説明

アルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法、精製装置及びアルカリ金属炭酸塩溶液

【課題】アルカリ金属炭酸塩をロスすることなく、且つ低コストでアルカリ金属炭酸塩に含有されるカルシウム化合物を除去することが可能なアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法、精製装置及びこれらにより精製されたアルカリ金属炭酸塩溶液を提供する。
【解決手段】カルシウム化合物等の不純物を含む炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩を例えば30℃加温された水に溶解してアルカリ金属炭酸塩の濃度が15重量%以上(例えば30重量%)のアルカリ金属炭酸塩溶液を調製する(ステップS1)。この水溶液を保持して不純物を析出させ(ステップS2)、この不純物をフィルター等で分離することによりアルカリ金属炭酸塩溶液を精製する(ステップS3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅メッキ材や木材保存剤等の原料となる塩基性炭酸銅の製造等に用いられる炭酸ナトリウムをはじめとするアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法、精製装置及びこの方法により精製されたアルカリ金属炭酸塩溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、塩基性炭酸銅(以下、炭酸銅という)は、銅メッキ材料の補給源である酸化銅や木材保存剤等の原料として工業的に広く利用されている。炭酸銅は、例えば塩化第二銅等の無機銅塩の水溶液と炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩の水溶液とを反応させることによって製造される。
【0003】
アルカリ金属炭酸塩を使って炭酸銅を製造する際に、例えばカルシウムやマグネシウムの化合物が不純物としてアルカリ金属炭酸塩に含有されていると、そのほぼ全量が炭酸銅に混入してしまうことが分かっている。これらの不純物が混入した炭酸銅を銅メッキ材料として使用すると、メッキ浴中で不純物が濃縮され、被メッキ材料上に析出してメッキの仕上がりに悪影響を及ぼしてしまう。また、木材保存剤の原料として使用すると、木材保存剤の製造プロセス中でこれらの不純物が不溶解残渣として析出し、製品の濾過工程等の負荷を大きくしてしまう。
【0004】
例えば、工業用の炭酸ナトリウム粉末中には、数十〜100重量ppm以上のカルシウムやマグネシウムの化合物が含まれており、これらの含有量は製造方法や製造ロット等の違いによっても変動するため、炭酸銅の原料となるアルカリ金属炭酸塩から、これらの不純物を安定的に除去する技術が求められていた。
【0005】
このような要請に対して、特許文献1には炭酸ナトリウム水溶液に二酸化炭素を吹き込んで炭酸水素ナトリウムやセスキ炭酸ナトリウムを固体として析出させ、この固体表面に水溶液中のカルシウムイオンを吸着させて不純物を分離する技術が記載されている。しかしながら、この手法では不純物を分離するために炭酸銅等の製造に必要な原料の一部が消費されてしまうため経済的に効率が悪い。
【特許文献1】特公平6−21033号公報:第2頁右第25行目〜第47行目
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、本発明の目的はアルカリ金属炭酸塩をロスすることなく、低コスト且つ簡便にアルカリ金属炭酸塩に含有されるカルシウム化合物を除去することが可能なアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法、精製装置及びこの方法により精製されたアルカリ金属炭酸塩溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法は、カルシウム化合物からなる不純物を含むアルカリ金属炭酸塩に関して、アルカリ金属炭酸塩の濃度が15重量%以上のアルカリ金属炭酸塩溶液を調製する調製工程と、
アルカリ金属炭酸塩が析出しないように当該アルカリ金属炭酸塩溶液を一定時間保持して、アルカリ金属炭酸塩溶液中に溶解していた不純物を析出させる析出工程と、
析出した不純物とアルカリ金属炭酸塩溶液とを固液分離する固液分離工程と、を含むことを特徴とする。
この精製方法には、析出した不純物を分離したアルカリ金属炭酸塩溶液を水で希釈して、予め決められた濃度のアルカリ金属炭酸塩溶液を製造する希釈工程を更に含むとよい。あるいは、析出工程において不純物を析出させてからアルカリ金属炭酸塩溶液を水で希釈し(希釈工程)、その後、析出した不純物とアルカリ金属炭酸塩溶液とを固液分離する(固液分離工程)ように構成してもよい。
【0008】
