説明

アルキルアルカノールアミン類の調製方法

本発明は、水素および触媒の存在下でのカルボニル系化合物とヒドロキシルアルキルアミンとの反応を含む、アルキルアルカノールアミン類の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルキルアルカノールアミン類(以下、AAA類と呼ぶ。)の合成方法、特に、エポキシド型の原料を用いずに高収率で高純度のアルキルアルカノールアミン類を、特に産業レベルで、得るための改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AAA類、特に、アルキルエタノールアミン類は、化学産業および医薬産業(これらを分散剤、乳化剤もしくは界面活性剤として用いることができる。)において重要であり、並びに活性成分の合成において重要である中間体化合物である。これらは、最も一般的な用途のみを引用するため、水性塗料中の中和剤として、または潤滑剤もしくは油圧油中の防蝕剤として用いることもできる。
【0003】
一般に用いられる調製方法によると、AAA類、特に、アルキルエタノールアミン類は、下記反応に示されるように、一級または二級アミンをエポキシド、それぞれエチレンオキシド、と反応させることによって得られる:
【0004】
【化1】

これらの反応は、例えば、特許出願FR 2 251 545(BASF)、さもなければFR 2 387 212(Bayer)に記載されている。
【0005】
この反応スキームによると、二級アミン類はN,N−ジアルキルエタノールアミン類を生じ、これに対して一級アミン類は、用いられる化学量論比に依存して、N−アルキルエタノールアミン類またはN−アルキルジエタノールアミン類を生じる。
【0006】
しかしながら、特に一級アミンの場合、この反応は、最も一般的には、アルキルモノエタノールアミンおよびアルキルジエタノールアミンの混合物を生じ、これはアルキル基の性質に依存して分離することが時折困難である。
【0007】
さらに、この調製方法は副生物を生じ、この副生物は、例えばエチレンオキシドが用いられるとき、用いられるエポキシドの重付加からの化合物である:
【0008】
【化2】

このような手順が蒸留および/または保存の間に着色していくAAA類、特に、アルキルエタノールアミン類を生じることも周知である。この着色は共役不飽和不純物および/またはカルボニル化誘導体の存在によるものであり、特定の用途に対して、特に、塗料(白色系)において特に厄介であることがわかる。
【0009】
このアルキルエタノールアミン着色の問題を制限するため、様々な処理方法が記述されている。
【0010】
これらのうち、特許および特許出願US 2004/0110988(Air Products)、US 6291715(BASF)、EP 632013(Union Carbide)およびEP 477593(Atochem)に記載されるものを、これらのうちの幾つかを引用するために、およびこの着色問題の解決法を見出すことを試みるために挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許第2251545号明細書
【特許文献2】仏国特許第2387212号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0110988号明細書
【特許文献4】米国特許第6291715号明細書
【特許文献5】欧州特許第632013号明細書
【特許文献6】欧州特許第477593号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特に、着色の導入が可能である化合物を阻害するため、ある解決法は反応粗生物または事前に蒸留されたAAAを還元剤(例えば、水素、NaBH等)で処理することからなる。従って、この解決法は反応組成物の追加処理を必要とし、これは消費されるエネルギーおよび収率の損失の観点で高価であることがわかる。
【0013】
従って、現時点では、容易に産業化することができ、収率が良好であり、用いるのが危険であるか、または困難である原料を使用せずに実施することができ、副生物、特に、AAA類の着色の原因である副生物の生成が僅かであるか、または全くない、AAA類の合成方法に対する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は本発明によって完全に、または少なくとも部分的に達成され、本発明の詳細は以下の説明に示される。
【0015】
従って、第1の態様によると、本発明の主題はエポキシド官能基を有する化合物、特に、極度に引火性で毒性の液化ガスであるエチレンオキシドの取り扱いを回避する直接合成方法からなり、該直接合成方法は、蒸留の後、いかなる追加の特別精製処理もせずに、無色で保存安定性である高純度のAAA類、特に、アルキルエタノールアミン類を生じる。
【0016】
より具体的には、本発明は式(A)のアルキルアルカノールアミン類:
【0017】
【化3】

