説明

アルカリ性土壌中和工法

【課題】二酸化炭素を用いてアルカリ性土壌を中和する工法であって、二酸化炭素を過剰に添加する必要が無いアルカリ性土壌中和工法の提供。
【解決手段】上方に開口部を設けた空間(1)内にアルカリ性土壌(2)を投入する工程(S1)と、二酸化炭素(30)を前記空間(1)内に供給する工程(S2)と、アルカリ性土壌(2)と二酸化炭素(30)を攪拌して混合する工程(S3)と、前記空間(1)内の酸素濃度を計測する工程(S4)と、酸素濃度が所定の下限値まで低下してから所定の上限値に到達するまでの酸素濃度の上昇速度を決定する工程(S8)とを有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性土壌、例えばpH10以上の強アルカリ性土壌を中和する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
土木及び建築工事において、生石灰を利用して改良された土壌やセメントを注入しながら掘削攪拌する工法で発生する残土等は、アルカリ性を示す。この様なアルカリ性の土壌を、埋め戻しなどで再利用すると、高いpHを示す強アルカリ性の水が、地下水や雨水の影響で地下に溶け出し、周辺環境に悪影響を及ぼす可能性がある。
アルカリ性土壌の存在による係る不都合に対処するべく、硫酸バンドやPACなどの酸性薬剤を利用して、アルカリ性土壌を中和する従来技術が存在する。
しかし、係る従来技術では、含水率の増大による作業性の悪化や、薬剤添加量の制御不良等により、過剰な薬剤添加による土壌の酸性化、その他の弊害が懸念され、更なる環境の悪化をもたらす恐れが存在する。
【0003】
そこで、アルカリ性土壌における環境負荷の少ない中和方法として、アルカリ性土壌を二酸化炭素(ドライアイスを含む)で中和する方法が提案されている。
ここで、二酸化炭素は取り扱いに際して比較的安全であり、作業性が良く、過剰に添加しても土壌を強酸性域まで酸性化してしまうことがない等のメリットがある。
しかし、二酸化炭素は高圧であることから揮発性が高く、作業性を確保するために二酸化炭素を過剰に添加しなくてはならない。その結果、添加する二酸化炭素の内、実際に中和反応に使用される二酸化炭素の割合(歩留まり)が悪く、大量に二酸化炭素を添加する分だけ材料コストが増大してしまう。
現時点において、二酸化炭素を用いた中和方法であって、安価で且つ効率よく二酸化炭素の添加量を制御する技術は存在しない。そのため、二酸化炭素を用いた中和方法は、殆ど用いられていないのが現状である。
【0004】
その他の従来技術として、例えば、pH5〜6の真砂土と建設残土を、pH11〜12の建設汚泥と均等に混合して、中和処理して再生土壌資材を製造する技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、建設汚泥が大量に発生した場合には、それに対応した大量の真砂土が必要となる。
また、土と建設汚泥を均等に混合しても、中和反応速度が遅いため、中和工法としての作業効率が低いという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−74416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、二酸化炭素を用いてアルカリ性土壌を中和する工法であって、二酸化炭素を過剰に添加する必要が無いアルカリ性土壌中和工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアルカリ性土壌中和工法は、上方に開口部を設けた空間(1:例えば、ミキサー車のミキサー、ポットミキサーのつぼ部分、容器)内にアルカリ性土壌(2)を投入する工程(S1)と、アルカリ性土壌(2)を中和するための理論量未満(例えば、理論量の1/2)の二酸化炭素(30)を前記空間(1)内に供給する工程(S2)と、アルカリ性土壌(2)と二酸化炭素(30)を攪拌して混合する工程(S3)と、前記空間(1)内の酸素濃度を計測する工程(S4)と、酸素濃度が所定の下限値(下方のしきい値:例えば、6%)まで低下してから所定の上限値(上方のしきい値:例えば、17〜18%)に到達するまでの酸素濃度の上昇速度を決定する工程(S8)と、酸素濃度の上昇速度がしきい値よりも速い場合には前記空間(1)内の土壌(2)は中和していないと判断して二酸化炭素(30)を前記空間(1)内に供給する工程(S2)と、酸素濃度の上昇速度がしきい値以下であれば前記空間(1)内の土壌(2)は中和したと判断して(S10)当該土壌(2)を前記空間(1)から排出する工程(S11)を有することを特徴としている。
【0008】
ここで、本発明のアルカリ性土壌中和工法は、所定の数量のアルカリ性土壌毎に処理され、いわゆる「バッチ処理」が行なわれる。
また、酸素濃度の上昇速度がしきい値よりも速い場合に二酸化炭素(30)を前記空間(1)内に供給する前記工程(S2)では、酸素濃度が上昇して、所定の上限値(上方のしきい値:例えば、18%)に到達した時点で、新たに二酸化炭素(30)を前記空間(1)内に投入する。
【0009】
