源以外の任意の必要な他の培地成分も、単独で又は複合窒素源のような他の成分との混合物で、適切な濃度で含まれてよい。培地のpHは、宿主生物に応じて、約5−9の範囲の任意のpHである。
プロモーターが、起こるべき誘導に関し誘導可能なプロモーターである場合、典型的に細胞はある至適な濃度、例えば、高い細胞濃度過程を用い、点誘導が開始される(例えば、誘導因子の添加、培地成分の除去等により)約200のA550が達成されるまで培養され、対象のポリペプチドをコードする核酸の発現を誘導する。
【0039】
E.発現検出
核酸の発現は、ここでポリペプチドの配列に基づき、適切に標識されたプローブを用いて、例えば、従来のサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980))、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。種々の標識が使用されるが、最も一般的なものは、放射性同位体、特に32Pである。しかしながら、ポリヌクレオチドへの導入のためにビオチン修飾ヌクレオチドを用いるなど、他の技術も使用してよい。ついで、ビオチンはアビジンまたは抗体と結合するための部位として機能し、広範な種々の標識、例えば放射性核種、蛍光、酵素などで標識されてよい。あるいは、タンパク質の検出のためにアッセイ又はゲルが用いられてもよい。
発現又は過剰発現された遺伝子産物が分泌されているかを観察する方法は、当業者には容易に入手可能である。例えば遠心分離又は濾過により、培養培地を宿主細胞から分離したら、遺伝子産物に特徴的な既知の特性を利用することにより、無細胞培養培地中に遺伝子産物を検出できる。このような特性は、遺伝子産物に個別の免疫性、酵素、または生理的特性とすることができる。
【0040】
例えば、過剰発現した遺伝子産物が独特の酵素活性を有しているならば、宿主細胞が使用する培養培地に該活性に対するアッセイを行うことができる。さらに、特定の遺伝子産物に反応する抗体を使用できる場合、そのような抗体を使用して、任意の既知の免疫学的アッセイで遺伝子産物を検出することができる(例えば、Harlowe等, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1988)。
また、分子量等の特徴的な物理的特性に基づいてポリペプチドを区別する試験を使用して、分泌された遺伝子産物を検出することができる。遺伝子産物の物理的特性を検出するために、宿主細胞によって新規に合成されたポリペプチド全てを、例えば放射性同位体で標識できる。宿主細胞中に合成されたポリペプチドの標識に使用できる一般的放射性同位体には、トリチウム(H)、炭素−14(14C)、硫黄−35(35S)等が含まれる。例えば、35S−メチオニン又は35S−システイン培地中で宿主細胞を増殖させることができ、有意な量の35S標識を、過剰発現した異種ポリペプチドを含め、新規に合成された任意のポリペプチドに優先的に組み込む。ついで35Sを含む培養培地を除去し、細胞を洗浄して新鮮な非放射性培養培地に配置する。35Sで放射標識した発現異種ポリペプチドの分泌に十分な条件下で一定時間新鮮な培地中に細胞を維持した後、培養培地を回収し、宿主細胞から分離する。ここで、培養培地中に分泌された標識ポリペプチドの分子量を、既知の方法、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動により、決定することができる。このような方法、及び/又は分泌された遺伝子細胞を検出するためのその他方法が、Goeddel, D.V. (ed.) 1990, Gene Expression Technology, Methods in Enzymology, Vol. 185 (Academic Press), 及び上掲のSambrook等に開示されている。
【0041】
E.回収/精製
ポリペプチドが生産されたら、例えば回収を行う細胞の部分に応じて、任意の適切な手段により細胞から回収できる。ポリペプチドは、細胞質、周縁質、又は細胞の培養培地から回収できる。対象のポリペプチドは、好ましくは、分泌されたポリペプチドとして周縁質または培養培地から回収する。対象のポリペプチドを組換え細胞タンパク質又はポリペプチドから精製し、対象のポリペプチドと実質的に相同な調製物を得る。第一段階として、培養培地又はライセートを遠心分離し、特定の細胞片を除去する。ついで、必要であれば膜及び可溶性タンパク質断片を分離してもよい。ここで、ポリペプチドが膜に結合したものであるか、可溶性であるか、又は凝集形態で存在しているかどうかに応じ、ポリペプチドを培養ライセートの可溶性タンパク質断片及び膜断片から精製できる。その後、ポリペプチドを可溶化し、必要であればリフォールディングし、汚染可溶性タンパク質及びポリペプチドから精製する。アミノペプチダーゼがもはや存在しないので、切断されたポリペプチド不純物を混合物から除去するためのどのような一般的方法も、精製スキームから省かれる。好ましい実施態様では、米国特許第5288931号に開示されているように、凝集したポリペプチドを単離し、その後可溶化とリフォールディングを同時に行う。
特に好ましい実施態様では、細胞破壊(上記の技術による)によりライセートを形成した後、無傷の非切断ポリペプチドをライセートから精製することにより、周縁質から回収を行う。好ましくは、精製の前にライセートを培養する。ライセートを20〜25℃で少なくとも1時間、さらに好ましくは室温で5〜45時間、最も好ましくは室温で約20〜30時間培養することがさらに好適である。