(式中:
はヒドロキシアルキル基を表し、このアルキル部分は直鎖であって2個の炭素原子を含み;
は水素原子並びに2個の炭素原子を含み、および1以上のヒドロキシル(−OH)基で置換される直鎖アルキル基から選択され;
同一であるか、または異なるRおよびR’は水素原子、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシアルキル基から各々選択され、アルキルは1から10個の炭素原子、好ましくは、1から6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖炭化水素系鎖および3から9個の炭素原子を含むシクロアルキル基であり、RおよびR’は各々同時に水素原子を表すことができないという制限があり;
さもなければ
RおよびR’は、これらを坦持する炭素原子と共に、酸素、イオウおよび窒素から選択される1個以上のヘテロ原子を場合によっては含む、飽和であるか、または完全に、もしくは部分的に不飽和である単環式、二環式または多環式基を一緒に形成する。)
を調製するための方法であって、水素および触媒の存在下における式(2)のヒドロキシアルキルアミンでの式(1)のカルボニル化合物の還元アミノ化の工程を含む方法に関する:
【0018】
【化4】

(式中、R、R’、RおよびRは上で定義される通りである。)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本説明において、他に示されない限り、
アルキル基という用語は:直鎖もしくは分岐鎖の、場合によっては置換される、1から10個の炭素原子、好ましくは、1から6個の炭素原子を含む炭化水素系基または3から9個の炭素原子、好ましくは、5から9個の炭素原子を含む環状炭化水素系基を意味するものであり;
単環式、二環式または多環式基という用語は:飽和または完全に、もしくは部分的に不飽和である、場合によっては置換され、酸素、イオウおよび窒素から選択される1個以上のヘテロ原子を場合によっては含み、3から12の環メンバー数を有する、単環式、二環式または多環式基を意味するものである。好ましくは、該基は単環式であり、および3から9の環メンバーを含み、好ましくは、5、6または7の環メンバーを含む。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、
アルキルという用語は:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、シクロペンチルメチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、シクロヘキシルメチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシルおよびn−デシル、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルを意味するものであり;
ヒドロキシアルキルという用語は:ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシ−n−プロピル、2−ヒドロキシ−n−プロピル、3−ヒドロキシ−n−プロピルおよび1−(ヒドロキシメチル)エチル、好ましくは、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、より好ましくは、2−ヒドロキシエチルおよび2−ヒドロキシ−n−プロピルを意味するものであり;
アルキルアミノという用語は:メチルアミノ、2−エチルアミノ、1,1−ジメチルエチル−2−アミノ、n−プロピル−2−アミノ、n−プロピル−3−アミノ、n−ブチル−4−アミノ、n−ペンチル−5−アミノを意味するものであり、これには場合によっては置換されるアリールアミノ、例えば、フェニルアミノが含まれ;