本考案において、前記の二酸化炭素(30)を前記空間(1)内に供給する工程(S2)と、アルカリ性土壌(2)と二酸化炭素(30)を攪拌して混合する工程(S3)と、前記空間(1)内の酸素濃度を計測する工程(S4)と、酸素濃度の上昇速度を決定する工程(S7、S8)と、酸素濃度の上昇速度がしきい値よりも速い場合に二酸化炭素(30)を前記空間(1)内に供給する工程(S2)は、複数回に分けて実施されるのが好ましい。
【0010】
そして本発明において、前記酸素濃度の上昇速度を決定する工程(S7、S8)では、複数の時点で酸素濃度を計測し、その計測結果と計測タイミングを記録し、酸素濃度の上昇分(Δ酸素濃度)を計測タイミングの間隔(Δ計測時間)で除することにより、前記酸素濃度の上昇速度を決定するのが好ましい。
【0011】
或いは本発明において、前記酸素濃度の上昇速度を決定する工程(S7、S8)では、酸素濃度が所定の下限値まで低下してから所定の上限値に到達するまでの時間(復帰時間)を計測し、計測された時間(復帰時間)が復帰時間しきい値(例えば、22分)よりも短いと酸素濃度の上昇速度がしきい値よりも速いと判断し、計測された時間(復帰時間)が復帰時間しきい値よりも長いと酸素濃度の上昇速度がしきい値以下であると判断するのが好ましい。
【0012】
さらに本発明において、前記空間(1)内の酸素濃度を計測する工程(S4)は、空間(1)中に設けられた酸素濃度計測手段(酸素センサ6)により計測され、該酸素濃度計測手段(6)は前記空間(1)の下方の領域(例えば、内部の高さ170mmのポット容器であれば、当該容器の上縁から75mm以下の領域:容器上方から44%以下の領域)であって、アルカリ性土壌(2)と二酸化炭素(30)を攪拌して混合する攪拌手段(例えば、攪拌翼7)と干渉しない領域に設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明によれば、上方に開口部を設けた空間(1:例えば、ミキサー車のミキサー、ポットミキサーのつぼ部分、容器)内に二酸化炭素(30)を供給すれば、二酸化炭素(30)は酸素や窒素よりも重いため、上方の開口部(1i)以外は閉鎖されている当該空間(1)内に存在する酸素や窒素は、投入された二酸化炭素(30)と置換されて、上方の開口部(1i)を介して当該空間(1)から排出される。その結果、当該空間(1)内における酸素濃度が減少する。
そして、アルカリ性土壌(2)と二酸化炭素(30)を攪拌して混合すれば、アルカリ性土壌(2)を中和する反応により二酸化炭素(30)が消費されるので、前記空間(1)における二酸化炭素量(30)が減少する。その結果、上方の開口部(1i)から、酸素と窒素の混合気体である空気が前記空間(1)内に流入するので、当該空間(1)内における酸素濃度が上昇し続ける。
【0014】
ここで、アルカリ性土壌(2)のpHが高い状態であれば、アルカリ性土壌(2)の中和反応は進行中であり、当該中和反応により二酸化炭素(30)が消費される速度も速い。そのため、酸素濃度の上昇速度も速い。
これに対して、アルカリ性土壌(2)のpHが低くなり、中性域に近づけば、アルカリ性土壌(2)の中和反応も反応速度も低下して、当該中和反応により二酸化炭素(30)が消費される速度も遅くなる。そのため、酸素濃度の上昇速度も遅くなる。
本発明では、酸素濃度の上昇速度を決定し、酸素濃度の上昇速度がしきい値以下であれば、アルカリ性土壌(2)の中和反応も反応速度も低下して、当該中和反応により二酸化炭素(30)が消費される速度も遅くなったと判断して、前記空間内の土壌は中和したと判断する。
【0015】
また、本発明では、酸素濃度の上昇速度がしきい値よりも速い場合には、アルカリ性土壌(2)の中和反応は進行中であり、当該中和反応により二酸化炭素(30)が急速に消費されている状態であると判断し、速度前記空間(1)内の土壌(2)は中和していないと判断する。
そのため、本発明によれば、前記空間(1)中に投入された土壌(2)が中和したか否かが容易且つ確実に判断される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態のブロック図である。
【図2】実施形態における酸素濃度と経過時間との関係を示す特性図である。
【図3】実施形態における累積二酸化炭素添加量と経過時間との関係を示す特性図である。
【図4】実施形態における土壌のpHと経過時間との関係を示す特性図である。
【図5】実施形態における土壌中和作業手順を示すフローチャートである。
【図6】実験例で用いられた実験装置を示すブロック図である。
【図7】実験例1〜3の手順を示すフローチャートである。
【図8】実験例1の結果を示す特性図である。
【図9】実験例2の結果を示す特性図である。
【図10】実験例3の結果を示す特性図である。
【図11】実験例4の結果を示す特性図である。
【図12】実験例5の結果を示す特性図である。
【図13】実験例6の結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るアルカリ性土壌の中和工法を施工するための設備を示している。