以下の方法は、適切な精製方法の例示である:免疫親和性又はイオン交換カラムによる分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はDEAE等のカチオン交換樹脂によるクロマトグラフィー;等電点電気泳動;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;及び例えばSEPHADEX G−75(登録商標)カラムを用いたゲル濾過。
【0042】
II.切断ポリペプチドの生産及び回収
この代替的方法では、ポリペプチドにアミノペプチダーゼb2323ポリペプチドを直接接触させることによりポリペプチドを切断する。これは、約20〜40℃で、好ましくは約30〜40℃で、約50時間以内の間、好ましくは少なくとも約1時間から45時間インキュベートすることを含む、複数の手段で達成できる。この接触法の1態様では、本発明はyfcK遺伝子を含み、N末端に(一つの)アミノ酸が付加された対応する非切断ポリペプチドをコードする核酸を有する細菌細胞を培養することを含む切断ポリペプチド生産方法を提供する。培養はyfcK遺伝子が発現又は過剰発現され、非切断ポリペプチドをコードする核酸が発現されるような条件下で行い、発現後に非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼb2324タンパク質が接触していない場合、非切断ポリペプチドにアミノペプチダーゼb2324タンパク質を接触させることにより切断ポリペプチドを生産する。好ましくは、上記又は下記に規定した条件下でインキュベーションを行い、培養を醗酵槽で行うことにより接触を行う。
好ましい一態様では、ポリペプチドは、細胞、さらに好ましくは真核ポリペプチド、それよりも好ましくは哺乳動物ポリペプチド、特にヒトポリペプチドと異種である。好ましい細胞はサルモネラ属、又は腸内細菌科、さらに好ましくは大腸菌細胞、そして最も好ましくはW3110である。degP又はfhuA、あるいはその両方等のプロテアーゼをコードする少なくとも一の遺伝子に欠損を有する細胞もまた好ましい。
好ましい一態様では、培養条件は、yfcK遺伝子が過剰発現されるものである。yfcK遺伝子は細菌細胞に天然のものであっても、そのような遺伝子を含むベクターで形質転換することにより細菌細胞に導入されたものでもよい。
【0043】
別の好ましい一態様では、アミノペプチダーゼb2324タンパク質と接触させる前の細胞から非切断ポリペプチドを回収し、細胞の培養培地又は周縁質から非切断ポリペプチドを回収する。一実施形態では、細胞破壊(上述)によりライセートを形成することにより回収を行い、アミノペプチダーゼを添加し、ついで切断ポリペプチドをライセートから精製する。この場合、好ましくは、精製段階の前にライセートをアミノペプチダーゼでインキュベートする。さらに好ましくは、少なくとも約1時間約20〜40℃で、それよりもさらに好ましくは約30〜40℃で約2〜50時間、それよりもさらに好ましくは約30〜40℃で約5〜45時間、そして最も好ましくは約35〜38℃で約20〜30時間、精製段階の前にライセートをインキュベートする。
組換えにより切断ポリペプチドを調製する場合の、親株、培養条件、発現の検出、回収/精製、及び基本的技術は上述の通りである。しかしながら、培養する株中の過剰発現については、宿主細胞に内因性(染色体中)であろうが外因性であろうが、典型的にyfcK遺伝子が誘発可能なプロモーターに作用可能に結合し、よってプロモーターを誘発すると遺伝子が過剰発現可能となる。好ましくは、培養は、ポリペプチドをコードする核酸の発現が誘発される前に、yfcK遺伝子の発現が誘導される条件下で行われる。本発明に有用な遺伝子の過剰発現に適切な技術には、Joly等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 2773-2777 (1998); 米国特許第5789199号及び同5639635号; Knappik等, Bio/Technology, 11(1):77-83 (1993); 及びWulfing and Pluckthun, Journal of Molecular Biology, 242(5):655-69 (1994)に開示されているものが含まれる。
【実施例】
【0044】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。しかし、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきものではない。すべての文献及び特許の引例は出典明示によりここに取り込む。
【0045】
実施例1
材料及び方法
ゲノム配列決定プロジェクト(Blattner等、上掲の結果であるGenBankのリスト)により同定されたb2324をコードするyfcK遺伝子のDNA配列を上流と下流で挟み込んでPCR増幅した。ついで、これら融合配列をP1形質導入によりW3110株の染色体上で組換え、PCRにより欠失についてスクリーニングし(Metcalf等, Gene, 138: 1-7 (1994))て株61G3を産生した。この61G3株は、遺伝子型W3310 ΔfhuA Δ(arg-F-lac)169 phoAΔE15 deoC2 degP::kanR ilvG2096 ΔyfcKを有する。