ジアルキルアミノという用語は:ジメチルアミノ、ジ(2−エチル)アミノ、ジ(1,1−ジメチルエチル)−2−アミノ、ジ(n−プロピル)−2−アミノ、ジ(n−プロピル)−3−アミノ、ジ(n−ブチル)−4−アミノ、ジ(n−ペンチル)−5−アミノ、N−(2−エチル)−N−メチルアミノ、N−(1,1−ジメチルエチル)−N−メチル−2−アミノ、N−(n−プロピル)−N−メチル−2−アミノ、N−(n−プロピル)−N−メチル−3−アミノ、N−(n−ブチル)−N−メチル−4−アミノ、N−(n−ペンチル)−N−メチル−5−アミノ、N−(2−エチル)−N−エチルアミノ、N−(1,1−ジメチルエチル)−N−エチル−2−アミノ、N−(n−プロピル)−N−エチル−2−アミノ、N−(n−プロピル)−N−エチル−3−アミノ、N−(n−ブチル)−N−エチル−4−アミノおよびN−(n−ペンチル)−N−エチル−5−アミノを意味するものであり、これには場合によっては置換されるジアリールアミノ、例えば、ジフェニルアミノが含まれ;
シクロアルキルという用語は:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル、好ましくは、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを意味するものである。
【0021】
式(1)の化合物のうち、以下から選択されるものが好ましい:
ケトン類:アセトン、ヒドロキシアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、テトラロン、アセトフェノン、パラ−メチルアセトフェノン、パラ−メトキシアセトフェノン、m−メトキシアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、1−フェニル−3−ブタノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノンおよびシクロドデカノン;
アルデヒド類:アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、バレルアルデヒド、n−ヘキサナール、2−エチルヘキサナール、ヘプタナール類、特に、n−ヘプタナール、オクタナール類、特に、n−オクタナール、ウンデカナール類、ベンズアルデヒド、パラ−メトキシベンズアルデヒド、パラ−トルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ヒドロキシピバルアルデヒドおよびフルフラール。
【0022】
式(2)の化合物のうち、1級もしくは2級ヒドロキシアルキルアミン類またはジ(ヒドロキシアルキル)アミン類から選択されるもの、特に、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンから選択されるものが好ましい。
【0023】
本発明による方法は、好ましくは有機溶媒の添加なしに、バッチまたは半連続法に従って不均一触媒(触媒の撹拌床)下で行われる、モノヒドロキシアルキルアミンまたはジヒドロキシアルキルアミンでのアルデヒド類またはケトン類の還元アミノ化からなる。
【0024】
本発明による方法は、好ましくは、化学量論に近いカルボニル化合物/アミンモル比(または本開示の残りにおいてはMR)を用いて、より好ましくは、アミンに対して僅かに過剰のカルボニル化合物を用いても行われる。
【0025】
従って、本発明による方法の好ましい実施形態の1つによると、1級または2級アミン類のモノアルキル化についてはMRは有利には0.9から1.8の間、好ましくは1.0から1.5の間であり、1級アミン類のジアルキル化についてはMRは有利には1.8から3.6の間、好ましくは2.0から3.0の間、より好ましくは2.1から2.5の間である。
【0026】
この方法は、下記合成スキーム(説明として示されるもので限定するものではない。)で示されるように、モノエタノールアミン(MEoA)およびジエタノールアミン(DEoA)から操作条件に従って様々なアルキルアルカノールアミン類を生成することを可能にする:
【0027】
【化5】