前記調製工程におけるアルカリ金属炭酸塩溶液の濃度は、アルカリ金属炭酸塩の飽和溶解度に対して60%以上、飽和溶解度未満の量のアルカリ金属炭酸塩が溶解している濃度であることが好適である。また本精製方法は、前記アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムである場合に適している。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法によれば、アルカリ金属炭酸塩溶液中に溶解している不純物であるカルシウムの化合物を析出させてこれを分離除去することができる。このため、水溶液中のアルカリ金属炭酸塩を固体として析出させ、この析出した固体にカルシウムイオン等の不純物を吸着させる従来の手法と異なり、製品となるべきアルカリ金属炭酸塩の損失が無いので、経済的に効率よくアルカリ金属炭酸塩溶液の精製をすることができる。また、本精製方法においては、アルカリ金属炭酸塩溶液の温度管理をしながら一定時間保持するだけで不純物を析出させることができるので、例えばこの水溶液を他の物質と反応させたりする等の特別な工程が必要ない。このため、当該方法を実施するため装置構成やその操作方法がシンプルになり、低コスト且つ簡便にアルカリ金属炭酸塩溶液の精製をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法の実施の形態の一例として、不純物としてカルシウムが含有される炭酸ナトリウムの精製方法について図1を参照しながら説明する。図1は、炭酸ナトリウムを精製する処理に関するフローチャートである。本実施の形態では、例えば工業用に一般に販売されている炭酸ナトリウム粉末(ソーダ灰)を原料として、これに精製処理を施し、例えば銅メッキ材料となる炭酸銅の製造に用いられる所定濃度の炭酸ナトリウム水溶液を精製する場合について説明する。工業用の炭酸ナトリウム粉末には、製造の過程等において炭酸カルシウム等の不純物が例えば数十〜100重量ppm程度含まれている。「精製」とは、このような炭酸ナトリウムから不純物を除去して、不純物を含まない、または不純物の含有量が少ない高純度の炭酸ナトリウムを得るための処理をいう。
【0011】
まず、図1に示すように、不純物であるカルシウムを例えば210重量ppm含む工業用の炭酸ナトリウム粉末を、例えば30℃に加温された水に溶解させて、例えば炭酸ナトリウム濃度が30重量%の炭酸ナトリウム水溶液を調製する(ステップS1(調製工程))。このとき、カルシウムの濃度は原料とした炭酸ナトリウム粉末と、この水溶液の濃度とによって決まり、本実施の形態では63重量ppmとなっている。通常、炭酸銅の製造に用いられる炭酸ナトリウム水溶液は、炭酸銅を生成する際の炭酸ナトリウムと塩化第二銅等との反応を安定的に進行させて均一な粒径分布の炭酸銅を得るために、濃度が例えば10重量%程度の水溶液として出荷される。これに対して本ステップでは、製品として出荷される濃度の3倍程度となるように、高濃度の水溶液に調製されている。なお、100g、30℃の水に対する飽和溶解度は、炭酸ナトリウムで約31.2重量%、カルシウム(例えば炭酸カルシウム)で約0.7重量%であるので、調製した炭酸ナトリウム水溶液に含まれるいずれの物質も飽和状態とはなっていない。
【0012】
次いで、調製工程で得られた炭酸ナトリウム水溶液を例えば調製時と同じ温度に加温したまま例えば1日保持すると、この水溶液からカルシウム化合物の固体が析出する(ステップS2(析出工程))。この工程では、調製した炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウムは飽和状態となっていないにも係らず固体として析出させることができる。これは、炭酸ナトリウム由来の炭酸イオンやその他の不純物の濃度を高濃度とすることにより、炭酸カルシウムを初めとするカルシウム化合物が生成される方向に水溶液の平衡状態を保つことができているためであると考えられる。
【0013】
これに対して従来は、製品として出荷される10重量%程度の炭酸ナトリウム水溶液を調製してこれを保持しても、カルシウム化合物を析出させる反応の反応速度が遅いために十分な量を処理することができず工業的なプロセスへの適用が困難であった。このような問題に対する鋭意研究の結果、発明者は原料の炭酸ナトリウム粉末を水に高濃度で溶解させることによりカルシウム化合物を比較的短時間で析出させることができることを見出した。一般に、溶液中に溶解している物質の反応速度は反応する物質の濃度に比例して速くなる。そこで、炭酸ナトリウム水溶液が高濃度となるように調製することにより、例えば水溶液に溶解している炭酸イオンやカルシウムの濃度も高くなり、この結果炭酸カルシウム等のカルシウム化合物を析出させる反応の反応速度を上昇させることが可能になると考えられる。
【0014】
また、炭酸ナトリウム水溶液中に溶解しているカルシウムが析出するか否かの平衡関係は、その水溶液中の炭酸イオンやカルシウム等の濃度によって決定されるので、これらの濃度が高い程、カルシウム化合物を析出させる量を増やすことができると考えられる。言い替えると、炭酸ナトリウム水溶液を高濃度に調製する程、より多くのカルシウムがカルシウム化合物として析出するため、カルシウムが除去される割合も高くなるものと考えられる。
【0015】