特に、P1由来のファージP1kcによる形質導入(J. Miller, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor, NY, Cold Spring Harbor Laboratory, 1972)及びトランスポゾン遺伝学(Kleckner等, J. Mol. Biol., 116:125-159 (1977)) を使用する技術により複数の段階を踏んでこの株を構築した。使用した元の宿主は、F−λのK−12株である大腸菌K−12W3110である(Bachmann, Bact. Rev., 36: 525-557 (1972); Bachmann, "Derivations and Genotypes of Some Mutant Derivatives of Escherichia coli K-12," p. 1190-1219, F. C. Neidhardt等, 編, Escherichia coli及びSalmonella typhimurium: Cellular and Molecular Biology, vol. 2, American Society for Microbiology, Washington, D.C., 1987)。ゲノム中へのtonA(fhuA)変異の導入は、1994年4月19日発行の米国特許第5304472号に詳述されている。ilv遺伝子内へのTn10挿入は、P1形質導入より導入されたものである。イソロイシン/バリン栄養素要求性は、ilvG2096変異を有する株で増殖させたP1ファージを使用して栄養非要求性(プロトトロフィー)になるまで形質導入し(Lawther等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:922-925 (1981))、これにより、野生型大腸菌K−12をバリンに対して感受性にするフレームシフトが修復された。degP41kan変異は米国特許第5304472号に記載されている。IlvG2096遺伝子座は、40μmg/mLのバリン(0.3mM)に対する33B6宿主の耐性により確認できる。2つの欠失変異体、phoAΔE15及びΔ(argF−lac)169は、米国特許第5304472号に開示されている。deoC2 変異はMark等, Mol. Gen. Genet. 155: 145-152 (1977)に開示されている。株61G3の完全な誘導を図1に示す。
【0046】
ついでこの株を、振盪フラスコ及び10−Lの醗酵槽の両方で(N末端フェニルアラニンを持つ)hGHを発現し分泌するhGH4Rと命名された発現プラスミドにより形質転換した。phGH4Rの構築は、Chang等, Gene, 55: 189-196 (1987)に詳述されている。この形質転換により、JJGH1が生じた。細胞をAndersen等、Biotechnology and Bioengineering, 75(2), 212-218 (2001)に記載されているようにして培養した。hGHが産生した後に超音波処理することにより粗いライセートを形成し、そのライセートを37℃で0〜24時間、及び室温で0〜42時間インキュベートした。これよりも高い温度の使用は、アッセイ法によるdes−phe及びdes−phe−pro hGHの検出能力を向上させることになるが、hGHの精製には好ましくない。通常、hGHの精製は、これらの切断形態の量を抑えるために低温で行われる。
対照群として、phGH4Rで形質転換した親株(遺伝子型W3110 ΔfhuAΔ(arg-F-lac)169 phoAΔE15 deoC2を有する16C9)を用いて同じ実験を実施した。株61G3におけるdegPおよびilvG変異はアミノペプチダーゼの活性に効果を持たないため、この株は本目的に適している。
ついで対照群試料及び実験試料を遠心分離して微粒子を除去し、可溶相をLC−MS(液体クロマトグラフィー、質量分析)により分析した。hGHの無傷のdes−phe及びdes−phe−pro型の質量をモニターした。
【0047】
結果
図2と4は、対照株(16C9/phGH4R)での室温及び37℃でのインキュベーションの結果をそれぞれ示し、図3と5は、ノックアウトされたアミノペプチダーゼを有するJJGH1による室温及び37℃でのインキュベーションの結果をそれぞれ示す。4つの図に対する実際の数を下の表に示す(温度=37℃の場合と温度=室温の場合)。37℃でのインキュベーションを15時間行った後には、フェニルアラニン切断不純物が殆ど存在しないこと、また、インキュベーションを行っていない場合ですら、不純物の量が少ないことが分かる。また、室温でのインキュベーションでも、全ての時間のインキュベーションにおいて対照群と比較して、JJGH1細胞系に、N末端フェニルアラニンが欠損した変異ポリペプチドの量に減少が見られることが分かる。無傷のポリペプチドの精製は、常套的又は既知のクロマトグラフィー手段により容易に実施することができる。

この結果は、ΔyfcK株を使用してポリペプチドのN末端切断を防ぐことができることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(b2324をコードする)yfcKに欠損を有する宿主細胞である大腸菌細胞61G3の派生を示す模式図である。