図1において、実施形態に係る工法を施工するための設備は、上端部1iが開口した容器1、COタンク3、CO供給管4、容器1へ供給するCO量を制御する流量制御弁5、酸素センサ6、攪拌翼7、攪拌翼駆動用モータ8及びコントロールユニット10を有している。
【0018】
ここで、上端部が開口した容器1は、つぼ型の容器であって、例えば、移動可能なミキサー車における回転式ドラム、或いは施工現場に設置した固定容器を適用することが出来る。その内部には、中和するべき土壌、即ちアルカリ性の土壌2が投入されている。
COタンク3に貯留される二酸化炭素(CO)30は、例えば、微粉状のドライアイス(固相のCO)であっても良いし、高圧で貯蔵された気相のCOであっても良い。
【0019】
容器1の底部近傍には攪拌翼7が配置され、その攪拌翼7は容器1の下方に設置した攪拌翼駆動用モータ8によって駆動される。
容器1内の下方にはCOタンク3からのCO供給管4が配置されており、CO供給管4の先端にはノズル4Nが接続されている。そして、CO供給管4の途中には、流量制御弁5が介装されている。
容器1内には酸素センサ6が設けられており、酸素センサ6は、入力信号ラインLiによって、容器1の外部に設置された制御手段(コントロールユニット)10と接続されている。
後述するように、酸素センサ6の容器1内における高さ方向位置としては、攪拌翼7が動作した場合でも攪拌翼7と干渉しない位置であって、しかも、出来る限り容器1の下方に設けることが好ましい。
【0020】
図示は省略するが、酸素センサ6に代えて、容器1内に空気吸引部(図示せず)を設け、空気吸引部に接続されたパイプ(図示せず)をガス分析装置(図示せず)に連通しても良い。
容器1内の空気が空気吸引部、パイプを介してガス分析装置に供給され、ガス分析装置によって容器1内の酸素濃度を計測することが出来る。
【0021】
コントロールユニット10は、制御信号ラインLoによって、流量制御弁5および攪拌翼駆動用モータ8と接続されている。
後述するように、コントロールユニット10は、流量制御弁5を開弁して、固体或いは気体のCOが容器1内に供給して、容器1内の酸素濃度を一旦降下せしめる様に構成されている。
そしてコントロールユニット10は、土壌の中和反応の進行と共に酸素濃度が再び上昇して、所定値(図2では12%)に達したならば、流量制御弁5を再び開弁して、容器1内に固体或いは気体のCOを供給する機能を有している。
【0022】
図2は、容器1内における酸素濃度と経過時間による変化或いは特性(特性線Lo)を示している。なお、図2で示す特性は、酸素センサ6の位置によって、異なる。
図2において、COタンク3(図1参照)からCO(例えば、微粉状のドライアイス:固相のCO)を容器1内に供給する以前の段階では、容器1内の酸素濃度は、大気中の酸素含有率である21%となっている(図2において、特性線LOが縦軸に接している点)。
【0023】
流量制御弁5を開弁して、容器1内に微粉状のドライアイス(固相のCO)を投入した後、ドライアイスが気化・膨張する。ここで、気相のCOは酸素や窒素よりも重いため、容器1内には気相のCOが残留して、空気(酸素、窒素)は開口部1iから容器1外に排出される。すなわち、気相のCOが空気(酸素、窒素)と置換され、容器1内の酸素濃度は、図2の例では6%まで低下する(図2の点P1)。ここで、「6%」という酸素濃度は、説明の便宜のために設定した数値であり、実際の酸素濃度下限値とは一致しない場合がある。
その後、容器1内のアルカリ性土壌2の中和反応により気相のCOが消費され、気相のCOが消費された分だけ開口部1iを介して空気(酸素、窒素)が容器1内に侵入する。その結果、微粉状のドライアイス投入直後には減少した(容器1内の)酸素濃度が徐々に増加する。
【0024】
酸素濃度が増加して、例えば12%に達したならば、流量制御弁5を開弁して、容器1内に微粉状のドライアイス(固相のCO)を投入する(図2の点P2)。
ここで、「12%」という酸素濃度は、説明の便宜のために設定した数値であり、実際にドライアイス(固相のCO)を再投入する酸素濃度とは一致しない場合がある。例えば、後述の実験例では、当該数値は18%が好適である、という結果が出ている。
【0025】
図2の点P2において、流量制御弁5を開弁して、容器1内に微粉状のドライアイス(固相のCO)を投入すれば、ドライアイスが気化・膨張して、開口部1iを介して空気(酸素、窒素)が容器1から排出される。そして、容器1内の酸素濃度は、図2の点P3まで低下する。
そして、容器1内のアルカリ性土壌2の中和反応により気相のCOが消費され、開口部1iを介して空気(酸素、窒素)が容器1内に侵入し、ドライアイス投入直後には減少した(容器1内の)酸素濃度が徐々に増加して、12%(図2の点P4)に到達する。
この際に、点P1〜P2間で中和反応が既に行なわれているので、点P3〜P4間における中和反応の速度が低下し、点P3〜P4間の酸素濃度上昇特性曲線における傾きは、点P1〜P2間の酸素濃度上昇特性曲線における傾きよりも、小さな値となる。換言すれば、点P3〜P4間の酸素濃度上昇速度は点P1〜P2間の酸素濃度上昇速度よりも遅くなる。