ここで、工業用の炭酸ナトリウム粉末に含まれるカルシウムの量は、その製造元やその製造ロット毎等に変化するため、炭酸ナトリウムを精製する各工程では制御することができない。このため、カルシウムが高濃度で存在する炭酸ナトリウム水溶液を調製するためには、できるだけ多量の炭酸ナトリウム粉末を水に溶解させて、一緒に溶解されるカルシウムの濃度も高濃度とする調製が必要となる。しかしながら、既述したように30℃の水に対する炭酸ナトリウム粉末の溶解度は約31.2重量%であるため、飽和溶解度以上の炭酸ナトリウム粉末を溶解させると製品である炭酸ナトリウムが不純物と一緒に析出してしまい経済的なロスにつながってしまう。
【0016】
そこで、本実施の形態では炭酸ナトリウムが析出せず、かつ、できるだけカルシウム濃度を高くできるように、炭酸ナトリウムの溶解量が飽和溶解度に達しない程度でできる限り高濃度の炭酸ナトリウム水溶液となるように調製している。このような理由により、調製工程においては炭酸ナトリウムの飽和溶液の濃度約31.2重量%未満であって、飽和溶解度の60%以上の溶解度(約18.7重量%以上)となるように、炭酸ナトリウム水溶液の濃度を例えば30重量%とする調製をおこなっている。このように調製された炭酸ナトリウム水溶液を例えば1日保持すると、カルシウム濃度を数十重量ppmから10重量ppm前後にまで低下させることができる。
【0017】
析出工程にてカルシウムを固体として析出させた炭酸ナトリウム水溶液は、例えばフィルター等によりカルシウム化合物が除去される(ステップS3(固液分離工程))。この固液分離工程において、炭酸ナトリウム水溶液中に混在していたカルシウム化合物が分離されることとなる。
【0018】
析出した不純物が分離された炭酸ナトリウム水溶液は、使用される例えば10重量%の濃度にまで、カルシウム分を含んでいないイオン交換水等で希釈される(ステップS4(希釈工程))。希釈された炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウムの濃度は2〜3重量ppm程度にまで低下する。
【0019】
次いで希釈された炭酸ナトリウム水溶液は、イオン交換樹脂を充填した吸着塔等に導入されてイオン交換樹脂と接触し、析出工程では析出せずに水溶液中に溶解したままのカルシウムイオンが吸着除去される(ステップS5(吸着工程))。吸着工程で使用するイオン交換樹脂は、例えばアンバーライト(登録商標)IRC748等のようにナトリウムイオンに比べてカルシウムイオンやマグネシウムイオンを選択的に吸着するタイプのものを使用するとよい。イオン交換樹脂と接触させることにより、炭酸ナトリウム水溶液中に溶解しているカルシウムイオンの濃度を例えば0.1重量ppm以下まで低下させることができる。
【0020】
次に、上述のフローに基づいて炭酸ナトリウムを精製する精製装置について説明する。図2は、この精製装置の構成例を示している。当該装置は、水に粉末の炭酸ナトリウムを溶解させて高濃度の炭酸ナトリウム水溶液を調製するための溶解槽10と、炭酸ナトリウム水溶液からカルシウム化合物を固体として析出させるための滞留槽20と、析出したカルシウム化合物を分離して除去するためのフィルター30と、カルシウム化合物が分離された炭酸ナトリウム水溶液を希釈するための希釈槽40と、希釈後の炭酸ナトリウム水溶液に溶解しているカルシウムを吸着除去するための樹脂塔50とから構成されている。
【0021】
詳細には、溶解槽10は、原水供給弁11の介設された原水供給管11aを介して図示しない原水供給タンクと接続されている。原水供給弁11は、所定量の原料水を溶解槽10に連続的に供給する役割を果たす。また、溶解槽10の上方には、炭酸ナトリウム粉末を貯蔵したホッパー9が設置されている。溶解槽10は、図示しない計量器を備えており、所定量の炭酸ナトリウム粉末を連続的、または間歇的に溶解槽10へ供給する供給手段としての役割を果たす。
【0022】
更に、溶解槽10には、溶解槽10内の炭酸ナトリウム水溶液を撹拌するミキサー12と、炭酸ナトリウム水溶液を加温する蒸気を供給するための蒸気供給管13aとが設置されている。また、溶解槽10の底部には、ボトム配管14aが取り付けられており、ボトムポンプ14によって炭酸ナトリウム水溶液を溶解槽10から抜き出すことができるようになっている。ボトム配管14aには、図示しない温度計が設置されており、この温度計は温度コントローラ15に接続されている。温度コントローラ15は、蒸気供給管13aに介設された蒸気供給弁13に接続されている。温度コントローラ15は、ボトム配管14aを流れる炭酸ナトリウム水溶液の温度に応じて蒸気供給弁13を開閉し、蒸気の供給量を増減することによって溶解槽10内の溶液の温度が一定となるように制御する役割を有している。
【0023】
ボトム配管14aは、戻し配管16と抜き出し配管17とに分岐しており、戻し配管16はボトム配管14aを通流する炭酸ナトリウム水溶液の一部を溶解槽10に戻す役割を果たす。また、抜き出し配管17は、滞留槽20と接続されており、溶解槽10へ戻されなかった炭酸ナトリウム水溶液を滞留槽20へ抜き出す役割を果たす。
【0024】