【図2】室温で0、15、24及び42時間インキュベートしたrhGH抽出対照株16C9の面積割合(液体クロマトグラフィー/質量分光法;LC/MS)の棒グラフであり、天然hGH、des−フェニルアラニンhGH、des−フェニルアラニン−プロリンhGHの量は異なる模様で示している。
【図3】室温で0、15、24及び42時間インキュベートしたrhGH抽出対照株61G3の面積割合(液体クロマトグラフィー/質量分光法;LC/MS)の棒グラフであり、天然hGH、des−フェニルアラニンhGH、des−フェニルアラニン−プロリンhGHの量は異なる模様で示している。
【図4】37℃で0、15、及び24時間インキュベートしたrhGH抽出対照株16C9の面積割合(液体クロマトグラフィー/質量分光法;LC/MS)の棒グラフであり、天然hGH、des−フェニルアラニンhGH、des−フェニルアラニン−プロリンhGHの量は異なる模様で示している。
【図5】37℃で0、15、及び24時間インキュベートした、欠損遺伝子を有するrhGH抽出対照株61G3の面積割合(液体クロマトグラフィー/質量分光法;LC/MS)の棒グラフであり、天然hGH、des−フェニルアラニンhGH、des−フェニルアラニン−プロリンhGHの量は異なる模様で示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードするDNA分子又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、且つアミノペプチダーゼをコードする、染色体遺伝子に欠損を有するグラム陰性細菌細胞。
【請求項2】
(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列と比較した場合に少なくとも80%のポジティブスコアを示すポリペプチドをコードするDNA又は(b)(a)のDNAの相補鎖を有する染色体遺伝子に欠損を有するグラム陰性細菌細胞であって、前記ポリペプチドがアミノペプチダーゼである、グラム陰性細菌細胞。
【請求項3】
配列番号1の1〜2067のヌクレオチド配列を有する天然配列yfcK遺伝子に対し、少なくとも80%の配列同一性を有を有し、且つアミノペプチダーゼをコードする、染色体遺伝子に欠損を有するグラム陰性細菌細胞。
【請求項4】
サルモネラ属又は腸内細菌科である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項5】
大腸菌である、請求項4に記載の細胞。
【請求項6】
プロテアーゼをコードする少なくとも一の遺伝子に欠損を有する、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
天然配列yfcK遺伝子に欠損を有する、請求項5に記載の細胞。
【請求項8】
細胞に対して異種性であるポリペプチドをコードする核酸を有する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項9】
ポリペプチドが哺乳動物のポリペプチドである、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
ポリペプチドがヒトのポリペプチドである、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
ポリペプチドがヒト成長ホルモンである、請求項10に記載の細胞。
【請求項12】
(a)請求項8ないし11のいずれか1項に記載の細胞を培養し、(b)細胞からポリペプチドを回収することを含む、異種ポリペプチド生産方法。
【請求項13】
培養を醗酵槽の中で行い、細胞の周縁質又は培養培地からポリペプチドを回収する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ライセートを形成する細胞破壊により回収を行い、無傷のポリペプチドをライセートから精製する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
精製段階の前にライセートをインキュベートする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の細胞を培養することを含む、ポリペプチドからのアミノ酸残基のN末端切断を防ぐ方法であって、細胞がポリペプチドをコードする核酸を、該核酸が発現される条件下で含む方法。
【請求項17】
ポリペプチドを細胞から回収する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞から単離したポリペプチドからN末端アミノ酸を切断する方法であって、(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードするDNA分子又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対し、少なくとも80%の配列同一性を有する核酸によりコードされるアミノペプチダーゼに、ポリペプチドを接触させることを含む方法。
【請求項19】
細胞から単離したポリペプチドからN末端アミノ酸を切断する方法であって、配列番号2の1から688のアミノ酸残基配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノペプチダーゼに、ポリペプチドを接触させることを含む方法。