【0026】
以後、ドライアイスを投入する毎に、酸素濃度は低下するが、酸素濃度上昇速度は遅くなり、酸素濃度上昇特性曲線の傾きは小さくなる。そして、ドライアイスを投入する間隔は、徐々に長くなる。
最終的には、図2の特性曲線において、符号Eで示す領域では、ドライアイス投入のタイミングの酸素濃度(図2の例では12%)まで復帰しなくなる。
係る状態は、中和反応が行なわれず、COが消費されないことを意味している。従って、図2の特性曲線において、符号Eで示す状態になったならば、アルカリ性土壌が中和されたと判断する。
そして、符号Eで示す状態になったか否かについては、例えば、酸素濃度速度(酸素濃度上昇率:ΔO/ΔT)がしきい値以下であるか否かにより、判断することが出来る。
【0027】
図3は、アルカリ性土壌2に供給(投入)された二酸化炭素量の累積値を、特性線LCOとして示している。
図3における点P11は、図2における点P1に対応しており、容器1内に微粉状のドライアイス(固相のCO)を投入した直後の状態を示している。
そして、図3における点P12、P13、P14は、それぞれ、図2における点P2、P3、P4に対応している。
図3においても、容器1内のアルカリ性土壌2の中和反応が進行するに連れて、ドライアイス(固相のCO)を投入する間隔が長くなることが理解される。
【0028】
経過時間に対する土壌pHの変化を特性線Lphで示す図4において、横軸、すなわち経過時間軸は、図2、図3の経過時間軸と対応している。
図4では、ドライアイス(固相のCO)投入を開始した時点(図4における左側の領域)では、土壌のpHが減少して中性側に移行する速度が速いが、ドライアイス(固相のCO)を何回か投入すると(図4における右側の領域)、土壌のpHが減少して中性側に移行する速度が遅くなることが示されている。
【0029】
次に、主として図5に基づき、図1〜図4をも参照して、図示の実施形態に係るアルカリ性土壌中和工法の作業手順を説明する。
図5のステップS1において、中和処理をするべきアルカリ性土壌2を、例えばベルトコンベア等の公知手段によって、容器1の開放した上端部1iから容器1内に投入する。
容器1には、図示を省略したレベルセンサ、或いは質量計が設置されており、所定量のアルカリ性土壌2が投入されたなら、投入を停止する。あるいは、予め所定量に計量されたアルカリ性土壌が、ベルトコンベア等の公知手段により、容器1に投入される。
【0030】
ステップS2では、コントローラ10が流量制御弁5を開閉処理を行い、所定量のCO(例えば、微粉状のドライアイス:図1では符号30で示す)をCO供給管4のノズル4Nから、容器1内に供給する。ここで、微粉状のドライアイスは、安価で大量供給可能なCOの一例である。
微粉状のドライアイス(CO)30を容器1内に投入すると共に、容器1内の攪拌機7が作動し、容器1内のアルカリ性土壌2と微粉状のドライアイス(CO)とを攪拌、混合する(ステップS3)。
【0031】
アルカリ性土壌2と微粉状のドライアイス(CO)を攪拌、混合すると、二酸化炭素COがアルカリ性土壌2に含まれる水酸化カルシウムCa(OH)と反応して、炭酸カルシウムCaCOと水HOを生成する反応(中和反応)が行われ、以って、アルカリ性土壌2が中和される。
また、微粉状のドライアイス(CO)は、アルカリ性土壌2と攪拌、混合された際に、気化して体積が急激に増大する。
酸素、窒素、その混合物である空気は、気化したCOよりも比重が小さいため、微粉状のドライアイス(CO)が気化した際に、容器1の開放した上端部1iから容器1外に排出される。その結果、容器1内の空気中の酸素量は減少する(図2の特性線LOにおける開始点から点P1までの領域)。
【0032】
容器1内に設置した酸素センサ6は、容器1内の(より詳細には酸素センサ6の設置位置における)酸素濃度を検出する(ステップS4)。
酸素センサ6により検出された酸素濃度に関する情報は、入力信号ラインLiを経由して、コントロールユニット10に伝送される。
ステップS5では、コントロールユニット10は、微粉状のドライアイス(CO)を投入してから一定時間(ケース・バイ・ケースで設定される)が経過した際に、酸素センサ6で検出した酸素濃度が所定値(下限値)である6%以下になったか否かを判断する。上述したが、「6%」という所定値(酸素濃度下限値)は、説明の便宜のために設定した数値である。
【0033】
酸素濃度が6%以下になったならならば(ステップS5がYES:図2の点P1)、ステップS6に進む。
一方、微粉状のドライアイス(CO)を投入してから一定時間が経過しても、容器1内の酸素濃度が6%よりも高いのであれば(ステップS5がNO)、ステップS2に戻る。換言すれば、ステップS5が「NO」のループは、容器1内の酸素濃度が6%以下になるまで繰り返される。
【0034】
ステップS6では、コントロールユニット10は、流量制御弁5を閉鎖して、微粉状のドライアイス(CO)が容器1内に投入されない様に制御する(図2の点P1、図3の点P11)。