このようにして本発明の方法に従って得ることができるアルキルアルカノールアミン類の例は、非限定的な方法で、メチルエチルケトンおよびモノエタノールアミンからのN−sec−ブチルエタノールアミン(sBEA)、n−ヘプタナールおよびジエタノールアミン(DEoA)からのN−(n−ヘプチル)ジエタノールアミン(C7DEoA)、アセトンおよびモノエタノールアミン(MEoA)からのN−(イソプロピル)エタノールアミン、n−ブチルアルデヒドおよびジエタノールアミン(DEoA)からのN−(n−ブチル)ジエタノールアミン並びにn−ブチルアルデヒドおよびモノエタノールアミン(MEoA)からのN,N’−ジ(n−ブチル)エタノールアミンである。
【0028】
本発明の方法において用いることができる水素化触媒は、有機化合物水素化の分野における専門家である当業者に公知の、あらゆるタイプのものであり得る。通常用いられるあらゆるタイプの触媒を不均一媒体中での触媒水素化反応に用いることが好ましい。
【0029】
このような触媒の非限定的な例は元素周期律表(IUPAC)の8、9、10および11族からの金属に基づく水素化触媒、好ましくは、Ni−、Co−またはCu−系ラネー触媒、パラジウム(Pd/C型)および、その上、銅クロマイト、より詳細には、ラネーニッケル触媒から選択することができる。
【0030】
本発明による方法の要求に適する商業的に入手可能な触媒のうち、非限定的な例として、ニッケル触媒BLM 112 W(Evonik)、Amperkat(登録商標)SK−Ni Fe Cr 4546(H.C.Starck)およびCu−1955(BASF Catalysts)を挙げることができる。
【0031】
本発明による還元アミノ化反応において用いる前に触媒を前処理することが有利であり得、または望ましいものでさえあり得、該前処理は水素流下で該触媒を予め還元することからなる。これは、一般には、触媒が(Cu−1955P型の銅クロマイトの場合における。)この酸化形態で、または部分的にのみ還元された形態で販売される場合である。
【0032】
このような前処理は、本発明による還元アミノ化を実施するのに規定される反応温度が該触媒の還元温度を下回るときに推奨され、または必須でさえある。
【0033】
本発明による方法はバッチまたは半連続系においてアルキルアルカノールアミン類を産業レベルで調製するのに特に適しており、この設備は水素化反応に一般に用いられるものに類似する。実際、本発明による方法は、一般には大気圧から150bar、好ましくは5barから80barの間、より詳細には10barから50barの間の水素圧下で行われる。
【0034】
反応温度は原料および用いられる触媒の性質に依存してかなりの程度まで変化し得るものであり、一般には、20℃から180℃の範囲内に含まれる。例えば、反応温度は、ラネーニッケル触媒で好ましくは40℃から100℃の間であり、銅クロマイトで好ましくは120℃から160℃の間である。
【0035】
上に示されるように、式2のヒドロキシルアミン類、特に、モノエタノールアミン(MEoA)およびジエタノールアミン(DEoA)は無水形態で、または市販水溶液の形態で用いられる。無水DEoAの融点のため、市販水性形態、例えば、85%の力価を有するものが本発明による方法の要求に好ましい。
【0036】
本発明による方法はバッチまたは半連続系において行うことができる。しかしながら、式(1)のカルボニル化合物がアルデヒドであるとき、選択性を制御するため、この方法は半連続系(消費されることによるアルデヒドの添加)において有利に行われる。
【0037】
好ましくは、本発明による方法は溶媒なしで、特に、有機溶媒なしで行われ、式(2)のアミンが上記に示されるように水溶液中で用いることができることは理解される。
【0038】
還元アミノ化反応の最後で、触媒の沈殿および液体粗生物の分離の後、触媒はそのものとして別の還元アミノ化反応に再利用することができ、即ち、本発明による別の還元アミノ化反応を同じ触媒ヒールで行うことができる。
【0039】
本発明の方法のため、アルキルアルカノールアミン類を調製するのに従来実施される合成、特に、エチレンオキシドを用いるものにおける場合のような、着色をもたらし得る化合物を阻害するために反応粗生物を還元剤(例えば、水素、NaBH等)で処理することが全く必要ではない。
【0040】
従って、本発明による方法は還元処理をせずに行うことができるという利点を有する。従って、反応粗生物は減圧下での蒸留反応において直接用いられ、これは高純度の無色アルキルアルカノールアミン類を得ることを可能とし、この着色は保存の間安定なままである。
【0041】
例として、本発明の方法に従って得られるsBEAの色は3 Pt−Co単位未満である。ガラス梱包(暗中)もしくはHDPE梱包内、周囲温度で18ヶ月、またはスチールドラム内で12ヶ月の保存の後、この色の欠如(3 Pt−Co単位未満)は存続する。
【0042】
色はDr Lange LTM1色度計により、標準ISO 6271−2:2004(白金−コバルト・スケール)に従い、分光光度法を用いて測定する;従って、色はPt−Co単位(これもしばしば用いられるHazenまたはAPHA単位と同等)で表される。
【0043】
従って、本発明によるAAA類の調製方法は、無色であるか、または非常に僅かな色を有するAAA類を有し得ることを可能とし、それに対して、それらの不安定性のため、市場で現在入手可能なAAA類は、一般には、約50 Hazenの仕様で、または100 Hazenの仕様でさえも販売される。
【0044】
ここで本発明を下記実施例によって説明するが、これらの実施例には本発明の範囲に関して限定する目的はなく、さらに該範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【実施例1】
【0045】
N−(sec−ブチル)エタノールアミン(sBEA)の合成
N−(sec−ブチル)エタノールアミンをメチルエチルケトンおよびモノエタノールアミン(MEoA)から下記反応スキームに従って調製する:
【0046】
【化6】