次に、滞留槽20の詳細について説明する。滞留槽20は、溶解槽10から受け入れた炭酸ナトリウム水溶液の滞留時間が例えば6時間となるような容量を有するベッセルであって、この溶液中に溶解している炭酸ナトリウムを固体として析出させる析出槽としての役割を果たす。滞留槽20は、ミキサー21とヒーター22とを備えており、滞留槽20内の炭酸ナトリウム水溶液を均一に加温することができるようになっている。ヒーター22は図示しない温度コントローラを介して、滞留槽20に設置された図示しない温度計と接続されており、ヒーター22の出力を調整することにより滞留槽20内の炭酸ナトリウム水溶液の温度を一定に保つことができるようになっている。
【0025】
滞留槽20の底部には、ボトム配管23aが取り付けられており、カルシウム化合物を析出させた炭酸ナトリウム水溶液をボトムポンプ23によって滞留槽20から抜き出すことができるようになっている。ボトムポンプ23の吐出側のボトム配管23aには、例えばフィルターカートリッジ等に収められたフィルター30が介設されている。フィルター30は、滞留槽20から抜き出された炭酸ナトリウム水溶液からカルシウム化合物を濾過して分離する固液分離手段としての役割を果たす。固液分離手段は、例示したフィルター30を利用する場合に限定されず、例えば沈殿槽や液体サイクロン等を利用してもよい。ボトム配管23aは、フィルター30の出口側で戻し配管24と抜き出し配管25とに分岐しており、戻し配管24はフィルター30で濾過された炭酸ナトリウム水溶液の一部を滞留槽20に戻す役割を果たし、抜き出し配管25は残りの水溶液を希釈槽40へ抜き出す役割を果たす。
【0026】
次いで希釈槽40の詳細について説明する。希釈槽40は、フィルター30でカルシウム化合物が濾過された炭酸ナトリウム水溶液を滞留槽20から受け入れて、これを水で所定の濃度、例えば製品として出荷する濃度にまで希釈するためのベッセルである。希釈槽40は、希釈水供給弁41の介設された希釈水供給管41aを介して図示しない希釈水供給タンクと接続されている。希釈水供給弁41は、カルシウム分等の不純物を含まないイオン交換水等の希釈水を希釈槽40に連続的に供給する役割を果たす。希釈水供給弁41は、例えば図示しない流量コントローラを介して図示しないオンライン分析計と接続されており、希釈された炭酸ナトリウム水溶液の濃度をオンライン分析計により測定した結果に応じて希釈水の供給量を増減することができるようになっている。希釈槽40には、更にミキサー42が設置されており、炭酸ナトリウム水溶液と希釈水とを撹拌混合する役割を果たす。
【0027】
希釈槽40の底部には、ボトム配管43aが取り付けられており、所定の濃度に希釈された炭酸ナトリウム水溶液をボトムポンプ43によって希釈槽40から抜き出すことができるようになっている。ボトム配管43aは、戻し配管44と抜き出し配管45とに分岐しており、戻し配管44は希釈された炭酸ナトリウム水溶液の一部を希釈槽40に戻す役割を果たし、抜き出し配管45は残りの水溶液を樹脂塔50へ抜き出す役割を果たす。
【0028】
樹脂塔50は、滞留槽20で析出せずに炭酸ナトリウム水溶液中に溶解しているカルシウムを吸着除去する吸着塔としての機能を有している。樹脂塔50は、例えば球状のイオン交換樹脂が充填された充填塔である。樹脂塔50は、炭酸ナトリウム水溶液に溶解しているカルシウムを製品仕様の濃度にまで低下させるのに十分な接触時間を確保できるような容量を有している。樹脂塔50の底部には抜き出し配管51が接続されており、図示しない製品タンクへ精製された炭酸ナトリウム水溶液を抜き出す役割を果たす。
【0029】
次に、本実施の形態に係る作用について説明する。ホッパー9より所定の供給速度で供給された炭酸ナトリウム粉末は、原水供給管11aから供給された所定量の原水と混合されて、溶解槽10内でミキサー12によって撹拌混合され、例えば製品の3倍程度の濃度(30重量%)の炭酸ナトリウム水溶液に調製される(図1のステップS1に相当する)。このとき、炭酸ナトリウム水溶液中に溶解しているカルシウムの濃度は例えば数十重量ppm程度となっている。また、炭酸ナトリウム水溶液は、蒸気供給管13aから供給される蒸気と接触して例えば30℃に加温されている。調製された炭酸ナトリウム水溶液は滞留槽20へ送液される。
【0030】
滞留槽20へ送液された炭酸ナトリウム水溶液は、ミキサー21による撹拌とヒーター22による加温とを受けながら平均滞留時間である約6時間保持される。この保持されている期間中に、炭酸ナトリウム水溶液からは不純物であるカルシウム化合物が析出し、溶解しているカルシウムの濃度が10重量ppm前後にまで低下する(図1のステップS2に相当する)。カルシウム化合物が析出した炭酸ナトリウム水溶液は、フィルター30で濾過され、カルシウム化合物が分離されて希釈槽40へ送液される(同、ステップS3に相当する)。
【0031】
希釈槽40へ送液された炭酸ナトリウム水溶液は、ミキサー42により撹拌されながら希釈水供給管41aより供給される希釈水と混合され、製品として出荷される濃度(例えば10重量%)の炭酸ナトリウム水溶液となるまで希釈される(図1のステップS4に相当する)。このとき、水溶液中には、例えば2〜3重量ppm程度のカルシウムが溶解しており、この状態で樹脂塔50へ送液される。
【0032】
樹脂塔50へ送液された炭酸ナトリウム水溶液は、塔内でイオン交換樹脂と接触して、水溶液中に溶解しているカルシウムイオンが選択的に吸着除去される(図1のステップS5に相当する)。以上の各処理を経て、炭酸ナトリウム水溶液は、溶解しているカルシウムの濃度が例えば0.1重量ppm以下の状態にまで精製され、製品タンクに送液される。