図2の点P1〜P2間の領域では、投入されたCOは上述した中和反応により消費され、COの消費に伴い空気が容器1内に侵入するので、酸素濃度(特性線Lo)は徐々に回復する。そして、所定値12%(点P2)まで回復する。
酸素濃度が所定値12%まで回復したならば、ステップS7に進む。
【0035】
図2の点P1〜P2間の領域では中和反応が進行しているため、図4で示す様に、土壌pHは徐々に低下する(図4参照)。
ここで、前述した様に、「12%」という所定値(酸素濃度)は、説明の便宜のために設定した数値であり、実際の施工に際して、微粉状のドライアイス(CO)を再投入する酸素濃度が「12%」に限定する訳ではない。
【0036】
ステップS7において、コントロールユニット10は、アルカリ性土壌が中和されたか否か、換言すれば、図2の特性曲線における符号Eで示す状態になったか否かを判断する。
図2の特性曲線における符号Eで示す状態になったか否かを判断するため、図示の実施形態では、ステップS7において、所定の間隔ΔTを空けて、2回に亘って酸素濃度を計測する。
そして、次のステップS8では、2回計測した酸素濃度の増加分ΔOを、所定の間隔ΔTで除した値(ΔO/ΔT)、すなわち酸素濃度の変化率(酸素濃度上昇速度)としきい値とを比較する。しきい値については、各地の土壌に関するpHその他のデータから、予め、個々の施工現場に関して定められているのが好ましい。
【0037】
ステップS8において、酸素濃度上昇速度(ΔO/ΔT)がしきい値以下であれば(ステップS8がYES)、ステップS9に進む。
ステップS9では、コントロールユニット10は、図2の特性曲線における符号Eで示す状態になった、すなわち、アルカリ性土壌2の中和が完了した(図2の点Pe1)と判断する。
そして、ステップS10に進み、土壌2を容器1から排出して中和作業は終了する。この時の土壌のpHは、図4においては、例えばpH8である。
【0038】
ステップS8において、酸素濃度上昇速度(ΔO/ΔT)がしきい値を上回っていれば(ステップS8がNO)、コントロールユニット10は、図2の特性曲線における符号Eで示す状態になっておらず、アルカリ性土壌2の中和が完了していないと判断する。そしてステップS11に進む。
ステップS11では、酸素濃度が12%以上であるか否かを判断する。
酸素濃度が12%以上になれば(ステップS11がYES)、図2における点P2、P4の状態になったと判断して、ステップS2まで戻り、ステップS2以降を繰り返す。
一方、酸素濃度が12%に満たなければ(ステップS11がNO)、ステップS7以降を繰り返す。
【0039】
ステップS8において、酸素濃度上昇速度(ΔO/ΔT)がしきい値を上回っているということは、例えば、図2における点P1〜P2の領域、或いは点P3〜P4の領域であることを意味している。
従って、酸素濃度が12%以上となれば、微粉状のドライアイス(CO)を再投入するべく、ステップS2に戻るのである。
【0040】
図示の実施形態では、例えば土壌がpH8であれば、「アルカリ性土壌の中和は完了」としている。
中和が完了した時点は、図2では点Pe1、図3では点Pe2、図4では点Pe3で、それぞれ示している。
【0041】
発明者は、図示の実施形態に関連して、以下で述べる様な実験を行った。
図6は、実験装置を示している。
図6において、実験装置は、容器11、酸素濃度計60、攪拌用ガラス棒70、スプーン80、ビーカー9ガラス電極式水素イオン濃度計65、計測兼分析装置(分析器)100を備えている。
【0042】
容器11は、内径123.3mm、内部の高さ170mmのポット容器を使用した。当該ポット容器の容積は、2030cm(2.03リットル:約2リットル)である。
酸素濃度計60はマルチ型ガス検知器であり、伝達手段L60によって分析器100に接続されている。
ここで、酸素濃度計60は、垂直方向位置を調節可能な態様で、容器11内壁部に設置されている。
【0043】
ここで、容器11中の土壌2のpHを直接計測することは困難である。
そのため実験装置では、容器11中の土壌2のpHを計測するに際しては、容器11中の土壌2の少量だけビーカー9に採取し、溶媒(例えば、水)50ccを加えて水溶液とせしめ、当該水溶液の水素イオン濃度を、pH計測手段であるガラス電極式水素イオン濃度計65を用いて計測する。
そして計測された水素イオン濃度に関する情報を、伝達手段L65経由で分析器100に送り、分析器100において、水溶液の水素イオン濃度から容器11中の土壌2におけるpH濃度を演算している。
【0044】
実験で使用される材料として、アルカリ性土壌2、微粉状ドライアイス30、溶媒として水を用いた。
アルカリ性土壌2は、含水率19%の中性の土壌に、水酸化カルシウム「Ca(OH)」を土壌の10質量%だけ含有させた模擬土壌である。
また、微粉状ドライアイス30は、アルカリ性土壌2に中和剤として添加する二酸化炭素として、用いられる。
【0045】
実験の条件を、下表1に示す。
表1

【0046】
表1で示すように、1回の試験で使用する土壌は200g、1回の試験で使用するドライアイスの量11.9g+α、微粉状ドライアイスの添加サイクル数は4回+β、pH測定回数及び酸素濃度測定回数は所定のインターバルで随時行なわれる。