この反応の間に生じ得る主な副反応は以下である:
a)メチルエチルカルビノール(B2)をもたらすメチルエチルケトンの水素化:
【0047】
【化7】

b)ジエタノールアミン(DEoA)およびアンモニアをもたらすモノエタノールアミンの不均化:
【0048】
【化8】

c)アンモニアでのメチルエチルケトンの還元アミノ化によるsec−ブチルアミン(B2A)の形成:
【0049】
【化9】

d)EAK(エチルアミルケトン)、次いでEAC(エチルアミルカルビノール)を生じる、メチルエチルケトンの自己縮合反応:
【0050】
【化10】

e)sBEAとメチルエチルケトンとの反応に対応するモノエタノールアミンのジアルキル化:
【0051】
【化11】

用いられるメチルエチルケトン(MEK)(供給元Arkema)は99.9%の標準工業純度(standard commercial purity)を有する。
【0052】
この無水形態で用いられるモノエタノールアミン(MEoA)(供給元:BASF)は99.7%を上回る純度を有する。
【0053】
この例において用いられる触媒、Cu 1955 P(供給元:BASF Catalysts)は可溶性の小袋内に梱包された銅クロマイトである。
【0054】
詳細な手順
試験は、撹拌および気/液分散システム、蒸気で過熱し、および水で冷却するためのジャケット、反応媒体をさらに冷却するための内部コイル並びに圧力および温度調整器を備える65Lオートクレーブ内で行う。
【0055】
工程a):Cu 1955Pの予備還元
Cu 1955P触媒(「SecuBag」型のプラスチックバッグ内に2.3kg)をオートクレーブに投入する。34.8kgのMEKを導入する。オートクレーブに窒素を流した後、オートクレーブ内に約2barの圧力をもたらすため、窒素を注入する。
【0056】
周囲温度で13barの圧力に到達するまで水素を注入する。次に、オートクレーブの撹拌および加熱を開始する。温度が80℃に到達したとき、水素を注入することによって圧力を20barまで上昇させる。
【0057】
125℃で触媒の還元が始まる。水素流速は5Nm/hに制限する。次いで、圧力を9barまで低下させる。還元の最後に、圧力を28barに戻す。反応媒体を、28barの水素下、130℃でさらに30分間保持する。撹拌を停止して触媒を沈殿させた後、形成された2級ブタノールを排出する。
【0058】
工程b):sBEAの合成
前工程において調製した触媒ヒールで5回の連続する試験を行う(試験AからE)。23kgのMEK、次いで約18.4kgのMEoAを投入する。次に、15barの圧力に到達するまで水素を注入する。
【0059】
次いで、オートクレーブの撹拌および加熱を開始する。80℃で水素化が始まる。徐々にではあるが、水素の5Nm/hの瞬間最大流速が維持されるような方法で温度を上昇させる。
【0060】
試験Aでは、28barの圧力下、130℃で5時間30分水素化を行う。
【0061】
試験BからDでは、130℃の最大温度で3時間30分水素化を行い、135℃で1時間30分継続する。.
試験Eでは、135℃の温度で5時間30分、水素化を直接行う。
【0062】
様々な試験AからEで、水素化の最後に、反応媒体を90℃に冷却した後、撹拌を停止する。加えて、1barまでの水素脱気の後、反応粗生物の排出に先立ち、触媒を少なくとも2時間沈殿させたままにする。
【0063】
結果:
5回の試験の各々で得られた変換、選択性および収率を下記表1に並べる。
【0064】
MEoAの変換は98.6%から99.8%の間で、MEoAに対するsBEA選択性は97.5%から98.2%の間であり、従って、用いた初期MEoAに対するsBEAの粗モル収率は約96%から98%である。
【0065】
【表1】

【0066】
ガスクロマトグラフィーによって決定された、5回の操作の粗生物の重量基準での平均組成を下記表2に示す:
【0067】
【表2】

【0068】
蒸留:
上述の5つの粗生物の混合物206kgを用い、約20理論段のカラムで蒸留操作を1回行う。
【0069】
大気圧での予備蒸留で、軽量生成物、例えば、残留MEKおよびB2並びに、その上、大部分の水を抽出することが可能となる。水と共沸混合物を形成するEAKおよびEACもこの第1画分中に大部分が抽出される。
【0070】
・カラム頂部の温度:77℃から99℃;
・ボイラー内の温度:104℃から155℃;
・カラム頂部の還流比:約1。
【0071】
蒸留物は2相蒸留物である。この軽量生成物の画分の沈殿後、下記表3に示される組成の水相(F1 aq.)22.7kgおよび有機相(F2 aq.)6.0kgが回収される。
【0072】
【表3】