【0033】
以上に説明した本実施の形態によれば、炭酸ナトリウム水溶液を高濃度に調製して保持するだけで、この水溶液からカルシウムを固体として析出させることができる。他の物質等との特別な反応操作を行うことなく不純物を固体として析出させることができるので、簡単な装置構成で炭酸ナトリウム水溶液を精製することが可能となる。この結果、炭酸ナトリウムの精製装置の装置構成が簡素になり、運転操作の内容も簡便になって設備コストや運転コストを低減することができる。
【0034】
また、炭酸ナトリウム水溶液の濃度を15重量%以上の高濃度にすることによって不純物が析出する速度が速くなり、水溶液の濃度が低い場合に比べて単位時間に精製可能な炭酸ナトリウム水溶液の処理量を増やすことができる。更に、炭酸ナトリウム水溶液の濃度を高濃度にすることによって不純物を除去可能な割合も向上させることができる。このとき、炭酸ナトリウム水溶液の濃度を、炭酸ナトリウムの飽和溶解度に対して60%以上、飽和溶解度未満の量の炭酸ナトリウムが溶解している濃度とすることにより、不純物を析出させる速度が最も速くなると共に、製品である炭酸ナトリウムが不純物と共に析出して固液分離工程にて除去されてしまわないような最も効率の良い条件とすることができる。
【0035】
更に、析出した不純物が分離された後で、炭酸ナトリウム水溶液中に溶解しているカルシウムをイオン交換樹脂と接触させて吸着除去することにより、この水溶液中の不純物の濃度を更に低減することができる。この結果、例えば不純物の濃度が0.1重量ppm以下となるような高純度にまで炭酸ナトリウム水溶液を精製することができる。
【0036】
なお、本発明により精製することが可能なアルカリ金属炭酸塩は、実施の形態に例示した炭酸ナトリウムに限定されない。例えばカリウム塩類等の原料となる炭酸カリウムの精製についても本発明は適用することができる。また、原料となるソーダ灰にマグネシウムからなる不純物が含まれる場合であってもイオン交換樹脂と接触させることにより炭酸ナトリウム水溶液からこの不純物を除去することができる。
【0037】
また、調製工程にて高濃度の炭酸ナトリウム水溶液を調製する手法も、実施の形態にて例示したものに限定されない。例えば不純物を含む低濃度の炭酸ナトリウム水溶液を購入し、水分を蒸発させて水溶液を濃縮することによって高濃度に調製してもよい。
【0038】
また、実施の形態においては、析出したカルシウム化合物が分離された炭酸ナトリウム水溶液を希釈工程にて希釈してから、この水溶液中に溶解しているカルシウムを吸着工程にて吸着除去しているが、希釈工程や吸着工程の有無や、これらの工程の順番は例示したものに限定されない。例えば、析出した不純物を固液分離工程にて分離した後、その炭酸ナトリウム水溶液をそのまま出荷してもよいし、希釈工程にて希釈だけして出荷してもよい。また、固液分離工程の直後に吸着工程にて溶解している不純物を吸着除去し、そのままその炭酸ナトリウム水溶液を出荷してもよいし、吸着工程の後に希釈工程を持ってきてもよい。
【0039】
この他に、固液分離工程と希釈工程との順番を入れ替えて、不純物の析出したアルカリ金属炭酸塩溶液を水で希釈してから、析出した不純物を固液分離工程にて分離するように構成してもよく、この後、更に吸着工程にて溶解している不純物を吸着除去してもよい。一旦析出した不純物は再溶解しないことが分かっているからである。
【実施例】
【0040】
(実験1)
カルシウム化合物を析出する反応に対する炭酸ナトリウム水溶液の濃度の影響について評価を行った。
(実施例1−1)
炭酸ナトリウム粉末(工業用のソーダ灰:カルシウム化合物の含有量210重量ppm)をイオン交換水に溶解させて、濃度が30重量%の炭酸ナトリウム水溶液を調製する。これらの炭酸ナトリウム水溶液を撹拌しながら室温で1時間保持し、その全量を吸引濾過して得られた母液中のカルシウム濃度を測定した。次いで、吸引濾過を行った後の炭酸ナトリウム水溶液を撹拌せずに室温で保持し、計1日経過後に再び全量を吸引濾過して得られた母液中のカルシウム濃度を測定した。次いで、この吸引濾過後の炭酸ナトリウム水溶液を撹拌せずに室温で保持し、計4日経過後に全量を吸引濾過して得られた母液中のカルシウム濃度を測定した。また、所定のタイミングにおいて炭酸ナトリウム水溶液の様子を目視にて観察した。濾過に際しては、保持粒子径0.5μmのガラスフィルターを使用した。実験の結果を(表1)に示す。また、実験の結果得られた炭酸ナトリウム水溶液を、例えば製品として出荷する10重量%の水溶液に希釈した場合のカルシウム濃度の換算値を(表2)に示す。なお、(表1)、(表2)には、実施例1−2〜1−3、比較例1−1の結果も併せて示してある。
【0041】
(表1)
炭酸ナトリウム水溶液の濃度の違いによるカルシウム濃度(重量ppm)の経時変化

【0042】
(表2)
(表1)に示した結果を10重量%の炭酸ナトリウム水溶液に換算した値(カルシウム濃度:重量ppm)

【0043】
(実施例1−2、1−3)
炭酸ナトリウム水溶液の濃度を夫々20、15重量%とした他は、実施例1−1と同様の条件にて実験を行った。