ここで、試験サンプル用として作成した土壌200gに添加された水酸化カルシウム「Ca(OH)」について、中和に必要な微粉状ドライアイスの理論量は11.9gである。
微粉状ドライアイスの添加量における「+α」は、実験において理論量よりも多くの二酸化炭素を容器11内に投入しなければならない場合を、予め想定していることを意味している。
【0047】
また、微粉状ドライアイスの添加サイクル数における「+β」は、理論量の二酸化炭素量を1サイクルで添加される二酸化炭素量で除算した理論サイクル数(実験例では4サイクル)よりも、多いサイクル数に亘って、二酸化炭素を容器11内に投入しなければならない場合を、予め想定していることを意味している。
実験では、1サイクルで添加するドライアイス30(二酸化炭素)の量は、3gである。1サイクルで添加するドライアイス30は、中和に必要なドライアイス理論量(11.9g)未満、例えば1/2以下に設定する。
ここで、例えば、ドライアイス3gを容器11内に投入してから、酸素濃度が所定の数値まで復帰して、pHの測定が完了するまでを、1サイクルと表現している。
表1において、サイクル数を「4回+β」としたのは、200gの土壌について、中和に必要な二酸化炭素の理論値は11.9gであるため、1サイクルにおける添加ドライアイス3gであれば、4サイクルで理論量と概略等しい二酸化炭素が容器11内に投入されることによる。
【0048】
図7は、実験例1〜実験例3の手順を示している。
以下、実験例1〜実験例3の手順(試験手順)を図7に基づいて説明する。
図7において、先ず、ステップSt1で、実験前の土壌のpHを計測する。
ステップSt2では、容器11内にアルカリ性土壌2を200g投入する。
ステップSt3では、アルカリ性土壌2が200g投入された容器11内に、微粉状のドライアイス30を3g添加し、アルカリ性土壌2とドライアイス30とを混合する。
【0049】
ステップSt4では、酸素濃度計60により、容器11内部の酸素濃度を測定した。酸素濃度測定後、ステップSt5に進む。
ここで、ステップSt3におけるドライアイス30の投入は、酸素濃度計60で計測された酸素濃度の変化に基づいて、調節されている。
【0050】
ステップSt5では、土壌のpHを測定した。
土壌のpH測定に当たっては、容器11中のアルカリ性土壌2から5g(溶質)を採取し、ビーカー9中で中性の水(溶媒)50ccに溶解させて、水溶液を作成した。その際に、攪拌用ガラス棒70で攪拌しつつ、溶質を溶媒に溶解させている。
そして、ガラス電極式水素イオン濃度計65によって、当該水溶液の水素イオン濃度を計測し、当該計測値を分析器100にかけて用いて水溶液のpH値を演算し、アルカリ性土壌2のpHを決定した。
【0051】
アルカリ性土壌2のpHを測定するのには、約1分間が費やされた。
その様にして測定されたpHについて、以下において、「土壌のpH」、「pHの測定」、「pH測定」等と表記する場合がある。
発明者は、実験に際して分析器100を監視した。
ステップSt6では、土壌2のpHが所定範囲(たとえば、pHが8〜9の間)に収まるまで(ステップSt6がNOのループ)、ステップSt3〜St6を繰り返した。
ステップSt6において、土壌2のpHが所定範囲(たとえば、pHが8〜9の間)に収まったならば(ステップSt6がYES)、ステップSt7に進み、実験を終了する。
【0052】
発明者は、以下に述べる実施した実験例1〜実験例6を行なった。
以下、実験例1〜実験例6について説明する。
【0053】
[実験例1]
実験例1では、「1サイクル」は、ドライアイス投入後から酸素濃度が上限値である21%に復帰するまでとなっている。換言すれば、実験例1では、前サイクルにおいて酸素濃度が21%になった時点で、次のサイクルのドライアイス投入を行った。
上述した様に、最初に容器11に投入する土壌は200gであり、ドライアイスを1サイクルについて3gずつ投入した。
土壌のpHについては、サイクル毎に計測した。
なお、酸素濃度計は、容器11の上端(開口部)から75mm下方の位置とした。
実験例1の結果を、酸素濃度(実線)及びpH(点線)の時間経過特性として、図8で示す。
【0054】
図8において、最初の2つのサイクル(図8では左側の領域C1、C2)において、酸素濃度特性線(実線)の変化は少ない。これは、微粉状のドライアイスを投入した後、COが直ちに中和反応に用いられ、容器11内に存在する時間が極めて短かったことを意味している。
また図8において、酸素濃度の下限は約6%であった。そのため、酸素濃度計60を、容器11の上端(開口部11i)から75mm下方の位置とした場合には、酸素濃度の最小値を6%として、管理、制御することが好ましい。
【0055】
さらに、図8では、中和が確認(点Pe1、点Pe3)されるまで、およそ80分以上(1時間21分)が経過している。このことは、実験例1の態様では、実際の工事では中和のための時間が掛かり過ぎることを意味している。