【0073】
続いて、減圧下で蒸留を継続する。残留水をカラム頂部で除去した後、約70%のカラム高さでの副流による排出によって「純粋」sBEAを回収する。殺菌されたものとしてのsBEAの排出で、カラム頂部での残留MEoAの濃縮が可能となる。
【0074】
・カラム頂部の圧力:60mbarから70mbar;
・カラム頂部の温度:34℃から100℃;
・副流による排出の高さでの温度:101℃から103℃;
・ボイラー内の温度:110℃から128℃;
・カラムヘッドでの還流比:約10;
・副流による排出の高さでの還流比:約1から2。
【0075】
このようにして、12.8kgの画分F2および99.9%の純度を有する「純粋」sBEA 137.7kg(これはボイラーの初期投入物中に存在するsBEAの82.1%を表す。)が回収される。
【0076】
カラムの「ホールドアップ」を考慮すると、蒸留収率は約85%である。
【0077】
このようにして調製された高純度sBEAは、18ヶ月を上回る保存の後、事実上無色(3 Pt−Co単位未満の色)のままである。
【実施例2】
【0078】
N−(n−ヘプチル)ジエタノールアミン(C7DEoA)の合成
n−ヘプタナールおよびジエタノールアミン(DEoA)からn−ヘプチルジエタノールアミンを調製する。
【0079】
Amperkat(登録商標)SK−Ni Fe Cr 4546 Ni/Raney触媒(供給元 H.C.Starck)を用いて、2Lステンレス鋼Sotelem反応器内で、3つの合成操作(K、L、M)を同じ触媒ヒールで連続的に行う。
【0080】
試験K
50gのAmperkat触媒を(95gの水と共に)オートクレーブに投入し、オートクレーブに窒素を流した後、ポンプを用いて391.3gの85% DEoA(即ち、3.16molに対応する、正味332.6gのDEoA)を導入する。
【0081】
次に、15barの圧力に到達するまで水素を注入した後、撹拌しながら混合物を90℃で加熱し、水素圧を28barに調整する。
【0082】
続いて、ポンプを用いてヘプトアルデヒド(供給元 Arkema、純度97%)を350g/hの流速で導入し、その一方で、同時に、28barの圧力が維持されるように水素を導入し、および反応媒体の温度を90℃で維持する。
【0083】
487.5gのヘプトアルデヒド(即ち、4.14mol)を導入した後、90℃および28barの水素下でさらに30分間撹拌したままにする。
【0084】
その後、撹拌を停止し、1barまでの水素脱気の後、少なくとも2時間触媒を沈殿させたままにする。
【0085】
次に、上清液反応粗生物を(あり得る触媒微粉を除去するため)フィルターを介して排出する。このようにして866.6gの粗生物C7DEoAが回収され、ガスクロマトグラフィーによって決定された重量基準でのこの組成(表4)は残留ヘプトアルデヒドが全く存在しないことを示し、DEoAに対して過剰のヘプトアルデヒドがほとんどn−ヘプタノールに変換される。
【0086】
試験L
この試験は試験Kと同じ手順に従うが、395gの85% DEoA(即ち、3.19molに対応する、正味335.8gのDEoA)をオートクレーブ内に保持される試験Kの触媒ヒールに直接投入し、432.3g(3.67mol)の量のヘプトアルデヒドを1時間15分の過程にわたって注入することによって行う。反応の最後に833.3gの粗生物C7DEoAが回収され、ガスクロマトグラフィーによって決定された重量基準でのこの組成が表4に示される。
【0087】
試験M
この試験は試験Kと同じ手順に従うが、401.1gの85% DEoA(即ち、3.24molに対応する、正味340.9gのDEoA)をオートクレーブ内に保持される試験Lの触媒ヒールに直接投入し、432.7g(3.68mol)の量のヘプトアルデヒドを1時間15分の過程にわたって注入することによって行う。反応の最後に837.3gの粗生物C7DEoAが回収され、ガスクロマトグラフィーによって決定された重量基準でのこの組成が表4に示される。
【0088】
【表4】