(比較例1−1)
炭酸ナトリウム水溶液の濃度を10重量%とした他は、実施例1−1と同様の条件にて実験を行った。
【0044】
(実験1の考察)
実験中の目視観察の結果によれば、炭酸ナトリウム水溶液を調製して1時間経過後、実施例1−1〜実施例1−3、比較例1−1の各水溶液はうっすらと白い濁りが見られた。また、炭酸ナトリウム水溶液の濃度が高い程、濁りの程度が大きかった。1時間経過した時点で各炭酸ナトリウム水溶液の吸引濾過を行うと、濁りの無い清澄な水溶液が得られた。次いで、保持を開始してから1日が経過した時点で観察を行うと、炭酸ナトリウム水溶液濃度が15重量%(実施例1−3)、20重量%(実施例1−2)、30重量%(実施例1−1)の水溶液はうっすらと白く濁り、白い沈殿物が観察された。一方、10重量%(比較例1−1)の水溶液にはこのような濁りは見られなかった。これらの炭酸ナトリウム水溶液に対して再び吸引濾過を行うと、濁りの無い清澄な水溶液が得られた。保持を開始してから4日経過した時点で観察を行ったときには、いずれの濃度の炭酸ナトリウム水溶液についても白い濁りや沈殿物は観察されなかった。
【0045】
(表1)、(表2)に示したカルシウム濃度の経時変化をグラフにプロットした結果を図3(a)、図3(b)に夫々示す。図3(a)、図3(b)の横軸は経過時間を示しており、縦軸は炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウム濃度を示している。炭酸ナトリウム水溶液の濃度が30重量%の結果をバツ印(×)でプロットし、その傾向線を実線で示してある。同じく20重量%の結果を三角(△)のプロットと一点鎖線の傾向線とで示し、15重量%の結果を四角(■)のプロットと二点鎖線の傾向線とで示し、更に10重量%の結果をひし形(◇)のプロットと破線の傾向線とで示している。
【0046】
図3(a)に示した実験の結果によれば、実施例1−1〜実施例1−3、比較例1−1のいずれについても炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウム濃度は単調に減少している。カルシウム濃度が減少するのは、カルシウム化合物が析出することにより、炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウムが消費された結果であると考えられる。また、いずれの結果についても保持を開始してからの経過時間が1時間から1日までの期間中におけるカルシウム濃度の減少速度が速く、経過時間が長くなるにつれて減少速度は遅くなり、経過時間が1日から4日の期間中ではカルシウム濃度は殆ど変化していない。これは、カルシウム化合物の析出によって、炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウム濃度が変化して平衡状態となったためであると考えられる。
【0047】
炭酸ナトリウム水溶液を保持し、1時間経過してから1日経過するまでの水溶液内のカルシウムの減少速度を実施例1−1〜実施例1−3、比較例1−1の各実験結果について比較すると、炭酸ナトリウム水溶液の濃度が高い程、カルシウムの減少速度も速い。これは、高濃度に調製された炭酸ナトリウム水溶液ほどカルシウムや炭酸イオンの濃度が高いため、カルシウム化合物が析出する速度が速くなった結果、カルシウムの減少速度が速くなったものと考えられる。
【0048】
図3(b)に示したグラフについて考察する。図3(b)は、各実施例、比較例で得られた実験結果を10重量%の炭酸ナトリウム水溶液に希釈した場合のカルシウム濃度(換算値)を示している。10重量%濃度換算値においては、各実施例、比較例におけるカルシウムの初期濃度は21重量ppmで一致しているが、保持時間の経過につれて夫々の炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウム濃度に差異が生じている。即ち、炭酸ナトリウム水溶液の濃度を30重量%とした場合(実施例1−1)には、水溶液を1日保持することにより10重量%に換算後のカルシウム濃度が3重量ppmまで減少し、初期濃度に対して約87%のカルシウムを除去することができている。これに対して、濃度が20重量%の炭酸ナトリウム水溶液では約71%(実施例1−2)、15重量%の水溶液では約57%(実施例1−3)と調製した水溶液の濃度が低くなるにつれてカルシウムが除去される割合が低下していく。そして、10重量%の炭酸ナトリウム水溶液では43%のカルシウムしか除去することができていない(比較例1−1)。また、カルシウム濃度に着目すると、炭酸ナトリウム濃度が30、20、15重量%(実施例1−1〜実施例1−3)の場合には1日以内の保持時間で希釈後の水溶液中のカルシウム濃度を10重量ppm以下とすることができているのに対して、水溶液の濃度が10重量%の場合には、1日経過してもカルシウム濃度を10重量ppm以下とすることができなかった。希釈後の水溶液の濃度を1日以内に10重量ppm以下とすることができれば、本発明に係る精製方法を工業的プロセスに適用することが十分に可能であると考えられる。
【0049】
(実験2)