図8において、土壌のpHが中性域に到達した後においては、図示は省略しているが、酸素濃度が6%程度まで減少した後、21%に戻るまで約22分程度が経過している。このことから、1サイクルで22分を費やした場合には、二酸化炭素の消費は行われておらず、中和反応が終了したと考えることが出来る。
【0056】
[実験例2]
実験例2における土壌の量、ドライアイスの投入量とその割合、pH測定、酸素濃度計の設置位置については、実験例1と同様である。
実験例1では、前サイクルにおいて酸素濃度が21%になった時点で、次のサイクルにおけるドライアイス投入を行った。
それに対して、実験例2では、前サイクルにおいて酸素濃度が20%まで復帰した時点で、次のサイクルのドライアイス投入を開始した。
実験例2の結果として、酸素濃度(実線)及びpH(点線)の時間経過特性を、図9で示す。
【0057】
図9において、作業上は、前サイクルにおいて酸素濃度が20%になった時点で、次のサイクルのドライアイス投入を行ったにも拘らず、C1〜C3サイクルでは酸素濃度(実線)は21%まで復帰している。これは、ドライアイス投入から昇華するまでのタイムラグにおいても中和反応が進行して、COが消費されたことに起因すると思われる。
図9において、二酸化炭素投入量に対するpH低下曲線は、図8で示す実験例1と概略等しい。このことから、ドライアイスの投入タイミング(制御における酸素濃度上限値)を酸素濃度20%にしても、酸素濃度21%にした場合に比較して、土壌中和(pH低下)の効率は、殆ど変わらないことが確認できた。
【0058】
一方、図9では、土壌の中和が確認されるまでの実験時間は、約50分程度(54分)である。実験例1(80分以上)に比較して、非常に短縮されている。
このことから、中和作業時間の短縮という観点から、ドライアイスの投入タイミング(制御における酸素濃度上限値)となる酸素濃度は、低い方が効率的であることが分った。
ここで、図9において、酸素濃度特性曲線において、酸素濃度が上昇する領域であって、酸素濃度18%以下の領域(図9において、酸素濃度=18.00%よりも下方の領域)に着目すると、図2で示す酸素濃度特性線と同様な傾向が確認出来る。このことから、ドライアイスの投入タイミング(制御における酸素濃度上限値)を酸素濃度18%にすることが好適であることが分る。
【0059】
[実験例3]
実験例3では、土壌の量、1サイクルにおけるドライアイスの投入量、pH測定、酸素濃度計の設置位置については、実験例1、実験例2と同様である。
しかし、実験例3では、酸素濃度計60の設置位置(垂直方向位置)を、実験の途中で変更している。
実験例3の結果(酸素濃度及びpHの時間経過特性)を、図10で示す。
図10における最初の2サイクル(C1、C2)では、酸素濃度計60は、容器11上端から10mm下方に設置されていた。
図10における3回目のサイクル(C3)以降は、酸素濃度計60の垂直方向位置を、容器11上端から35mm下方に変更した。
【0060】
図10において、最初の2サイクル(C1、C2)では、計測された酸素濃度(実線)が大きくは変化していない。しかし、図10において点線で示すpHの特性線を参照すれば明らかな様に、実験例3における最初の2サイクル(C1、C2)でも、pHは低下している。
このことから、最初の2サイクル(C1、C2)では、酸素濃度計60はドライアイス投入による酸素濃度の低下と、その後の中和反応に進行に伴う酸素濃度の上昇を検出していないことが分る。そして、容器11上端から10mm下方という、適当ではなかったことが判明した。
すなわち、酸素濃度計60の設置位置が上方である場合には、酸素濃度によって二酸化炭素添加量を管理、制御することは困難であることが分る。
【0061】
実験例3において、酸素濃度計を容器11上端から35mm下方に設置した後は、酸素濃度計60の計測結果が変化している。
このことは、微粉状のドライアイス投入による酸素濃度の低下と、中和反応の進行によるCOの消費による酸素濃度の上昇が、酸素濃度計60によって、計測されていることを意味しており、酸素濃度計60の位置が下方となり、中和処理するべき土壌に近接するほど、計測精度が向上することが理解される。
【0062】
[実験例4]
実験例1〜3では、ドライアイスを複数サイクルに分けて投入した。
それに対して、実験例4では、最初の1サイクルで、土壌の中和に必要なドライアイスの理論量を全量添加した。
また、実験例4において、土壌の量は実験例1〜3の1/2(100g)であり、土壌の中和に必要なドライアイスの理論量も、実験例1〜3の1/2(9g)である。
なお、実験例4において、酸素濃度計60は、容器上端から75mm下方に設置した。
実験例4の結果として、酸素濃度(実線)及びpH(点線)の時間経過特性を、図11で示す。
【0063】
図11において、ドライアイス投入直後に酸素濃度計の計測値が0%近傍まで低下した。
しかし、図11を図8〜図10と比較すれば明らかな様に、実験例4における土壌のpHは、実験例1〜3に比較すると低下しておらず、アルカリ性土壌の中和効率が悪化していることが理解される。
図10において、実験例4における最終的なpHは10程度であり、土壌は強いアルカリ性を示している。
【0064】