【0089】
上述の3つの反応粗生物を混合した後、1mの高さでMultiknitパッキングを充填したSovirel蒸留カラムで精製操作を行う。
【0090】
カラムのボイラーに2113gの粗生物C7DEoA混合物を投入した後、後者を、大気圧でのヘプタノールおよび水の共沸抽出(頂部温度:96から98℃)、次いで50mbarの圧力下、濃縮の最後で150℃のボイラー内最大温度での水の枯渇によって濃縮する。
【0091】
このようにして、86.2%のヘプタノール、5.2%の水および7.6%の有機不純物を含む有機画分243.2g、次いで99.5%の水、0.25%のヘプタノールおよび0.25%の有機不純物を含む水相312.7gが回収される。
【0092】
濃縮後のヒール(1509.3g)の組成は以下である:
・ヘプタノール:0.09%;
・DEoA:1.86%;
・他の有機不純物:1.60%;
・水:0.06%;
・C7DEoA:96.4%。
【0093】
このヒールの分画蒸留を同じ装置内、1mbar未満の圧力下で継続し、DEoAに富む第1画分を分離した後、137.0℃から137.5℃のカラム頂部温度および180℃のボイラー内最大温度で1358gの蒸留C7DEoAが得られる。
【0094】
この蒸留C7DEoAの純度は98.7%であり、0.05%の残留DEoA含有率、0.02%の含水率および3 Pt−Co単位未満の色を有する。
【0095】
89.5%の蒸留収率で、蒸留C7DEoAの全モル収率は最初に処理されたDEoAに対して約85%である。
【0096】
ガラス瓶内、周囲温度および暗中で6ヶ月の保存の後、このように調製されたC7DEoAの色は、僅か5 Pt−Co単位に等しいため、準安定のままである。
【0097】
以下の例は、原料を指示される通りに変えて、同様の手順に従って行う。
【実施例3】
【0098】
バッチ法による、アセトンおよびMEoAからのN−(イソプロピル)エタノールアミン(IPAE)の合成(sBEA型)
1.05のアセトン/MEoAモル比、アセトンに対して11%のCu 1955P触媒の重量基準での量、110℃の反応温度および28barの水素圧下で、アセトンの総変換が得られる。MEoAの変換は99.7%で、N−(イソプロピル)エタノールアミン選択性は98.5%であり、即ち、処理したMEoAに対するIPAEの粗モル収率は98.2%である。
【実施例4】
【0099】
半連続法による、n−ブチルアルデヒドおよび85% DEoAからのN−(n−ブチル)ジエタノールアミン(BDEoA)の合成(C7DEoA型)
1.04のn−ブチルアルデヒド/DEoAモル比、DEoAに対して7.3%のAmperkat(登録商標)SK−NiFeCr 4546触媒の重量基準での量および1時間15分の過程にわたるn−ブチルアルデヒドの半連続導入を用いて、65℃から70℃の反応温度を維持しながら28barの水素圧下で、N−ブチルアルデヒドの完全変換が得られる。DeoAの変換は94%で、N−(n−ブチル)ジエタノールアミン選択性は98.3%であり、従って、処理したDEoAに対するBDEoAの粗モル収率は92.4%である。
【0100】
25mbarの圧力下、145℃から146℃のカラム頂部温度での反応粗生物の分画蒸留により、BDAoEを抽出する。BDEoAの純度は99.2%であり、蒸留収率は91%である。このようにして調製されたBDEoAの色は、蒸留を離れた直後は3 Pt−Co単位未満であり、ガラス瓶内、周囲温度および暗中で18ヶ月保存した後は25 Pt−Co単位である。
【実施例5】
【0101】
半連続法による、n−ブチルアルデヒドおよびMEoAからのN,N’−ジ(n−ブチル)エタノールアミン(DBEoA)の合成(C7DEoA型)
2.16のブチルアルデヒド/MEoAモル比、MEoAに対して10.6%のAmperkat SK−NiFeCr 4546触媒の重量基準での量および1時間50分の過程にわたるブチルアルデヒドの半連続導入を用いて、70℃の反応温度を維持しながら28barの水素圧下で、ブチルアルデヒドおよびMEoAの完全変換が得られる。DBEoAの粗モル収率は処理したMEoAに対して79%である;2つの主要な副生物はN−(n−ブチル)エタノールアミンおよびn−ブタノールである。
【0102】
46mbarの圧力下、130.5℃のカラム頂部温度での反応粗生物の分画蒸留により、DBEoAを抽出する。DBEoAの純度は99.8%であり、蒸留収率は86%、色は3 Pt−Co単位未満である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)のアルキルアルカノールアミン類:
【化1】