保持時間の比較的短い時間帯における炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウム濃度の変化について評価を行った。
(実施例2−1)
実施例1−1と同じ条件の炭酸ナトリウム水溶液(炭酸ナトリウム濃度30重量%)を調製して保持し、1時間、2時間、4時間、6時間経過後にサンプリングした水溶液を吸引濾過して得られた母液中のカルシウム濃度を測定した。本実施例においては、図2に示した滞留槽20内の状態により近づけるため、炭酸ナトリウム水溶液を調製したビーカーを恒温槽内に置いて水溶液を30℃に加温した点と、水溶液を保持している期間中継続的にスターラーチップで撹拌した点とが、室温で保持し、最初の1時間だけ撹拌を行った実施例1−1の条件と異なっている。また、ビーカー内の炭酸ナトリウム水溶液の一部をサンプリングして吸引濾過を行い、その結果を分析した点が、分析を行う度に水溶液の全量を吸引濾過して、その後分析を行った実施例1−1の条件と異なっている。言い替えると、水溶液内には析出したカルシウム化合物が濾過によって除去されずに蓄積されていく点が実施例1−1と異なる。これら以外の実験条件については実施例1−1と同じなので説明を省略する。実験の結果を(表3)に示す。なお、(表3)には、比較例2−1の結果及び、参考のための実施例1−1の結果も併せて示してある。
【0050】
(表3)
カルシウム濃度の変化

【0051】
(比較例2−1)
粉末中のカルシウム化合物の含有量が少ない炭酸ナトリウム(カルシウム化合物の含有量33重量ppm)を使用した他は、実施例2−1と同様の条件にて実験を行った。
【0052】
(実験2の考察)
(表3)に示したカルシウム濃度の経時変化をグラフにプロットした結果を図4に示す。横軸は経時時間を示し、縦軸は炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウム濃度を示している。実施例2−1の結果を四角(□)でプロットし、(比較例2−1)の結果を三角(▲)でプロットしている。また、参考として示した実施例1−1の結果はバツ印(×)でプロットした。また、実線は夫々の濃度変化の傾向線を示している。
【0053】
図4のグラフによれば、実施例2−1、比較例2−1のいずれの場合においても炭酸ナトリウム水溶液を保持することによって、水溶液中のカルシウム濃度は単調に減少している。また、カルシウムの減少速度の変化は、保持時間の短い領域で速く、保持時間が長くなるにつれて減少速度が遅くなっていく実験1と同じ傾向が見られる。また、実施例2−1と比較例2−1とを比較すると、炭酸ナトリウム水溶液の濃度が同じであっても、水溶液を調製した時点でのカルシウムの初期濃度が異なる場合には、初期濃度が高い程、カルシウムの減少速度及びその除去割合が高くなることが分かる。なお、実施例2−1と実施例1−1とにおいて炭酸ナトリウム水溶液中のカルシウムの濃度変化には顕著な差異は見られなかった。
【0054】
(実験3)
炭酸ナトリウム水溶液をイオン交換樹脂と接触させて、この水溶液に含まれるカルシウムやマグネシウムの吸着除去実験を行った。
(実験方法)
カラムにイオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IRC748)を50mL充填し、このカラムに濃度10重量%の炭酸ナトリウム水溶液(カルシウム含有量1.3重量ppm、マグネシウム含有量0.5重量ppm)を通液した。トータルで900ml(樹脂量の18倍の量に相当する)の炭酸ナトリウム水溶液を通液し、通液量150ml毎(樹脂量の3倍の量に相当する)にカラムを通過した水溶液をサンプリングしてカルシウム濃度とマグネシウム濃度とを測定した。流れの方向は下降流とし、空間速度を3hr−1とした。また、カラムはジャケットを備えており、このジャケットには60℃の温水を循環させた。実験の結果を(表4)に示す。
【0055】
(表4)
イオン交換樹脂と接触させた炭酸ナトリウム水溶液中の不純物の濃度

【0056】
(実験3の考察)
(表1)に示した結果によれば、カルシウムとマグネシウムとのいずれについても、樹脂量の18倍に相当する量の炭酸ナトリウム水溶液を通液した期間中において安定してこれらの不純物の濃度を0.1重量ppm以下まで低減できている。この結果より、炭酸ナトリウム水溶液を保持して析出した不純物を分離して得た水溶液を更に精製したい場合には、イオン交換樹脂と接触させることにより、不純物を殆ど含まない高純度の水溶液が得られることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施の形態に係る炭酸ナトリウム水溶液の精製方法を説明するフローチャートである。
【図2】実施の形態に係る炭酸ナトリウム水溶液の精製装置の一例を示す構成図である。
【図3】本発明の効果を確認するために行った実験の結果を示す特性図である。
【図4】本発明の効果を確認するために行った実験の結果を示す特性図である。
【符号の説明】
【0058】
9 ホッパー
10 溶解槽
11 原水供給弁
11a 原水供給管
12 ミキサー
13 蒸気供給弁
13a 蒸気供給管
14 ボトムポンプ
14a ボトム配管
15 温度コントローラ
