説明

アルキルイミダゾール類の精製方法

【課題】 アルキルホルムアミド類の含有量の少ないアルキルイミダゾール類を簡便に製造できる、高純度アルキルイミダゾール類の精製方法を提供すること。
【解決手段】 不純物として式(1):
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるアルキルホルムアミド類を含む式(2):
【化2】


(式中、Rは前記と同じ。)で表されるアルキルイミダゾール類を精製するにあたり、当該アルキルイミダゾール類を、金属化剤と混合して、式(1)で表されるアルキルホルムアミド類と金属化剤を反応せしめた後、蒸留することを特徴とするアルキルイミダゾール類の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルイミダゾール類の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルイミダゾール類は電子デバイス用電解質の中間体材料等として利用されている(例えば、特許文献1参照)。電子デバイス用電解質の中間体材料用途では、ごく微量の不純物が電子デバイスの製品品質に大きく関わってくるため、不純物の少ない高純度のアルキルイミダゾール類が求められている。
【特許文献1】特開2000−003620号
【0003】
工業的に入手可能なアルキルイミダゾール類には、不純物としてアルキルホルムアミド類を含む場合があり、その場合は通常0.1%〜2.0%程度のアルキルホルムアミド類を含有している。アルキルイミダゾール類の精製には通常蒸留による精製が試みられるが、かかるアルキルホルムアミド類はアルキルイミダゾール類と非常に沸点が近似しており、高純度のアルキルイミダゾール類を得るには蒸留による精製が困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アルキルホルムアミド類の含有量の少ないアルキルイミダゾール類を簡便に製造できる、高純度アルキルイミダゾール類の精製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、不純物として式(1):
【0006】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるアルキルホルムアミド類(以下、アルキルホルムアミド類(1)という。)を含む式(2):
【0007】
【化2】