(式中:
はヒドロキシアルキル基を表し、このアルキル部分は直鎖であって2個の炭素原子を含み;
は水素原子並びに2個の炭素原子を含み、および1以上のヒドロキシル(−OH)基で置換される直鎖アルキル基から選択され;
同一であるか、または異なるRおよびR’は水素原子、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシアルキル基から各々選択され、アルキルは1から10個の炭素原子、好ましくは、1から6個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖炭化水素系鎖および3から9個の炭素原子を含むシクロアルキル基であり、RおよびR’は各々同時に水素原子を表すことができないという制限があり;
さもなければ
RおよびR’は、それらを坦持する炭素原子と共に、酸素、イオウおよび窒素から選択される1個以上のヘテロ原子を場合によっては含む、飽和であるか、または完全に、もしくは部分的に不飽和である単環式、二環式または多環式基を一緒に形成する。)
を調製するための方法であって、水素および触媒の存在下における式(2)のヒドロキシアルキルアミンでの式(1)のカルボニル化合物の還元アミノ化の工程を含む方法:
【化2】

(式中、R、R’、RおよびRは上で定義される通りである。)
【請求項2】
式(1)の化合物がアセトン、ヒドロキシアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、テトラロン、アセトフェノン、パラ−メチルアセトフェノン、パラ−メトキシアセトフェノン、m−メトキシアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、1−フェニル−3−ブタノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロドデカノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、バレルアルデヒド、n−ヘキサナール、2−エチルヘキサナール、ヘプタナール類、特に、n−ヘプタナール、オクタナール類、特に、n−オクタナール、ウンデカナール類、ベンズアルデヒド、パラ−メトキシベンズアルデヒド、パラ−トルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ヒドロキシピバルアルデヒドおよびフルフラールから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(2)の化合物がモノエタノールアミンおよびジエタノールアミンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(A)の化合物がメチルエチルケトンおよびモノエタノールアミンから得られるN−sec−ブチルエタノールアミン(sBEA)、n−ヘプタナールおよびジエタノールアミン(DEoA)から得られるN−(n−ヘプチル)ジエタノールアミン(C7DEoA)、アセトンおよびモノエタノールアミン(MEoA)から得られるN−(イソプロピル)エタノールアミン、n−ブチルアルデヒドおよびジエタノールアミン(DEoA)から得られるN−(n−ブチル)ジエタノールアミン並びにn−ブチルアルデヒドおよびモノエタノールアミン(MEoA)から得られるN,N’−ジ(n−ブチル)エタノールアミンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒が元素周期律表(IUPAC)の8、9、10および11族の金属に基づく水素化触媒、好ましくは、Ni系、Co系またはCu系ラネー触媒、パラジウム(Pd/C型)および、その上、銅クロマイト、より詳細には、ラネーニッケル触媒から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水素圧が大気圧から150barの間、好ましくは5barから80barの間、より詳細には10barから50barの間である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応温度が20℃から180℃の範囲内に含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(1)のカルボニル化合物がアルデヒドであるとき、バッチまたは半連続系、好ましくは、半連続系において行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応粗生物を蒸留操作において用いる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
有機溶媒なしで行うことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−530771(P2012−530771A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516826(P2012−516826)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051299
【国際公開番号】WO2010/149936
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】