16 戻し配管
17 抜き出し配管
20 滞留槽
21 ミキサー
22 ヒーター
23 ボトムポンプ
23a ボトム配管
24 戻し配管
25 抜き出し配管
30 フィルター
40 希釈槽
41 希釈水供給弁
41a 希釈水供給管
42 ミキサー
43 ボトムポンプ
43a ボトム配管
44 戻し配管
45 抜き出し配管
50 樹脂塔
51 抜き出し配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム化合物からなる不純物を含むアルカリ金属炭酸塩に関して、アルカリ金属炭酸塩の濃度が15重量%以上のアルカリ金属炭酸塩溶液を調製する調製工程と、
アルカリ金属炭酸塩が析出しないように当該アルカリ金属炭酸塩溶液を一定時間保持して、アルカリ金属炭酸塩溶液中に溶解していた不純物を析出させる析出工程と、
析出した不純物とアルカリ金属炭酸塩溶液とを固液分離する固液分離工程と、を含むことを特徴とするアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法。
【請求項2】
析出した不純物を分離したアルカリ金属炭酸塩溶液を水で希釈して、予め決められた濃度のアルカリ金属炭酸塩溶液を製造する希釈工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法。
【請求項3】
カルシウム化合物からなる不純物を含むアルカリ金属炭酸塩に関して、アルカリ金属炭酸塩の濃度が15重量%以上のアルカリ金属炭酸塩溶液を調製する調製工程と、
アルカリ金属炭酸塩が析出しないように当該アルカリ金属炭酸塩溶液を一定時間保持して、アルカリ金属炭酸塩溶液中に溶解していた不純物を析出させる析出工程と、
不純物の析出したアルカリ金属炭酸塩溶液を水で希釈して、予め決められた濃度のアルカリ金属炭酸塩溶液を製造する希釈工程と、
析出した不純物とアルカリ金属炭酸塩溶液とを固液分離する固液分離工程と、を含むことを特徴とするアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法。
【請求項4】
析出した不純物を分離したアルカリ金属炭酸塩溶液をイオン交換樹脂と接触させて、このアルカリ金属炭酸塩溶液中に溶解している不純物を吸着除去する吸着工程を更に含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法。
【請求項5】
前記調製工程におけるアルカリ金属炭酸塩溶液の濃度は、アルカリ金属炭酸塩の飽和溶解度に対して60%以上、飽和溶解度未満の量のアルカリ金属炭酸塩が溶解している濃度であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載のアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載のアルカリ金属炭酸塩溶液の精製方法により精製されたアルカリ金属炭酸塩溶液。
【請求項8】
カルシウム化合物からなる不純物を含んだアルカリ金属炭酸塩粉末を供給するための供給手段と、
この供給手段から供給されたアルカリ金属炭酸塩粉末を水に溶解させて、アルカリ金属炭酸塩の濃度が15重量%以上のアルカリ金属炭酸塩溶液を調製するための溶解槽と、
アルカリ金属炭酸塩が析出しないように当該アルカリ金属炭酸塩溶液を保持して、アルカリ金属炭酸塩溶液中に溶解していた不純物を析出させるための析出槽と、
析出した不純物とアルカリ金属炭酸塩溶液とを固液分離するための固液分離手段と、を備えたことを特徴とするアルカリ金属炭酸塩溶液の精製装置。
【請求項9】
析出した不純物を分離したアルカリ金属炭酸塩溶液を水で希釈して予め決められた濃度のアルカリ金属炭酸塩溶液を製造するための希釈槽を更に備えたことを特徴とする請求項8に記載のアルカリ金属炭酸塩溶液の精製装置。
【請求項10】
カルシウム化合物からなる不純物を含んだアルカリ金属炭酸塩粉末を供給するための供給手段と、
この供給手段から供給されたアルカリ金属炭酸塩粉末を水に溶解させて、アルカリ金属炭酸塩の濃度が15重量%以上のアルカリ金属炭酸塩溶液を調製するための溶解槽と、
アルカリ金属炭酸塩が析出しないように当該アルカリ金属炭酸塩溶液を保持して、アルカリ金属炭酸塩溶液中に溶解していた不純物を析出させるための析出槽と、
不純物の析出したアルカリ金属炭酸塩溶液を水で希釈して予め決められた濃度のアルカリ金属炭酸塩溶液を製造するための希釈槽と、
析出した不純物とアルカリ金属炭酸塩溶液とを固液分離するための固液分離手段と、を備えたことを特徴とするアルカリ金属炭酸塩溶液の精製装置。
【請求項11】
析出した不純物を分離したアルカリ金属炭酸塩溶液をイオン交換樹脂と接触させて、このアルカリ金属炭酸塩溶液中に溶解している不純物を吸着除去するための吸着塔を更に備えたことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一つに記載のアルカリ金属炭酸塩溶液の精製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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