係る実験例4において、土壌のpHが低下しないのは、ドライアイスを当初に一度に投入すると、土壌の中和反応に使用されないCO(COの損失)が多くなり、投入されたCOが中和反応に有効に使用されていないためであると推定される。
換言すれば、土壌を効率的に中和するためには、ドライアイス(CO)は複数回に亘って(或いは断続的に)付加するべきことが、実験例4の結果から分った。
【0065】
[実験例5]
実験例5では、容器11内に土壌を投入せず、ドライアイスのみを投入して、酸素濃度の変化を計測した。
投入したドライアイスは3gであり、酸素濃度計60は容器11上端から75mm下方に設置した。
実験例4の結果として、酸素濃度(実線)の時間経過特性を、図12で示す。
【0066】
図12において、ドライアイス投入直後、気化したCOは、酸素と窒素からなる空気よりも重いため容器11内にとどまり、気化したCOによって、酸素及び窒素(空気)が容器11の上端開口部から容器11外に押し出される。そのため、酸素濃度が急激に低下する。
その後、時間の経過と共に、気化したCOは容器11外の空気と置換され、酸素濃度が徐々に上昇する。
【0067】
[実験例6]
実験例6では、アルカリ性に調整された土壌のみを容器11内に投入し、空気中の二酸化炭素により中和されるか否かを確認した。
アルカリ性に調整された土壌は容器11内に200g投入され、土壌のpH測定は、約10分間に1回の割合で行なわれた。
【0068】
実験例6の結果として、土壌のpHの変化特性(点線)を、図13で示す。
図13において、土壌のpHは殆ど低下しておらず、pH12程度の強アルカリ性を示している。
実験例6から、空気中の二酸化炭素のみでは、土壌の中和は困難であることが理解される。
【0069】
図1〜図5を参照して実施形態を説明した際には、COを投入する酸素濃度の数値(酸素濃度上限値)を12%と仮定して説明した。
しかし、実験例1〜6の結果から、約2リットルの容器(樹脂性ボトル:内径123.3mm、内部の高さ170mm)11を用いて、容器の上縁から75mmの位置に酸素濃度計60を設置して土壌の中和の制御、管理を行う場合には、酸素濃度上限値を18%、下限値を6%にすると、良好な結果が得られることが分った。
また、1サイクルに22分以上を費やしたならば、中和が完了していると考えられることが分った。
【0070】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
同様に、本発明の技術的範囲は、実験例1〜6に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1・・・容器
2・・・土壌/中和対象のアルカリ性土壌
3・・・COタンク
4・・・CO供給管
5・・・流量制御弁
6・・・酸素濃度センサ
7・・・攪拌翼
8・・・攪拌翼駆動モータ
10・・・制御手段/コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口部を設けた空間内にアルカリ性土壌を投入する工程と、アルカリ性土壌を中和するための理論量未満の二酸化炭素を前記空間内に供給する工程と、アルカリ性土壌と二酸化炭素を攪拌して混合する工程と、前記空間内の酸素濃度を計測する工程と、酸素濃度が所定の下限値まで低下してから所定の上限値に到達するまでの酸素濃度の上昇速度を決定する工程と、酸素濃度の上昇速度がしきい値よりも速い場合には前記空間内の土壌は中和していないと判断して二酸化炭素を前記空間内に供給する工程と、酸素濃度の上昇速度がしきい値以下であれば前記空間内の土壌は中和したと判断して当該土壌を前記空間から排出する工程を有することを特徴とするアルカリ性土壌中和工法。
【請求項2】
前記酸素濃度の上昇率を決定する工程では、複数の時点で酸素濃度を計測し、その計測結果と計測タイミングを記録し、酸素濃度の上昇分を計測タイミングの間隔で除することにより、前記酸素濃度の上昇速度を決定する請求項1のアルカリ性土壌中和工法。
【請求項3】
前記酸素濃度の上昇率を決定する工程では、酸素濃度が所定の下限値まで低下してから所定の上限値に到達するまでの時間を計測し、計測された時間が復帰時間しきい値よりも短いと酸素濃度の上昇速度がしきい値よりも速いと判断し、計測された時間が復帰時間しきい値よりも長いと酸素濃度の上昇速度がしきい値以下であると判断する請求項1のアルカリ性土壌中和工法。
【請求項4】
前記空間内の酸素濃度を計測する工程は、空間中に設けられた酸素濃度計測手段により計測され、該酸素濃度計測手段は前記空間の下方の領域であって、アルカリ性土壌と二酸化炭素を攪拌して混合する攪拌手段と干渉しない領域に設けられている請求項1〜3の何れか1項のアルカリ性土壌中和工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−212621(P2011−212621A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84832(P2010−84832)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】