(式中、Rは前記と同じ。)で表されるアルキルイミダゾール類(以下、アルキルイミダゾール類(2)という。)を精製するにあたり、当該アルキルイミダゾール類を、金属化剤と混合して、アルキルホルムアミド類(1)と金属化剤を反応せしめた後、蒸留することを特徴とするアルキルイミダゾール類(2)の精製方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の精製方法によれば、アルキルホルムアミド類(1)の含有量の少ないアルキルイミダゾール類(2)を簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
式(1)及び式(2)において、Rで示される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0010】
アルキルホルムアミド類(1)の具体例としては、例えばN−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N−プロピルホルムアミド、N−イソプロピルホルムアミド、N−ブチルホルムアミド、N−イソブチルホルムアミド等が挙げられる。
【0011】
アルキルイミダゾール類(2)の具体例としては、例えば1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール等が挙げられ、好ましくは1−メチルイミダゾール及び1−エチルイミダゾールである。
【0012】
本発明の精製方法を実施するには、不純物としてアルキルホルムアミド類(1)を含有するアルキルイミダゾール類(2)(以下、粗アルキルイミダゾール類(2)という。)を金属化剤と混合して、アルキルホルムアミド類(1)と金属化剤を反応せしめた後、蒸留すればよい。このようにすれば、アルキルホルムアミド類(1)に金属化剤の金属原子が結合して実質的な非揮発性化合物となるため、簡便な蒸留操作によってアルキルイミダゾール類(2)を精製することができる。
【0013】
粗アルキルイミダゾール類(2)は、アルキルホルムアミド類(1)を含有しているものであれば特に限定されない。また、例えばアルキルイミダゾール類(2)の公知の製造方法によって製造された反応混合物、該反応混合物から適当な抽出溶剤により抽出された抽出層又はその濃縮液、或いは反応混合物又は混合液を蒸留してアルキルイミダゾール類(2)と蒸留分離が容易な副生物を除去したアルキルイミダゾール類(2)等であって、アルキルホルムアミド類(1)を含有したものがあれば、それを用いることもできる。
【0014】
金属化剤としては、アルキルホルムアミド類(1)と反応して実質的な非揮発性化合物を生成するものであれば特に限定されないが、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、塩基性アルカリ金属化合物及び塩基性アルカリ土類金属化合物が挙げられ、特に好ましくはアルカリ金属及び塩基性アルカリ金属化合物である。
【0015】
アルカリ金属としては、例えば金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム金属、カルシウム金属等が挙げられる。
【0016】
塩基性アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属アルコキシド、アルキルアルカリ金属化合物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属を含むヒドリド還元剤が挙げられ、好ましくはアルカリ金属アルコキシドである。具体的には、アルカリ金属アルコキシドとしては、例えばリチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムブトキシド、リチウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド等、アルキルアルカリ金属化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム等、アルカリ金属水素化物としては、例えば水素化リチウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム等、アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等、アルカリ金属を含むヒドリド還元剤としては、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等が挙げられる。
【0017】
塩基性アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、Grignard試薬等が挙げられる。具体的には、アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムブトキシド、カルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、カルシウムブトキシド等、アルカリ金属水素化物としては、例えば水素化カルシウム等、アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等、Grignard試薬としては、例えばエチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
【0018】
金属化剤はそのまま用いてもよいし、必要に応じて適当な溶媒に溶解させて用いてもよい。また、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。かかる金属化剤の使用量は、アルキルホルムアミド類(1)1モルに対して、アルカリ金属又は塩基性アルカリ金属化合物を用いる場合は通常0.8モル以上、好ましくは1〜10モル、アルカリ土類金属又は塩基性アルカリ土類金属化合物を用いる場合は通常0.4モル以上、好ましくは0.5〜5モルである。
【0019】
本発明の方法には、必要に応じて溶媒を用いることもできる。溶媒としては、蒸留時にアルキルイミダゾール類(2)と容易に分離するものであって、アルキルホルムアミド類(1)と塩基性金属化剤の反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサノニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、水等が挙げられる。溶媒は単独で用いても良いし、二種類以上を混合して用いても良い。その使用量は特に限定されるものではないが、粗アルキルイミダゾール類(2)1重量部に対して、通常10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下である。
【0020】
反応温度は通常0〜300℃程度、好ましくは10℃〜200℃の範囲である。また所望により不活性ガス雰囲気下に実施してもよく、不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0021】
上記のようにして粗アルキルイミダゾール類(2)に含まれるアルキルホルムアミド類(1)を金属化剤と反応させた後、得られた反応物を蒸留すると、蒸留では分離困難であったアルキルホルムアミド類(1)の含有量を減少せしめた高純度のアルキルイミダゾール類(2)を容易に得ることができる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものではない。なお、1−メチルイミダゾール中のN−メチルホルムアミドの量は、ガスクロマトグラフィー分析(以下、GC分析という。)により算出した。
【0023】
実施例1
N−メチルホルムアミドを0.58%含有(5.8g、0.10モル)する純度99.27%の1−メチルイミダゾール1000.0gと28重量%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液65.3g(0.34モル)を混合し、26℃で30分反応した。その後、単蒸留による精製を行い、純度99.60%の1−メチルイミダゾール779.0gを得た。得られた1−メチルイミダゾールをGC分析した結果、N−メチルホルムアミドは検出されなかった。
[沸点]
1−メチルイミダゾール;198℃/760mmHg
N−メチルホルムアミド;198−199℃/760mmHg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物として式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるアルキルホルムアミド類を含む式(2):
【化2】

(式中、Rは前記と同じ。)で表されるアルキルイミダゾール類を精製するにあたり、当該アルキルイミダゾール類を、金属化剤と混合して、式(1)で表されるアルキルホルムアミド類と金属化剤を反応せしめた後、蒸留することを特徴とするアルキルイミダゾール類の精製方法。
【請求項2】
金属化剤がアルカリ金属及び塩基性アルカリ金属化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の精製方法。
【請求項3】
塩基性アルカリ金属化合物が、アルカリ金属アルコキシド、アルキルアルカリ金属化合物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属を含むヒドリド還元剤から選ばれる少なくとも1種である請求項2記載の精製方法。
【請求項4】
アルキルイミダゾール類が1−メチルイミダゾール又は1−エチルイミダゾールである請求項1〜3のいずれかに記載の精製方法。

【公開番号】特開2007−238499(P2007−238499A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62918(P2006−62918)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)