【請求項20】
ポリペプチドをアミノペプチダーゼでインキュベートする、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
ポリペプチドに天然配列アミノペプチダーゼb2324を接触させる、請求項18ないし20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
(a)配列番号2の1〜688のアミノ酸残基配列を有する天然配列アミノペプチダーゼb2324をコードするDNA分子又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、アミノペプチダーゼをコードする核酸を持つグラム陰性細菌細胞を培養することを含む切断ポリペプチド生産方法であって、細胞が、N末端にアミノ酸が付加された対応する非切断ポリペプチドをコードする核酸を有し、培養を、遺伝子を発現又は過剰発現し、且つ非切断ポリペプチドをコードする核酸を発現する条件下で行い、発現後に非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼが接触していない場合、非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼを接触させて切断ポリペプチドを生産する方法。
【請求項23】
配列番号1の1〜2067のヌクレオチド配列を有する天然配列yfcK遺伝子に対し、少なくとも80%の配列同一性を有し、且つアミノペプチダーゼをコードするする核酸を持つグラム陰性細菌細胞を培養することを含む切断ポリペプチド生産方法であって、細胞が、N末端にアミノ酸が付加された、対応する非切断ポリペプチドをコードする核酸を有し、培養を、遺伝子を発現又は過剰発現し、且つ非切断ポリペプチドをコードする核酸を発現する条件下で行い、発現後に非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼが接触していない場合、非切断ポリペプチドとアミノペプチダーゼを接触させることにより切断ポリペプチドを生産する方法。
【請求項24】
天然配列yfcK遺伝子を有する大腸菌細胞を培養し、非切断ポリペプチドに天然配列アミノペプチダーゼb2324を接触させる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ポリペプチドが細胞に対して異種性である、請求項22ないし24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ポリペプチドが哺乳動物のポリペプチドである、請求項22ないし24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
細胞が、プロテアーゼをコードする少なくとも一の遺伝子に欠損を有している、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項28】
培養条件が、アミノペプチダーゼをコードする核酸が過剰発現する条件である、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項29】
接触をインキュベーションにより行う、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項30】
アミノペプチダーゼをコードする核酸が細菌細胞由来のものである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項31】
アミノペプチダーゼをコードする核酸が細菌細胞に導入される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項32】
培養を醗酵槽内で行い、アミノペプチダーゼに接触させる前に細胞から非切断ポリペプチドを回収する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項33】
細胞の周縁質又は培養培地からポリペプチドを回収する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ライセートを形成する細胞破壊により回収を行い、ライセートから切断ポリペプチドを精製する、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
精製段階の前にライセートをインキュベートする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1時間、約20〜40℃でライセートをインキュベートする、請求項34又は35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−177189(P2011−177189A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−94093(P2011−94093)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【分割の表示】特願2003−527095(P2003−527095)の分割
【原出願日】平成14年9月12日(2002.9.12)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】